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AI・デジタル活用STORY:株式会社伊田重機 柳澤有希子氏 紙に眠る57年の知恵を、次世代へ。社員主導で始まったデジタル変革

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。

【記事サマリー】
奈良県奈良市で、建設機械や建設用車両の修理・販売・整備・保守点検などを手がける株式会社伊田重機。創業以来の豊富な知識と経験を強みにする一方、顧客情報や修理履歴の多くは紙で保管され、業務の進め方もベテラン社員の記憶に依存していました。協働プロとともにkintoneを活用した情報の一元化に着手し、現在は紙資料をPDF化し、生成AIも用いてデータへ移す方法を検証しています。本格運用はこれからですが、すでに大きな変化も生まれています。若い事務員2名が、自らAIやkintoneを学び、システムの構築を主導するようになったのです。社長が一人で抱えていた課題が社員の共通課題となり、現場から会社を変える動きへ。創業57年の知恵を次世代へつなぐ「デジタル事業承継」が始まっています。

この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。
デジコーチとは

今回は、奈良県奈良市を拠点に、建設機械や建設用車両に関する幅広いサービスを展開する株式会社伊田重機 代表取締役の柳澤有希子さんにお話を伺いました。

同社は1969年(昭和44年)に創業。建設機械の修理を起点に、リース・レンタル、中古建設機械の販売、オペレーター付きでの現場対応、ユニック車などの架装部分の修理・点検へと事業を広げ、地域の建設現場を支えてきました。一方、顧客情報や修理履歴は大量の紙で保管され、業務もベテラン社員の記憶に依存。情報共有の不足が、ミスや顧客トラブルにつながることもありました。

2代目として会社を継いだ柳澤さんは、この状況に強い危機感を抱きながらも、当初は一人で悩み続けていたといいます。奈良県の「デジタル×経営実践」プログラムを通じて協働日本と出会い、協働プロの横町暢洋さんらと取り組みを進める中で、会社にどのような変化が生まれたのでしょうか。

ベテランの頭の中と紙に眠る情報を、どのように会社全体の資産へ変えていくのか。そして、デジタルとは縁遠かった社員たちが、なぜ自ら変革を担うようになったのか。率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明)

建設機械のことなら、何でも応える。修理から広がった57年

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、伊田重機さんの沿革と現在の事業について教えてください。

柳澤有希子氏(以下、柳澤):
よろしくお願いします。当社は昭和44年に、父が創業しました。当時は高度経済成長期の真っただ中で、建設機械が普及し始めた頃だったのだと思います。父はとにかく機械が好きで、建設機械の修理を始めたことが会社の出発点です。

現在は修理を基盤に、リース・レンタル、中古建設機械の販売、オペレーター付きで建設機械を現場へ出す仕事なども行っています。ユニック車やごみ収集車といった働く車の「架装部分」の修理や点検も得意です。「建設機械のことならお任せください」という言葉を看板にも掲げるほど、さまざまなご相談に対応しています。

建設機械は10年、20年前のものでも、動けば仕事になります。かなり前に販売した機械が、修理のために再び入ってくることも珍しくありません。昔からいる担当者の記憶は大きな強みですが、その人にしか分からないままでは、会社としてお客様に向き合い続けることが難しい。古い履歴も簡単には捨てられない業種だからこそ、会社の情報として残す必要がありました。

ーーありがとうございます。続いて、協働日本を最初に知ったきっかけを教えてください。

柳澤:

以前、奈良中央信用金庫の経営研究会で、協働日本代表の村松さんの講演を聞いたことがありました。お話を聞いて、「こういう方々に相談できたらいいだろうな」と感じたことを覚えています。

その後、奈良県の「デジタル×経営実践」プログラムを知りました。参加企業には当社と同じような中小企業も多いと聞き、「悩んでいるのは、うちだけではない」「うちでもデジタル化、DXに取り組んでいいんだ」と思えました。

ちょうど、ベテラン社員の知識をどう引き継ぐか、一人で悩み続けていた時期でもありました。私にとって、本当に必要なタイミングでいただいた機会でした。

ーー奈良県の事業を通じて、協働日本の協働プロたちとの具体的な協働が始まったのですね。

柳澤:

はい。最初は私一人が焦り、「何とかしなければ」と思っていました。ご紹介いただいた協働プロの横町さんたちとの取り組みを通じ、課題を整理し、当社に合う方法を一緒に考えてもらうところから始まりました。

単にシステムを紹介してもらうのではなく、今の当社がどのような状態で、何に困っているのかを聞いてもらえたことが大きかったと思います。

「この人に聞かないと分からない」。ベテランの記憶に頼る会社

ーー協働日本との取り組みを決めた当時、社内にはどのような課題があったのでしょうか。

柳澤:
父の代から働く社員が今も会社を支えてくれています。経験が豊富な一方、業務の進め方やお客様の情報の多くは、その方たちの頭の中にしかありませんでした。「何十年か前に対応したお客様だから、資料を調べてほしい」と言われると、事務スタッフは仕事を止め、大量の紙資料から探します。複数人で探し、数時間かかることもありました。

営業と整備の間でも、十分に情報を共有できていませんでした。問い合わせをいただいても、担当者がいなければすぐに答えられない。行き違いからミスやロスが生まれ、お客様にご迷惑をかけてしまうこともありました。実際にお客様を怒らせてしまい、営業担当が頭を下げるような出来事もありました。そうなると、社内の空気も悪くなってしまいます。

ーー2代目として、その状況に強い危機感を持たれていたのですね。

柳澤:
この先も伊田重機を続けるなら、ベテラン社員の頭の中にあるものを見えるようにしなければいけない。長く働いてきた方々の自負も、若い社員が新しいことを取り入れたいという思いも大切にしながら、どう知識を受け継ぐのか。答えが見えず、当時は一人で悶々としていました。

協働日本のプログラムを知ったのは、まさにそのタイミングでした。私にとっては、本当に必要なときに出会えた取り組みでした。

デジタル化は、創業57年の知恵をつなぐ「事業承継」

ーー今回の取り組みでは、どのような未来を目標に掲げたのでしょうか。

柳澤:
目指したのは、社員が同じクオリティーで仕事ができる職場です。誰が問い合わせを受けても同じ情報を確認し、速やかに対応できるようにする。「この人に頼んでよかった」だけではなく、「伊田重機に頼んでよかった」と言っていただける会社へ変えていきたいと思っています。

ですから、当社にとってのデジタル化は、単なる効率化ではありません。ベテラン社員が長年培ってきた知識やノウハウをデータとして残し、若い世代へ引き継いでいくための取り組みです。創業57年の重みを未来へつなぐ、事業承継の一つだと捉えています。

ーーその実現に向け、まずは顧客情報や修理履歴をkintoneへ集約することにしたのですね。

柳澤:
はい。いくつかのシステムを検討し、横町さんにも相談しました。業界向けの専門的なシステムには、何百万円という導入費用に加え、月々の費用がかかるものもあります。機能が多くても、当社がすべてを使いこなせるとは限りません。

その点、kintoneは当社が今やりたいことに合っていて、費用面でも取り組みを始めやすく、自社に合わせてカスタマイズできます。営業やベテラン社員が持つ情報を棚卸しし、顧客情報を一元化する。そのうえで、業務を効率化できるように情報を整理し、社員にもデジタル活用の考え方を広げていく。この順番で進めています。

請求書、機械の仕入れ・販売など、担当者ごとのExcelや頭の中にあった情報も、一つの流れとして確認できる仕組みをつくっている段階です。

高さ50センチの紙資料。生成AIを使っても「読み取れば終わり」ではない

ーー膨大な過去の情報は、具体的にどのようにデータへ移しているのでしょうか。

柳澤:
実際の構築は、伴走してくれている協働プロの横町さんたちと事務スタッフが中心です。私は今では横で話を聞くくらいで、スタッフが自ら質問し、使いやすい形へカスタマイズしてくれています。当社には、お客様や機械ごとに膨大な紙資料があり、日々の仕事と並行して整理する必要があります。

ーー横町さんによると、Excelのデータは形式を整えてkintoneへ取り込み、紙の情報はPDF化して生成AIで読み取る。さらに会社名を手がかりに公開情報を補い、精度を高める方法を検証しているそうですね。

柳澤:
そうですね。中でも難しいのは手書きの資料です。PDFにしてAIに読み取らせても精度が下がるため、内容を確かめ、足りない情報を補う必要があります。

資料をファイルごと積み上げると、高さが50センチほどになると聞いています。それだけの紙をPDFにするだけでも、事務スタッフにとって決して軽い負担ではありません。現時点では、どこまでデータ化できるのか、どの方法なら現実的に進められるのかを検証しているところです。

時間も工夫も必要です。ただ、横町さんが「できないことはない。面倒な部分こそ引き受けて、一緒に形にしていくことに意義がある」と向き合ってくれていることは、とても心強いですね。

社長一人の「どうしよう」が、社員の「やってみたい」へ

ーー本格運用はこれからですが、すでに組織には大きな変化が生まれているそうですね。

柳澤:
はい。中心になっているのは、若い事務員2名です。最初は私自身、「会社を巻き込むなんて、うちでは無理だろう」「誰も味方になってくれないのでは」と思っていました。

それが、横町さんが一度会社へ来てくれたことで変わりました。「会社は本当に変わろうとしている」「自分たちの事務作業も大きく変わるかもしれない」と、スタッフが実感できたのだと思います。それから、2人の姿勢が一気に前向きになりました。

今では打ち合わせで意見を積極的に伝え、チャットでも横町さんへ質問しています。自分たちでkintoneを触り、一部の仕組みをつくり始め、私がほとんど入らなくてもプロジェクトが進むようになりました。

ーー用意されたシステムを使うのではなく、自分たちで使いやすい形をつくっているのですね。

柳澤:
そうなんです。今回は、出来上がったひな型に仕事を当てはめるのではなく、スタッフが「ここはこうしたい」「色を変えてほしい」と細かなことまで伝え、今の仕事に合う形を一緒につくってもらっています。

最初から「それは無理です」「できません」と言われていたら、スタッフもそれ以上は要望を出さなかったと思います。少しずつでも、自分たちが望む形へ近づいていると分かるから、「どうせなら、ちゃんと使いやすいものをつくろう」という意識が高くなっているのではないでしょうか。

別の営業所で長く働く事務スタッフも、若い2人から教わりながら取り組みに加わり始めました。社員同士で教え合いながら進められていることも、うれしい変化です。

ーー奈良県の事業終了後も、協働日本との契約を継続されています。継続を決めた理由を教えてください。

柳澤:

奈良県の事業が終わった時点では、kintoneはまだ構築の途中で、紙の情報をデータへ移す作業もこれからでした。仕組みをつくるだけではなく、実際に使える状態にして、社内へ定着させるところまで進めなければ意味がありません。

もう一つ大きかったのが、事務スタッフの変化です。最初は私一人が悩んでいましたが、今ではスタッフから「あれもしたい」「これもしたい」と意見が出るようになりました。自分たちでkintoneを触り、仕事を変えようとしてくれています。

せっかく生まれた変化を、県事業の期間が終わったからといって止めたくありませんでした。ここから実際の成果につなげ、整備や営業の現場にも広げていくために、自費でも伴走を続けることを決めました。

答えを押しつけず、小さな要望から一緒に形にする

ーー伴走を担当する、協働日本の横町暢洋さんには、どのような印象を持っていますか。

柳澤:
横町さんは豊富な経験や知識を持ちながら、決して上から目線で話しません。「なるほど」と、まずはこちらの話や無理な要望も受け止めてくれます。機能の説明からではなく、私たちが何に困っているのかを聞くところから始めてくれるんです。

「ここの色を変えてほしい」という小さな要望にも対応し、専門的な説明についていけなくなりそうなときは、「それは今すぐ理解しなくても大丈夫」と整理してくれる。私たちのペースに合わせてもらえることが、とてもありがたいです。

ーー発表会で横町さんは、今回の伴走を「どうしよう」を「できるかも」へ変える取り組みだったと振り返っていました。

柳澤:
まさにそうだと思います。最初は私一人が焦り、どうしたらよいか分からずにいました。それが今は、スタッフから「あれもしたい」「これもしたい」と意見が出るようになっています。

課題がなくなったわけではありませんし、システムもまだ完成していません。それでも、社内に一緒に進める仲間がいると分かった。「何とかしなければいけないけれど、どうしよう」という状態から、「自分たちにもできるかもしれない」へ進めたことは、大きな変化だと思います。

2〜3時間の検索を20〜30分へ。生まれた時間を、人のために使う

ーーkintoneが本格的に運用されると、業務はどのように変わる見通しでしょうか。

柳澤:
これまでは、過去のお客様や機械について確認するために、事務スタッフが紙のファイルを一つずつ探していました。毎日の業務の中で、感覚的には合計2〜3時間ほどかかっていた作業が、kintoneで検索できるようになれば、20〜30分ほどまで短縮できるのではないかと見込んでいます。内容によって数時間かかっていた一件の検索も、数分で終えられる可能性があります。

担当者が不在でも修理履歴を確認できれば、若い営業や整備スタッフも過去の状態を見ながら対応できます。ただ、現時点ではまだ構築と検証の段階です。実際に使える状態にし、どれだけ時間を短縮できるのかを確かめていく必要があります。

ーー効率化によって生まれた時間を、どのように使っていきたいですか。

柳澤:
デジタルですべてを効率化し、人と関わらなくてよい会社にしたいわけではありません。むしろ、紙を探す時間が減った分、よりお客様との関わりを丁寧にしたり、顧客価値を高める取り組みに活かしていきたいと思います。

便利になるほど、人と話し合う機会が減ることもあります。情報を探す作業はデジタルで短くし、その分、お客様や社員と向き合う。そこまでできて、初めてこの取り組みに意味が生まれるのだと思います。

「うちのような中小企業が」から、「うちでもできる」へ

ーー外部のプロ人材と取り組むのは、今回が初めてだったそうですね。

柳澤:
はい、初めてです。以前は、「うちのような中小企業が、プロにデジタルの相談をするなんておこがましい」という気持ちがありました。セミナーで知識を得ても、私一人が会社へ帰って何ができるのだろう、とも思っていました。

今回、同じような中小企業が多く参加していたことで、「悩んでいるのは、うちだけではない」「うちでも取り組んでよいのだ」と思えました。そして、事務スタッフが課題を自分ごととして動いてくれたからこそ、変化につながったのだと思います。

事務所から整備・営業の現場へ。変化の兆しを会社全体に広げる

ーー最後に、今後の展望を聞かせてください。

柳澤:
まずは、今つくっている仕組みを実際に使える状態にし、社内へ定着させることです。そして、事務スタッフから始まった変化を、次は整備や営業の現場へ広げていきたいと考えています。

若い整備スタッフにも過去の修理履歴や顧客情報を活用してもらい、ベテラン社員の知識を受け継いでほしい。一方的に教わるだけではなく、一人ひとりが自分たちの仕事をより良くする方法を考え、提案できる会社にしていきたいです。

いま進めているデジタル化をきっかけに、「受け身」から「主体的に動く」組織へ変わっていく。その変化を会社全体へ広げ、お客様から「伊田重機に頼んでよかった」と言っていただける会社を目指したいと思います。

ーーこれからの協働日本へ、メッセージをお願いします。

柳澤:
協働日本には、これからも中小企業を盛り上げてほしいと思っています。地域の中小企業が元気になれば、日本全体も強くなっていくはずです。

私たちのような会社でも、社員と一緒にデジタル活用へ踏み出し、会社を変えていける。そのことが、同じように悩んでいる企業へ少しでも伝わればうれしいです。今回の経験が、誰かの「うちでもできるかもしれない」につながればと思っています。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。

柳澤:
ありがとうございました。


この記事の取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」です。

AI・デジタルに強い協働プロがコーチとして入り、社員の方が自分で使えるようになるまで伴走します。デジコーチは、日本全国の地域の中小企業様100社以上にご導入いただいています。製造業、食品、飲食、小売、工務店など、業種はさまざまです。
【デジコーチの】サービス内容を見る


柳澤 有希子/Yukiko Yanagisawa

株式会社伊田重機 代表取締役

大学では美術を専攻。服や着物が好きで、卒業後はアパレルメーカーに就職し、全国各地を飛び回る。
その後、株式会社伊田重機に入社。入社から27年を迎え、2019年に代表取締役に就任。
男性中心の建設機械業界で、自らの思いを伝え、社員一人ひとりの声にも耳を傾ける組織づくりを進めている。

協働日本事業については こちら

VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –

AI・デジタル活用STORY:株式会社サンロード 鈴木友広氏 システム導入を、組織変革の起点に。「全員参加」のデジタル経営へ

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。

【記事サマリー】
奈良県橿原市で、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを企画・開発・製造する株式会社サンロードが抱えていたのは、営業日報と顧客情報が分散し、展示会で得た700枚を超える名刺も手作業で入力しているという課題でした。協働プロとともに営業支援システムや名刺管理・メール配信の仕組みを整えたことで、顧客情報を横断的に確認し、潜在顧客への営業活動につなげられる環境を構築。新規売上も前年から10%を超えて伸びています。さらに、取り組みを担った鈴木友広さんは、2026年4月に新設されたDX推進室の室長に就任。変わったのは業務の進め方だけではありません。社員の中にも、デジタルを使って自ら仕事を変えていこうとする意識が芽生え、全社変革への土台が生まれ始めています。

