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VOICE:協働日本 相川 知輝氏 – 日本のユニークな「食」の魅力を後世に伝えていきたい –

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回インタビューするのは、株式会社ひまじんの代表で、SNSやECの支援や新規事業の立ち上げを専門に活躍されている相川 知輝(あいかわ ともき)氏です。

会社を経営しながら、創業100年を超える飲食店に特化した情報サイト「老舗食堂」を運営されています。これまでに2000軒を超える老舗店を訪問してきた相川氏は、「日本で一番老舗飲食店に訪問している人」として老舗の魅力を語る機会も最近は多いそうです。

2002年に新卒でドコモに入社しその後、大手広告代理店での業務を経験し、2014年に株式会社ひまじんを立ち上げ、独立された相川氏。企業プロモーションや新規事業の立ち上げ支援のほか、事業のコンセプト立案から施策の策定、その後の営業活動についても多くの企業に伴走しています。

日本の食文化を守り伝えていきたいという相川氏の想いと、協働を通じて地域と働く人を活性化していきたいという協働日本の想いが重なったことをきっかけに、昨年協働日本へ参画し、複数のプロジェクトを推進する相川氏。

これまでのご自身の経験を活かし、鹿児島の企業を中心にEC・食に関するプロモーション支援を通じて地域企業の伴走支援に取り組んでいます。

協働先の鹿児島企業で生まれた、伴走支援の効果や変化、協働日本の今後の可能性についてだけでなく、ご自身のこれまでの歩みや「食」を軸とした情報発信への想いも語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

自身の「老舗」や「食」への想いと、協働日本の想いがシンクロした

ーー本日はよろしくお願いします!企業のプロモーション支援を中心としたお仕事だけでなく、創業100年を超える飲食店に特化した情報サイト「老舗食堂」を運営するなど、食を軸とした情報発信も積極的にされている相川さん。ぜひ今回、協働日本で活躍する協働プロのお一人として、色々とお聞きしていきたいと思います。

相川 知輝氏(以下、相川):よろしくお願いします!

ーーまずは、相川さんがなぜ日本で共に取り組むことを決めたのか、きっかけをお伺いできればと思います。

相川:自身が「老舗食堂」という老舗の飲食店を紹介するメディアを運営していることもあり、地域を元気にする、日本全国を盛り上げていくような仕事には、かねてから興味を持っていました。

現在、東京と富山県滑川市での2拠点生活をしています。それも、地域を元気にしたい、そのためにまずは地域に入りたいと思い、大体月に1週間ほど滑川市に滞在しています。

そんな中で、よく一緒に仕事をしているデザイナーの知人から、協働日本で広報をされている郡司さんをご紹介いただき、協働日本の想いや実際の活動などをお聞きしたことがきっかけでした。

協働日本というプラットフォームを通じて、自律的に働く協働プロと呼ばれるプロ人材が、地域事業者様にチームで伴走し、本気で協働に取り組んでいるということや、実際に生まれた変化などをお聞きし、とても興味を持ちました。

地域の企業の経営課題や成し遂げたいテーマに合わせて、協働プロが最適なチームを組んで取り組むスタイルなど、お話を聞くうちにますます興味が湧いてきまして、さっそく都内のカフェでお打ち合わせをさせていただきました。

ーーその節はありがとうございました!実際にお会いして、色々とお話しできて良かったです。

相川:実際に協働日本代表の村松さんと、広報の郡司さんにお会いでき、色々なお話をお聞きしました。その際に伺った、金沢の四十萬谷本舗さんの取り組み事例などはとても印象的でしたね。

伝統食「かぶら寿し」が有名な、140年以上の歴史を持つまさに老舗の四十萬谷本舗さんが、都市の複業人材・協働プロと一緒に、新しいターゲット開拓や経営戦略や経営構造の変革に取り組んでいるというお話をお聞きしました。

