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イベントレポート:地域企業のマーケティング戦略と複業人材活用

最近では協働日本へ、「複業」や「地域企業との協働」といったテーマで、多くの企業や自治体の皆さまからイベント登壇のお声がけをいただくことが増えてきました。
現在100名を超える体制で、全国の地域企業を「伴走型支援」している協働日本だからこそ、地域企業経営者の悩みに寄り添い、将来像を共に描いた事例も数多く誕生しております。登壇の際は、それらの事例に加えて、我々の想いや、目指す「協働の姿」をお伝えしています。

今回、株式会社協働日本 代表取締役社長の村松知幸氏、同社CMO若山幹晴氏が登壇した、ウェビナーイベント「教えて!複業人材活用のイロハ~地域企業を輝かせるマーケティングとは~」(開催日:2021.11.17)での講演から、地域企業をご支援する中で多くの企業が悩みを抱えるマーケティングに関するヒントや、複業人材の活用アイディア、協業の形としての「伴走型支援」のメリットについてご紹介します。

登壇イベントについて

今回お招きいただいたイベントは、協働日本のご支援先でもある、金沢の発酵食品の老舗、株式会社四十萬谷本舗様が主催するウェビナー「教えて!複業人材活用のイロハ」。
四十萬谷本舗様が、複業人材との取り組み事例やそこから得た学びをシェアすることで「地域企業が、複業人材との協働を通じて新しい価値を生み出していくきっかけを作りたい」という想いのもと、定期開催されています。

マーケティング思考が成長を促進する

これまでも複数の企業、様々な業界でマーケティング支援を行い、結果を出し続けてきたプロのマーケッターである若山氏は、地域の企業こそ一貫したマーケティング思考を習得することでまだまだ成長できる余地があると語った。

地域企業の多くが抱える悩みの一つが「マーケティング戦略」。マーケティングと聞くとよく、広告やキャンペーンなどのプロモーションをイメージされることも多いですが、マーケティングとはもちろんプロモーションだけを指すものではありません。

「マーケティング支援のご相談を頂いた際には、まず、どういうお客様に対して自社の価値提供を行うのか、既存のお客様と、理想とするお客様の人物像(ペルソナ)を明らかにします。購入動機や便益、差別化要素などを検討しながら、WHO(誰に)WHAT(何を)HOW(どうやって)提供していくのかを明らかにし、それを実行していくことが大切です。」(若山氏)

マーケティングと聞くと、いわゆるマーケティング4P(どのような製品を:Product、いくらで:Price、どこで売って:Place、どのように伝えるのか:Promotion)と呼ばれるHOWに目が行きがちですが、HOWを考える前にそもそもの顧客戦略部分をしっかりと作る必要があります。

徹底的に顧客戦略に向き合う

WHO(誰に) WHAT(何を、どのような価値を)をどれだけ解像度高く設定できるかが、この後のステップであるHOW(どうやって)の質に影響を与えます。

例えば、架空のアパレルブランドを例に顧客戦略をイメージしてみましょう。

【顧客戦略A】

  • 30代女性
    • トレンド好き

【顧客戦略B】

  • 30代女性のワーキングママ
    • 仕事と子育ての両立によりとにかく時間がない
      • そのため、ゆっくりお買い物する時間がない
      • また、情報収集する時間がない
    • 他人と会う機会が多いのでファッションに気を使わないといけない
      • 最新のトレンドを把握しておく必要がある
    • 30代となり少し体型が気になってきている
      • なので、スラッとしたモデルの着用例が自分に当てはまらない

いかがでしょうか?

【顧客戦略A】の場合には顧客に何を価値として届けるかが具体化されないため、先程のマーケティング4Pの一つ一つにおいてアイディアがなかなか浮かんできません。

解像度高くWHO(誰に)・WHAT(どのような提供価値を)イメージすることができると、その後のHOW(どうやって)のアイディアに繋がり、重要なポイントを外すというミスが減っていきます。

例えば【顧客戦略B】の場合には、HOW(どうやって)のアイディアが以下のように具体的に出てきやすくなります。

・時間はないけど、ファッションに気を使わないといけないので、オンラインストアでのお買い物体験の質を上げる

・外さないファッショントレンドを簡潔に整理し、分かりやすく情報提供する

・ご自身が着用された感じを自己投影しやすいよう、モデル体型ではない着用例を示す(例)店舗スタッフの着用写真をWEBに掲載する

複業人材との議論を戦略に活かす

「地域企業が輝くためには、徹底的な顧客視点を持つことが重要だと考えています。元来、多くの地域企業は、お客様との距離がとても近いはずです。ということは、顧客理解を徹底的に深めるスキルが身に着けられると成長する余地は十分にあり、そこに勝機があると思います。」(若山氏)

顧客理解を徹底的に深めることができれば、成功確率の高い顧客戦略を策定でき、それは企業内のノウハウとして残り続けます。

だからこそ協働日本のような複業人材との協働を通じて複数の頭脳と、それぞれの視点を活用し、徹底的に「顧客戦略」のステップに取り組むことの意義が大きいのではないでしょうか。

経験豊かな複業人材の、特にマーケティングの視点を借りて「顧客戦略」のステップでは、WHO(誰に) ・WHAT(何を)の設定について徹底的に議論することをオススメします。

ここのノウハウが習得できると、自社の理解(自分たち自身・お客様について)が進むだけでなく、客観的な視点で顧客を再定義できるというメリットがあります。


歴史がある企業ほど、顧客に対しての認識が凝り固まっている場合もあります。ここに複業人材が入るからこそ客観的な視点を持ち、顧客戦略の改革を進めることができると思います。

例えば、私はプロジェクトの中でよく「お客さんはどういう人ですか」という質問をします。そこで、イメージが鮮やかに思い浮かべられるくらい、とても具体的な回答が出てくるのであれば、自社の顧客理解は進んでいると言えます。

もし、言いよどんでしまったり、回答があいまいなのであれば、顧客理解が足りないと判断することができます。そういう場合はもう一度、顧客戦略に立ち返ることが重要になってきます。

戦略から一貫したアクションへ

顧客戦略が固まれば、次はHOW(どのように伝えるのか)というアクションのステップです。ここからは一貫性を保ったまま、アイディアを出し、それを具現化することが重要です。