この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。
デジコーチとは

今回は、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを中心に、衛生対策製品の企画・開発・製造・販売を手がける株式会社サンロード DX推進室 室長の鈴木友広さんにお話を伺いました。

同社は奈良県橿原市に本社を構え、福島県いわき市、中国・青島市にも製造拠点を展開。食品への毛髪混入を防ぐ衛生キャップや、工場内へのほこり、虫、細菌、カビなどの侵入を抑えるフィルターを通じて、食品製造の現場を支えてきました。

2027年には50期を迎える同社が、次の成長に向けて掲げているのが、デジタルやAIを活用した業務と事業の変革です。その第一歩として取り組んだのが、営業情報の一元化と、展示会で生まれた顧客接点の活用でした。

しかし、システムを導入しただけで会社が変わるわけではありません。必要なのは、デジタルを使う人と、社内を動かしていく推進者の存在です。奈良県の「デジタル×経営実践」プログラムを通じて協働日本と出会い、総務部に所属しながらプロジェクトを担った鈴木さん。その後、社内に新設されたDX推進室の室長へ。協働を通じて、何が変わったのでしょうか。

営業支援システムや名刺管理の導入、その裏側で進んだ社員の意識変化、そして全社を巻き込むDXへの展望について、率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明)

食品工場の衛生環境を支える、ものづくり企業

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは、サンロードさんの沿革と現在の事業について教えてください。

鈴木友広氏(以下、鈴木):
はい、よろしくお願いします。

当社は1978年に創業し、食品工場などで使用される衛生用品の企画・開発・製造・販売を行っています。

主力製品は、食品工場で働く方が毛髪混入対策のために着用する衛生キャップと、工場内へのほこりや虫、細菌、カビなどの侵入を防ぐ衛生用フィルターです。この2つのカテゴリーが、売上の大半を占めています。奈良県橿原市に本社と工場があり、福島県いわき市にも国内工場を構えています。国内2拠点で働く従業員は約100名。海外では、中国の青島市にも製造拠点があります。

そのほか、一般のお客様向けのマスクや家庭用フィルターも展開しています。お客様が抱える衛生面の困りごとを的確に捉え、製品として形にしていくことが私たちの仕事です。

ーー食品工場の衛生環境を支える製品が、事業の中心なのですね。

鈴木:
そうですね。特に衛生キャップとフィルターが中心です。衛生キャップの中には、電荷を保持する特徴的な生地を使い、毛髪を吸着して落下を防ぐ製品もあります。フィルターについても、外気からのほこりや虫の侵入を防ぐものや、空調を通じて広がる細菌、カビなどを捕集するものを扱っています。

目立つ製品ではないかもしれませんが、食品工場のクリーンな環境を守るためには欠かせない製品です。

「中小企業だからこそ、取り組まなければ生き残れない」

ーー今回、協働日本と取り組むことになったきっかけを教えてください。

鈴木:
奈良県が実施していた「デジタル×経営実践」という支援事業がきっかけです。社長が事業のチラシを入手して持ち帰り、私に申し込むようにと声をかけていただいたところから始まりました。

社長は以前から、デジタルや生成AI、DXに力を入れていかなければならないという危機感を強く持っていました。大企業であれば、デジタルを専門に扱う部署があり、知見を持った人材もいると思います。一方で、中小企業では専門部署も人材も限られている。当社も生産現場を中心とした会社で、デジタルとはどちらかといえば縁遠い環境でした。

中小企業だからといって何もしなくてもよいとは、私も思えません。デジタルやAIを活用していかなければ、今後は生き残っていけない。その危機感が、経営側にも現場にもありました。

ーーそれまでも、デジタル化に向けた動きはあったのでしょうか。

鈴木:
セミナーに参加して情報を集めることはありました。ただ、具体的な実行まで進められていたわけではありませんでした。

生成AIを新商品開発に活用したい。社内に蓄積された情報やノウハウを整理したい。議事録作成のような日常業務も効率化したい。大きなものから小さなものまで、解決したい課題はいくつもありました。とはいえ、何から着手すればよいのか、どのような手段を選ぶべきなのかが分からない・・。そんな状況でした。

ーー課題は見えているものの、実行までの道筋を描けていなかったのですね。例えばシステム会社ではなく、協働日本のような伴走者を求めたのはなぜでしょうか。

鈴木:
システム会社に相談すると、どうしてもその会社が提供する商品を前提に話が進んでいきます。自分たちが必要なものを、十分に理解したうえで選ぶのであれば問題ありません。ただ、情報収集の段階では、提案された商品に引っ張られてしまうことがありますよね。

私たちが求めていたのは、特定の商品を売る立場ではなく、フラットな視点で課題を整理し、どのような手段が適切なのかを一緒に考えてくれる存在でした。

中小企業では、何を選べばよいのか、どの順番で取り組むべきなのかを判断する知識そのものが不足しています。ツール選定の前段階から相談できることに、協働日本との取り組みの価値を感じました。

ーー今回の協働プロジェクトには、どなたが参加されたのでしょうか。

鈴木:
昨年度のプロジェクトでは、協働プロの横町暢洋さんを中心に伴走していただき、一緒に先山毅さんにもサポートに入っていただきました。横町さんは、大企業でエンジニアやマネジメントを経験されている方です。私自身も前職がエンジニアだったため、考え方や話の進め方に共通する部分がありました。こちらの状況を理解していただきやすく、私にとっても話がかみ合いやすい方だったと思います。

奈良県の支援事業が終了した後も協働日本との取り組みを継続しており、今年度は横町暢洋さんと、新たに黄瀬真理さんに伴走していただいています。

ーー昨年度の横町さんたちとのプロジェクトでは、具体的にどのような課題から着手したのでしょうか。

鈴木:
一つ目は、営業日報と顧客情報の連携です。

営業日報と顧客情報をつなぎ、「探せるデータ」へ

ーー以前の営業日報は、どのように管理されていたのでしょうか。

鈴木:
以前から営業担当者は、Excelを使って日報を記入していました。ただ、日報は週ごとのファイルに分かれており、過去の情報を探すには、一つずつ開いて確認しなければなりません。

直近の出来事は把握できても、「1カ月前に、このお客様とどのような話をしていたか」を振り返るには時間がかかります。管理者にとっても、営業活動や商談の状況を横断的につかみにくい状態でした。

ーー日報は書かれているものの、蓄積された情報を十分に活用できていなかった、と。

鈴木:
その通りです。顧客情報や商談情報を別のデータベースへ入力してもらう方法もあります。しかし、それでは日報との二重入力になり、営業担当者の負担が増えてしまいます。管理者としては情報を整理してほしい。一方、現場に新しい入力作業を増やせば、拒絶反応が起きるかもしれない。そこが難しいところでした。

そこで、営業支援システムとしてkintoneを導入しました。一度情報を入力すれば、日報だけでなく、顧客情報や商談情報としても整理される仕組みです。

現在は、これまでバラバラだった顧客情報や接点情報を横断的に確認できるようになりました。必要な情報をすぐに検索でき、営業担当者同士の情報共有も以前よりスムーズになっています。

単に日報をデジタル化したのではありません。書き残していた情報を、次の営業活動に使えるデータへ変えていった形です。

ーー導入するシステム自体は、協働が始まる前から候補が決まっていたのでしょうか。

鈴木:
ある程度は決まっていました。導入をほぼ決めた段階と、横町さんとの伴走が始まった時期が重なったような形です。

そのため、横町さんには「何を導入するか」だけでなく、ベンダーとの話をどのように進めるのか、導入後にどう活用していくのか、社員にどう働きかければよいのかという部分を相談しました。システムを入れること自体は簡単にできます。ただ、使われなければ意味がありません。むしろ、導入後の方が大切ですよね。

700枚を超える名刺を「次の営業」につなげる

ーーもう一つの大きな課題が、展示会で得た顧客情報の活用だったと伺いました。

鈴木:
当社は年に2回ほど展示会へ出展しています。3日から4日間の展示会で、700枚を超える名刺をいただくこともあります。以前は、その名刺情報を営業担当者が一枚ずつExcelへ入力していました。その後、お礼のメールを個別に送っていたため、かなりの手間がかかります。連絡するまでに時間が空いてしまうこともありました。

そこで、名刺情報を取り込んで管理し、メール配信まで行える仕組みを導入しました。展示会後には、ご来場へのお礼や新製品の案内をまとめて配信しています。

ーー単なる名刺のデータ化ではなく、その後の営業活動までを仕組みにしたのですね。

鈴木:
そうですね。重要なのは、メールを一斉に送れるようになったことだけではありません。開封の有無や製品ページのクリックなど、お客様の反応も確認できるようになりました。

これまでは、お問い合わせがあった段階で初めて、お客様の関心が分かっていました。現在は、問い合わせに至る前の反応を捉え、関心を持っている可能性が高いお客様へ営業からアプローチできます。いわば、潜在顧客の可視化です。

名刺情報を登録するスピードは明らかに上がりました。営業担当者が個別に行っていたお礼や製品案内も仕組み化され、展示会で生まれた接点を継続的に育てる土台が整いつつあります。

ーー協働プロからは、具体的にどのようなアドバイスがあったのでしょうか。

鈴木:
ベンダーとの交渉や方向づけに加えて、社内の皆さんに使ってもらうための動機づけ、働きかけについてアドバイスをいただきました。メール配信についても、どのような内容を、どのくらいのタイミングや頻度で届ければよいのか。そうした運用面まで相談しています。

ツールの機能を知るだけでは、現場での使い方までは決まりません。自社の営業活動にどう組み込むかを一緒に考えていただけたことは大きかったですね。

新規売上は前年から10%超。事業の仕掛けとDXが重なった

ーー仕組みを整えたことで、事業面ではどのような手応えが生まれていますか。

鈴木:
もちろん、今回の施策だけによる成果とは言い切れませんが、ホームページや展示会を通じて接点を持ったお客様からの新規売上は、前年から10%を超えて伸びています。

メール配信を本格的に始めたのは今期に入ってからですので、それによってどれだけ顧客が増えたかという成果は、まだこれから確認していく段階です。ただ、展示会をきっかけに新しいお客様が増えている実感はあります。今後、半年、1年と続けていく中で、メールの開封率やクリック数、新規顧客の獲得件数なども見ていきたいと考えています。

ーー2026年6月には、「FOOMA JAPAN 2026」にも出展されています。展示会では、新しい商品にも力を入れたそうですね。

鈴木:
従来の衛生キャップやフィルターに加えて、食品工場の暑熱環境に対応するアイスベストを紹介しました。食品工場には、油を使う工程など、非常に温度が高くなる現場があります。そこで、体に接する側を冷却し、外側には熱が逃げにくい工夫を施した保冷剤入りのベストを出展しました。

熱中症対策への関心が高まっている時期でもあり、多くの方に注目していただけました。展示会後にも反響があり、注文につながっています。

ーー新商品を打ち出す動きと、展示会後の顧客フォローを改善する動きが、ちょうど重なったわけですね。

鈴木:
そうだと思います。毎回同じ製品を並べるだけでは、新しい注目は生まれません。事業側では新しい商品をつくり、営業側では展示会で得た接点を次につなげる。二つを組み合わせることで、より効果的な活動ができるようになります。

会社としての仕掛けとDXの取り組みが重なったことは、大きかったですね。

総務部からDX推進室へ。取り組みが生んだ新たな役割

ーー今回のプロジェクトを経て、2026年4月にはDX推進室が新設されました。鈴木さんが室長に就任された経緯を教えてください。

鈴木:
2026年3月までは総務部に所属し、人事、労務、経理などの業務を担当しながら、デジタル関連の取り組みも進めていました。

総務の仕事と並行していたため、デジタル化に十分な時間を使えていたわけではありません。片手間という言い方がよいかは分かりませんが、実際にはそのような状態でした。

一方で、社長の中では「もっと力を入れて進めなければならない」という思いが徐々に強くなっていきました。そして3月末、「DX推進室を立ち上げるので、デジタル、生成AI、DXに専念してほしい」と言われたのです。

ーーもともとDX推進室長になることを想定して、プロジェクトに参加していたわけではなかったのですよね。

鈴木:
はい、お恥ずかしながらまったく想定していませんでした。奈良県のプログラムへ参加したときは、総務部の立場で、まずは社内の課題をどうにかしたいという気持ちでした。

ただ、協働日本とのプロジェクトを通じて、実際にシステム導入や社内への働きかけを経験したことは、DX推進室の立ち上げにつながったのだと思います。社長も、その取り組みを見ていたのでしょう。会社として本格的に進めるなら、担当を明確にし、専任に近い形で動かす必要がある。そのような判断だったのだと思います。

ーーシステムが導入されたことに加え、社内にDXを進める役割そのものが生まれた。今回の協働を象徴する変化ですね。

鈴木:
そうですね。ただ、まだ立ち上がったばかりです。本当の意味では、これからだと思っています。

1.5人で始めたDX推進室。小さな成功を積み重ねる

ーー現在は、どのような体制でDXを推進していますか。

鈴木:
DX推進室には、営業や商品開発を担当してきた弊社の佐藤という社員が兼務で加わってくれています。私が1人、佐藤が0.5人。いわば1.5人の体制です。佐藤は、kintoneやメール配信の導入にも当初から関わっており、現在は運用や社内フォローを中心に進めてくれています。

もともとは商品開発を担当していましたが、今ではデジタル関連の仕事の割合がかなり増えています。私の右腕という立場ですね。

ーーDX推進室だけで課題を決めるのではなく、各部門からも意見を集めたそうですね。

鈴木:
はい。各部門のメンバーに、「デジタルを使って解決したいこと」を聞きました。

議事録作成の効率化といった身近な課題から、生成AIを活用した新商品開発まで、幅広い意見が出ています。課題の一覧化はすでに終えており、横町さんにも共有しました。これから優先順位を整理し、取り組むテーマを決めていきます。

ーーすべてを一度に進めるのではなく、優先順位をつけていくと。

鈴木:
そうです。大きな成果だけを目指しても、社員はなかなか変化を実感できません。まずは3カ月に一つ、小さくても目に見える成功事例をつくる。その成果を社内で共有し、次の取り組みにつなげていきたいと思っています。

できることを一つずつ増やし、社内に「デジタルを使えば仕事を変えられる」という実感を広げていく。そこが大切ではないでしょうか。

ツールを入れるのではなく、「使う理由」を共有する

ーー取り組みを始めた当初は、社員の皆さんがシステムを使ってくれるか、不安もあったそうですね。

鈴木:
はい、正直不安だらけでした。システムは、導入しただけではただの箱です。使う人が活用しなければ、何の意味もありません。

当社でも以前、販売システムや生産管理システムを入れ替えたことがありました。受注や売上処理など、業務上必要な機能は使います。ただ、蓄積されたデータを商品開発や顧客開拓に活用する意識までは、十分に広がりませんでした。

今回も、営業支援システムを入れること自体より、現場の皆さんに継続して使ってもらえるかどうかが大きな課題でした。

ーー実際に営業担当の方へ説明したときは、どのような反応でしたか。

鈴木:
それが、思っていたほどの拒絶反応はありませんでした。説明会を実施した際にも、「まずはチャレンジしてみよう」という雰囲気が感じられました。それは、少し安心したところです。

もちろん、全員が同じように活用できているわけではありません。担当者によって使い方にばらつきが出ないよう、今後もフォローが必要だとは感じています。

ただ、何人かの社員から「活用していこう」「自分たちの仕事を変えていこう」という前向きな反応が見られたことは、大きかったと思います。

ーー社員の意識が変わり始めた背景には、経営側からのメッセージもあったのでしょうか。

鈴木:
大前提、社長が繰り返し伝えてきたことが大きいと思います。

会社としては、社員の賃上げを進めていきたい。しかし、賃上げの原資を生み出すには、これまでと同じ仕事の進め方では難しい。業務を効率化して時間を生み出し、より付加価値の高い仕事へ振り向けなければならない、という話です。

朝礼や会議で繰り返し伝える中で、社員にも「会社が賃上げをするためには、自分たちも仕事の進め方を変えなければならない」という意識が少しずつ生まれてきました。

ーーDXを、単なる会社都合の効率化ではなく、自分たちの働き方や処遇にもつながる話として共有したのですね。

鈴木:
そうですね。付加価値の高い仕事をしていかなければ、会社の成長にも賃上げにもつながりません。そのためには、今までと違うやり方を取り入れる必要がある。

デジタル化が、経営側だけの掛け声ではなく、自分たちの働き方や会社の成長につながるテーマとして受け止められ始めた。それが、今回生まれた重要な変化だと思っています。

否定せず、一緒に進む。協働プロが支えた最初の一歩

ーー先ほど横町暢洋さんをご紹介いただきましたが、実際に伴走を受けて、どのような印象を持ちましたか。

鈴木:
横町さんは、大企業でエンジニアやマネジメントを経験されている方です。私も前職がエンジニアだったため、考え方や話の進め方に共通する部分があり、アドバイスを理解しやすかったですね。

