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STORY:株式会社山岸製作所 山岸晋作氏 – 協働日本は中小企業にとっての「最強の人事部」。変化に勝ち抜く地域企業の組織戦略とは –

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社山岸製作所 代表取締役社長の山岸 晋作氏にお越しいただきました。

株式会社山岸製作所は1936年創業の金沢の家具販売会社で、輸入家具やインテリアの販売、内装工事設計・施工のほか、オフィスのトータルプロデュースも手がけ、家具・インテリアの販売だけではなく新しい「暮らし方」「働き方」を売る会社としても注目を集めています。

また、社員の自主性を育む企業でありたいと柔軟な働き方や、協働日本との協働を通じて次世代経営者の育成にも力を入れている山岸製作所。

今年10月には、テレワークを活用した柔軟な働き方を体現し、優秀な取り組みを実施している企業に送られる賞「テレワークトップランナー2024 総務大臣賞」を受賞されるなど、注目を集めています。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを続けてきたことによる成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

▼過去のインタビュー記事も合わせてご覧ください

STORY:山岸製作所 山岸晋作社長 -挑戦する経営者にとって、協働日本は心強い伴走相手になる-
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STORY:山岸製作所 山岸氏・奥永氏 -幹部の意識変革が地域企業の組織を圧倒的に強くする-
https://kyodonippon.work/post-3610/

企業の課題や、事業のフェーズに合わせて「人材育成」に伴走。

ーー本日はよろしくお願いいたします。協働日本とのお取り組みも3年目になりました。協働をスタートしたきっかけから、ここまでの歩みについて、改めてお聞きできますでしょうか?

山岸 晋作氏(以下、山岸):はい、よろしくお願いいたします。

協働日本との出会いは、金沢で事業を展開している発酵食品の老舗、四十萬谷本舗の四十万谷専務からのご紹介でした。

当時、事業について悩んでいた際に四十万谷さんとの会話の中で「相談相手として、良い人がいるよ」と紹介していただいたのが協働日本代表の村松さんでした。

かねてより四十万谷さんが都市圏の複業人材と協働型のプロジェクトに取り組んでおり、成果を挙げられいると聞いていたので興味を持ち、何度かお話を重ねるうちに弊社でも協働をスタートさせるに至りました。

ーー最初に取り組まれたのは、売上向上のための社員教育だったのですね。

山岸:はい。暮らし方を提案する、弊社のインテリアショールーム「リンテルノ」 での売上を向上させるため、社員教育の支援をお願いしたのがはじめのプロジェクトでした。

背景には当時、取り扱う様々なブランドを代理販売するこれまでのビジネスモデルの見直し、いつしか単に物売りになってしまっていることへの危機感を感じていたことがありました。

今、山岸製作所は、これから売っていくべきものを「暮らし方」そのものと定義しています。
そのためには山岸製作所の存在意義や、なぜこのブランドを取り扱うのか、自社の中で明確な言語化を進めておかなければ、いずれ行き詰ってしまうだろうと考えました。

さっそく社員教育として、協働日本に所属する協働プロの方々と、弊社のショップリーダー3名とでチームを組んで取り組みがスタートしました。

私たち一人ひとりが売っているものはすなわち何なのか、提案する「より良い暮らし」とは何か。
これからの山岸製作所にとって重要な価値観を、メンバーそれぞれで悩み時に意見をぶつけながら考えていきました。そうしていくうちに、それぞれが納得感を持って日々の販売や新たな戦略に携わっていけるようになりました。

とはいえ、この頃はまだ事業の回復に向けて必死だった時期。
社員教育そのものの捉え方も、未来への投資という考え方よりも、目先の売上向上のための販売力強化という意識が強かったかもしれません。

山岸製作所のショールームで協働プロと議論を重ねた

ーーなるほど。更なる取り組みとして、翌年の2023年には協働日本の提供する『経営リーダー育成プログラム』へ企業幹部が参加し、経営人材としての視座向上に取り組まれていましたね。

山岸:これをきっかけに、組織を蘇らせようという危機対応フェーズから、中長期的な成長を意識した組織の成長フェーズに舵を切りました。私の意識も、未来のためここで変わっていこう、変えていこうという方向に向いていました。

そこで必要になるのが組織の中核になる存在です。組織の成長に向き合った時、社長である私自身と幹部たちの間に見えない距離があることを課題に感じはじめていました。

その正体は何かというと、経営をしていく上での根っこの部分、価値観のすり合わせができていないことです。
どうやって、両者の価値観のすり合わせればいいのか。どのように幹部候補の成長をサポートすればいいのか。社長ひとりの頭の中では解決策が浮かばず、悩んでいました。そんな時、協働日本代表の村松さんから「協働日本では企業の幹部育成にも取り組んでいる」という話を伺いました。

リンテルノの販売力を、人を育てることで向上させてきた協働日本さんに、今度はより長い目で見た時に必要となる人材育成をお願いしたいと思うようになりました。
それが『経営リーダー育成プログラム』をお願いしようと決めた経緯です。

この時は、幹部候補の2名──初年度から伴走支援を受けているリンテルノのリーダー西島と、営業・オフィス戦略マネージャーの奥永の両名に挑戦してもらうことにしました。

『経営リーダー育成プログラム』は、協働プロによる幹部への伴走とメンタリングによって、企業幹部を経営者リーダーとして育成するものです。
ワークショップのセッション、事業開発のメンタリングと、コーチングからなるプログラムで、改めて自分と会社の存在意義を考え、組織を動かす幹部としての視線の醸成・意識の変革を目指すという内容でした。

結論から申し上げて、このプログラムは非常に効果が大きかったと感じています。
その理由は、当初の狙い通り、私の価値観───例えば未来に向かってのビジョンや、会社をどうしていきたいかということに対して幹部候補たちと相互理解できただけでなく、彼ら自身の中に燻っていた熱い想いを、彼らの言葉で言語化できたことにあります。


山岸:プログラムに参加した幹部のひとり、奥永の振り返りでは、「協働日本の提供するプログラムを受け、自分自身や会社のことにあらためて向き合い、それらの存在意義について徹底的に、そして絶え間なく考え続ける時間を持てたことによって、頭の中のピースがつながるようになった。確固たる判断軸ができた」と話してくれました。

仕事のこと、経営のこと、会社の理念なども、実際に経営者のお客様と話しているときなどに話がすっと入ってくる・何を言っているかわかるようになったと。

私から見ても、私と彼との間でも交わす言葉がのチョイスも重なってきたと感じました。

そんな時、彼自身の変化に気づいた時、「どうしてそうなった?」と質問すると「自分の中の存在意義と会社の存在意義が重なった部分に気づいてから、前に進み出した気がする」という答えが帰ってきたんです。とても印象的でしたね。

また、主語が「会社」から「自分」になる場面が増えたとも言っていて。それまで「会社のためにこうすべき」で思考が止まっていたことが、徐々に「会社がこうなったらいいなと思っているから、自分がこうやって進めたい」という主体的な言葉に変わっていったんです。この頃には実務の中でも「自分がやります」という言動が増えてきていました。

外からの刺激や圧力よりも、内なる声を聞くことのほうが、より人を強く動かす。行動する背中を押す力になるんだと、私にとっても学びになりました。

社長という立場ゆえに感じることですが、内部の人間だけで価値観をすり合わせ、会社の未来を自分事化させて内なる声を引き出すことはとても難しいことです。

いつも一緒に仕事をしている社員同士や、取引先とのやり取りというのは、いわば安全地帯、「コンフォートゾーン」です。同一的な環境にずっと身を置いていると、自分にとってそれがコンフォートゾーンであるということにすら気づくことができません。

外からの刺激があって初めてそれに気づき、コンフォートゾーンを意識することができます。そうしてはじめて、そこに身を置くべきか、そこから飛び出してチャレンジした方が良いのかという選択ができるようになります。

プログラムに参加すれば誰でも同じように結果が出るかといえばそうでもありません。変革のための「意識の種」が必要で、今自分がやっていることに何かしら違和感や「このままでいいのか?」という想いを抱いていたメンバーだったからこそ、コンフォートゾーンを飛び出すことができたのだと思います。

協働日本には、事業開発のメンターと、自分自身と向き合うためのコーチングの両軸が揃っています。内なる自分の声を引き出す、『経営リーダー育成プログラム』はそういった変化を生み出してくれました。


ーーありがとうございます。2024年の現在は、どのようなテーマに取り組まれているのでしょうか?

山岸:お話しした、昨年の成功体験があったので、引き続き『経営リーダー育成プログラム』に取り組むことを決めました。今年は、幹部候補の次の役職レイヤーから3名が参加しています。

ーー継続的なプログラムになったんですね!山岸さんの想いを受けて、3名の方も西島さんと奥永さんに続いて大きく変化してくれそうですね。

山岸:実は、今年の取り組みをスタートさせる時に背中を押してくれたのは昨年の参加者の西島と奥永だったんですよ。

協働日本の伴走支援を受けた2人がその価値を理解して、後輩達にも受けてみてほしいと。越境学習の効果を語り、社内への説得を後押ししてくれました。今では、プログラムを受けながら日々成長している3人の姿を、皆で見守っています。

ーー1年間のプログラムを受け終えた時の姿が今からとても楽しみですね。

山岸:そうですね。前半のワークショップと毎週のセッションを終え、今は2週に1回の実装フェーズに入っています。

でも、実を言うと今年のプログラムで一番学ばせてもらっているのは私かもしれないと思っているくらい、彼らのセッションの中には気づきが多いです。

セッションの録画を毎回見ているのですが、協働プロと3人のやり取りの中で見えてくる課題こそが、驚くことに山岸製作所の課題そのものなんですね。

それは、彼らがより現場レイヤーに近いからこその視点ということもありますが、今、山岸製作所にとって必要なことは何か?がリアルに見えてくるので、実際に経営会議で議題としてあげたものもあります。

毎週の朝礼で私の考えを話しているんですが、伝えたいことが伝わっていない、こんな伝わり方をしているんだという発見もありました。
例えば、山岸製作所では個々の自主性を引き出していくことを大切にしていますが、それを「個人商店」のように捉えら大きなプレッシャーを感じている社員もいるということも、彼らの視点から見えてきたことの1つです。

それぞれに違う切り口ではありましたが、3人とも共通して「どうやってメンバー同士助け合えるか、孤立しない組織にできるか?」を本質的にやりたいことと考えて、取り組んでいたんです。

山岸製作所では、自主性を引き出すために働く時間も場所も自由で、裁量権多く仕事をしていける環境を整えています。
しかし、現場レイヤーの視点で考えると、自由な環境ゆえに、メンバー同士が団結して助け合っていく意識がないとかえって個々の仕事や責任を全うすることが難しいと感じていた。3人のセッションから出てくるそういった投げかけは経営課題の本質に迫るものでした。

自由な環境だからこそ、社員を孤立させてはいけない、メンバー同士が繋がってプレッシャーを補いあって、個の集団でありつつも、より強固なワンチームになっていく。これをどう具現化していくか、経営レイヤーでも取り組んでいきたいと思っています。

「彼らの見ている山岸製作所」から一番学びを得ているのは紛れもない私自身で、経営者として方向を修正することが出来ているのは、繰り返しになりますが、やはり貴重な機会ですよね。

社員の学びを支援する、柔軟な働き方が評価され、総務大臣賞を受賞。

ーー今年のお取り組みといえば、10月には、テレワークを活用した柔軟な働き方を体現し、優秀な取り組みを実施している企業に送られる賞「テレワークトップランナー2024 総務大臣賞」も受賞されています。受賞に至る背景についてもお話お伺いできますか?

