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STORY:株式会社栄電社 川路氏・坂口氏 ― 発売から1年で顧客は7倍、サステナブルな地域資源「CASパワー」商品化の軌跡 ―

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社栄電社の川路氏・坂口氏にお越しいただきました。
株式会社栄電社は鹿児島県に本社を構え、計測・制御・情報通信機器などの分野で幅広く事業を展開しています。
その中で、地元の焼酎産業と密接に関わる中、焼酎製造過程で大量に発生する「焼酎粕」の活用に新たな可能性を見出しました。

インタビューでは、協働日本との取り組みを通じて見えてきた地域資源の価値と、「焼酎粕」を乳酸発酵させた商品「CAS(カス)パワー」の事業展開に向けた思いを語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

焼酎を造る過程で生まれる「焼酎粕」

地域資源としての「焼酎粕」プロジェクトの商品化へ

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。

川路 博文氏(以下、川路): よろしくお願いいたします。協働日本との出会いは、2022年9月に県の支援事業に応募したことがきっかけです。事業が無事採択され、協働日本さんによる伴走支援がスタートしました。それから2025年1月までの約2年半にわたり、継続的に支援を受けてきました。

坂口 研三氏(以下、坂口): 弊社は計測機器や制御システムを手掛ける会社ですが、焼酎メーカーさんともお付き合いがあります。その中で、焼酎を造る際に大量に出る「焼酎粕」という副産物の存在を以前から知っていました。

焼酎粕は、蒸留後の液体や固形物が混ざったもので独特の香りや栄養分を多く含みます。従来は家畜の飼料や肥料として利用されてきましたが、需要減少や処理コストの増大により、焼酎メーカーにとっては負担となっているのが現状です。

「毎年大量に出る未利用の焼酎粕を何とか活用できないか」ということで、2017年からこの焼酎粕を活用するプロジェクトを開始しました。2019年には経産省の事業認定を受け本格的に事業化に取り組んでいたのですが、私たちには商品化や販路拡大といったテーマにおける経験がなかったので、ちょうど県の支援事業でアドバイスがもらえるのならと応募しました。

川路: 最初は、「伴走支援」という仕組みについてもあまりピンときていなかったのですが、何度か協働プロとの打ち合わせを重ねていくうちに、弊社の事業にはぴったりの支援の形だと感じるようになりました。

焼酎粕から生まれた「CASパワー」は、生物や植物の成長促進に寄与する機能性飼料

年単位のテストマーケティングと調査を通じて出た成果から、商品化、有償販売のスタートへ

ーー実際にプロジェクトがスタートしてからは、どのように取り組みが進んだのかお聞かせいただけますか?

川路: はい、一番最初は商品化するための課題の洗い出しからスタートしました。商品化の方向性の検討やターゲットの絞り込み、販売方法のアドバイスなど、段階を追って協働プロにアドバイスをいただきながらプロジェクトを進めていきました。
協働チームには、協働日本CSOの藤村昌平さん、横町暢洋さんを始め、2年半の間で様々なプロ人材の皆さんに入っていただきました。

坂口: 商品化の方向性の中では価格設定を決めることや、ターゲットへのアプローチ方法を考えることは特に難しかったですね。これまで私たちは営業やマーケティングといったことを経験したことがなかったので、漠然としていた考えを、協働プロの皆さんとの会話を通じて整理していただきました。

ーープロジェクトを進める中で、テストマーケティングや調査も進めていったのでしょうか?

川路: はい。「CASパワー」は前述の通り、焼酎粕を使った飼料・肥料です。そこで、実際にフィールド調査として、実際に農家の方や魚の養殖業者の方などに「CASパワー」を使っていただき、ターゲットを絞り込んでいきました。初期に試したのは、酪農(乳牛)、魚の養殖における飼料としての活用でした。調査には約1年かかるので、並行して野菜などの肥料として、肉牛の飼料として、など複数のテストを実施しています。

業態や価格感のマッチ度などを鑑みて、現在は魚の養殖、肉牛の育成における飼料としての利用、そして農家さんの作物の植物活性剤としての利用をターゲットに定めています。

ーー1年間とは…検証にはどうしても長い期間がかかるのですね。

川路: はい。どうしても作物の収穫や、実際に各種飼料として利用して出荷できるようになって、サンプルデータをいただき品質にどのように影響が出たかを計測するまでには時間がかかります。例えば、農業利用ではスナップエンドウやカボチャなどの栽培期間中に250倍希釈液を灌水として3回程度使用することで収穫量が増えたり、酪農利用では、乳牛1頭に毎日280mlのCASパワーを給与することで、年間平均で乳量が5.6%増加するという結果が得られています。

