VOICE:協働日本 久米澤 咲季氏 -IPPOのコーチングは「大きな夢」へ皆んなで向かう、第一歩-
協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。
今回は、協働日本のコーチングサービスIPPO事業で、コーチとして多くの方のキャリアの伴走支援に携わる久米澤 咲季(くめざわ さき)氏をご紹介いたします。
大学卒業後、外資系法律事務所に勤務。その後、アメリカの大学院にて国際開発学修士号取得。国際労働機関勤務を経て、国際協力機構にてインドネシアのインフラ開発を3年間担当。その後NPO法人で、途上国開発支援や人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの実施、コーチとしてキャリアコーチングや研修を担当されています。今は更なるスキルアップのため、大学院生として臨床心理学も学んでおられます。
「人」にクローズアップした伴走支援を行っている協働日本の「IPPO」事業の魅力や、実際のコーチングを通じて感じた変化、得られた気づきや学びを語っていただきました。
(取材・文=郡司弘明、山根好子)
誰もが「自分らしく」生きられるように。新たな挑戦をしながらキャリアを重ねていく
ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは久米澤さんの普段のお仕事についてぜひ教えてください。久米澤さんはNPO法人で人材育成×社会課題解決を目指すプログラムに取り組まれている傍ら、コーチングのお仕事をなさっているんですよね。
久米澤 咲季氏(以下、久米澤):よろしくお願いします!はい、元々は途上国開発支援や人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの実施に携わったり、コーチとしてキャリアコーチング行ったりしていました。ただ、実は最近仕事を退職して、この4月から”フルタイムの大学院生”になったんです。当面は学業の合間や土日を使ってコーチングのお仕事をしていく予定です。
ーーそうなんですね!何を専攻されているのか、また大学院を受験された背景などもお聞きしてもよろしいですか?
久米澤:今は臨床心理学を学んでいます。コーチングの仕事をしていく中で、自分の思い通りに生きられない方がたくさんいるんだなと感じたことがきっかけです。例えば最近では、コロナ禍で気分が落ち込んでしまい、うつ病っぽくなったという話もよく聞きますよね、「本当はこう生きたい」という想いがあるのに、心の健康の問題で不本意な状況に追い込まれてしまっている。コーチングでは解決できない、心の健康のことで困っている方の支援をしたいと思って、大学院受験を決意しました。
NPOで働いていた時に、パートナーシップを結んでいる他のNPOで不登校児や移民・難民などを支援しているところもあり、心理の専門家がいると助かるという話を耳にすることもあったんです。それであれば、自分もそういった臨床心理学の知見や心理カウンセリングのスキルを身につけることで、力になれるのでは?と考えたのも、理由の一つです。
ーー素敵な挑戦です。元々コーチングに興味があったのでしょうか。
久米澤:いえ、大学時代には国際開発の勉強をしていて、社会人になってからもアメリカの大学院にて国際開発学を学び、国際協力機構でインドネシアのインフラ開発を担当していました。そんな中で”人”に興味を持って、少しずつ人材育成の分野の仕事にシフトしていったんです。7〜8年間人材育成×社会課題解決のプログラムに携わっていた中で、「コーチング」に出会いました。コーチングとは、相手の話に耳を傾け、質問や提案などを通じて相手の内面にある答えを引き出す手法です。
人材育成の分野で、伴走支援をしながら皆さんのチャレンジを応援するために、ちゃんとコーチングを勉強したいなと思ったんです。コーチングを学ぶためにセッションに参加してみて、「なんてパワフルなツールなんだろう!」と衝撃を受けたのを覚えています。何かを与えたり教えたりするわけではなく、対話を通じて人の内面を引き出すことで、意識や行動までも変えることができるという、コミュニケーションの力の可能性を感じ、私のコーチとしてのキャリアがスタートすることになりました。
すでに自分の中にある「答え」を引き出す──宝探しのような面白さがコーチングにはある
ーーここからは、協働日本での活動についてお聞きしたいと思います。キャリアの伴走支援を行う「IPPO事業」ですが、具体的にどんなお取り組みをされているのか教えていただけますか?
久米澤:ご自身のありたいキャリアの言語化と、次の一歩に踏み出すサポートをするのが、協働日本の「IPPO事業」です。2020年に事業がスタートしてから、これまで約20名の方のコーチングを担当してきました。
ーー「IPPO」のコーチングプログラムを受講される方は、どんな方が多いのでしょうか?
