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STORY:株式会社イズミダ 出水田一生氏 -若手社員が経営視点を獲得。未経験から会社の中核人材へ-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社イズミダ 常務取締役の出水田 一生氏にお越しいただきました。
株式会社イズミダは創業50年の鮮魚の卸売・小売・水産加工の会社です。元々は創業者である出水田氏のお祖父様が自転車の荷台に魚を積み、売って回ったことが始まりでBtoB向けの卸売がメインの事業だったそうです。

10年前に出水田氏が3代目として戻られてからは、加工品のEC販売や飲食店、体験・教育、対面販売のBtoC向けの魚屋など『新しい魚屋の形を作る』ためさまざまな事業を展開しています。

創業者の「魚の本当の美味しさを知ってもらい、皆様に喜んでいただきたい」という想いを受け継ぎ、大きく変化を遂げようとする株式会社イズミダ。その中でも今回は鮮魚店が併設する食堂である「出水田食堂」のプロジェクトに協働プロが伴走しました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明)

協働日本 令和5年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子も合わせてぜひご覧ください。

新しい魚屋の形を作る──新しい挑戦の中で表面化した課題に伴走支援を。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

出水田 一生氏(以下、出水田):はい、よろしくお願いいたします。

鹿屋市の前副市長の鈴木健太さんからの紹介がきっかけで、協働日本代表の村松さんにお会いしたのが始まりでした。伴走支援という形での複業人材の活用の話や、鹿児島県の「新産業創出ネットワーク事業」についてお聞きして、ぜひ一緒に取り組みをさせていただきたいと思いました。


「新産業創出ネットワーク事業」は昨年度も実施されていたということで、株式会社ネバーランドさんの加世堂さんなど、以前から知っていた方が参画されていたということもあり、協働の事例を聞いて一気に親近感が沸きましたね。

昨年の取り組みなど村松さんにお話を聞いた後すぐに、今年度(令和5年度)の県の事業への参加事業者の募集があったため、チャンスだと思いすぐに申請書を書いて提出しました。

ーーすぐに協働を決めてくださったんですね。今回の協働では、数あるイズミダの事業の中でも「出水田食堂」のプロジェクトについて伴走させていただきましたが、テーマについても申し込みの時点ですでに決めていらっしゃったのでしょうか?

出水田:最初は、当時頭の中にあった別の課題を解決したいと考えて申請書を出していました。最初のセッションでその課題について深掘りして考えていく中で、それよりももっと、解決していくべき点があると気づいたんです。それが、鮮魚店併設型の食堂である「出水田食堂」の運営についてでした。

弊社、株式会社イズミダは鹿屋市で創業50年、現在は2代目として父が経営しています。元々BtoBの卸売業だったのですが、3代目として店を継ぐため私が戻ってきた10年ほど前から、加工品のEC販売など新しい事業も始めるようになりました。

出水田食堂は、よりダイレクトに魚の魅力や価値を伝える手段として、2022年の4月にスタートした鮮魚店併設型の飲食店です。営業はお昼だけ、市場の休みに合わせて週休2日という営業形態も、長時間労働が常態化しやすい魚屋の働き方改革への挑戦という意味もありました。

出水田食堂は、鹿屋市ではなく、鹿児島市の騎射場という学生街・飲食店街にあります。単価はエリア平均より高めであるにも関わらず、開店当初よりさまざまなメディアに取り上げていただいたり、行列ができたりと、ありがたいことに大変好評いただいていました。

一方で、内部的には従業員が定着しないという問題がありました。責任者である私は普段鹿屋市にいて、鹿児島市の店舗までは移動に2時間近くかかってしまいます。物理的距離がスタッフとのコミュニケーションにも影響し、少しずつ考えにズレが生じてしまうことなども理由の1つで、スタッフが辞めてしまい、併設の鮮魚店を休業さぜるを得なくなったり、飲食店でのクレームが増えたりと目に見える形で問題が出るようになっていました。

ーーなるほど。それで出水田食堂への伴走がスタートすることになったのですね。

出水田:はい。協働がスタートした頃、新たにスタッフを2名採用したところだったんです。2名とも20代の女性社員なのですが、前職は保健師とパティシエという、魚に関する知識が経験もないにもかかわらず、我々の想いに賛同して入社してくれたメンバーでした。

先ほど話した通り、私には物理的な距離の問題もありますし、出水田食堂での新しい事業や課題解決については私ではなく現場のスタッフが責任を持ってやらないと長続きしないのではないかと思い、彼女たちにも協働プロとの毎週のミーティングに参加してもらうことにしました。

店舗の運営に留まらず、体験・教育などこれまでにない新しい魚屋の形に挑戦している。

昨年比1,000%超、過去最高売上を更新。二人でも無理なくできる、現場発信の施策の数々。

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

出水田:はじめは、根本的な価値や課題を深掘りするということで、会社の価値や課題を考えるというワークからスタートしました。協働チームとしては、藤村昌平さん横町暢洋さん、宮嵜慎太郎さんの3名を中心に入っていただいています。

まずはワークショップの中で、自分の存在意義と会社の存在意義を考えるところから始まったのですが、日頃から『存在意義』について考える機会はなかなかないので、私にとってもスタッフにとっても、何のためにここで働き、何をしていきたいのか、考えを整理するためにとても貴重な機会だったと思っています。

それぞれの想いが整理されたことで、その後の価値や課題についての議論も活発になっていきました。

印象的だったのは、私の考える会社の価値や課題と、スタッフたちの考える価値や課題について、違いと共通点が浮き彫りになったことです。1つ1つの意見についてディスカッションをしていくことで、これまで課題だったコミュニケーションや意識のずれが少しずつ修正されていくのを感じたんです。

ワークショップの様子。それぞれの色がメンバーと紐付き、各人がさまざまな意見を出しているのが見える。

ーー同じテーマについて話をしていく中で自然とコミュニケーションが取れるようになっていったんでしょうか。

出水田:藤村さんのファシリテーションも大きかったと思います。これまで社内ミーティングで1つのテーマについて話し合う機会ももちろんあったんですが、その時は私が一方的に話すような形だったんです。

というのも、スタッフの2人は業界未経験ということもあって、どうしても「魚」についてはわからないことも多く、何か具体的なアイディアを求めても、自分は詳しくないからと遠慮がちになってしまっていたと思うんです。

そこで、うまく藤村さんが話を振ってくださったことで、2人とも発言する機会が増えましたし、どんな意見が出ても協働プロの皆さんが否定せずに受け止めてくださるんです。間違っていることなんてない、質問から少しズレていても言語化を手伝って軌道修正をしてくれるので、思ったことを好きなように言える雰囲気が醸成されていきました。

それに、それぞれの存在意義──ここで何をしたいのか、という部分は個人の内側にしかないものを発言する形になります。知識や経験とは関係なく、それぞれの想いで意見が言えるということも、活発な議論に繋がった理由じゃないかなと。

実際にその後、二人からの提案でさまざまな施策を行っていくことになりました。

ーーお二人からのご提案内容も含め、その後に実施された具体的な施策についても教えていただけますか?

出水田:はい。行列ができた際の待ち時間の有効活用、SNSの活用と発信、そして人員不足で休業していた鮮魚店を再オープンすることができるようになり、年末の受注、イベントへの参加、恵方巻きの企画など多岐にわたります。

まず、先のセッションによって、「お客様を待たせているが、ケアできていない」「時間がなくてお客様との接点を作れていない」という2つの大きな課題が顕在化しました。

待ち時間の課題を解消する施策としては、待っているお客さんが、お魚の知識に触れる経験ができるように魚の本を置いたり、隣接する鮮魚店に誘導するなど待ち時間でも楽しんでもらえるように工夫しました。「食べてファンになる」だけではなく、並ぶ時間から退店までも価値を伝え、ファンになってもらおうという施策でもあります。

そして、顧客接点の課題についてはSNSの活用でカバーしていくことにしました。Instagramでは、日々のおすすめや入荷情報を発信して来店意欲を高め、LINEではお得意様に対して特別な情報発信をしてリピート意欲を高めるよう役割を分けて運用することになったんです。ただし、スタッフは日常業務で忙しく、SNSの管理までなかなか時間を割くことができません。そこで、協働プロの横町さんの力も借りながら、生成AIを活用してコンテンツの生成から投稿後の検証まで2人でうまく回せる仕組みを作りました。

ーーすごいですね!実際に現場で無理なく回せる仕組みになっているんですね。

出水田:元々、出水田食堂は働き方改革への挑戦という側面もあったので、どうしてもスタッフに無理はさせたくありませんでした。現場にいない私が考えるのではなく、現場にいる2人も一緒に自分ごととして考えてくれたことで、より現場に即した形で施策を進めることができたのではないかと思います。

実際、年末の受注に関してもスタッフが率先して行ってくれた施策です。2022年の年末は人員不足で鮮魚店は閉めていたし、年末にスタッフを働かせるのもよくないと思い、年末の受注についてはほとんどお断りしていたんです。大晦日やお正月にお刺身を食べたいという需要があることはその時からわかってはいたので、2023年には「12/31は絶対に売れるから、公式LINEなどに流せば売り上げ上がりそうだ」という話をスタッフにしていたんです。すると、ぜひやりましょうと率先して声を挙げてくれました。実際にSNSでの発信によって受注につなげ、売り上げは前年比1,000%以上、過去最高額の売り上げになって驚きました。

ーー1,000%!需要がわかっていても積極的にできなかった施策が、すごい成果に繋がったのですね。

出水田:数字として期待以上の成果が出たのは年末の受注だけに留まりません。同じくスタッフが企画してくれた、恵方巻きの企画では140本以上の受注があり、年末に出した鮮魚店の過去最高売上をすぐに更新することになりました。

鹿屋市の店舗の方で2022年に結構恵方巻きが売れたので、騎射場の店舗でも売れるのではないか?というヒントを出しただけで、スタッフ2人で恵方巻きの内容や発信などほとんどオリジナルで考えて取り組んでくれました。

2022年にも出展していたイベント「ぶり祭」(鹿児島大学主催)でも、メニューの刷新やSNSでの積極的な配信によって、弊社経由で売れたチケットの枚数が前年比のほぼ倍になっています。

スタッフ考案の恵方巻き。大好評で140本以上を売り上げた。

「自分と会社の存在意義」がターニングポイントに。スタッフが経営者視点を獲得するという大きな変化。

ーー協働日本との取り組みの中で、店舗にはどのような変化が生まれましたか?

出水田:一番大きいのは、やはりスタッフの二人の自発性の向上だと思います。普段経営者である私が不在という中で店舗を運営し、成長させていくためには、二人の当事者意識を高めるマインドセットが必要でした。

どうしても初めの頃は、協働プロとのミーティングにおいても「私たちがいて何か意味があるかな…?」という雰囲気があったのも否めません。それでも言語化を重ねていくことで変わっていき、自ら積極的に声を上げてくれるようになっていきました。振り返って考えてみると、やっぱり、自らと会社の存在意義について言語化できたあたりがターニングポイントだったように思います。

伴走支援を通じて、それぞれが出水田食堂をよりよくするためにどうしたらいいか?を自分自身で考え、取り組み、コミットして数字を出すという一連の流れを経験することができたことで、スタッフとしての成長だけではなく、経営者視点の獲得にも繋がったのではないでしょうか。

それ以外にも、今ではトラックを運転して市場に買い付けに行き、魚を捌くところまでそれぞれが一人でできるようにもなっています。市場の先輩方にも可愛がってもらっているようで、そういった面でもとても逞しく頼もしいですね。(笑)

ーーそれは、大きな変化ですね。(笑)先ほどもお話しされていた通り、どんなことでも意見を言える雰囲気になったというのも重要かもしれませんね。

出水田:協働プロの皆さんと話す中で、本当にプロだなと感じることが多かったんです。言語化、課題の整理・抽出…頭の中にあってもできないことが多い中で、引っ張り出してくださるんですよね。

毎週のMTGの中でそんなシーンがたくさんあって、色んな意見が出てきたのを目の当たりにして、こうやって会議して新しい商品やサービスができていくんだなと身を持って体験できて、私自身としてもとても面白かったです。

また、オンラインだけでなく、実際に出水田食堂にも来てスタッフともオフラインで会ってくれたのも大きかったと思います。オンラインでは毎週顔を合わせていますが、リアルで会うとさらに距離も近づくので、コミュニケーションも取りやすくなりますよね。

週に一度で長期間実施する伴走支援、濃密な取り組みが成果に繋がる。


ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

出水田:実は3年ほど前から興味もあって、他社の副業人材活用のサービスを活用したこともあったんです。その時は、プロジェクトのスパンも短くて、5回程度だったので、いいアイディアや気づきもあったんですが具体的なところまで落とし込むことができずもったいなかったなと感じていたんです。

協働日本は毎週ミーティングがあって半年以上という比較的長い期間で伴走支援を受けられるので、取り組みが非常に濃密だと感じました。日々の業務に追われる中では、人間やっぱり期限を切ってお尻を叩いてもらった方が動きやすいですし、そういう意味でもいいなと思います。

ーーそうだったんですね。実際に、サービスを活用してみて、複業人材の取り組みは今後広がっていくと思われますか?

出水田:経営者同士の情報交換でも、よく話が出るようになってきたんですよ。興味がある人も多いのではないかと思います。なので、今後も広がっていくと思いますし、私自身も今後も活用していきたいと思っています。

特に、今回のように県の事業として支援を受けることができることで、伴走支援を受けられたという事業者さんもいるかもしれないですし、今後もそういった機会があれば周りにもおすすめしたいです。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本へのエールも兼ねて、一言メッセージをお聞かせください!

