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STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

プロジェクトに取り組むパートナー企業の方と、プロジェクトに参画する協働プロをそれぞれお招きし、協働日本がどのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビュー通して聞いていきます。

鹿児島県の奄美大島を中心に生産されており、世界三大織物にも数えられる伝統織物「大島紬」。この大島紬が現在、職人の高齢化や担い手の不足、若者の着物離れも相まって、生産量の減少が続いています。

協働日本では、奄美大島でこの「大島紬」を活かした事業展開をされている、はじめ商事の元允謙(はじめ・ただあき)さん、紬レザーかすりの川畑裕徳(かわばた・ひろのり)さんと共に、大島紬を後世に伝えていくための活性化プロジェクトに取り組んでいます。

今回は奄美のお二人に加えて、本プロジェクトに参画している協働プロの藤村昌平氏にインタビューさせていただきました。

お三方それぞれから、本協働プロジェクトに取り組んだ経緯や感想、今後の想いを語っていただいたほか、今後の複業人材との取り組みの広がりについても事業者視点から、お話しいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

Web会議サービス(Zoom)を用いて元氏、川畑氏、藤村氏へインタビューを行いました。

出会ってすぐにワクワクできる取り組みになる予感があった

みなさん、本日はよろしくお願いします。奄美大島の特産物である、大島紬の魅力をより多くの方に伝え、広げていく本プロジェクト。お取り組みの概要をお聞きして、とても可能性を感じております。ぜひ本日は色々とお聞かせください。

まずは元さんと川畑さんのお二人にご質問です。協働日本と取り組むきっかけについてお聞きしてもよろしいでしょうか?

:今後、大島紬の魅力をどうやって広げていくか、後世に残していくかを考えていく中で、一緒にプロジェクトで取り組めるパートナー候補として、静岡にあるJOINXという企業の担当者からご紹介いただきました。

協働プロの藤村さん、若山さん、協働日本代表の村松さんの3人に実際に奄美大島へお越しいただき、色々なお話をさせていただきました。

川畑:私も元さんと同席させていただき、多種多様な人材が所属している協働日本の体制にとてもワクワクしました。

普段私は、個人事業主として一人で仕事に取り組む時間が多く、身軽で動きやすい一方で、事業についてしっかりと相談・壁打ちできるパートナーが欲しいと思っていました。
そのため、各領域で活躍するプロが集う協働日本さんと取り組むことで、自分の持っていない新しい視点でのフィードバックをたくさん頂けそうだと思いました。

:私も同じ印象を持ちました。専門性を持った方とディスカッションできる、そして事業オーナーの視点で相談ができる機会というのは大変貴重です。
もちろん家族や社員といった、身近な相談相手はいます。しかし彼らとは違った視点で本気で向き合ってもらえるような、伴走してくれる協働プロの存在はありがたいと感じました。

–なるほど。元さん、川畑さんのお二人はこれまで、こういった外部人材や複業人材とのお取り組み事例はあったのでしょうか?

川畑:私は複業人材との取り組みは今回が初めてです。普段は地元の奄美大島を中心に活動をしていたので、島外の複業人材の方々からいろいろな話を聞けるのが楽しみでした。特に今後は、ネットを活用した情報発信に力を入れていきたいと考えているので、様々な経験を持った複業人材からの意見がとても欲しかったです。

:私は過去、企業や学生と一緒に取り組んだ協業プロジェクトはありましたが、複業人材との取り組みは初めてでした。

–川畑さん、元さん、ありがとうございます。元さんが以前取り組んだ、協業プロジェクトはどんなものだったのでしょうか?

:その時は、代官山の蔦屋書店さんと文京学院大学の学生さんと一緒に物販に取り組みました。蔦屋書店さんは場所を提供し、学生さんはゼミ活動の一環として大島紬を取り上げるイベントでした。その時の関わり方は、今の協働日本とのプロジェクトとは逆に、私がサポーター的な関わり方をしていました。

そういった意味で、支援する側の経験はあったのですが、事業に伴走してもらえる形での協業は今回が初めてですね。逆の立場、サポートする側の大変さはよく分かります。

–なるほど。プロジェクトを支援する側のご経験はあったのですね。それだけに今回、協働プロへの期待も大きかったと思いますが、実際に協働日本とのプロジェクトがスタートしてみていかがでしたか。