折角、顧客戦略を考え抜いたとしても、実際にお客様が目にする、手に取るステップであるHOWのステップで、そこまでに考えた顧客戦略との一貫性がないと的外れなものとなってしまいます。

戦略から実行に移っていくステップにおいても、複業人材と一緒に取り組むメリットは大きいと考えています。なぜなら、策定した戦略から見て、いまの取り組みが一貫しているかを外部の客観的な視点でチェックできるというメリットがあるからです。

さらに、アイディアの拡散時にも、自社で同じ取り組みをしてきた方同士では、新しい目線でのアイディアはなかなか出てこない場合もあります。そこへ、新鮮な発想を持った、複業人材が入ることで既存の枠にとらわれないディスカッションができる点もメリットと言えます。

複業人材とのより良い協働のために

以上のことから、地域企業における戦略から実行までの一連のプロセスにおいて、複業人材の活用は有効な手段の一つと言えそうです。その上で、どんな複業人材と協働すればいいのでしょうか。いくつかのポイントを列挙してみます。

マーケティング視点でより良い協働が見込める複業人材のポイント

・業種や業界の垣根を超えた知見を持っている

・顧客理解を徹底的に深めるスキルを持っている

・直感に頼らない論理的な思考力を持っている

・アイディアを形にする実行力を持っている

ぜひ参考にしてみてください。

さらにプロジェクトのような形で、複業人材を交えてチームを編成する場合には、戦略から戦術までの一貫したマーケティング業務経験を持つ人材(マーケティング全般にアサインする)と、特定の領域に特化した人材(適材適所でアサインする)を組み合わせていくことを意識すると、チームとして非常に力が発揮されると思います。

また、地域企業を支援する取り組みには様々な形がありますが、私が地域企業の方におすすめするのは「伴走型」の支援です。協働日本がまさにそうなのですが、 壁打ちやコーチングをしながら、そして時には実践の様子を見せながら支援をしていくという方式です。

伴走型のメリットは、例えば私のようなマーケティング全般の経験がある複業人材や、異業種のスキルを持つ複業人材と、事業について詳しい依頼主企業の人材同士で連携して一つのチームとして活動できることです。これにより一方的なインプットでは得られないような、互いの強みを活かしたアウトプットを生み出せることが期待できます。

また、伴走型で進めるうちに企業側には多くのノウハウがたまります。そのため、将来的には支援者がずっと伴走し続けなくてもよい状態を目指せる、つまり企業自身の力を内側から高めていけるという点も伴走型ならではのメリットです。

伴走型支援の注意点は、取り組みの主体者はあくまで企業側だということです。例えるなら、大きな山に登る時の当事者と案内人の関係性に近いですね。登山の案内人がいても、あくまでも当事者が登っていかないとエベレストの山頂には行けません。案内人はあくまでも、本人が登ることを支援していきます。つまり企業側に当事者意識がないと一緒に進めること自体が難しいという点です。

一方で、必然的に伴走者に高いスキルレベルが求められます。伴走型支援には多くのメリットがあると考えていますが、取り組みがうまく進むかどうかは、伴走者のスキルレベルが大きく左右しますので、支援してもらうパートナー選びは慎重に進めるべきでしょう。

複業人材との取り組みで本質的な課題に向き合えた

今回のイベントの中では、イベント主催者の四十萬谷本舗の四十万谷正和氏に、複業人材との実際の取り組み事例を共有いただきました。私たち協働日本も、マーケティングやブランディングの戦略策定から販売促進支援、人材活用アイディアまで、多岐にわたるテーマで四十萬谷本舗様とプロジェクトに取り組んでいます。

「私たちは四十萬谷本舗の6代目夫婦ですが、家業に入る前には企業の中で人事をやっていました。それだけに、家業に入ったあとも、企業として取り組んできた今までの延長線上に発想が留まってしまうことに課題を感じていました。」(四十万谷氏)

 四十万谷氏は一貫したマーケティング経験を持つ若山氏とともに、適材適所で領域に特化したサポーターの方に入ってもらうという形でプロジェクトを組んでいます。そこから、お客様の変化や、従来の販売チャネルの見直しを進めています。

複業人材とのディスカッションや、共同で実施したアンケート調査を通じて、次世代の若いお客様がどんな人か、どんな価値観を持っているかについて、詳細に向き合うペルソナを言語化しています。

更に、いま注力している新しいお客様の獲得に向けた、発酵食品の販売(物販)、食べてもらう(飲食)、漬け込み体験(体験)という3つの顧客接点の見直しには、協業パートナーの視点やアイディアも多く盛り込まれました。

「若山さんはじめ、協働日本の皆さんと一緒に取り組んでいると、やった後、やる前に必ずお客様の声を聞くことを徹底して行おうという働きかけがあります。リソースに限りがある中小企業にとっては特に、お客様の声を聞くことは必須ですね。」(四十万谷氏)

新製品を出す、ライブコマースなどの新しい取り組みをする場合などには常に、「お客さんは本当にその商品を本当に求めているのか」ということをプロジェクトメンバーに問われることで、「お客さんの声を実際に聞く」ことが徹底できています。

結果として、「ただ施策を実行するだけ」ではない、次につながる取り組みができていると感じています。

新しい協業の形がいま、地域に求められている

イベントの中では、地域企業のマーケティング戦略や複業人材活用について多くの質問が寄せられました。協働日本代表の村松氏も、戦略策定からの伴走支援にこだわる理由を語りました。

本質的な課題に向けて一緒に考える時には、施策から考えるのではなく、必ず戦略に立ち返り、WHO(誰に)・WHAT(何を)を考え、その上で施策を検討します。このように進めていくと、全てにおいて「なぜならば」が説明できるようになっていきます。

四十万谷さんが取り組んでこられた、シェアキッチンやライブコマースといった新しい取り組みも、単なるアイディアの面白さ以上に、四十万谷さん自身が戦略から語れていることが素晴らしいことだと語りました。


「これこそが、すべての中小企業・地域企業の勝ち筋だと考えます。伴走型で一緒に考え抜いて、経営者が戦略から実行までを、自分の言葉で、全て語れることがとても重要です。」(村松氏)