山岸:はい。きっかけは2023年の秋に北陸総合通信局(総務省の地方支分部局)主催のイベントに登壇したことです。

そこで山岸製作所の働く環境、テレワークの取り組みについて紹介したことが北陸総合通信局の中で話題になったようで、今年のテレワークトップランナーへの応募を勧められ、山岸製作所では長くテレワークの取り組みを進めていあこともあり、折角の機会だからと応募したところ、全国で3社しか選ばれない総務大臣賞をいただくことに。

山岸製作所にとってのテレワークは、売上向上や業務の効率化を目的としているというよりは、社員の自主性を育む組織であるための手段だと考えています。

管理や制約などの枠組みを取り払って、自分がやりたいことに向かっていく方が、絶対成果が出てくると思っていますし、それを実践している会社であり続けようと取り組んできました。

テレワークというと自社の社員がどこで仕事をするか?ということや再現性、効果についてフォーカスされがちです。

私はそれだけでなく、山岸製作所が社外の方と一緒に仕事をする、コミュニケーションをとることのハードルを下げることができることにこそ、「テレワーク」を推進していくメリットがあると考えています。

テレワーク環境・理解が整えていくことで、時間的・距離的なボーダーをなくすことができるので、山岸製作所に関わってくれる全ての人にとってもコミュニケーションがとりやすくなる。私たちをサポートしてくれる人たちの力を最大限活用できる仕組みづくりに繋がると思うんです。

実際、早くからそういった取り組みを進めていたからこそ、物理的な距離があっても、協働日本の協働プロの皆さんとの取り組みもすぐに始められましたし、リモートで行なっている協働プロジェクトから多くの成果が生まれました。

総務大臣賞を受賞。受賞3社の中で唯一の地方企業となった。
引用元 「テレワークトップランナー2024 総務大臣賞」等の公表


ーー山岸社長が大切にされてきた、自主性や個の成長を育むための環境整備が受賞に繋がったのですね。この賞は山岸さんが大切にしている、「山岸製作所らしさ」が体現されていますね。

山岸:「社員、スタッフ皆を信頼して自主性を引き出した方が成果は出る」ということを信じられないとテレワークを推進することは難しいと思うんです。

遠距離恋愛と同じで、一度疑い始めたらきりがないし、うまくいかなくなってしまう。やっぱり山岸製作所では社員全員を尊重し、時に協働日本のような社外の力も借り、信頼しあってそれぞれが成長をしていける、そんな組織でありたいと思います。その形が生んだ成果と取り組みを評価いただけたことは、とても嬉しいことです。

こうやって改めて協働日本との取り組みを振り返ってみると、初年度はまだまだ利益偏重主義、目先のことで必死でしたね。一緒に取り組みを進めていく中で徐々に売上も体制もようやく整い出し、ようやく未来を考えられるようになってきている今、あらためて変化を実感します。

私自身も月に1度、代表の村松さんにメンタリングをお願いしています。
村松さんからいただいた課題や問いに対して、自分はどうありたいか、どうあるべきか、どう取り組むか徹底的に考え、言語化していく。その時間を通して、自分で自分の視座を上げていく貴重な時間です。

私のそういった取り組みを見て、社員のみんなも頑張らなくちゃと思ってくれる。
「これをやりなさい」と上から与えるのではなく「一緒に頑張ろう」という姿を見せることで、共に成長していける手応えを感じます。

社員を信じて働き方を柔軟にし、学びや成長の機会をどんどん作ることで、それを企業の成長につなげていく。この文化を守っていきたいと思います。

協働日本は中小企業にとっての「最強の人事部」ではないか

ーー最後に、これから取り組まれたいことや、協働日本に期待されていることがあれば教えてください。

山岸:協働日本は、私たち中小企業にとっての、「最強の人事部」だと思っています。

これからの時代に対応するためには、柔軟に生きていく必要がありますが、一方で私たち中小企業には、その都度、人を採用して内製化するだけの時間も余力もなかなか持ち合わせていません。

そこで、協働日本にいる多くの協働プロたちに、その時のテーマに合わせて協力いただけることこそ意義があると思っているんです。

売上向上のため、人材育成のため、採用のため……その時々の自社の課題や事業テーマに対応してもらえるプロがすぐそばにいてくれる。そんな私たちの「最強の人事部」を活用しない手はありませんよね。

例えば具体的にこれからの取り組みについてもお話しすると、実は来年、福井県への事業進出を決めています。

事業拡大のためのマーケティング支援はもちろん、新しい店舗で働くメンバーたちの教育や心のケアなど、協働日本に引き続きお手伝いいただきたいことがたくさんあります。

福井県の第一号店には、まさに今プログラムを受けているメンバーの1人がリーダーとして赴任することが決まっています。協働日本の伴走支援や育成プログラムは、本人にとっても組織にとっても、既に「実践」の場になってきています。

私はこうして折角、山岸製作所に関わっていただけるのであれば、協働日本や協働プロの皆さんに金銭的なメリット以外の価値も感じていただきたいと思っています。
大手企業に勤めている協働プロの皆さんも多い。地方の中小企業経営のダイナミズムやスピード感は、大企業にはないものがたくさんあります。そこにはきっと、逆に彼らの学びに繋がるものもたくさんあると思っています。

山岸製作所と、伴走してくださる協働日本の皆さんで、win-winの関係で成長しあえる……そんなお付き合いを続けていければと思っています。

これからもよろしくお願いします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

山岸:ありがとうございました!

山岸 晋作 / Shinsaku Yamagishi

株式会社山岸製作所 代表取締役社長

1972年、石川県金沢市生まれ。東京理科大学経営工学科で経営効率分析法を学び、卒業後アメリカ・オハイオ州立大学に入学。その後、『プライスウォーターハウスクーパース』に入社。ワシントンD.C.オフィスに勤務。2002年、東京オフィスに転勤。2004年、金沢に戻り、『株式会社山岸製作所』(創業は1963年。オフィスや家庭の家具販売、店舗・オフィスなどの空間設計を手がける)に入社。2010年、代表取締役に就任。

協働日本事業については こちら

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VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(後編)『協働を広げ、大きな「循環」へ。私たちが協働プロを続ける理由』 –

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏、同CMOの若山幹晴氏の対談をお送りいたします。
協働日本の創業時から参画しているお二人に、創業当初から現在までの5年間を通して見た協働を通じて生まれた支援先やご自身の変化、協働日本の未来について語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

※本インタビューは前後編にてお送りいたします。前編はこちら

自分では気付いていないだけで、目に見えない「価値」は既にそこにある。

ーー前回に続いてのインタビューとなります。今回はまず、5年間の協働プロジェクトを振り返って印象的だったことについて伺いたいと思います。

若山:そもそも、協働日本でご支援させていただいたサービスはどれも素晴らしいものばかりだったことが印象的です。ものとしては良かったり、素晴らしいノウハウをお持ちだったりというケースばかりでした。その1つ1つが印象に残っています。

ではどうして、そんなサービスや商品をお持ちの企業が支援を求めているのか?と紐解いていくと、お客さんとのアンマッチが発生していたり、サービスの広げ方を変えなくてはいけなかったりするパターンがとても多い。ものやサービスがいいというだけではビジネスはうまくいかない、ということが改めてよくわかります。

藤村:特に、時代を跨ぐ無形資産は、作ろうと思って作れるものではないですからね。私も印象に残っているプロジェクトの1つに、奄美大島の伝統工芸品でもある大島紬のプロジェクトがあります。伴走支援に入って初めて、こういった伝統工芸を取り巻く状況やビジネス環境を知りました。

協働先の一社である、大島紬の織元「はじめ商事」さんでは、長く続いた大島紬という無形資産をどうやったら後世に継いでいけるのかをテーマに、事業のアップデートに真剣に取り組まれていました。大島紬は世界三大織物に数えられる絹織物で、自然の力を借りて30〜40もの行程を経て長期間をかけ作られていて、それが100年以上続いている。この脈々と続く歴史を目の当たりにして、消費財メーカーの中で生まれるプロダクトを日々アップデートし直していくことと、かくも違うのかと驚くばかりでした。

始まった協働プロジェクトの中では、作り手の伝統を残したい気持ちと、顧客の欲しいと思う気持ちが重なる部分はどこかを徹底的に探していきました。

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

若山:人々の強い想いが込められたものは、AIではやっぱりまだ作れない。かけがえのない、素晴らしいものですよね。逆にその素晴らしさにご自身が気づいていないというパターンも多かったように感じます。

私は、経営者の事業そのものへの想いも、ひとつの無形資産だと思っています。たとえば想いの強さで言えば、鹿児島で伴走支援に入らせていただいたAKR Food Companyさんも印象的でした。

AKR Food Companyさんは、黒豚の食肉加工・販売を行う企業でしたが、とにかく黒豚に対する想い、育ててきた豚を余すことなく美味しいと言ってもらいたい想いが強かったです。この想いを軸に新規事業を考えていった時、今までの工程上破棄していたものを、ペットフードにしていこうというアイディアが生まれました。誰にも負けない強い想いを持っているからこそ生まれた事業なんです。

協働の中、ポジティブ会話や空気の中で様々なアイディアが出て、やがてそれが事業の形になり、自分達の想い自体にも価値があるんだと気付いていただけました。それから改めてポジティブな空気づくりを意識してやってきてよかったとも思いました。ポジティブな空気感は、やっぱりプロジェクトの進み具合や成功確率を左右しますから。

STORY:AKR Food Company株式会社 松元 亜香里 氏 -黒豚への強い想いを形にし、付加価値をつけた商品開発の挑戦-

自己認識のアップデートが成長の鍵。その一歩を踏み出す実行力が何よりも重要。

ーー伴走先へのインタビュー「STORY」では、プロジェクトに参加した社員の皆さんの変化もよく話題に上がりますが、お二人から見た協働先の「人の変化」はいかがですか?

藤村:それでいうと、伴走先の皆さんだけでなく、自分自身も成長・変化させてもらっていますね。

直近では、山岸製作所さんの次世代リーダー育成プロジェクトは特に印象的です。次世代リーダープロジェクトは、経営幹部の育成に悩む地域企業様にむけたプログラムで、協働プロによる幹部への伴走とメンタリングによって、改めて自分と会社の存在意義を考え、組織を動かす幹部としての視線の醸成、意識の変革を目指していくというもの。

このインタビューの中でも「事業を作る人を作る」というミッションの中で、人との関わり方が変わってきたという話をしました。まさに、こういった変化のきっかけをくれたプロジェクトが、山岸製作所さんの次世代リーダー育成プロジェクトだったんです。

メンタリングの伴走をする中で、幹部の方が「自分と会社の存在意義」「自分が本当にここでやりたいこと」の意識を持つことができた瞬間を見ることができました。その意識が生まれたことで、会社の中で仕事・チームに対する全体の振る舞いも変わっていく……こういった変化を一緒に体験させてもらったのは大きな経験になりました。

ーーなるほど。一般的に、若い人のほうが柔軟性があって変化しやすいとも言われますが、経営幹部中堅のマネジメント層の変化を実際に見て、必要だと思ったことポイントはありますか?

藤村:経験豊富になってきた中堅ならではだと思いますが、どのように情報を捉え直して、目線を合わせていくかが重要なことだと思っています。「境目」の話とも似ていますが、壁を誤解して捉えていることが多いんです。見えている壁は自分が作り出したものであって、実は周りは壁だと思っていないかもしれない。

そもそも、自己認識と現状認識を俯瞰して把握することは誰にとっても難しいことです。もちろん私にとっても難しい。

たとえば同じものを見ていても、人によって見え方は違うじゃないですか。それぞれの背景や感情の違いがあるので、違うものが見えること自体は当然なんです。そこで、あらためて他人のことを慮るように意識すると、最終的には他人からは自分がどう見えているのか見えるようになってくるんです。

他人の眼鏡を借りて自分を見ることで初めて自己認識がアップデートされる。先ほどの例でいえば、自分の周りに壁なんてなかった、ということに気づくことができるということですね。

プログラムを受けてくださった山岸製作所の奥永さんも、まずは自分自身に向き合うところから始めました。

自分は何者で、何がやれて、何がやりたいのかを整理して、次に仕事でのメンバーとのコミュニケーションの中で、相手が奥永さんの言葉に対してどういう風に感じると思うか?どんな反応、どんな質問が返ってくると思うか?ということを私が質問する形で考えていただきました。

そうすると、自分の言葉に対して他人がどうリアクションするか、徐々に傾向を掴めてくるんですね。つまり、「奥永さんってこういうこと言いがちな人」と思われている、であったり、自分の意見はこう受け止められがちだなみたいなことに気づかされるわけです。そうしていくうちに自己認識も変わっていって、振る舞いやコミュニケーションの取り方もそれに合わせて変えていくことができるんですよね。

STORY:山岸製作所 山岸氏・奥永氏 -幹部の意識変革が地域企業の組織を圧倒的に強くする-

私自身も同じように、協働を通じて「人から見える藤村」を認識することができるようになっていて、藤村ってこういう特性があって、こういうところに得意領域があるよねということが自分自身で分かるようになってきています。

自己認識と現状認識、誰の眼鏡で誰を見るのか、きちんと焦点を当てられるようになることが、その人の成長につながる重要なポイントになると思います。

ーー若山さんから見た「人の変化」についてはいかがですか?