私自身が大切にしている「老舗」や「食」への想いと、協働日本の考えがとてもシンクロしていると感じ、その場でぜひご一緒させて頂きたいとお伝えしました。

その後、協働日本が受託した鹿児島県および鹿児島産業支援センターの「新産業ネットワーク事業」などの機会を通じて昨年、鹿児島の企業3社に伴走させていただけることになりました。

いずれも食に関連する企業で、ECやプロモーションに課題や問題意識を持っている企業様です。

自分のこれまでのキャリアからの経験や知識を活用しつつ、ひとつでも多くの成果を生み出せるよう、約半年間色々と試行錯誤を繰り返してきました。

鹿児島県庁で行った「新産業創出ネットワーク事業」の報告会の様子

鹿児島の「食」を一緒に全国へ広げていく

ーー具体的にはどんな伴走型支援を行ったのでしょうか?

相川:お手伝いさせて頂く内容は様々ですが、上流工程の「なぜ選ばれるのか」、「どう勝ち続けるのか」の戦略の部分から、商品作りからお手伝いするケース、サイト改訂、新規を伸ばすためのPR支援と様々です。

例えば、鹿児島市内や東京都内にに飲食店を展開している株式会社ネバーランドさんとのお取り組みでは、コロナ禍の中で新たに自社のECサイトをオープンするというチャレンジを、自らの経験や知識を活用してサポートさせていただきました。

鹿児島市が本社で、こだわりのお肉を全国にお届けする通販事業や精肉販売事業、卸売事業を行っている株式会社1129さんとの取り組みでは、こだわりのお肉を作った新商品開発のサポートだけでなく、Twitterを活用したキャンペーン、ニュースリリースの発信、試食会の実施などもアドバイスさせていただきました。

共通しているのは、「どう売り上げを伸ばすか」なのですが、企業さまのステージや強みに合わせて、施策を考え、仮説を一緒に立てながら伴走し、共に悩みを共有し実行してきました。

ーー伴走型支援を通じて生まれた、協働先の変化について教えてください。

相川:目に見える結果に繋がった瞬間もそうですが、なにより、結果が出てくる過程で、社員の方々がどんどんと前のめりになってくれる瞬間に何度と立ち会えたことがとても嬉しかったです。

例に上げた株式会社1129さんでは、1つのキャンペーンが実施できた後は、リリースやキャンペーンを自発的に進めてくださり、より良いパフォーマンスが出るように、様々な工夫を重ねられています。

株式会社ネバーランドさんでは、自社の強みを「接客」と「商品力」の掛け合わせであると再認識されて、昨年末からEC商品を店頭で販売する施策を実施し、年末キャンペーンでは大きな成果を残すことが出来ました。

直近のプロモーションで、年末商戦を上回るような成果がなかなか挙がらない中でも、一回うまくいかないからってあきらめるという発想になっておらず、社員の方々一人ひとりが改善を繰り返しながら次の施策に取り組んでいます。

ネバーランド社長の加世堂さんのリーダーシップあってこそだと思いますが、成果が出なかったのであれば「なぜ」を考えた上で、別の方法を試し続けるという発想でマネージャーから店舗の従業員まで試行錯誤している姿を見て、会社組織としてますます強くなっていると感じています。

施策の成否は、施策の組み立てだけでなく、実行プロセスもとても重要です。実行面を細かく詰め切れるかはある種の情熱がないと難しいと感じているので、実際に担当者が考え動いてくれるのを見るのは勇気づけられますし、協働のあるべき姿なのだと思っています。

ーー相川さんが、これから協働日本を通じて実現したいことはなんでしょうか?また参画したことで得たことや、学んだことがあれば教えてください。

相川:日本の各地に楽しい場所が増えると、日本って更に面白い国になるよなぁって感じています。そんな一助をしたいというのが、一番やりたい事です。今回、協働日本に参画したことで、その想いを再確認しました。