久米澤:クライアントの方の持つテーマは様々ですが、特に「IPPO」のクライアントの方の特徴としては、キャリアで新しいことにチャレンジしたい、人生で本当にやりたいことを見直したいという方が多いかもしれません。
だいたい月1回くらいのペースで対話を重ねていくのですが、課題を明確化して、解決策を考え、実行して振り返るというサイクルを回していくので、一定の期間──大体半年から1年のスパンでコーチングをしていきます。
ーーなるほど。コーチングを受けることでご自身と向き合い、どんどん行動を変えていくイメージですね。実際に受講前と後では、どんな変化が生まれるのですか?
久米澤:コーチングを受けると、皆さん徐々にbeing(=あり方・価値観)と、doing(=行動)の両方が変わっていくのが印象的ですね。
例えば、過去に担当した方の中に、「キャリアの踊り場にいる」状態の20代後半の女性がいらっしゃいました。受講開始当初は、今までやってきた仕事もやりがいがあり面白いけれど、本当にこのままで良いのか悩んでいらっしゃいました。もしかしたら新しいチャレンジをするタイミングなのではないか?と思うこともあるけれど、別の環境でやっていけるかどうかの不安もある。今進むべきか、それとも留まるべきか?選択に自信が持てないという状態だったんです。
でも、コーチングを通じて対話を重ねていくことで、「30代に向けて新しいチャレンジをすることが自分には必要なんだ!」と考えが変わっていきました。
では、どんなチャレンジがしたいのか?と更に問いを立てて掘り下げていきながら転職先を探して、最終的には希望する新しいキャリアに進むことができたんです。
ーー最初の時点で悩んでおられた「新しいチャレンジ」こそが本当にやりたかったことだったんですね!
久米澤:そうなんです!実は大抵の場合、悩みの「答え」はその人の中にもうあるんですよ。ただ、はじめはぼんやりとしていて自分でもわからない。なんだかもやもやした状態にあるのですが、壁打ちを続けていくことで解像度が上がっていき、最終的には最初から自分の持っていた「答え」に気付けるようになります。
自分にとって、自分の人生にとって何が大切なのか、俯瞰的な視点から問いを投げることで答えを引き出すのがコーチの大事な役割です。コーチングの面白いところはここで、クライアントの方が自分でも気づいていない良いところやポテンシャルが、対話の中から見つかっていくところです。まるで宝探しをしているようで、好奇心がくすぐられるんです。
私は、クライアントと自分は鏡の関係だと思っていて。新しいことに勇気を出して進んでいく姿や、皆さんが持つそれぞれのすばらしい価値観に触れることで、自分自身も新しい視点を得て成長していけるのもコーチングの素晴らしいところだと思っています。
「コミュニティとして向き合えるコーチング」で、1:1よりも大きなインパクトを生み出す
ーー久米澤さんが協働日本に参画されたきっかけをお伺いできますか。
久米澤:ちょうど協働日本がスタートした頃に、代表の村松さんに声をかけてもらったことがきっかけです。協働日本を通じて「人が変わっていく」ということを大切にしたいので、会社組織向けの協働日本事業だけでなく、個人へのコーチングもやりたいんだ、とおっしゃっておられて。
そのビジョンに共感して、自分にできることがあるならぜひ協力させて欲しいということで、「IPPO事業」のコーチとして参画しました。ひとりひとりのマインドや行動が変わることが全てのスタートなので、より多くの人が「一歩」を踏み出すことはとても大切なことだと思うんです。
ーーなるほど。久米澤さんは協働日本以外でもコーチングのお仕事をされていますが、協働日本の「IPPO」ならではの特徴や、他のコーチングとの違いを感じることはありますか?