さいごに

いかがでしたでしょうか?イベントで交わされた登壇者の話から、地域企業のマーケティング戦略のヒントと、複業人材活用のアイディアをお伝えしてきました。イベントを主催された四十万谷氏は、徹底的に顧客に向き合ったマーケティング戦略を固めたことで、事業に変化が生まれてきていると語りました。

「地域、場所を超えて想いと実力のあるメンバーと協働することで、実力を鍛えることができると感じています。大きな可能性を生み出すことができる【協働】が地域に広がることを願っています。」(四十万谷氏)

この度は、協働日本へ登壇のお声がけありがとうございました。

地域企業のマーケティング戦略策定には外部の視点、高いスキルを持った複業人材との協働は有効な手段ですが、支援者には高いスキルレベルと本気の熱量が求められます。その見極めの難しさが複業人材との協働の一歩を踏み出せない理由とのお話もお聞きます。

私たち協働日本では100名を超える体制で、個々の高いスキルだけでなく、熱い想いに溢れた人材との協働機会をご提供させていただきます。ぜひ、はじめの一歩を共に踏み出しませんか?

新しい挑戦に取り組みたい地域企業の皆様からのご連絡を是非、お待ちしております。

若山氏も参画する、協働日本事業については こちら

お問い合わせはページ下部よりお寄せください。

レポート取材・文:郡司弘明・黄瀬真理

STORY:ヤマト醤油味噌 山本耕平氏―お互いに本気で向き合ったことで生まれた変化―

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する「STORY」企画がスタート。
「STORY」は、プロジェクトに取り組むパートナー企業の方と、プロジェクトに参画する協働プロをそれぞれお招きし、協働日本がどのようにプロジェクトを推進しているのか、対談形式のインタビューで聞いていきます。

今回は(株)ヤマト醤油味噌の山本耕平氏と、同プロジェクトに参画している協働プロの宮田美沙紀氏にお越しいただきました。

両社は現在、新ブランド「まごはやさしいこ」食材シリーズの商品開発で協働しており、事業開発・マーケティング・食プロデュースの各協働プロからなるプロジェクトチームを結成しています。協働プロの宮田氏は、食プロデュースのプロとして同チームに参画しています。

お二人それぞれから、協働プロジェクトに取り組んだ感想や、今後の想いを語って頂きました。また、これまでも複業人材との様々な取り組みを実現してきた山本氏の視点から、協働プロの強さについてもお話しいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

Web会議サービス(Zoom)を用いて山本氏、宮田氏へインタビューを行いました。(郡司弘明)

本気で語り合えるようなパートナーを探していた

ーーお二人とも本日はよろしくお願いします。先日は新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」の販売開始おめでとうございます。毎日の食を通して腸内環境を整える、昔ながらの知恵がつまった食材ブランドとお聞きしています。反響が楽しみですね。

宮田美沙紀氏(以下、宮田):今日はよろしくお願いします。

山本耕平氏(以下、山本):よろしくお願いします。「まごはやさしいこ」のご紹介もありがとうございます。おかげさまで2021年8月に販売を開始することができました。

新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」

ーーまずは山本さんにご質問です。協働日本と取り組むきっかけについてお聞きしてもよろしいでしょうか?

山本:はじめは地元金沢の企業からの紹介でした。その企業とは合同で研修事業を進めていたのですが、そこで協働プロの方々をご紹介いただきました。研修事業の中では、協働プロの方がファシリテーターとしてリードしてくださっていたのですが、本当に優秀な方々だなと思い、いつか仕事もご一緒できたらいいなと思っていました。

折しも、新型コロナウィルス感染が世界中で広がり、当店もやむなく休業する時期を経験しています。それでもヤマト醤油味噌が実現したいのは、発酵食で健康のお役に立つという世界です。今だからこそ、これまで温めてきた事業のアイデアを形にするときだと思ったんです。

そのときに本気で語り合えるようなパートナーが居ればと思いました。事業構築やマーケティングの第一線で活躍する協働プロの方々ならと大いに期待して、代表の村松さんに相談させていただいたんです。

ーーなるほど。ヤマト醤油味噌さんはこれまで、このような外部人材との協働、共創の事例はあったのでしょうか?

山本:はい、過去にも色々な取り組みを進めてきました。自社のプロジェクトに外部の方が入っていただくこと自体、以前からとても興味がありました。

数年前には学生インターンを半年間ほど受け入れたこともあります。インターン中には、お味噌汁や糀を使ったスープなど、自由な発想で新商品の開発にチャレンジしてもらいました。CEOをもじった「汁EO」を任命したりしながら、とても充実した取り組みになりましたね。

その他にも、10年近く前に金沢美術工芸大学の学生さんたちと商品のパッケージデザインを考えるワークショップも開催したことがあり、学生さんにとっても我々にとっても学びになりました。

そういった外部から刺激をいただくと、新しい視点や気づきを得られる実感は持っていたので、今回のような協働日本を通じた都市人材との協働自体、抵抗はありませんでしたね。

ーー面白い取り組みですね!それだけに、協働プロへの期待も大きかったと思いますが、実際に協働日本とのプロジェクトがスタートしてみていかがでしたか。

山本:まさに期待通りでした。みなさん他の企業にも勤めている複業人材ながら、限られた時間の中で成果にコミットしていただきました。

パラレルにいくつものプロジェクトに関わりながら、それぞれにしっかりと成果を出す働き方は、誰もが出来る働き方ではないですよね。その点でも協働プロの皆さんを信頼しています。

料理をするひとの意識や目線を大切にしたい

ーー宮田さんにもお話を伺います。今回、ヤマト醤油味噌さんとのプロジェクトに参画する中で、どのようなスキルや強みを発揮していますか?

宮田:よろしくお願いします。これまでのキャリアをお話すると、大学卒業と共に管理栄養士の資格を取得して、まず食品メーカーに勤務しました。その後、飲食店をプロデュースする仕事を経て、現在ではフードスタイリストとして活動しています。

商品、特に料理や食材をどのように魅せるのかについて一貫してスキルを磨いてきました。これまでの経験も含めて、その強みをプロジェクトの中では活かせているのかなと思います。

ーー山本さんから見て、宮田さんとお仕事をされて印象的だったことなどはありますか?