自分の経験を活かせる場面も多くあった一方で、場所やシチュエーションによっては自身の経験ではまだまだ解決できないことも多くあると痛感しました。

今後、アカデミックなインプットや、更に経験を積むことによって、地域そして企業の課題解決をもっと迅速に出来るようにレベルアップしていきたいと思っています。

また協働日本に参画してから、組織内での熱量の重要性をより痛感しています。協働日本では、協業先の企業の代表者と一緒に動くケースが多いのですが、代表者の発する言葉一つで、組織の動きが大きく変わることを実際にこの目で見てきました。

ご一緒させて頂く皆様は、今までの業務を行いつつ、協働日本と一緒に新しい取り組みを「増やす」ことが多いのですが、ただでさえ忙しい中で、どう時間をやりくりするかに課題を抱えているケースは多いと感じてます。

その中で工夫し、プライオリティをつけて施策に取り組むのですが、最後の部分は熱量がやはり大きく、それが出来る経営者の凄みをプロジェクトで体感する事が多いです。私も経営者としてそうなりたい、と感じました。

地域の食文化と、老舗の歴史をアーカイブしたい

ーーそんな相川さんの生い立ちや、協働日本以外のお仕事についてもぜひ教えてください。

相川:愛知県出身で三重県で育ちました。大学卒業後に新卒でドコモに入社しています。その後は大手広告代理店系の仕事をして、2014年に株式会社ひまじんを立ち上げ独立しました。

そういった経歴ということもあり自分の会社では、企業のプロモーションのお手伝いやコンサルティングであったり、新規事業の立ち上げ支援のお仕事をしています。

比重としては、新規事業の立ち上げ支援が大きくなってきていますね。企業さまからご相談を頂いたのち、事業のコンセプト立案から施策の策定をサポートし、その後は実際の営業まで伴走してご一緒することが多いです。

ーー相川さんといえば最近、「日本で一番老舗飲食店に訪問している人」として様々なメディアで老舗の魅力を語る機会も多いですよね。

相川:ありがとうございます(笑)おかげさまで、取材依頼や取材協力、コンテンツ制作協力といったご依頼も増えてきました。

プロモーション支援のお仕事でも、SNSやECのお手伝いが増えています。SNSについては、個人でもTwitterフォロワーが伸びてきており、それを起点にしたご相談を受けることも増えてきました。

運営する「老舗食堂」は月間で15万回以上のアクセスがある

「老舗食堂」とは・・・約100年経過している老舗飲食店の訪問記を載せているサイト。2015年のサイト開設以来、都内を中心とした全国各地の店舗を紹介している。大衆的な店から高級店まで幅広く訪れており、これまでに訪問した老舗店は2000軒を超える。http://shinise.tv/

ーーそんな相川さんが「食」の情報発信、特に「老舗」のお店を紹介したいと思うきっかけは何だったのでしょうか?協働日本での伴走支援でも、その幅広い知識と経験が活かされているとお聞きしており、ぜひお伺いできればと思います。

相川:もともと地方の食べ物、とりわけ郷土食が大好きだったんです。地方にはその土地だから生まれた食べ物があると同時に、色々な理由から消えていってしまう食文化もあって、どうにかしてその日本全国のユニークな食文化を残したいと思うようになりました。

その地域独特のユニークな食文化が凝縮されている存在が老舗なんだと思っています。その老舗飲食店をアーカイブすることが、きっと誰かのためになるのではないか、と思ったんです。それが、「老舗食堂」を立ち上げたきっかけです。

ーー協働日本での活動を通じて、地域を盛り上げていきたいという相川さんの想いに通じる部分ですね!