出水田:本当に大変お世話になりました。おかげさまでこの短い、1年弱の期間でうちのスタッフも変わったし、店舗に大きな変化が生まれました。

こういった複業人材の活用というのは、いろんな事業者さんに知ってほしい取り組みでもあるし、多分、興味はあってもなかなか、どこにお願いすればいいんだろう?というところがまだ知られていないと思います。

それに、ただ都市部の凄い人を1人副業で入れても、自社組織のメンバーと一緒にチームで力を発揮しないと、なかなか本当の成果に繋がらないケースもあると思います。

だけど、協働日本さんは、「ただ凄い人を副業で入れたらうまくいく」というスタイルではなくて、ワンチームとしてのチームビルディングを意識し、これだけ深く入ってくれて私は本当にありがたかったし、他の複業人材との取り組みとの大きく違うのではないかなと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

出水田:ありがとうございました!

出水田一生 / Issei Izumida

株式会社イズミダ 常務取締役

鹿児島県鹿屋市出身

大学・大学院で生物学を専攻。

大学院在籍中に父親の病気を機に家業である「出水田鮮魚」に戻り、卸一本であった昔ながらの魚屋のイメージを変えるため、魚×〇〇といった視点でEC販売、小売、飲食など新たなチャレンジを続けている。2022年全国中小企業クラウド実践大賞総務大臣賞受賞。

出水田食堂Instagram

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NEWS:KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、協働日本で伴走している株式会社栄電社が鹿児島県代表として選出されました

【2023年11月14日(火)】KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、協働日本で伴走している株式会社栄電社が第二創業部門の鹿児島県代表して選出・登壇決定

KVM2023|九州・山口ベンチャーマーケット
https://kyushu-yamaguchi-vm.jp/

協働日本で伴走している株式会社栄電社が、KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023に、第二創業部門での鹿児島県代表して選出されました。
九州・山口ベンチャーマーケットに登壇する企業は、九州・山口各県の予選を通過した企業に限られ、選出企業は2023年11月14日(火)に開催されるピッチコンテスト本番に登壇します。

芋焼酎の製造過程で排出される搾りかすをSPL液にしてサプリメント的飼料化を実現した事業で、今年の2月に鹿児島県庁にて開催した「新産業創出ネットワーク事業」の発表会でも、鹿児島発のサーキュラーエコノミーとして発表された協働事例です。

昨年から伴走し今年は2年目の取り組みとなる中、株式会社栄電社の皆さまとの協働もさらに深め、鹿児島県、鹿児島産業支援センターと連携して共に歩みを進めてまいります。

KVM2023 九州・山口ベンチャーマーケット2023の詳細は以下からご確認ください。

KVM2023|九州・山口ベンチャーマーケット
https://kyushu-yamaguchi-vm.jp/


#栄電社
#KVM2023
#協働日本

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STORY:栄電社 川路博文氏 -『焼酎粕』を新たな地域資源に。”四方良し”の発想でサステナブルな地域産業へ-

STORY:株式会社ソミック石川 斉藤 要氏 -協働が変化の起爆剤に。市場の変化をとらえた販路開拓へ-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社ソミック石川 代表取締役の斉藤 要氏にお越しいただきました。

株式会社ソミック石川は、大正5年に「石川鐵工場」として創業。ボルト、ナット類の製造工場としてその歴史をスタートしました。現在は自動車部品の製造業として、トヨタ・スズキ・スバルなど大手自動車メーカーが主要取引先となり、国内シェアは50%を超えています。

そんな、私たちの生活を支える自動車の重要保安部品を作る、ソミック石川の新たなチャレンジに協働日本が伴走させていただけることになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

はじめてのBtoC事業に向けて、協働を通じてノウハウを学びたい

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

斉藤 要氏(以下、斉藤):よろしくお願いします。弊社の人事部の若手社員が、協働日本代表の村松さんの講演を聞いて連絡をとり、私に紹介してもらったことがきっかけでした

ちょうど村松さんが弊社のある浜松に来るタイミングで、一緒に食事をさせていただきました。その場ではすぐに取り組みをスタートするといった話にはならなかったのですがその後、約1年後に当社のサポートをしてもらえないかとあらためて依頼して今に至ります。

ーーファーストコンタクトから協働がスタートするまで、結構間が開いていますね。

斉藤:そうですね。村松さんとはじめてお話した際に、協働日本の伴走支援のモデルに大変強い興味を持ちました。協働プロとの協働を通じて様々な取り組みが実現できそうだと感じました。

ただ、当時はすぐに取り組みたいテーマがなく、その場ですぐに、とはならずそれっきりになってしまっていました。

ただ当時から、自社としても近い将来に新規事業を立ち上げなくてはいけないという危機感は持っていたので、いざその時にはぜひ力をお借りしたいとずっと思っていました。

ーー約1年越しでそのタイミングが来たと。

斉藤:はい。今生産している製品を自動車メーカーだけではなく、補修部品として直接ユーザーに売る仕組みを作り、BtoC向けの新規事業を立ち上げ、事業領域をさらに拡大させていきたいと考えています。

我々はずっとBtoBの事業をしてきたので、BtoC向けの経験も流通・販売の仕組みも持ち合わせていませんでした。

元々、トヨタ生産方式の合理的な生産体制が社内に浸透しており、とにかく無駄を削ぎ落とすという考え方が基本だった弊社は、決まった仕組みの中では生産性を高めることができている一方、新しい仕組みが社内に入ってきにくいという課題も抱えていました。

普段から、決まった大手のメーカーが取引先ということもあって顧客対応も画一的なもので問題なかったこともあり、BtoC事業に求められる柔軟さが不足していました。

考えていたBtoC向けの新規事業においては、我々の販売する自動車部品が必要になる時は自動車修理のタイミングで、自動車生産と違って突発的なタイミングで発生するものです。計画的でないニーズにも対応できる自由度も、社内で絶対必要になるはずです。

そこで、経験豊富な協働プロに参画していただくことで、経験不足を補い、ノウハウを短期間で吸収したいと考えたんです。

やはり、同等のプロフェッショナル人材を自社で採用し、育成したり直接雇用したりするとなれば、とてもお金がかかります。協働を通じて組織のトップがノウハウを手に入れられるならば、結果的にとても効果的で価値ある投資になると確信したことも、経営者視点から見て大きな決め手でした。

協働プロの現地視察風景

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

斉藤:我々の考えるBtoCの新規事業に向けて、物流を含め、供給をどうしていくかなど、広く売る仕組みを構築中です。協働日本からは、CSOの藤村昌平さんと、協働プロの根崎 洋充さん(大手製造業)、三宮 大輝さん(西日本旅客鉄道株式会社)の3名の方にプロジェクトに加わっていただいています。弊社からは私以外に、営業部門の役員と部長が参加しています。

構想した新規事業は、新しい製品を作って売るということではなく、既存製品を新しい売り先に売ることになるので、まず業界の仕組みを深く掘り下げて分析しました。

我々のようなメーカーが作った自動車の部品は、仲卸業者を介して自動車メーカーに販売しています。エンドユーザーが部品を必要とする場合は、カーディーラーや整備工場などを通じて購入することになります。

売り手側も買い手側も、直接の売買が難しい構造になっているんです。そこで、他社・他業界の事例なども踏まえて、ターゲットとの接点の作り方や売り方、そして我々の強みについて毎週のように協議しています。

ーーなるほど。まさに新規事業をスタートする準備段階なのですね。協働を通じてどんな発見があったかお聞きできますか?

斉藤:価格設定についての話をしていた時、どうしても社員の考えが「自動車部品」をベースとして凝り固まっていることに改めて気付かされました。

自動車部品という業界においては、良い製品を作って、そこからどうやって原価を下げるかが重要視されます。例えば、利益率も製品価格の5%と設定されているなど、他業種に比べて特殊な構図があります。

そのことが根底にあるので、どうしても売価設定をリーズナブルに設定しようとしてしまいます。そんな時協働プロから「もっと高く売ってもいいんじゃないか?」と言っていただいてハッとしました。

価格設定の際には、「お客様が何に価値を見出していて、そこにどう値段をつけていくか」を考えるという、他業界では当たり前なのかもしれませんが、この業界に長く浸かっていたいた私たちにとっては、これまで持ち得なかった新しい視点を持ち込んでいただきました。

さらに、自動車メーカーからエンドユーザーに売り先が変わったことで、「お客様が部品に見出す価値」も変わってきます。ですから、全く同じ部品であっても、お客様の見出した価値の分通常よりも利益を載せることだって出来るという考え方ですね。

ターゲットとするエンドユーザーに、より大きな価値を見出していただける製品のラインナップについて協議を進めて、これからテスト販売をする予定です。その結果からいよいよ販売の仕組みを構築していきます。

市場に合わせて柔軟に変化できるように促したい。新しい視点を得た今、期待すること。

ーープロジェクトはまだ道の途中とのことですが、現状で感じる変化や成果はありますか?

斉藤:まだまだこれからだと思っています。まさに今も、我々の強みはどこにあるのかを見極めようとしているところです。

慣習に囚われず、売り先に合わせて売価を適切に設定することは、我々の強みに自分たち自らが値付けをすることでもあります。我々の強みにより価値を感じる顧客に、適切な価格で売ろう、という意識と主体性を持って、いま徐々にアプローチを変化させていっています。

ーー変化をしっかりと言語化できているところに、多くの議論を重ねてきた、ワンチームでの協働があったのだなと感じます。そういった意識の変化につながったきっかけや、背景はなにかあるのでしょうか?

斉藤:こういった変化が生まれたきっかけのひとつに、業界分析を重ねていく中で、旅行産業の収益モデルを協働プロから教えてもらったことがあります。

エンドユーザーがインターネット上で予約サイトにアクセスしてホテルを予約し、旅行するというプロセスの中に、ブッキングサイト、や旅行商品を販売する会社など、複数の中間事業者が役割分担しているのですが、それぞれがどこでどんな風に利益を上げているのかを解説していただいたんです。

その話を聞いて、我々が製品を作って、エンドユーザーの手元に届くまでの間のどこで利益を上げるのか、収益モデルをいかに構築していくかがとても大切だと気付かされました。

僕たちは製造業者なので、どこまでいっても「良い物を作れば売れる」と考え、「良い物」を作ることに集中してしまうところがあります。

ですが、協働プロの皆さんは、何によってユーザーに選ばれるのかという視点について、事例を伴うアドバイスをくださるので、いつも新たな視点に気付かされています。良い物を作ったって、良いかどうかなんてパッとはわかりません。

今はとにかく、顧客視点で選ばれる製品、そして事業へと進化させるべく、戦略を立てています。

ーーこれから、こんな変化を自社に生み出せたら良いなという展望はありますか?

斉藤:今後は、日本の人口はどんどん減っていって、市場が縮小してくるのが目に見えていますから、社員や組織が新たな時代に対応できるような変化を促したいと考えています。

というのも、普段の徹底した合理的な生産方式が、もしかしたら今後ネックになりうる可能性もあるからです。先ほど申し上げた通り、トヨタ生産方式は無駄を削減した合理的な仕組みです。

完成された、無駄のない仕組みを普段から運用しているからこそ、人によっては状況が変わっても同じやり方が正だと考えてそのまま運用し続けてしまう危険性も当事者として感じています。

本来のトヨタ生産方式の考え方に立ち返れば、ベストな状態にするにはどうしたらいいかを仕組化していくことが大切だという考え方ですから、状況に応じて仕組みを変化させることが非常に必要です。

市場の変化に合わせて柔軟に対応することが会社として必要な局面にいるので、皆がただ去年と同じ仕事をしているという状態から、未来はどうなるかを読んで対応を変化させていけるようになって欲しいと思っています。

日本の強みは人的資源。協働日本のコミュニティが日本を更に強くする。

ーー斉藤さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味はおありでしたか?

斉藤:そういう活動をされている方がいることは知っていましたが、ここまでシステマティックに複業人材の活用をされている会社があるということは、村松さんのお話を聞いて初めて知りました。

ーー率直に、協働という形で取り組みをはじめてみていかがでしたか?

斉藤:協働がスタートして、社員も活き活きと参加してくれています。プライベートの時間もフットワーク軽く、市場調査をしにいくほどなんです。協働プロとの壁打ちが効いてるんだと思います。

自分のやったことに対して、きちんとアドバイスやフィードバックがもらえることがやはり嬉しいんじゃないかなと。僕も、どうしてもこれまで忙しくて、社員と1on1をしてサポートすることはできなかったので、社員が喜んでくれているのをみると、取り組みを始めて本当によかったなと感じます。

我々と同じように1つの分野に特化して専門化してしまっているような企業が、何か変化しようとしたり、新しいことを始めようとしたりしているなら、協働日本さんとの取り組みをぜひお勧めしたいですね。

特に製造業は、そういった会社が多いと思います。大きい会社であれば、その中でも色んな背景を持つ人材がいるかもしれませんが、中小企業だと難しい部分もあります。

だからもう、新しいことを始めたいけどノウハウが足りないなど、困っているのなら、まずは試してみるっていうのも一つの手じゃないかなと思います。
言い方は適切ではないかもしれないけれど、人を雇うのと違い、合わないと感じたら辞めることもできます。今回協働プロには3名入っていただいていますが、こんな人材を3名も雇うことになったら、もう大変です(笑)。

それを窓口一本、協働日本さんにご相談するだけで、熱意のある適切な人材をアサインしてもらえるんだから、本当にありがたいと思っています。

ーー最後に、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

斉藤:協働日本は、ある意味で大きなコミュニティとも言えますよね。こういったコミュニティが広がっていくっていうのはとても大事だなと思います。


というのも、製造業は特にこれまで、内製技術で川上から川下まで全部自前でやりますという、考え方が多かったですが、最近は強いところだけやります、という構造に変わってきています。

例えば、インテルも中身だけに特化して、パソコンの外側を作らなくなっていますよね。そのように、個々の技術をネットワークで繋げて、最終的には大きな成果を作り上げるという時代になっていくと僕は考えているんです。

協働日本のようなコミュニティがそれぞれの強みを持った人材や会社をつなぐネットワークになれば、よりスピーディに成果を産み出すことができ、発展していくのではないでしょうか。