こういった成果と、実際の各種作物や乳・牛肉などの販売価格のバランスも鑑みて、「CASパワー」の価格についても決めていきました。

いくつものテストマーケティングを経て、2024年4月からは有償販売をスタート、販売を拡大するフェーズに入っていきました。

実際に飼料としてCASパワーを与え、収量や品質をチェックする

調査結果や受賞を裏付ける、口コミの輪が広がり1年間で顧客は7倍超へ

ーープロジェクトを通じて、具体的にどのような成果や変化がありましたか?

川路: 実際に商品として販売をスタートすることができたことはもちろん、2024年4月の段階では利用者が6事業者だったところから、2025年4月現在では45事業者にご利用いただけるようになりました。

ーー1年間で顧客が7倍以上になったのはすごいインパクトですね。

川路: ありがたいことに、地域の事業者の方同士の口コミで広げていただいていて、運もよかったと感じています。

その他にも、協働日本を通じて多様なネットワークが広がり、様々なところで講演させていただきました。その講演を通じて「CASパワーを試してみたい」というご縁に恵まれることもありましたし、2023年には鹿児島県環境保全活動優秀団体表彰、2024年にはかごしま産業技術賞奨励賞をそれぞれ受賞しました。賞をいただいた時はとても驚きましたが、協働日本の皆さんの後押しもあり、様々な場所で宣伝させていただいたことも影響しているのではないかと思っています。

実際、受賞により県からのお墨付きをいただいた形になり、営業の際にもアピールしやすくなっています。

川路: 実際に伴走支援を受けてみて、自分にとって大きかったことはセッションでさまざまな話を聞いてもらい、それに対してさらに質問をしてもらうことで頭の整理ができたことだと感じています。今の状態を聞いてもらうことで、頭の中できちんと整理をし、ネクストステップについて的確にアドバイスをしていただくことの繰り返しです。

聞き役になっていただけたことも本当にありがたく、「今週はどうでしたか?この前話していた件はどうなりましたか?」など、進捗を報告しなくてはという意識が働くので、セッションに合わせてスケジュールを組んでいくようになったのもメリットでした。
また、協働プロとのやりとりを通じて坂口と目線や意識のすり合わせができて、社内のコミュニケーションにも良い影響があったように感じますね。

坂口: 我々は営業については素人です。協働プロとのセッションを通じて、プロ人材の目の付け所を学び、アドバイスをいただいて、営業の一連の流れを具体的に知ることができました。まだまだ完全に実現していくところまでは届いていないかもしれませんが、それでもこれから何をすれば良いのか、目標や計画は立ったように思います。

ーー協働プロとのやりとりの中で印象的だったことはありますか?

坂口: 約3年間、いつも「ものが良い、筋がいい」、「CASパワー自体の取り組みの方向性がいい」と言っていただいていました。「褒めて育てる」を体現していただいていたと思います。時にもどかしく感じることもあったかもしれませんが、励まされながら育てていただいたという印象です。

川路: 支援してくれた協働プロの皆さん自身が「CASパワー」のファンになってくださって、いつも褒めていただいていたこと自体が私たちの自信に繋がっていましたね。

坂口: 一昨年30t製造した「CASパワー」ですが、昨年は50t、そして今年は100tの製造販売を目指しています。協働日本の皆さんの期待に応え、少しでも売れる商品にしていきたいです。

協働日本でつながる活気。エネルギーを集結させたような場作りが魅力

ーー社外のプロ人材と実際にプロジェクトに取り組んでみて、どのようなことを感じたかお伺いできますか?

川路: 副業的な働き方があることは知っていましたし、コンサルティングを受けたこともありましたが、協働日本の伴走支援という形は初めて知りました。

先ほどもお話ししましたが、協働日本の伴走支援では、プロ人材が「聞き役」にもなってくれて、一緒に取り組めることが大きな特徴だと感じました。外に出てお客さんに聞いた話を協働プロの皆さんに伝え、整理しながら「この方向でいこう」など方針を一緒に決めていきました。時間はすごくかかりましたが、その時間にもじっくり付き合っていただけたことが良かった。私たちの「CASパワー」の事業には特に伴走支援が向いていたのだと思います。

坂口: 弊社と同じように、商品開発をしていて、販促計画をこれから作っていく、切り開いていく必要がある企業の方には、伴走支援の形が合っているのではないかと思います。

ーーありがとうございます。最後に協働日本に一言メッセージをお願いします!