相川:この取り組みは自身のライフワークとして、今後も続けていきたいと思っています。

地理的な条件と、食文化の関係性について学びを深めようと、今は通信制の大学で地理を学んでいます。

地理的な差異が文化的な差異にどう繋がっていくのかを、アカデミックな視点から研究したいと思っています。将来は、大学院で研究を続けながら、ビジネスにも活かしていきたいと思っています。

老舗の飲食店を訪れ、創業の背景や店名の由来まで掘り下げることも
全国の老舗の飲食店を、多い時で年間で300店舗近く訪ねる

協働日本は、地域と都市をつなぐ媒体・媒介になっていく

ーー相川さんが協働日本で取り組んでいるプロジェクトやこれまでのキャリア、食文化への関心など色々とお伺いでき、私もワクワクしました。それでは最後の質問です。相川さんは、協働日本が今後はどうなっていくと思いますか?

相川:場所を問わずに働くことができる環境や、複業という形で働く人が増えており、東京などの都市で働くビジネスパーソンの鮮度の高いナレッジが、どんどん地域に持ち込まれています。

それによって強い想いをもった経営者や、行政のリーダーがいる地域がものすごいスピードで変わっていっています。そんな中で協働日本のような取り組みが広がっていくことはある種、必然なんじゃないかなと思っています 。

一方で、これからは今申し上げたような「東京から地域」というナレッジの一方通行だけではなく、相互の交流や、地域の中で生まれた成功事例が、「地域から東京」へ都市の大企業やグローバル企業に還元されていくような逆の動きも増加してくると思っています。

私が「老舗食堂」で発信している、創業100年を超えた飲食店にもそれだけ続いているのは訳があるわけで、地域にはまだまだ魅力や学びが詰まっています。

都会と地域の起業家を比較すると、地域側は商圏のサイズもあって、結果的に事業の幅が広くなると感じています。そのため地域の優秀な経営者の方々は、時代の変化により柔軟に対応しています。将来的には地域で活躍する経営者が、東京の大企業のビジネスパーソンに最新のビジネストレンドやナレッジを教えるなんてことも今後増えてくると思います。

そんな時に協働日本が、地域と都市のビジネスパーソンを相互につなげられる大きな媒体・媒介になっていたら、今以上に日本を元気にできると思っています。

私も協働日本の一員として、そんな期待を持っています。 

ーー相川さん、本日はインタビューありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

相川:ありがとうございました!よろしくお願いします。

相川 知輝
Tomoki Aikawa

(株)ひまじん 代表取締役・プランナー

大手広告代理店に勤務時代に、クルマメーカーの日本初Twitterキャンペーンを仕掛ける等、デジタル・イベントを軸としたマーケティング&プロモーションを多く手掛ける(受賞歴複数あり)。
独立後は、大手企業だけでなく、中堅印刷会社における新規事業創出、中堅建設会社の売上向上支援・PR支援(NHK等露出)、ミシュラン2つ星和食店のPR・新商品作り支援、組織コンサルティング会社のマーケティング支援(その後、マザーズ上場)等を行う。

食領域に関心が高く、日本全国の創業100年越えの老舗飲食店を1000店舗以上訪問(日本一の訪問数)。フードアナリスト協会認定アナリスト、東京カレンダー公認インフルエンサー、フジテレビ食番組企画・プロデュース、ラジオ大阪お取り寄せコーナー担当、朝日新聞社での老舗連載等を手掛ける。食関係のTwitterフォロワーは4.2万人強。

専門領域
マーケティング戦略、事業戦略、組織作り、人材育成

人生のWHY
多様性は社会の豊かさのバロメーター。古き良きものを守ると同時に、新しい価値を生み出すことで、より多様性を担保できる社会づくりを目指す。

相川知輝氏も参画する協働日本事業については こちら

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NEWS:鹿児島県庁での新産業創出ネットワーク事業報告会の様子をご紹介いただきました(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)


NEWS:鹿児島県庁での新産業創出ネットワーク事業報告会の様子をご紹介いただきました(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)

「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会の様子をご紹介いただきました

2023年2月に鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会を株式会社WHEREに取材いただき、WHERE社の運営する地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MBERSHIP」にてご紹介いただきました。