思い返せば私自身も会社から、色々な変化の機会をもらっていたんですね。異動や昇進昇格…いろんな経験ができたからこそ変化も成長もしてこられました。

でも、そういった様々な変化や経験を全員が等しく受けられるとも限りませんし、これからは自らがそういった変化のある場に飛び込んでいく必要がある時代です。

協働日本を通じて協働プロとしてその機会を作ることができれば、もっと社会のために能力を発揮できるという方も、きっと多くいるのではないでしょうか。

日本の強みは、資源ではなく人的資源です。最後は人ですから、協働日本のコミュニティが、日本を更に強くしていってくれることを期待しています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

斉藤:ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。


斉藤 要 / Kaname Saito

(株)ソミック石川 代表取締役 社長 トヨタ自動車(株)にて、ステアリング実験、サスペンション設計、生産技術を経験し、設計部長を務めた後、(株)ソミック石川へ転籍。2022年より現職。

協働日本事業については こちら

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VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―


STORY:株式会社四十萬谷本舗 四十万谷 正和氏 -課題に合わせた戦略的人材活用。老舗企業の考える「生き残り戦略」とは-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷 正和氏にお越しいただきました。

株式会社四十萬谷本舗は、明治8年創業、老舗の発酵食品の製造販売を手がける会社。創業以来、醤油、味噌、糀などを始めとし、味噌漬やかぶら寿し、大根寿しなど、地元の文化に根ざした発酵食品を作っています。

150年近い歴史の中で、時代やニーズに合わせて緩やかに変化を続けてきたといいます。コロナ禍を迎え、また変わり始めた時代潮流に合わせ、協働日本とのプロジェクトをスタート。更なる進化を遂げる四十萬谷本舗に、協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、そして中小企業の生き残り戦略への想いを語って頂きました。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

「塩漬けしたかぶ」に「熟成させた天然鰤」を挟み、糀で漬け込んで発酵させた伝統のかぶら寿し。 

一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるのが魅力

ーー本日はよろしくお願いいたします。四十萬谷本舗さんは協働日本との取り組み第一号の企業です。協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

四十万谷 正和氏(以下、四十万谷):よろしくお願いします。

僕と妻が実家の家業を継ぐべく、勤めていた会社を辞めて、四十萬谷本舗に入った時、課題の宝庫と言えるほど、様々な種類の課題に直面することになったんです。

マーケティングの問題、営業の問題、DX化…解決すべきことが山積していました。

実際に現場に入ってから、日々発生する現場の課題に1つずつ向き合って解決していたのですが、会社全体が良くなっていく感じも全然しなくて、どうしていけばいいのかなと、当時は途方に暮れていました。

そんな時に、協働日本代表の村松さんから一緒に課題の解決に取り組まないかと声をかけていただいたんです。

ーー「伴走支援」という形の複業人材との協働。はじめての取り組みだったと思いますが、協働スタートの決め手はなんだったのでしょうか。

四十万谷:元々、村松さんとは同じ会社(ハウス食品)で働いていたというご縁もあり、普段から相談する機会もあって、弊社のこともよくご存じでした。

同様に、協働プロとして入ってくださるメンバーの何人かが元々の知人であったことで、元々の信頼関係があったこともきっかけとして大きかったと思います。

ただ一番大きかったのは、信頼できるプロフェッショナルに、それぞれの専門分野について力を発揮してもらえるというところでした。

例えば、何人かの協働プロに入っていただく中で、マーケティングのことは若山さん(若山幹晴氏 – ポケトーク(株)取締役兼CMO)、テクノロジーやITのことについては横町さん(横町暢洋氏 – NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)に聞けるなど、一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるというのが、大きな魅力の1つでしたね。

僕も妻もこれまでのキャリアのバックグラウンドは「人事」で、人事領域については一通り経験を積んでいたものの、その他の領域についてはやはり未経験ということもあり、1からキャッチアップして勉強していくのは容易ではないと感じていたので、とても心強かったです。

ーー実際どんな課題についてプロジェクトを進めて来られたのかお聞きできますか?

四十万谷:まずはその課題を整理する、というプロジェクトからのスタートでした。そもそも課題には2つのパターンがあり、1つは「不良品が発生してしまった」「お客様からクレームのお声をいただいた」など日々の業務の中で発生するトラブルに近いもの。

そしてもう1つは経営全般に関わる、企業としての本質的な経営課題です。僕たちは日々のトラブルへの対応に追われて、なかなか経営課題に着手できていないのが実情でした。

そこで、プロジェクトでははじめに徹底的に従業員やお客様へヒアリングすることで、四十萬谷本舗にとっての本質的な経営課題は何か?ということを洗い出していきました。

それによって「メインの顧客層が高齢化していること」「お歳暮などの贈答の習慣がなくなっていくこと」「冬に売り上げが集中していること」の3つが浮き彫りになったので、次はそれぞれの課題に対してどう会社として向き合っていくかというプロジェクトに移っていきました。

ーー現場では日々色んなトラブルや課題が生まれてしまうものだと思うので、本質的な経営課題に着手するというのはやはり容易ではないことですよね。

四十万谷:そうですね。日々発生する課題自体を解決するのもとても重要なことです。例えば、業務不良品が発生してしまったことについて、製造過程を見直して不良品が発生しないようにと根本から解決することは当然必要ですよね。

ただそういった日々の課題を解決できていても、「顧客自体が高齢化して、今後減っていく」という本質的な課題に向き合えていなければ、長い目で見た時に四十萬谷本舗を未来に残し続けていくことは難しい。

僕はこの日々発生する現場の課題のことを「重力」と呼んでいます(笑)。

もちろん重要なことだからこそ、どうしてもその対応で手いっぱいになってしまいがちになる。

だからこそ、現場の「今解決すべき課題」とは別に、週に1時間意識的にしっかり時間を切り分けて「長い目で見た本質的な課題」に着手できるということも、経営者にとっての協働日本さんとの取り組み価値だと感じています。

重力のように吸い寄せられる日々の課題。本質的な経営課題に向き合う時間の確保の難しさ

ーー本質的な経営課題に対してスタートした次のプロジェクトについてもお聞きできますか?

四十万谷:はい。次に取り組んだのは「メインの顧客層の高齢化」の課題についてです。新しい顧客層獲得のためのペルソナ整理と、打ち手は何かを考え始めたのが2020年3月頃で、せっかくスタートした直後に、コロナ禍に突入してしまいました。

コロナ禍においては当然実店舗の客足や売上には大きな影響を受けたこともあり、コロナ禍でもできる取り組みとしてオンラインでの取り組みやWebでの売上を伸ばすための施策をスタートしました。


具体的には、オンラインでの漬物体験の実施や、それと連動した体験キットを作ってWebで販売するなどの取り組みをすることで、Webの売上は年間3,000万円から4,000万円弱まで30%増という結果を産むことができました。

自宅で簡単に糀のお漬物づくりができる「生きている糀床」

ーー他の課題にも並行して取り組まれているのでしょうか?

四十万谷:そうですね。例えば「売上の冬季一極集中」という課題は、昔からずっと続いている課題です。

当社の圧倒的な主力商品であるかぶら寿しの需要が冬期に集中しているため、簡単には解決に至らないことが多いです。

今は、以前より限られた人員で現場を回せるようにオペレーションを工夫するなど、皆で力を合わせて少しずつ取り組んでいる状況です。もちろん人員をおさえることによって生まれた新たな次の課題も抱えながらではありますが、コロナ禍で売上が減っても収益性には大きな影響を受けずに来られています。

協働という本質的な課題を考える時間を作るようになったことで、こういった課題にもじっくりと向き合えているのかなと思います。

ーーなるほど。協働がスタートしたことによる成果としても、そういった「課題に向き合う時間を作れる」という面は大きいのでしょうか。

四十万谷:はい。成果という面でいうと、大きく3つ、「Webの売上が上がったこと」「そもそも本質的な課題へのアクションができるようになったこと」そして「経営課題に向き合う時間を意図的に作れるようになったこと」だと思っています。

やはり最初は目先の課題に追われて、長い目で見た時に必要な課題に取り掛かることができていなかったので、大きな一歩でした。

また、協働プロのノウハウが社内に蓄積されていくというメリットもあります。例えば、若山さんとのコミュニケーションの中でいつも出てくる「お客様は何を求めているのか」という顧客思考や、何か施策を打った時に「そこからの導線を考えることが重要」というような考え方が協働を通じてインストールされて、自然と僕の言葉の中に出てくるようになっています。結果としてそれが現場に伝わっている部分もあるんじゃないかなと思います。

中途半端な人材はいらない。協働プロは、想いを持って共にコミットメントできる仲間。

ーー四十万谷さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味をお持ちだったんですか?

四十万谷:複業人材との協働で成果が出ている弊社ですが、特に「複業人材活用」自体に関心があった訳ではありません。

協働の取り組みをしているのも、「協働日本だから」というのが大きな理由です。というのも、「複業」人材に関しては、まだ世間では「副業」という意識が強い方も多いと思うんです。

「副業」という意識を持っていると、どうしても本業が忙しくて…などの逃げが生じてしまいがちですし、本当にプロフェッショナルとしてのスキルや想いを持っているのか、取り組み前では分からないケースがほとんどです。

ーーご自身も都市部の大企業で働かれていたからこそ気になる点でもあるのでしょうか。

四十万谷:そうですね。企業に勤めていたころ、副業だったり、プロボノ的に企業へのアドバイスをしている人を多く目にしてきました。

その時の印象としては、コミットメントに甘えがあったり、プロフェッショナルとしてのスキルに疑問が残る人もいらっしゃいました。
今経営をしている立場としては、そういう中途半端なスキルの人材の、中途半端なコミットメントではかえって現場が混乱するだけです。

その点、協働日本の協働プロの皆さんは、経歴・経験やスキルはもちろん、強い想いを持ってコミットメントしてくれています。複業という形でありながら、甘えのないプロとしての姿勢を信頼して伴走支援をお願いしています。

ーーなるほど。複業人材だから、ではなく協働日本のプロたちによる強いコミットメントが成功の要因だったのですね。ちなみに四十万谷さんご自身は、複業人材との協働の中で気をつけていらっしゃることはあるのでしょうか。

四十万谷:気をつけていることは、こちらが「答えを教えてもらおう」「課題を解決してもらおう」などと受け身にならない姿勢です。

というのも、協働がスタートした当初の失敗がまさしくそれなんです(笑)。すごいプロフェッショナルに来てもらったのだから、「早く答えを教えてくださいよ!」と思ってしまっていました。

また、協働プロからのせっかくの提案に対して「現場のことをわかってない!」と感じてしまったこともありました。当然現場のことは僕たちの方が熟知しているという情報の非対称性が、「そうは言っても現実的には難しい」など、「できない理由」を作ってしまうことに繋がっていたと思います。

そんな時にも協働プロからは、「一歩踏み出してみるのが難しいのはわかるので、まずは半歩だけでもやってみませんか?」と提案してもらうことで少しずつ進めたんです。

それだけ切羽詰まっていて、答えを知りたい状況だったということもありますが、本来協働とは「一緒に考え、共に解決していく」ものだと今は実感しています。

教えてもらおうという姿勢ではなくて、一緒に悩みながら進んでいこうというワンチームの姿勢で臨むことが、一見遠回りのようでも、結果的に成功につながる実感があります。

協働プロと売場を視察

ーー協働はワンチームで進める、というのは本当におっしゃる通りだなと思います。

四十万谷:やっぱり、いい成果を出す、いい物を作る、など結果を出すためには、変に格好つけたり壁を作ったりせずに、オープンな関係でいることも重要だと思いますね。

直雇用の正社員だからコミットメントが高くて、外部の人間だからコミットメントが低いということはないと再確認しました。

協働プロのように、外部の人間でもしっかりプロジェクトや事業に想いを持って当たってくれる人材がいる。もはや、社内外の枠で区別してしまうことはあまり意味がないのでは?と最近では感じています。

外部の人材に対して適切に情報を開示し、受け身の姿勢を捨てて素直に向き合うことで、より成果につながる協働ができるようになるのではないでしょうか。

自社の課題を自分たちだけで解決しようとしない───「地方の中小企業の生き残り戦略」

ーー四十万谷さんは、地域企業の方達とコミュニケーションを積極的に取られていると思うのですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。

四十万谷:地域企業の経営がアップデートされて企業がもっと面白くなることが、その地域にとって一番プラスになるのではないかという考えが根底にあります。例えば、どうしても「地元に面白い仕事や企業がないから都会に出る」という選択を取るケースがありますが、面白い取り組みをする企業が地域に増えていけば、地元での就職という選択肢が広がります。

また、地域企業はいろんな団体に所属していることも多く、仲は良いことも多いのですが、それぞれの課題をオープンにして意見をシェアし合う場はそう多くありません。

困っていることを周りに相談できる機会は少ないけれど、みんな不安や困り事を抱えている。それなら、シェアできる情報はシェアして、使えるものは使っていくことで、皆の経営がアップデートされる方がいいと考えているんです。

だから、協働日本についても「こんな仕組みがあるよ」と、経営者の仲間達の選択肢の1つに加わったら良いなという思いで紹介しています。

ーーなるほど。地域の企業がもっと面白くなれば…というお話でしたが、四十万谷さんは、今後地方の中小企業が生き残っていく為の戦略について、どのようにお考えですか?

四十万谷:そうですね。VUCA(ブーカ)とも言われるような、不透明で先行きが見えず、答えのない時代はまだまだこれからも続くと考えていて…その中で自社を取り巻く課題を、自社の人材だけで解決していくというのはかなり難しいと思っています。

だからこそ、自社では育成できないような外部人材と協働し、足りない部分を補いながら、スピード感を持って課題解決をしていくことこそが重要なんじゃないかと。すごくシンプルなんですが、これに尽きると考えています。

ーーたしかに、人材の育成は時間がかかりますものね。

四十万谷:そもそも、自社で協働プロのようなスキルを持った人材を育成しようとしても、育成経験もなければプロが育つような環境も用意できないなど、時間だけの問題ではない側面もあります。

じゃあ、十分にスキルと経験の備わったプロ人材を雇用しようとなっても、十分な給与を支払えるのか?という課題もあるし、そもそもプロを雇ったとしてもフルタイムでコミットしてもらうのか?その必要があるのか?など、中小企業にとってはとても難しいテーマです。

だからこそ、常に人材を抱えておかなくても、熱意を持った外部人材を登用し、「社外CMO」のような立ち位置で迎え、課題によって人選を切り替えながら戦略的に人材を活用していくというのが、これからの中小企業にとっての一つの戦い方になるんじゃないでしょうか。

ーー四十万谷さんにとって協働日本とはどういう存在でしょうか?