若山:色んなことの境目・垣根がなくなって、働き方も柔軟になったからこそ、最後にものをいうのは実行力だと思っています。例えば、私が担当させていただいていた協働先の大島屋さん。こちらも大島紬の織元さんですが、代表の佐藤邦弘さんが大島紬を織って、奥様の佐藤ゆかりさんが事業を支えるという、ご夫婦で二人三脚の経営をされていました。

品物自体はすごく素晴らしいものを作られているので、あとはどうやってお客様に魅力を知っていただくかという議論をしていました。

魅力を知ってもらう方法の1つとして、写真の撮り方を変えようという案が上がりました。 どうしてもインターネットでのEC販売になってくると、見せ方一つで魅力の伝わり方が変わって、売上にも影響が出ますから。

ゆかりさんは、専門家でもなければ写真の経験もなかったので、魅力的な商品の見せ方をしなきゃいけないことはわかっていても、どうやって改善すればいいかもわからないわけです。そこで、魅力的に見える競合他社を中心に、EC上の写真を色々見て、「これはすごくいいよね」「こっちは安っぽく見えるよね」をいう仕分けををしていきました。その中での傾向を分析して、真似して写真を撮ってみたんです。それに対してさらに具体的に、もう少しシワ感があった方がいいんじゃないか、光の加減はこっちの方がいい、もっと寄った写真がいいんじゃないですか、みたいに相談しながら修正していった結果、今ものすごく写真が上手いんですよ。

これは実行こそがものをいう、のすごくいい例だと思っていて。自分には経験がないから、できないものだと思って行動しない人には多分一生できない。分からないなりにも手探りで、1個1個比較して傾向を見つけて、実際に撮ってみたら光の加減の重要性に気付いて……と、取り組むからこそそこから学びが得られるんです。

大島屋さんの反物の写真

藤村:初めは、ゆかりさんも「どうしたらいいですか?」というところからスタートでしたよね。それに対して協働プロから「もっとこうした方がいいのでは」「ここのシワが気になるね」だとか、「この布は光の反射で色味が変わるから、こっち向きの方がいいんじゃないか」みたいに色々意見を出しながら試行錯誤していったんですが、最後にはゆかりさんの方から「こう思うんだけどどう思いますか?」と自発的に意見が出てくる形に変わっていったんです。やり続けることによって意識も変わっていく。協働先の変化をすごく感じたエピソードの一つですね。

協働日本と壁を越えて「ワンチーム」へ。共に良い循環づくりをする仲間になりたい。

ーー事例を元に具体的なお話をたくさん聞かせていただきました。最後に、協働日本のこれからについて教えてください!今後一緒にプロジェクトをしたい企業の方、協働プロとして参画したい……そんな方達へのメッセージをかねて、一言お願いします。

藤村:これから取り組みをスタートするクライアントの方々によくお伝えしているのは、協働プロジェクトは「ワンチーム」でというキーワードなんです。言うのは簡単なんですが、実際ワンチームでプロジェクトに当たることはとても難しいんです。相当意識しないと、フラットでイーブンな形のワンチームにならないんですよね。 

私もプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトに入るが多いので、貴方と私とか、御社と弊社、みたいな形にせず、できる限り「我々」を主語にプロジェクトに当たっています。我々の取り組むものであり、我々の課題であり、我々の商品であり、我々のアウトプットだ、と一貫してプロジェクトに当たることで最終的にワンチームの状態になるんです。 

これって、私たちが今日ずっと言ってきた、「壁」の話なんですよ。発注元と発注先、中の人と外の人、というように、自らが勝手に壁を作りあう関係性だと、自ずと「これはそっちの仕事」という考え方になって、ワンチームの概念から離れていってしまう。

我々は自ら壁を作りやすい生き物である、という自己認識を持つと、だんだん壁も溶けてなくなっていくんですね。協働日本との関わりの中で、「壁なんてなかったんだ」と気付く人が増えていく。壁のないワンチームでは、自然とネガティブ・利己的・他責ばかりの環境もなくなっていきます。

そうやって勝手に生まれた、作られた壁を越えていった先にある「ワンチーム」を体験してみたい方、それが自分や自分の会社に足りないと感じた方はぜひご一緒させていただきたいですね。自ら変わろうとする企業の皆さんとの協働を私たちも楽しみにしています。

私たち協働日本も、様々な伴走支援実績の中で、どうやったらワンチームになって「We」の概念を会社の中に生み出せるかというノウハウが蓄積出来てきています。協働を通じて、ぜひ体感いただければと思います。

若山:経営をする上でも組織づくりをする上でも、あらゆる観点から選択肢が多いことはやっぱり有利だと思っています。

個人・組織・会社で色んな状況を見て柔軟に、迅速に判断して行動できる人が勝っていくという話にも似ているんですが、私の大事にしている協働日本の「良い循環」の内側に少しでも早く入っていくことが組織の発展にもつながるのではないかと考えています。最初は学ぶ立場でも、徐々に自分達が還元していく側にも成長していく。情けは人の為ならずじゃないですが、それが更にまた自分達に還ってくる。

協働日本の作る良い循環を作り出していく、その一員になることはすごく面白いと思います。協働日本の循環には、協働先の企業や協働プロ───仲間が日々増えていっています。協働から生まれた循環も大きくなって、目の前に広がる選択肢も増えていく。そしてやがて循環が循環を産んでいく構図になります。

いま企業を経営している方も、協働プロに興味がある人も、自分がその循環の一員になってみるとどう変わるのかを考えても面白いかもしれません。今まで思ってもみなかったような、選択肢や戦略が出てくる可能性があるし、「これって自分の強みだったんだ」とか、「うちの会社の本当に重要な無形資産だったんだ」みたいな気づきが生まれたりもします。

協働日本が、そういう場であり続けたいなと思って日々活動していますし、それこそが私たちが協働プロを続ける理由と言えますね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

藤村・若山:ありがとうございました!

藤村 昌平 / Shohei Fujimura

(株)協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン(株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。
2023年に独立し、株式会社fucanを創業。

(株)協働日本には創業当初から参画し、2021年にCSOに就任。事業開発のプロジェクトマネジメントに加え、幹部人材育成、越境チャレンジの事業開発メンタリング等を担う。

若山 幹晴 / Masaharu Wakayama

(株)協働日本 CMO(Chief Marketing Officer)

大学大学院卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャーとして日本・シンガポールにて従事後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーにて、最年少でマーケティング部長に就任。

協働日本事業については こちら

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今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏、同CMOの若山幹晴氏の対談をお送りいたします。
協働日本の創業時から参画しているお二人に、創業当初から現在までの5年間を通して見た協働を通じて生まれた支援先やご自身の変化、協働日本の未来について語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

※本インタビューは前後編にてお送りいたします。後編はこちら

物事への解像度を高めることで出てくる「本当にやりたいこと」が、人を動かす。

ーー本日は、協働日本創業時から参画しているお二人にお越しいただきました。よろしくお願いいたします!

藤村 昌平氏(以下、藤村):よろしくお願いします!

若山 幹晴氏(以下、若山):はい、よろしくお願いします。

ーー立ち上げからの5年間でお二人の本業のキャリアも変化してきたと思いますが、まずは当初から現在までの協働日本との関わりや変化についてお聞きしていきたいと思います。

藤村:僕は、協働日本の立ち上げ当初はライオン株式会社に勤めていて、去年独立しているのですが「事業を作る人を作る」というミッションを掲げてプロジェクトに関わっている点はずっと変わっていません。

変化があるとすれば、人との関わり方かもしれないですね。当初は、協働プロジェクトにおいて「売上の数字を上げるためには」「顧客を獲得するためには」「効率を上げるためには」…など、何かしらの目的を通じて、人の成長を支えるようなことが多かったのですが、現在では直接的に人と対話しながらお互いに成長する・させてもらう関係を作ることが増えてきています。

目的や成果を通じてではなく、直接的にその人のやりたいことそのものに対してアプローチする機会を頂けるようになっているのはここ数年で変わってきたことですね。

若山:世界と戦っていく企業がどんどん生まれていく中で、ライオンのように大きな会社は藤村さんみたいな人がさらに中枢になっていくと思っていたから、辞めると聞いたときはびっくりしました。

藤村:ライオンでは新卒から勤めて部長職まで経験させていただいたんですが、さらにその上に上がって組織のマネジメントをすると考えた時に、もう一つ壁があるように感じたんですよね。それをどうやって突破しようかと考えても、道筋がクリアに見えなかったというのもあって、「一旦組織を離れてみよう」くらいの温度感で退職を選んだんです。

だから今でもライオンの仲間たちとも話すし、状況も気になる。でも少し離れて別の経験を積んでみた方がいいなって。

伴走支援先の沼津三菱自動車販売株式会社のショールームにて

ーー若山さんもこの5年間の間で独立もご経験されていますが、ご自身の変化についてはいかがですか?

若山:先ほど少し触れた通り、僕自身も消費財、アパレルと色々経験してきました。2022年2月にポケトーク株式会社が創立されたタイミングで同年3月より同社にジョインしています。

個人としても2021年に独立し、協働日本でも創業期から多くの案件に関わらせていただきながら、様々な業種業態の事業者様と経験を積ませていただいているところです。

藤村:若山さんはずっとマーケティングのプロとしてキャリアを歩まれてきていますが、会社経営も経験している。会社の経営自体も、マーケティングの概念の中に入ってくる部分があるじゃないですか。

いちマーケティング担当・ブランドマネージャーとして働いていた時と、経営者として働くようになってからとでは、マーケティングに対する感覚や考え方がアップデートされたところはありますか?

若山:経営の視点で言うと、組織の話やミッション・ビジョンなど、すごく多角的に見なければいけない中で、おっしゃる通りマーケティング的な考えを持たなきゃいけないエリアが広いなというのはすごく実感しています。

いい人材にミッション・ビジョンに共感してもらって、 組織として強くしていく上でも、やっぱりその人の考えやニーズを捉えながら、どうすり合わせていくかという考え方もまさにマーケティングですし。コストカットの方針を決めること一つとっても、納得感をもってどう伝えていくか。これもマーケティング的な思考がないとうまく実行できない場合があると思います。

どういう角度から見ても、マーケティング的な思考は重要なんだなと思う一方、最近では、もう「マーケティング」っていう言葉を使わなくてもいいのかなと思っていて。

藤村:型すらもう捨てようとしているんだ。(笑)

若山:マーケティングって、語源的には「マーケットを作る」という発想から「マーケティング」と呼ばれているのかなって。でも、これって究極的には「顧客志向」とか「人の気持ち」に根付いてるんだろうなと思うんです。特にAI時代と言われている中で、やっぱり人間じゃなきゃできないことって何なのか立ち返ってみると、「人の気持ち」が全てなんじゃないかなと。

消費行動は突き詰めると人の気持ちを理解することだし、組織作りも人の気持ちを理解することだし……とすると、なんだかそういった人の気持ちに紐つくことを「マーケティング」って、一括りにするのは”便利な言葉”すぎないかなと。

なんだか、もっと具体的に響く言葉を使っていかないと、人も動かないようになってきてるなと思うことがあるんですよね。

ーー若山さんは、「マーケティングのプロ」として協働日本の伴走支援に入られていると思いますが、そういった部分もプロジェクトの中で実感されているのでしょうか?

若山:そうですね。「マーケティング」という言葉を使わず、「お客さんの理解を深めましょう」という言い方でもなんとなくやるべきことは理解はできるじゃないですか。このような表現の方が今は効果が出やすいと感じるんですよね。一言で「マーケティング戦略」と言うのではなく、「これから考えるのは顧客戦略で、まずは顧客を理解して、どういう人たちを狙うのか」というような言葉に置き換えるんです。

そもそも僕にとって、協働日本での伴走支援は「循環」だと思っていて。自分がもらったもののバトンを渡していきたいという考えがあるんです。「マーケティング」という言葉に対して、なんだかすごそうだけどよくわからないものという印象を持っている方が実際にいらっしゃるので、「こういうところから始めれば良いんだ」と気づきを持ってもらえるように発信することを心がけています。だから、協働日本のセミナーなどをきっかけにマーケティングの考え方に興味を持って仕事のやり方を変えていったと言っていただけることがあると嬉しいですね。

この「循環」ってポジティブなものでなければいけないと思うんです。利己的・ネガティブな感じになると回らなくなる。やってみたら結果が出た、人が変わっていった、いい方向に動いた、というようなポジティブサイクルをどんどん作りたいと思っています。

ーー理想的な考え方である反面、わかっていても実践が難しいという方も多そうですが、意識してポジティブにしていくために使っている言葉や振る舞いはありますか?