坂口: 協働日本の皆さんには、伴走支援だけでなく、同じようにプロジェクトに取り組む方達と交流できるイベントなどの機会を作っていただくなど、感謝していることがたくさんあります。

事業を始められる方、進めておられる方はやはり元気な方が多い印象があります。その中でも特に協働日本のイベントに集まる方達の活気はすごく、皆のエネルギーを集結させているような場になっていました。

我々も、そういった機会に度々パワーをもらってきました。これから頑張ろうとする人も、そういう強いエネルギーに助けられることがあるのではないかと思っています。
これからもイベントには参加していきたいですし、若い人の力を見てもっと勉強していきたいと思っています。

川路: 協働日本の皆さんには、今後もよき相談相手として、また色々と相談に乗ってもらいたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします!

ーー本日はありがとうございました!


川路 博文 / Hirofumi Kawaji

㈲栄電エンジニアリング 取締役本部長

鹿児島市出身。コンピュータソフト開発、ビジネス専門学校教員を経て、㈱栄電社 バイオ環境事業部に入社。
排水処理における窒素除去装置の開発をはじめ、環境技術分野の研究・開発に携わっている。

坂口 研三 / Kenzo Sakaguchi

株式会社栄電社 バイオ環境グループ顧問

1954年生まれ、鹿児島市水道局で主に上下水道の水質管理に従事。
その後、(株)栄電社バイオ環境グループで水処理装置や焼酎粕の有効利用技術の開発を担当。
スポーツ大好き。若い頃は野球やマラソンに親しみ、50歳を過ぎてからはヨガで心身を鍛えています。

協働日本事業については こちら

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VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


-VOICE:富田 慎司氏 -複業人材と地域企業の「協働」を起爆剤として、世界に挑戦する日本企業を増やしたい-

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。今回は、協働日本でマーケティングのプロとして地域企業の伴走支援を行う富田 慎司氏のインタビューをお届けします。

これまで、外資系の消費材メーカー、日系の飲料メーカーでそれぞれ活躍し、主力ブランドのマーケティング戦略を担ってきた富田氏。通っているMBAの授業や自身の体験をきっかけに、これから先も日本の企業が世界に伍し続けていくため、その事業の成長を自ら支援していきたいという想いを抱いたことが、協働日本に参画したきっかけと話す富田氏。

協働を通じて生まれた支援先の変化やご自身の変化だけでなく、今後実現していきたいことなどを語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

マーケティングの力で、世界でもっと勝負できる日本企業を増やしていきたい。

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、富田さんの普段のお仕事やこれまでのキャリアについて教えてください。

富田 慎司氏(以下、富田):よろしくお願いいたします。大学卒業後、外資系消費財メーカーでキャリアをスタートし、現在は日系の飲料メーカーでブランドマーケティングに携わっています。

ブランド戦略からマーケティングコミュニケーション開発、ブランド財務管理など、ブランドマーケティング業務の全てを担っています。

ーーずっとブランドマーケティングに携わっているのですね。学生時代からご興味がおありだったのでしょうか?

富田:そうですね、ブランドというよりはマーケティングに興味があったんです。

私は、オーケストラやオペラが好きなんですが、その趣味を通じて「アートマネジメント」という概念に出会ったんです。芸術文化を広げ、利益を上げていくことに大きな課題を抱えているケースが多いんです。でも、そういった芸術団体も自分たちで稼ぐ力をつけないと、政府や公共団体に頼ってばっかりじゃダメだということも同時に言われていて。

そんな、芸術できちんと稼ぐ「アートマネジメント」の存在と、その一つの手法として「アートマーケティング」という考え方があることを知ったんです。「オーケストラも、チケットをどう売っていくのかを考える時代なんだ」とびっくりしたんです。

それがきっかけで、自分の好きなものを人に届けて、好きになってもらう、幸せになってもらう仕組み作りって、面白そうだな、ワクワクするな、と思ったのが始まりですね。

ーー外資系企業から日系企業へ転職されていますが、何か転機があったのですか?

