VOICE:足立 紀章 氏 -「変化したい経営者」を支えたい。地方の垣根を越えた人材交流で成長の芽を生み出す。-
協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。
今回は、協働日本で事業戦略のプロとして地域企業の伴走支援を行う足立紀章氏のインタビューをお届けします。
現在、株式会社ベネフィット・ワンで執行役員として新規事業を統括されている足立氏。これまでのキャリアの多くを事業開発の分野で活躍されてきた中で、ご自身の経験を社内だけでなくもっと広いところで活かせないかと考え、協働プロとしての活動をスタートされました。
足立氏の協働を通じて生まれた支援先の変化やご自身の変化だけでなく、今後実現していきたいことなどを語っていただきました。
(取材・文=郡司弘明・山根好子)
自身の事業企画のノウハウを社会で役立てたい。協働日本への参画を通じて、新しい挑戦を始めていこうと思った。
ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、足立さんの普段のお仕事やこれまでのキャリアについて教えてください。
足立 紀章氏(以下、足立):よろしくお願いします。
現在は株式会社ベネフィット・ワンで新規事業を担当しています。これまで、海外の大学を卒業後、新卒で株式会社パソナに入社し、主に採用コンサルを担当していました。その後10年くらい働いた後、仲間と一緒にプロフェッショナルバンクという会社を作り、新しいことに色々挑戦してきました。
そしてその後、ネットの求人系ベンチャー企業で新規事業開発やM&Aに携わり、楽天に転職して引き続き事業開発をやってきました。2011年に転職して今に至ります。社会人として働いた28年のキャリアの中で、大体20年くらいは事業開発に携わってきたキャリアですね。
ーーかなり長く事業開発に携わられている印象ですが、元々ご興味がおありだったのでしょうか?
足立:学生時代から、人と違うことをしたいという意識は強かったかもしれません。だから大学も海外に進学し、新卒で就職した頃は他の新卒の中では少し浮いていて(笑)
そういった尖っていた部分があったかもしれませんね。それが理由かはわかりませんが、決まったことを皆でやるような仕事よりも、「新しいことを始めるから手伝って」と仕事を振られることが多かったように思います。
自分が望んでずっと事業開発をやっているというよりは、プロジェクトの立ち上げが終わったらまた別のことが起こってそちらに注力する、そんなことの積み重ねのキャリアだったように思います。
ーーなるほど。協働日本に参画されたきっかけについてもお伺いできますか?
足立:コロナ禍で環境が変わり、振り返る時間ができたので、自分のキャリアを今後どうしようかと考えたんです。社内のプロジェクトでの事業開発というのは、基本的に会社の事業領域内のことにしか携われないじゃないですか。一方、世間的には事業開発の経験について一定のニーズがありそうだと感じていたので、この経験やノウハウを社外でも活かせないかなと考えていました。
そんな時に、楽天時代の後輩である小谷克秀さんが協働プロとして活動しているという話を聞いて面白そうだと思い、協働日本代表の村松さんを紹介してもらったことがきっかけです。
村松さんから、「今の日本では、地方の企業にこそ大きな可能性があるが、リソースが不足している」という状況を聞き、ここでならこれまで自分が携わってきた、事業開発領域のノウハウを必要としている方に還元できる上、自分自身も新たな事業領域にチャレンジできると考え、参画を決めました。
研修プログラムを経て参加者に生まれた、大きな成長に感動。
ーー続いて、足立さんがこれまで参画されてきたプロジェクトについて教えてください。
足立:これまで3つのプロジェクトに携わっています。
1つは、金沢で数多く宿泊施設を運営している株式会社こみんぐると協働日本が共同開発した、短期集中型で経営課題に向き合う合宿型研修『Workit』の講師。
2つ目は都市部の企業のミドルマネジメント層の人材研修。
そして3つ目は『経営リーダー育成プログラム』で事業開発のメンタリングを担当させていただきました。
ーー足立さんには地域企業への伴走だけでなく、協働日本の提供する様々なプログラムの設計や運営に携わっていただいていますね。それぞれ詳しくお話を伺えますか?
足立:はい。今お伝えした、『Workit』という合宿型研修は、金沢の地元企業と都市部の企業の若手社員がチームを組んで、3日間の経営課題に取り組むというプログラムです。
「机上の空論」ではない、リアルな場であることが特徴ですね。実際に現場に足を運んだり、ファクトを取りに行って、3日間寝ずに取り組むくらい企画に没頭するんです。そうやってできた「リアルな企画」を、最終日に社長に向けてプレゼンしてもらいます。出来上がった企画には、地元企業のメンバーの持つ経験や知識だけではなく、都市部メンバーのノウハウや知恵も注入されています。
全然違うバックグラウンドを持つメンバーが集まるので、私たち講師陣がファシリテートし、軸がぶれないようにサポートしていきます。そうすることで3日間の間に企画はグッとまとまっていきます。初日と最終日の参加者の変化には、毎回感動します。
ーー具体的な変化についてもぜひ教えてください!