:プロジェクトの立ち上げ、そして日頃のコミュニケーションなど丁寧にご対応いただきました。もともとECを強化していこうという方向性を持っていたのですが、いきなり実行策に着手するのではなく、そもそものターゲットの絞り込みから丁寧にサポートしてもらいました。

これまでの経験から漠然と捉えていたことをあらためて言語化し、アンケートやヒアリングなど丁寧に行っていく中で、新しい商品の提案シーンなども見つかってきました。裂き織りという技法を活かした「奄美布」の冠婚葬祭シーンへの提案など、BtoBセールスのアイディアは特に、打ち合わせの中でより磨かれていきました。

「奄美布」のもとになるのは、お客さまからお預かりした大島紬等の古い着物。それらの思い出深い品をやさしくほどいて細く裂き、生地をヨコ糸として織り機で織っていきます。思い出の詰まった生地を蘇らせるアイディアとも言えますね。この「奄美布」のアイディアから、お客様の冠婚葬祭シーンのお気持ちに寄り添った提案が生まれていますし、奄美の伝統の大島紬を支える織物としての提案も実現できています。

ひとつひとつ結果を積み上げていったことで、仕事に「自信」を持って取り組めるようになった

–川畑さんにもお話を伺います。今回のプロジェクトを通してどんな変化が生まれていますか?

川畑:私も元さん同様、現状分析をしっかりと行った上で、それに対するアドバイスからスタートしました。今後インターネットを主体に、販売先をどんどん奄美大島以外にも広げていきたいと考えており、島外への情報発信や販売方法を中心に、販売サイト(BASE)の立て直しやSNS(Instagram)での発信戦略など様々なテーマで日々打ち合わせしています。

その中で感じる変化として特に、自分自身の仕事のクオリティが上がったと感じています。協働プロから出た意見やそこで決まった方針をもとに、やらなくてはいけないこと、つまり宿題のようなものが積み上がります。

それを毎回達成しなくては、といういい意味でのプレッシャーが自分自身を引き上げてくれています。ひとつひとつ、やるべきことを達成していくことで打ち合わせも充実しますし、事業の手応えも変わってきます。自分自身、行動力が上がってきたと感じています。

また、自分の生み出している商品、プロダクトの価値を高める方法を見つけられたのもとても大きな変化です。これまでは島内中心にお土産品として販売することが大きかったのですが、その人に合ったオーダーメイドでオンリーワンな商品である特徴を活かした、新たな販売戦略を立てています。

取り組みの中で、これまでになかったカメラストラップやカバーなど、いわゆるホビー領域にもチャレンジし始めました。これにより、こだわりが強く購買力のある新たな顧客層を開拓出来て、商品に高い価値を感じていただき、同じ労力でもこれまで以上に高単価な商品を購入頂けるようになりました。このことは、商品に対する自分の「自信」にも繋がりました。

:私も同じく、協働プロがやったほうがいいことをどんどん提案してくれることがいい意味でのプレッシャーになっており、事業を好転させていると感じます。ついつい、事業オーナーはやりたくないことを後回しにしています部分があるのですが、そこを協働プロの皆さんは上手に、本人がやりたくなるように、アドバイスをしてくださいます(笑)

しかも、そのとおりにやるとちゃんと結果が出る。だから、はじめは面倒だと思っていたことに取り組むことがだんだんと楽しくなってくるんです。細かく成果が上がるのが、やっていて楽しい。結果も出るから、協働プロへの信頼も深まる。今、とてもいい循環が作れていると思います。

「新しい価値」の届け方を一緒に探しに行く

–協業プロの藤村さんにも質問させてください。お二人と協働取り組みは、どんなスタートだったのでしょうか。

藤村:このお話を頂いた際に、大島紬の市場規模が以前は何百億とあったが今ではその百分の一にまで減少しているという話を聞いて衝撃を受けました。目の前の利益や売上の話だけでなく、大島紬という文化そのものの危機なのだという話から取り組みはスタートしています。

そして、従来の着物だけでなく、大島紬を活用した「新しい価値」を生み出そうとしている若い二人のリーダーとプロジェクトをご一緒できるのは光栄ですし、とてもやりがいも感じます。

