STORY:株式会社第一塗料商会 永井 宏和 氏 -新規事業戦略をチームで策定。組織能力向上により売上件数142%へ-
協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。 実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。
今回は、株式会社第一塗料商会の代表取締役、永井 宏和にお越しいただきました。 株式会社第一塗料商会は、1965年に創業し、塗料や建築資材の販売を手掛ける老舗企業です。これまで地域の職人や工務店を中心に事業を展開してきましたが、近年は市場の変化に適応するため、新たな販路開拓に挑戦しています。
協働日本の支援を受けながら、顧客戦略を策定し、SNSを活用した発信の強化や新たなターゲット層の開拓に取り組み、売上の拡大を実現しました。
(取材・文=郡司弘明、山根好子)
ターゲットや強みが明確に。「塗屋本舗」が本当に伝えたいテーマを見つけられた。
ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。
永井 宏和(以下、永井): よろしくお願いいたします。 当社はこれまで、地域の工務店や職人の方々を主要な顧客として、自動車向けの塗料や建築塗料の卸販売を主軸に事業を展開してきました。
しかし近年では自動車保有台数の減少などによる市場縮小や、競合他社の存在もあり、新たな販路を模索する必要性を感じていました。そこで、当社が直接塗装工事を請け負う、BtoC向けの事業も開始することになりました。
事業成長に向けて色々と模索している中、地元の地銀が主催するセミナーで協働日本代表の村松さんの講演を聞く機会があり、それがきっかけで伴走支援に興味を持ったんです。
実はBtoC事業を始めるにあたり、ノウハウを知りたくて過去にコンサルタントを依頼したことがありましたが、「コンサル担当者が戦略を考え、当社の担当者が戦略を遂行する」というスタイルが、どうしても私たちの現場の温度感と合わず、成果を出しきれなかったという経験がありました。
だからこそ、協働日本の「一緒に考え、一緒に企画していく」という伴走のスタイルにすっと共感し、ぜひ協働できないかと考えるようになりました。
実際に講演後に村松さんと話をさせていただき、課題に合わせた協働プロをご紹介いただけるというスタイルや、当社がこれから取り組んでいきたいと考えていたマーケティングやSNS発信に強い協働プロの方々に伴走支援に入っていただけると聞き、鹿児島県の事業に応募することにしました。無事採択されて今回、ご縁をいただくことになったのです。
ーー実際に協働プロジェクトが始まってから、どのような取り組みを進めているのでしょうか?
永井:はい。協働プロとしては、四元亮平さんと和地大和さん、協働サポーターとして田中友惟さんの3名のチームで伴走していただいています。当社からは、私と常務、そして担当スタッフがチームとしてプロジェクトを進めています。
そもそもBtoC事業ではかねてより、新規顧客獲得に苦戦しており、何をすべきかもわからない状態でしたので、協働プロジェクトも本当にゼロからのスタートとなりました。
最初に取り組んだのは、ターゲット市場の見直しでした。従来はBtoBとして職人や工務店向けの営業が中心で、BtoCの販路としてはホームセンターに塗料を置くなどの展開を行っていたものの、売上の向上には至っていませんでした。
売れないということは、需要がないとも言えます。そこで協働チームとの対話の中で、ターゲット顧客となりうるのは誰か?どんなニーズがあるのか?を明らかにし、BtoC向けブランド「塗屋本舗」の価値・強みを明確にしていきました。
そこでいざ、これまでの顧客データを整理してみると、塗った品物やニーズもバラバラで、ターゲットが定められないという課題が浮き彫りになりました。
依頼が入るごとに新たにヒアリングをしてニーズを明確にしていくという取り組みを進めることで、ペルソナを整理し、ブランディングメッセージを設定。具体的なプロモーション戦略に取り掛かることができました。
ーー具体的なターゲットや強みについてもお伺いできますか?
永井:もちろんです。「塗装をしてほしい」というニーズには、「古くなったものを塗り替えて綺麗にしたい」というマイナスをプラスにしたいものと、「今あるものを塗り替えてさらに良いものにしたい」という、プラスを生む価値がそれぞれ見出されていることがわかってきました。
また、「選べる色の種類が多いと嬉しい」というニーズや、自分が望む色にできることへの満足感も見えてきました。
ニーズの掘り下げをしていく中で、「ペンライトを塗ってほしい」という、いわゆる“推し活”のお客様が一定数いらっしゃることにも気づくことができたのも収穫でした。これまでは漠然と30〜40代以降の年齢層がターゲットと考えていたため、20代にも“気軽に塗装を楽しむ”体験を提供できることがわかったのは、とても意外な結果でしたね。
塗屋本舗の塗料は見本だけでも2,000色。色を通じたライフスタイルを提案し、「色で生活を豊かに」というブランドメッセージを掲げる当社の価値は、まさに選べる色の多様さ、望む通りの色にできるというニーズと一致した強みであるとわかりました。
そこでこの「色で生活を豊かに」というメッセージを改めて重点テーマにして発信し、より色を楽しんでいただける方を増やしていくことになりました。
ーー「色で生活を豊かに」、とても素敵なメッセージですね。その先のプロモーションはどのように進めていったのでしょうか。
永井:策定した顧客戦略に基づいて様々な施策を講じてきたのですが、一例として、SNSを中心とした情報発信、プロモーション施策を行いました。もともと、「色を楽しむこと」をイメージとして伝えるにはSNSが適していると考えていました。
そこで、協働プロと相談しながらInstagramアカウントを新規開設し、明確になったターゲットとニーズに合わせた内容として、プロモーション動画やインフルエンサーを活用した発信を開始しました。特に「古くなったものを綺麗にして使い続けたい」というニーズは、「色を通じたライフスタイル提案」との相性も良いと考え、小学生の頃使っていた勉強机をリペイントして、大人になっても使い続けられるというイメージの動画を制作しました。