足立:特に地元企業側の方の中には、頑なに殻に篭ってしまう方がいらっしゃるんです。多くは、ずっとその企業に勤められている方ということもあり、思考が凝り固まり気味で、初日は新たな思考で進むのが難しい状態なんです。
ところが、3日間の都市部の人材とのコミュニケーションを通じて、柔軟に意見を聞けるようになったり、活発なディスカッションができるなど、ぐんぐんとレベル感が上がっていきます。
「県外の人にはどうせ分からないだろう」「たかが研修で何が変わるのか」とやや消極的な雰囲気だったのが、「本当に自分たちの会社をどうにかしていきたい!」と前のめりな姿勢に変わっていく。これはほぼ毎回見られる大きな変化、成長ですね。
そういった部分も踏まえて、『Workit』はすごくいいプログラムだと思っています。参加者の皆さんの短期間での変化は、ご本人たちにも実感や達成感を感じていただけていると思いますが、我々運営側としても、やってよかったという達成感を得られるプログラムです。
3日間の研修を終え、4日目以降それぞれの立場に戻った時に、この変化をどれだけ維持できるか、活かせるようになるかという部分へのアプローチは、まだ試行錯誤しているところですが、研修期間の3日間はとても満足感が高く、全員にとってプラスになるプログラムだと思っています。携わらせていただけること自体も私にとって大きな学びになっており、とてもありがたいです。
ーーありがとうございます、協働日本としても嬉しい限りです。続いてミドルマネジメント層の研修についてはいかがでしょうか?
足立:またあるときは、都市部の大手IT企業のミドルマネジメント層に向けた研修を担当しました。
「言われたことをこなすだけの開発ベンダーでは、この先生き残っていくのは難しい」という視点を持って、依頼を受けたことだけをやるのではなく、顧客の状況を見て、「こちらから積極的な提案ができる人材を育成したい」という明確な目的のもと実施した研修でした。
次期部長候補の方達8名に向けて、3ヶ月の間、自らお客様のことを学び、ファクトを取って提案・企画をして動ける人材を育てるためのメンタリングを担当させていただきました。参加者には、顧客企業の業務内容・課題などを徹底的に調べてもらい、見えてきた課題に対してどんなものを提供できたら、顧客のさらなる成長に貢献できるか?という視点で、経営企画的な目線を持って提案するということに挑戦してもらいました。
経験を重ねてきた大手企業のミドルマネージャーの方達が変わるのはなかなか大変です。お話をしていても、自ら壁を作って「できない前提」で物事を考えている方も多かったんです。
そこで、プログラムの中でまずは顧客のことを知るため、目や耳でファクトを取ってきてもらいました。その上で自分たちに何ができるか考え、一緒にブラッシュアップしていくと、その壁も徐々に取り払われていき、実際に提案できる形になってきたんです。
例えば、社内インフラを統一するとコストダウンできるという提案などは、これまで通り先方から依頼を受けた作業をこなす中では辿り着けない、顧客も気づいていない本質的な課題を解決するための提案になっていきました。
3年くらいの中期的なロードマップも作って、研修後には実際に企業へ提案もされたようで、実践で活かしていただけるようにもなって非常に良かったと思っています。
ーー3つ目は山岸製作所様との「経営リーダー育成プログラム」ですね。
足立:はい。「経営リーダー育成プログラム」では、山岸製作所の営業・経営企画の専任マネージャー、奥永さんのメンタリングを担当しました。
プログラムは大きく前半と後半で違うことをしていたのですが、まず前半のパートでは山岸製作所の価値や課題を本質的に考え抜くセッションを実施しました。経営者の視点から山岸製作所における事業開発を考えてもらい、後半のパートでは、実際に考えた事業を進めていくためにどうすれば良いか?という実践に向けたセッションを行いました。週に1回オンラインの伴走プログラムで、前半のメンタリング担当は協働プロの藤村昌平さん(協働日本CSO)、後半を私が担当した形です。
後半のセッションでは、前半のパートで絵に描いた「やりたいこと」を、明日からやれと言われたら実践できますか?どうやっていけば良いか?ということを徹底的に考えていきました。
例えば、奥永さんのやりたかったこととして「家具を売るだけではなく、人の生産性や採用にもプラスの影響が出るオフィスを作るためのコンサルティングをしたい」というテーマが出てきました。そこで、改めて「コンサルとは?」と考え、マーケットが本当にあるのか、顧客ニーズは?どうやってサービスを提供するのか……など、30個ほどのタスクを洗い出し、半年かけて1つ1つ整理しました。最終的にはROIまで出して3ヶ年分のプランニングを作り、山岸社長に提案されたんです。
伴走する中で特に印象的だったのは、1年間のセッションを通じて奥永さんの山岸製作所への想いが自分ごと化されていったことです。奥永さんは元々とても真面目で、目の前の顧客に向き合うことに長けた方でした。一方で、仮説立てやプランニングに苦手意識を持っていらっしゃいました。
事業を1つ進めるために多面的な情報が必要であるということや、事業に関連したリアルなタスクを通じて、仮説を積み上げていき、新しい視点を持って素晴らしいプランニングができるようになられていました。
日本の未来を担う「変化したい経営者」の相談窓口になりたい。協働日本がきっと変化の起爆剤になる。
ーー協働の中で足立さんご自身の変化を感じることはありますか?