二人とも別々の事業者という立場ですが、共通して「ハンドメイド」にこだわって事業を展開しています。私からすると、大島紬の歴史的な背景も含めてそこにとても価値を感じます。一方で当事者である側は、その価値を低く見積もりがちだと感じました。だからこそ、その「価値」の届け方、適切な表現などを一緒に探しにいく取り組みが重要だと考えています。

さらに今回のプロジェクトでは、それぞれの協働日本との打ち合わせに、お二人が相互にオブザーバーとして参加していただく形式で進めています。これにより相乗効果も生まれ、取り組みの質もより良くなっていると思います。

–なるほど。普段の取り組み、やり取りの中で感じていることはありますか?

藤村:まだ取り組みの途中ですが、誰にどうやって売っていくのかを見える化していくこと、適切な価値・適切な表現を一緒に見つけに行くことに向き合って、一つ一つ取り組んでいる中で様々な変化を感じます。取り組みを通じて、大島紬の価値が、誰にどこまで広がっていくのか一緒にワクワクしながら取り組んでいます。

お打ち合わせで相談したことも、お二人ともすぐに対応していただけるので、PDCAをスムーズに回せています。そうして色々と試行錯誤できていることもありがたいと思っています。

–この取り組みの中で感じている面白さや、印象に残っていることを教えてください。

藤村:取り扱っているプロダクトが、とても歴史のあるものだという点ですね。私が勤めているライオンという会社も130年の歴史がある会社ですが、大島紬はさらにはるかに長い歴史を持っています。気の遠くなるような長い歴史の中で、若い世代が次の世代にそのものの良さをどうやって伝承していくのかという節目に関われる面白さがあります。

大島紬ならではの良さを活かしながら、加工したり手に取りやすくしたりする試行錯誤の中で、積み上げてきた歴史と、令和の価値観がクロスする瞬間に立ち会えることには特に面白さを感じますね。

自分もまた「複業人材」として活躍していく未来へ

–それでは最後に、元さん、川畑さんお二人へ質問です。これから協働日本、そして協働日本のような地域との協働の取り組みはどうなっていくと思いますか?

川畑:地域の企業はこういった複業人材との協業にどんどんチャレンジするべきだと思います。一人で頭でっかちになって考えるよりも、いろいろな話をしながら、ワクワク感の中でプロジェクトを進めるほうが絶対楽しい。いい意味でのプレッシャーも自分にかけられるので、行動量も増えるので変化も感じやすい。迷っている企業の方がいたら、是非オススメしたいです。

:川畑さんの言葉に重ねて。こういった取り組みを通じて自分自身のスキルを高めていくこと、仕事に自信を持つことが出来ると、次は「複業人材」として他の事業者との協業にも積極的になれると感じています。

自分自身、変化を実感しているので、その変化を周りにも広げていきたいと考えるようになりました。こうして、周りと変化を生み出したいと考える人が増えると、本当に日本が変わっていくような気がしますね。

–素敵なメッセージありがとうございます!今後も想いある地域の企業と、情熱を持ったビジネスパーソンとの出会いの場を、協働日本としても生み出していきたいです。インタビューへのご協力ありがとうございました。

川畑、元、藤村:ありがとうございました!

元 允謙 Tadaaki Hajime

有限会社 はじめ商事 代表取締役

はじめ商事 | 奄美の伝統と技術で新しい物創り
https://hajimeshoji.com/

川畑 裕徳 Hironori Kawabata

紬レザーかすり 店主

紬レザーかすり(@tsumugi_leather_kasuri) • Instagram
https://www.instagram.com/tsumugi_leather_kasuri/

協働プロの藤村昌平氏も参画する、協働日本事業については こちら

NEWS:協働日本でご支援先のヤマト醤油味噌さまから新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズ発売

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」が発売開始

金沢で発酵食メーカーとして味噌・醤油・甘酒・魚醤などの製造を手がける㈱ヤマト醤油味噌さまより、毎日の食を通して腸内環境を整える、昔ながらの知恵がつまった食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズが、2021年8月3日(火)より販売されます。

「まごはやさしいこ」公式ホームページ

㈱ヤマト醤油味噌さまと㈱株式会社協働日本は、事業開発・マーケティング・食プロデュースの分野で協働のお取り組みを進めてまいりました。今後も、「まごはやさしいこ」食材シリーズにおいて、都市で働く親の気持ちをとらえた、顧客視点の商品開発を目指します。