「長く使い続けるための塗装サービス」としてのコンセプトを打ち出すことができ、「色で生活を豊かに」というメッセージも自然に伝わる内容になったと感じています。
売上件数142%へ。組織の力が強くなり、問い合わせを受注に繋げられるように。
ーー協働を通じて得られた成果や変化についても教えてください。
永井: 一番大きな成果は、売上件数の増加です。プロジェクト開始前と比べて、注文件数は約40%増加しました。
これは複合的な要因が背景にはありますが、何より伴走支援を通じて、スタッフが成長してくれたことが大きいと考えています。
実はプロジェクト開始当初、ミーティングの中で当社メンバーから積極的な意見があまり出てこない場面も多くありました。しかし協働プロの皆さんは、気長に優しく、丁寧に発言を促しながらスタッフの言葉を引き出してくださいました。
スタッフからすれば、突然始まった外部のプロ人材とのプロジェクトで「なぜこんなことをするのか?」という状態だったと思います。
それでも、毎週のミーティングでお題を出され、1週間考えて次の週に発表するというサイクルを繰り返す中で発言が増えていきました。発言が増えることで、自主性や責任感も芽生えていったように感じています。
このように、メンバーに課題を与え、「どんなことができるだろうか?」と自ら考え、翌週に答えを出すというプロセスを見て、「伴走とはこういうことなのか」と実感しました。
社内でもこうしたコミュニケーションを広げていきたいと感じましたし、プロジェクトに関わった常務からも「組織論を学べた」との言葉があり、経営陣にとっても学びの多いプロジェクトでした。
スタッフはただ指示されたことをこなすのではなく、目的意識を持って業務に当たり、目的に対してどのような手法が効果的かを自ら考えるようになりました。こうしたスタッフのスキルアップが、顧客からの問い合わせを確実に受注につなげていく結果に直結したのではないかと考えています。
そこに、SNSを通じた露出による認知拡大が追い風になりました。
ーー協働を通じて組織が強くなったことが、成功要因だったのですね。
永井: 塗り屋本舗の顧客と向き合うという一連のプロセスを通じて、ターゲットや強みだけでなく、私たちが目指したい未来も明確になりました。
これから向かっていく方向を、協働の取り組みの中で言語化できたことは、本当にありがたい成果でした。
あらためて、目指す方向性や戦略を言語化できたことと、顧客に向き合ったことで社員ひとりひとりが主体的に取り組めるようになったこと。この2点が、今回の伴走支援による大きな成果だったと感じています。
業績面での成果については、まだこれからに期待したい部分もあります。今後は、SNSの発信から部屋の壁や外壁塗装の仕事につながるような導線づくりや、発信も続けていきたいと思っています。
実際に塗装を体験していただける機会をつくるなど、やりたいことはたくさんありますので、ここからさらに1年間、協働プロジェクトを継続させていただく予定です。
難しいテーマにも外部プロ人材と共に考え、共に立ち向かっていく「協働」スタイルの魅力。
ーー今回社外プロ人材との取り組みを通じて、率直にどのように感じられましたか?
永井:最初に村松さんの講演を聞いたときから、外部の人材を活用してチームをつくるという座組みがとても素晴らしいと感じていました。
やはり「餅は餅屋」であり、さまざまな分野のプロ人材が複業という形でプロジェクトごとに関わってくださること自体、非常に貴重な経験になったと思います。
週に一回というペースも、適度に「考える時間」をいただけるので、ベストな時間配分でした。協働プロは、その知識や経験だけでなく、皆さんとてもお人柄が良く、プロジェクトは終始和気あいあいと進んでいきました。
与えられた正解や戦略を強制するのではなく、常に「共にやっていきましょう」「一緒に考えていきましょう」「一緒に作っていきましょう」というスタンスで関わってくださったことが、当社には特に合っていたと感じています。
ーー今後、このような外部のプロ人材との取り組みはさらに進んでいくと思われますか?
永井:時代の流れとして、間違いなく広がっていくと思います。以前は「原則副業禁止」という会社も多く、このような取り組みは考えられませんでしたが、今では柔軟な働き方によってプロ人材の活躍の場が広がっており、とても良いことだと感じています。
協働日本との取り組みは、本音を言えば競合他社には教えたくないほどですが(笑)、親しい経営者仲間にはぜひこの伴走支援の良さを伝えていきたいですね。さまざまなプロ人材が、いろんなテーマ・角度で伴走されていると伺っており、幅広い悩みを網羅できることも協働日本の強みではないでしょうか。
ーーそれでは最後に、協働日本へのエールも込めて一言メッセージをお願いします。
永井:まずは、何より感謝をお伝えいたします。伴走というスタイルは他にはなく、「共に考え、共に作る」という「協働」のスタイルの素晴らしさを痛感しました。
協働プロの皆さんのプロジェクトの進め方は、社内でのチームの動かし方にも通用する要素が非常に多くありました。目的意識の共有、ゴールに向けた方向性、ストーリーの共創などを通じて、メンバーが前向きに成長してくれたことは、本当に感動的でした。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!
永井:ありがとうございました!
協働日本 令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子もnoteでもご紹介しています。
株式会社第一塗料商会様にもこちらで本プロジェクトをご報告いただきました。

永井 宏和 / Hirokazu Nagai
株式会社第一塗料商会 代表取締役社長
協働日本事業については こちら
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