足立:変化は如実にあったと感じています。これまで自身の仕事の中では、結果を出すことばかりに注力してきたことが多かったのですが、協働の中で、成果に至るプロセス、思考、考え方など、結果の手前の部分もとても重要だと改めて気づかされました。
その気づきがあって、現業のチームメンバーに対してとても寛大になったと思います。成果に至るプロセスの重要性については、私もどこか忘れてしまっていたというか。これまで感覚でやってきていたところがあったので、思考のプロセスを言語化し、可視化、体系化していくということをしていなかったんです。自分にとって当たり前になっていたことも、改めてやっていくことが重要だと思いました。
また、世の中には変化に敏感な、「変わっていかないといけない」という危機意識を持った地方の中小企業も想像していたよりずっと多いと気づきました。私らの持つノウハウを提供することで、双方にとって更なる発展に繋げていきたいと想いを強くしました。
ーーなるほど。今のお話に通ずるところもあるかもしれませんが、足立さんはこれから協働日本でどんなことを実現して行きたいですか?
足立:コロナ禍を経て、オンラインで完結する仕事の方法が定着し、地域の垣根を超えたコミュニケーションが容易になりました。情報格差もなくなっていく中で、都市部・地方にかかわらず、現状を変えたい・変わりたい・新しいことをやりたいという経営者の方ともっと出会いたい、協力したいと思っていますし、同じ志を持った方を増やしたいですね。
また、協働日本の伴走支援では必ず伴走先の企業の担当者の方に自ら手を動かしてもらうようにしていて、そのやり方にとても共感しています。
協働プロメンバーが担当者の代わりに調査したり考えたりすることは言ってしまえば簡単なことなんですが、それでは協働が終わった後にノウハウは何も残らないですよね。
失敗も良い経験になりますし、トライアンドエラーの積み重ねで、協働先の皆さんと協働プロとの絆や結びつきも強くなる。そうやって同じ目線で事業に向き合う同志を増やしていく、橋渡しのような役目こそ、担っていきたいと考えています。
ーーありがとうございます。最後に、協働日本が今後どうなっていくと思われるか、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。
足立:今後、労働力の減少や経済の先細りが予測される中で、今の日本の企業にできることは、変化していくことだと思っています。その変化を作るきっかけこそが「協働日本」ではないかなと。日本中の、「変わりたい企業」の相談窓口や起爆剤になっていくと思っています。
困ったことがあったら協働日本に聞いてみようかなと思ってもらえるような輪を広げていくことが、今後の日本を支えるのではないでしょうか。
凝り固まって動けずに衰退してしまうのではなく、変化することでそれをブレイクスルーしていける。そんな変化を、協働日本で作っていけるのではないかと思っています。
メッセージとしては一言、「みなさん一緒に頑張りましょう」!(笑)
これからもよろしくお願いします。
ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。
足立:ありがとうございました!
足立 紀章 / Noriaki Adachi
(株)ベネフィット・ワン 執行役員 購買精算事業担当
米国大学卒業後に帰国。1995年に(株)パソナへ入社。主に外資系企業向け採用コンサルタントとして従事。 その後、ベンチャー企業の立上げに拘った後、楽天(株)にて複数の新規事業立上げに携わる。 2011年に(株)ベネフィット・ワンへ入社。 執行役員サービス開発部長や子会社設立から代表取締役社長を4期務める。 その後、全体統括でのデジタルマーケティング、事業推進/アライアンス戦略担当を歴任。 2021年より購買精算事業担当として新たなB2Bモデルの立上げを軸にスケールアップを推進中。
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