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける食材ブランド「まごはやさしいこ」8月3日(火)より販売開始!|株式会社ヤマト醤油味噌のプレスリリース

「まごはやさしいこ」は、㈱ヤマト醤油味噌さまが長年培ってきた発酵食の知見を活かして開発された、家庭で調理しやすい食材シリーズです。シリーズ名の由来は、おすすめしたい食材8種の頭文字となっています。忙しい毎日でもお子様に健康に良いものを食べさせてあげたい方に特におすすめです。

協働日本の協働プロと取り組みについて、㈱ヤマト醤油味噌さまのニュースリリースの中で取り上げていただきました。協働日本はこれからも「協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する」をミッションとし、このように想い溢れる地域企業の皆様をご支援してまいります。こういった協働取り組みにご興味をお持ちになった地域企業の皆様はぜひ、弊社までお問い合わせください。

また、本プロジェクトでも協働させていただいております協働プロのインタビュー記事「VOICE」も以下からご覧いただけます。あわせてご覧ください。

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

NEWS:JOINX NEWS 2021年7月号にて協働日本との取り組みを紹介いただきました

2021年7月号のJOINXNEWSにて、協働日本の取り組みを掲載して頂きました!

地方創生事業に取り組む㈱JOINXが発行するフリーペーパー、JOINX NEWSにて協働日本との協働取り組みをご紹介いただきました。

現在、奄美大島の伝統的な大島紬を後世に伝えていくプロジェクトへ共に取り組んでおり、その活動を掲載いただきました。協業パートナーの、紬レザーかすりの川畑さん、はじめ商事の元さんとともに、協働日本についてもご紹介いただいております。

本プロジェクトに参画している協働プロのメンバーも取り上げていただいております。
首都圏で活躍するプロフェッショナル人材の地域への熱い想いを、大きく取り上げていただきました。

ぜひご一読ください!

JOINX NEWSの2021年4月号でも協働日本の取組みをご紹介いただいております。あわせてご覧ください。

記事中で掲載されている協働プロが、地域への想いを語ったインタビュー記事「VOICE」は以下からご覧いただけます。
VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏です。これまでライオン株式会社で取り組んできた「事業づくり」と「人づくり」の取り組み。それらを、もっと多くの地域企業と取り組みたいと語る藤村氏。

これまでも、ライオンで経営を巻き込みながら新規事業創出プログラム「NOIL」を立ち上げ、多くの社内新規事業、社内起業家を生み出してきた藤村氏が、新しい挑戦としてなぜ協働日本事業に取り組むことを決めたのかーー?これから協働日本を通じて実現したいことにも触れつつ語りました。

(取材・文=郡司弘明)

「事業を創る ヒトを創る」その経験をパートナー企業に対して提供したい

ーー本日はよろしくお願いします。藤村さんはライオンでも新規事業開発に取り組まれています。新しい挑戦としてなぜ、協働日本で地域企業への事業支援に取り組むことを決めたのでしょうか。

藤村昌平氏(以下、藤村):よろしくお願いします。所属しているライオンでも新規事業開発を担当していますが、具体的には「組織づくり・人づくり」に重点をおいて取り組んでいます。頂いた質問の答えとしては、自分自身がそれ自体をより多くのフィールドで行いたいという気持ちからです。さらに組織づくり・人づくりに加えて、「事業づくり」も主体的に行える環境がほしいなと思っていました。

協働日本代表の村松さんから声をかけてもらった時、地域の方々とのパートナーシップのもとで、「事業づくり」そのものに取り組める環境だと思って参画を決めました。協働日本なら、「事業づくり」と、取り組んできた自身の強みである「人づくり」でもっと多くのパートナー企業に貢献できると考えました。

ーー協働日本が特に注力している、地域の企業や、地方との取り組み自体には以前から興味があったのですか?

藤村:元々、仕事に取り組む自身の想いとして、「誰かの心の拠り所を創る」ということ目指しています。それを実現する一つの形として、様々な地域企業と取り組むということは、なるほど面白いと感じました。その場でほぼ即決だったと思います(笑)

もちろん、地域の方々との取り組みについては簡単なものではないと感じていましたので、私の持っているものを総動員して本気で取り組んでいくことを決意しました。

ーーなるほど。事業支援を通じて、日本中で誰かの心の拠り所を創っていきたいと。そういった想いから、これまで協働日本で関わったプロジェクトはいくつありますか?