若山:そうですね。常に自分がポジティブでいることを心がけています。協働日本に相談してくださる方は、現状に対しなんとなく不安や心配を抱えていることもあるので「大丈夫です、こういったところから始めていきましょう」と僕側がポジティブに振る舞うことでまず安心してもらって、前向きに取り組んでいく基盤作りをするイメージですね。

伴走支援先の企業は、業種的にも、機会的にもどうしてもお客様と直接相対して来られなかった方が多いんです。なので、伴走支援に入って一緒にプロジェクトを進めることで、お客様なくしてビジネスは成り立たないことを常に考えていけるようになる、ということを僕の提供価値にしていきたいと思っています。

ーー藤村さんも、伴走支援の中で意識されていることはありますか?

藤村:協働日本の中では顧客企業毎に協働チームを組成して進めていくわけですが、チームにアサインされた顧客企業側のメンバーが持ちやすい、”やらされている”という感覚をいかに排除するかには気を遣っていますね。

この「やらされている感」が生まれてしまった瞬間に、全部なし崩し的に、「もう上の方で決めてください」とか、「協働プロの皆さんが決めてください」みたいな……なんだろう、「誰かに決めてほしい」という空気が出てくるのが良くないと思っていて。

プロジェクト単位でもそうなのだから、組織や会社などの単位でもこういった空気が出てきてしまうとすると、すごくネガティブなループに入っていくと思うんです。 

でも、過去自分の仕事を振り返ってみた時に「やらされてる」っていう感覚がなかったかと言うと、”あった”ケースもあるので、いたしかない部分があることも理解できますが。

若山:人って多分、わからないことに対しては恐怖を感じて、能動性を持てないところがあると思うんです。それがやらされてる感にも繋がるんじゃないかな。

伴走支援の中で、「こういうことやっていきましょう」という話になった時に、「なんでこれをやるんだろう」とか「これをするとこんな良いことがある」という理解がないと、やっぱりやらされている……ただのtodoタスクになってしまう。

だから「こういうことをやっていきましょう」の後に僕たち協働プロは「なぜそれをするのか」という意義をきちんと解いていくための対話をするんですね。「こうですかね?ああですかね?」「でもこういう視点もありますよね」「なるほど、じゃあこれをやるっていうことはこういう意味があるのか」───という風に、プロジェクトメンバーそれぞれの腑に落ちた瞬間に、やらされ仕事じゃなく、自分の仕事になっていくように感じています。

藤村:そうですね。これって若山さんがさっき話してくれた「便利すぎる言葉じゃ人は動かない」にも繋がるんじゃないかと思っていて。

色んなものが便利になって、色んなことをやらなくて済む、AIがやってくれるって世界になればなるほど、人は自分で考えることをしなくなっていく部分があると思うんです。

でも、「やりたい仕事」って誰かに与えられるものではなくて、自分で作らなくてはいけないものだから、自分の気持ちに素直になって自分がどう考えているのかを表現して「やりたいこと」を明確にして作り上げていくことが重要です。だとすると、プロジェクトマネジメントする側からも、「これを聞いてどう思う?」など相手に話を聞いて、本心を引き出す必要もあるんじゃないかなと思います。

ひたすらに深掘りしていって、リアクションを読んで……ということを積み上げていくことで、伴走先の皆さんの本当にやりたいことが見えてくる。小さいところから、この「やりたいこと」を繋げて作り上げていくことで、最終的に商品やサービスを届ける先のお客様や、協力を仰ぎたいパートナーにも「いいじゃんそれ、面白いじゃん」って共感していただけるようになると思うんです。

境目が溶けてなくなった世界で求められる対応力。どう補い、高めるか?

ーー協働日本に参画した当初に見えていた景色と、今見えている景色についてお伺いします。当時思い描いていた5年後の世界に、今たどり着いた的な感覚があるのか、あるいは変わってきたという感覚があるのか、お二人の思うギャップを教えていただけますか?

若山:大きなギャップはないかなと思います。ただやはり、プロジェクト型で進む仕事、土地が離れていても同じ目的に向かって歩む人たちの在り方や働き方は当初よりも自然になってきているので、協働日本のプロジェクトについての説明コストが低くなっている感覚がありますね。今どき当たり前という感覚で、抵抗感がなくなってきている。

5年前は協働日本のプロジェクトを説明するときに、働き方や頻度など、プロジェクトや事業と直接関係ないところでの疑問を持つ方も多かった。前提条件が変わってきている印象を受けます。

藤村:元々勤めていた会社の中での働き方も大きく変わったタイミングでしたしね。境を越える───「越境」という考え方が日本の中で根付いてきていると思います。やはりコロナ禍を経て変わってきているという印象ですが、僕の中では、「越境」というよりは「境目がなくなってきている」と考えています。

業界の境目、距離の境目、全て溶けてなくなってきている。誰かが溶かしているのではなく必然的に溶けていっているんです。それこそ、距離的な壁はオンライン会議の普及でほとんど問題にならなくなりましたよね。コロナ禍で今まで「当たり前」だと思っていた動き方ができなくなって、違う方法を模索してみると案外これまでより便利なことに気づいたことって皆さん大なり小なりあると思うんです。消費者の消費行動も、企業の働き方やアプローチの仕方にも同じことが言えます。

つまり、そもそもコロナ前にあった壁や境目自体、実は自分が勝手に思い浮かべていただけのものだったんです。壁があると思いながら近づいていったら、実は壁なんてなかったという経験が現場でもう4〜5年続いていて、これまでいかに自分がバイアスの壁に縛られていたかに気づかされました。

若山:「境目がなくなる」というのはまさにその通りですね。境目がなくなってきたことで、これまでの「ここからここまでできれば良い」という範囲もなくなって、どういう状況下でも最大のパフォーマンスを出せないと生き残れなくなってきているように思います。個人も、経営者も、状況への対応力が問われていて、的確・迅速にできる人が生き残っていく。

先ほど藤村さんが、壁を破るための経験をもっと積みたいという話をされていましたが、これもやっぱり「境目がなくなった」ことにも関係するのかなと思っていて。僕ももともと消費財メーカー出身で、その後アパレルで小売や製造を経験して、今はIT系の分野でも仕事をしていますが、思い返すと「その時には思いつかなかったけれど、今の知識や経験を持っていたらもっとこうしていたな」と思うことがたくさんあるんです。経験の中で選択肢が増えているんですよね。 
一社に留まっているだけでは出てこない判断ができるようになっている実感があるわけです。

そこで湧く疑問が、例えば新卒から1つの業種や業態を極めつつ、副業的に引き出しを増やしていくことができれば、業種業態を超えた横の経験が蓄積されて経営判断にも活かせるようになっていくのか?ということです。それともやはり転職や企業など、働く場自体を変える必要があるのか……。

藤村:「時間のシェアとマインドのシェアが1番大きい」組織に、思考パターンが引っ張られやすくなる部分はどうしてもあると思いますね。

例えば、消費財分野のマーケティングって、やっぱり商品があって、競合がいて……と、コミュニティ化されてしまっているから、その中においては対エンドユーザーの戦略よりも対競合の戦略勝負になりがちです。そうやって競合のことばかり分析したり考えたりと、必然的に視野が狭まってしまう。

良い悪いということではなく、一つの組織に留まり続けると、どうしても狭い視野のままになってしまう部分はあるかもしれない。

若山:競合と自社を比較分析して戦略を立てる中でも、市場で勝っていくためには市場破壊するようなイノベーションを起こすか、もしくは他社に起こされた時に一歩でも遅れを取らないことが必要です。

同じ業界だけで新卒から上がってきた人たちだけでは気付くことができないような新たな視点を取り入れてイノベーションを起こしていかないと、企業の成長戦略は描きにくくなっているんじゃないかなと思います。

そういった視点を獲得するために必要なのは転職か?副業か?という疑問を改めて考えても答えはないと思うんですが、少なくとも企業の発展のためには人材や考え方の交流を増やしていかなきゃいけないし、コロナ後の市場の変化によって必須になってきている感じがありますよね。

藤村:そういった部分を鑑みても、複業人材を活用することは効果的かもしれませんね。企業にとっては、色んなバックグラウンド、専門性を持つ人材を適材適所で活用していくことができる。複業人材側はこれまで触れることのなかった分野についても経験を積むことができるので、対応力が上がっていく。それをまた自社に持ち帰ったり、別の複業先に還元したりしていくことで、実際に若山さんの仰るようなポジティブな循環が生まれていきます。

後編へ続く

藤村 昌平 / Shohei Fujimura

(株)協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン(株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。
2023年に独立し、株式会社fucanを創業。

(株)協働日本には創業当初から参画し、2021年にCSOに就任。事業開発のプロジェクトマネジメントに加え、幹部人材育成、越境チャレンジの事業開発メンタリング等を担う。

若山 幹晴 / Masaharu Wakayama

(株)協働日本 CMO(Chief Marketing Officer)

大学大学院卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャーとして日本・シンガポールにて従事後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーにて、最年少でマーケティング部長に就任。

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STORY:AKR Food Company株式会社 松元 亜香里 氏 -黒豚への強い想いを形にし、付加価値をつけた商品開発の挑戦-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和5年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、2024年2月16日(金)に取り組み企業数社をお招きし、報告会を鹿児島県庁にて行いました。

当日お越しいただいた一社である、AKR Food Company株式会社 代表取締役の松元 亜香里 氏に当日発表いただいたお話をご紹介させていただきます。

AKR Food Company株式会社は、黒豚の精肉・加工品の販売を行う会社です。「Farm to Table」を1つのキーワードに、「いただく黒豚の命を余すことなく活かしたい」という思いで、黒豚の一頭一頭の価値を形にするべく『かごしま黒豚』だからこそ、〝日常で〟使いたくなる 製品づくりに日々邁進されています。

今回は個別インタビューでお伺いした内容を含め、松元さんにお話しいただいた協働日本との取り組みを通じて生まれた変化や、今後の事業展望への想いなどをご紹介します。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

協働日本 令和5年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子も合わせてぜひご覧ください。

黒豚一頭一頭のいのちを大切に──未利用資源を用いた新しいプロダクトの販売を目指す。

ーー協働日本と進めている「未利用資源を活用したペットフード」プロジェクトについて

まず、なぜ私がAKR Food Companyで黒豚の販売を始めようと思ったのかについてお話ししたいと思います。私の家業は、飼料から黒豚を生産し、カット販売まで一貫して手がける企業でした。

黒豚は一般的に、生まれてから約8ヶ月ほどでお肉として皆さんのお手元に届けることができます。

私も、家業で13年間生産現場に従事してきた中で、より黒豚の魅力を皆様に知っていただきたい、一頭一頭の命を大切にして、余すことなく売っていきたい、という思いでこの会社・事業を立ち上げました。

ですから、今は精肉としてはもちろん、生産過程も大切に黒豚を販売しています。今回は黒豚の使われてない部位を使用したペットフード事業を協働日本との取り組む事業として選びました。

なぜペットフードなのか?と言いますと、黒豚を取り巻く環境は、皆さんもご存知の通り餌の価格の高騰や、農家の高齢化で後継がいないなど厳しいものとなっています。それによって精肉分野でも原料調達が大きな課題になっているのです。

しかし、そんな貴重な黒豚には、精肉として人間が食べる部位以外にも、使われていない部位がまだまだあります。そういった未利用資源を用いていきたいというのがはじまりでした。

現状、活用されていない部位は、廃棄か肥料化のどちらかですが、いずれにしても農家にとって収入にならないのです。

協働日本との取り組み開始前は、ペットフードとして活用できないか?と考えたものの、ペットフードは売ったことはおろか手にしたこともなく、市場のこと自体がまったくわかりませんでした。

また、どうすれば未利用資源に付加価値をつけ、買ってもらえるような商品にすれば良いのかも、まだまだ未知の領域でした。

お土産品、ふるさと納税返礼品などで好評の缶詰シリーズ

顧客像が明確になるまで、繰り返し行ったモニター調査が、メンバーの意識変革をもたらした。 

ーー実際に、どのようにプロジェクトを進めていったのか教えてください。

はじめに取り組んだのは、犬を飼っている方々へのヒアリングです。何度も、いろんな方にヒアリングをしていくことで、家族としての犬の存在意義や、食事、生活の中で気をつけていることなどを深掘りしていくことで、愛犬家の方の価値観を言語化していきました。