四十万谷:あらためて、企業経営にはこれさえやればよくなるという特効薬はないんですよね。悩みの尽きない経営者にとって協働日本は、一緒に悩んで、一緒に歩んでくれる心強い仲間です。

もちろん、協働の中で初めて気づくことも多く、やってみたいこともたくさんある中で、リソースが足りず思った通りにいかないことは多々あるんです。

それでもテーマを変えながらも一緒に伴走を続けて行けているのは、そういった想いを共有できてるからというのがあるのかもしれませんね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

四十万谷:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


四十万谷 正和 / Masakazu Shijimaya

2002年、金沢大学附属高等学校卒業後、慶應義塾大学経済学部に進学。少林寺拳法にも打ち込む。

2006年、『ハウス食品株式会社』入社。採用・労務・人事制度など、一貫して人事関連に携わる。2017年、『株式会社四十萬谷本舗』入社。2019年、専務取締役に就任。

協働日本事業については こちら

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STORY:石川樹脂工業株式会社 石川 勤氏 -協働を通じて上がった社員の視座と責任感。「皆で考える」新しいカルチャーへ-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、石川樹脂工業株式会社 専務取締役の石川 勤氏にお越しいただきました。

石川樹脂工業株式会社は、漆器木型の販売をルーツとする、樹脂製の食器雑貨の製造・販売を行う会社です。時代の変化とニーズを常に捉え、樹脂製漆器、欠けない箸、平らなお盆など、新しい技術への挑戦を通じて時代の先端を走り続けてきました。中でも、「1000回落としても割れない・欠けないお皿」のブランド「ARAS」は、Instagramのフォロワー数は10万人超。その勢いを増しています。

素材の面白さを社会に発信する企業であり続けるための挑戦を続けておられる石川樹脂工業株式会社。協働日本との伴走では、今一度経営者のあり方や人材育成について考え、社員個人と会社が共に成長するため、AIチャットツールを活用した新たな取り組みを始めています。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

ガラスと樹脂を掛け合わせた新素材でできた食器ブランド「ARAS」。先進と伝統の技術が融合して生まれる、新しい食器です。

経営者のメンタリングに始まり、Chat-GPTを活用したDX化にも挑戦。様々な協働プロジェクトの中で一貫して狙うテーマは「経営層を作る」こと

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

石川 勤氏(以下、石川):よろしくお願いします。協働日本との出会いは、石川県の「副業人材活用セミナー」です。知人である、金沢市の発酵食品の老舗、四十萬谷本舗の四十万谷専務からのお誘いがきっかけで参加しました。

ちょうど、割れない・欠けないお皿の新規ブランド「ARAS」の立ち上げという経営の転換期を迎えた後で、より会社として前進するために次は何に取り組もうか、経営者としても悩みを抱えていたタイミングだったので、セミナーから何かヒントを得られるのではないかと考えたんです。そこで協働日本代表の村松さんのお話を聞き、是非一緒に取り組んでいきたいと思い協働を決めました。

ーーどんな点が協働の決め手でしたか?

石川:はじめは「協働」という取り組みの形についてイメージが出来ず、どんなことができるのか少し懐疑的だったんです。

しかしセミナーの中で、村松さんの地域企業への熱い想いと、協働プロと地域企業が双方に相談しながら事業を進めている全国の取り組み事例を聞いているうちに、協働日本のみなさんとなら、一緒に前に進んでいけるかもしれないと思ったことが協働を決めた理由です。

当社では以前にも複業人材、外部人材との取り組み実績があったので、決定してからの導入はスムーズでした。ただし、一番の課題は、先ほど話した通り「次に何に取り組むべきか迷っている」という状態だったので、協働日本さんと取り組むテーマが思いつきませんでした。そこで、協働日本さんには「まずはテーマから相談したい」とお伝えして、取り組みをスタートしました。

ーーなるほど。過去にも複業人材とのお取り組み実績があったんですね。テーマ未定の状態でスタートした取り組みとのことですが、伴走支援がスタートしてからは、具体的にどんなお取り組みをなさっているのでしょうか?

石川:協働がスタートしてからこれまでいくつか変遷があるのですが、最初は「経営層をちゃんと作ろう」というテーマで、協働プロの方々に僕と妻のメンタリングをしていただくことからスタートしました。

中小企業のあるあるなのかもしれませんが、当社も「経営層が薄い」という課題を持っていました。これまでの変革も、基本的に僕自身が考え、手がけてきたものでした。しかし一人で抱えてしまうとどうしてもキャパシティが足りなくなってしまうので、次に繋がっていきません。

その課題感からまずは「経営層を作ろう」というテーマに取り組むことになりました。

メンタリングの中では、僕自身が何を手放していくのか、そして妻も経営者としてどう振る舞っていくのか、経営者思考を何度も壁打ちをさせていただきました。

その後、様々な部署から社員を8名──若手もベテランも半々くらいの割合で選抜して、ワークショップを実施しました。これまでの石川樹脂の歩みや、これからしていくことを社員と一緒になって整理していったんです。

参加者には、自分が会社を経営するとしたら?という視点で考えてもらいました。その場を活用して経営者としての考え方のインプットや共通認識を生み出せたことで、ワークショップ終了後から社員ひとりひとりが会社のことを自分ごとと捉えてくれるようになった実感があるので、これは本当にやってよかったと思います。

ーー社員の皆さんの意識が変化したんですね。こういった経営者のメンタリングや育成のパートはどのくらいの期間なさっていたんですか?

石川:大体4ヶ月ほどお願いしていました。その後はまたテーマをガラッと変えて、当社の弱みであったソフトウェア面について、業務を整理して、新しいシステムの導入や開発など、IT周りの課題の整理整頓を行うことにしました。

協働プロとしては、大西剣之介さん(バリュエンスホールディングス株式会社 執行役員 コーポレート本部長 人事部)、横町暢洋さん(NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)を中心にプロジェクトに入っていただきました。

ーー本当にまったく違うテーマですね!まずは経営層を厚くし、次は社員の方の意識変革。次はいよいよ自社のITに関する課題に皆さんで向き合ったのですね。

石川:そうですね。ブランディングやチームビルディングについてはもうある程度しっかりと出来上がっていた組織なので、これまで着手してこられなかった明らかな弱みを強化していくことにしました。先ほどお話ししたワークショップに参加していたメンバーから2名と、僕の3名でDX化による業務改善についてのプロジェクトをスタートしました。

1月にプロジェクトがスタートして程なくAIチャットツールの、Chat-GPTが流行し始めました。3月には新たに新バージョンGPT4もリリースされてChat-GPTを使ってコーディングがさらに容易にできるようになりました。

そこで、実は1月から整理してきたことの優先順位も変わっているのではないか?という意見が出ました。

そこで思い切って4月からは、メンバーを追加して6〜10名で、AIと一緒にアプリ開発をして、週に1つ業務改善アプリを作るプロジェクトに形態を変えたんです。

ーー皆さんご自身でアプリ開発を行うなんてすごいですね。元々プログラムができるなど、ITスキルのとても高い方ばかりだったんでしょうか。

石川:いえ、もちろん多少経験のあるメンバーもいましたが、ほとんどがはじめてという初心者ばかりです。

AIを使うと、できなかったことができるようになるという実感を社員に持ってもらい、実践し、業務改善をしていってほしいという狙いもありました。実際プロジェクトを通じて、Googleフォームで入力した日報を、Googleスプレッドシートとの連携でSlack(ビジネス用メッセージアプリ)に飛ばすアプリや、notion(高性能メモ・ノートアプリ)の議事録を要約してSlackに飛ばすようなアプリなどを社員が自分たちの手で作り上げてくれました。

非接触で在庫管理をする仕組みなど大掛かりな仕組みのDX化にも着手しているところです。

ロボットの導入による業務の自動化など、ハードウェア面はすでに整備されていた。ソフト面から更なる業務効率化に挑む。

経営者には余裕が生まれ、社員には責任感が生まれる。「皆で考える」カルチャーへの変化

ーー様々なプロジェクトを進行してきていらっしゃいますが、実際に協働がスタートしてから感じられた変化はありますか?

石川:はい、色々な変化があります。まず、僕自身がすべての経営課題を一人で抱え込まず、多くのことを社員にもオープンに伝えられるようになったことです。

例えば、給与・評価や働き方改革などの話になると、経営者は自分だけで抱え込んで悩みがちだと思いますが、僕は「皆で考えよう」という形で、社員と一緒に考えるようになりました。

特に働き方改革なんかは、社員それぞれ背景が違うので、全てを叶えようと一人で抱え込むと大変なんですが、「もうそれも皆で考えて、皆がいいと思うんだったらそれでいいんじゃないか」という風に考えるようになったんです。

経営者である僕はこう思うし、社員の皆はこう思う。じゃあ、どこで折り合いつけようかという話をオープンにして、皆で考えていくカルチャーが形成されてきたと思います。

例えば、協働日本さんに月にいくらお支払いしているかなども、プロジェクトに入っている社員にオープンに伝えているんですよ。その費用についてどう思うのか、どう還元して会社として取り戻していくのかなど、自ずと責任感を持って考えるようになっています。

僕自身も一人で抱え込む負担がなくなり、心に余裕が生まれるからこそ他にも考えられることが増えました。僕にも余裕が生まれ、社員の皆にも責任感が生まれ、とても良いバランスになっていると思います。

そういった経営者と社員としてバランスが取れた議論ができるようになってから、会社の経営として何がベストな選択なのか?という視点を社員も理解し始めている感じがしますね。

ーー最初のテーマであった「経営層をちゃんと作る」にも近づいてきている感じがしますね。

石川:まさしく、そうですね。社員の仕事への取り組み意識、マインドセットの変化が起こっていることは本当によかったです。例えばDX化だけやって、皆アプリを作れるようになったとしても、こういった本質的な会社の成長のことを考える視点が備わっていないと、付け焼き刃にしかならないと思うんです。

だから、順を追って少しずつ社員のマインドセットを変えていった上で、DX化など新しいチャレンジを始めたことでうまく繋がったのかなと思っています。

一方で、新たな課題も感じています。簡単な業務改善のDX化が終わってきて、難しいテーマになると「スキルが足りない」という声が上がるようになりました。自分たちで解決していくためには、どうしても学ぶ時間が必要になるけれど、これは業務時間か?ということについても皆で議論しています。

業務外での学びがないと個人としても成長がなく、会社としての成長もないということは皆わかっていながら、「ここからは業務」など明確な線引きが難しいことも同時に理解しています。これ以上は内製ではなく外注すべき点などの見極めも必要だと感じています。

会社からの押し付けにならない形で、かと言ってやる気ややりがいの搾取にならないようなフレキシブルさも残しつつ、個人も会社も成長できる方法を、皆でオープンな議論を通じて検討していっているところです。

AIにはできない、協働日本ならではの「人間らしい」伴走支援がこれからの社会で強みになる

ーー協働の中で印象的なことはありましたか?

石川:協働プロの皆さんから学ばせていただくことが本当に多かったです。大西さんは人事のプロですし、人の良さを引き出す采配や、バランスの良いファシリテーションをしていただきました。例えば、業務改善に対してすごく想いが強いのに、スキルが足りなくてできないと落ち込んでいるようなメンバーがいると、「(コーディング以外にも)あなたにできることがこのプロジェクトではとても重要なので、一緒に頑張りましょう」と声をかけてくださっているのをみて、共感しましたし、勉強にもなりました。

僕が社員に対して、あれこれ話をすると、どうしても上下関係があって業務命令のようになってしまうんですが、外部の人が入ってくださったからこそ、いいバランスが保てていたと思います。

横町さんもITスキルだけでなく、プロジェクト推進の経験がとても豊富で、本当に的確なアドバイスをたくさんくださいました。自分たちだけで調べながら進めようとすると、どこか独りよがりになりがちなアイディアも、きちんと業務改善のプロジェクトとして軌道修正をしてくださるので、皆納得感を持って進めることができました。

ーーありがとうございます。以前から都市人材や、複業人材との取り組みをされていたとのことですが、具体的にいつから複業人材の活用をされていたんですか?