藤村:5つのプロジェクトに取り組んでいましたが、先日1つのプロジェクトが終了しましたので、現在4つ担当しています。

※取材時2021年5月

ーー企業毎に異なる課題や状況の中で、4つのプロジェクトですか!凄いですね。そんな藤村さんご自身の、強みやスキルはなんですか?それをプロジェクトではどのように活かしていますか?

藤村:いえいえ。協働日本の他のメンバー(協働サポーター)も助けてくれていますので。

新規事業をつくるにあたって、まず挑む人をつくることが必要だ、という意識を強く持って活動してきました。その経験は、所属企業に依存しないポータブルなスキルですので、それをパートナー企業に対して提供しています。

一方で、挙げられる課題は各社まったく異なります。事業領域はもちろん、経営状況やビジネス規模なども。そこに日々、難しさは感じています。でも、だからこそやりがいのある仕事だと言えます。

いま企業に求められる「人づくり」視点

ーー繰り返しお話されている、「人づくり」についてお聞きしたいです。藤村さんのおっしゃっている「人づくり」とはどういうことですか?

藤村:わかりやすく言い表すならば、事業開発における主人公づくりですね。

例えば、目の前にある事業を指して「これ誰のビジネス?」と聞いた時に、みんなの事業です、会社の事業です、のように答える人が多数だと思うのですが、そこで「自分の事業です!」と即答できるような人をつくるということです。事業に対して「自分ゴト」で捉える意識を持ってもらうことを大事にしています。

また、経営と現場の考えが一致していないことも多くあります。双方に色々悩みはあって、経営からすると、方針は示したが、結局誰がこの事業をやるんだ?というケースもあります。現場の方は、経営に決めてほしいという意識も働きます。そのような中で、実際に主体性を持って取り組む主人公をつくりながら、事業をつくっていくことが必要になります。

私たち、協働日本らしいアプローチとしては、「何を世の中に問いたいのか」「お客様にどんな価値を届けたいのか」「この会社でどのように実現したいのか」まで問いかけて、共に深堀りしながら推進しています。

ーーそれをリードするのが先ほど「主人公」と呼んだ方ですか。

藤村:おっしゃるとおりです。だから何より「主人公」の存在が重要になってきます。我々はチームの中に入って取り組みますが、いずれ協働日本が関わらなくなっても推進できる状態にすることが、本当に実現すべきことだと考えています。

ーー協働日本が取り組ませていただいている企業は老舗企業も多いです。そのあたりも関係してきますか?

藤村:老舗の企業は、長い歴史の中で大切にバトンを繋いできた企業と言えます。これまでのビジネスや方法論を大事にするからこそ見失いがちな「自分ゴト」視点を、新規事業を通じて感じて頂く場面も多くなります。我々は短期的に成果を出すことも大事にしながら、会社を支えていく経営者や社員自身が、ひとつひとつの実行や分析を高いレベルで出来るようにしていく、というところを目指しています。

パートナー企業との取り組みの中で、協働プロ、協働サポーターといったメンバーがプロジェクトメンバーとして加わります。それぞれのプロジェクトで協働日本らしい価値を提供できるように人づくりが大切、という視点は我々自身(協働日本)も共通しています。

同時に複数の会社に所属している感覚。だから広い視野も様々な視点も得られる。

ーー協働プロとして参画していく中でご自身の成長や新たに獲得した視点はありますか?

藤村:大きく分けて3つあります。1つ目は視野が以前よりとにかく拡がりました。今勤めている会社(ライオン株式会社)の他に、4つのプロジェクトに関わっていますので、同時に5つの会社に所属している形になります。

ーーそういった感覚なんですね。並行して5つの会社というのは少し頭が混乱しそうです(笑)

藤村:1社にだけ勤めていると、どうしてもその会社の考え方やルールに縛られてしまいがちですが、複数の、しかも業種や業態の違うプロジェクトに関わっていることで、広い視野を持って向き合うことが出来ています。企業の都合ではなく、本当の顧客の課題に向き合うことが出来ている実感があります。