黒豚を使ったプレミアムなペットフードは、どんな人に買いたいと思っていただけるのか、顧客像を掘り下げていって、ターゲットを決めました。

明確になったペルソナ。家族として犬と過ごしている愛犬家にこそ買ってもらいたいと決めた。

顧客戦略、プロダクトコンセプト、ブランド名などを決めていくにあたって、協働日本さんに入ってもらってよかったと思ったことがいくつもあります。

それは、プロジェクトに携わるメンバー達がそれぞれのテーマについて掘り下げて考え、お互いに共有していくことで、各々が何をしなくてはならない、など自分達の意義を明確になったことです。こういった意識変革自体も、今回の1つの成果だと感じています。

また、モニター調査をもとに商品の開発も実施しました。商品名は「want’n」に決定。「いつものフードにプラスするだけ、いつまでも元気でいてほしい愛犬のためのアンチエイジングごはん」というブランドコンセプトも決めました。

そして、ファンを獲得するための目玉商品──いわゆるHEROプロダクトとして「黒豚ボーンブロス」を作り上げました。

ボーンブロスとは、黒豚の骨や、鹿児島県産の鶏を使った出汁のことで、海外のセレブの間では美容と健康に良いと話題になっていたものでもあります。タンパク質やアミノ酸が豊富に含まれており、腸を整えることで美容や健康に効果があるものです。

これまでも人の食用にボーンブロスの素「骨パック」という製品を販売していましたが、今回のモニター調査の中で、犬も腸を整えることでシニア犬の健康や毛艶にも効果があることがわかったため、HEROプロダクトに設定することになりました。

未利用部位の活用についても掘り下げてお話ししますと、例えば腎臓──マメと呼ばれる部位ですが、人はなかなか食べることはありません。しかし、栄養価だけ見ると肝臓──レバーと同じように費用に栄養価が高いんです。レンダリングと呼ばれる加工を施し、飼料にすることもできるのですが、キロあたりの販売額は10円もしない部位でした。

ですが、犬の健康に焦点を当てた餌としての付加価値を与え、製品化して販売することによってキロあたり1万円くらいで売れることがわかったんです。こんなに付加価値をつけることができるものなのかということにも驚きました。

黒豚のマメ・サイコロヒレ・ほほ肉を使ったペットフード「Premiun Plusシリーズ」


実際のモニター調査で、17歳のシニア犬に与えてもらったところ、普段は目も見えづらく餌に自分で辿り着けなかったのに、「want’n」の餌は箱を開けた途端に自分から餌に近づいていって食べるなど、いつもと違う行動を取るようになったのだそうで、飼い主の方も変化をとても喜ばれていました。

これまでは廃棄、あるいはとても安価にしか販売できなかったような未利用部位も飼い主にも犬にも喜んでもらえる、という「価値の創造」ができたと思っています。

付加価値の創造と、想いを言語化し、形にする力がついた

ーー協働を通じて得られた変化や成長についてどのように感じていますか?

今回の伴走支援では、どうやって商品への付加価値を作っていくのかの工程、どうやって調べればその価値を見出せるのか、そして言語化する力が身についたのではないかと思います。

これまで自分たちが当たり前だと思っていたことが、商品の売り文句になって、商品の魅力となって世に出せることがあると気づけたことも私たちの成長だと思っています。

鹿児島にはまだまだ未利用部位があるので、付加価値を見出し、まだ新しい商品開発、販売、今後の事業につなげていきたいです。

ーー伴走していた協働プロからの総括

若山幹晴(協働日本CMO):プロジェクトの歩みとしては、まずAKR Food Companyの皆さんが持っていらっしゃる想い、そして強みについてヒアリングをさせていただきました。

ヒアリングをもとに、「黒豚への想いの強さ、命の大切さを世の中に広げていくためにペットフード事業」を成功に導くためのプロジェクト設計を行いまして、プロダクト、事業のコンセプト設計、リサーチを進め、顧客の理解をもとにプロダクトを準備していきました。

僭越ながら、伴走する立場から、AKR Food Companyの皆様の強みと変化についてもお話しさせていただきます。


まず、当初から黒豚への想いの強さを感じておりました。一事業者としてではなく、ひとりの、黒豚と相対する人間としてのリスペクトを聞いているだけで、こちらも黒豚のことを好きになり、プロジェクトのご支援していきたいと思うようになるほどでした。

強みと変化として挙げさせていただきたいのが、思いを形にする力がどんどんついていっているように感じました。我々協働プロはあくまで伴走支援をする人間です。

我々からは「こういうところを調べましょう」「次にこういうことをしましょう」とお伝えし、実際に考え、アクションを起こすのはAKR Food Companyの皆様なのですが、毎週期待値以上のアクションを起こしてくださったところが印象的でした。

想いを形にする上で、このようなプロダクトコンセプトでやりたいと資料を作ってきてくださったり、一般的なペットフードで使われる鶏や豚と黒豚との栄養素の比較表から強みを調べてビジュアライズまでしてくださるなど、毎週我々がびっくりするような動きでした。そういった積み重ねで、事業者として成長していかれていることを感じました。

最後にこれからについてですが、現在、ヒアリングからプロダクトのプロトタイプを作られまして、実際のモニターからアンケート結果もいただいていますが、コンセプト自体の魅力度、プロダクトの満足度は100点に近いものができています。これからHPの準備やプロモーション面を考えていくところに進んでいきますが、新ブランドとしてとても良いスタートが切れているのではないかと思います。

松元 亜香里 / Akari Matsumoto

AKR Food Company株式会社 代表取締役

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協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社ソミック石川 代表取締役の斉藤 要氏にお越しいただきました。

株式会社ソミック石川は、大正5年に「石川鐵工場」として創業。ボルト、ナット類の製造工場としてその歴史をスタートしました。現在は自動車部品の製造業として、トヨタ・スズキ・スバルなど大手自動車メーカーが主要取引先となり、国内シェアは50%を超えています。

そんな、私たちの生活を支える自動車の重要保安部品を作る、ソミック石川の新たなチャレンジに協働日本が伴走させていただけることになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

はじめてのBtoC事業に向けて、協働を通じてノウハウを学びたい

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

斉藤 要氏(以下、斉藤):よろしくお願いします。弊社の人事部の若手社員が、協働日本代表の村松さんの講演を聞いて連絡をとり、私に紹介してもらったことがきっかけでした

ちょうど村松さんが弊社のある浜松に来るタイミングで、一緒に食事をさせていただきました。その場ではすぐに取り組みをスタートするといった話にはならなかったのですがその後、約1年後に当社のサポートをしてもらえないかとあらためて依頼して今に至ります。

ーーファーストコンタクトから協働がスタートするまで、結構間が開いていますね。

斉藤:そうですね。村松さんとはじめてお話した際に、協働日本の伴走支援のモデルに大変強い興味を持ちました。協働プロとの協働を通じて様々な取り組みが実現できそうだと感じました。

ただ、当時はすぐに取り組みたいテーマがなく、その場ですぐに、とはならずそれっきりになってしまっていました。

ただ当時から、自社としても近い将来に新規事業を立ち上げなくてはいけないという危機感は持っていたので、いざその時にはぜひ力をお借りしたいとずっと思っていました。

ーー約1年越しでそのタイミングが来たと。

斉藤:はい。今生産している製品を自動車メーカーだけではなく、補修部品として直接ユーザーに売る仕組みを作り、BtoC向けの新規事業を立ち上げ、事業領域をさらに拡大させていきたいと考えています。

我々はずっとBtoBの事業をしてきたので、BtoC向けの経験も流通・販売の仕組みも持ち合わせていませんでした。

元々、トヨタ生産方式の合理的な生産体制が社内に浸透しており、とにかく無駄を削ぎ落とすという考え方が基本だった弊社は、決まった仕組みの中では生産性を高めることができている一方、新しい仕組みが社内に入ってきにくいという課題も抱えていました。

普段から、決まった大手のメーカーが取引先ということもあって顧客対応も画一的なもので問題なかったこともあり、BtoC事業に求められる柔軟さが不足していました。

考えていたBtoC向けの新規事業においては、我々の販売する自動車部品が必要になる時は自動車修理のタイミングで、自動車生産と違って突発的なタイミングで発生するものです。計画的でないニーズにも対応できる自由度も、社内で絶対必要になるはずです。

そこで、経験豊富な協働プロに参画していただくことで、経験不足を補い、ノウハウを短期間で吸収したいと考えたんです。

やはり、同等のプロフェッショナル人材を自社で採用し、育成したり直接雇用したりするとなれば、とてもお金がかかります。協働を通じて組織のトップがノウハウを手に入れられるならば、結果的にとても効果的で価値ある投資になると確信したことも、経営者視点から見て大きな決め手でした。

協働プロの現地視察風景

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

斉藤:我々の考えるBtoCの新規事業に向けて、物流を含め、供給をどうしていくかなど、広く売る仕組みを構築中です。協働日本からは、CSOの藤村昌平さんと、協働プロの根崎 洋充さん(大手製造業)、三宮 大輝さん(西日本旅客鉄道株式会社)の3名の方にプロジェクトに加わっていただいています。弊社からは私以外に、営業部門の役員と部長が参加しています。

構想した新規事業は、新しい製品を作って売るということではなく、既存製品を新しい売り先に売ることになるので、まず業界の仕組みを深く掘り下げて分析しました。

我々のようなメーカーが作った自動車の部品は、仲卸業者を介して自動車メーカーに販売しています。エンドユーザーが部品を必要とする場合は、カーディーラーや整備工場などを通じて購入することになります。

売り手側も買い手側も、直接の売買が難しい構造になっているんです。そこで、他社・他業界の事例なども踏まえて、ターゲットとの接点の作り方や売り方、そして我々の強みについて毎週のように協議しています。

ーーなるほど。まさに新規事業をスタートする準備段階なのですね。協働を通じてどんな発見があったかお聞きできますか?

斉藤:価格設定についての話をしていた時、どうしても社員の考えが「自動車部品」をベースとして凝り固まっていることに改めて気付かされました。

自動車部品という業界においては、良い製品を作って、そこからどうやって原価を下げるかが重要視されます。例えば、利益率も製品価格の5%と設定されているなど、他業種に比べて特殊な構図があります。

そのことが根底にあるので、どうしても売価設定をリーズナブルに設定しようとしてしまいます。そんな時協働プロから「もっと高く売ってもいいんじゃないか?」と言っていただいてハッとしました。

価格設定の際には、「お客様が何に価値を見出していて、そこにどう値段をつけていくか」を考えるという、他業界では当たり前なのかもしれませんが、この業界に長く浸かっていたいた私たちにとっては、これまで持ち得なかった新しい視点を持ち込んでいただきました。

さらに、自動車メーカーからエンドユーザーに売り先が変わったことで、「お客様が部品に見出す価値」も変わってきます。ですから、全く同じ部品であっても、お客様の見出した価値の分通常よりも利益を載せることだって出来るという考え方ですね。

ターゲットとするエンドユーザーに、より大きな価値を見出していただける製品のラインナップについて協議を進めて、これからテスト販売をする予定です。その結果からいよいよ販売の仕組みを構築していきます。

市場に合わせて柔軟に変化できるように促したい。新しい視点を得た今、期待すること。

ーープロジェクトはまだ道の途中とのことですが、現状で感じる変化や成果はありますか?

斉藤:まだまだこれからだと思っています。まさに今も、我々の強みはどこにあるのかを見極めようとしているところです。

慣習に囚われず、売り先に合わせて売価を適切に設定することは、我々の強みに自分たち自らが値付けをすることでもあります。我々の強みにより価値を感じる顧客に、適切な価格で売ろう、という意識と主体性を持って、いま徐々にアプローチを変化させていっています。

ーー変化をしっかりと言語化できているところに、多くの議論を重ねてきた、ワンチームでの協働があったのだなと感じます。そういった意識の変化につながったきっかけや、背景はなにかあるのでしょうか?