システム会社との交渉の進め方、導入時に社員へどのように働きかけるか、メールをどの程度の頻度で配信すればよいか。技術面だけにとどまらず、運用やマネジメントの視点からも助言をいただきました。

ーー技術だけではなく、人や組織をどう動かすかという部分まで支援してもらえたのですね。

鈴木:
そこは大きかったと思います。印象に残っているのは、私たちの取り組みを肯定的に見てくださったことです。自分たちの取り組みが、他社と比べてどの程度進んでいるのか。私たち自身には分かりませんでした。

そうした中で横町さんは、良いところを見つけ、評価しながら次の一歩を示してくださいました。否定的なことを言う方ではありませんし、こちらの状況を受け止めたうえで話してくれます。豊富な知見を持ちながら、同じ目線で伴走してくれる、ありがたい存在でした。

県の支援終了後も、自費で協働を継続

ーー奈良県のプログラム終了後も、自費で協働日本との取り組みを継続されています。継続を決めた理由を教えてください。

鈴木:
昨年度の伴走期間は、実質的には3カ月程度の期間でした。限られた期間でも多くのアドバイスをいただきましたが、本当に成果につなげるには、もう少し長い時間が必要だと感じました。

システムは導入して終わりではありません。実際に使い、成果を確認し、改善を重ね、社内に定着させる。そこまで進めて、ようやく意味が生まれます。

そのため今年度は、自費で協働日本との取り組みを継続し、7月2日に新たなキックオフを行いました。今年度は、横町暢洋さんと黄瀬真理さんに伴走していただいています。

ーー短期のシステム導入支援から、継続的な経営変革の取り組みへ進んだわけですね。

鈴木:
そうですね。長期的には、生成AIを活用した商品開発や、社内ノウハウの継承にも取り組みたいと考えています。

ただし、大きな構想だけを掲げても、社内に定着するとは限りません。まずは3カ月ごとに一つ、小さくても具体的な成功事例をつくる。その成果を社内で共有し、次の取り組みへつなげていく方針です。

短期的な変化と、長期的な成果。その両方を積み重ねながら、デジタル経営を前へ進めていきたいと思っています。

中小企業にこそ、外部プロ人材の力が必要

ーー今回のように、外部のプロ人材とデジタル領域で取り組むのは初めてだったのでしょうか。

鈴木:
デジタルに関しては初めてでした。これまでは、システムを入れるとなれば、複数の会社から説明を受けて選定し、その会社と進める形が中心でした。勉強会や専門家から助言を受けた経験はありますが、フラットな立場から伴走してもらい、デジタル施策を一緒に考える経験はありませんでした。

今回、特定の商品を売る立場ではないプロ人材からアドバイスを受けられたことは、とても有意義だったと思います。

ーー今後、このようなプロ人材との協働は、中小企業の間でも広がっていくと思いますか。

鈴木:
これは、広がっていくと思います。

大企業であれば、専門部署や人材、知識、予算を社内に持っています。しかし、中小企業では、そのすべてが不足していることも珍しくありません。取り組むテーマや導入するシステムが明確に決まっていれば、専門の会社へ依頼できます。難しいのは、その手前です。

何をすべきなのか。どの方法が自社に合っているのか。どの順番で進めればよいのか。そうした判断を、中小企業だけで行うのは簡単ではありません。

中小企業が自社だけでは持てない知見を取り入れ、より適切な判断をしていく。そのために、プロ人材との協働は大きな力になるはずだと感じています。

デジタルを、開発・製造・販売の成長につなげていく

ーーここまでのお話を伺うと、サンロードさんのDXは、まさに始まったばかりなのですね。今後はどのような会社を目指していきたいですか。

鈴木:
当社はこれから、開発、製造、販売など、さまざまな領域でデジタルやAIを活用していきたいと考えています。目指しているのは、単なる業務効率化ではありません。効率化によって生まれた時間を、付加価値の高い仕事や、新しい商品・顧客の創出へ振り向けることです。

2027年度からは50期を迎えます。中期計画では、50期の販売目標として、48期比20%増を掲げています。この目標を実現するためにも、拡販活動に使える時間を増やし、顧客情報を活用しながら、新しい受注につなげていかなければなりません。

ーーそのためにも、一部の担当者だけでなく、全社で取り組むことが重要になりそうですね。

鈴木:
そう思います。一部の担当者だけで進めるのではなく、「やってみる」というチャレンジ精神を持ち、社員みんなで継続して取り組んでいきたいです。

情報を入力することが目的ではありません。システムを導入することも、デジタルという言葉を掲げることも、あくまで手段です。目的は、受注を増やし、会社を成長させ、働く皆さんへ還元していくこと。

その目的を見失わず、デジタルを有意義な手段として活用していきたいと思っています。

ーー最後に、協働日本へのメッセージをお願いします。

鈴木:
はい。中小企業には、社内だけでは解決できない課題が数多くあります。だからこそ、さまざまな専門性を持つ方々の力を借りながら、一つずつ前へ進んでいきたいと思っています。

協働日本には、伴走支援を受けた企業同士が継続してつながれる場もつくっていただけると伺っています。今回の出会いを一度きりにせず、これからも長く支援していただけることを期待しています。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。

鈴木:
ありがとうございました。

 

この記事の取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」です。

AI・デジタルに強い協働プロがコーチとして入り、社員の方が自分で使えるようになるまで伴走します。デジコーチは、日本全国の地域の中小企業様100社以上にご導入いただいています。製造業、食品、飲食、小売、工務店など、業種はさまざまです。
【デジコーチの】サービス内容を見る


鈴木 友広/Tomohiro Suzuki

株式会社サンロード DX推進室 室長

1966年生まれ。
電機メーカーのエンジニアを経て、2015年に株式会社サンロードに入社。
製造部、総務部を経験し、2026年4月より新設のDX推進室室長。

協働日本事業については こちら

VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –

新規事業STORY:株式会社栄電社 川路氏・坂口氏 ― 発売から1年で顧客は7倍、サステナブルな地域資源「CASパワー」商品化の軌跡 ―

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社栄電社の川路氏・坂口氏にお越しいただきました。
株式会社栄電社は鹿児島県に本社を構え、計測・制御・情報通信機器などの分野で幅広く事業を展開しています。
その中で、地元の焼酎産業と密接に関わる中、焼酎製造過程で大量に発生する「焼酎粕」の活用に新たな可能性を見出しました。

インタビューでは、協働日本との取り組みを通じて見えてきた地域資源の価値と、「焼酎粕」を乳酸発酵させた商品「CAS(カス)パワー」の事業展開に向けた思いを語っていただきました。

【本事例のまとめ】

鹿児島県の電気エンジニアリング会社・株式会社栄電社は、焼酎製造の副産物「焼酎粕」を、乳酸発酵させた機能性飼料「CASパワー」として活用することの事業化に挑みました。

焼酎粕の商品化の可能性は見えましたが、営業もマーケティングも未経験だったため、なかなか商品化への道筋が見えてこない・・。

そこで、協働プロとの約2年半の伴走を通じて、ターゲット絞り込みから価格設定・販路開拓までを段階的に構築。発売から1年で顧客数が7倍に達しました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

焼酎を造る過程で生まれる「焼酎粕」

地域資源としての「焼酎粕」プロジェクトの商品化へ

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。

川路 博文氏(以下、川路): よろしくお願いいたします。協働日本との出会いは、2022年9月に県の支援事業に応募したことがきっかけです。事業が無事採択され、協働日本さんによる伴走支援がスタートしました。それから2025年1月までの約2年半にわたり、継続的に支援を受けてきました。

坂口 研三氏(以下、坂口): 弊社は計測機器や制御システムを手掛ける会社ですが、焼酎メーカーさんともお付き合いがあります。その中で、焼酎を造る際に大量に出る「焼酎粕」という副産物の存在を以前から知っていました。

焼酎粕は、蒸留後の液体や固形物が混ざったもので独特の香りや栄養分を多く含みます。従来は家畜の飼料や肥料として利用されてきましたが、需要減少や処理コストの増大により、焼酎メーカーにとっては負担となっているのが現状です。

「毎年大量に出る未利用の焼酎粕を何とか活用できないか」ということで、2017年からこの焼酎粕を活用するプロジェクトを開始しました。2019年には経産省の事業認定を受け本格的に事業化に取り組んでいたのですが、私たちには商品化や販路拡大といったテーマにおける経験がなかったので、ちょうど県の支援事業でアドバイスがもらえるのならと応募しました。

川路: 最初は、「伴走支援」という仕組みについてもあまりピンときていなかったのですが、何度か協働プロとの打ち合わせを重ねていくうちに、弊社の事業にはぴったりの支援の形だと感じるようになりました。

焼酎粕から生まれた「CASパワー」は、生物や植物の成長促進に寄与する機能性飼料

年単位のテストマーケティングと調査を通じて出た成果から、商品化、有償販売のスタートへ

ーー実際にプロジェクトがスタートしてからは、どのように取り組みが進んだのかお聞かせいただけますか?

川路: はい、一番最初は商品化するための課題の洗い出しからスタートしました。商品化の方向性の検討やターゲットの絞り込み、販売方法のアドバイスなど、段階を追って協働プロにアドバイスをいただきながらプロジェクトを進めていきました。
協働チームには、協働日本CSOの藤村昌平さん、横町暢洋さんを始め、2年半の間で様々なプロ人材の皆さんに入っていただきました。

坂口: 商品化の方向性の中では価格設定を決めることや、ターゲットへのアプローチ方法を考えることは特に難しかったですね。これまで私たちは営業やマーケティングといったことを経験したことがなかったので、漠然としていた考えを、協働プロの皆さんとの会話を通じて整理していただきました。

ーープロジェクトを進める中で、テストマーケティングや調査も進めていったのでしょうか?

川路: はい。「CASパワー」は前述の通り、焼酎粕を使った飼料・肥料です。そこで、実際にフィールド調査として、実際に農家の方や魚の養殖業者の方などに「CASパワー」を使っていただき、ターゲットを絞り込んでいきました。初期に試したのは、酪農(乳牛)、魚の養殖における飼料としての活用でした。調査には約1年かかるので、並行して野菜などの肥料として、肉牛の飼料として、など複数のテストを実施しています。

業態や価格感のマッチ度などを鑑みて、現在は魚の養殖、肉牛の育成における飼料としての利用、そして農家さんの作物の植物活性剤としての利用をターゲットに定めています。

ーー1年間とは…検証にはどうしても長い期間がかかるのですね。

川路: はい。どうしても作物の収穫や、実際に各種飼料として利用して出荷できるようになって、サンプルデータをいただき品質にどのように影響が出たかを計測するまでには時間がかかります。例えば、農業利用ではスナップエンドウやカボチャなどの栽培期間中に250倍希釈液を灌水として3回程度使用することで収穫量が増えたり、酪農利用では、乳牛1頭に毎日280mlのCASパワーを給与することで、年間平均で乳量が5.6%増加するという結果が得られています。

こういった成果と、実際の各種作物や乳・牛肉などの販売価格のバランスも鑑みて、「CASパワー」の価格についても決めていきました。

いくつものテストマーケティングを経て、2024年4月からは有償販売をスタート、販売を拡大するフェーズに入っていきました。

実際に飼料としてCASパワーを与え、収量や品質をチェックする

調査結果や受賞を裏付ける、口コミの輪が広がり1年間で顧客は7倍超へ

ーープロジェクトを通じて、具体的にどのような成果や変化がありましたか?

川路: 実際に商品として販売をスタートすることができたことはもちろん、2024年4月の段階では利用者が6事業者だったところから、2025年4月現在では45事業者にご利用いただけるようになりました。

ーー1年間で顧客が7倍以上になったのはすごいインパクトですね。

川路: ありがたいことに、地域の事業者の方同士の口コミで広げていただいていて、運もよかったと感じています。

その他にも、協働日本を通じて多様なネットワークが広がり、様々なところで講演させていただきました。その講演を通じて「CASパワーを試してみたい」というご縁に恵まれることもありましたし、2023年には鹿児島県環境保全活動優秀団体表彰、2024年にはかごしま産業技術賞奨励賞をそれぞれ受賞しました。賞をいただいた時はとても驚きましたが、協働日本の皆さんの後押しもあり、様々な場所で宣伝させていただいたことも影響しているのではないかと思っています。

実際、受賞により県からのお墨付きをいただいた形になり、営業の際にもアピールしやすくなっています。

川路: 実際に伴走支援を受けてみて、自分にとって大きかったことはセッションでさまざまな話を聞いてもらい、それに対してさらに質問をしてもらうことで頭の整理ができたことだと感じています。今の状態を聞いてもらうことで、頭の中できちんと整理をし、ネクストステップについて的確にアドバイスをしていただくことの繰り返しです。

聞き役になっていただけたことも本当にありがたく、「今週はどうでしたか?この前話していた件はどうなりましたか?」など、進捗を報告しなくてはという意識が働くので、セッションに合わせてスケジュールを組んでいくようになったのもメリットでした。
また、協働プロとのやりとりを通じて坂口と目線や意識のすり合わせができて、社内のコミュニケーションにも良い影響があったように感じますね。

坂口: 我々は営業については素人です。協働プロとのセッションを通じて、プロ人材の目の付け所を学び、アドバイスをいただいて、営業の一連の流れを具体的に知ることができました。まだまだ完全に実現していくところまでは届いていないかもしれませんが、それでもこれから何をすれば良いのか、目標や計画は立ったように思います。

ーー協働プロとのやりとりの中で印象的だったことはありますか?

坂口: 約3年間、いつも「ものが良い、筋がいい」、「CASパワー自体の取り組みの方向性がいい」と言っていただいていました。「褒めて育てる」を体現していただいていたと思います。時にもどかしく感じることもあったかもしれませんが、励まされながら育てていただいたという印象です。

川路: 支援してくれた協働プロの皆さん自身が「CASパワー」のファンになってくださって、いつも褒めていただいていたこと自体が私たちの自信に繋がっていましたね。

坂口: 一昨年30t製造した「CASパワー」ですが、昨年は50t、そして今年は100tの製造販売を目指しています。協働日本の皆さんの期待に応え、少しでも売れる商品にしていきたいです。

協働日本でつながる活気。エネルギーを集結させたような場作りが魅力

ーー社外のプロ人材と実際にプロジェクトに取り組んでみて、どのようなことを感じたかお伺いできますか?

川路: 副業的な働き方があることは知っていましたし、コンサルティングを受けたこともありましたが、協働日本の伴走支援という形は初めて知りました。

先ほどもお話ししましたが、協働日本の伴走支援では、プロ人材が「聞き役」にもなってくれて、一緒に取り組めることが大きな特徴だと感じました。外に出てお客さんに聞いた話を協働プロの皆さんに伝え、整理しながら「この方向でいこう」など方針を一緒に決めていきました。時間はすごくかかりましたが、その時間にもじっくり付き合っていただけたことが良かった。私たちの「CASパワー」の事業には特に伴走支援が向いていたのだと思います。

坂口: 弊社と同じように、商品開発をしていて、販促計画をこれから作っていく、切り開いていく必要がある企業の方には、伴走支援の形が合っているのではないかと思います。

ーーありがとうございます。最後に協働日本に一言メッセージをお願いします!

坂口: 協働日本の皆さんには、伴走支援だけでなく、同じようにプロジェクトに取り組む方達と交流できるイベントなどの機会を作っていただくなど、感謝していることがたくさんあります。

事業を始められる方、進めておられる方はやはり元気な方が多い印象があります。その中でも特に協働日本のイベントに集まる方達の活気はすごく、皆のエネルギーを集結させているような場になっていました。

我々も、そういった機会に度々パワーをもらってきました。これから頑張ろうとする人も、そういう強いエネルギーに助けられることがあるのではないかと思っています。
これからもイベントには参加していきたいですし、若い人の力を見てもっと勉強していきたいと思っています。

川路: 協働日本の皆さんには、今後もよき相談相手として、また色々と相談に乗ってもらいたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします!

ーー本日はありがとうございました!