富田:はい。現在MBAに通っているのですが、授業の中である教授が「日本企業の競争力は海外に比べて著しく低下している」と話していたんです。

株価の低迷や、グローバル市場でのシェア減少なども事実としてあります。最近では海外からの移住者や労働者も増えていますが、それによって日本の良い文化が薄れていってしまっているのではないかと懸念も持っていて、「日本企業にもっと頑張ってほしいな」と思うようになっていきました。

実際に外資系企業でずっとマーケティングに携わってきた中で、日本企業の多くはマーケティングに課題があると思うことも多かったんです。USJを立て直した森岡毅さんも「マーケティングで日本の企業を強くしていく」とおっしゃっており、マーケティングにより日本企業のポテンシャルをもっと引き出せるのではないかという肌感もあったので、自身の強みであるマーケティングの力を日本企業に還元していきたいと思ったことが転職の背景にあります。

ーー続いて、富田さんが協働プロとして協働日本に参画されたきっかけについても教えていただけますか?

富田:今お話しした通り、「マーケティングの力で、日本企業を世界に伍する企業に成長させていくお手伝いがしたい」と、日本企業の未来について真剣に考えるようになっていたところ、協働日本代表の村松さんが、中小企業に伴走できるマーケティング人材を探していると、共通の知人から紹介を受けたんです。

最初はオンラインでのミーティングで、協働日本代表の村松さんとCSOの藤村さんとお話しさせていただいたんですが、大企業での豊富な経験を持つお二人が、目を輝かせながら中小企業支援についてお話しされていることがとても印象的で。こんなに夢中になれる仕事ってあるんだ、面白そうだなと感じたのが第一印象でしたね。

日本企業の成長を支援したいと考えた時に、日本企業の99.7%は中小企業なわけです。でも、じゃあ私が地方の中小企業に転職するのか?と言われれば、それはやっぱり容易ではないですよね。

なので、そういうところに伴走支援という形で入っていくビジネススキームも面白いなと感じましたし、自分のマーケティングスキルでどれだけ中小企業のお役に立てるのか、武者修行じゃないですけど知りたいなと思うところもあって、参画を決めました。

プロジェクトが徐々に自分事になる。その閾値を超えた瞬間、チームが動き出す。

ーー続いて、富田さんがこれまで参画されてきたプロジェクトについて、詳しく教えてください。

富田:これまで、鹿児島県の企業、株式会社オキスさんとワカマツ自動車さんのプロジェクトマネジメント、株式会社栄電社さんのプロジェクトに協働プロとして伴走に入らせていただいています。最近は石川県の企業のプロジェクトもキックオフしたところです。

ーーそれぞれのプロジェクトについて詳しく教えていただけますか?

富田:はい。まず1社目の株式会社オキスさんは、農産物の生産、加工、販売、物流等を一貫した商品として提案流通を行っている農事組合法人です。「ベジブロスムージー」という健康食品事業の立ち上げのプロジェクトを支援していて、もう2年になりますね。

もともと「ベジブロスムージー」の構想はあったのですが、製品開発や販売戦略など具体的なプロジェクトはスタートしていない段階だったので、伴走支援に入らせていただくことになりました。

初年度はアイディアのブラッシュアップからスタートし、商品開発やブランディングも行いました。
実際に消費者インタビューを実施してターゲット層のニーズを掘り下げたり、ニーズに合わせたパッケージデザインを作るために複数のクリエイティブブティックにデザインブリーフを作っていただいて比較検討したりと、本当にいわゆる「マーケティング体験」と「事業開発」を一通り実践した形ですね。

今年度は完成した製品をどのように販売していくか、マーケティングのコミュニケーションアセットを作って、どこでどうやって展開していくのかなど、マーケティング戦略の具体化に注力しているところです。ここまでやっている中小企業は多くはないんじゃないかなと思えるほど本格的なブランド戦略を描いています。

ーー本格的な販売フェーズに入っているのですね。楽しみです。次にワカマツ自動車さんはいかがですか?

富田:ワカマツ自動車さんは今年度からの新しいプロジェクトで、現在進行中です。

マーケティング戦略とブランディング戦略の策定に取り組んでおり、まずは「自分たちはどのような会社になりたいのか」「強みは何か?」を考えることからスタートしました。内外環境の分析も同時に始めたのですが、外部環境に関してはリサーチを行いながら、自分たちがどういうサービス設計をするのか、マーケティングとしてはどこをタッチポイントとして顧客とコミュニケーションをしていくのかということを検討しています。

ーー伴走支援を通じて、協働先にはどのような成果や変化が見られましたか?

