AI・デジタル活用STORY:株式会社サンロード 鈴木友広氏 システム導入を、組織変革の起点に。「全員参加」のデジタル経営へ
協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。
【記事サマリー】
奈良県橿原市で、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを企画・開発・製造する株式会社サンロードが抱えていたのは、営業日報と顧客情報が分散し、展示会で得た700枚を超える名刺も手作業で入力しているという課題でした。協働プロとともに営業支援システムや名刺管理・メール配信の仕組みを整えたことで、顧客情報を横断的に確認し、潜在顧客への営業活動につなげられる環境を構築。新規売上も前年から10%を超えて伸びています。さらに、取り組みを担った鈴木友広さんは、2026年4月に新設されたDX推進室の室長に就任。変わったのは業務の進め方だけではありません。社員の中にも、デジタルを使って自ら仕事を変えていこうとする意識が芽生え、全社変革への土台が生まれ始めています。
この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。
→デジコーチとは
今回は、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを中心に、衛生対策製品の企画・開発・製造・販売を手がける株式会社サンロード DX推進室 室長の鈴木友広さんにお話を伺いました。
同社は奈良県橿原市に本社を構え、福島県いわき市、中国・青島市にも製造拠点を展開。食品への毛髪混入を防ぐ衛生キャップや、工場内へのほこり、虫、細菌、カビなどの侵入を抑えるフィルターを通じて、食品製造の現場を支えてきました。
2027年には50期を迎える同社が、次の成長に向けて掲げているのが、デジタルやAIを活用した業務と事業の変革です。その第一歩として取り組んだのが、営業情報の一元化と、展示会で生まれた顧客接点の活用でした。
しかし、システムを導入しただけで会社が変わるわけではありません。必要なのは、デジタルを使う人と、社内を動かしていく推進者の存在です。奈良県の「デジタル×経営実践」プログラムを通じて協働日本と出会い、総務部に所属しながらプロジェクトを担った鈴木さん。その後、社内に新設されたDX推進室の室長へ。協働を通じて、何が変わったのでしょうか。
営業支援システムや名刺管理の導入、その裏側で進んだ社員の意識変化、そして全社を巻き込むDXへの展望について、率直に語っていただきました。
(取材・文=郡司弘明)
食品工場の衛生環境を支える、ものづくり企業
ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは、サンロードさんの沿革と現在の事業について教えてください。
鈴木友広氏(以下、鈴木):
はい、よろしくお願いします。
当社は1978年に創業し、食品工場などで使用される衛生用品の企画・開発・製造・販売を行っています。
主力製品は、食品工場で働く方が毛髪混入対策のために着用する衛生キャップと、工場内へのほこりや虫、細菌、カビなどの侵入を防ぐ衛生用フィルターです。この2つのカテゴリーが、売上の大半を占めています。奈良県橿原市に本社と工場があり、福島県いわき市にも国内工場を構えています。国内2拠点で働く従業員は約100名。海外では、中国の青島市にも製造拠点があります。
そのほか、一般のお客様向けのマスクや家庭用フィルターも展開しています。お客様が抱える衛生面の困りごとを的確に捉え、製品として形にしていくことが私たちの仕事です。
ーー食品工場の衛生環境を支える製品が、事業の中心なのですね。
鈴木:
そうですね。特に衛生キャップとフィルターが中心です。衛生キャップの中には、電荷を保持する特徴的な生地を使い、毛髪を吸着して落下を防ぐ製品もあります。フィルターについても、外気からのほこりや虫の侵入を防ぐものや、空調を通じて広がる細菌、カビなどを捕集するものを扱っています。
目立つ製品ではないかもしれませんが、食品工場のクリーンな環境を守るためには欠かせない製品です。

「中小企業だからこそ、取り組まなければ生き残れない」