副業兼業を越えた“協働”の可能性!外部人材と伴走し事業課題を解決 | LOCAL LETTER

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、鹿児島県内12社の地域企業様の伴走支援を行っています。

先日2月17日(金)、事業の報告会を鹿児島県庁にて実施いたしました。
協働日本と約7ヶ月取り組みを行った12社の事業者さまの中から4事業者様に発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表いただきました。

記事では、協働日本が協働で生み出した変化や、実際の伴走支援の雰囲気などをご紹介いただいたほか、副業や兼業を超えた「協働」という新たなスタイルについてもご紹介いただいております。

詳細についてはぜひ、LOCAL LETTERの記事をご参照ください。

2022年7月にも「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、協働日本が大切にしている「協働」のプロセスや、実際の取り組み事例について取材いただきました。
NEWS:「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて協働日本の取り組みをご紹介いただきました | KYODO NIPPON

各事業者さまごとのご紹介記事

副業ではなく協働で事業推進。伝統と時代の変化で葛藤した窯元の事例 | LOCAL LETTER

副業より協働で自立支援。活用が追いつかない”大量の糞尿”問題に挑む | LOCAL LETTER

副業以上の関わり、協働で成果を出す。長年の課題”産業廃棄物”へ挑戦 | LOCAL LETTER

副業ではなく協働で外部人材登用。飲食店の強みを活かし新事業成功へ | LOCAL LETTER

ご紹介した事業について

協働日本事業

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鹿児島で熱い「協働」が続々誕生中!県庁での発表会の様子をご紹介します|協働日本|協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する。|note(外部サイト)


株式会社協働日本は株式会社WHEREと業務提携し、同社が立ち上げた、“地域課題” や “社会課題” の解決に取り組む地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」へパートナー企業として加盟しております。

2022年3月3日|【43団体加盟】SNSでは広く、社内だと狭すぎる。個の時代に“ちょうどいい”繋がりを実現するコミュニティ。|株式会社WHEREのプレスリリース

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは
「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」は、暮らしている場所や個人、企業・行政が持っているスキルや経験に関わらず、地域や社会へ主体的に携わり、変えていく人たちの学びと出会いを提供する場所がつくりたい、という想いで立ち上げた地域共創コミュニティ。
LOCAL LETTER MEMBERSHIP

株式会社協働日本 協働日本事業 の詳細ついては こちら

STORY:ネバーランド 加世堂洋平氏 -圧倒的スピード感で可能性を最大限に引き出す協働-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社ネバーランド 代表取締役 加世堂洋平氏にお越しいただきました。

株式会社ネバーランドは、「鹿児島の食を日本全国、世界へ」を合言葉に、茶ぶりなど鹿児島の食材を楽しめる飲食店を経営されており、鹿児島市内に本拠を置き、現在は鹿児島市内に4店舗、都内に2店舗を展開しています。

コロナ禍においては、「生産者とお客様を繋ぐ架け橋になる」という自社の存在意義に立ち返りEC事業を立ち上げ、新たにECサイトをオープンしました。

これまでにない新たなチャレンジの中で協働日本と出会い、光が見えてきたと語る加世堂氏。

今回は協働日本との取り組みのきっかけや、支援を通じて生まれた変化についてお聞きしました。さらには今後の複業人材との取り組みの広がりの可能性について、経営者の視点からメッセージもお寄せいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

「自社ならではのネット販売」を追究、理念を体現できるECサイトを

ーー本日はよろしくお願いします。協働日本との出会いや、進行中のプロジェクトについてぜひお聞かせください!

加世堂洋平氏(以下、加世堂):はい、よろしくお願いします。

ーー現在協働日本とは、EC事業を中心にご一緒させていただいていますが、両社の取り組みがスタートしたきっかけとは、どんなものだったのでしょうか?