富田:特に印象的だったのは、オキスさんでの変化です。当初、リーダーである営業部長が主導する形で進んでいましたが、他のメンバー3人はどちらかというと受け身で、なかなか意見を言えない状態でした。ある時、たまたま営業部長が出張で不在のミーティングがあり、せっかくなので「皆はこのプロジェクトをどうしたいのか」腹を割って話し合う機会を作ったんです。すると、実は自分たちも色々思うことはあったんだけど、それをチーム内で共有しきれてなかったという話が出てきました。

こちらからは、その課題を解決するための手法について、アイディア出しや提案はせずに、「どうすれば解決できると思いますか?と問いを投げかけてみました。プロジェクトチームのメンバー同士でちゃんと納得しながら進めたいみたいなことをおっしゃっていただいて。

そこからは実際に、2日に1回くらい、30分〜1時間くらいの時間このプロジェクトについて話をする時間を取るようになり、今日はこういう話をみんなでして、納得しきれていない人やところがないか、意見を出しあうように変わっていったんです。 しかもその会議でこういう話をしたという結果も協働チームのLINEグループで送ってくれるようになりました。

ーーまさにチームの文化そのものが変わった瞬間ですね。

富田:はい。こうして何回かミーティングを重ねていって、ある閾値を超えると協働先の社員のみなさまが突然「覚醒」される瞬間というのを何度も目の当たりにしているのですが、その時に成長していただいている実感を得られるのは本当に嬉しい瞬間です。

私の感覚として、プロジェクトが「やらされ仕事」から、「自分がやりたいこと」になった時に閾値を超えていく印象があるなと思っていて。

協働プロジェクトでは支援先の部長や、経営人の方と話すことはたくさんあるのですが、その人1人とやっているわけではなく、伴走先にもちゃんとプロジェクトチームがあるんです。ただ、そのチームも「社長から言われたから」「部長からの指示通りにする」といったような感じで、メンバー一人一人が自分事として動いていないと思う時は、プロジェクトの進捗自体も遅い印象を受けるんです。

そういう時にはメンバーの方達にも「そもそもなんでこのプロジェクトをやろうと思ったんですか?」など、本当に根本的な部分をきちんと問いかけ直すようにしています。「今って本当にこの方向でプロジェクト進んでいるけれどいいのかな?」みたいな、原点を ずっと問いかけ直し続けると、徐々に「私ってこういうことがやりたかったんです」というインサイトがポロっと出てくるようになります。

例えばオキスさんのチームメンバーからは「本当は野菜の力で、女性の活躍を応援・推進したい」という本音が見えてきて、グッと前に進むようになってきました。それまでは、社長の方針や、健康食品についてアドバイスをいただいていた外部の方の意見に従っているといった雰囲気がどこかにあったのですが、やっぱり自分たちがこの商品にどういう思いを込めているのかというところを問いかけ直して、自分事化できた時に、「私はこうしたい」「こうだと思う」というような主体的な発言や議論が増えていきました。

自発的なミーティングが増え、同時にプロジェクトに対して自分の気持ちを言語化するようにもなり、どんどんチームとして動きが良くなって行ったことを実感しています。その結果が、製品化であり、ブランディング、販路の拡大と今の進捗に繋がっていっています。

協働日本は能動的な企業を増やす「触媒」。


ーー協働プロとして活動されるようになってから、富田さんご自身の変化はありましたか?

富田:そうですね。本業での仕事の仕方に影響があったこととしては、色んな人にちゃんと話を聞くようになったことかもしれません。これまでは、チームメンバーにブリーフィングをして、「いつまでにこれをやってね」と頼みながら、自分で判断して仕事を進めていたんですが、他の人の目線、客観的視点を聞くことがかなり増えました。

というのも、プロジェクトにコミットしていない人に意見を聞いても、専門性や背景の認識があまりない方のフィードバックは「個人の感想」でしかないと思っていたところがあったからなんです。

でも、オキスさんとのプロジェクトの中で、普段マーケティングの業務をしていない方と試行錯誤しながら進めていると、自分だけではカバーできなかった新たな視点がある───視点の多さが武器になるといったことに気づくことができたんです。

多角的な視点から見落としなくすることでプロジェクトを強くしていくことができることに気づきました。

一人だけで取り組むよりも、みんなで同じ方向を向いて船を進めていく方が、船は強く早く進む。協働を通じて一人一人の強い思いがビジネスを加速させていくことの重要性を改めて実感しています。

ーー富田さんは、これから協働日本でどんなことを実現して行きたいですか?