石川:前職を経て石川樹脂に戻ってきてすぐ、6〜7年前から外部人材の登用をスタートしました。大企業ならいろんな専門性を持つ人材確保が可能ですが、中小企業ではなかなか同じようにはいきません。

自社内で賄うことができない分、外部人材や複業人材にその専門性をピンポイントで活かしてもらおうと考えていました。これまでもマーケティングや新卒採用などを複業人材と一緒に進めてきています。

もちろん、こういった取り組みは基本的にオンラインミーティングを中心とするので、手に手を取り合って現場で一緒に取り組むことができないなど、地方の中小企業の方にとっては壁のように感じられる面もあると思います。

とはいえ、特に社員を育成したいときや、会社を大きく変革させたい時というのは、新しい知見や専門性などを取り入れることができる大きなメリットがあるので、絶対に複業人材を活用した方がいいと僕は思っています。

協働日本さんとの取り組みは特に、テーマを決めるところから相談することができ、一緒に取り組んでいけるので、専門性と人材育成どちらも叶えて行くことが出来ると思います。

ーー本日はありがとうございました!最後に、協働日本が今後どうなっていくと思われるか、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

石川:これからは、中途半端な専門性はAIにとって替わってしまう世の中がくるんじゃないかなと考えています。なので、AIにはできない複業人材のスキルや、協働日本ならではの強みが発揮されるようになるのではないかと思います。

AIにはできない人間らしいファシリテーションで人の内面を見抜いてレベル感をあわせたり、会社自体の課題をより真摯に受け止められることが重要だと感じています。

協働日本さんは、伴走期間が半年以上と比較的長期であることもとてもいいなと思っています。長期で一緒にいるからこそ本質的な課題や、AIに見抜けない人の感情などの重要なポイントが見えてくると思います。

僕が村松さんや協働日本のビジョンに共感できる点は、このように「我々との課題に向き合ってくれている」という実感を得られるということです。

AIにはできない伴走支援をこれからもきっと、続けて行ってくれるのではないかと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

石川:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

石川 勤 / Tsutomu Ishikawaagawa

石川県出身。東京大学工学部卒業後、世界最大の消費財メーカーProcter& Gamble日本支社に入社し、約10年間勤務。主に、経営戦略、経営管理、財務会計などに従事。日本での数年間の経験後、シンガポールに転勤。アジア全体の消臭剤・台所用洗剤の経営戦略に携わる。その後、帰国し日本CFOの右腕として、従事。

“自分の手で、ものづくりをしたい”と一念発起し、現職に就く。現在は経営全般特に新事業・ロボット・AIなどのDXに従事。

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人と人とをつなぐプロボノ活動で、発達障がいの子どもたちにITスキル習得機会を|NECソリューションイノベータ株式会社

記事の中では、協働日本を通じて兼職という形で取り組んでいる、鹿児島県の株式会社サクラバイオとの共同プロジェクトについてもご紹介されています。発達障がいや不登校の子どもたちの放課後等デイサービスなどを展開している事業にかかわる中で、横町さんが得られた学びや気付き、取り組みを通じて実感したご自身の成長について語っていらっしゃいます。

詳細につきましては、talentbook(タレントブック)のご紹介記事を御覧ください。

横町 暢洋
Mitsuhiro Yokomachi

NECソリューションイノベータ シニアマネージャー

大学卒業後、NECソリューションイノベータ(株)に入社、携帯電話及びパソコン向けソフトウェア開発に従事。2015年から日本電気(株)を 兼務し、サービス事業創出・開発・運営に従事。2019年より組織リーダに就任し、一次産業のデジタルトランスフォーメーションも推進。

専門領域
ITを活用した業務改善・効率化、ソフトウェア開発、サービス事業開発・運営

人生のWHY
人生に失敗はなく、常に挑戦あるのみ

横町 暢洋氏も参画する協働日本事業については こちら

横町 暢洋氏の過去インタビューはこちら
VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –

STORY:栄電社 川路博文氏 -『焼酎粕』を新たな地域資源に。”四方良し”の発想でサステナブルな地域産業へ-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、2/17(金)に取り組み企業数社をお招きし、報告会を鹿児島県庁にて行いました。

発表会の様子はこちらの協働日本公式noteでもご紹介しています。
鹿児島で熱い「協働」が続々誕生中!県庁での発表会の様子をご紹介します

当日は取り組み企業の一社、株式会社栄電社の、バイオ環境事業部マネージャー川路博文氏に、発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表頂きました。

株式会社栄電社は、「技術で社会に貢献し、お客様からの信頼によって会社を発展させる」をミッションに、人々の暮らしや産業になくてはならない「電気」が、確実に、安全に、効率よく送電され運用されるシステムの運営を支えている総合電気エンジニアリング会社です。

昨今では、時代の要求でもある「新エネルギー開発」や、「バイオ環境事業」を通じて、SDGsにも積極的に取組んでいます。

そんな「バイオ環境事業」において、川路氏は焼酎粕を活用したサステナブルな地域産業の活性化に挑戦されています。地元鹿児島県の名産でもある焼酎を蒸留する過程でできる焼酎粕。強い粘性があり取扱いしにくく腐敗しやすいという特徴から、再利用が難しい産業廃棄物になりがちでした。

栄電社では、この焼酎粕の機能性成分に注目し、加工することで保存性・取扱性を向上させた焼酎粕乳酸発酵液(以下、SPL液)の製造を実現。協働日本との取り組みを通じて、この「SPL液」の活用による地元産業の活性化を図っています。

今回は事前インタビューでお伺いした内容を含め、川路さんにお話しいただいた協働日本との取り組みを通じて生まれた変化や、今後の事業展望への想いなどをご紹介します。

(取材・文=郡司弘明)

廃棄物ゼロを目指して。持続可能な資源の循環を生み出し、鹿児島県の産業全体へ貢献したい

ーー協働日本と勧めている「焼酎粕を新たな地域資源として活用する」プロジェクトについて

まず初めに、なぜ私たちがこの焼酎粕の活用に着目したかについてお話しします。健康にも良い食品として知られる「酒粕」は日本酒の製造過程で出るものであることはよく知られていると思います。

「焼酎粕」も焼酎を蒸留する過程で出てくるものです。そして酒粕と同様に、たんぱく質、ビタミン類、ミネラル類などさまざまな栄養成分が含まれているんです。

ただ、酒粕と違う点として、焼酎粕は粘性が強い液体で取扱いにくい上に腐りやすいという特徴があり、再利用がとても難しいんです。さらに、出来上がり量よりも発生量が少なくなる酒粕と違って、出来上がりの焼酎の約2倍もの量が発生します。年間20万t以上も廃棄されることがあり、当然コストも嵩んでしまう。

そこで、なんとかこの焼酎粕を活用できないかと考え、鹿児島の基幹焼酎メーカーさん、様々な大学機関と連携して2017年から研究開発を始めました。

今までの焼酎粕の処理法というのはメタン発酵により一部をガス燃料にしたり、農地に肥料として撒いたりすることが多く、あくまでも産業廃棄物の処分という考え方でした。私たちは、この焼酎粕を産業廃棄物ではない「地域資源」として活用できないかと考えたんです。

せっかくならば地元産業の廃棄物を新たな「地域資源」に生まれ変わらせて、同じく地域産業で活用してもらえるような形…鹿児島県の地域産業全体に貢献できるような形にしたいという想いを持って事業がスタートしました。

そして研究開発を進める中で、焼酎粕を乳酸菌発酵させて保存性や取扱性、有効成分が強化された、飼料・肥料として使える「SPL液」が完成しました。焼酎粕の全量を使うことで廃棄物ゼロも実現。特許も取り、実証実験も重ねて、幅広い用途で活用できる効果性も少しずつ判明してきました。いざ焼酎粕の活用の可能性が見えてきたものの、「実証の成果をどのように事業に結び付けていけばいいか、ターゲットをどう絞っていくか」という次の課題が浮かび上がったんです。

ーー協働型の伴走支援開始後の変化や手応えについて

ーー続いて、協働プロと具体的にどのような取り組みをしているかもお聞きしたいと思います。

協働日本の皆さんにはターゲット設定の部分でとても助けていただきました。実証実験の結果では、肉牛・乳牛や養殖魚への飼料利用、水稲への肥料利用など様々なケースにそれぞれ良い結果がでていたので、具体的にターゲットをどこに絞って活用を広げていくかという部分を定められていなかったのですが、協働プロの皆さんと検討を重ねることでターゲットを二つに絞ることができました。

一つは「乳牛」、もう一つは「魚の養殖」です。

鹿児島県の豚の飼育頭数は全国一位、肉用牛は全国二位なので、どうしても私たちは「鹿児島」らしさや、市場の大きさから、豚や肉用牛の飼料として「SPL液」を活用することに目がいっていたんです。

一方で、実証実験の成果としては乳牛の成果の方が大きかった。乳量が上がった・母牛の受胎率が上がったなどの成果が数年にわたる実験の数値データとして出ていたんです。

同時に、乳牛は夏の暑い時期に食い渋りが発生し、乳量が減るという酪農家側の課題も明確にありました。協働プロの方に「せっかく明確な課題と、良い結果が出ているのであれば、ターゲットはここに絞るべきではないか」と指摘していただけたことが新たな気づきになりました。

魚の養殖に関しては、時流の観点からアドバイスをいただきました。実は協働のスタート前には、養殖魚に関する商談はひとつもありませんでした。そんな中で、協働プロの皆様は養殖魚のブランド化に着目した意見をくださったんです。

昨今、水産物に関しては特に、味の差別化やブランド化が進んでいます。例えば、鹿児島県では「安全性・鮮度保持性・美味しさ・栄養性・機能性」などに拘った養殖ブリの「鰤王」、鹿児島県産のお茶を飼料に配合した養殖カンパチ「海の桜勘(おうかん)」などのブランド魚が有名です。

新たな地域資源である「SPL液」を飼料として魚に与えることが、「地域の特産品から発生した焼酎粕を使った魚」というブランディングに繋がるというアイディアが生まれたんです。

このアイディアは外食産業の商社の方から共感を得まして、こちらも現在「SPL液」の製造販売の事業化を進めているところです。今年の秋には、「SPL液を使ったブランド魚」を皆様にお届けすることができるかもしれません!

チームとして向き合う一体感と、多角的な視点から一貫性を持ったアドバイスが社内に新風をもたらす

ーー協働日本との取り組みの中で一番印象的だったことは

新しい気づきや視点で、今まで考えなかった方向に進むことができたことでしょうか。社内の人間だけで検討を重ねると、似た議論が続いたり、考えが凝り固まってしまっていて、どうしても全員同じような方向に向かってしまいます。

先ほどのターゲット設定の話の中でも「鹿児島の地域産業のために」という想いから、対象の多い事業者をターゲットに設定したいと視野が狭くなっていました。そこに協働プロの方が入ってくださったことにより、フィールド試験結果を元にして「より収益化に繋がりやすいもの」というヒントをいただきました。

私たちの収益化にも繋がりやすく、効果も出やすければ、事業も広がりやすいので、結果として「鹿児島の地域産業」に大きく貢献できるわけです。新しい視点によって道が拓けていった感覚が強いです。

コンサルではない、同じチームとして向き合っていただいていることも本当に大きいです。当事者目線でいろんな相談に乗っていただけるので、共に事業を作っていっている実感があります。実際、「SPL液」の販売という課題をテーマに協働がスタートしましたが、販売や収益の視点だけでなく「鹿児島県の地域産業全体に貢献したい」という私たちの本来の想いの実現方法を一緒に考えていただくことができました。

“四方良し”のビジネスモデルで、鹿児島県に更なる飛躍を

ーー今後の展望について

基本的には酒造メーカーさんご自身が製造設備を持って「SPL液」を作っていただき、「SPL液」を畜産・養殖業社の方に直接販売していただくという事業モデルを検討しています。

酒造メーカーさんとしては、自社で「SPL液」を製造することで処理費を軽減できます。実は焼酎の製造期間というのは、毎年9月から11月と非常に短いのです。でも、「SPL液」の製造・販売という業務ができることによって閑散期がなくなり、従業員の方たちを年間を通して活用しやすくなります。当然、「SPL液」の販売による増収を見込むこともできます。

先ほど述べたように、畜産農家さん、水産養殖業の方たちに対しても、「SPL液」を活用していただくことで大きなメリットがあります。「SPL液」の栄養吸収率の良さから、生産コストの削減に繋がります。乳牛であれば、一般的に乳量が減る夏場の牛乳の安定出荷、養殖魚であれば鮮度が長く保てることや、味の良さなど、それぞれの付加価値向上が見込めるんです。

もちろん私たちとしても、提携する事業者が増えることで製造設備の建設という仕事が発生するわけです。

鹿児島の名産品である焼酎から、廃棄物ゼロ、循環型の経済を実現し、それが地域の他産業にも活かされていく。全員がWin-Winになる形で地域の活性化が図れると考えています。

こうやって整理してみると、焼酎粕から作った「SPL液」をいかに販売していくかという課題を通じて、本当に私たちがやりたかった「環境問題への取り組みの発信」に辿り着いたことが、協働がスタートしてからの一番の変化のように思います。


編集後記

鹿児島を代表する産業のひとつ「焼酎」から排出される焼酎かすを活用した新事業への取り組みは、発表会に参加した鹿児島県の職員の皆さまのみならず、他の事業者様もペンを走らせながら、興味深く聞いておられました。

報告会終了後に開催した交流会でも、鹿児島県内の地域や業種を超えた繋がりが生まれており、次なる「協働」が誕生する予感が生まれていました。

協働日本の伴走支援中に大手事業者との事業化が決まるなど、既に大きな事業進展が生まれております。

今後も栄電社の技術によって実現した、サーキュラーエコノミーモデルの発展に向けて、今後も協働メンバー一同でお力添えできればと考えております。

株式会社栄電社

昭和53年創業。「技術で社会に貢献し、お客様からの信頼によって会社を発展させる」をミッションとして、人々の暮らしや産業になくてはならない「電気」の供給を支える総合電気エンジニアリング会社。

従来の技術だけでなく、時代の要求でもある新エネルギー開発に関わる新技術の習得や、産学協同研究による高度な技術開発・技術者養成にも積極的に取組んでいる。

「栄電社」様の事例を含む、鹿児島県での地域企業の協働事例はこちら

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-
VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –
VOICE:協働日本 浅井南氏 -「地方だから」を魅力に変える!チームで実現する協働の形-


STORY:うしの中山 荒木真貴氏 -『UshiDGs(牛DGs)』協働により生まれた、鹿児島発サーキュラーエコノミーモデル-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、有限会社「うしの中山」専務 荒木真貴氏にお越しいただきました。

有限会社うしの中山は、1950年創業の和牛肥育農家です。”牛の能力を最大限に引き出す”を使命として牛にとってストレスのない環境にこだわり、現在約5,000頭の牛を飼育しており、A5等級出現率75%を超える肉質が自慢です。2022年には和牛オリンピックの部門で日本一にも輝きました。

そんなブランド牛の飼育・販売が好調な一方で、牛の飼育とは切っても切れない「堆肥」の販路拡大への課題がありました。荒木氏は現在、協働日本との取り組みの中で、堆肥の販路拡大や、堆肥の活用によるGX(グリーントランスフォーメーション)を通じて「UshiDGs(牛DGs)」の活動を行なっておられます。

今回は協働日本との取り組みのきっかけや、支援を通じて生まれた変化についてお聞きしました。さらには今後の複業人材との取り組みの広がりの可能性についてメッセージもお寄せいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

畜産農家の抱える「堆肥問題」を、サステナブルな取り組み「UshiDGs」へ

ーー本日はよろしくお願いします。協働日本との出会い、進行中のプロジェクトについてお話を伺っていきたいと思います!