山本:宮田さんには、商品ブランドのコンセプトが固まったタイミングでプロジェクトに加わっていただいたのですが、商品開発に関わる提案だけでなく、商品の使い方提案や、女性の視点からの伝え方など、幅広く提案をいただいて大変助かりました。

宮田:料理をするひとの意識や目線から、ご提案をさせていただきました。自分自身、毎日料理をしますし、色々な食材に触れているので、そういった視点から議論を活性化させたいと思っていました。

料理を毎日する方がイメージするのは、単品でどうこうというよりも、まずは「献立」のイメージ。開発中の新商品を、どうやって食卓に登場する献立に落とし込んでいくのかを考えました。

山本:宮田さんは、商品コンセプトという抽象度が高い議論が多い中で、まずは手を動かして、「一週間の献立」という形で提案してくださった。それによって、メンバー間でお客様の製品活用イメージがぐっと言語化できた。いい仕事だったなと、今でも覚えています。

宮田:ありがとうございます!

ーー宮田さんにも質問です。山本さんと協働させていただきいかがでしたか?印象に残っていることをお聞かせください。

宮田:私自身も多くのことを学ばせていただき、プロジェクトをご一緒できて本当に良かったなと思います。

印象的なことですと、ご一緒させていただく中で、山本さんはとても自社愛が強い方だと思いました。商品だけではなく、お客様や従業員の方を本当によく観察されていて、お客様のニーズをしっかりと捉えていらっしゃると感じました。ヤマト糀部のような、お客様との協働的なお取り組みもお聞きし、我々も本当に素敵な企業をご支援させていただいているなと感じました。

なぜそれをヤマト醤油味噌がやるのか、とことん向き合い続けた

ーー今度は山本さんに質問です。新食材ブランド「まごはやさしいこ」の商品開発にあたって、このように協働日本が関わらせていただいたことで生まれた変化や、気付きがあれば教えてください。

山本:一番はじめの打ち合わせが始まるときに、何をやりたいかは明確で、商品ラインナップのアイデアもあったくらいです。具体的に「何」から発売して、「どうやって」販売するか?という WhatやHowからディスカッションを始めると思っていました。しかし、協働プロの方から「なぜそれをヤマト醤油味噌がやるのか」というWhyを問われたんです。

外部の方から見たときに、そのWhyが明確に言語化されていないことに気が付きました。

そこから協働プロの皆さんと徹底的に議論し、Whyを深堀りしました。Whyが言語化できてからも、インタビューやアンケート調査を行いながら、お客様のためにお役に立てるコンセプトを徹底的に磨き上げました。まさに伴走支援で、結果的に何か月にもわたる議論でしたが、途中で止まるわけにはいかないと走り切れました(笑)

「まごはやさしいこ」は、主菜となるおかずのシリーズであれば、下ごしらえ済みで、しかも糀で下味がついているので、ご家族のどなたも美味しく召し上がれます。腸内環境を整えるためにヤマト醤油味噌がオススメする「一汁一菜に一糀」のライフスタイルを手間なく実現できるのです。

ヤマト醤油味噌の食材ブランド「まごはやさしいこ」についてはこちら

ーー徹底的にその事業の根っこを掘り下げていったということですね。

山本:そうですね。どんなお客様が、どんな理由で商品を手に取っていただけるのか。そして、そのお客様は普段どんな生活をしていて、「まごはやさしいこ」はどんな価値をその方に提供できるのか。とことん掘り下げて考えていきました。

単にプロモーションや、販売戦略のアドバイスをいただくだけならもっと話はシンプルだったと思うんです。でも協働日本の協働プロは、我々ヤマト醤油味噌が今後も継続的に、次の事業を作れるように、その考え方や「型」のようなものもインストールしてくださったなと感じています。

正解がすぐ欲しい!という方には合わないかもしれません。しかし、事業を作れる力をしっかり身に着けたい、自分たちだけでも新しい事業の戦略を描けるようになりたい、という経営者の方には、協働日本との協働をぜひお勧めしたいです。

ーーそう言っていただけると協働プロも嬉しいと思います。ありがとうございます。

情熱あるビジネスパーソンの活躍の場はどんどん広がっていく

ーーそれでは最後に、お二人へ質問です。これから協働日本、そして協働日本のような地域との協働の取り組みはどうなっていくと思いますか?

宮田:きっとこれからもこういった出会いや繋がりは全国で広がっていくと思います。企業で勤めているにこそ、もっとこういった協働プロジェクトに加わって欲しいと思います。

これは私も感じていることでもあるのですが、ずっと会社の中にいてはなかなか得られないような新鮮な体験が出来ますし、一緒に取り組むメンバーからも様々な学びや気づきも得られています。お取り組みさせていただいているヤマト醤油味噌さんからもいつも学ばせていただいています。やりがいと成長を日々、得られる環境だと感じています。

自身の経験やスキルを活かして、地域に貢献したい気持ちがある方には是非、こういった取り組みへの参加を勧めていきたいですね。

山本:これからもどんどん、パラレルに仕事をする「複業」といった働き方は広がっていくと思います。一方で厳しい言い方をすると、これは誰もが出来る働き方じゃないとも感じています。

時には打ち合わせが、朝早くや夜に行われることもありますし、限られた時間の中で結果にコミットするような働き方が求められます。つまりは、プロ意識が一人ひとりに必要ですよね。一緒に取り組んでいる協働プロの皆さんを信頼しているのは、彼らのその熱意や情熱の部分も大きいです。

だからこそ、そういった情熱を持っているビジネスパーソンに対しては、採用・雇用する企業側も制度を整えていくような気がしますね。そういった人材はどんな企業でも引っ張りだこでしょうから。そういった人材の幅広い活躍は、企業もPRしたくなるのではないでしょうか。

こういった時代の中で、信頼できるつながりが生まれたことに感謝しています。私ももっといろいろな会社を知りたいと思いました。協働日本との出会いも、友人からの紹介だったように、私もこういった取り組みを周囲にお勧めしていきたいと思います。

ーーメッセージありがとうございます!想いある地域の企業と、情熱を持ったビジネスパーソンとの出会いの場を、協働日本としても生み出していきたいです。インタビューへのご協力ありがとうございました。

宮田:本日は、ありがとうございました!

山本:こちらこそ。ありがとうございました!