川路 博文 / Hirofumi Kawaji

㈲栄電エンジニアリング 取締役本部長

鹿児島市出身。コンピュータソフト開発、ビジネス専門学校教員を経て、㈱栄電社 バイオ環境事業部に入社。
排水処理における窒素除去装置の開発をはじめ、環境技術分野の研究・開発に携わっている。

坂口 研三 / Kenzo Sakaguchi

株式会社栄電社 バイオ環境グループ顧問

1954年生まれ、鹿児島市水道局で主に上下水道の水質管理に従事。
その後、(株)栄電社バイオ環境グループで水処理装置や焼酎粕の有効利用技術の開発を担当。
スポーツ大好き。若い頃は野球やマラソンに親しみ、50歳を過ぎてからはヨガで心身を鍛えています。

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


品質保証STORY:株式会社ぶどうの森 折坂啓介氏・加藤高聖氏 – “安全とおいしさ”を世界へ。品質保証のプロ×AIによる国際規格認証取得の最短ルート-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、石川県金沢市でレストランや洋菓子ブランドを手がける株式会社ぶどうの森の折坂啓介氏・加藤高聖氏にお越しいただきました。
「農業からレストランまで」を理念に、40年以上にわたり地域と共に歩んできたぶどうの森。今回の協働プロジェクトでは、海外進出のために必要な国際規格FSSC22000の取得という挑戦的なテーマに取り組んでいます。

プロジェクトを通じて得られた変化や成果、そしてこれからの展望について、お二人に語っていただきました。

【本記事のまとめ】

海外展開への壁、国際規格の高いハードル、限られた人手。石川県金沢市でレストランと洋菓子ブランドを手がける株式会社ぶどうの森は、食品安全の国際規格FSSC22000の取得に挑みました。

品質保証専門の協働プロの知見とAI活用を組み合わせ、通常3ヶ月かかる約30種類の文書を1ヶ月で完成。「ノウハウが社内に残る」という伴走の本質を実感しながら、一般的に1年半以上かかるとされる認証取得を1年で申請まで到達しました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

折坂 啓介氏

海外に、ぶどうの森の味と安全を届けたい

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、今回の協働プロジェクトに取り組むに至った背景を教えてください。

折坂 啓介 氏(以下、折坂): よろしくお願いいたします。
ぶどうの森は、もともと地域の農産物を活かしたレストラン経営やスイーツ製造を軸に事業を展開してきました。

昨年ドバイの展示会に出展した際に、現地で一緒にビジネスをやろうと言ってくれる人と出会い、海外展開を決意しました。
とはいえ、営業拠点だけでなく現地に加工工場も設ける必要があるなど、乗り越えるべきハードルはいくつもありました。当時の私たちは、食品安全に関する国際基準についての知見や体制が整っておらず、できる限り早い段階で「FSSC22000」の取得を目指すことにしたのです。

ただし、品質管理だけでなくマネジメントや文書化の仕組みも問われるこの認証を、限られた人手とリソースで取得していくのは容易ではありません。他社の話を聞いても、コンサルティング費用だけで非常に高額で、短くても1年半かかるというのが一般的でした。

ーーなるほど。かなり挑戦的なテーマだったのですね。

加藤 高聖氏(以下、加藤): はい。どうやって取り組もうかと考えていたのですが、石川県主催の複業人材活用セミナーを通じて協働日本代表の村松さんのお話を伺ったことを思い出し、相談してみることにしました。すると、ちょうど協働プロの中にハウス食品で国際規格FSSC22000の認証取得を担当した方がいらっしゃるということで紹介いただき、伴走支援がスタートしました。

実は最初は、「伴走支援」という座組みの中で、どのようにプロジェクトが進んでいくのか少し不安に思ったこともあったんです。

折坂:宿題を出されて、フィードバックという名のダメ出しだけ受けるような進み方だと、メンバーにとっては辛さだけが残り、ノウハウも身につかないのではないか……そんな懸念もありましたね。

でも、実際に始めてみるとそれは杞憂でした。協働日本の協働プロは、知識や経験をもとに問いを立てたり、アドバイスや資料作成のヒントをくれたりしながら、私たちに寄り添って伴走してくれたのです。

ぶどうの森のメンバーも、実際に手を動かしてともに取り組みます。
「お金を払っても何も残らないのでは?」という社内の懸念もありましたが、ノウハウが確実に残る、協働日本独自の伴走支援の形は、私たちにとって非常に合っていたと感じています。

出展したドバイの展示会の様子

経験者の知見とリアルな視点 × AI活用で、認証取得準備を最短で実行

ーー実際にプロジェクトがスタートしてからは、どのような取り組みが進んだのかお聞かせいただけますか?

加藤: FSSC取得に向け、2024年5月にプロジェクトをキックオフしました。
ハウス食品の山本竜太さん、横町暢洋さん、そして協働サポーターの河野瑠美さんに入っていただきました。

弊社までお越しいただいたキックオフミーティングでは山本さんから、「なぜ認証取得が必要なのか」「それに挑む意義とは」についてストレートなお話がありました。そのメッセージはメンバーにもしっかり届き、目線を合わせてスタートを切ることができました。社長にも山本さんから直接意義を伝えていただいたので、社内全体で認識が揃ったのも大きかったです。

折坂:お菓子の工場なので、食品安全の仕組みはある程度整っていましたが、国際基準とのギャップを可視化することから始まりました。

このギャップを埋めるために必要なことを山本さんのご経験からご指摘いただくのですが、「優しく叱咤していただいた」という表現の方が正しいかもしれません。

山本さんはとても穏やかな方ですが、私たちにも分かりやすい言葉を使って、厳しくも本質的な指摘をしてくださいました。これは、現役の外部プロ人材だからこそできることだと感じます。
これから皆さんも世界で戦うんですよね?と言うスタンスで現実的な話をしていただけるので、納得感も大きいんです。

加藤: 工場現場も実際に見ていただきましたし、実際に現場でやっていることや、使っている帳票類も見てもらっているので、今どのステージにいるかも山本さんは経験上わかってくださっています。だからこそ、階段を一歩ずつ上がっていくためにすべきことをわかりやすく表現してくださいました。

また、できていないことの指摘だけでなく、「できていること」の指摘をしてくださったのもありがたかったですね。どうしても、認証取得のための基準文書の書きぶりだけでは、実際の実務上どこまで必要なのか分からないので、リアルな経験と知見を共有いただいたことで、時間を無駄に使わずにプロジェクトが進んでいったと実感しています。

現場も実際に見ていただき、使用している帳票類なども確認してもらいました。今どの段階にあるのかを把握したうえで、次に進むべきステップを丁寧に説明してくださるんです。
「ここまでできていれば大丈夫」と、現場感覚を持った助言があったからこそ、無駄なく進めることができました。

ーーなるべく早く認証取得を進めることが命題だったのですよね。先ほどのお話では、認証取得まで短くて1年半ほどかかりそうだということでしたが、実際にはどのくらいの時間をかけて取り組まれたのでしょうか。

加藤: 結論から申し上げると、おかげさまで、実際にはキックオフから1年かからず申請まで完了しています。山本さんの知見に加え、AI活用のプロである横町さんの力を借りて、ChatGPTを使った文書作成を効率化できたのも大きな要因です。

これまで、認証取得のために必要な文書を一から作成するには膨大な時間と労力がかかっていましたが、AIを導入することで大幅に効率化されました。
申請のための管理文書は、既に規格イメージがあるため、出来上がりイメージを読み込ませて、弊社で活用できるようにカスタマイズしていきました。横町さんと連携してAI活用によってドキュメントを作成し、アウトプットの内容を山本さんに見ていただきフィードバックをいただきブラッシュアップしていく、というサイクルを繰り返していきました。

AIを本格的に使ったのは初めてでしたが、結果的にとても良い経験でした。スピードも飛躍的に上がり、協働プロの皆さんからもたくさん褒めていただきました(笑)。

本来は3ヶ月かかる見込みだった約30種類の文書を、1ヶ月で完成させることができました。

日々、認証取得に向けたコミュニケーションを密に行っている

想定以上の短期間で認証取得へ。ノウハウが残るだけでなく、メンバーの成長も大きな成果に

ーープロジェクトを通じて、具体的にどのような成果や変化がありましたか?

加藤: 一番の成果はやはり、FSSC22000の認証取得準備を、予定していたよりも半年以上前倒しで実現できたことです。

5月にキックオフしたプロジェクトで、認証機関へのドキュメント提出は2月末に完了。4月に一次審査を受け、指摘に対する是正案を同月中に提出。6月に最終審査、8月には正式な認証取得というスケジュールで進んでいます。

折坂: 当初から「社内にノウハウが残ること」を期待していましたが、それ以上にメンバーに確実な知見が蓄積されたと感じています。
プロジェクトには私たち以外にも数名が参加していたのですが、そのうちの1人がどんどんこのプロジェクトにのめり込んでいって、今では私たち以上にこのテーマをリードしてくれています。

最初は私たちの指示で動いていましたが、途中からは「こういうことですよね?」と自ら確認し、「こうしてください」と提案までしてくれるようになりました。目に見える成長がとても嬉しかったですね。

加藤:品質保証、品質管理に対して、自らが「やらなくてはいけない」と自分事化されたように思います。ものすごく強い命題として感じているようですね。

最初は“手伝ってもらえれば”という気持ちでアサインしたのですが、今では自主的にプロジェクトを進めてくれるようになり、本当に頼もしい存在になりました。

そして、この認証取得のプロジェクトと並行して、ドバイ進出も正式に決定しました。現在は現地での工場建設に向けて準備を進めているところです。協働日本との取り組みもさらに加速していきます!

現場目線を持ったプロの伴走で、実感と納得感が得られる。何でも相談できる関係性が魅力

ーー社外のプロ人材と実際にプロジェクトに取り組んでみて、どのようなことを感じたかお伺いできますか?

折坂:やはり一番の魅力は、現役の方が伴走してくださるという点です。

「今、どんな課題を抱え、どう乗り越えているのか」というリアルな話を聞けることで、「こんな大きな企業でもこうした課題があるんだ」と知ることができ、自分たちの仕事にも自信が持てました。

一般的なコンサルティング会社だと、知識は豊富でも現場感のない方もいます。その点、事業会社で第一線で活躍するプロ人材による“リアルタイムの知見”は、非常に大きな価値だと感じています。

加藤:それに、協働プロの皆さんは本当に人柄が素晴らしいんです。自慢話や武勇伝を語るようなことも一切なく、壁をつくらずに接してくれます。

たとえば「俺のときはこうだった」といった上から目線の話ばかりだったら、私たちのような中小企業は気後れしてしまうかもしれませんが、協働プロの皆さんはあくまで同じ目線で向き合ってくれる。だからこそ自然体で、正直に何でも相談することができました。

あと、費用感は圧倒的にリーズナブルだと感じました。リーズナブルだからお願いした訳ではありませんが、大企業の事業部長クラスの方がチームで伴走支援に入ってくださり、これだけの支援を受けられることを考えると、非常に価値の大きな投資だと感じています。

このスキームは本当に素晴らしいと思いますし、あまり人に教えたくないなと思うほどです。(笑)

ーーありがとうございます。最後に協働日本に一言メッセージをお願いします!

加藤: おかげさまで、認証取得のプロジェクトは一段落しました。今期も海外展開の協働プロジェクトをお願いしながら、もう一つ、自社にとって非常に重要なテーマでも協働をお願しています。

マーケティングやコンセプト設計、営業の仕組みづくりなど、新たな挑戦が待っています。協働プロにはさまざまな人材がいらっしゃるので、話をしながら新しいつながりが広がっていくことが楽しみです。

折坂: 協働プロのマッチングは本当に絶妙です。村松さんに相談すると、すぐに「そのテーマにとても合う人がいます!」と人選が始まるんですよ。

新しいプロジェクトが始まるときにも、弊社の情報はある程度共有されているので、最初からギアがかかった状態で伴走を始めてもらえるのもありがたいです。

もちろん、合う・合わないはあるかもしれませんが、一度一緒に取り組めば、どんな会社なのかを理解していただけるので、次の案件も相談しやすい。そんな関係性が本当にありがたいですね。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ーーありがとうございました!


折坂 啓介 / Keisuke Orisaka

株式会社ぶどうの森 食品事業部 事業部長

加藤 高聖 / Takamasa Kato

株式会社ぶどうの森 品質保証部 部長

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


海外マーケティングSTORY:株式会社白山 金原氏 坪本氏 -AI活用のPULL型営業ツールの構築で成約獲得。世界シェアNo.1への挑戦-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社白山の金原 竜生氏、坪本恵理奈氏にお越しいただきました。

株式会社白山は、1947年に創業した通信部品メーカーです。黒電話を雷から守る「保安器」の製造からスタートし、現在では光通信に欠かせない光コネクタ部品を手掛ける企業へと成長。光コネクタ部品では世界シェア2位を誇る企業です。

AIを活用し、記事作成・トラッキング・ペルソナの可視化までを可能にする標準プロンプトを構築。SNS発信を、従来の情報提供から“営業を引き寄せるコンテンツ”へと進化させる取り組みに挑戦しています。

今回のインタビューでは、協働日本との取り組みで得た変化、組織としての意識の変化、今後の展望について、率直に語っていただきました。

【本事例のまとめ】

発信業務が属人化しており、時間がかかっていたSNS投稿記事作成。石川県金沢市の光コネクタ部品メーカー・株式会社白山は、海外顧客へのLinkedIn発信を仕組み化する挑戦に取り組みました。

協働プロチームの伴走を通じて、AI活用のプロンプトを共同構築し、半日かかっていた記事作成を1〜2時間に短縮。不定期だった発信が週2回のペースで継続できるようになりました。

「発信したいから学ぶ」という意識の変化が社内にも広がり、LinkedInは海外大手の成約獲得につながる営業ツールへと育ちました。

この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。

デジコーチとは

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

属人化していた業務を、仕組み化へ。未経験メンバーとの挑戦

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いや、プロジェクトが始まったきっかけについて教えてください。

金原竜生氏(以下、金原): よろしくお願いいたします。

坪本恵理奈氏(以下、坪本): よろしくお願いいたします。

金原: 当社は1947年に創業し、当初は”黒電話”の雷対策用「保安器」の製造を行っていました。そこから時代が進む中で、現在では光データセンター向けの光コネクタ部品「MTフェルール」などの製造が主力事業になっています。

そんな当社が協働日本と出会ったきっかけは、プライベートの知人であった山岸製作所の山岸社長からのご紹介でした。複業人材の活用により「面白いことをやっている」という話を聞いて興味を持ち、ちょうど協働日本代表の村松さんのセミナーがあるので来てみないか?とお誘いいただいたため、すぐに参加を決めました。
実際にセミナーでお話を伺うと、非常に興味深い仕組みだと感じ、ぜひ自社でも何らかの活用ができないかと考えていました。

それから1年ほど経ち、2024年の11月頃に私の所属するグローバルマーケティング室に坪本がジョインしました。これまでマーケティングは私が一人で担当しており、仕事量も多く属人化していたため、業務の仕組み化・体系化が急務だと感じていました。

これを機に外部人材に入ってもらうことでチームとして一緒に学びながら業務を進めていけそうだと感じて、改めて村松さんにご連絡させていただき、協働が始まりました。

ーーずっと活用を検討いただいていたのですね。

金原: ちょうど、石川県の「令和6年度プロフェッショナル人材確保支援事業」で、デジコーチの伴走支援の募集が始まったのもいい機会でした。

以前から「Linkedin」などのSNSを使って企業の情報発信をしていたのですが、前述の通り私が一人で取り組んでいましたし、海外出張も多かったこともあり継続的な発信を続けることが難しく、「仕組み化して継続的にやっていきたい」という思いがありました。その頃、会社HPの方のコンテンツ記事の下書きをAIで作るということも試してみていて、時短になったという肌感があり、SNSでの情報発信とデジコーチのコンセプトも親和性が高いだろうと感じていました。

そういった背景から、メンバーが増えるタイミングに合わせ、デジコーチでAIを活用したLinkedinでの情報発信を進めていくことになりました。


半日かかっていた記事作成が、1〜2時間に短縮。顧客に響く記事作成を実現。

ーー実際に協働プロジェクトが始まってからのお取り組みについても教えてください。

金原: はい。協働プロとしては、横町暢洋さん、松本亜也さんに入っていただいています。

元々私が発信を担当していた頃も、0ベースで記事の内容を考えていたので記事作成に時間がかかり、個人の動きとしても限界を迎えていたのが正直なところです。ましてや坪本は他業界からの転職ということもあり、全く知識がないところからのスタートだったので、もっと苦労をしそうだということは想定できていました。

ーー確かに、未経験の方が製品の紹介記事を書くのは難易度が高そうですね。

坪本: 私はアパレル業界からの転職で、金原の言う通り全くの未経験からのスタートだったので、当初とても不安に思う部分もありました。
そこで、デジコーチのお二人には、 Linkedinでの投稿作成のためのプロンプトなどを一緒に構築していただくことで、私のように業界や製品知識のないメンバーでも、記事を作ることができるような仕組み化を目指しました。

現在では、Linkedinでの投稿作成の際にHPに投稿しているコンテンツ記事をCopilotで要約し、記事の形にしていっています。Linkedinの記事は英語で投稿しているので翻訳にもAIを使っています。AIを活用することで、記事作成から翻訳、内容の確認という一連の流れを1〜2時間の作業で行うことができています。