加世堂:コロナ禍に入ってすぐの2020年にEC事業を立ち上げ、色々と試行錯誤しながら、なんとか自分たちで運営していました。

その中で、専門家にも相談したいと考え、情報収集をしていたところ、スポット的なコンサルではなく、企業の課題解決にチームで伴走するというスタイルの協働日本が、鹿児島県とも事業を進めていることを知りました。

正解が見つからない中で、自分たちに必要な支援の形はこれだ!と思いました。そこで、鹿児島に居住しながら協働日本で協働プロとして活動されている浅井南さんを通じて、協働日本代表の村松さんと会い、協働することをその場で決めました。浅井さんは元々僕たちのお店のお客様でもあったため、実際の協働のイメージも具体的にお聞きすることができました。

ーーかねてからのお知り合いだった、浅井さんのひと推しもあっての協働スタートなのですね。ちなみにコロナ禍で、それまで未経験の領域であったEC事業を始めた背景についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。

加世堂:コロナ禍において、飲食部門は非常に大きなダメージを受けました。強い危機感とともに、新しい事業の柱が必要となりました。

その中で、僕たちの会社の理念、ミッション「生産者とお客様を繋ぐ架け橋になる」という自分達の存在意義に立ち返ってみたときに、新しいチャレンジとして通信販売、ECサイトを始めることにしたんです。

しかし、いざ始めてみると、未経験だからこその苦労がたくさんありました。販売から発送までのルールやマニュアルを決めるところからすでに手探り状態でした。
大手のECサイトで広告宣伝費をかけ、いわゆるECの鉄則に則ったプロモーションをしたものの、鳴かず飛ばずだったという苦い経験もしました。これはどんなに良いサイトや手法であっても、自社にあった売り方をしていかないと売れないと痛感した出来事でしたね。

また、コロナ禍においてお店の営業だけでは苦しい時期に、「生産者とお客様を繋ぐ架け橋になる」という理念のもとスタートしたEC事業ではありますが、当初は「自分たちは飲食店なのに、なぜEC販売をする必要があるの?」という考え方の従業員もいて、意識を統一したり、理念を共有したりすることに苦労した部分もありました。

加世堂氏の出身地、鹿児島県長島町で養殖される「茶ぶり」。地元では「本当の鰤」という意味の「まこちぶり」と呼ばれていた。
ーーなるほど。実際に協働がスタートしてからは、そういった困難は解消されていったのでしょうか?

加世堂:そうですね。半年間の協働の中では徹底的に、「どういうやり方をすれば店舗と同じブランディングで、EC販売の商品を買っていただけるのか」を考えていきました。まずは「自社に合ったネット事業のあり方」の作り込みにじっくり時間をかけてもらいました。

協働がスタートする前に持っていた「自社に合った売り方をしないと売れない」という実感にもしっくりきましたし、ここを協働プロたちとじっくり考えることができたおかげで今は迷いなく突き進めています。実際、EC事業にも光が見えてきています。

また、「自社に合ったネット事業のあり方」を整理していく中で、自社ならではのEC販売を通じたスタッフとお客様とのコミュニケーションスタイルも確立することができたので、今では「リアルの店舗だけではなくネットを通じてでもお客様にきちんと食材や想いを届けられる」という認識を、当たり前のものとしてスタッフと共有できています。

壁の前に立っている人たち

低い精度で自動的に生成された説明

固定概念を覆し、圧倒的なスピードで進む、「協働作業」

ーー続いて、協働プロと具体的にどのような取り組みをしているか教えていただけますか?