山本 耕平 Kohei Yamamoto

(株)ヤマト醤油味噌 営業部 部長

大学卒業後(2008年)、富永貿易株式会社に入社しBtoB営業を担当。

家業である株式会社ヤマト醤油味噌に2009年から入社し、製造部で甘酒の仕込みやドレッシング、だし入り味噌などを製造。2010年より同社営業部に異動し、以来一貫して営業部門で、BtoB営業担当として甘酒や基礎調味料の卸売に取り組む。2016年より同社貿易部で海外BtoB営業を担当し、国内外の展示会や商談を通して販路開拓を行った。2020年より同社BtoC部長としてWEBと直営店舗、ダイレクトマーケティングを担当。

宮田 美沙紀 Misaki Miyata

フードスタイリスト

大学で栄養学を専攻、卒業と同時に管理栄養士国家資格を取得。

オハヨー乳業株式会社に入社し、プリンやゼリー等のデザート部門の商品企画とマーケティング業務を担当。その後、まちづくりに繋がる事業の企画・設計・運営を手がけるUDS株式会社に転職。角川食堂(株式会社KADOKAWAの社員食堂 兼 まちに開いたレストラン)の企画と立ち上げを経験。2021年よりフードスタイリストとして広告やCM、書籍等の撮影用料理の演出に携わるほか、レシピ開発を行う。

宮田美沙紀氏も参画する、協働日本事業については こちら

NEWS:協働日本でご支援先のヤマト醤油味噌さまから新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズ発売

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける新たな食材ブランド「まごはやさしいこ」が発売開始

金沢で発酵食メーカーとして味噌・醤油・甘酒・魚醤などの製造を手がける㈱ヤマト醤油味噌さまより、毎日の食を通して腸内環境を整える、昔ながらの知恵がつまった食材ブランド「まごはやさしいこ」シリーズが、2021年8月3日(火)より販売されます。

「まごはやさしいこ」公式ホームページ

㈱ヤマト醤油味噌さまと㈱株式会社協働日本は、事業開発・マーケティング・食プロデュースの分野で協働のお取り組みを進めてまいりました。今後も、「まごはやさしいこ」食材シリーズにおいて、都市で働く親の気持ちをとらえた、顧客視点の商品開発を目指します。

金沢発・創業110年のヤマト醤油味噌が届ける食材ブランド「まごはやさしいこ」8月3日(火)より販売開始!|株式会社ヤマト醤油味噌のプレスリリース

「まごはやさしいこ」は、㈱ヤマト醤油味噌さまが長年培ってきた発酵食の知見を活かして開発された、家庭で調理しやすい食材シリーズです。シリーズ名の由来は、おすすめしたい食材8種の頭文字となっています。忙しい毎日でもお子様に健康に良いものを食べさせてあげたい方に特におすすめです。

協働日本の協働プロと取り組みについて、㈱ヤマト醤油味噌さまのニュースリリースの中で取り上げていただきました。協働日本はこれからも「協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する」をミッションとし、このように想い溢れる地域企業の皆様をご支援してまいります。こういった協働取り組みにご興味をお持ちになった地域企業の皆様はぜひ、弊社までお問い合わせください。

また、本プロジェクトでも協働させていただいております協働プロのインタビュー記事「VOICE」も以下からご覧いただけます。あわせてご覧ください。

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

NEWS:ISICO(vol.117 2021年7月発行)にて四十萬谷本舗さまとの協働取り組みを紹介いただきました

ISICO(vol.117 2021年7月発行)に四十萬谷本舗さまとの取り組みが掲載されました

石川県産業創出支援機構(ISICO)さんの情報誌『ISICO』にて、㈱四十萬谷本舗さまと㈱協働日本が取り組んできた複業人材との協働プロジェクトをご紹介いただきました。

紙面内の「CHALLENGE for NEW NORMAL」コーナー内で、都市の副業人材を活用した、新規事業やプロジ ェ クトを進める石川県内企業の先進的な取組事例としてご紹介いただいております。

協働日本の協働プロと取り組んでいる新商品の開発や販路開拓についても詳しく取り上げていただいております。
詳細は、情報誌ISICO vol.117(2021年7月発行)をご覧ください!

また、本プロジェクトでも協働させていただいております協働プロのインタビュー記事「VOICE」も以下からご覧いただけます。あわせてご覧ください。
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

NEWS:JOINX NEWS 2021年7月号にて協働日本との取り組みを紹介いただきました

2021年7月号のJOINXNEWSにて、協働日本の取り組みを掲載して頂きました!

地方創生事業に取り組む㈱JOINXが発行するフリーペーパー、JOINX NEWSにて協働日本との協働取り組みをご紹介いただきました。

現在、奄美大島の伝統的な大島紬を後世に伝えていくプロジェクトへ共に取り組んでおり、その活動を掲載いただきました。協業パートナーの、紬レザーかすりの川畑さん、はじめ商事の元さんとともに、協働日本についてもご紹介いただいております。

本プロジェクトに参画している協働プロのメンバーも取り上げていただいております。
首都圏で活躍するプロフェッショナル人材の地域への熱い想いを、大きく取り上げていただきました。

ぜひご一読ください!

JOINX NEWSの2021年4月号でも協働日本の取組みをご紹介いただいております。あわせてご覧ください。

記事中で掲載されている協働プロが、地域への想いを語ったインタビュー記事「VOICE」は以下からご覧いただけます。
VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―
VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本事業の詳細ついては こちら

VOICE:協働日本CMO 若山幹晴氏 ―マーケティングの力で地域の魅力を後世に残す―

協働日本で活躍するプロに事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CMOの若山幹晴氏です。P&Gに入社後、ブランドマネージャーとして活躍。その後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーへ転職し、最年少でマーケティング部長に就任。数々のマーケティング戦略を実行し、人材育成にも取り組んできました。そして、2021年に独立。現在は複数の企業のマーケティングコンサルを務めるほか、株式会社ワカパルを設立。代表取締役として、様々なマーケティング支援に取り組んでいます。

これまでも複数の企業、様々な業界でマーケティング支援を行い、結果を出し続けてきたプロのマーケッターである若山氏が、協働日本事業への参画を通じて実現したいこととはーー?地域に対する熱い想いと共に語りました。

(取材・文=郡司弘明)

地域に眠る「良いもの」をもっと知ってもらえるようにする

ーー本日はよろしくお願いします。若山さんはこれまで、P&Gやファーストリテイリンググループといった企業でマーケッターとして活躍されてきました。現在、協働日本のCMOに就任し、地域企業のマーケティング支援に取り組んでいる背景などをお教えください。

若山幹晴氏(以下、若山):よろしくお願いします。協働日本のCMOとして事業に参画しているのは、人生の中で達成したいこと、Whyの部分で、協働日本の代表の村松さんと共感したからです。ぜひ一緒に、地域と人の活性化に取り組んでいきたいと思いました。

ーー若山さんのマーケティングという強みを地域企業の支援に結びつけていきたいという想いはどこから?