荒木真貴氏(以下、荒木):改めて、よろしくお願いします。

ーー協働日本とは、現在「堆肥事業」についての協働を進めていらっしゃいますが、取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

荒木:農場内の堆肥の問題についての検討を進めていた時、普段からお世話になっていた養豚農家の方や、鹿児島県庁の方に協働日本代表の村松さんをご紹介いただいたのがきっかけでした。農家ではない方々から、自社の課題についての意見を聞ける良い機会であると考えたんです。ちょうど協働日本さんが鹿児島県と事業を進めていたということも、協働の決め手の一つになりました。

実は、「協働日本」という名前を聞いて、初めはどんな組織なのか想像できていなかったのですが(笑)お会いしてみたら、村松さんをはじめ、協働プロの皆さんは本当にお人柄が良くて。あの時お会いできてよかったと思っています。

ーーそう言っていただけるととても嬉しいです。
早速「堆肥問題」の背景と、現在の状況についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。

荒木:堆肥は、その特性上、牛の飼育とは切っても切り離せません。約5千頭の牛を飼育する私たちの農場から出る堆肥は、年間3万6千トンにもなります。想像できない量ですよね。牛の糞は毎日どんどん増えていきますから、堆肥化した後もそのまま農場内に置いておくことはできません。堆肥化した後に全て捌かせないと、溜まる一方になってしまうんです。ですから、いかに効率的に早く堆肥を売り切っていくかが、当初の「堆肥問題」という課題でした。

有り余る堆肥をどうするか、が協働のスタート。スタートしてからは、単に堆肥を売ることが目的ではなく、なぜうしの中山が堆肥事業に取り組むかを言語化した上で、新たな販路の開拓やお客様のニーズを考えた堆肥の改善、オーダーメイドによる新しい売り方などについて、協働プロと一緒に検討を進めていきました。

付加価値のある堆肥──つまり使うと作物がよく育ち、収穫の質も量も上がるような堆肥を目指して堆肥の研究をし、こだわりの菌など独自の配合で手間ひまをかけた完全発酵堆肥として販売、現在は売上金額も向上しています。あれだけ有り余っていた堆肥の山が、今は需要が大きすぎて足りない状況になっているのも嬉しい悲鳴です。

また、あまり知られていませんが、堆肥は地球の環境にもすごく良いんです。化学肥料を使いながら作物を繰り返し作ることで、土が硬く締まり、水はけが悪くなったり、植物の根が伸びづらくなったりします。そんな土に堆肥を混ぜ込むと、肥料としての栄養がいきわたるのは勿論、通気性や排水性、保水性を上げる効果があり、作物を作りながらも本来の大地の力を取り戻すことができるんです。

堆肥づくり以外にも畜産農家が普段から行なっている様々な環境保全、サステナブルな取り組みについて、総括して「UshiDGs(牛DGs)」として発信することも始めました。

うまみを追求した技術、ストレスのない環境そだてられたうしの中山の牛肉は、和牛オリンピックの部門で日本一に輝きました

自分よりも自分のことをわかってくれる。自らの足で歩くことを前提とした、自律を前提とした伴走支援

ーー続いて、協働プロと具体的にどのような取り組みをしているかもお聞きしたいと思います。

荒木:はい。弊社からは2名が主となり、協働日本さんには、横町さん、田村さん、近藤さん、西川さんの4名を中心に参加していただいて、1〜2週間に一度のミーティングを行なっています。

このミーティングで、タスクや検討事項を整理、目的や目標などを明確にしており、事業を進めて行くための大きなヒントになっています。思いつくアイディアは色々あっても、言語化や頭の中を整理するのがすごく苦手で…協働プロの皆さんはアイディアを言語化することに本当に長けていらっしゃるので助かっています。

何をどうすればいいのか、頭の中でイメージの輪郭ができていても、うまく整理できていないことは多々ありますし、今取り組んでいることを文章にして改めて見直してみると、なんだか思っていたのと違う方向に進んでいるなということもあるので、皆さんの言語化による整理で、進むべき方向性が定まっていく実感があります。

ーーなるほど。目的や課題の整理を中心に進めていただいているんですね。取り組みの中で感じた協働プロの印象はいかがでしたか?

荒木:皆さん、能力やスキルが高いことはさることながら、お人柄がとにかく良いです。対話の中で「荒木さんが思っているのはこういうことですよね」と、自分より自分の考えを理解してくれていて、その上で「それであれば、こういう風にした方がいいのでは?」という提案をしてくださるんです。進みたい方向性を邪魔せず、嫌な気持ちにもさせず修正してくださるのでいつも納得感を持って受け止められています。お若い方が多いのに、自然で心地よいコミュニケーションを取っていただけるので正直とても感動しました。

すべての会話が非常に建設的で、弊社そして私に今、何が足りていて、何が足りてないかをはっきり明示してくれる存在です。そして何より、あくまでも私たちが「自分の足で歩くこと」を前提として、愛を持って伴走してくださっていることに、いつも感謝しています。

協働の中で見えてきた、「自分が本当にやりたかったこと」

ーー協働日本との取り組みの中で、会社にはどのような変化が生まれましたか?

荒木:堆肥をいかに販売していくかという課題を通じて、本当にやりたかった「環境問題への取り組みの発信」に辿り着いたことが一番の変化かと思います。

いかに堆肥に付加価値をつけるかという検討を重ねていく中で、出来上がったノウハウは必ず他の農家の為になると改めて感じました。栄養価が高く環境に良い堆肥を作って販売すると、堆肥を使った野菜農家は高品質な作物をより多く収穫できるようになり、土壌改良にも役立ちます。その堆肥の作り方を他の畜産農家にも共有できれば、そこでも堆肥が売れるようになり、購入先の作物や土壌改良にもよい影響が広がっていくと思うんです。

堆肥を活用したGX化だけでなく、牛舎と牛舎の間のスペースへの植樹、牛舎の壁面や堆肥舎の壁に蔦の葉を這わせて作ったグリーンカーテン、本来廃棄物になるようなものを飼料に活用するなど、私たちは日頃からサステナブルな取り組みを行っています。昨今では牛のげっぷに含まれるメタンガスが環境問題の一因にあるという説の影響で「牛は環境に悪い」というイメージがついてしまっているのを覆したいという思いもあり、こういった取り組みを総括して「UshiDGs(牛DGs)」として発信するようになりました。

荒木:協働プロとのミーティングを通じて思考の言語化を重ねることで、だんだんと「こういった取り組みを広げたい、知って欲しい」という「Why」が自分の根底にあったことが明確になりました。協働プロの皆さんにも「堆肥の付加価値や販路のことを考えることはすごく大事。でも、荒木さんにとっては売上を上げること自体が大事なわけではないんじゃない?」と背中を押してもらえたことが、自分にとっては大きかったと思います。

ーーただ目の前の課題解決をするだけでなく、想いの根底まで掘り下げていくことができたんですね。

荒木:そうですね。「UshiDGs(牛DGs)」のコンセプトが生まれたことにより、単に堆肥を売ることを超えて、自治体をはじめ、多くのステークホルダーに共感してもらえるようになりました。お茶の生産者や食品会社など、地域の事業者との協業が増え、鹿児島発のサーキュラーエコノミーのモデルとして、自社にとっても意義の大きな事業になってきています。

私が思っていた以上に、「UshiDGs(牛DGs)」は皆さんに共感して頂ける取り組みだったのではないかと思っています。

このように、自社の堆肥問題の解消を通じて社会課題の解消にもインパクトを残せるようになったことは、協働があったからこそ見つけられた「私たちの深層にあった大きな目的」への第一歩になりました。


企業や地域の壁を超えた、複業人材とのノウハウのシェアが日本を変える

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

荒木:私は元々異業種の方と積極的に関わりたいと考えるタイプで、考え方や事業内容が面白いなと感じた方にはSNSなどを通じて個人的に声をかけて話を聞くこともありました。多面的な視点を持つことで、新しいアイディアが生まれたり、物事への理解が深まると考えているからです。

日本社会では一般的に、アドバイスが欲しい時にその道のプロに頼ろうとする人が多いと思います。積み上げてきたものの中から良い知見を得ることはできる一方で、新しい可能性や視点を獲得することはできません。課題に直面した時に多面的な物の見方ができる力は、これからの社会でも必要だと思います。

ーー地域との協働の取り組みは今後どのようになると思いますか?

荒木:もっと広がっていくと思います。

今の若手を見ていると、何か成功を収めたとしても「全部自分の手柄」にしたい人は少ないように思います。関わった皆のお陰としてシェアすることを厭わない、「足るを知る」ような価値観の方が多いのかなと思います。

大きな理念を持つ一つの会社に人が大勢集まって、ずっと勤め続ける終身雇用の社会はもう過去の話です。これからは、こういった価値観を持つ若い世代が、会社という枠に囚われずにノウハウや労働力をシェアして、更には成果や売上もシェアしていこうという社会になっていく。そんな社会に、協働の取り組みはとても親和性が高いと思うんです。

地域と都市部の複業人材の取り組みについても同じ構造で、地域や業界・企業の枠に囚われずにノウハウをシェアしてもらうことで、効率的に成果を上げられるようになります。また、地域の外のプロフェッショナル人材からの客観的な視点と言葉で、自分たちのやっていることや考え方を再確認できるので、協働こそが新しい武器になり得るのではないでしょうか。企業や地域を超えた横の繋がりが、日本をより強くしていくと思います。

ーー嬉しいお言葉、ありがとうございます。
これからの協働日本へのエールを兼ねて、メッセージをお願いします。

荒木:協働日本の強みは、プロフェッショナルは勿論ながら、在籍する方の個々のお人柄の良さと、愛を持って悩みを聞いてくれるところだと思います。これからさらに多様な考えやスキルを持つ協働プロが増えていくことを期待しています。さらに広い範囲・多くの視点が揃うことで協働チームの戦力が突き抜けていき、救われる人が増えるんじゃないかな。

今回の協働で、協働プロの皆さんの頭の中と自分の頭の中が直結しているような、脳みそをお借りしているような感覚でミーティングを重ね、伴走支援を通じて背中を押していただきました。色んなアイディアがあっても、最後に実行するのは自分自身。本当にやりたかったことに向けて、進み出せてよかったと思っています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

荒木:ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

荒木 真貴 Masataka Araki

有限会社 うしの中山
専務取締役

長崎県諫早市出身
長崎県立諫早高校卒業
社会人になってからは、個人でカイロプラクターを目指し活動~アパレル業界にて8年過ごし、その後、運送業、建築、建設業なども経験し、2019年に『うしの中山』へ入社 販売を担当し、自社の肥育する牛の価値を高め、何より、感動する美味しさを知ってもらい、皆さんに食べていただくため活動してます。

広く海外の方にも、最高の自社の肥育した牛を知ってもらうため、2023年はかなり輸出に力をいれていくところです。

『命に感謝』
という、自社の理念を胸に、日本の農家さんがやってこられた自然と向き合って構築されたシステムや、考え方を先進技術と掛け合わせて、発展していかれる国々にその『ノウハウを輸出』することもビジネスになり、大切な地球の環境維持にもなるはずという信念でUshiDGsも仲間を集いながら展開。

有限会社 うしの中山
https://nakayama-kimotsuki.com/

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VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-
VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –
VOICE:協働日本 浅井南氏 -「地方だから」を魅力に変える!チームで実現する協働の形-


STORY:山岸製作所 山岸晋作社長 -挑戦する経営者にとって、協働日本は心強い伴走相手になる-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社山岸製作所 代表取締役社長 山岸晋作氏にお越しいただきました。

山岸製作所は1936年創業の金沢の家具販売会社で、輸入家具やインテリアの販売、内装工事設計・施工のほか、オフィスのトータルプロデュースも手がけています。

暮らし方を提案するインテリアショールーム「リンテルノ」や、働き方の提案を行うオフィスショールーム「リシェーナ」を通じて、新しい「暮らし方」「働き方」を売る会社としても注目を集めています。

孤独な戦いも多い経営者にとって、協働日本は心強い伴走相手だと語る山岸社長。
今回は協働日本との取り組みのきっかけや、支援を通じて生まれた変化についてお聞きしました。

さらには今後の複業人材との取り組みの広がりの可能性についても、経営者の視点からメッセージをお寄せいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

必要としていたのは、同じ当事者意識を持って悩んでくれる仲間だった

ーー本日はよろしくお願いします。今日は、進行中のプロジェクトについてだけでなく、お取り組みのきっかけになったエピソードなどもお聞きできればと考えております。

山岸晋作氏(以下、山岸):はい、あらためて本日はよろしくお願いします。

ーー協働日本では、週次の定例ミーティングをはじめ、先日も山岸製作所60周年記念イベントで協働日本代表の村松がモデレーターとして登壇するなど、様々な機会をご一緒させていただいております。
両社の取り組みがスタートしたきっかけとは、どんなものだったのでしょうか?