もしも自力で1から記事作成するとしたら3〜4時間はかかると思いますし、当初であれば半日〜丸1日かかっていたかもしれません。
AIを通してできた記事は目視で確認するのですが、「製品名を間違えていないか」など軽微なチェックがほとんどでポイントも明確なので安心して取り組めていて、とても感謝しています。

金原:投稿サイクルも、最初は2~4時間かかっていた作業が、今では1~2時間に短縮。不定期だった投稿も週2回ペースで継続できるようになり、「発信したいから学ぶ」意識へと大きく変化しました。アウトプットを前提としたインプット姿勢も育まれ、社内にもよい影響を与えてくれています。

ーーなるほど。今の形になるまで、試行錯誤はされたのでしょうか。

坪本: そうですね。最初はプロトタイプとしてお手本のプロンプトを組んでいただき、精度を上げるために一緒に色々試していきました。元々のコンテンツから、発信する記事の形に変えるにあたって、必要な情報や追加したいワードなどを入れてブラッシュアップしていったことで、格段に作りやすくなってきています。

私は前職ではAIを活用する機会もなかったので、この取り組みで初めてAIを活用しました。未経験から製品紹介のLinkedin投稿をするというミッションの中でマーケティングやAIの知識がある方と一緒にやることで、スムーズに取り組むことができたという実感があります。

ただ記事作成の時間短縮ができているだけでなく、未経験者の私が自分で1から勉強するよりも、今のクオリティの成果物を出せるようになるまでの時間自体が短縮できたのではないかと思っています。

金原: また、記事の発信後、トラッキング、データ収集や分析から、ペルソナを可視化するところまでも協働プロに協力いただき、Copilotを活用して効率的な発信が可能になっていきました。


仕組み化による成果が続々。問い合わせ・成約にも直結

ーープロジェクトを通じて出た成果や変化についても教えてください。

金原:デジコーチで伴走していただき3ヶ月という期間の中で、やはり大きかったのは「仕組み」として発信を続けられるようになったことです。これまで200文字+写真というボリュームだった投稿が、600文字+写真という形にかわり、製品の情報も密になってコンスタントに発信することができるようになりました。

インプレッションや反応率は数値として見えるため、改善の効果も目に見えやすいです。実際、Linkedinのフォロワーは3ヶ月間で20%増、投稿を始めた初月からインプレッションが約5倍、リアクションは9倍に増え、アメリカでの展示会にも投稿がきっかけでブースを訪れてくださった方もいらっしゃいました。

さらに2025年春からは新たな年間契約体制へ移行し、取り組みは一層加速しています。グローバル展開に向けたマーケティング支援も本格化し、協働日本さんとも長期的な伴走支援を開始しています。


金原:実際に記事を起点とした問い合わせから、成約につながるケースも生まれており、手応えを感じています。AIツールや外部プロとの連携により、これまで属人的だった情報発信が「高品質な営業資産」へと変わりつつあり、今後もこの体制を継続・拡張していく予定です。

成果も出ており、2024年12月~2025年2月のわずか3ヶ月間で、欧州で550万円の成約1件、試作依頼5件(欧州・北米・南米)、問い合わせ8件を獲得。その多くがLinkedin投稿を起点とする成果であり、グローバルへの広がりを力強く後押ししています。

最近では、GAFAMクラスの世界トップクラスのグローバル企業からも問い合わせをいただくことが出てきており、単なるSNS運用支援にとどまらず、グローバル市場に通用するLinkedinマーケティング戦略を協働日本と共に構築しつつあります。

現在では欧州・北米・南米を中心に、大手グローバル企業からの反応も急増しており、光コネクタ部品での世界シェア1位獲得に向けて引き続き取り組みを進めていきたいと思っています。

これからの挑戦。WEB活用、組織力強化へ

ーー今後の展望についても教えてください。

金原: はい。これからは、WEBを使った新規取引の獲得をさらに自動化していきたいと考えています。

AIが得意な部分はAIに任せつつ、営業・マーケティングのメンバーが、新規や既存のお客様との商談など“人にしかできない価値”に時間をかけられる体制をつくっていきたいです。

そのために、Salesforceを導入して、ナレッジや案件情報をきちんと共有できる仕組みを作ろうとしています。
あわせて、WEBアクセスの分析も進めて、そこから市場の反応を素早く営業にフィードバックできるようにする予定です。

また、LinkedInを起点にしたターゲティング広告や、海外展示会への出展も本格的に進めるつもりです。 オンラインとオフラインの両方から、グローバル市場へのアプローチを強化していきます。

さらに、営業やマーケティングのチームメンバーの知識面も底上げしていきたいです。
単なる情報発信だけでなく、より戦略的な市場開拓活動ができる組織に成長させていきたいですね。

ーーありがとうございます!

「伴走者」として支えてくれる存在

ーー今回社外プロ人材との取り組みを通じて、率直にどのように感じられましたか?

金原:白山として、社外のプロ人材を活用するのは初めてでしたが、 私自身もプロボノで他社の支援をしているので、はじめから協働日本の仕組みはイメージがつきやすかったです。

複業人材全般というよりも「協働日本の協働プロ」についての印象ですが、本当にアグレッシブで熱意がある。そのおかげで我々が程よく緊張感を持ち、心地よいプレッシャーを与えられて頑張れているという実感があります。

坪本: 私も、先ほどお話しした通り未経験からこの業務、プロジェクトに携わることになったので不安もありましたが。1から全部教えていただけたことを本当にありがたいと思っています。

金原が言う通り、協働プロの熱量がすごく高いので、「自分もやらなければ」と言う思いを持たせてもらえる存在です。「こうなったらいいな」というものも「それやれそうですよ!」と言ってくださるので、自分ではイメージ出来ない部分があっても「できるのかも」と思えるようになっているという自分の変化も感じます。

ーー協働プロとの対話の中で、前向きに取り組めそうだと感じていただけるようになっているんですね。最後に協働日本へ一言メッセージをお願いいたします。

金原:協働プロの皆さんは、「指導する人」ではなく「伴走者」として関わってくださいました。結構特殊な関係性だと感じていて、お願いしている立場ではあるけれど、先生でもなく、ゴールに向かって一緒に走っている仲間という感覚です。
このスタンスがとてもありがたかったですね。

プロジェクトに全然関係ないことも含め、会社で何か成果が出たら嬉しくてすぐ共有してしまうくらい、よくコミュニケーションを取らせていただいていますし、「こんなことができたら面白いんじゃないか?」という思いつきも気軽にお話できるんです。

本当に心理的安全性が高く、些細なことでも相談でき、「やってみよう!」と実現に向けて導いていただけることも、プロジェクトを継続していく上でとても重要だと思っています。
県の事業での伴走支援は一旦区切りを迎えていますが、これからも継続して伴走支援をお願いすることにしています。

これからも、このつながりを大切にしながら、次の挑戦にも前向きに取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

白山はこれからも、世界トップを目指す覚悟を持って挑戦を続けていきます。そして、協働プロたちもまた、単なる支援者ではなく、白山と同じ志で「世界No.1」を本気で目指す仲間として伴走してもらいたいと思っています。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!

金原: ありがとうございました。

※この記事の取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」です。

AI・デジタルに強い協働プロがコーチとして入り、社員の方が自分で使えるようになるまで伴走します。デジコーチは、日本全国の地域の中小企業様100社以上にご導入いただいています。製造業、食品、飲食、小売、工務店など、業種はさまざまです。

【デジコーチの】サービス内容を見る


金原 竜生 / Tatsuki Kimbara


株式会社白山(2021年2月入社)
グローバルマーケティング室 室長
1988年愛知県生まれ。家族4名(子ども2人)

#営業 #マーケティング #英語 #ドイツ語 #中国語
#スペイン語 #知的財産管理技能士 #海外渡航(32ヶ国)

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


人と組織STORY:有限会社鹿児島ラーメン 西 洋平 氏 -DX化と組織開発に取り組み、成功循環モデルで利益目標達成へ-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、有限会社鹿児島ラーメンの代表取締役西 洋平氏にお越しいただきました。

鹿児島ラーメンは1960年に創業し、鹿児島県内で4店舗を運営する老舗のラーメン店です。みよし家の屋号で親しまれ、代々受け継がれた伝統の味を守りながらも、EC事業や卸売など店舗外での展開にも挑戦しています。

3代目として事業を承継した西氏。組織運営の面で新たな課題に直面し、協働日本とともに組織改革に取り組むことを決意したそうです。

インタビューでは、協働プロジェクトを通じて得られた気づきや成果、今後の展望についてお話を伺いました。

【本事例のまとめ】

現場に届かない指示、仕組みより人の頑張りで回していた組織。鹿児島県で4店舗を運営する老舗ラーメン店・有限会社鹿児島ラーメンは、3代目として事業を承継した西氏が組織改革に挑みました。

協働プロチームの伴走を通じて、数値管理の仕組みと、現場の声を拾う店舗ミーティングを同時に整備。毎月10%以上あった利益目標との乖離が取り組み開始から3ヶ月で大幅に改善しました。

現場発の新メニューが1,300円の高単価でいきなり人気商品となるなど、スタッフが自ら考えて動く組織の土台が育ちました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)


強みを磨き、飲食業の常識を覆すような新価値を生み出したかった

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。

西 洋平氏(以下、西): よろしくお願いいたします。

鹿児島県内の飲食業界のネットワークがきっかけです。出水田食堂の出水田さんから「面白い人たちが事業者さんの支援をしているよ」と紹介していただきました。

出水田食堂さんが、県の事業で協働日本とユニークな取り組みをしていることはSNSなどを通じて知っていたので、最初は軽い気持ちでお話を聞いていたんですが、協働日本代表の村松さんと何度かお話しするうちに、今まさに向き合っている課題に、協働日本さんの伴走支援がピッタリはまるんじゃないかと思うようになりました。

ーー最初は、協働日本の取り組みに対してどのような印象をお持ちだったのでしょうか?

西: 協働日本が鹿児島県と取り組んでいる事業は「新産業創出」というテーマだと聞いていたので、いわゆる0→1の新規事業に取り組むというイメージを持っていたので、正直なところ、最初は『うちには関係ない話かな』と感じていたんです。
しかし、会話の中で「新産業」というのは単にゼロから新しい事業を立ち上げることではなく、今あるビジネスを時代に合わせて進化させることも含まれると分かったんです。

それならば、鹿児島ラーメンでも、脱アナログ・DXや、強みをフォーカスするためにアウトソーシングなどに取り組むことで、今までの飲食業の常識を覆す新たな価値を生み出せるのではないかと思うようになりました。

さらに、協働プロジェクトのテーマは協働チームの中で話し合いながら設定していけると聞き、躊躇しているよりもまずは、挑戦してみたいと思いました。今年度も募集されていた県の支援事業の仕組みを通じて取り組みがスタートしました。

見えてきた「組織の土台」を強化する必要性

ーー実際にプロジェクトが始まってからは、どのような取り組みを進めているのでしょうか?

西: 協働日本の協働プロとして藤村昌平さん、横町暢洋さん、花澤雄一さん、協働サポーターとして先山毅さんに伴走していただいています。

取り組みを始めた当初は、業務のスリム化やオペレーションの見直しをテーマにしていました。しかし実際にプロジェクトが進むにつれて、根本的な課題である「組織としての基盤が整いきっていない」ことが浮き彫りとなり、気がつくと、取り組みの方向性も自然と変わっていったんですよね。

ーー「組織としての基盤」とは、例えばどのような課題感があったのでしょうか?

西: 例えば、私が現場に指示を出しても現場に指示が伝わりきらず、「聞いていなかった」と言ってスタッフが行動に移せていなかったことがありました。せっかく新たな掲示物を作っても見られずに終わってしまっていたりと、情報伝達の仕組みがうまく機能していませんでした。そういった課題をふまえて、業務のスリム化やオペレーションの見直しに取り組み、組織としての情報共有レベルを上げていきたいと考えていたのです。

取り組みがスタートし、協働日本の協働プロの藤村さんへさっそく現状を踏まえて相談したところ、「レベルアップ以前に、まずは組織の土台づくりに改めて向き合い直すべきではないか」というご指摘をいただいたんです。情報伝達の具体的なハウツーを学んで導入しようと思って質問していただけに、その返答には、正直驚かされました。


ただ思い返してみると確かに、組織としての土台が整っていない状態でルールや指示を通そうとすると、どうしても昔ながらのトップダウン経営になってしまいますよね。
今一度、組織としてのチェックポイントや管理体制など、改善のための受け皿となる基礎を作り、その上で再構築やスリム化の議論を進めていく必要があることに気づく機会になりました。最終的には、組織力強化とオペレーションの見直し、この2つに絞って取り組むことになりました。

ーーなるほど。具体的なお取り組みについてもお伺いできますか?

西: まずは、管理業務の見直しに着手しました。課題管理にはNotionを、数値管理にはスプレッドシートをそれぞれ導入しています。

これまでは店舗ごとにLINEなどのメッセンジャーアプリで数値報告を行っていましたが、日次の売上やFLコスト(食材費+人件費)をスプレッドシートで可視化できるようにと、協働日本の中でも特にデジタル活用に強い協働プロの横町さんにサポートいただきました。その結果、店舗ごとの状況をリアルタイムで把握できるようになり、業績改善に向けた具体的なアクションを取りやすくなっています。

また同時に、現場の声を拾う仕組みづくりにも取り組みました。店舗ミーティングを導入し、トップダウンではなく現場の意見を反映できる環境を整備。これにより、店舗ごとの課題がより明確になり、スタッフ自身が改善に向けて自ら考える機会も増え、組織力の強化が進んでいます。

現場の声を丁寧に拾っていく中で、スタッフ主導でお客様アンケートも実施されました。そこから誕生した新メニューは、1,300円という高単価にもかかわらず、いきなり人気商品となり、売上にも大きく貢献しました。こうした現場発のアイディアが成果に結びつき、組織力が確かに高まってきていると感じています。

組織力だけでなく、働くスタッフ自身も活性化。成果を生み出せる組織の基盤が強化された

ーー色々な角度でのお取り組みが進んでいるのですね。

西: はい。管理業務の見直し・DX化と、組織開発というこれまで別々のものとして捉えていた二つのテーマに、協働日本さんのサポートを得ながら同時並行で取り組んだことがよかったのだと思います。

例えばこれまで予算比で毎月10%以上の乖離が出ていた店舗ごとの利益目標も、ここ最近では大きく改善しています。取り組みが始まってからの3ヶ月で大幅に改善されてきていて、あと1〜2%で当初目標にしていた利益目標に届くペースです。これは正直、自分でもびっくりするぐらいの成果でしたね。

店舗の状況を可視化できるよう数値管理の仕方を一から見直し、店舗のKPIを明確にしたことにより、リーダー陣の目標が明確になり意識も高まったことが大きかったと思います。

組織力を見直す取り組みと同時に、一歩先を見据えた、スタッフ同士のコミュニケーションの質の改善にも取り組んできました。

会社が大切にしている「ありがとうを伝える文化」を作るため、LINE上で「ありがとうグループ」を作りました。「これだけで?」と思われるかもしれませんが、日々の業務の中で「助かった!」と思うことを可視化することでお互いに助け合うシーンが増え、職場の雰囲気が以前よりも明るくなってきたんです。

普段から感謝し合える関係ができたからこそ、みんなで率直に意見を言い合えるようになったんだと思います。それが、業務改善や店舗運営の効率化にもつながったんですよね。

ーースタッフ同士が指摘をし合える関係構築ができたというのは素晴らしいですね。

西: はい、ただ本音を少し話すと実は、私自らがスタッフに対して距離を置いてしまっていた部分もあったのかもしれません。変化を求めて具体的、本質的な指摘をしてしまうと、スタッフの退職に繋がってしまうのではないかということを恐れていました。

私自身は鹿児島ラーメンを継ぐ前に、東京でIT企業に勤めていました。IT業界は人材の流動性がとても高いこともあり、入退社、転職なども当たり前の世界。組織が変化する時には一定の社員はどうしても「辞めていってしまうもの」と思い込んでいた部分もありました。

実際、鹿児島に戻って家業を継いだ時も、ベテラン社員7名が引退し、一時は人手不足に悩まされました。鹿児島ラーメンが好きで長年頑張ってきてくれていたベテランの方も多く、彼らのおかげでこれまで鹿児島ラーメンは地元で愛され続けてきました。そんな方達が、ネガティブな理由で辞めるような環境にはしたくないという思いから、どこかで大胆な改革を躊躇していた自分がいたのも事実です。

ーー西社長ご自身の中にも葛藤があり、なかなか改革の一歩を踏み出せなかったのですね。

西: はい。それでも年月が経ち、徐々に引退される方も増えてきた中で改革の一歩を踏み出しました。

長年のやり方や考え方をいきなり変えるのは大変です。指摘を素直に受け止めるのもすぐには難しいかもしれません。それでも、日頃お互いに「ありがとう」を言い合えていると受け止める方も感じ方が変わると思うんです。
「普段から仕事を見てくれて、そして感謝してもらえている。自分自身も感謝しているしな」と思ってもらえたら、会社を良くしたいと思って伝えた指摘や、これまでのやり方を変えていくということも受け止めやすいですよね。

実際、LINEの「ありがとうグループ」で「これをしてもらえたら助かった」といった感謝の言葉が可視化されたことで、キッチンとホールのスタッフの相互理解が進みました。
ホールが忙しい時にはキッチンのスタッフがサポートに入り、出来上がったラーメンをお客様に配膳するように動くなど、感謝の仕組みが現場組織の形を少しずつ変えてきています。

関係の質が高まれば、結果も自然と良くなる——それが組織の成功循環モデルだと考えています。この良いサイクルを、これからも続けていきたいですね。

ーー先ほど、利益目標の達成も目前に迫ってきているというお話がありました。ここから目指すところについてもお伺いできますか?