加世堂:協働プロの相川知輝さんと藤村昌平さん、池本太輔さんの3人を中心に、弊社社員とプロジェクトチームを組ませていただきました。相川さん、池本さんの専門領域であるネットビジネスの知識で僕たちがすべきことを手引きしてもらい、藤村さんには事業開発の経験や知識で、プロジェクトをハンドリングをしてもらっています。協働プロにチームで伴走支援していただくことで、圧倒的なスピード感を持って事業開発に取り組めています。

週に一度のミーティングを重ねていくことで、自社に足りない課題を浮き彫りにしてもらっています。未経験の領域だからこそ、成功しても失敗してもその先に何が起こるか想定できないことが多くて、リスクヘッジもできないという課題があったのですが、専門家の力を借りることで見通しが立つようになりました。

例えば新商品の発売にあたって、商品紹介用の写真撮影やページの作成などの作り込みは、世に出る3ヶ月前に始めなくてはいけません。3ヶ月分世の中を先取りして動くことに対してモチベーションを作っていくのが難しかったのですが、伴走していただく中でその重要性がわかり、作り込みの型もできていったのでとても楽になりました。

ーーなるほど。プロフェッショナルの伴走によってすべきことが最適化され、スピード感を持って事業が進むようになったのですね。取り組みをしていく中で、特に印象的だったことはありますか?

加世堂:「ネバーランドらしいネット販売が、これからの時代のニーズと合っている」と言われたことはすごく嬉しかったですし、印象的でした。

飲食店では、一度来た方がリピートで何度も来店されて最終的には常連さんになるということがマニュアル化されているのですが、実際にはリアルな店舗だけでなくネットを通じてでも接点を増やして常連さんになってもらうことができる、と客観的な意見をいただいて、確かにそうだなと。

ミーティングを通じて、僕たちの中の固定概念を覆してもらえたことは、大きな転換点になりました。

協働の最初の成果は、昨年末に作った年末年始向けの茶ぶり特別セットで、過去一番の売上になり、EC売上が前年比200%を達成しました。「特別感のある商品」でお客様に食材を楽しんでいただける、ネバーランドらしいネット販売ができてきたんだという実感が湧きました。

男性の写真のコラージュ

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協働によって会社の価値・可能性を最大限に引き出す

ーー協働日本との取り組みの中で、会社にはどのような変化が生まれましたか?

加世堂:社員ひとりひとりが会社の目指す方向を意識することができるようになったことで、事業運営が効率化されたように思います。

僕は、会社というものには変化の可能性が無限大に詰まっていると考えています。企業価値と、社員の能力・成長性の掛け合わせによって、可能性が最大限に発揮されるという考え方です。そのため、進むべき方向がぼんやりとしていたり、スタッフのモチベーティングをうまくできなかったりすると、どうしてもその力を最大限発揮することはできません。

協働プロとのミーティングを通じて、進んでいく方向性が明確になり、最短距離でゴールに向かうことができるようになったので、スタッフがモチベーションを維持し、納得感を持って業務に注力できるようになりました。ECサイトの運営において、鹿児島と東京に店舗と顧客を持つことは我々の会社が既に持っている大きな価値です。そこに、ポテンシャルが最大限発揮できている状態のスタッフがスピード感を持って事業にあたることで、「ネバーランドとしての可能性」が最大限に発揮できるようになったと思います。

ーーなるほど。スタッフの育成という面でも「協働」の影響を感じることはありますか?

加世堂:はい。何より手探りの中でやる、という時間ロスがなくなるのは大きいです。もちろん、迷ったり悩んだりすることは大切なことなんですけど、トライアンドエラーやPDCAを回す時間が短ければ短いほど、スタッフの価値を上げられるということを実感しました。

同じことをやっていても1年かかるのか1ヶ月かかるのかでは全然違うじゃないですか。長期間のプロジェクトでモチベーションを保ち続けることについても、個々人の忍耐力にはそれぞれ期限がありますし、取り組むことではなく結果・ゴールを目指すことが重要なので、短期間で結果を出すことを繰り返し経験できることは、スタッフの学びとしても非常に大きいと思います。

レストランで写真を撮る人々

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「風の時代」にこそ、複業人材とのかかわりが活きる

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

加世堂:はい。コロナ禍における働き方のニーズや、これからの会社のポテンシャルに対しては複業人材との取り組みは非常に重要だと感じていました。僕が普段から大切にしているキーワードとして、「これからは風の時代」という考え方があります。<地の時代から風の時代※>に時代が変化したことで、個々が大切にするものも会社のあり方も変わっていく。その中で社会課題にどう取り組んでいくかを考えるためには、常に時代を先読みしなくてはいけません。