ーー今回、協働日本と取り組むことになったきっかけを教えてください。
鈴木:
奈良県が実施していた「デジタル×経営実践」という支援事業がきっかけです。社長が事業のチラシを入手して持ち帰り、私に申し込むようにと声をかけていただいたところから始まりました。
社長は以前から、デジタルや生成AI、DXに力を入れていかなければならないという危機感を強く持っていました。大企業であれば、デジタルを専門に扱う部署があり、知見を持った人材もいると思います。一方で、中小企業では専門部署も人材も限られている。当社も生産現場を中心とした会社で、デジタルとはどちらかといえば縁遠い環境でした。
中小企業だからといって何もしなくてもよいとは、私も思えません。デジタルやAIを活用していかなければ、今後は生き残っていけない。その危機感が、経営側にも現場にもありました。
ーーそれまでも、デジタル化に向けた動きはあったのでしょうか。
鈴木:
セミナーに参加して情報を集めることはありました。ただ、具体的な実行まで進められていたわけではありませんでした。
生成AIを新商品開発に活用したい。社内に蓄積された情報やノウハウを整理したい。議事録作成のような日常業務も効率化したい。大きなものから小さなものまで、解決したい課題はいくつもありました。とはいえ、何から着手すればよいのか、どのような手段を選ぶべきなのかが分からない・・。そんな状況でした。
ーー課題は見えているものの、実行までの道筋を描けていなかったのですね。例えばシステム会社ではなく、協働日本のような伴走者を求めたのはなぜでしょうか。
鈴木:
システム会社に相談すると、どうしてもその会社が提供する商品を前提に話が進んでいきます。自分たちが必要なものを、十分に理解したうえで選ぶのであれば問題ありません。ただ、情報収集の段階では、提案された商品に引っ張られてしまうことがありますよね。
私たちが求めていたのは、特定の商品を売る立場ではなく、フラットな視点で課題を整理し、どのような手段が適切なのかを一緒に考えてくれる存在でした。
中小企業では、何を選べばよいのか、どの順番で取り組むべきなのかを判断する知識そのものが不足しています。ツール選定の前段階から相談できることに、協働日本との取り組みの価値を感じました。
ーー今回の協働プロジェクトには、どなたが参加されたのでしょうか。
鈴木:
昨年度のプロジェクトでは、協働プロの横町暢洋さんを中心に伴走していただき、一緒に先山毅さんにもサポートに入っていただきました。横町さんは、大企業でエンジニアやマネジメントを経験されている方です。私自身も前職がエンジニアだったため、考え方や話の進め方に共通する部分がありました。こちらの状況を理解していただきやすく、私にとっても話がかみ合いやすい方だったと思います。
奈良県の支援事業が終了した後も協働日本との取り組みを継続しており、今年度は横町暢洋さんと、新たに黄瀬真理さんに伴走していただいています。
ーー昨年度の横町さんたちとのプロジェクトでは、具体的にどのような課題から着手したのでしょうか。
鈴木:
一つ目は、営業日報と顧客情報の連携です。

営業日報と顧客情報をつなぎ、「探せるデータ」へ
ーー以前の営業日報は、どのように管理されていたのでしょうか。
鈴木:
以前から営業担当者は、Excelを使って日報を記入していました。ただ、日報は週ごとのファイルに分かれており、過去の情報を探すには、一つずつ開いて確認しなければなりません。
直近の出来事は把握できても、「1カ月前に、このお客様とどのような話をしていたか」を振り返るには時間がかかります。管理者にとっても、営業活動や商談の状況を横断的につかみにくい状態でした。
ーー日報は書かれているものの、蓄積された情報を十分に活用できていなかった、と。
鈴木:
その通りです。顧客情報や商談情報を別のデータベースへ入力してもらう方法もあります。しかし、それでは日報との二重入力になり、営業担当者の負担が増えてしまいます。管理者としては情報を整理してほしい。一方、現場に新しい入力作業を増やせば、拒絶反応が起きるかもしれない。そこが難しいところでした。
そこで、営業支援システムとしてkintoneを導入しました。一度情報を入力すれば、日報だけでなく、顧客情報や商談情報としても整理される仕組みです。