西: はい。利益目標の達成のためには、売上向上とコストカットの2軸の施策が必要です。

人件費の最適化も進めていこうと考えており、月に約200万円下げることを1つの目標にしています。現状では、150万円まで下げることができるようになっているので、ここからの1〜2ヶ月で達成に向けてスタッフと相談して取り組んでいきたい部分です。

ーー人件費だけで150万円のコストカットというのはインパクトが大きいように見えますね。

西:人件費の削減というと、単に人を減らすという方向で見られがちですがそうではありません。

常々弊社のリーダー陣には、人件費のカットは、個々の給料を下げることではなく、店舗運営の作業をひとつひとつ見直し、減らしていくことを意味するのだと伝えてきました。

今回の伴走期間にカットできた費用に関しても、取り組みの中で実施したメニューの変更や業務のスリム化が影響している面が大きいです。人件費を減らすと言っても、貢献した人の給料にはきちんと反映させるというこれまでの方針を変えることはありません。

スタッフのみんなと私の信頼関係、スタッフ同士の信頼関係。成功循環モデルのサイクルを回していくことで、店舗で提供するサービスのクオリティ向上と利益目標の達成を目指しています。

対等な関係だからこそもらえる率直な意見と壁打ちで、視野が拓けていく

ーー協働日本のような社外プロ人材との取り組みについて、これまでご興味はおありでしたか?実際に取り組んでみて、どのようなことを感じたかお伺いできますか?

西: そうですね、社外のプロ人材との取り組みには元々興味がありました。

以前、霧島市の実施していたワーケーションの取り組みの中で東京の大企業の方に壁打ちをしていただいたことがあったのですが、対話を通じてどんどん自分の思考が整理された感覚がありました。その時の印象もあり、ぜひ自社でも積極的に活用したいと考えていたので、今回鹿児島県の取り組みを通じて支援を得られたことはありがたかったです。

はじめ短時間の関わりでどれだけの成果が出せるのか、不安がなかったかというと嘘になります。
しかし、結果として協働日本さんと一緒に取り組めて本当に良かったと思います。一つ一つ施策を実行できたこともそうですが、経営者にとって信頼できる「壁打ち」役がいることがこんなにありがたいとは思いませんでした。

私が取り留めなく話したことについても、あらゆる角度から、まとまったフィードバックを返していただいたおかげで、思考を整理できました。

ーー特に印象的だったことはありますか?

西:先ほどもお話しましたが、組織力を向上したいと藤村さんに相談した時に「そもそもまだ、組織になっていないですね」とズバッと指摘いただいた時ですね(笑)

ずっと、スタッフに対して「言ってもやらない」と思っていたのですが、実際には「受け皿がないから伝わっていない」だけだという、自分では想定できなかった“一歩前の部分”に気づくことができました。

私にとってはまさにコロンブスの卵で、組織というものの捉え方や、向き合い方が変わりました。率直にいただいたご意見で、根本的な部分に気づけたことそのものも、プロジェクトの大きな成果だったと思います。

ーー今後、社外のプロ人材との取り組みは進んでいくと思われますか?

西:そうですね、広がっていくと考えています。

特に地方には、ビジョンは大きいものの、社内に仲間が少なく会社の軸を定めきれないベンチャー企業や、しがらみが大きく社内改革を断行しにくい後継者も多くいると感じています。

彼らにとって大きな助けになると感じています。実際、すでに協働日本をご紹介した経営者仲間もいます。

事業承継や起業で、いきなり経営を始める方のそばで寄り添いながら、「こんな道もありますよ」とそっと示してくれる協働日本や協働プロの皆さんの存在は、本当に心強いものだと感じています。

ーー最後に、協働日本へのメッセージと、今後の展望についてお聞かせください。

西: 協働日本には多様な専門性を持った方々が既にたくさんいらっしゃり、これからさらに多くのプロフェッショナルが参画されると思います。特に地方においてこれらのプロフェッショナルと協業できることは非常に大きな価値だと思います。

先日、鹿児島県新産業創出ネットワーク事業の報告会で、別の企業の伴走に入られていた協働プロの方達ともお会いし、お話することができ、新しい事業アイディアも生まれました。

今後も協働プロの皆さんと直接意見交換できる場や、リアルな学びの場が広がっていくことを期待しています。またいつかご一緒できるよう、引き続き自社も成長させていきます。本当にありがとうございました。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!

西: ありがとうございました。



協働日本 令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子もnoteでもご紹介しています。
有限会社鹿児島ラーメン様にもこちらで本プロジェクトをご報告いただきました。


西 洋平 / Yohei Nishi

有限会社鹿児島ラーメン 代表取締役
1982年生まれ、鹿児島県霧島市福山町出身。修学館高校を卒業後、上智大学大学院で修士号を取得。ABeam Consultingに入社し、経営戦略・DX推進に従事した後、家業である鹿児島ラーメンを継承。伝統の味を守りながら、DX化や組織改革を推進し、飲食業界の革新に挑戦している。

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


AI・デジタル活用STORY:株式会社サカナカケル(取材当時:株式会社イズミダ) 出水田一生氏 -若手社員が経営視点を獲得。未経験から会社の中核人材へ-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社イズミダ 常務取締役の出水田 一生氏にお越しいただきました。
株式会社イズミダは創業50年の鮮魚の卸売・小売・水産加工の会社です。元々は創業者である出水田氏のお祖父様が自転車の荷台に魚を積み、売って回ったことが始まりでBtoB向けの卸売がメインの事業だったそうです。

10年前に出水田氏が3代目として戻られてからは、加工品のEC販売や飲食店、体験・教育、対面販売のBtoC向けの魚屋など『新しい魚屋の形を作る』ためさまざまな事業を展開しています。

創業者の「魚の本当の美味しさを知ってもらい、皆様に喜んでいただきたい」という想いを受け継ぎ、大きく変化を遂げようとする株式会社イズミダ。その中でも今回は鮮魚店が併設する食堂である「出水田食堂」のプロジェクトに協働プロが伴走しました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

【本事例のまとめ】

本社と店舗の物理的な距離があることで生まれた現場スタッフとの認識のすれ違い、そして売上の停滞。鹿児島県鹿屋市の鮮魚会社・株式会社イズミダが抱えていた課題は一筋縄では解決できないものでした。

協働プロチームの伴走を通じて、業界未経験の女性スタッフ2名がAIを活用し時間を創出。時間が創出できたことで、自ら施策を考え動くようになりました。その結果として年末受注では前年比1,000%超、恵方巻きでは140本超の売上を達成。数字だけでなく、現場を動かすスタッフの姿勢にも大きな変化が表れました。

この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。

デジコーチとは

(取材・文=郡司弘明)

協働日本 令和5年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子も合わせてぜひご覧ください。

新しい魚屋の形を作る──新しい挑戦の中で表面化した課題に伴走支援を。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

出水田 一生氏(以下、出水田):はい、よろしくお願いいたします。

鹿屋市の前副市長の鈴木健太さんからの紹介がきっかけで、協働日本代表の村松さんにお会いしたのが始まりでした。伴走支援という形での複業人材の活用の話や、鹿児島県の「新産業創出ネットワーク事業」についてお聞きして、ぜひ一緒に取り組みをさせていただきたいと思いました。


「新産業創出ネットワーク事業」は昨年度も実施されていたということで、株式会社ネバーランドさんの加世堂さんなど、以前から知っていた方が参画されていたということもあり、協働の事例を聞いて一気に親近感が沸きましたね。

昨年の取り組みなど村松さんにお話を聞いた後すぐに、今年度(令和5年度)の県の事業への参加事業者の募集があったため、チャンスだと思いすぐに申請書を書いて提出しました。

ーーすぐに協働を決めてくださったんですね。今回の協働では、数あるイズミダの事業の中でも「出水田食堂」のプロジェクトについて伴走させていただきましたが、テーマについても申し込みの時点ですでに決めていらっしゃったのでしょうか?

出水田:最初は、当時頭の中にあった別の課題を解決したいと考えて申請書を出していました。最初のセッションでその課題について深掘りして考えていく中で、それよりももっと、解決していくべき点があると気づいたんです。それが、鮮魚店併設型の食堂である「出水田食堂」の運営についてでした。

弊社、株式会社イズミダは鹿屋市で創業50年、現在は2代目として父が経営しています。元々BtoBの卸売業だったのですが、3代目として店を継ぐため私が戻ってきた10年ほど前から、加工品のEC販売など新しい事業も始めるようになりました。

出水田食堂は、よりダイレクトに魚の魅力や価値を伝える手段として、2022年の4月にスタートした鮮魚店併設型の飲食店です。営業はお昼だけ、市場の休みに合わせて週休2日という営業形態も、長時間労働が常態化しやすい魚屋の働き方改革への挑戦という意味もありました。

出水田食堂は、鹿屋市ではなく、鹿児島市の騎射場という学生街・飲食店街にあります。単価はエリア平均より高めであるにも関わらず、開店当初よりさまざまなメディアに取り上げていただいたり、行列ができたりと、ありがたいことに大変好評いただいていました。

一方で、内部的には従業員が定着しないという問題がありました。責任者である私は普段鹿屋市にいて、鹿児島市の店舗までは移動に2時間近くかかってしまいます。物理的距離がスタッフとのコミュニケーションにも影響し、少しずつ考えにズレが生じてしまうことなども理由の1つで、スタッフが辞めてしまい、併設の鮮魚店を休業さぜるを得なくなったり、飲食店でのクレームが増えたりと目に見える形で問題が出るようになっていました。

ーーなるほど。それで出水田食堂への伴走がスタートすることになったのですね。

出水田:はい。協働がスタートした頃、新たにスタッフを2名採用したところだったんです。2名とも20代の女性社員なのですが、前職は保健師とパティシエという、魚に関する知識が経験もないにもかかわらず、我々の想いに賛同して入社してくれたメンバーでした。

先ほど話した通り、私には物理的な距離の問題もありますし、出水田食堂での新しい事業や課題解決については私ではなく現場のスタッフが責任を持ってやらないと長続きしないのではないかと思い、彼女たちにも協働プロとの毎週のミーティングに参加してもらうことにしました。

店舗の運営に留まらず、体験・教育などこれまでにない新しい魚屋の形に挑戦している。

昨年比1,000%超、過去最高売上を更新。二人でも無理なくできる、現場発信の施策の数々。

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

出水田:はじめは、根本的な価値や課題を深掘りするということで、会社の価値や課題を考えるというワークからスタートしました。協働チームとしては、藤村昌平さん横町暢洋さん、宮嵜慎太郎さんの3名を中心に入っていただいています。

まずはワークショップの中で、自分の存在意義と会社の存在意義を考えるところから始まったのですが、日頃から『存在意義』について考える機会はなかなかないので、私にとってもスタッフにとっても、何のためにここで働き、何をしていきたいのか、考えを整理するためにとても貴重な機会だったと思っています。

それぞれの想いが整理されたことで、その後の価値や課題についての議論も活発になっていきました。

印象的だったのは、私の考える会社の価値や課題と、スタッフたちの考える価値や課題について、違いと共通点が浮き彫りになったことです。1つ1つの意見についてディスカッションをしていくことで、これまで課題だったコミュニケーションや意識のずれが少しずつ修正されていくのを感じたんです。

ワークショップの様子。それぞれの色がメンバーと紐付き、各人がさまざまな意見を出しているのが見える。

ーー同じテーマについて話をしていく中で自然とコミュニケーションが取れるようになっていったんでしょうか。

出水田:藤村さんのファシリテーションも大きかったと思います。これまで社内ミーティングで1つのテーマについて話し合う機会ももちろんあったんですが、その時は私が一方的に話すような形だったんです。

というのも、スタッフの2人は業界未経験ということもあって、どうしても「魚」についてはわからないことも多く、何か具体的なアイディアを求めても、自分は詳しくないからと遠慮がちになってしまっていたと思うんです。

そこで、うまく藤村さんが話を振ってくださったことで、2人とも発言する機会が増えましたし、どんな意見が出ても協働プロの皆さんが否定せずに受け止めてくださるんです。間違っていることなんてない、質問から少しズレていても言語化を手伝って軌道修正をしてくれるので、思ったことを好きなように言える雰囲気が醸成されていきました。

それに、それぞれの存在意義──ここで何をしたいのか、という部分は個人の内側にしかないものを発言する形になります。知識や経験とは関係なく、それぞれの想いで意見が言えるということも、活発な議論に繋がった理由じゃないかなと。

実際にその後、二人からの提案でさまざまな施策を行っていくことになりました。

ーーお二人からのご提案内容も含め、その後に実施された具体的な施策についても教えていただけますか?

出水田:はい。行列ができた際の待ち時間の有効活用、SNSの活用と発信、そして人員不足で休業していた鮮魚店を再オープンすることができるようになり、年末の受注、イベントへの参加、恵方巻きの企画など多岐にわたります。

まず、先のセッションによって、「お客様を待たせているが、ケアできていない」「時間がなくてお客様との接点を作れていない」という2つの大きな課題が顕在化しました。

待ち時間の課題を解消する施策としては、待っているお客さんが、お魚の知識に触れる経験ができるように魚の本を置いたり、隣接する鮮魚店に誘導するなど待ち時間でも楽しんでもらえるように工夫しました。「食べてファンになる」だけではなく、並ぶ時間から退店までも価値を伝え、ファンになってもらおうという施策でもあります。

そして、顧客接点の課題についてはSNSの活用でカバーしていくことにしました。Instagramでは、日々のおすすめや入荷情報を発信して来店意欲を高め、LINEではお得意様に対して特別な情報発信をしてリピート意欲を高めるよう役割を分けて運用することになったんです。ただし、スタッフは日常業務で忙しく、SNSの管理までなかなか時間を割くことができません。そこで、協働プロの横町さんの力も借りながら、生成AIを活用してコンテンツの生成から投稿後の検証まで2人でうまく回せる仕組みを作りました。

ーーすごいですね!実際に現場で無理なく回せる仕組みになっているんですね。

出水田:元々、出水田食堂は働き方改革への挑戦という側面もあったので、どうしてもスタッフに無理はさせたくありませんでした。現場にいない私が考えるのではなく、現場にいる2人も一緒に自分ごととして考えてくれたことで、より現場に即した形で施策を進めることができたのではないかと思います。

実際、年末の受注に関してもスタッフが率先して行ってくれた施策です。2022年の年末は人員不足で鮮魚店は閉めていたし、年末にスタッフを働かせるのもよくないと思い、年末の受注についてはほとんどお断りしていたんです。大晦日やお正月にお刺身を食べたいという需要があることはその時からわかってはいたので、2023年には「12/31は絶対に売れるから、公式LINEなどに流せば売り上げ上がりそうだ」という話をスタッフにしていたんです。すると、ぜひやりましょうと率先して声を挙げてくれました。実際にSNSでの発信によって受注につなげ、売り上げは前年比1,000%以上、過去最高額の売り上げになって驚きました。

ーー1,000%!需要がわかっていても積極的にできなかった施策が、すごい成果に繋がったのですね。

出水田:数字として期待以上の成果が出たのは年末の受注だけに留まりません。同じくスタッフが企画してくれた、恵方巻きの企画では140本以上の受注があり、年末に出した鮮魚店の過去最高売上をすぐに更新することになりました。

鹿屋市の店舗の方で2022年に結構恵方巻きが売れたので、騎射場の店舗でも売れるのではないか?というヒントを出しただけで、スタッフ2人で恵方巻きの内容や発信などほとんどオリジナルで考えて取り組んでくれました。

2022年にも出展していたイベント「ぶり祭」(鹿児島大学主催)でも、メニューの刷新やSNSでの積極的な配信によって、弊社経由で売れたチケットの枚数が前年比のほぼ倍になっています。

スタッフ考案の恵方巻き。大好評で140本以上を売り上げた。

「自分と会社の存在意義」がターニングポイントに。スタッフが経営者視点を獲得するという大きな変化。

ーー協働日本との取り組みの中で、店舗にはどのような変化が生まれましたか?