例えば僕たちは、「鹿児島の食を日本全国、世界へ」という思いを飲食店というかたちで実現してきた会社が、その思いを違う事業でも実現していくことになりました。

そして前述したように、大胆に「あり方を変えていく」ためには、新たな領域の専門的な知識や、なぜそれをするのかの丁寧な言語化が必要だと痛感しました。複業人材のプロフェッショナルとの関わりによって、人材育成の必要なく専門知識を得られ、スピード感を持って動けるという形は、変化し続けなければならないこれからの時代に、とても合っていると思います。複業人材との協働は、風の時代だからこそ実現できる、柔軟な組織の可能性につながると考えています。

※編集注:<地の時代から風の時代>とは
西洋占星術の用語。1842年からの2020年までは「地の時代」と呼ばれ、形あるものや安定などが大切な時代であったとされ、2020年末からは「風の時代」に転換し、目に見えないものや内面、変化が求められる時代と言われています。

ーー地域との協働の取り組みは今後どのようになると思いますか?

加世堂:これからの時代もっと必要とされるようになると思います。

地域の企業が自力で専門性や経験豊富な人材と「出会う」のは大変です。まして、伴走支援してくれるようなチームづくりとなると、一企業ではなかなか困難です。協働日本さんと出会えたことで、それをクリアできました。

それぞれの会社で抱えている課題というのは、「痒いところに手が届かないのに、そもそも痒いところがどこなのかもわからない」状態であることも多いです。協働日本さんは、痒い部分を指摘してくれた上で、そこをかいてくれる人たちでチームを組んでくださり、マッチングしてくれるんです。

これは全国の想いある地域の企業が求めていらっしゃることだと思いますよ。

ーーお褒めの言葉をいただきありがとうございます。新しいことにチャレンジしたい経営者にとって、共に挑戦する存在でありたいと思っています。

加世堂:僕は、従業員に未来を作ってあげることが会社の役目だと思っています。そのために大切なことは、賃金を上げること。そしてそのために必要なことはただ一つ、利益を上げていくことです。

経営者の視点で見ても、会社を利益体質に変えていくために、「協働」は一番リスクがなく効率的だと思いました。スペシャリストを自社で育てるために時間とお金を使うよりも、経験豊富なスペシャリストとチームを組んで、決定権を持つ社長の元で動いた方がスピード感が出ますし、そこから自社にノウハウを吸収していくこともできる。

ーーありがとうございます。それでは最後に一言、メッセージをいただけますか?

加世堂:協働日本さんとの取り組みを通じて、新しい事業に取り組むときにやはり最初に先頭に立って取り組まなくてはいけないのはトップである僕で、僕のあり方・やり方を見てスタッフがついてくるんだなあということも改めて実感しました。本当に貴重な経験ができたと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

加世堂:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

加世堂 洋平 Yohei Kasedo

(株)ネバーランド 代表取締役

鹿児島県長島町出身。青山学院大学理工学部卒業。
2010年12月、鹿児島市内に「特攻チキン野郎」を独立開業。
「茶ぶり」を軸にした鹿児島食材を使ったお店で店舗を展開している。
地域再生と人材育成を軸に組織運営を行い、「鹿児島の食を日本全国、世界へ」を掲げている。
コロナ禍、EC事業、セントラルキッチン事業を推し進め、事業拡大へ繋げている。
直営店舗 6店舗 FC店舗 2店舗 EC店舗 1店舗を運営。
「鹿児島の食で関わる人を元気にする」を会社理念に掲げ、事業展開を行なっている。
2019年 居酒屋甲子園 本大会 優勝
2022年 居酒屋甲子園 本大会 準優勝

株式会社ネバーランド
https://chicken-yarou.com/

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-