STORY:税理士法人のむら会計 野村篤史氏 -ビジネスの第一線で活躍するIPPOコーチだからこそ、経営者の悩みに寄り添ってもらえる-

協働日本で生まれた事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

協働日本のコーチングプログラム「IPPO」を受講された方・企業の方をお招きし、コーチングを受けたことによる変化についてインタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、税理士法人のむら会計の代表 野村 篤史氏にお越しいただきました。
税理士法人のむら会計は石川県金沢市玉川町で 50年以上続く会計事務所です。

前身である「野村清会計事務所」、「株式会社 野村経営センター」、「田丸会計事務所」を経て平成26年に現在の代表である野村氏が事業承継のためにジョインされ、2社を統合する形で税理士法人を設立されました。

野村氏は23歳で公認会計士の資格を取り、大手の監査法人に入社。30歳の頃、奥様のご実家の会計事務所を事業承継されることになりました。事務所の立て直しと並行して組織をマネジメントしていくことが求められる中で、IPPOのコーチングの受講を開始。

インタビューを通じて、コーチングを受けたことにより生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

自己分析だけでなく、組織変革も同時に相談できるIPPOのコーチング。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、IPPOのコーチング受講を決めたきっかけを教えていただけますか?

野村 篤史氏(以下、野村):よろしくお願いいたします。

税理士法人のむら会計の前身である「野村清会計事務所」は、妻の祖父が創業者で、名前や体制を何度か変えながらも、金沢で50年続く会計事務所になりました。2代目はお弟子さんが継いでおり、私で3代目になります。

私は23歳で公認会計士の資格を取ってからずっと東京の大手監査法人で上場企業向けの会計監査に携わっていたのですが、30歳頃に事業承継の打診を受けたことで思い切って妻の故郷である金沢に移住し、入所、その後代表に就任したんです。


自分で事務所を経営していくことになり、売上を作るための営業やマーケティング面、組織作りなど、全体の整理を始めました。前者はなんとか上手く進められて、顧客も少しずつ増えていったのですが、組織のマネジメント面では非常に苦労しまして……長く勤めている職員も多いですし、歴史のある会社だからこその難しさに直面しました。

そこで、組織の立て直しやマネジメントのために、自分自身もコーチングの勉強をするようになったのですが、その中で自分自身のことを客観的に理解する重要性に気づきました。

ちょうどその頃、同じ金沢で老舗の発酵食品会社を経営されている、四十萬谷本舗の四十万谷正和さんからのご紹介で、協働日本代表の村松さんと知り合いました。村松さんは元々のキャリア的にも人事のプロですし、相談に乗っていただく中でIPPOのコーチングのことを知り、自分のことを理解するきっかけを貰えるのではないかと思い、受講することを決めました。

ーーなるほど。実際にIPPOのコーチングではどのようなことをされているのか教えていただけますか?

野村:基本的には月に1度のセッションを通じて、自分の中の振り返りをしています。コーチとしては協働日本代表の村松さんに担当していただいていて、2020年から受講をはじめて今年でもう5年目になります。
これまでのセッションでは、壁打ちのように話を聞いてもらうだけではなく、キャリアアンカーやライフラインチャート(※)を作成して自己分析を行ったり、人事制度についての相談を受けてもらったりすることもありました。

IPPOのコーチングでは純粋なコーチングというよりも、メンタリングのように新しい視点を示唆するように、アイディアや考え方のヒントを貰えるところが魅力だと思っています。
私自身は、結構自分だけでも考えを整理できるタイプではあるのですが、村松さんのコーチングを受けることで自分の中になかった知識や視点が増えていきましたし、仕事で一番悩んでいた人事のことについて人事の専門家としてのアイディアをいただけたことがありがたかったです。

ーー思考の整理やモチベーションを高めるような一般的なコーチングだけでなく、事業の相談にも乗っていただいていたんですね。

野村:はい。村松さん自身が経営者ということもあり、私自身の個の成長と、事業の成長の両輪を支援、伴走してくださいました。

のむら会計は元々、文鎮型組織のように私がトップにいて、部下は横並び、全員私が直接マネジメントをするような構造になっていました。IPPOのコーチングを受けるようになって、タイミングを合わせるように組織構造化を図っていったんです。なので、組織構造をどのようにすればよいかであったり、評価制度の在り方であったりという人事の悩みについてご相談することがありました。

自分の中で整理をした上で「このような制度にしようと思っている」、という話をセッションの中ですると、その考えに至った私自身の思考、理由や背景を深掘りするような質問をしていただけるんです。

深掘りする中で、新しい視点のヒントや、自分でも気づかなかったような本質的な部分への気づきなどがあり、絶対的な答えがない中でも納得感を持って意思決定をできるようになっていきました。

事業への単なるアドバイスだけでなく、意思決定者である私自身に向けたコーチングを並走してくださったことで、納得感がある決断を後押ししていただいてるように感じます。


まるでルービックキューブの裏面を想像するようにに、コーチの質問で新たな視点に気づけた。

ーーご自身を理解することをきっかけの1つとして受講されたとのことでしたが、組織変革など幅広い整理をされたようにお見受けします。IPPOのコーチングを受けてみて感じた変化や、成果と感じられることがあれば教えていただけますか?