現在は、これまでバラバラだった顧客情報や接点情報を横断的に確認できるようになりました。必要な情報をすぐに検索でき、営業担当者同士の情報共有も以前よりスムーズになっています。
単に日報をデジタル化したのではありません。書き残していた情報を、次の営業活動に使えるデータへ変えていった形です。
ーー導入するシステム自体は、協働が始まる前から候補が決まっていたのでしょうか。
鈴木:
ある程度は決まっていました。導入をほぼ決めた段階と、横町さんとの伴走が始まった時期が重なったような形です。
そのため、横町さんには「何を導入するか」だけでなく、ベンダーとの話をどのように進めるのか、導入後にどう活用していくのか、社員にどう働きかければよいのかという部分を相談しました。システムを入れること自体は簡単にできます。ただ、使われなければ意味がありません。むしろ、導入後の方が大切ですよね。
700枚を超える名刺を「次の営業」につなげる
ーーもう一つの大きな課題が、展示会で得た顧客情報の活用だったと伺いました。
鈴木:
当社は年に2回ほど展示会へ出展しています。3日から4日間の展示会で、700枚を超える名刺をいただくこともあります。以前は、その名刺情報を営業担当者が一枚ずつExcelへ入力していました。その後、お礼のメールを個別に送っていたため、かなりの手間がかかります。連絡するまでに時間が空いてしまうこともありました。
そこで、名刺情報を取り込んで管理し、メール配信まで行える仕組みを導入しました。展示会後には、ご来場へのお礼や新製品の案内をまとめて配信しています。
ーー単なる名刺のデータ化ではなく、その後の営業活動までを仕組みにしたのですね。
鈴木:
そうですね。重要なのは、メールを一斉に送れるようになったことだけではありません。開封の有無や製品ページのクリックなど、お客様の反応も確認できるようになりました。
これまでは、お問い合わせがあった段階で初めて、お客様の関心が分かっていました。現在は、問い合わせに至る前の反応を捉え、関心を持っている可能性が高いお客様へ営業からアプローチできます。いわば、潜在顧客の可視化です。
名刺情報を登録するスピードは明らかに上がりました。営業担当者が個別に行っていたお礼や製品案内も仕組み化され、展示会で生まれた接点を継続的に育てる土台が整いつつあります。
ーー協働プロからは、具体的にどのようなアドバイスがあったのでしょうか。
鈴木:
ベンダーとの交渉や方向づけに加えて、社内の皆さんに使ってもらうための動機づけ、働きかけについてアドバイスをいただきました。メール配信についても、どのような内容を、どのくらいのタイミングや頻度で届ければよいのか。そうした運用面まで相談しています。
ツールの機能を知るだけでは、現場での使い方までは決まりません。自社の営業活動にどう組み込むかを一緒に考えていただけたことは大きかったですね。

新規売上は前年から10%超。事業の仕掛けとDXが重なった
ーー仕組みを整えたことで、事業面ではどのような手応えが生まれていますか。
鈴木:
もちろん、今回の施策だけによる成果とは言い切れませんが、ホームページや展示会を通じて接点を持ったお客様からの新規売上は、前年から10%を超えて伸びています。
メール配信を本格的に始めたのは今期に入ってからですので、それによってどれだけ顧客が増えたかという成果は、まだこれから確認していく段階です。ただ、展示会をきっかけに新しいお客様が増えている実感はあります。今後、半年、1年と続けていく中で、メールの開封率やクリック数、新規顧客の獲得件数なども見ていきたいと考えています。
ーー2026年6月には、「FOOMA JAPAN 2026」にも出展されています。展示会では、新しい商品にも力を入れたそうですね。
鈴木:
従来の衛生キャップやフィルターに加えて、食品工場の暑熱環境に対応するアイスベストを紹介しました。食品工場には、油を使う工程など、非常に温度が高くなる現場があります。そこで、体に接する側を冷却し、外側には熱が逃げにくい工夫を施した保冷剤入りのベストを出展しました。
熱中症対策への関心が高まっている時期でもあり、多くの方に注目していただけました。展示会後にも反響があり、注文につながっています。