斉藤:こういった変化が生まれたきっかけのひとつに、業界分析を重ねていく中で、旅行産業の収益モデルを協働プロから教えてもらったことがあります。

エンドユーザーがインターネット上で予約サイトにアクセスしてホテルを予約し、旅行するというプロセスの中に、ブッキングサイト、や旅行商品を販売する会社など、複数の中間事業者が役割分担しているのですが、それぞれがどこでどんな風に利益を上げているのかを解説していただいたんです。

その話を聞いて、我々が製品を作って、エンドユーザーの手元に届くまでの間のどこで利益を上げるのか、収益モデルをいかに構築していくかがとても大切だと気付かされました。

僕たちは製造業者なので、どこまでいっても「良い物を作れば売れる」と考え、「良い物」を作ることに集中してしまうところがあります。

ですが、協働プロの皆さんは、何によってユーザーに選ばれるのかという視点について、事例を伴うアドバイスをくださるので、いつも新たな視点に気付かされています。良い物を作ったって、良いかどうかなんてパッとはわかりません。

今はとにかく、顧客視点で選ばれる製品、そして事業へと進化させるべく、戦略を立てています。

ーーこれから、こんな変化を自社に生み出せたら良いなという展望はありますか?

斉藤:今後は、日本の人口はどんどん減っていって、市場が縮小してくるのが目に見えていますから、社員や組織が新たな時代に対応できるような変化を促したいと考えています。

というのも、普段の徹底した合理的な生産方式が、もしかしたら今後ネックになりうる可能性もあるからです。先ほど申し上げた通り、トヨタ生産方式は無駄を削減した合理的な仕組みです。

完成された、無駄のない仕組みを普段から運用しているからこそ、人によっては状況が変わっても同じやり方が正だと考えてそのまま運用し続けてしまう危険性も当事者として感じています。

本来のトヨタ生産方式の考え方に立ち返れば、ベストな状態にするにはどうしたらいいかを仕組化していくことが大切だという考え方ですから、状況に応じて仕組みを変化させることが非常に必要です。

市場の変化に合わせて柔軟に対応することが会社として必要な局面にいるので、皆がただ去年と同じ仕事をしているという状態から、未来はどうなるかを読んで対応を変化させていけるようになって欲しいと思っています。

日本の強みは人的資源。協働日本のコミュニティが日本を更に強くする。

ーー斉藤さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味はおありでしたか?

斉藤:そういう活動をされている方がいることは知っていましたが、ここまでシステマティックに複業人材の活用をされている会社があるということは、村松さんのお話を聞いて初めて知りました。

ーー率直に、協働という形で取り組みをはじめてみていかがでしたか?

斉藤:協働がスタートして、社員も活き活きと参加してくれています。プライベートの時間もフットワーク軽く、市場調査をしにいくほどなんです。協働プロとの壁打ちが効いてるんだと思います。

自分のやったことに対して、きちんとアドバイスやフィードバックがもらえることがやはり嬉しいんじゃないかなと。僕も、どうしてもこれまで忙しくて、社員と1on1をしてサポートすることはできなかったので、社員が喜んでくれているのをみると、取り組みを始めて本当によかったなと感じます。

我々と同じように1つの分野に特化して専門化してしまっているような企業が、何か変化しようとしたり、新しいことを始めようとしたりしているなら、協働日本さんとの取り組みをぜひお勧めしたいですね。

特に製造業は、そういった会社が多いと思います。大きい会社であれば、その中でも色んな背景を持つ人材がいるかもしれませんが、中小企業だと難しい部分もあります。

だからもう、新しいことを始めたいけどノウハウが足りないなど、困っているのなら、まずは試してみるっていうのも一つの手じゃないかなと思います。
言い方は適切ではないかもしれないけれど、人を雇うのと違い、合わないと感じたら辞めることもできます。今回協働プロには3名入っていただいていますが、こんな人材を3名も雇うことになったら、もう大変です(笑)。

それを窓口一本、協働日本さんにご相談するだけで、熱意のある適切な人材をアサインしてもらえるんだから、本当にありがたいと思っています。

ーー最後に、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

斉藤:協働日本は、ある意味で大きなコミュニティとも言えますよね。こういったコミュニティが広がっていくっていうのはとても大事だなと思います。


というのも、製造業は特にこれまで、内製技術で川上から川下まで全部自前でやりますという、考え方が多かったですが、最近は強いところだけやります、という構造に変わってきています。

例えば、インテルも中身だけに特化して、パソコンの外側を作らなくなっていますよね。そのように、個々の技術をネットワークで繋げて、最終的には大きな成果を作り上げるという時代になっていくと僕は考えているんです。

協働日本のようなコミュニティがそれぞれの強みを持った人材や会社をつなぐネットワークになれば、よりスピーディに成果を産み出すことができ、発展していくのではないでしょうか。

思い返せば私自身も会社から、色々な変化の機会をもらっていたんですね。異動や昇進昇格…いろんな経験ができたからこそ変化も成長もしてこられました。

でも、そういった様々な変化や経験を全員が等しく受けられるとも限りませんし、これからは自らがそういった変化のある場に飛び込んでいく必要がある時代です。

協働日本を通じて協働プロとしてその機会を作ることができれば、もっと社会のために能力を発揮できるという方も、きっと多くいるのではないでしょうか。

日本の強みは、資源ではなく人的資源です。最後は人ですから、協働日本のコミュニティが、日本を更に強くしていってくれることを期待しています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

斉藤:ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。


斉藤 要 / Kaname Saito

(株)ソミック石川 代表取締役 社長 トヨタ自動車(株)にて、ステアリング実験、サスペンション設計、生産技術を経験し、設計部長を務めた後、(株)ソミック石川へ転籍。2022年より現職。

協働日本事業については こちら

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STORY:株式会社四十萬谷本舗 四十万谷 正和氏 -課題に合わせた戦略的人材活用。老舗企業の考える「生き残り戦略」とは-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷 正和氏にお越しいただきました。

株式会社四十萬谷本舗は、明治8年創業、老舗の発酵食品の製造販売を手がける会社。創業以来、醤油、味噌、糀などを始めとし、味噌漬やかぶら寿し、大根寿しなど、地元の文化に根ざした発酵食品を作っています。

150年近い歴史の中で、時代やニーズに合わせて緩やかに変化を続けてきたといいます。コロナ禍を迎え、また変わり始めた時代潮流に合わせ、協働日本とのプロジェクトをスタート。更なる進化を遂げる四十萬谷本舗に、協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、そして中小企業の生き残り戦略への想いを語って頂きました。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

「塩漬けしたかぶ」に「熟成させた天然鰤」を挟み、糀で漬け込んで発酵させた伝統のかぶら寿し。 

一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるのが魅力

ーー本日はよろしくお願いいたします。四十萬谷本舗さんは協働日本との取り組み第一号の企業です。協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

四十万谷 正和氏(以下、四十万谷):よろしくお願いします。

僕と妻が実家の家業を継ぐべく、勤めていた会社を辞めて、四十萬谷本舗に入った時、課題の宝庫と言えるほど、様々な種類の課題に直面することになったんです。

マーケティングの問題、営業の問題、DX化…解決すべきことが山積していました。

実際に現場に入ってから、日々発生する現場の課題に1つずつ向き合って解決していたのですが、会社全体が良くなっていく感じも全然しなくて、どうしていけばいいのかなと、当時は途方に暮れていました。

そんな時に、協働日本代表の村松さんから一緒に課題の解決に取り組まないかと声をかけていただいたんです。

ーー「伴走支援」という形の複業人材との協働。はじめての取り組みだったと思いますが、協働スタートの決め手はなんだったのでしょうか。

四十万谷:元々、村松さんとは同じ会社(ハウス食品)で働いていたというご縁もあり、普段から相談する機会もあって、弊社のこともよくご存じでした。

同様に、協働プロとして入ってくださるメンバーの何人かが元々の知人であったことで、元々の信頼関係があったこともきっかけとして大きかったと思います。

ただ一番大きかったのは、信頼できるプロフェッショナルに、それぞれの専門分野について力を発揮してもらえるというところでした。

例えば、何人かの協働プロに入っていただく中で、マーケティングのことは若山さん(若山幹晴氏 – ポケトーク(株)取締役兼CMO)、テクノロジーやITのことについては横町さん(横町暢洋氏 – NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)に聞けるなど、一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるというのが、大きな魅力の1つでしたね。

僕も妻もこれまでのキャリアのバックグラウンドは「人事」で、人事領域については一通り経験を積んでいたものの、その他の領域についてはやはり未経験ということもあり、1からキャッチアップして勉強していくのは容易ではないと感じていたので、とても心強かったです。

ーー実際どんな課題についてプロジェクトを進めて来られたのかお聞きできますか?

四十万谷:まずはその課題を整理する、というプロジェクトからのスタートでした。そもそも課題には2つのパターンがあり、1つは「不良品が発生してしまった」「お客様からクレームのお声をいただいた」など日々の業務の中で発生するトラブルに近いもの。

そしてもう1つは経営全般に関わる、企業としての本質的な経営課題です。僕たちは日々のトラブルへの対応に追われて、なかなか経営課題に着手できていないのが実情でした。

そこで、プロジェクトでははじめに徹底的に従業員やお客様へヒアリングすることで、四十萬谷本舗にとっての本質的な経営課題は何か?ということを洗い出していきました。

それによって「メインの顧客層が高齢化していること」「お歳暮などの贈答の習慣がなくなっていくこと」「冬に売り上げが集中していること」の3つが浮き彫りになったので、次はそれぞれの課題に対してどう会社として向き合っていくかというプロジェクトに移っていきました。

ーー現場では日々色んなトラブルや課題が生まれてしまうものだと思うので、本質的な経営課題に着手するというのはやはり容易ではないことですよね。

四十万谷:そうですね。日々発生する課題自体を解決するのもとても重要なことです。例えば、業務不良品が発生してしまったことについて、製造過程を見直して不良品が発生しないようにと根本から解決することは当然必要ですよね。

ただそういった日々の課題を解決できていても、「顧客自体が高齢化して、今後減っていく」という本質的な課題に向き合えていなければ、長い目で見た時に四十萬谷本舗を未来に残し続けていくことは難しい。

僕はこの日々発生する現場の課題のことを「重力」と呼んでいます(笑)。

もちろん重要なことだからこそ、どうしてもその対応で手いっぱいになってしまいがちになる。

だからこそ、現場の「今解決すべき課題」とは別に、週に1時間意識的にしっかり時間を切り分けて「長い目で見た本質的な課題」に着手できるということも、経営者にとっての協働日本さんとの取り組み価値だと感じています。

重力のように吸い寄せられる日々の課題。本質的な経営課題に向き合う時間の確保の難しさ

ーー本質的な経営課題に対してスタートした次のプロジェクトについてもお聞きできますか?

四十万谷:はい。次に取り組んだのは「メインの顧客層の高齢化」の課題についてです。新しい顧客層獲得のためのペルソナ整理と、打ち手は何かを考え始めたのが2020年3月頃で、せっかくスタートした直後に、コロナ禍に突入してしまいました。

コロナ禍においては当然実店舗の客足や売上には大きな影響を受けたこともあり、コロナ禍でもできる取り組みとしてオンラインでの取り組みやWebでの売上を伸ばすための施策をスタートしました。


具体的には、オンラインでの漬物体験の実施や、それと連動した体験キットを作ってWebで販売するなどの取り組みをすることで、Webの売上は年間3,000万円から4,000万円弱まで30%増という結果を産むことができました。

自宅で簡単に糀のお漬物づくりができる「生きている糀床」

ーー他の課題にも並行して取り組まれているのでしょうか?

四十万谷:そうですね。例えば「売上の冬季一極集中」という課題は、昔からずっと続いている課題です。

当社の圧倒的な主力商品であるかぶら寿しの需要が冬期に集中しているため、簡単には解決に至らないことが多いです。

今は、以前より限られた人員で現場を回せるようにオペレーションを工夫するなど、皆で力を合わせて少しずつ取り組んでいる状況です。もちろん人員をおさえることによって生まれた新たな次の課題も抱えながらではありますが、コロナ禍で売上が減っても収益性には大きな影響を受けずに来られています。

協働という本質的な課題を考える時間を作るようになったことで、こういった課題にもじっくりと向き合えているのかなと思います。

ーーなるほど。協働がスタートしたことによる成果としても、そういった「課題に向き合う時間を作れる」という面は大きいのでしょうか。

四十万谷:はい。成果という面でいうと、大きく3つ、「Webの売上が上がったこと」「そもそも本質的な課題へのアクションができるようになったこと」そして「経営課題に向き合う時間を意図的に作れるようになったこと」だと思っています。

やはり最初は目先の課題に追われて、長い目で見た時に必要な課題に取り掛かることができていなかったので、大きな一歩でした。

また、協働プロのノウハウが社内に蓄積されていくというメリットもあります。例えば、若山さんとのコミュニケーションの中でいつも出てくる「お客様は何を求めているのか」という顧客思考や、何か施策を打った時に「そこからの導線を考えることが重要」というような考え方が協働を通じてインストールされて、自然と僕の言葉の中に出てくるようになっています。結果としてそれが現場に伝わっている部分もあるんじゃないかなと思います。

中途半端な人材はいらない。協働プロは、想いを持って共にコミットメントできる仲間。

ーー四十万谷さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味をお持ちだったんですか?