出水田:一番大きいのは、やはりスタッフの二人の自発性の向上だと思います。普段経営者である私が不在という中で店舗を運営し、成長させていくためには、二人の当事者意識を高めるマインドセットが必要でした。

どうしても初めの頃は、協働プロとのミーティングにおいても「私たちがいて何か意味があるかな…?」という雰囲気があったのも否めません。それでも言語化を重ねていくことで変わっていき、自ら積極的に声を上げてくれるようになっていきました。振り返って考えてみると、やっぱり、自らと会社の存在意義について言語化できたあたりがターニングポイントだったように思います。

伴走支援を通じて、それぞれが出水田食堂をよりよくするためにどうしたらいいか?を自分自身で考え、取り組み、コミットして数字を出すという一連の流れを経験することができたことで、スタッフとしての成長だけではなく、経営者視点の獲得にも繋がったのではないでしょうか。

それ以外にも、今ではトラックを運転して市場に買い付けに行き、魚を捌くところまでそれぞれが一人でできるようにもなっています。市場の先輩方にも可愛がってもらっているようで、そういった面でもとても逞しく頼もしいですね。(笑)

ーーそれは、大きな変化ですね。(笑)先ほどもお話しされていた通り、どんなことでも意見を言える雰囲気になったというのも重要かもしれませんね。

出水田:協働プロの皆さんと話す中で、本当にプロだなと感じることが多かったんです。言語化、課題の整理・抽出…頭の中にあってもできないことが多い中で、引っ張り出してくださるんですよね。

毎週のMTGの中でそんなシーンがたくさんあって、色んな意見が出てきたのを目の当たりにして、こうやって会議して新しい商品やサービスができていくんだなと身を持って体験できて、私自身としてもとても面白かったです。

また、オンラインだけでなく、実際に出水田食堂にも来てスタッフともオフラインで会ってくれたのも大きかったと思います。オンラインでは毎週顔を合わせていますが、リアルで会うとさらに距離も近づくので、コミュニケーションも取りやすくなりますよね。

週に一度で長期間実施する伴走支援、濃密な取り組みが成果に繋がる。


ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

出水田:実は3年ほど前から興味もあって、他社の副業人材活用のサービスを活用したこともあったんです。その時は、プロジェクトのスパンも短くて、5回程度だったので、いいアイディアや気づきもあったんですが具体的なところまで落とし込むことができずもったいなかったなと感じていたんです。

協働日本は毎週ミーティングがあって半年以上という比較的長い期間で伴走支援を受けられるので、取り組みが非常に濃密だと感じました。日々の業務に追われる中では、人間やっぱり期限を切ってお尻を叩いてもらった方が動きやすいですし、そういう意味でもいいなと思います。

ーーそうだったんですね。実際に、サービスを活用してみて、複業人材の取り組みは今後広がっていくと思われますか?

出水田:経営者同士の情報交換でも、よく話が出るようになってきたんですよ。興味がある人も多いのではないかと思います。なので、今後も広がっていくと思いますし、私自身も今後も活用していきたいと思っています。

特に、今回のように県の事業として支援を受けることができることで、伴走支援を受けられたという事業者さんもいるかもしれないですし、今後もそういった機会があれば周りにもおすすめしたいです。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本へのエールも兼ねて、一言メッセージをお聞かせください!

出水田:本当に大変お世話になりました。おかげさまでこの短い、1年弱の期間でうちのスタッフも変わったし、店舗に大きな変化が生まれました。

こういった複業人材の活用というのは、いろんな事業者さんに知ってほしい取り組みでもあるし、多分、興味はあってもなかなか、どこにお願いすればいいんだろう?というところがまだ知られていないと思います。

それに、ただ都市部の凄い人を1人副業で入れても、自社組織のメンバーと一緒にチームで力を発揮しないと、なかなか本当の成果に繋がらないケースもあると思います。

だけど、協働日本さんは、「ただ凄い人を副業で入れたらうまくいく」というスタイルではなくて、ワンチームとしてのチームビルディングを意識し、これだけ深く入ってくれて私は本当にありがたかったし、他の複業人材との取り組みとの大きく違うのではないかなと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

出水田:ありがとうございました!

※この記事の取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」です。

AI・デジタルに強い協働プロがコーチとして入り、社員の方が自分で使えるようになるまで伴走します。デジコーチは、日本全国の地域の中小企業様100社以上にご導入いただいています。製造業、食品、飲食、小売、工務店など、業種はさまざまです。

【デジコーチの】サービス内容を見る

出水田一生 / Issei Izumida

株式会社イズミダ 常務取締役

鹿児島県鹿屋市出身

大学・大学院で生物学を専攻。

大学院在籍中に父親の病気を機に家業である「出水田鮮魚」に戻り、卸一本であった昔ながらの魚屋のイメージを変えるため、魚×〇〇といった視点でEC販売、小売、飲食など新たなチャレンジを続けている。2022年全国中小企業クラウド実践大賞総務大臣賞受賞。

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NEWS:KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、協働日本で伴走している株式会社栄電社が鹿児島県代表として選出されました

【2023年11月14日(火)】KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、協働日本で伴走している株式会社栄電社が第二創業部門の鹿児島県代表して選出・登壇決定

KVM2023|九州・山口ベンチャーマーケット
https://kyushu-yamaguchi-vm.jp/

協働日本で伴走している株式会社栄電社が、KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、第二創業部門での鹿児島県代表して選出されました。
九州・山口ベンチャーマーケットに登壇する企業は、九州・山口各県の予選を通過した企業に限られ、選出企業は2023年11月14日(火)に開催されるピッチコンテスト本番に登壇します。

芋焼酎の製造過程で排出される搾りかすをSPL液にしてサプリメント的飼料化を実現した事業で、今年の2月に鹿児島県庁にて開催した「新産業創出ネットワーク事業」の発表会でも、鹿児島発のサーキュラーエコノミーとして発表された協働事例です。

昨年から伴走し今年は2年目の取り組みとなる中、株式会社栄電社の皆さまとの協働もさらに深め、鹿児島県、鹿児島産業支援センターと連携して共に歩みを進めてまいります。

KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023の詳細は以下からご確認ください。

KVM2023|九州・山口ベンチャーマーケット
https://kyushu-yamaguchi-vm.jp/


#栄電社
#KVM2023
#協働日本

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STORY:栄電社 川路博文氏 -『焼酎粕』を新たな地域資源に。”四方良し”の発想でサステナブルな地域産業へ-

マーケティングSTORY:株式会社ソミック石川 斉藤 要氏 -協働が変化の起爆剤に。市場の変化をとらえた販路開拓へ-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社ソミック石川 代表取締役の斉藤 要氏にお越しいただきました。

株式会社ソミック石川は、大正5年に「石川鐵工場」として創業。ボルト、ナット類の製造工場としてその歴史をスタートしました。現在は自動車部品の製造業として、トヨタ・スズキ・スバルなど大手自動車メーカーが主要取引先となり、国内シェアは50%を超えています。

そんな、私たちの生活を支える自動車の重要保安部品を作る、ソミック石川の新たなチャレンジに協働日本が伴走させていただけることになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

【本事例のまとめ】

BtoBでは国内シェア50%超の製品があるものの、BtoCへの参入ノウハウは無く、新たな売り先に届ける方法が分からない。静岡県浜松市の自動車部品メーカー・株式会社ソミック石川は、大手メーカー向け部品補修市場への直販という新規事業に挑みました。協働プロチームの伴走を通じて、業界の流通構造を丁寧に分析し、価格設定や顧客との接点のつくり方を一から設計。

「部品を売る会社」から「顧客に直接届ける会社」へと、事業の捉え方が変わっていきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

はじめてのBtoC事業に向けて、協働を通じてノウハウを学びたい

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

斉藤 要氏(以下、斉藤):よろしくお願いします。弊社の人事部の若手社員が、協働日本代表の村松さんの講演を聞いて連絡をとり、私に紹介してもらったことがきっかけでした

ちょうど村松さんが弊社のある浜松に来るタイミングで、一緒に食事をさせていただきました。その場ではすぐに取り組みをスタートするといった話にはならなかったのですがその後、約1年後に当社のサポートをしてもらえないかとあらためて依頼して今に至ります。

ーーファーストコンタクトから協働がスタートするまで、結構間が開いていますね。

斉藤:そうですね。村松さんとはじめてお話した際に、協働日本の伴走支援のモデルに大変強い興味を持ちました。協働プロとの協働を通じて様々な取り組みが実現できそうだと感じました。

ただ、当時はすぐに取り組みたいテーマがなく、その場ですぐに、とはならずそれっきりになってしまっていました。

ただ当時から、自社としても近い将来に新規事業を立ち上げなくてはいけないという危機感は持っていたので、いざその時にはぜひ力をお借りしたいとずっと思っていました。

ーー約1年越しでそのタイミングが来たと。

斉藤:はい。今生産している製品を自動車メーカーだけではなく、補修部品として直接ユーザーに売る仕組みを作り、BtoC向けの新規事業を立ち上げ、事業領域をさらに拡大させていきたいと考えています。

我々はずっとBtoBの事業をしてきたので、BtoC向けの経験も流通・販売の仕組みも持ち合わせていませんでした。

元々、トヨタ生産方式の合理的な生産体制が社内に浸透しており、とにかく無駄を削ぎ落とすという考え方が基本だった弊社は、決まった仕組みの中では生産性を高めることができている一方、新しい仕組みが社内に入ってきにくいという課題も抱えていました。

普段から、決まった大手のメーカーが取引先ということもあって顧客対応も画一的なもので問題なかったこともあり、BtoC事業に求められる柔軟さが不足していました。

考えていたBtoC向けの新規事業においては、我々の販売する自動車部品が必要になる時は自動車修理のタイミングで、自動車生産と違って突発的なタイミングで発生するものです。計画的でないニーズにも対応できる自由度も、社内で絶対必要になるはずです。

そこで、経験豊富な協働プロに参画していただくことで、経験不足を補い、ノウハウを短期間で吸収したいと考えたんです。

やはり、同等のプロフェッショナル人材を自社で採用し、育成したり直接雇用したりするとなれば、とてもお金がかかります。協働を通じて組織のトップがノウハウを手に入れられるならば、結果的にとても効果的で価値ある投資になると確信したことも、経営者視点から見て大きな決め手でした。

協働プロの現地視察風景

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

斉藤:我々の考えるBtoCの新規事業に向けて、物流を含め、供給をどうしていくかなど、広く売る仕組みを構築中です。協働日本からは、CSOの藤村昌平さんと、協働プロの根崎 洋充さん(大手製造業)、三宮 大輝さん(西日本旅客鉄道株式会社)の3名の方にプロジェクトに加わっていただいています。弊社からは私以外に、営業部門の役員と部長が参加しています。

構想した新規事業は、新しい製品を作って売るということではなく、既存製品を新しい売り先に売ることになるので、まず業界の仕組みを深く掘り下げて分析しました。

我々のようなメーカーが作った自動車の部品は、仲卸業者を介して自動車メーカーに販売しています。エンドユーザーが部品を必要とする場合は、カーディーラーや整備工場などを通じて購入することになります。

売り手側も買い手側も、直接の売買が難しい構造になっているんです。そこで、他社・他業界の事例なども踏まえて、ターゲットとの接点の作り方や売り方、そして我々の強みについて毎週のように協議しています。

ーーなるほど。まさに新規事業をスタートする準備段階なのですね。協働を通じてどんな発見があったかお聞きできますか?

斉藤:価格設定についての話をしていた時、どうしても社員の考えが「自動車部品」をベースとして凝り固まっていることに改めて気付かされました。

自動車部品という業界においては、良い製品を作って、そこからどうやって原価を下げるかが重要視されます。例えば、利益率も製品価格の5%と設定されているなど、他業種に比べて特殊な構図があります。

そのことが根底にあるので、どうしても売価設定をリーズナブルに設定しようとしてしまいます。そんな時協働プロから「もっと高く売ってもいいんじゃないか?」と言っていただいてハッとしました。

価格設定の際には、「お客様が何に価値を見出していて、そこにどう値段をつけていくか」を考えるという、他業界では当たり前なのかもしれませんが、この業界に長く浸かっていたいた私たちにとっては、これまで持ち得なかった新しい視点を持ち込んでいただきました。

さらに、自動車メーカーからエンドユーザーに売り先が変わったことで、「お客様が部品に見出す価値」も変わってきます。ですから、全く同じ部品であっても、お客様の見出した価値の分通常よりも利益を載せることだって出来るという考え方ですね。

ターゲットとするエンドユーザーに、より大きな価値を見出していただける製品のラインナップについて協議を進めて、これからテスト販売をする予定です。その結果からいよいよ販売の仕組みを構築していきます。

市場に合わせて柔軟に変化できるように促したい。新しい視点を得た今、期待すること。

ーープロジェクトはまだ道の途中とのことですが、現状で感じる変化や成果はありますか?

斉藤:まだまだこれからだと思っています。まさに今も、我々の強みはどこにあるのかを見極めようとしているところです。

慣習に囚われず、売り先に合わせて売価を適切に設定することは、我々の強みに自分たち自らが値付けをすることでもあります。我々の強みにより価値を感じる顧客に、適切な価格で売ろう、という意識と主体性を持って、いま徐々にアプローチを変化させていっています。

ーー変化をしっかりと言語化できているところに、多くの議論を重ねてきた、ワンチームでの協働があったのだなと感じます。そういった意識の変化につながったきっかけや、背景はなにかあるのでしょうか?

斉藤:こういった変化が生まれたきっかけのひとつに、業界分析を重ねていく中で、旅行産業の収益モデルを協働プロから教えてもらったことがあります。

エンドユーザーがインターネット上で予約サイトにアクセスしてホテルを予約し、旅行するというプロセスの中に、ブッキングサイト、や旅行商品を販売する会社など、複数の中間事業者が役割分担しているのですが、それぞれがどこでどんな風に利益を上げているのかを解説していただいたんです。

その話を聞いて、我々が製品を作って、エンドユーザーの手元に届くまでの間のどこで利益を上げるのか、収益モデルをいかに構築していくかがとても大切だと気付かされました。

僕たちは製造業者なので、どこまでいっても「良い物を作れば売れる」と考え、「良い物」を作ることに集中してしまうところがあります。

ですが、協働プロの皆さんは、何によってユーザーに選ばれるのかという視点について、事例を伴うアドバイスをくださるので、いつも新たな視点に気付かされています。良い物を作ったって、良いかどうかなんてパッとはわかりません。

今はとにかく、顧客視点で選ばれる製品、そして事業へと進化させるべく、戦略を立てています。

ーーこれから、こんな変化を自社に生み出せたら良いなという展望はありますか?

斉藤:今後は、日本の人口はどんどん減っていって、市場が縮小してくるのが目に見えていますから、社員や組織が新たな時代に対応できるような変化を促したいと考えています。

というのも、普段の徹底した合理的な生産方式が、もしかしたら今後ネックになりうる可能性もあるからです。先ほど申し上げた通り、トヨタ生産方式は無駄を削減した合理的な仕組みです。

完成された、無駄のない仕組みを普段から運用しているからこそ、人によっては状況が変わっても同じやり方が正だと考えてそのまま運用し続けてしまう危険性も当事者として感じています。

本来のトヨタ生産方式の考え方に立ち返れば、ベストな状態にするにはどうしたらいいかを仕組化していくことが大切だという考え方ですから、状況に応じて仕組みを変化させることが非常に必要です。

市場の変化に合わせて柔軟に対応することが会社として必要な局面にいるので、皆がただ去年と同じ仕事をしているという状態から、未来はどうなるかを読んで対応を変化させていけるようになって欲しいと思っています。

日本の強みは人的資源。協働日本のコミュニティが日本を更に強くする。

ーー斉藤さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味はおありでしたか?

斉藤:そういう活動をされている方がいることは知っていましたが、ここまでシステマティックに複業人材の活用をされている会社があるということは、村松さんのお話を聞いて初めて知りました。

ーー率直に、協働という形で取り組みをはじめてみていかがでしたか?