ーー新商品を打ち出す動きと、展示会後の顧客フォローを改善する動きが、ちょうど重なったわけですね。
鈴木:
そうだと思います。毎回同じ製品を並べるだけでは、新しい注目は生まれません。事業側では新しい商品をつくり、営業側では展示会で得た接点を次につなげる。二つを組み合わせることで、より効果的な活動ができるようになります。
会社としての仕掛けとDXの取り組みが重なったことは、大きかったですね。

総務部からDX推進室へ。取り組みが生んだ新たな役割
ーー今回のプロジェクトを経て、2026年4月にはDX推進室が新設されました。鈴木さんが室長に就任された経緯を教えてください。
鈴木:
2026年3月までは総務部に所属し、人事、労務、経理などの業務を担当しながら、デジタル関連の取り組みも進めていました。
総務の仕事と並行していたため、デジタル化に十分な時間を使えていたわけではありません。片手間という言い方がよいかは分かりませんが、実際にはそのような状態でした。
一方で、社長の中では「もっと力を入れて進めなければならない」という思いが徐々に強くなっていきました。そして3月末、「DX推進室を立ち上げるので、デジタル、生成AI、DXに専念してほしい」と言われたのです。
ーーもともとDX推進室長になることを想定して、プロジェクトに参加していたわけではなかったのですよね。
鈴木:
はい、お恥ずかしながらまったく想定していませんでした。奈良県のプログラムへ参加したときは、総務部の立場で、まずは社内の課題をどうにかしたいという気持ちでした。
ただ、協働日本とのプロジェクトを通じて、実際にシステム導入や社内への働きかけを経験したことは、DX推進室の立ち上げにつながったのだと思います。社長も、その取り組みを見ていたのでしょう。会社として本格的に進めるなら、担当を明確にし、専任に近い形で動かす必要がある。そのような判断だったのだと思います。
ーーシステムが導入されたことに加え、社内にDXを進める役割そのものが生まれた。今回の協働を象徴する変化ですね。
鈴木:
そうですね。ただ、まだ立ち上がったばかりです。本当の意味では、これからだと思っています。
1.5人で始めたDX推進室。小さな成功を積み重ねる
ーー現在は、どのような体制でDXを推進していますか。
鈴木:
DX推進室には、営業や商品開発を担当してきた弊社の佐藤という社員が兼務で加わってくれています。私が1人、佐藤が0.5人。いわば1.5人の体制です。佐藤は、kintoneやメール配信の導入にも当初から関わっており、現在は運用や社内フォローを中心に進めてくれています。
もともとは商品開発を担当していましたが、今ではデジタル関連の仕事の割合がかなり増えています。私の右腕という立場ですね。
ーーDX推進室だけで課題を決めるのではなく、各部門からも意見を集めたそうですね。
鈴木:
はい。各部門のメンバーに、「デジタルを使って解決したいこと」を聞きました。
議事録作成の効率化といった身近な課題から、生成AIを活用した新商品開発まで、幅広い意見が出ています。課題の一覧化はすでに終えており、横町さんにも共有しました。これから優先順位を整理し、取り組むテーマを決めていきます。
ーーすべてを一度に進めるのではなく、優先順位をつけていくと。
鈴木:
そうです。大きな成果だけを目指しても、社員はなかなか変化を実感できません。まずは3カ月に一つ、小さくても目に見える成功事例をつくる。その成果を社内で共有し、次の取り組みにつなげていきたいと思っています。
できることを一つずつ増やし、社内に「デジタルを使えば仕事を変えられる」という実感を広げていく。そこが大切ではないでしょうか。
ツールを入れるのではなく、「使う理由」を共有する
ーー取り組みを始めた当初は、社員の皆さんがシステムを使ってくれるか、不安もあったそうですね。
鈴木:
はい、正直不安だらけでした。システムは、導入しただけではただの箱です。使う人が活用しなければ、何の意味もありません。
当社でも以前、販売システムや生産管理システムを入れ替えたことがありました。受注や売上処理など、業務上必要な機能は使います。ただ、蓄積されたデータを商品開発や顧客開拓に活用する意識までは、十分に広がりませんでした。
今回も、営業支援システムを入れること自体より、現場の皆さんに継続して使ってもらえるかどうかが大きな課題でした。