山岸:きっかけは同じく金沢で事業を展開している、発酵食品の老舗、四十萬谷本舗の四十万谷専務からのご紹介でした。

以前、事業について悩んでいた際、四十万谷さんとの会話の中で「相談相手として、良い人がいるよ」とご紹介してくださったのが協働日本代表の村松さんでした。

四十万谷さんがかねてより、都市圏複業人材と協働をスタートしており、成果を挙げられていたことは聞いていたので、興味を持ちました。

ーー四十萬谷本舗の四十万谷さんからのご紹介でしたか。四十萬谷本舗さまとのお取り組みは協働日本の第一号プロジェクトです。そこからご縁があったのですね。

山岸:ご紹介いただいて、実際に会ってみて驚きました。

こちらの悩みを聞いて一緒に議論をしてくれるなど、楽しくお話をさせていただいた後、てっきり最後は営業されるのかと身構えていたのですが、その後の契約などの話はせずに帰っていったのです。

ーー信頼できる方からのご紹介とはいえ、身構えていた山岸さんからすると、それは驚きでしたね。

山岸:かえって印象的で、気になってしまいました(笑)その後も、村松さんはじめ協働日本の方々は金沢に仕事で来る際に必ず、弊社に立ち寄ってくれるのです。

協働プロのみなさんがこぞって、弊社にお越しになられたこともありました。お会いするたびに、世の中のトレンドをご紹介いただいたり、事業についての壁打ちや、これからの働き方や暮らし方の議論をして帰っていかれました。

村松さんはじめ、協働日本の方々はとても情熱的で、そうして何度もお会いしている内にだんだんと、定期的にこの人たちと話がしたい、悩みを聞いてもらいたいという気持ちが強くなっていきました。

ーーコミュニケーションを重ねていく内に、山岸さんのお気持ちに変化があったんですね。

山岸:最後は私の方から一緒に取り組みをスタートしたいと伝えさせていただきました。

協働日本のみなさんからは、「こういう方向で解決して~」のようなアドバイスは一切なく、いつも「どうすれば眼の前の課題や、世の中の変化に一緒に立ち向かえるか」という視点で議論してくれます。それが本当にありがたかったですね。

当時から正直な話、外部からのコンサル的なアドバイスはあまり求めていませんでした。それは事業に関する課題はとても膨大で、それらは一つ一つが独立したものではなく相関しあっており、一朝一夕に解決の糸口が見つかるようなものではないと感じていたからです。

アドバイスを実践するだけで解決するなら、とっくにやっていますと(笑)

むしろ必要としていたのは、同じように当事者意識を持って、事業の課題に向き合って悩んでくれる仲間でした。そのため、そういった心意気で向き合ってくれようとしていた、協働日本のみなさんと取り組めることは、経営者としてとても心強かったです。

議論を繰り返し、根本の価値観を徹底的に言語化

ーーありがとうございます。続いて、現在どのようなプロジェクト進めているのか具体的に教えていただけますか。

山岸:暮らし方を提案するインテリアショールーム「リンテルノ」 での売上を向上させるための社員教育をお願いしています。

あらためて今、社員教育に向き合っているのは、ブランド代理の物売りになってしまっていることへの危機感そして限界を感じていることが背景にあります

弊社で取り扱っているブランドはどれも魅力的なブランドではありますが、そのブランドの力に頼り切りになってしまっては、これから先ビジネスを続けていけないのではないかという不安感がありました

山岸製作所がこれから売っていかなくてはいけないのは、「暮らし方」そのものと定義しています。

だからこそ、山岸製作所の存在意義や、なぜこのブランドを取り扱うのかということへの言語化を進めておかなければ、その先行き詰ってしまうだろうと思ったのです。

社員だけじゃなく私自身も、その場に参加して議論を進めています。

ーー社員教育として、外部人材である協働プロとの議論の場を設定しているのですね。とてもユニークな取組だと思います。
その議論はどういった形で進めていらっしゃるのですか?

山岸:ショップのリーダーを含めた社員3名と、協働プロの皆さんで、オンライン上で毎週打ち合わせをしています。

議論のイメージを一言で言うならば、魚をもらうのではなく魚の釣り方を教えてもらっている、といった感じでしょうか。考え方のヒントや、議論のサポートは手厚くしてくださいますが、結論はあくまで私達自身が言葉にしなくてはなりません。

 毎回、「お客様はなぜ山岸製作所に家具を買いに来るのだろうか」といった議題や課題を設定してもらい、そこに対する参加者の考えを深めています。

協働プロに壁打ち相手になってもらい、互いに議論を繰り返していくことで、目先のWHAT(何に取り組むか)ではなく、根本にあるWHY(なぜそれが必要か、なぜそれをやるのか)を徹底的に言語化しています。

そうして言語化されたWHYからもう一度、事業を捉え直し、新たなマネタイズモデルや今後の事業の戦略を描いています。

私たち一人ひとりが売っているものは何か、より良い暮らしとは何か。これからの山岸製作所にとって重要な価値観を、自分たちで悩み、意見を交わしながら考えていくことに大きな意義を感じています。

一緒に暗闇を歩いてもらえる勇気こそが一番の価値

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

山岸:それまでは弊社にも実績はなく、実のところ興味もさほどありませんでした。

もちろん、そういった働き方や取り組み自体は、新聞やテレビのニュースでは見聞きしていました。副業人材のジョブマッチングは、ほとんどが課題解決型の人材提供のモデル。それらはきっと、企業の課題や取り組むべき次のアクションがはっきりしている場合は有効だろうなと思っていました。

弊社の場合は、先ほどお伝えしたように課題が複雑で、試行錯誤中の新しい取り組みだったということもあり、そういったジョブマッチング型の副業人材との取り組みでは成果が挙げられないと思っていました。

ーーだからこそ、協働日本の「伴走支援」の形が山岸さんの課題感にフィットしたんですね。

山岸:そうですね。一緒にひとつのチームになって課題に向き合ってくれる協働日本のスタイルであれば、もしかすると上手くいくかもしれないという期待感がありました。

しかしそれでも、正直初めのうちは不安もありました。これまで形のないものにお金を支払っていくという文化も弊社にはなかったですし。

まして、一般的なコンサルティングでも、請負でもない、新しい「協働」という形の支援をどのように社内に展開、定着させていくのか。本当に効果があるのか。社員からの反応もふくめて、はじめは不安だらけでした。

ーーなるほど。取り組んでいくうちにその不安は解消されましたか?

山岸:はい、解消されたと思います。その証拠に、一緒に取り組んでいくうちに社員の自主性が急激に磨かれているのを実感しました。

協働プロの皆さんには、弊社の社員も交えて、一緒にディスカッションをする時間を作ってもらっています。協働プロから一方的に教わるのではなく、フレームワークに落とすような進め方でもないので、議論の中から社員のアイディアや気づきも出てきます。

人から教えられてその通りにやるのではなく、自分たち自身で考えて、自分たちが体験したことを伝えるのが山岸製作所の価値なんだと、参加する社員が強く実感し大きく変化してくれました。

今では社員が週次の議論を楽しみにしてくれています。「次はこのテーマをディスカッションしたいです!」なんて声も(笑)

協働プロの皆さんに頼り切りになったり、判断を委ねないように私達自身も当事者意識を持つことはとても大切です。それを心がけながらも、親身に伴走してくれるのは心強いですね。

ーー企業や社員の挑戦に伴走する、協働日本らしい支援の形ですね。

山岸:支援をする側にとっては、ある程度の答えを持っておき、すでにあるフレームワークに当てはめて議論を進めていく方が絶対楽なはずなのに。あえて協働日本の皆さんは一緒に暗闇を歩いて模索し、時には遠回りもしてくれる。

だからこそ議論に参加している社員の納得感があるんです。こういった変化は、一般的なコンサルティングや請負では生み出すことができないと思います。

一方で、このような進め方は正直、お互いに勇気のいることだと思います。言い換えれば私は一緒に暗闇を歩いてもらえるその勇気を買っていると言い換えてもいいかもしれません。

多くの経営者は暗闇を歩いているようなものでいつも心の中に不安を抱えています。だからこそ私にとっては、私と同じ熱量で、同じように不安感を持って、恐る恐るでも一緒に歩いてくれることが大きな価値なのです。

「協働」という取り組みを選んだことが間違いではなかったと実感しています。

複業人材の拡がりは、地方の企業にとって追い風に

ーー関わっている協働プロ協働サポーターの印象をお聞かせください。

山岸:協働プロの皆さんがそれぞれ山岸製作所の課題に対して、本当に真剣に向き合ってくれており、正直驚いています。

それぞれ皆さん表情や感受性が豊かなので、真面目な議論も固くならずに和やかな雰囲気で進められています。

素直でオープンに意見をぶつけてくれるので、お互いにいい意味で遠慮なく濃い議論ができていると思います。穿った見方や、押さえつけるような言い回しをしないので、弊社の社員との議論も安心しておまかせできます。能力はもちろん、人柄が良い人ばかりですね。協働日本は。

ーーお褒めの言葉ばかりで大変恐縮です。
山岸さんはこういった複業人材との取り組みは今後どうなっていくと思いますか?

山岸:今後、ますます広がっていくと思います。

ただ一方で、複業人材の取扱い方を間違って失敗する事業者も増えそうな気もします。

たとえば弊社の場合は、複業人材をコンサルのように使ったり請負業者のように扱わなかったことが、大きな成功要因だったと思います。弊社の課題が複雑で抽象度も高かったのもありますが、課題解決型の人材マッチングの成功イメージが沸きませんでした。

はじめから、様々な経験や知見を持った複業人材を、一緒に課題に向き合っていく仲間として捉えて、共通の課題に取り組んだことが結果として良かったと思います。部分部分で仕事を振って、パートナーに頼りきりになるのではなく、常に自分たちが主語になるような形で取り組みを進めたことで、主体性を持って結果を取り扱うことができるようになりました。

自社に必要なのは、どんな形で関わってくれるパートナーなのか、しっかりと整理した上で取り組みを進めるべきでしょう。

ーー地域企業にとって、複業人材の広がりはどのように映りますか?

山岸:協働日本の協働プロの力を活用して思ったことですが、これまで地方は吸い取られるばかりだと思っていたけれども、こうした取り組みがもっと広がるということは、場所や時間の制限なく、東京や大阪の人材や情報を活用することができるということです。

日本中どこにいても一緒に仕事をするパートナーを見つけることができるというのは、地方の企業にとってはとても追い風になる時代だと思っています。言い換えれば、我々地域の企業の経営者は現状に甘えていられませんね。

協働日本さんもどんどん、全国でこういった協働事例を作っていってください。応援しています。

ーー弊社へのエールもいただきありがとうございます。今日は色々なお話をお伺いできました。

山岸:本日はありがとうございました。

今後、協働日本により多彩な人材が集い、多くのチームが編成され、多様性を広げていく先に、あっと驚くような事例が日本中で生まれていくと信じています。

山岸 晋作 Shinsaku Yamagishi

株式会社山岸製作所 代表取締役社長

1972年、石川県金沢市生まれ。東京理科大学経営工学科で経営効率分析法を学び、卒業後アメリカ・オハイオ州立大学に入学。その後、『プライスウォーターハウスクーパース』に入社。ワシントンD.C.オフィスに勤務。2002年、東京オフィスに転勤。2004年、金沢に戻り、『株式会社山岸製作所』(創業は1963年。オフィスや家庭の家具販売、店舗・オフィスなどの空間設計を手がける)に入社。2010年、代表取締役に就任。

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-

VOICE:協働日本 枦木優希氏 -本質的な「価値」を言語化し、歴史ある老舗企業の未来に貢献していく-

VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 – | KYODO NIPPON


VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本で、地域企業に対して、経営やマーケティングに関わるデータの解釈や分析をサポートしたり、デジタルツールの活用方法をレクチャーするなど、デジタル領域に関連した支援を行っている横町 暢洋(よこまち みつひろ)氏です。

大学卒業後、NECソリューションイノベータ(株)で携帯電話及びパソコン向けソフトウェア開発に従事。その後2015年から日本電気(株)を 兼務し、サービス事業創出・開発・運営に従事。現在は、一次産業のデジタルトランスフォーメーションを推進し、AIを活用して養殖業などの一次産業の人手不足であったり、デジタル化が進んでいない領域の課題解決にも取り組んでいます。

協働日本でも、デジタル支援のほか、プロジェクトマネジメントとしても参画している横町氏。
「地方を元気に」という想いを実現するべく協働日本に参画したエピソードや、実際の取り組んでいる地域企業とのプロジェクトで感じた変化、得られた気づきや学びをインタビューで語りました。

(取材・文=郡司弘明)

協働日本に参加したことで生まれた自分自身の変化

ーー本日はよろしくお願いします。協働プロとして、地域企業のデジタル活用の文脈から数多くのプロジェクトで大活躍されている横町さんですが、普段のお仕事や、取り組まれていることについてぜひ教えてください。

横町 暢洋氏(以下、横町):よろしくお願いします。NECソリューションイノベータで、ソフト開発をする50名程度の組織の部門長をしています。

会社から半期ごとに示される予算計画に対して、達成するための戦略を考えたり、組織のメンバーの変革に挑戦してみたりといった仕事もありますが、時に現場でソースコードを見たりすることも。

会社で新しい働き方を自ら実践して、それらを会社に提案する、なんてことも自分の仕事だと思って積極的に取り組んでいます。

ーー横町さんは北海道など日本各地で、一次産業支援のお仕事にも取り組まれていると伺いました。どんなお取り組みなのか、ぜひこちらもお聞かせください。

横町:元々、海とか魚が好きなこともあり、大学で水産を学んでいたのですが、ITの魅力にひかれて、この会社に入りました。ただ、意図せず、今は、AI×一次産業の掛け算、特に養殖業の分野で人手不足であったり、デジタル化が進んでいない領域の課題解決に取り組んでいます。今は、魚群による魚病の予兆などに、部門として取り組んでおり、難しいことばかりで、なかなか簡単に成果が出るものではないですが、とてもやりがいを感じています。

ーーなるほど、期せずして学生時代から興味のあった分野と現業が結びついたのですね。また、横町さんは会社の中でも新しい働き方を積極的に取り入れていると伺っています。

横町:新しい働き方という文脈では、近年「ワーケーション」に会社のメンバーと取り組んでいます。スタートした時は、たった一人で実践していたのですが、興味を持ってくれそうな人を探して、お誘いしてチームを作り、会社の上層部に話を通して、今年に入って秩父と鹿児島でワーケーションを実施しました。

ーー会社員としても、積極的にユニークな働き方を実践されていますね!