2つ目は、考える物事のレンジが長くなりました。企業勤めをしていると、どうしても短期的に、たとえば半期、四半期といった単位で、目標を追いかけていきます。一方で、協働日本で外部戦力として関わると、より中長期な目線を持つ必要があります。協働日本では「この商品の売上を来月までにいくら伸ばして」といった案件よりも、それよりも「この取り組みを通じてどのように会社を変革させていくのか」といった視点で関わる案件のほうが多いため、考えるレンジはより長くなり、中長期的な考え方をするようになります。

ーー視野はより広く、そしてより長期視点を持てるようになったと。まさに経営視点ですね。

藤村:そうですね。日々、複数の会社で経営に携わらせて頂くのは、貴重な経験だと感じています。

3つ目は、データに立ち返る意識です。長く所属している企業での意思決定では、データに頼らず、経験を基にする場面が多くなります。例えば、野性的なカンが働く、ということもあります。もちろんそれは市場や製品、顧客の姿が頭に思い浮かぶからなのですが、協働日本として係るプロジェクトでは、野生のカンは使えませんので、常にデータに立ち返る必要があります。これは、ファクトベースにビジネスを進めていく上で重要な視点です。

協働日本との取組み自体を楽しんでほしい

ーー顧客企業の従業員の方とお話されることもあると思います。そういった従業員の方に、どのように協働日本の取組みを捉えてほしいですか?

藤村:パートナー企業の従業員のみなさんともお話させて頂く機会も多いです。我々は、忖度せず、まっすぐに事業づくりに向き合いますので、耳の痛いことをお伝えすることもあります。

ーー本音でぶつかっていくのが協働日本流ですか?

藤村:これまでのプロジェクトでも本気で本音でぶつかり合うことが出来ています。仕事の中で、経営者も現場も関係なく本音でぶつかり合う厳しさと面白さを一緒に感じていきたいと思っています。協働日本との取組み自体を楽しんでもらえるのが一番です。

私たちは地域の企業の方々と、「あなたとわたし」「中の人と外の人」といった二項対立の形では関わらないように意識しています。ひとつの「チーム」となるよう、プロジェクトの中では常に我々(We)という主語で考えています。 新規事業として成果を出していくためには、本来向き合わなければならない「顧客の課題」に、我々は一つのチームになって臨まなければいけない。チームの中の遠慮は不要です。共に悩んで、共に壁にぶつかっていくための協働パートナーとして関わるからこそ、結果に繋がっていくと信じています。

協働日本のような取り組みは今後、日本中に広がっていく

ーー最後の質問です。これから協働日本はどうなっていくと思いますか?

藤村:多くの人が協働プロや協働サポーターのような形で、ポータブルなスキルを持ち寄って共通の課題に向き合っていく、というような働き方は今後日本中で増えていくと思います。

人と人との繋がりをベースにして、地域を良くしたい、社会を良くしたいという人は増えています。

今は協働日本のクライアントであるパートナー企業や経営者が、今度は別の地域の協働プロフェッショナルとして働く。そのようなケースが生まれていくことが、良い循環の形だと思います。そのような取り組みを通じて、関わっていく側の人間も「自分が何者であるのか」を再発見する機会にもなると感じています。

ーーそれはとても素敵な循環ですね。ぜひ協働日本の未来の形にしていきたいです。インタビューへのご協力ありがとうございました。

藤村:ありがとうございました。すべてを協働日本の案件としてお寄せください!ということは申し上げませんが、協働日本のような取り組みを今後、広げていきたいと強く思います。そのころには、複業やプロボノと行った言葉ではない、新しい言葉で定義されているのかも知れません。

藤村 昌平 Shohei Fujimura

ライオン(株)ビジネスインキュベーション部長
(株)協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン( 株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。2018年に新規事業開発組織「イノベーションラボ」の設立、2019年に新価値創造プログラム「NOI L」を立ち上げを行う。2020年より新設のビジネスインキュベーション部長に就任。
2021年より協働日本CSO(chief strategy officer)に就任。

専門領域
新規事業開発、新規事業開発組織設計と運営、新規事業創出プログラム設計と運営、新規事業担当者育成

人生のWHY
Houseから、Homeへ。

藤村昌平氏も参画する、協働日本事業については こちら