野村:そういったアドバイスをうけて~~気持ちが整理~~課題が明確になりました。

課題だった組織の構造化を進めたことが1つの大きな変化であり、成果だと思います。

文鎮型組織時代は、私が1人で14人の部下と1on1を実施していました。自身もコーチングを学んでいたこともあり、1on1や部下との対話自体に大きな問題はなかったのですが、リソース面での厳しさがありました。

相談しながら構造化を進めた結果、部長を3名置き、約5人で1チームの体制で各職員との1on1を任せることにしました。私と職員との直接の接点は減ってしまうものの、私自身は細かいところに惑わされず、経営者がすべきことに集中できるようになりました。

部長たちもそれぞれ責任を持って部下を見てくれるようになり、職員たちも今までよりもしっかりと話を聞いてもらえる環境になったのではないかと思います。

もちろん、トップと職員が直接話をする機会が減ってしまうことのデメリットもあると思いますが、トータルで見るとポジティブな面が大きかったと思っています。

また、私自身、事務所の経営について迷うことも多かったんです。監査法人勤めからいきなり事業承継をしたということもあって、既に長く続いていた体制の中に入って部下を抱えることの難しさに、時に弱音を漏らしてしまうこともありました。それでもコーチングの中でネガティブな面にも寄り添っていただきながら、整理をしていくことができたことで、結果的に諦めることなく変革に取り組むことができました。

ーー精神的な面でも、実務的な面でも、一歩踏み出していくことができたんですね。長くコーチングを受けられている中で、野村さんご自身は、「コーチングを受けることの価値」をどのように考えていらっしゃいますか?

野村:そうですね。やっぱり、自分だけの視点で物事を整理するとどうしても観点が偏ると思うんです。その点、コーチングのセッションの中では「この人の立場だとどう感じると思いますか?」「今の時点ではそう思うかもしれないが、長い時間軸で考えたらどうですか」など、他の人の立場や、長期的な目線に気づくきっかけになる問いをもらえるんです。

自分の視点や価値観に基づいた整理は一人でも十分できるかもしれませんが、視点を切り替えるための質問や考え方は、なかなか自分だけでは出せません。

ルービックキューブで例えると、全部で6面あるうち、自分の視点からは3面しか見えないじゃないですか。でも裏側にも必ず3面ありますよね。自分の視点だけでは見えない反対側の面は、他の人の言葉を聞かないと見えてこないんです。

私から見えない反対側の3面は、事務所の職員の視点からしか見えないかもしれないわけです。だから、第三者に自分から見えない視点のヒントを振ってもらうことで、想像して解像度を上げていくことができるようになる。

対話の中で、自分だけでは出せないような視点の質問をもらえることで、新たな見え方ができるようになるというのがコーチングの価値ではないかと思います。

協働日本の強みは、多様なキャリアと専門性で「内面から引き出す」力。

ーーIPPOでは、ほとんどのケースで「複業人材」がコーチを務めています。こういったIPPOのコーチ陣の特徴についてはどのように思われますか?

野村:コーチングを受ける側としては、皆さんがそれぞれ「コーチ」として以外にも色んな立場や仕事を経験されているほうが、近い立場で対話できるように感じます。「組織勤めをしているからこそわかる悩み」や「自分で経営をしているからこそ持っている目線」などが受講者の本心を引き出すことに繋がるのではないでしょうか。

実際、同じ悩みを経験されている方のほうが、「わかってもらえる」と感じて話しやすい面があります。例えば私は村松さんにコーチをしてもらっていますが、村松さんご自身も協働日本を経営されている経営者でもあるので、同じ経営者として近い立場から意見を聞きたいと思える部分があります。もしも専業コーチの方であれば、「言ってもわかってもらえないかも」と感じて、そこまで深い部分の話ができなかったかもしれません。

IPPOのコーチの皆さんは、それぞれが色々なキャリアを経験している強みがありますよね。私自身も、村松さんを単なる「コーチ」としてだけでなく、「同じ経営者」として、また「人事の専門家」としても頼りにしています。


ーー引き続き、IPPOのコーチングを受講されるとのこと、今後の展望や期待について教えてください。

野村:はい。今までの4年間は、自分だけがコーチングを受けていましたが、5年目に入ってからは、部長陣にもコーチングを受けてもらうことにしたんです。

私が部長の悩み相談を受けると、その相談についての回答が指示になってしまう可能性がありますし、本人たちも気軽に相談もできないかもしれません。私も時に弱音を吐かせてもらったように、嫌なことがあれば遠慮なく「嫌だ」と言えるようにしたい。だからこそ、外部の方に相談できる環境を作りたかったんです。

IPPOのコーチングであれば、人事分野の専門家の方もいらっしゃるので、組織としてもコーチングを受けていくことで、部長陣のマネジメントにも新たな視点や成長が生まれると思います。

部長陣が成長していくことによって、組織が更に自立していくことを期待しています。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本へのエールも兼ねて、一言メッセージをお聞かせください!

野村:地元金沢で税理士業をやっていると、協働日本の伴走先企業の経営者からお話を伺うことがあります。

中小企業は社長の知識やこれまでの経験をもとに動いていることも多いです。

素晴らしいアイディアを持っていても、リソースの面で想いを実現するのに時間がかかっていたり、社員の育成を行う余裕がないこともあります。そういう状態の会社には、やはり外部の専門家の視点を入れるべきだと私は思っているんです。

協働日本には、IPPOのコーチだけでなく、協働プロにもコーチング経験者が多いので、上から知識を与えるのではない、内面から引き出すようなコンサルができることが強みだと思っています。

色んな角度から、中小企業の皆さんが自ら事業の発展を生み出し、元気になれるようなサポートをしていただきたいと思っています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

野村:ありがとうございました!

野村 篤史 / Atsushi Nomura

慶応義塾大学を卒業後、公認会計士資格を取得。大手監査法人で最先端の会計・税務を習得し、さらに金融機関の監査を経験したことで、お金を貸す立場からのモノの見方を学ぶ。

単に税金の知識だけでなく、金融機関監査で得た金融の知識やコーチングの技術を組み合わせて、「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションとしている。

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