久米澤:そうですね。キャリアコーチングを軸に置いているので、クライアントの方は、キャリアの中でもっと活躍されたい、新しいチャレンジをされたい方が多いというのが特徴的ですね。コーチングは通常、コーチとクライアントの1:1で行うので、2人で完結するものですが、「IPPO」のコーチングでは、「協働日本のビジョン・ミッション」に向かっておひとりおひとりと関われている感覚がありますね。「協働日本」というコミュニティとして、クライアントの方に向き合えるような感じでしょうか。
また、「IPPO」のクライアントの方とは、「協働日本」の他のお仕事の中で関われる機会に恵まれることもあります。例えば、協働日本の「九州地域統括」である加治屋 紗代さんのコーチングを以前担当したのですが、コーチング終了後に別のお仕事でご一緒する機会もありました。迷いながらも鹿児島でチャレンジをされていた姿にすごく刺激をもらいましたし、コーチング以外のご縁にも繋がっていったことはとても嬉しいです。
コミュニティとして縁が広がり、深まっていく。そんな「IPPO」の、「コミュニティとして向き合えるコーチング」で、「一人」対「一人」で発生するインパクト以上のものが生まれている実感と喜びがあります。
ーー「コミュニティ感」という人の繋がりの強さは、本当に協働日本ならではですね。コーチ同士の方の繋がりというのもあるのでしょうか。
久米澤:はい!IPPOのコーチ同士のグループをFacebookの中に作っていて、定期的に集まって情報交換したり勉強会を企画しているんです。
オンラインで集まることが多いですが、鎌倉にリアルで集まったこともあります。「最近はどんなことをやってる?」「どんな手法を使ってる?」などディスカッションしたり…最近うまくいったこと、上手くいかなかったことなどを話し合って、お互いにコーチングしたりしています。
コーチングをしていくとだんだん自分のスタイルができてくるんですが、当然いろんなやり方があるので、バックグラウンドの違うコーチが集まって話をすることで、他の方の手法を知ることができたり、相談しあえるのはとても心強いです。こういった繋がりも、やっぱり協働日本特有かなと思います。
コーチングは「大きな夢」へのひとつの手段
ーー「IPPO」のコーチングを通じて、久米澤さんが実現したいことはありますか?
久米澤:もっといろんな人にコーチングが届くといいなと思っていますね。「IPPO」のコーチの数もクライアントもどんどん増えていっているので、協働日本を通じて今までコーチングに触れたことのなかった人たちにも知っていただき、新たなチャレンジの第一歩にしてもらいたいです。
私は、「自分の情熱や才能に正直な人を応援する」を自分のミッションとして掲げています。コーチとして伴走することで、胸に秘めた情熱や価値観を言語化──形にしていくお手伝いをしています。この、情熱や才能・価値観こそが人の「自分らしさ」であると思っているので、より多くの人たちがコーチングを通じて改めてご自身と向き合い、自分の人生を自分らしく生きることができるようになって欲しいです。
また、最近「IPPO」のコーチングでは、個人へのコーチングだけでなく、法人や組織全体へのコーチングをする機会も増えてきました。個人が変わると組織も変わる。組織が変わると社会に与えるインパクトもそれだけ大きくなる、というサイクルがあると思うんですが、個人だけでなく組織開発としてコーチングに携われることで、社会を変えていくことにより近づいている。組織開発として協働日本に関わっていくことができるのも、今後の楽しみのひとつなんです。
ーー本日はありがとうございました!最後に、久米澤さんから、今後IPPOでコーチとして活躍してみたいという方、IPPOのコーチングを受講してみたいという方にそれぞれメッセージをお願いします。
久米澤:はい。いろんなコーチがいた方が、いろんな人にリーチできるので、多様な仲間ができるといいなと思っています。特に、本気で人を応援したい人、そしてその先に「協働日本の描く大きな夢」に向かって皆で歩いていることを共有できる人がコーチとして一緒に活動していただけると嬉しいです。
そして、コーチングを受けてみたいという方は、ぜひ気軽に扉を開けてみて欲しいです。コーチングを受ける方は、最初から大きな夢があるわけでもなくても良いと思っています。本当にちょっとした悩みでも構いません、ぜひお話を聞かせていただきたいです。実際に対話を始めてみたら、そこからきっと必ず何か見つかります。今の自分を少しでも変えてみたい方、いつでもお待ちしております。一緒に一歩を踏み出しましょう。
ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。
久米澤:ありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします。
久米澤 咲季 Saki Kumezawa
上智大学大学院 総合人間科学研究科 心理学専攻
大学卒業後、法律事務所での勤務を経て渡米し、大学院にて国際開発学修士号取得。帰国後、国際協力機構(JICA)にてインドネシアのインフラ開発を3年間担当。2015年NPO法人クロスフィールズ加入、人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの企画実施を担当。2018年~2022年は事業統括として経営やチームマネジメントに従事。米国CTI認定プロフェショナルコーチ(CPCC)としてコーチング業も行う。現在は、大学院にて臨床心理学を勉強中。
久米澤 咲季氏も参画するIPPO事業については こちら
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