四十万谷:複業人材との協働で成果が出ている弊社ですが、特に「複業人材活用」自体に関心があった訳ではありません。

協働の取り組みをしているのも、「協働日本だから」というのが大きな理由です。というのも、「複業」人材に関しては、まだ世間では「副業」という意識が強い方も多いと思うんです。

「副業」という意識を持っていると、どうしても本業が忙しくて…などの逃げが生じてしまいがちですし、本当にプロフェッショナルとしてのスキルや想いを持っているのか、取り組み前では分からないケースがほとんどです。

ーーご自身も都市部の大企業で働かれていたからこそ気になる点でもあるのでしょうか。

四十万谷:そうですね。企業に勤めていたころ、副業だったり、プロボノ的に企業へのアドバイスをしている人を多く目にしてきました。

その時の印象としては、コミットメントに甘えがあったり、プロフェッショナルとしてのスキルに疑問が残る人もいらっしゃいました。
今経営をしている立場としては、そういう中途半端なスキルの人材の、中途半端なコミットメントではかえって現場が混乱するだけです。

その点、協働日本の協働プロの皆さんは、経歴・経験やスキルはもちろん、強い想いを持ってコミットメントしてくれています。複業という形でありながら、甘えのないプロとしての姿勢を信頼して伴走支援をお願いしています。

ーーなるほど。複業人材だから、ではなく協働日本のプロたちによる強いコミットメントが成功の要因だったのですね。ちなみに四十万谷さんご自身は、複業人材との協働の中で気をつけていらっしゃることはあるのでしょうか。

四十万谷:気をつけていることは、こちらが「答えを教えてもらおう」「課題を解決してもらおう」などと受け身にならない姿勢です。

というのも、協働がスタートした当初の失敗がまさしくそれなんです(笑)。すごいプロフェッショナルに来てもらったのだから、「早く答えを教えてくださいよ!」と思ってしまっていました。

また、協働プロからのせっかくの提案に対して「現場のことをわかってない!」と感じてしまったこともありました。当然現場のことは僕たちの方が熟知しているという情報の非対称性が、「そうは言っても現実的には難しい」など、「できない理由」を作ってしまうことに繋がっていたと思います。

そんな時にも協働プロからは、「一歩踏み出してみるのが難しいのはわかるので、まずは半歩だけでもやってみませんか?」と提案してもらうことで少しずつ進めたんです。

それだけ切羽詰まっていて、答えを知りたい状況だったということもありますが、本来協働とは「一緒に考え、共に解決していく」ものだと今は実感しています。

教えてもらおうという姿勢ではなくて、一緒に悩みながら進んでいこうというワンチームの姿勢で臨むことが、一見遠回りのようでも、結果的に成功につながる実感があります。

協働プロと売場を視察

ーー協働はワンチームで進める、というのは本当におっしゃる通りだなと思います。

四十万谷:やっぱり、いい成果を出す、いい物を作る、など結果を出すためには、変に格好つけたり壁を作ったりせずに、オープンな関係でいることも重要だと思いますね。

直雇用の正社員だからコミットメントが高くて、外部の人間だからコミットメントが低いということはないと再確認しました。

協働プロのように、外部の人間でもしっかりプロジェクトや事業に想いを持って当たってくれる人材がいる。もはや、社内外の枠で区別してしまうことはあまり意味がないのでは?と最近では感じています。

外部の人材に対して適切に情報を開示し、受け身の姿勢を捨てて素直に向き合うことで、より成果につながる協働ができるようになるのではないでしょうか。

自社の課題を自分たちだけで解決しようとしない───「地方の中小企業の生き残り戦略」

ーー四十万谷さんは、地域企業の方達とコミュニケーションを積極的に取られていると思うのですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。

四十万谷:地域企業の経営がアップデートされて企業がもっと面白くなることが、その地域にとって一番プラスになるのではないかという考えが根底にあります。例えば、どうしても「地元に面白い仕事や企業がないから都会に出る」という選択を取るケースがありますが、面白い取り組みをする企業が地域に増えていけば、地元での就職という選択肢が広がります。

また、地域企業はいろんな団体に所属していることも多く、仲は良いことも多いのですが、それぞれの課題をオープンにして意見をシェアし合う場はそう多くありません。

困っていることを周りに相談できる機会は少ないけれど、みんな不安や困り事を抱えている。それなら、シェアできる情報はシェアして、使えるものは使っていくことで、皆の経営がアップデートされる方がいいと考えているんです。

だから、協働日本についても「こんな仕組みがあるよ」と、経営者の仲間達の選択肢の1つに加わったら良いなという思いで紹介しています。

ーーなるほど。地域の企業がもっと面白くなれば…というお話でしたが、四十万谷さんは、今後地方の中小企業が生き残っていく為の戦略について、どのようにお考えですか?

四十万谷:そうですね。VUCA(ブーカ)とも言われるような、不透明で先行きが見えず、答えのない時代はまだまだこれからも続くと考えていて…その中で自社を取り巻く課題を、自社の人材だけで解決していくというのはかなり難しいと思っています。

だからこそ、自社では育成できないような外部人材と協働し、足りない部分を補いながら、スピード感を持って課題解決をしていくことこそが重要なんじゃないかと。すごくシンプルなんですが、これに尽きると考えています。

ーーたしかに、人材の育成は時間がかかりますものね。

四十万谷:そもそも、自社で協働プロのようなスキルを持った人材を育成しようとしても、育成経験もなければプロが育つような環境も用意できないなど、時間だけの問題ではない側面もあります。

じゃあ、十分にスキルと経験の備わったプロ人材を雇用しようとなっても、十分な給与を支払えるのか?という課題もあるし、そもそもプロを雇ったとしてもフルタイムでコミットしてもらうのか?その必要があるのか?など、中小企業にとってはとても難しいテーマです。

だからこそ、常に人材を抱えておかなくても、熱意を持った外部人材を登用し、「社外CMO」のような立ち位置で迎え、課題によって人選を切り替えながら戦略的に人材を活用していくというのが、これからの中小企業にとっての一つの戦い方になるんじゃないでしょうか。

ーー四十万谷さんにとって協働日本とはどういう存在でしょうか?

四十万谷:あらためて、企業経営にはこれさえやればよくなるという特効薬はないんですよね。悩みの尽きない経営者にとって協働日本は、一緒に悩んで、一緒に歩んでくれる心強い仲間です。

もちろん、協働の中で初めて気づくことも多く、やってみたいこともたくさんある中で、リソースが足りず思った通りにいかないことは多々あるんです。

それでもテーマを変えながらも一緒に伴走を続けて行けているのは、そういった想いを共有できてるからというのがあるのかもしれませんね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

四十万谷:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


四十万谷 正和 / Masakazu Shijimaya

2002年、金沢大学附属高等学校卒業後、慶應義塾大学経済学部に進学。少林寺拳法にも打ち込む。

2006年、『ハウス食品株式会社』入社。採用・労務・人事制度など、一貫して人事関連に携わる。2017年、『株式会社四十萬谷本舗』入社。2019年、専務取締役に就任。

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イベントレポート:地域企業のマーケティング戦略と複業人材活用

最近では協働日本へ、「複業」や「地域企業との協働」といったテーマで、多くの企業や自治体の皆さまからイベント登壇のお声がけをいただくことが増えてきました。
現在100名を超える体制で、全国の地域企業を「伴走型支援」している協働日本だからこそ、地域企業経営者の悩みに寄り添い、将来像を共に描いた事例も数多く誕生しております。登壇の際は、それらの事例に加えて、我々の想いや、目指す「協働の姿」をお伝えしています。

今回、株式会社協働日本 代表取締役社長の村松知幸氏、同社CMO若山幹晴氏が登壇した、ウェビナーイベント「教えて!複業人材活用のイロハ~地域企業を輝かせるマーケティングとは~」(開催日:2021.11.17)での講演から、地域企業をご支援する中で多くの企業が悩みを抱えるマーケティングに関するヒントや、複業人材の活用アイディア、協業の形としての「伴走型支援」のメリットについてご紹介します。

登壇イベントについて

今回お招きいただいたイベントは、協働日本のご支援先でもある、金沢の発酵食品の老舗、株式会社四十萬谷本舗様が主催するウェビナー「教えて!複業人材活用のイロハ」。
四十萬谷本舗様が、複業人材との取り組み事例やそこから得た学びをシェアすることで「地域企業が、複業人材との協働を通じて新しい価値を生み出していくきっかけを作りたい」という想いのもと、定期開催されています。

マーケティング思考が成長を促進する

これまでも複数の企業、様々な業界でマーケティング支援を行い、結果を出し続けてきたプロのマーケッターである若山氏は、地域の企業こそ一貫したマーケティング思考を習得することでまだまだ成長できる余地があると語った。

地域企業の多くが抱える悩みの一つが「マーケティング戦略」。マーケティングと聞くとよく、広告やキャンペーンなどのプロモーションをイメージされることも多いですが、マーケティングとはもちろんプロモーションだけを指すものではありません。

「マーケティング支援のご相談を頂いた際には、まず、どういうお客様に対して自社の価値提供を行うのか、既存のお客様と、理想とするお客様の人物像(ペルソナ)を明らかにします。購入動機や便益、差別化要素などを検討しながら、WHO(誰に)WHAT(何を)HOW(どうやって)提供していくのかを明らかにし、それを実行していくことが大切です。」(若山氏)

マーケティングと聞くと、いわゆるマーケティング4P(どのような製品を:Product、いくらで:Price、どこで売って:Place、どのように伝えるのか:Promotion)と呼ばれるHOWに目が行きがちですが、HOWを考える前にそもそもの顧客戦略部分をしっかりと作る必要があります。

徹底的に顧客戦略に向き合う

WHO(誰に) WHAT(何を、どのような価値を)をどれだけ解像度高く設定できるかが、この後のステップであるHOW(どうやって)の質に影響を与えます。

例えば、架空のアパレルブランドを例に顧客戦略をイメージしてみましょう。

【顧客戦略A】

  • 30代女性
    • トレンド好き

【顧客戦略B】

  • 30代女性のワーキングママ
    • 仕事と子育ての両立によりとにかく時間がない
      • そのため、ゆっくりお買い物する時間がない
      • また、情報収集する時間がない
    • 他人と会う機会が多いのでファッションに気を使わないといけない
      • 最新のトレンドを把握しておく必要がある
    • 30代となり少し体型が気になってきている
      • なので、スラッとしたモデルの着用例が自分に当てはまらない

いかがでしょうか?