横町:コロナでコミュニケーションの量が減っていた同僚同士が、働く場所を変えて会話が弾み、一緒に露天風呂に入りながら仕事の話をしているのを見て、とても嬉しく思いました。社内でも少しずつ仲間が増えてきたので、活動の輪を広げていきたいと思っています。いずれは、会社の制度として導入するところまでを目指しています。

それ以外にも人材育成の側面で、スパイスアップジャパンの豊田さんと連携させて頂き、ミッショングローバルオンラインというプログラムを導入して変革人材の育成に挑戦してみたり、来年度からは新しい越境学習のプログラムも社として参画できないかと思って準備しています。

協働日本で働く前は、ここまで積極的に会社を変えたいと思って行動するタイプではなかったので、協働日本に参画して、自分自身もだいぶ感化されているなと思っています(笑)

協働プロとしての活動からの学びを本業に還元

ーー会社員を続けながら、複業として協働日本に参画している横町さんですが、こういった働き方や得られた知見などを、周囲のメンバーに伝えることもあるのですか?

横町:NECは申請すれば複業OKなので、協働日本で働いていることはオープンにしています。実は部門のメンバーの数名に、協働サポーターとしてプロジェクトを支援してもらっていますし、協働プロの活動を通じて学んだことは、部門のみんなに共有しており、協働プロとしての活動は積極的に社内に還元しています!

周囲にはエンジニアが多い環境なので、こうして関わってくれるメンバーにとっても、マーケターや事業開発、クリエイター、Webデザイナーなどからの学びは、今の組織にはない考え方が多く、良い学びになっていると思いますよ。

あのとき思い切って飛び込んだから今の自分がある

ーー横町さんが協働日本に参画するきっかけはどんなものだったのでしょうか?

横町:NECの同僚から協働日本代表の村松さんを紹介されたことがきっかけです。

ちょうど村松さんが協働日本を立ち上げて独自のスキームで地域企業の伴走支援事業を始めようとされていたタイミングだったこともあり、会社員としてこれまで培ってきた経験を活かして、複業という形で「金沢の老舗企業を一緒に伴走支援しない?」と誘ってもらえたんです。

それが協働日本としても最初の協働事例でもある、石川・金沢で1875年の創業から140年以上続く、かぶら寿しで有名な老舗の発酵食品専門店の四十萬谷本舗さんとのお取り組みでした。そこから、四十萬谷本舗さんの抱えていた課題に応じて編成された、協働プロによるプロジェクトチームの一員として協働日本に正式に参画し、伴走型支援に取り組むことになりました。

ーー村松さんとの出会いが、地方を元気にしたいという想いを実現できるきっかけになったんですね。四十萬谷本舗さんとのお取り組みは今も継続しているのですか?

横町:はい、今も継続的にお取り組みさせていただいております。初めて四十萬谷本舗さんを訪問した時、先方が冬の忙しい時期だったこともあり、朝5:00に顔合わせの挨拶をしたのを今でも覚えています(笑)

そこから自分自身、経営者のために一生懸命提案を考える中で本当に成長させていただきましたし、実際に現地に行って、仕事を通じての繋がりだけでなく、いち友人としても繋がらせていただきました。今振り返っても本当に思い切って飛び込んでよかったと思います。

もともと、NECソリューションイノベータで働いている中で、漫然と地方を元気にしたいとずっと思っていました。会社員として仕事をしている中で日本を見渡して見たとき、地方拠点から少しづつ元気がなくなってきている感覚があり、地方拠点と首都圏での熱量的な差を感じていたからです。

そんな想いを抱えていた私が、行動できたきっかけは「村松さんという面白い人に誘われたので、そこに飛び込んでみよう」というシンプルな話だったのです。それでも一生懸命に取り組んだことで、「地方を元気に」という長年の想いを行動に移すことができました。悩んでいる人はどんなきっかけであれ、行動してみることが大事ですね。

デジタル領域のプロとして全国の企業に向き合う日々

ーーここからは、協働日本での活動についていくつかお聞きしたいと思います。横町さんは、どのような分野で地域企業をご支援されているのでしょうか。

横町:本当は得意なIT業務で支援したいところですが、直接的なIT業務での複業は禁止されていることもあり、デジタル領域に関連したデータの見方を支援したり、そこから得られたデータの解釈をともに行うといった支援が中心です。また、デジタルツールの活用支援も専門としています。デジタル領域以外では、協働プロをまとめ、プロジェクトの方針や戦略を策定するプロジェクトマネジメントとしても参画しています。

ーー現在は何件ほどプロジェクトに参画していらっしゃいますか?

横町:現在参画している案件数は11件ですね。デジタル領域の支援と、プロジェクトマネジメントの割合は、半々くらいです。活動自体は、平日の夜と、たまに週末も使って週に1回ペースでの打ち合わせをしています。

ーーなんと、11件!まさに大活躍ですね。ぜひいくつか実際の取り組み事例をご紹介ください。

横町:協働プロによるチームを編成し、その一員として協力しあいながら、パートナー企業とも伴走支援というスタイルをとっていることで、会社員として時間的な制約がある中でも、ひとつひとつの案件にしっかりと向き合うことができています。

取り組み事例のひとつとして、鹿児島県からの委託事業でオービジョンという企業をご支援しています。オービジョン様は鹿児島の農畜産物産直ECサイト「かごしまぐるり」を運営しており、それを伴走支援するプロジェクトのプロマネとして参画しています。「かごしまぐるり」を運営されている大薗順士さんは、想いと行動力に溢れ、生産者様のことをいつも本気で考えている鹿児島最強の育メン経営者です!

そのプロジェクトでは特に、大薗さんが行う現状整理と目標設定、目標達成へ向けた勝ち筋の検討に伴走しています。経営課題の本質を捉え成果を挙げられるよう、プロマネとして一緒に参画しているECサイト運営の知見が豊富な協働プロ2名の力を最大限引き出せるように注力しています。

横町:同じく鹿児島県のサクラバイオという企業と連携して、中高生に「将来働くために役立つIT」を教えるというプロジェクトにも講師役として参画しています。主に、WordPressとデザインを教えており、もうすぐ半年が経過しますが、生徒たちは想像を超える成長を遂げています。

リモートでのレクチャーならではのコミュニケーションの難しさもありますが、講義の前後で雑談をしてくれる子がいたり、講義中はチャットでコミュニケーションをとってくれたりと生徒たちもとても協力的です。実は先日、初めて生徒にリアルに会いに鹿児島まで行きましたが、「あっ、先生って本当に存在するんですね」と(笑)

講義は毎週ありとても苦労しているのですが、所属するNECの後輩たちに手伝ってもらってなんとかやれています。ありがたいことに、会社の後輩たちも、教育の現場で自分たちの経験や知識を活かせることは、普段の業務では経験できない良い経験になっていると言ってくれています。

横町:静岡県の脇役商品という企業が運営しているECサイト「しずまるネット」の運営支援にも取り組んでいます。このプロジェクトでは、デジタル支援担当として、データの見方とか、過去のデータに基づいて、今後の仮説を立てて検証するまでを担当しています。

他の協働プロが主体となって、Webサイトの改善やSEO対策、SNS改善などをおこない、私は、その打ち手によって何がどう変化したかをデータで検証するお手伝いや、仮説立てを伴走支援しています。

ここでも会社の後輩にプロジェクトチームに加わってもらいました。こうしてみると、周囲の力をたくさん借りていますね(笑)

協働日本の取り組みから学べることは本当に多いので、今後も、会社の同僚や後輩で協働日本の取り組みに興味を持ってくれた方とは、是非一緒に取り組んでいきたいと思っています。

データ活用を支援するうちにパートナー企業に変化が

ーー取り組みを通じて、協働パートナー企業の変化を感じるときはどんなときですか?また、どんなときに協働プロとしてやりがいを感じますか?

横町:取り組み先のパートナー企業の一社に「まつさき」という金沢で創業約180年の老舗旅館がいらっしゃいます。その案件には、枦木 優希(はぜき ゆうき)さんがマーケティング領域の協働プロとして、協働日本CSOの藤村昌平さんが事業開発領域の協働プロとして参画しており、私はデータの解釈や分析といったデジタル領域の協働プロとして参画しています。

まつさきのみなさんは、伴走型支援を通じて少しずつご自身で、「お客様は、どういう理由で、まつさきという旅館を選んでくれているのだろうか」とか「お客様は、まつさきをどうやって知ってくれているのだろうか」といった問いを言語化するようになりました。

そうして次第に、データに基づいて「こういう仮説に基づいてこういう打ち手を考えています」というお話をまつさきさんからしてくださるようになりました。

仮説を立てるプロセスの中で、データをどう整理し何を読み取るか、その読み取った結果をどう解釈するかという視点が培われたことで立てる戦略の精度も向上しました。

データはファクトをおさえるためには非常に有効な手段であると思っています。一方で、データは単なる数字なので、その数字をどう解釈するかという点は本当に難しさがありますし、すぐに身につくものではありません。私自身もその難しさをよく知っているからこそ、まつさきのみなさんがそこに向き合って、データ活用に前向きに取り組んでくれたこと自体がとても嬉しかったです。

協働の場を活かして本業にも還元していきたい

ーー横町さんが、協働日本を通じて実現したいことはなんでしょうか?

横町:まだまだ漠然としていますが、先程も述べた「地方を元気に」という想いを実現したいと思っています。その先で、日本が元気になればよいなと思っています。

協働日本での取り組みを通して、日本には本当に良いものがたくさんあって、熱い想いを持った方がたくさんいるということを実感しています。地域の経営者の方はもちろんですが、協働プロも本当に熱い想いを持っている方がたくさんいます。

そういう方との協働を通じて、私の経験が経営者の方々の気づきになればと思っています。自分自身ももっと経験を積んで地域の企業に貢献していきたいと思っています。

あとは、本業にもこの経験をどんどん還元していきたいです。協働日本での私の活動を通して、勤めているNECソリューションイノベータのメンバーも協働日本での取り組みに加わってもらい、私と同じような経験をしてもらうことで、もっともっと良い会社にしていきたいと思っています。

勤め先のNECソリューションイノベータという会社が好きなので、こういった機会を活かして多くのメンバーに成長してもらい、企業としてもさらに成長していってほしいと本気で思っています。

複業という形で二足のわらじを履いている自分だからこそできることだと思いますし、そこから周囲にいろいろな変化を生み出していくことも私の使命ですね。

広い視野で仕事をしたことで自分自身が大きく変われた

ーー協働日本に参画して生まれた、横町さんご自身の変化を教えてください。

横町:私は就職して以来、ずっと一つの企業に勤めているので、他社の経営者の考え方に触れたり、様々なバックグラウンドを持つ協働プロの考えに触れたりすること自体が刺激になっています。会社の中だと良くも悪くも、目の前の業務を通じてしか会社の経営に触れられず、視野が狭くなりがちです。

協働日本の伴走型支援では、経営者と同じ目線に立って、マーケティング支援、事業開発支援、はたまたECサイト業務支援といったプロジェクトなど広い視野で取り組まなくてはいけません。そのため、今まで鍛えたことがない筋肉を日々鍛えている実感があります。

特に、マーケティング支援のプロジェクトに関わったことで、目の前の業務の先にいる、「お客様」のことを考え抜くようになりました。これも自身の大きな変化ではないかと思っています。

あとは、NECソリューションイノベータの方でも変化は大きいと思っています。会社員的な変なことに忖度をしなくなり、自分が正しいと思ったことや、やりたいと思ったことを口に出せるようになりましたし、何よりフットワーク良く行動できるようになったと思います。

社内へのワーケーションの導入へ向けた取り組みであったり、新しい社員教育プログラムの導入であったりと、昔の私ではここまで短期間では行動できなかったと思います。

私自身、まだまだ、「これを掴んだ」とか「ここが成長した」という意味では満足していませんが協働日本の立ち上げから今まで、何とかやれているなという点は自信にもなっていますし、気が付けば11案件をこなしているということも自信になっています。

協働日本には、実績も経歴も申し分ないような、まさに錚々たる協働プロメンバーが所属しています。一方で私は本当に普通の人間だと思っています。

そんな、私が、ここまで変わってこれたのは、協働日本での取り組みがあってのことだと思っており、ぜひ、このような体験を、「自分では無理だよ」と思っている人にこそ、経験してほしいなと思っています。

協働日本は変化し続け、ここからとんでもないことが起こる

ーー本日はインタビューありがとうございました!それでは最後の質問です。横町さんは、協働日本は今後どうなっていくと考えていますか?

横町:うーん。正直よめないですが(笑)少しずつ、毎年変わっていくと思います。

きっと協働する企業もどんどん増えていくでしょうし、チームを組む協働プロも協働日本の取り組みに共感した様々な人が加わってくれると思います。

そうして新しい人が増えると新しい感性が加わって、提供できる伴走支援の幅が広がる。そこから生まれたひとつひとつのユニークな取り組みが、地方を起点として、少しづつ日本全国に広がり、日本が元気に、そして熱くなるのではないでしょうか。きっと良い方向に変わり続けていくのだと思います。

自分のスキルや経験を活かして「xxxを良くしたい!」という熱い想いを持った方は、日本にたくさんいると思っています。ただ、誰かが背中を押してくれたりしないと行動できない方が多いのかもしれません。私も以前はそうでした。

今後、協働日本が地域企業との出会いの場を提供し、想いを形にする後押しができれば、将来とんでもないことを起こせる、とんでもない会社になるのではと期待しています。

横町 暢洋
Mitsuhiro Yokomachi

NECソリューションイノベータ シニアマネージャー

大学卒業後、NECソリューションイノベータ(株)に入社、携帯電話及びパソコン向けソフトウェア開発に従事。2015年から日本電気(株)を 兼務し、サービス事業創出・開発・運営に従事。2019年より組織リーダに就任し、一次産業のデジタルトランスフォーメーションも推進。

専門領域
ITを活用した業務改善・効率化、ソフトウェア開発、サービス事業開発・運営

人生のWHY
人生に失敗はなく、常に挑戦あるのみ

横町 暢洋氏も参画する、協働日本事業については こちら