富田:私の目標は最初にお話しした通り、「日本企業が世界で戦える存在になること」です。国内市場が縮小する中、海外展開は避けられないけれど、いきなり海外に挑戦するのは難しい。まずは国内で基盤を作り、脚力を鍛えることが重要です。協働日本の伴走支援がその助けになればと思っています。

私は今、MBAでも「日本ブランドが海外市場でどのように受け入れられるか」を研究しています。例えば、ターゲット国ごとに異なる消費者行動を分析し、企業がどの市場でどう勝負すべきかを具体的に示せるような指針を作りたいと思っています。

個人としても協働プロとしても日本企業を支援することで、関わった企業の皆さんが飛躍的な成長を遂げ、世界に誇る企業として活躍していけるようにしたいです。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本が今後どうなっていくと思われるか、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

富田:協働日本は、地域企業で働く社員皆が力をさらに発揮できる環境を共に創り、自立した企業に成長するための「触媒」だと考えています。そして、協働日本の支援を受けた企業が成功し、その成長を見た他の企業が「自分たちも挑戦してみよう」と能動的に動く未来につながるといいなと思うんです。

複業人材と地域の中小企業が混ざり合う「協働」が起爆剤となって、日本の中小企業ももっと頑張れるんだ、と、自分達で奮起して成長していけるようになったらいいですよね。

そういった風潮が広がれば広がるほど、日本全体が活性化し、世界に挑戦できる企業が増えていく。能動的な企業を作る触媒として協働日本がある。そんな未来に繋げられたらと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

富田:こちらこそ、ありがとうございました!

富田 慎司 / Shinji Tomita

慶應義塾大学法学部卒業後、2015年、ユニリーバ・ジャパンへ入社。
入社後、一貫してマーケティング部門に従事し、ヘアケア、スキンクレンジング、ホームケアなど多くのカテゴリのマーケティング責任者を歴任。
ユニリーバ・ジャパンにおけるブランドマネジャーとして、新製品開発・企画立案、ブランディングを通した事業の成長を牽引。

現在は日系飲料メーカーにて引き続きブランドマーケティングに携わる。

協働日本事業については こちら

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NEWS:鹿児島県庁での新産業創出ネットワーク事業報告会の様子をご紹介いただきました(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)

「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会の様子をご紹介いただきました

2023年2月に鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会を株式会社WHEREに取材いただき、WHERE社の運営する地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MBERSHIP」にてご紹介いただきました。

副業兼業を越えた“協働”の可能性!外部人材と伴走し事業課題を解決 | LOCAL LETTER

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、鹿児島県内12社の地域企業様の伴走支援を行っています。

先日2月17日(金)、事業の報告会を鹿児島県庁にて実施いたしました。
協働日本と約7ヶ月取り組みを行った12社の事業者さまの中から4事業者様に発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表いただきました。

記事では、協働日本が協働で生み出した変化や、実際の伴走支援の雰囲気などをご紹介いただいたほか、副業や兼業を超えた「協働」という新たなスタイルについてもご紹介いただいております。

詳細についてはぜひ、LOCAL LETTERの記事をご参照ください。

2022年7月にも「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、協働日本が大切にしている「協働」のプロセスや、実際の取り組み事例について取材いただきました。
NEWS:「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて協働日本の取り組みをご紹介いただきました | KYODO NIPPON

各事業者さまごとのご紹介記事

副業ではなく協働で事業推進。伝統と時代の変化で葛藤した窯元の事例 | LOCAL LETTER

副業より協働で自立支援。活用が追いつかない”大量の糞尿”問題に挑む | LOCAL LETTER

副業以上の関わり、協働で成果を出す。長年の課題”産業廃棄物”へ挑戦 | LOCAL LETTER

副業ではなく協働で外部人材登用。飲食店の強みを活かし新事業成功へ | LOCAL LETTER

ご紹介した事業について

協働日本事業

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鹿児島で熱い「協働」が続々誕生中!県庁での発表会の様子をご紹介します|協働日本|協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する。|note(外部サイト)


株式会社協働日本は株式会社WHEREと業務提携し、同社が立ち上げた、“地域課題” や “社会課題” の解決に取り組む地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」へパートナー企業として加盟しております。

2022年3月3日|【43団体加盟】SNSでは広く、社内だと狭すぎる。個の時代に“ちょうどいい”繋がりを実現するコミュニティ。|株式会社WHEREのプレスリリース

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは
「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」は、暮らしている場所や個人、企業・行政が持っているスキルや経験に関わらず、地域や社会へ主体的に携わり、変えていく人たちの学びと出会いを提供する場所がつくりたい、という想いで立ち上げた地域共創コミュニティ。
LOCAL LETTER MEMBERSHIP

株式会社協働日本 協働日本事業 の詳細ついては こちら