【顧客戦略A】の場合には顧客に何を価値として届けるかが具体化されないため、先程のマーケティング4Pの一つ一つにおいてアイディアがなかなか浮かんできません。

解像度高くWHO(誰に)・WHAT(どのような提供価値を)イメージすることができると、その後のHOW(どうやって)のアイディアに繋がり、重要なポイントを外すというミスが減っていきます。

例えば【顧客戦略B】の場合には、HOW(どうやって)のアイディアが以下のように具体的に出てきやすくなります。

・時間はないけど、ファッションに気を使わないといけないので、オンラインストアでのお買い物体験の質を上げる

・外さないファッショントレンドを簡潔に整理し、分かりやすく情報提供する

・ご自身が着用された感じを自己投影しやすいよう、モデル体型ではない着用例を示す(例)店舗スタッフの着用写真をWEBに掲載する

複業人材との議論を戦略に活かす

「地域企業が輝くためには、徹底的な顧客視点を持つことが重要だと考えています。元来、多くの地域企業は、お客様との距離がとても近いはずです。ということは、顧客理解を徹底的に深めるスキルが身に着けられると成長する余地は十分にあり、そこに勝機があると思います。」(若山氏)

顧客理解を徹底的に深めることができれば、成功確率の高い顧客戦略を策定でき、それは企業内のノウハウとして残り続けます。

だからこそ協働日本のような複業人材との協働を通じて複数の頭脳と、それぞれの視点を活用し、徹底的に「顧客戦略」のステップに取り組むことの意義が大きいのではないでしょうか。

経験豊かな複業人材の、特にマーケティングの視点を借りて「顧客戦略」のステップでは、WHO(誰に) ・WHAT(何を)の設定について徹底的に議論することをオススメします。

ここのノウハウが習得できると、自社の理解(自分たち自身・お客様について)が進むだけでなく、客観的な視点で顧客を再定義できるというメリットがあります。


歴史がある企業ほど、顧客に対しての認識が凝り固まっている場合もあります。ここに複業人材が入るからこそ客観的な視点を持ち、顧客戦略の改革を進めることができると思います。

例えば、私はプロジェクトの中でよく「お客さんはどういう人ですか」という質問をします。そこで、イメージが鮮やかに思い浮かべられるくらい、とても具体的な回答が出てくるのであれば、自社の顧客理解は進んでいると言えます。

もし、言いよどんでしまったり、回答があいまいなのであれば、顧客理解が足りないと判断することができます。そういう場合はもう一度、顧客戦略に立ち返ることが重要になってきます。

戦略から一貫したアクションへ

顧客戦略が固まれば、次はHOW(どのように伝えるのか)というアクションのステップです。ここからは一貫性を保ったまま、アイディアを出し、それを具現化することが重要です。

折角、顧客戦略を考え抜いたとしても、実際にお客様が目にする、手に取るステップであるHOWのステップで、そこまでに考えた顧客戦略との一貫性がないと的外れなものとなってしまいます。

戦略から実行に移っていくステップにおいても、複業人材と一緒に取り組むメリットは大きいと考えています。なぜなら、策定した戦略から見て、いまの取り組みが一貫しているかを外部の客観的な視点でチェックできるというメリットがあるからです。

さらに、アイディアの拡散時にも、自社で同じ取り組みをしてきた方同士では、新しい目線でのアイディアはなかなか出てこない場合もあります。そこへ、新鮮な発想を持った、複業人材が入ることで既存の枠にとらわれないディスカッションができる点もメリットと言えます。

複業人材とのより良い協働のために

以上のことから、地域企業における戦略から実行までの一連のプロセスにおいて、複業人材の活用は有効な手段の一つと言えそうです。その上で、どんな複業人材と協働すればいいのでしょうか。いくつかのポイントを列挙してみます。

マーケティング視点でより良い協働が見込める複業人材のポイント

・業種や業界の垣根を超えた知見を持っている

・顧客理解を徹底的に深めるスキルを持っている

・直感に頼らない論理的な思考力を持っている

・アイディアを形にする実行力を持っている

ぜひ参考にしてみてください。

さらにプロジェクトのような形で、複業人材を交えてチームを編成する場合には、戦略から戦術までの一貫したマーケティング業務経験を持つ人材(マーケティング全般にアサインする)と、特定の領域に特化した人材(適材適所でアサインする)を組み合わせていくことを意識すると、チームとして非常に力が発揮されると思います。

また、地域企業を支援する取り組みには様々な形がありますが、私が地域企業の方におすすめするのは「伴走型」の支援です。協働日本がまさにそうなのですが、 壁打ちやコーチングをしながら、そして時には実践の様子を見せながら支援をしていくという方式です。

伴走型のメリットは、例えば私のようなマーケティング全般の経験がある複業人材や、異業種のスキルを持つ複業人材と、事業について詳しい依頼主企業の人材同士で連携して一つのチームとして活動できることです。これにより一方的なインプットでは得られないような、互いの強みを活かしたアウトプットを生み出せることが期待できます。

また、伴走型で進めるうちに企業側には多くのノウハウがたまります。そのため、将来的には支援者がずっと伴走し続けなくてもよい状態を目指せる、つまり企業自身の力を内側から高めていけるという点も伴走型ならではのメリットです。

伴走型支援の注意点は、取り組みの主体者はあくまで企業側だということです。例えるなら、大きな山に登る時の当事者と案内人の関係性に近いですね。登山の案内人がいても、あくまでも当事者が登っていかないとエベレストの山頂には行けません。案内人はあくまでも、本人が登ることを支援していきます。つまり企業側に当事者意識がないと一緒に進めること自体が難しいという点です。

一方で、必然的に伴走者に高いスキルレベルが求められます。伴走型支援には多くのメリットがあると考えていますが、取り組みがうまく進むかどうかは、伴走者のスキルレベルが大きく左右しますので、支援してもらうパートナー選びは慎重に進めるべきでしょう。

複業人材との取り組みで本質的な課題に向き合えた

今回のイベントの中では、イベント主催者の四十萬谷本舗の四十万谷正和氏に、複業人材との実際の取り組み事例を共有いただきました。私たち協働日本も、マーケティングやブランディングの戦略策定から販売促進支援、人材活用アイディアまで、多岐にわたるテーマで四十萬谷本舗様とプロジェクトに取り組んでいます。

「私たちは四十萬谷本舗の6代目夫婦ですが、家業に入る前には企業の中で人事をやっていました。それだけに、家業に入ったあとも、企業として取り組んできた今までの延長線上に発想が留まってしまうことに課題を感じていました。」(四十万谷氏)

 四十万谷氏は一貫したマーケティング経験を持つ若山氏とともに、適材適所で領域に特化したサポーターの方に入ってもらうという形でプロジェクトを組んでいます。そこから、お客様の変化や、従来の販売チャネルの見直しを進めています。

複業人材とのディスカッションや、共同で実施したアンケート調査を通じて、次世代の若いお客様がどんな人か、どんな価値観を持っているかについて、詳細に向き合うペルソナを言語化しています。

更に、いま注力している新しいお客様の獲得に向けた、発酵食品の販売(物販)、食べてもらう(飲食)、漬け込み体験(体験)という3つの顧客接点の見直しには、協業パートナーの視点やアイディアも多く盛り込まれました。

「若山さんはじめ、協働日本の皆さんと一緒に取り組んでいると、やった後、やる前に必ずお客様の声を聞くことを徹底して行おうという働きかけがあります。リソースに限りがある中小企業にとっては特に、お客様の声を聞くことは必須ですね。」(四十万谷氏)

新製品を出す、ライブコマースなどの新しい取り組みをする場合などには常に、「お客さんは本当にその商品を本当に求めているのか」ということをプロジェクトメンバーに問われることで、「お客さんの声を実際に聞く」ことが徹底できています。

結果として、「ただ施策を実行するだけ」ではない、次につながる取り組みができていると感じています。

新しい協業の形がいま、地域に求められている

イベントの中では、地域企業のマーケティング戦略や複業人材活用について多くの質問が寄せられました。協働日本代表の村松氏も、戦略策定からの伴走支援にこだわる理由を語りました。

本質的な課題に向けて一緒に考える時には、施策から考えるのではなく、必ず戦略に立ち返り、WHO(誰に)・WHAT(何を)を考え、その上で施策を検討します。このように進めていくと、全てにおいて「なぜならば」が説明できるようになっていきます。

四十万谷さんが取り組んでこられた、シェアキッチンやライブコマースといった新しい取り組みも、単なるアイディアの面白さ以上に、四十万谷さん自身が戦略から語れていることが素晴らしいことだと語りました。


「これこそが、すべての中小企業・地域企業の勝ち筋だと考えます。伴走型で一緒に考え抜いて、経営者が戦略から実行までを、自分の言葉で、全て語れることがとても重要です。」(村松氏)

さいごに

いかがでしたでしょうか?イベントで交わされた登壇者の話から、地域企業のマーケティング戦略のヒントと、複業人材活用のアイディアをお伝えしてきました。イベントを主催された四十万谷氏は、徹底的に顧客に向き合ったマーケティング戦略を固めたことで、事業に変化が生まれてきていると語りました。

「地域、場所を超えて想いと実力のあるメンバーと協働することで、実力を鍛えることができると感じています。大きな可能性を生み出すことができる【協働】が地域に広がることを願っています。」(四十万谷氏)

この度は、協働日本へ登壇のお声がけありがとうございました。

地域企業のマーケティング戦略策定には外部の視点、高いスキルを持った複業人材との協働は有効な手段ですが、支援者には高いスキルレベルと本気の熱量が求められます。その見極めの難しさが複業人材との協働の一歩を踏み出せない理由とのお話もお聞きます。

私たち協働日本では100名を超える体制で、個々の高いスキルだけでなく、熱い想いに溢れた人材との協働機会をご提供させていただきます。ぜひ、はじめの一歩を共に踏み出しませんか?

新しい挑戦に取り組みたい地域企業の皆様からのご連絡を是非、お待ちしております。

若山氏も参画する、協働日本事業については こちら

お問い合わせはページ下部よりお寄せください。

レポート取材・文:郡司弘明・黄瀬真理

NEWS:協働日本でご支援先のヤマト醤油味噌さまから新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズ発売

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」が発売開始

金沢で発酵食メーカーとして味噌・醤油・甘酒・魚醤などの製造を手がける㈱ヤマト醤油味噌さまより、毎日の食を通して腸内環境を整える、昔ながらの知恵がつまった食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズが、2021年8月3日(火)より販売されます。

「まごはやさしいこ」公式ホームページ

㈱ヤマト醤油味噌さまと㈱株式会社協働日本は、事業開発・マーケティング・食プロデュースの分野で協働のお取り組みを進めてまいりました。今後も、「まごはやさしいこ」食材シリーズにおいて、都市で働く親の気持ちをとらえた、顧客視点の商品開発を目指します。

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける食材ブランド「まごはやさしいこ」8月3日(火)より販売開始!|株式会社ヤマト醤油味噌のプレスリリース

「まごはやさしいこ」は、㈱ヤマト醤油味噌さまが長年培ってきた発酵食の知見を活かして開発された、家庭で調理しやすい食材シリーズです。シリーズ名の由来は、おすすめしたい食材8種の頭文字となっています。忙しい毎日でもお子様に健康に良いものを食べさせてあげたい方に特におすすめです。

協働日本の協働プロと取り組みについて、㈱ヤマト醤油味噌さまのニュースリリースの中で取り上げていただきました。協働日本はこれからも「協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する」をミッションとし、このように想い溢れる地域企業の皆様をご支援してまいります。こういった協働取り組みにご興味をお持ちになった地域企業の皆様はぜひ、弊社までお問い合わせください。

また、本プロジェクトでも協働させていただいております協働プロのインタビュー記事「VOICE」も以下からご覧いただけます。あわせてご覧ください。

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

NEWS:ISICO(vol.117 2021年7月発行)にて四十萬谷本舗さまとの協働取り組みを紹介いただきました

ISICO(vol.117 2021年7月発行)に四十萬谷本舗さまとの取り組みが掲載されました

石川県産業創出支援機構(ISICO)さんの情報誌『ISICO』にて、㈱四十萬谷本舗さまと㈱協働日本が取り組んできた複業人材との協働プロジェクトをご紹介いただきました。

紙面内の「CHALLENGE for NEW NORMAL」コーナー内で、都市の副業人材を活用した、新規事業やプロジ ェ クトを進める石川県内企業の先進的な取組事例としてご紹介いただいております。

協働日本の協働プロと取り組んでいる新商品の開発や販路開拓についても詳しく取り上げていただいております。
詳細は、情報誌ISICO vol.117(2021年7月発行)をご覧ください!

また、本プロジェクトでも協働させていただいております協働プロのインタビュー記事「VOICE」も以下からご覧いただけます。あわせてご覧ください。
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

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NEWS:JOINX NEWS 2021年7月号にて協働日本との取り組みを紹介いただきました

2021年7月号のJOINXNEWSにて、協働日本の取り組みを掲載して頂きました!

地方創生事業に取り組む㈱JOINXが発行するフリーペーパー、JOINX NEWSにて協働日本との協働取り組みをご紹介いただきました。

現在、奄美大島の伝統的な大島紬を後世に伝えていくプロジェクトへ共に取り組んでおり、その活動を掲載いただきました。協業パートナーの、紬レザーかすりの川畑さん、はじめ商事の元さんとともに、協働日本についてもご紹介いただいております。

本プロジェクトに参画している協働プロのメンバーも取り上げていただいております。
首都圏で活躍するプロフェッショナル人材の地域への熱い想いを、大きく取り上げていただきました。

ぜひご一読ください!

JOINX NEWSの2021年4月号でも協働日本の取組みをご紹介いただいております。あわせてご覧ください。

記事中で掲載されている協働プロが、地域への想いを語ったインタビュー記事「VOICE」は以下からご覧いただけます。
VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

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