若山:日本中の地域には、誇れるような食べ物や伝統産業など、とても良い物が眠っているのにも関わらず、その魅力がまだまだ伝えきれていないと感じています。地域の魅力をもっと発信していくために、地域の企業と、熱い想いを持った都市人材を繋ぐ協働日本事業にとても意義を感じています。自分自身も学生時代を名古屋で過ごしており、その当時も東京との情報格差を感じていました。繋がるべき人と繋がることで、地域の魅力はもっと知ってもらえるはずだと考えています。

私はこれまでマーケティングをキャリアの軸に活動してきました。自分が持つマーケティングという強みを活かして、多くの企業をサポートさせていただきながら、自分自身もパートナー企業との協働を通じて多くを学ばせていただいています。マーケッターとしてとても刺激的な環境で働かせていただいています。

得られた経験をもとに、さらにマーケッターとしての引き出しを増やしていければ、さらに多くのパートナー企業の事業へ貢献していけると思います。

ーー協働日本が特に注力している、地域の企業や、地域との取り組み自体には以前から興味があったのですか?

若山:私自身、旅行が趣味だったこともあり、日本全国を旅してきました。47都道府県すべて訪問してきたので、日本中に大好きな場所、お気に入りの地域を持っています。そういった意味では、一人の消費者としても以前から、地域にある「良い物」を残していきたいという思いを持ち続けてきました。

出会いや繋がりさえあれば、マーケティングの力で救えるものがあるかもしれない

ーー協働日本に参画したことで、そういった地域との関わりは増えましたか?

若山:はい。協働日本のCMOとして関わらせていただく中で、様々な出会いがありました。たとえば奄美大島のはじめ商事さまや、紬レザーかすりさまとのご縁もその一つです。そこで伺った、有名な大島紬がいま、着物文化の衰退とともに危機的な状況にあるといった話はとても衝撃的でした。私も着物は大好きなので、ひとつの素晴らしい文化が消滅しかかっているという事実に驚きと同時に悔しさも感じました。

ーー悔しさを感じたというのはどんなところに?

若山:こういった、協働日本のような形での出会いがなければ、私達も気が付かないうちに一つの日本の文化が消滅していたかもしれないという事実にです。より一層、地域や地域の事業者さまをマーケティングの力で助けたいという想いが強くなりました。

私は、地域に根付いている文化や産業は絶対に残していくべきだと考えています。残ってさえいれば希望は繋がっていく。でも、消滅してしまうと取り返しがつかなくなってしまいます。土地の文化や産業は、その土地のシンボルや名産品へと繋がっていきますよね。これが無くなってしまうと、たとえば国内旅行の魅力が減ってしまいます。そうなると観光需要も縮小してしまう。ましてや、海外から見たときの「日本」自体の魅力も無くなってしまうと思います。

ーーなるほど。地域の産業や文化を守ることはすなわち、海外から見たときの日本の魅力づくりにも繋がると。

若山:そう思います。私は海外生活が長かったので、日本の良さを再認識する機会が多くありました。それは、都心の利便性だけでなく、地域それぞれの魅力、多様性も含めてです。国内からだけでなく、世界から注目されるような地域の魅力は、まだまだ日本中に眠っていると思います。

ーー企業毎に異なる課題や状況の中で、複数の企業をご支援されているとお聞きしています。感想をお聞かせください。

若山:取り組んでいるパートナー企業とは、伴走型のご支援をさせていただいています。一つのチームを組むようなイメージで、経営者の方の顔を見ながら、一つ一つ意思決定をお手伝いしています。経営者の方とスピード感のあるディスカッションが出来ていることで、手応えも、面白さも感じています。

ーーどんなところに面白さを感じていますか?

若山:消費財やアパレル業界が長かったこともあり、パートナー企業のご支援を通じて、様々な企業や業界の課題を知れることが日々新鮮です。意外にも、共通する部分や考え方は多く、今まで培ってきたマーケティングのノウハウも発揮できていると思います。アウトプットのご支援とともに、パートナー企業からは良質なインプットも頂いています。

マーケティングの伴走型支援を通して、組織も活性化させていく

ーーパートナー企業へのマーケティング支援を行っていく中で、心掛けていることを教えてください。

若山:マーケティングと組織開発・人材育成を同時に行うことですね。答えを一方的に提示するのではなく、一緒になって考えていくことで組織の成長を促すことを意識しています。マーケティングという言葉自体、とても広義なので、事例なども含めて言語化しながらお伝えしています。

これまでの過去の経験から、自分だけが分かっていればいいという環境ではやはり、最終的には成果には結びつきません。部下や、一緒に取り組むチームのメンバー自身が、自分で考えてやれるようにしなくてはいけないということです。どうすれば、マーケティング的思考を全員が持って取り組めるかということには、いつも考えを巡らせています。

ーーパートナー企業のみなさんの変化を感じる瞬間はありますか?

若山:沢山あります。たとえば、こちらが主体的にマーケティング戦略提案をしていたパートナー企業から、「マーケティング戦略を考えてきました。聞いてください」と連絡をいただいたときは嬉しかったですね。思考プロセスやノウハウの定着を実感しました。パートナー企業が自立していくことこそが協働日本のゴールでもありますから、とても嬉しい変化でした。

ーー地域企業に変化を生み出していくことこそが、協働日本のゴールなんですね。そういった取組を企業の従業員の方にはどのように捉えてほしいですか?