ーー実際に営業担当の方へ説明したときは、どのような反応でしたか。
鈴木:
それが、思っていたほどの拒絶反応はありませんでした。説明会を実施した際にも、「まずはチャレンジしてみよう」という雰囲気が感じられました。それは、少し安心したところです。
もちろん、全員が同じように活用できているわけではありません。担当者によって使い方にばらつきが出ないよう、今後もフォローが必要だとは感じています。
ただ、何人かの社員から「活用していこう」「自分たちの仕事を変えていこう」という前向きな反応が見られたことは、大きかったと思います。
ーー社員の意識が変わり始めた背景には、経営側からのメッセージもあったのでしょうか。
鈴木:
大前提、社長が繰り返し伝えてきたことが大きいと思います。
会社としては、社員の賃上げを進めていきたい。しかし、賃上げの原資を生み出すには、これまでと同じ仕事の進め方では難しい。業務を効率化して時間を生み出し、より付加価値の高い仕事へ振り向けなければならない、という話です。
朝礼や会議で繰り返し伝える中で、社員にも「会社が賃上げをするためには、自分たちも仕事の進め方を変えなければならない」という意識が少しずつ生まれてきました。
ーーDXを、単なる会社都合の効率化ではなく、自分たちの働き方や処遇にもつながる話として共有したのですね。
鈴木:
そうですね。付加価値の高い仕事をしていかなければ、会社の成長にも賃上げにもつながりません。そのためには、今までと違うやり方を取り入れる必要がある。
デジタル化が、経営側だけの掛け声ではなく、自分たちの働き方や会社の成長につながるテーマとして受け止められ始めた。それが、今回生まれた重要な変化だと思っています。

否定せず、一緒に進む。協働プロが支えた最初の一歩
ーー先ほど横町暢洋さんをご紹介いただきましたが、実際に伴走を受けて、どのような印象を持ちましたか。
鈴木:
横町さんは、大企業でエンジニアやマネジメントを経験されている方です。私も前職がエンジニアだったため、考え方や話の進め方に共通する部分があり、アドバイスを理解しやすかったですね。
システム会社との交渉の進め方、導入時に社員へどのように働きかけるか、メールをどの程度の頻度で配信すればよいか。技術面だけにとどまらず、運用やマネジメントの視点からも助言をいただきました。
ーー技術だけではなく、人や組織をどう動かすかという部分まで支援してもらえたのですね。
鈴木:
そこは大きかったと思います。印象に残っているのは、私たちの取り組みを肯定的に見てくださったことです。自分たちの取り組みが、他社と比べてどの程度進んでいるのか。私たち自身には分かりませんでした。
そうした中で横町さんは、良いところを見つけ、評価しながら次の一歩を示してくださいました。否定的なことを言う方ではありませんし、こちらの状況を受け止めたうえで話してくれます。豊富な知見を持ちながら、同じ目線で伴走してくれる、ありがたい存在でした。

県の支援終了後も、自費で協働を継続
ーー奈良県のプログラム終了後も、自費で協働日本との取り組みを継続されています。継続を決めた理由を教えてください。
鈴木:
昨年度の伴走期間は、実質的には3カ月程度の期間でした。限られた期間でも多くのアドバイスをいただきましたが、本当に成果につなげるには、もう少し長い時間が必要だと感じました。
システムは導入して終わりではありません。実際に使い、成果を確認し、改善を重ね、社内に定着させる。そこまで進めて、ようやく意味が生まれます。
そのため今年度は、自費で協働日本との取り組みを継続し、7月2日に新たなキックオフを行いました。今年度は、横町暢洋さんと黄瀬真理さんに伴走していただいています。
ーー短期のシステム導入支援から、継続的な経営変革の取り組みへ進んだわけですね。
鈴木:
そうですね。長期的には、生成AIを活用した商品開発や、社内ノウハウの継承にも取り組みたいと考えています。
ただし、大きな構想だけを掲げても、社内に定着するとは限りません。まずは3カ月ごとに一つ、小さくても具体的な成功事例をつくる。その成果を社内で共有し、次の取り組みへつなげていく方針です。
短期的な変化と、長期的な成果。その両方を積み重ねながら、デジタル経営を前へ進めていきたいと思っています。