斉藤:協働がスタートして、社員も活き活きと参加してくれています。プライベートの時間もフットワーク軽く、市場調査をしにいくほどなんです。協働プロとの壁打ちが効いてるんだと思います。

自分のやったことに対して、きちんとアドバイスやフィードバックがもらえることがやはり嬉しいんじゃないかなと。僕も、どうしてもこれまで忙しくて、社員と1on1をしてサポートすることはできなかったので、社員が喜んでくれているのをみると、取り組みを始めて本当によかったなと感じます。

我々と同じように1つの分野に特化して専門化してしまっているような企業が、何か変化しようとしたり、新しいことを始めようとしたりしているなら、協働日本さんとの取り組みをぜひお勧めしたいですね。

特に製造業は、そういった会社が多いと思います。大きい会社であれば、その中でも色んな背景を持つ人材がいるかもしれませんが、中小企業だと難しい部分もあります。

だからもう、新しいことを始めたいけどノウハウが足りないなど、困っているのなら、まずは試してみるっていうのも一つの手じゃないかなと思います。
言い方は適切ではないかもしれないけれど、人を雇うのと違い、合わないと感じたら辞めることもできます。今回協働プロには3名入っていただいていますが、こんな人材を3名も雇うことになったら、もう大変です(笑)。

それを窓口一本、協働日本さんにご相談するだけで、熱意のある適切な人材をアサインしてもらえるんだから、本当にありがたいと思っています。

ーー最後に、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

斉藤:協働日本は、ある意味で大きなコミュニティとも言えますよね。こういったコミュニティが広がっていくっていうのはとても大事だなと思います。


というのも、製造業は特にこれまで、内製技術で川上から川下まで全部自前でやりますという、考え方が多かったですが、最近は強いところだけやります、という構造に変わってきています。

例えば、インテルも中身だけに特化して、パソコンの外側を作らなくなっていますよね。そのように、個々の技術をネットワークで繋げて、最終的には大きな成果を作り上げるという時代になっていくと僕は考えているんです。

協働日本のようなコミュニティがそれぞれの強みを持った人材や会社をつなぐネットワークになれば、よりスピーディに成果を産み出すことができ、発展していくのではないでしょうか。

思い返せば私自身も会社から、色々な変化の機会をもらっていたんですね。異動や昇進昇格…いろんな経験ができたからこそ変化も成長もしてこられました。

でも、そういった様々な変化や経験を全員が等しく受けられるとも限りませんし、これからは自らがそういった変化のある場に飛び込んでいく必要がある時代です。

協働日本を通じて協働プロとしてその機会を作ることができれば、もっと社会のために能力を発揮できるという方も、きっと多くいるのではないでしょうか。

日本の強みは、資源ではなく人的資源です。最後は人ですから、協働日本のコミュニティが、日本を更に強くしていってくれることを期待しています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

斉藤:ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。


斉藤 要 / Kaname Saito

(株)ソミック石川 代表取締役 社長 トヨタ自動車(株)にて、ステアリング実験、サスペンション設計、生産技術を経験し、設計部長を務めた後、(株)ソミック石川へ転籍。2022年より現職。

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マーケティングSTORY:株式会社四十萬谷本舗 四十万谷 正和氏 -課題に合わせた戦略的人材活用。老舗企業の考える「生き残り戦略」とは-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷 正和氏にお越しいただきました。

株式会社四十萬谷本舗は、明治8年創業、老舗の発酵食品の製造販売を手がける会社。創業以来、醤油、味噌、糀などを始めとし、味噌漬やかぶら寿し、大根寿しなど、地元の文化に根ざした発酵食品を作っています。

150年近い歴史の中で、時代やニーズに合わせて緩やかに変化を続けてきたといいます。コロナ禍を迎え、また変わり始めた時代潮流に合わせ、協働日本とのプロジェクトをスタート。更なる進化を遂げる四十萬谷本舗に、協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、そして中小企業の生き残り戦略への想いを語って頂きました。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

【本事例のまとめ】

日々の対応に追われ、本質的な経営課題に着手できぬまま、顧客層の高齢化と贈答文化の変化という構造的な壁に直面していた、石川県金沢市の老舗発酵食品メーカー・株式会社四十萬谷本舗。

協働プロチームの伴走を通じて、「顧客層の高齢化」「贈答需要の減少」「売上の季節集中」という3つの本質課題を言語化し、新規顧客開拓とEC強化に取り組んで年間売上1.5倍を達成しました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

「塩漬けしたかぶ」に「熟成させた天然鰤」を挟み、糀で漬け込んで発酵させた伝統のかぶら寿し。 

一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるのが魅力

ーー本日はよろしくお願いいたします。四十萬谷本舗さんは協働日本との取り組み第一号の企業です。協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

四十万谷 正和氏(以下、四十万谷):よろしくお願いします。

僕と妻が実家の家業を継ぐべく、勤めていた会社を辞めて、四十萬谷本舗に入った時、課題の宝庫と言えるほど、様々な種類の課題に直面することになったんです。

マーケティングの問題、営業の問題、DX化…解決すべきことが山積していました。

実際に現場に入ってから、日々発生する現場の課題に1つずつ向き合って解決していたのですが、会社全体が良くなっていく感じも全然しなくて、どうしていけばいいのかなと、当時は途方に暮れていました。

そんな時に、協働日本代表の村松さんから一緒に課題の解決に取り組まないかと声をかけていただいたんです。

ーー「伴走支援」という形の複業人材との協働。はじめての取り組みだったと思いますが、協働スタートの決め手はなんだったのでしょうか。

四十万谷:元々、村松さんとは同じ会社(ハウス食品)で働いていたというご縁もあり、普段から相談する機会もあって、弊社のこともよくご存じでした。

同様に、協働プロとして入ってくださるメンバーの何人かが元々の知人であったことで、元々の信頼関係があったこともきっかけとして大きかったと思います。

ただ一番大きかったのは、信頼できるプロフェッショナルに、それぞれの専門分野について力を発揮してもらえるというところでした。

例えば、何人かの協働プロに入っていただく中で、マーケティングのことは若山さん(若山幹晴氏 – ポケトーク(株)取締役兼CMO)、テクノロジーやITのことについては横町さん(横町暢洋氏 – NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)に聞けるなど、一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるというのが、大きな魅力の1つでしたね。

僕も妻もこれまでのキャリアのバックグラウンドは「人事」で、人事領域については一通り経験を積んでいたものの、その他の領域についてはやはり未経験ということもあり、1からキャッチアップして勉強していくのは容易ではないと感じていたので、とても心強かったです。

ーー実際どんな課題についてプロジェクトを進めて来られたのかお聞きできますか?

四十万谷:まずはその課題を整理する、というプロジェクトからのスタートでした。そもそも課題には2つのパターンがあり、1つは「不良品が発生してしまった」「お客様からクレームのお声をいただいた」など日々の業務の中で発生するトラブルに近いもの。

そしてもう1つは経営全般に関わる、企業としての本質的な経営課題です。僕たちは日々のトラブルへの対応に追われて、なかなか経営課題に着手できていないのが実情でした。

そこで、プロジェクトでははじめに徹底的に従業員やお客様へヒアリングすることで、四十萬谷本舗にとっての本質的な経営課題は何か?ということを洗い出していきました。

それによって「メインの顧客層が高齢化していること」「お歳暮などの贈答の習慣がなくなっていくこと」「冬に売り上げが集中していること」の3つが浮き彫りになったので、次はそれぞれの課題に対してどう会社として向き合っていくかというプロジェクトに移っていきました。

ーー現場では日々色んなトラブルや課題が生まれてしまうものだと思うので、本質的な経営課題に着手するというのはやはり容易ではないことですよね。

四十万谷:そうですね。日々発生する課題自体を解決するのもとても重要なことです。例えば、業務不良品が発生してしまったことについて、製造過程を見直して不良品が発生しないようにと根本から解決することは当然必要ですよね。

ただそういった日々の課題を解決できていても、「顧客自体が高齢化して、今後減っていく」という本質的な課題に向き合えていなければ、長い目で見た時に四十萬谷本舗を未来に残し続けていくことは難しい。

僕はこの日々発生する現場の課題のことを「重力」と呼んでいます(笑)。

もちろん重要なことだからこそ、どうしてもその対応で手いっぱいになってしまいがちになる。

だからこそ、現場の「今解決すべき課題」とは別に、週に1時間意識的にしっかり時間を切り分けて「長い目で見た本質的な課題」に着手できるということも、経営者にとっての協働日本さんとの取り組み価値だと感じています。

重力のように吸い寄せられる日々の課題。本質的な経営課題に向き合う時間の確保の難しさ

ーー本質的な経営課題に対してスタートした次のプロジェクトについてもお聞きできますか?

四十万谷:はい。次に取り組んだのは「メインの顧客層の高齢化」の課題についてです。新しい顧客層獲得のためのペルソナ整理と、打ち手は何かを考え始めたのが2020年3月頃で、せっかくスタートした直後に、コロナ禍に突入してしまいました。

コロナ禍においては当然実店舗の客足や売上には大きな影響を受けたこともあり、コロナ禍でもできる取り組みとしてオンラインでの取り組みやWebでの売上を伸ばすための施策をスタートしました。


具体的には、オンラインでの漬物体験の実施や、それと連動した体験キットを作ってWebで販売するなどの取り組みをすることで、Webの売上は年間3,000万円から4,000万円弱まで30%増という結果を産むことができました。

自宅で簡単に糀のお漬物づくりができる「生きている糀床」

ーー他の課題にも並行して取り組まれているのでしょうか?

四十万谷:そうですね。例えば「売上の冬季一極集中」という課題は、昔からずっと続いている課題です。

当社の圧倒的な主力商品であるかぶら寿しの需要が冬期に集中しているため、簡単には解決に至らないことが多いです。

今は、以前より限られた人員で現場を回せるようにオペレーションを工夫するなど、皆で力を合わせて少しずつ取り組んでいる状況です。もちろん人員をおさえることによって生まれた新たな次の課題も抱えながらではありますが、コロナ禍で売上が減っても収益性には大きな影響を受けずに来られています。

協働という本質的な課題を考える時間を作るようになったことで、こういった課題にもじっくりと向き合えているのかなと思います。

ーーなるほど。協働がスタートしたことによる成果としても、そういった「課題に向き合う時間を作れる」という面は大きいのでしょうか。

四十万谷:はい。成果という面でいうと、大きく3つ、「Webの売上が上がったこと」「そもそも本質的な課題へのアクションができるようになったこと」そして「経営課題に向き合う時間を意図的に作れるようになったこと」だと思っています。

やはり最初は目先の課題に追われて、長い目で見た時に必要な課題に取り掛かることができていなかったので、大きな一歩でした。

また、協働プロのノウハウが社内に蓄積されていくというメリットもあります。例えば、若山さんとのコミュニケーションの中でいつも出てくる「お客様は何を求めているのか」という顧客思考や、何か施策を打った時に「そこからの導線を考えることが重要」というような考え方が協働を通じてインストールされて、自然と僕の言葉の中に出てくるようになっています。結果としてそれが現場に伝わっている部分もあるんじゃないかなと思います。

中途半端な人材はいらない。協働プロは、想いを持って共にコミットメントできる仲間。

ーー四十万谷さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味をお持ちだったんですか?

四十万谷:複業人材との協働で成果が出ている弊社ですが、特に「複業人材活用」自体に関心があった訳ではありません。

協働の取り組みをしているのも、「協働日本だから」というのが大きな理由です。というのも、「複業」人材に関しては、まだ世間では「副業」という意識が強い方も多いと思うんです。

「副業」という意識を持っていると、どうしても本業が忙しくて…などの逃げが生じてしまいがちですし、本当にプロフェッショナルとしてのスキルや想いを持っているのか、取り組み前では分からないケースがほとんどです。

ーーご自身も都市部の大企業で働かれていたからこそ気になる点でもあるのでしょうか。

四十万谷:そうですね。企業に勤めていたころ、副業だったり、プロボノ的に企業へのアドバイスをしている人を多く目にしてきました。

その時の印象としては、コミットメントに甘えがあったり、プロフェッショナルとしてのスキルに疑問が残る人もいらっしゃいました。
今経営をしている立場としては、そういう中途半端なスキルの人材の、中途半端なコミットメントではかえって現場が混乱するだけです。

その点、協働日本の協働プロの皆さんは、経歴・経験やスキルはもちろん、強い想いを持ってコミットメントしてくれています。複業という形でありながら、甘えのないプロとしての姿勢を信頼して伴走支援をお願いしています。

ーーなるほど。複業人材だから、ではなく協働日本のプロたちによる強いコミットメントが成功の要因だったのですね。ちなみに四十万谷さんご自身は、複業人材との協働の中で気をつけていらっしゃることはあるのでしょうか。

四十万谷:気をつけていることは、こちらが「答えを教えてもらおう」「課題を解決してもらおう」などと受け身にならない姿勢です。

というのも、協働がスタートした当初の失敗がまさしくそれなんです(笑)。すごいプロフェッショナルに来てもらったのだから、「早く答えを教えてくださいよ!」と思ってしまっていました。

また、協働プロからのせっかくの提案に対して「現場のことをわかってない!」と感じてしまったこともありました。当然現場のことは僕たちの方が熟知しているという情報の非対称性が、「そうは言っても現実的には難しい」など、「できない理由」を作ってしまうことに繋がっていたと思います。

そんな時にも協働プロからは、「一歩踏み出してみるのが難しいのはわかるので、まずは半歩だけでもやってみませんか?」と提案してもらうことで少しずつ進めたんです。

それだけ切羽詰まっていて、答えを知りたい状況だったということもありますが、本来協働とは「一緒に考え、共に解決していく」ものだと今は実感しています。

教えてもらおうという姿勢ではなくて、一緒に悩みながら進んでいこうというワンチームの姿勢で臨むことが、一見遠回りのようでも、結果的に成功につながる実感があります。

協働プロと売場を視察

ーー協働はワンチームで進める、というのは本当におっしゃる通りだなと思います。

四十万谷:やっぱり、いい成果を出す、いい物を作る、など結果を出すためには、変に格好つけたり壁を作ったりせずに、オープンな関係でいることも重要だと思いますね。

直雇用の正社員だからコミットメントが高くて、外部の人間だからコミットメントが低いということはないと再確認しました。

協働プロのように、外部の人間でもしっかりプロジェクトや事業に想いを持って当たってくれる人材がいる。もはや、社内外の枠で区別してしまうことはあまり意味がないのでは?と最近では感じています。

外部の人材に対して適切に情報を開示し、受け身の姿勢を捨てて素直に向き合うことで、より成果につながる協働ができるようになるのではないでしょうか。

自社の課題を自分たちだけで解決しようとしない───「地方の中小企業の生き残り戦略」

ーー四十万谷さんは、地域企業の方達とコミュニケーションを積極的に取られていると思うのですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。

四十万谷:地域企業の経営がアップデートされて企業がもっと面白くなることが、その地域にとって一番プラスになるのではないかという考えが根底にあります。例えば、どうしても「地元に面白い仕事や企業がないから都会に出る」という選択を取るケースがありますが、面白い取り組みをする企業が地域に増えていけば、地元での就職という選択肢が広がります。

また、地域企業はいろんな団体に所属していることも多く、仲は良いことも多いのですが、それぞれの課題をオープンにして意見をシェアし合う場はそう多くありません。

困っていることを周りに相談できる機会は少ないけれど、みんな不安や困り事を抱えている。それなら、シェアできる情報はシェアして、使えるものは使っていくことで、皆の経営がアップデートされる方がいいと考えているんです。

だから、協働日本についても「こんな仕組みがあるよ」と、経営者の仲間達の選択肢の1つに加わったら良いなという思いで紹介しています。

ーーなるほど。地域の企業がもっと面白くなれば…というお話でしたが、四十万谷さんは、今後地方の中小企業が生き残っていく為の戦略について、どのようにお考えですか?

四十万谷:そうですね。VUCA(ブーカ)とも言われるような、不透明で先行きが見えず、答えのない時代はまだまだこれからも続くと考えていて…その中で自社を取り巻く課題を、自社の人材だけで解決していくというのはかなり難しいと思っています。

だからこそ、自社では育成できないような外部人材と協働し、足りない部分を補いながら、スピード感を持って課題解決をしていくことこそが重要なんじゃないかと。すごくシンプルなんですが、これに尽きると考えています。

ーーたしかに、人材の育成は時間がかかりますものね。

四十万谷:そもそも、自社で協働プロのようなスキルを持った人材を育成しようとしても、育成経験もなければプロが育つような環境も用意できないなど、時間だけの問題ではない側面もあります。

じゃあ、十分にスキルと経験の備わったプロ人材を雇用しようとなっても、十分な給与を支払えるのか?という課題もあるし、そもそもプロを雇ったとしてもフルタイムでコミットしてもらうのか?その必要があるのか?など、中小企業にとってはとても難しいテーマです。

だからこそ、常に人材を抱えておかなくても、熱意を持った外部人材を登用し、「社外CMO」のような立ち位置で迎え、課題によって人選を切り替えながら戦略的に人材を活用していくというのが、これからの中小企業にとっての一つの戦い方になるんじゃないでしょうか。

ーー四十万谷さんにとって協働日本とはどういう存在でしょうか?

四十万谷:あらためて、企業経営にはこれさえやればよくなるという特効薬はないんですよね。悩みの尽きない経営者にとって協働日本は、一緒に悩んで、一緒に歩んでくれる心強い仲間です。

もちろん、協働の中で初めて気づくことも多く、やってみたいこともたくさんある中で、リソースが足りず思った通りにいかないことは多々あるんです。

それでもテーマを変えながらも一緒に伴走を続けて行けているのは、そういった想いを共有できてるからというのがあるのかもしれませんね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

四十万谷:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


四十万谷 正和 / Masakazu Shijimaya

2002年、金沢大学附属高等学校卒業後、慶應義塾大学経済学部に進学。少林寺拳法にも打ち込む。

2006年、『ハウス食品株式会社』入社。採用・労務・人事制度など、一貫して人事関連に携わる。2017年、『株式会社四十萬谷本舗』入社。2019年、専務取締役に就任。

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