若山:パートナー企業の経営者のチャレンジ精神を間近で見てほしいですね。どうしても、老舗や伝統産業の企業ほど、変化への抵抗感はあるかと思いますが、その中で都市型人材との協働を通じて変化を生み出そうとしている、事業そのものをより良くしていきたいという熱い気持ちをもっている経営者の想いにぜひ共感してほしいです。

さらには、傍観者ではなく参加者側に回って、経営者とともに協働に参画してほしいと思っています。そういった、従業員の方に対する変化も生み出していけるように、組織の視点からもご支援させていただいています。

これから先、協働×協働のさざなみが立っていく

ーー最後の質問です。これから協働日本はどうなっていくと思いますか?

若山:こういった地域との協働の形はどんどん発展していくと思います。今までは想いをもった人同士が、地域を超えて繋がれるような座組があまりなかったと思います。そこに、まさに協働日本が一石を投じているところだと思います。

ーーなるほど。こういった座組が増えていけば、地域はもっと活性化していきそうですね。お話ありがとうございました。

若山:そうですね。今後はいろいろな一石が投じられて、協働×協働で面白いさざなみが立ってほしいと思います。そうして、波打つように地域が盛り上がって、面白いつながりが生まれていくことを楽しみにしています。ありがとうございました。

若山 幹晴 Masaharu Wakayama

ポケトーク(株) 取締役兼CMO
(株)ワカパル 代表取締役
(株)協働日本 CMO(Chief Marketing Officer)

大学大学院卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャーとして日本・シンガポールにて従事後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーにて、最年少でマーケティング部長に就任。

専門領域
マーケティング、ブランディング、PR、人材育成

人生のWHY
常に挑戦、周りと切磋琢磨することで日本が元気になるきっかけを作る

若山幹晴氏も参画する、協働日本事業については こちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏です。これまでライオン株式会社で取り組んできた「事業づくり」と「人づくり」の取り組み。それらを、もっと多くの地域企業と取り組みたいと語る藤村氏。

これまでも、ライオンで経営を巻き込みながら新規事業創出プログラム「NOIL」を立ち上げ、多くの社内新規事業、社内起業家を生み出してきた藤村氏が、新しい挑戦としてなぜ協働日本事業に取り組むことを決めたのかーー?これから協働日本を通じて実現したいことにも触れつつ語りました。

(取材・文=郡司弘明)

「事業を創る ヒトを創る」その経験をパートナー企業に対して提供したい

ーー本日はよろしくお願いします。藤村さんはライオンでも新規事業開発に取り組まれています。新しい挑戦としてなぜ、協働日本で地域企業への事業支援に取り組むことを決めたのでしょうか。

藤村昌平氏(以下、藤村):よろしくお願いします。所属しているライオンでも新規事業開発を担当していますが、具体的には「組織づくり・人づくり」に重点をおいて取り組んでいます。頂いた質問の答えとしては、自分自身がそれ自体をより多くのフィールドで行いたいという気持ちからです。さらに組織づくり・人づくりに加えて、「事業づくり」も主体的に行える環境がほしいなと思っていました。

協働日本代表の村松さんから声をかけてもらった時、地域の方々とのパートナーシップのもとで、「事業づくり」そのものに取り組める環境だと思って参画を決めました。協働日本なら、「事業づくり」と、取り組んできた自身の強みである「人づくり」でもっと多くのパートナー企業に貢献できると考えました。

ーー協働日本が特に注力している、地域の企業や、地方との取り組み自体には以前から興味があったのですか?

藤村:元々、仕事に取り組む自身の想いとして、「誰かの心の拠り所を創る」ということ目指しています。それを実現する一つの形として、様々な地域企業と取り組むということは、なるほど面白いと感じました。その場でほぼ即決だったと思います(笑)

もちろん、地域の方々との取り組みについては簡単なものではないと感じていましたので、私の持っているものを総動員して本気で取り組んでいくことを決意しました。

ーーなるほど。事業支援を通じて、日本中で誰かの心の拠り所を創っていきたいと。そういった想いから、これまで協働日本で関わったプロジェクトはいくつありますか?

藤村:5つのプロジェクトに取り組んでいましたが、先日1つのプロジェクトが終了しましたので、現在4つ担当しています。

※取材時2021年5月

ーー企業毎に異なる課題や状況の中で、4つのプロジェクトですか!凄いですね。そんな藤村さんご自身の、強みやスキルはなんですか?それをプロジェクトではどのように活かしていますか?

藤村:いえいえ。協働日本の他のメンバー(協働サポーター)も助けてくれていますので。

新規事業をつくるにあたって、まず挑む人をつくることが必要だ、という意識を強く持って活動してきました。その経験は、所属企業に依存しないポータブルなスキルですので、それをパートナー企業に対して提供しています。

一方で、挙げられる課題は各社まったく異なります。事業領域はもちろん、経営状況やビジネス規模なども。そこに日々、難しさは感じています。でも、だからこそやりがいのある仕事だと言えます。

いま企業に求められる「人づくり」視点

ーー繰り返しお話されている、「人づくり」についてお聞きしたいです。藤村さんのおっしゃっている「人づくり」とはどういうことですか?

藤村:わかりやすく言い表すならば、事業開発における主人公づくりですね。

例えば、目の前にある事業を指して「これ誰のビジネス?」と聞いた時に、みんなの事業です、会社の事業です、のように答える人が多数だと思うのですが、そこで「自分の事業です!」と即答できるような人をつくるということです。事業に対して「自分ゴト」で捉える意識を持ってもらうことを大事にしています。

また、経営と現場の考えが一致していないことも多くあります。双方に色々悩みはあって、経営からすると、方針は示したが、結局誰がこの事業をやるんだ?というケースもあります。現場の方は、経営に決めてほしいという意識も働きます。そのような中で、実際に主体性を持って取り組む主人公をつくりながら、事業をつくっていくことが必要になります。

私たち、協働日本らしいアプローチとしては、「何を世の中に問いたいのか」「お客様にどんな価値を届けたいのか」「この会社でどのように実現したいのか」まで問いかけて、共に深堀りしながら推進しています。

ーーそれをリードするのが先ほど「主人公」と呼んだ方ですか。

藤村:おっしゃるとおりです。だから何より「主人公」の存在が重要になってきます。我々はチームの中に入って取り組みますが、いずれ協働日本が関わらなくなっても推進できる状態にすることが、本当に実現すべきことだと考えています。

ーー協働日本が取り組ませていただいている企業は老舗企業も多いです。そのあたりも関係してきますか?