中小企業にこそ、外部プロ人材の力が必要
ーー今回のように、外部のプロ人材とデジタル領域で取り組むのは初めてだったのでしょうか。
鈴木:
デジタルに関しては初めてでした。これまでは、システムを入れるとなれば、複数の会社から説明を受けて選定し、その会社と進める形が中心でした。勉強会や専門家から助言を受けた経験はありますが、フラットな立場から伴走してもらい、デジタル施策を一緒に考える経験はありませんでした。
今回、特定の商品を売る立場ではないプロ人材からアドバイスを受けられたことは、とても有意義だったと思います。
ーー今後、このようなプロ人材との協働は、中小企業の間でも広がっていくと思いますか。
鈴木:
これは、広がっていくと思います。
大企業であれば、専門部署や人材、知識、予算を社内に持っています。しかし、中小企業では、そのすべてが不足していることも珍しくありません。取り組むテーマや導入するシステムが明確に決まっていれば、専門の会社へ依頼できます。難しいのは、その手前です。
何をすべきなのか。どの方法が自社に合っているのか。どの順番で進めればよいのか。そうした判断を、中小企業だけで行うのは簡単ではありません。
中小企業が自社だけでは持てない知見を取り入れ、より適切な判断をしていく。そのために、プロ人材との協働は大きな力になるはずだと感じています。

デジタルを、開発・製造・販売の成長につなげていく
ーーここまでのお話を伺うと、サンロードさんのDXは、まさに始まったばかりなのですね。今後はどのような会社を目指していきたいですか。
鈴木:
当社はこれから、開発、製造、販売など、さまざまな領域でデジタルやAIを活用していきたいと考えています。目指しているのは、単なる業務効率化ではありません。効率化によって生まれた時間を、付加価値の高い仕事や、新しい商品・顧客の創出へ振り向けることです。
2027年度からは50期を迎えます。中期計画では、50期の販売目標として、48期比20%増を掲げています。この目標を実現するためにも、拡販活動に使える時間を増やし、顧客情報を活用しながら、新しい受注につなげていかなければなりません。
ーーそのためにも、一部の担当者だけでなく、全社で取り組むことが重要になりそうですね。
鈴木:
そう思います。一部の担当者だけで進めるのではなく、「やってみる」というチャレンジ精神を持ち、社員みんなで継続して取り組んでいきたいです。
情報を入力することが目的ではありません。システムを導入することも、デジタルという言葉を掲げることも、あくまで手段です。目的は、受注を増やし、会社を成長させ、働く皆さんへ還元していくこと。
その目的を見失わず、デジタルを有意義な手段として活用していきたいと思っています。
ーー最後に、協働日本へのメッセージをお願いします。
鈴木:
はい。中小企業には、社内だけでは解決できない課題が数多くあります。だからこそ、さまざまな専門性を持つ方々の力を借りながら、一つずつ前へ進んでいきたいと思っています。
協働日本には、伴走支援を受けた企業同士が継続してつながれる場もつくっていただけると伺っています。今回の出会いを一度きりにせず、これからも長く支援していただけることを期待しています。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
鈴木:
ありがとうございました。
※この記事の取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」です。
AI・デジタルに強い協働プロがコーチとして入り、社員の方が自分で使えるようになるまで伴走します。デジコーチは、日本全国の地域の中小企業様100社以上にご導入いただいています。製造業、食品、飲食、小売、工務店など、業種はさまざまです。
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鈴木 友広/Tomohiro Suzuki
株式会社サンロード DX推進室 室長
1966年生まれ。
電機メーカーのエンジニアを経て、2015年に株式会社サンロードに入社。
製造部、総務部を経験し、2026年4月より新設のDX推進室室長。
協働日本事業については こちら