藤村:老舗の企業は、長い歴史の中で大切にバトンを繋いできた企業と言えます。これまでのビジネスや方法論を大事にするからこそ見失いがちな「自分ゴト」視点を、新規事業を通じて感じて頂く場面も多くなります。我々は短期的に成果を出すことも大事にしながら、会社を支えていく経営者や社員自身が、ひとつひとつの実行や分析を高いレベルで出来るようにしていく、というところを目指しています。

パートナー企業との取り組みの中で、協働プロ、協働サポーターといったメンバーがプロジェクトメンバーとして加わります。それぞれのプロジェクトで協働日本らしい価値を提供できるように人づくりが大切、という視点は我々自身(協働日本)も共通しています。

同時に複数の会社に所属している感覚。だから広い視野も様々な視点も得られる。

ーー協働プロとして参画していく中でご自身の成長や新たに獲得した視点はありますか?

藤村:大きく分けて3つあります。1つ目は視野が以前よりとにかく拡がりました。今勤めている会社(ライオン株式会社)の他に、4つのプロジェクトに関わっていますので、同時に5つの会社に所属している形になります。

ーーそういった感覚なんですね。並行して5つの会社というのは少し頭が混乱しそうです(笑)

藤村:1社にだけ勤めていると、どうしてもその会社の考え方やルールに縛られてしまいがちですが、複数の、しかも業種や業態の違うプロジェクトに関わっていることで、広い視野を持って向き合うことが出来ています。企業の都合ではなく、本当の顧客の課題に向き合うことが出来ている実感があります。

2つ目は、考える物事のレンジが長くなりました。企業勤めをしていると、どうしても短期的に、たとえば半期、四半期といった単位で、目標を追いかけていきます。一方で、協働日本で外部戦力として関わると、より中長期な目線を持つ必要があります。協働日本では「この商品の売上を来月までにいくら伸ばして」といった案件よりも、それよりも「この取り組みを通じてどのように会社を変革させていくのか」といった視点で関わる案件のほうが多いため、考えるレンジはより長くなり、中長期的な考え方をするようになります。

ーー視野はより広く、そしてより長期視点を持てるようになったと。まさに経営視点ですね。

藤村:そうですね。日々、複数の会社で経営に携わらせて頂くのは、貴重な経験だと感じています。

3つ目は、データに立ち返る意識です。長く所属している企業での意思決定では、データに頼らず、経験を基にする場面が多くなります。例えば、野性的なカンが働く、ということもあります。もちろんそれは市場や製品、顧客の姿が頭に思い浮かぶからなのですが、協働日本として係るプロジェクトでは、野生のカンは使えませんので、常にデータに立ち返る必要があります。これは、ファクトベースにビジネスを進めていく上で重要な視点です。

協働日本との取組み自体を楽しんでほしい

ーー顧客企業の従業員の方とお話されることもあると思います。そういった従業員の方に、どのように協働日本の取組みを捉えてほしいですか?

藤村:パートナー企業の従業員のみなさんともお話させて頂く機会も多いです。我々は、忖度せず、まっすぐに事業づくりに向き合いますので、耳の痛いことをお伝えすることもあります。

ーー本音でぶつかっていくのが協働日本流ですか?

藤村:これまでのプロジェクトでも本気で本音でぶつかり合うことが出来ています。仕事の中で、経営者も現場も関係なく本音でぶつかり合う厳しさと面白さを一緒に感じていきたいと思っています。協働日本との取組み自体を楽しんでもらえるのが一番です。

私たちは地域の企業の方々と、「あなたとわたし」「中の人と外の人」といった二項対立の形では関わらないように意識しています。ひとつの「チーム」となるよう、プロジェクトの中では常に我々(We)という主語で考えています。 新規事業として成果を出していくためには、本来向き合わなければならない「顧客の課題」に、我々は一つのチームになって臨まなければいけない。チームの中の遠慮は不要です。共に悩んで、共に壁にぶつかっていくための協働パートナーとして関わるからこそ、結果に繋がっていくと信じています。

協働日本のような取り組みは今後、日本中に広がっていく

ーー最後の質問です。これから協働日本はどうなっていくと思いますか?

藤村:多くの人が協働プロや協働サポーターのような形で、ポータブルなスキルを持ち寄って共通の課題に向き合っていく、というような働き方は今後日本中で増えていくと思います。

人と人との繋がりをベースにして、地域を良くしたい、社会を良くしたいという人は増えています。

今は協働日本のクライアントであるパートナー企業や経営者が、今度は別の地域の協働プロフェッショナルとして働く。そのようなケースが生まれていくことが、良い循環の形だと思います。そのような取り組みを通じて、関わっていく側の人間も「自分が何者であるのか」を再発見する機会にもなると感じています。

ーーそれはとても素敵な循環ですね。ぜひ協働日本の未来の形にしていきたいです。インタビューへのご協力ありがとうございました。

藤村:ありがとうございました。すべてを協働日本の案件としてお寄せください!ということは申し上げませんが、協働日本のような取り組みを今後、広げていきたいと強く思います。そのころには、複業やプロボノと行った言葉ではない、新しい言葉で定義されているのかも知れません。

藤村 昌平 Shohei Fujimura

ライオン株式会社 企業文化変革担当部長

株式会社協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン(株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。

2018年に新規事業開発組織「イノベーションラボ」の設立、2019年に新価値創造プログラム「NOIL」立ち上げを行う。2020年より新設のビジネスインキュベーション部長に就任、2022年1月より現職。カルチャーラボを立ち上げ企業文化変革に挑戦中。

(株)協働日本には創業当初から参画し、2021年にCSOに就任。事業開発のプロジェクトマネジメントに加え、幹部人材育成、越境チャレンジの事業開発メンタリング等を担う。

専門領域
新規事業開発、新規事業開発組織設計と運営、新規事業創出プログラム設計と運営、新規事業担当者育成

人生のWHY
Houseから、Homeへ。

藤村昌平氏も参画する、協働日本事業については こちら