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VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(後編)『協働を広げ、大きな「循環」へ。私たちが協働プロを続ける理由』 –

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏、同CMOの若山幹晴氏の対談をお送りいたします。
協働日本の創業時から参画しているお二人に、創業当初から現在までの5年間を通して見た協働を通じて生まれた支援先やご自身の変化、協働日本の未来について語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

※本インタビューは前後編にてお送りいたします。前編はこちら

自分では気付いていないだけで、目に見えない「価値」は既にそこにある。

ーー前回に続いてのインタビューとなります。今回はまず、5年間の協働プロジェクトを振り返って印象的だったことについて伺いたいと思います。

若山:そもそも、協働日本でご支援させていただいたサービスはどれも素晴らしいものばかりだったことが印象的です。ものとしては良かったり、素晴らしいノウハウをお持ちだったりというケースばかりでした。その1つ1つが印象に残っています。

ではどうして、そんなサービスや商品をお持ちの企業が支援を求めているのか?と紐解いていくと、お客さんとのアンマッチが発生していたり、サービスの広げ方を変えなくてはいけなかったりするパターンがとても多い。ものやサービスがいいというだけではビジネスはうまくいかない、ということが改めてよくわかります。

藤村:特に、時代を跨ぐ無形資産は、作ろうと思って作れるものではないですからね。私も印象に残っているプロジェクトの1つに、奄美大島の伝統工芸品でもある大島紬のプロジェクトがあります。伴走支援に入って初めて、こういった伝統工芸を取り巻く状況やビジネス環境を知りました。

協働先の一社である、大島紬の織元「はじめ商事」さんでは、長く続いた大島紬という無形資産をどうやったら後世に継いでいけるのかをテーマに、事業のアップデートに真剣に取り組まれていました。大島紬は世界三大織物に数えられる絹織物で、自然の力を借りて30〜40もの行程を経て長期間をかけ作られていて、それが100年以上続いている。この脈々と続く歴史を目の当たりにして、消費財メーカーの中で生まれるプロダクトを日々アップデートし直していくことと、かくも違うのかと驚くばかりでした。

始まった協働プロジェクトの中では、作り手の伝統を残したい気持ちと、顧客の欲しいと思う気持ちが重なる部分はどこかを徹底的に探していきました。

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

若山:人々の強い想いが込められたものは、AIではやっぱりまだ作れない。かけがえのない、素晴らしいものですよね。逆にその素晴らしさにご自身が気づいていないというパターンも多かったように感じます。

私は、経営者の事業そのものへの想いも、ひとつの無形資産だと思っています。たとえば想いの強さで言えば、鹿児島で伴走支援に入らせていただいたAKR Food Companyさんも印象的でした。

AKR Food Companyさんは、黒豚の食肉加工・販売を行う企業でしたが、とにかく黒豚に対する想い、育ててきた豚を余すことなく美味しいと言ってもらいたい想いが強かったです。この想いを軸に新規事業を考えていった時、今までの工程上破棄していたものを、ペットフードにしていこうというアイディアが生まれました。誰にも負けない強い想いを持っているからこそ生まれた事業なんです。

協働の中、ポジティブ会話や空気の中で様々なアイディアが出て、やがてそれが事業の形になり、自分達の想い自体にも価値があるんだと気付いていただけました。それから改めてポジティブな空気づくりを意識してやってきてよかったとも思いました。ポジティブな空気感は、やっぱりプロジェクトの進み具合や成功確率を左右しますから。

STORY:AKR Food Company株式会社 松元 亜香里 氏 -黒豚への強い想いを形にし、付加価値をつけた商品開発の挑戦-

自己認識のアップデートが成長の鍵。その一歩を踏み出す実行力が何よりも重要。

ーー伴走先へのインタビュー「STORY」では、プロジェクトに参加した社員の皆さんの変化もよく話題に上がりますが、お二人から見た協働先の「人の変化」はいかがですか?

藤村:それでいうと、伴走先の皆さんだけでなく、自分自身も成長・変化させてもらっていますね。

直近では、山岸製作所さんの次世代リーダー育成プロジェクトは特に印象的です。次世代リーダープロジェクトは、経営幹部の育成に悩む地域企業様にむけたプログラムで、協働プロによる幹部への伴走とメンタリングによって、改めて自分と会社の存在意義を考え、組織を動かす幹部としての視線の醸成、意識の変革を目指していくというもの。

このインタビューの中でも「事業を作る人を作る」というミッションの中で、人との関わり方が変わってきたという話をしました。まさに、こういった変化のきっかけをくれたプロジェクトが、山岸製作所さんの次世代リーダー育成プロジェクトだったんです。

メンタリングの伴走をする中で、幹部の方が「自分と会社の存在意義」「自分が本当にここでやりたいこと」の意識を持つことができた瞬間を見ることができました。その意識が生まれたことで、会社の中で仕事・チームに対する全体の振る舞いも変わっていく……こういった変化を一緒に体験させてもらったのは大きな経験になりました。

ーーなるほど。一般的に、若い人のほうが柔軟性があって変化しやすいとも言われますが、経営幹部中堅のマネジメント層の変化を実際に見て、必要だと思ったことポイントはありますか?

藤村:経験豊富になってきた中堅ならではだと思いますが、どのように情報を捉え直して、目線を合わせていくかが重要なことだと思っています。「境目」の話とも似ていますが、壁を誤解して捉えていることが多いんです。見えている壁は自分が作り出したものであって、実は周りは壁だと思っていないかもしれない。

そもそも、自己認識と現状認識を俯瞰して把握することは誰にとっても難しいことです。もちろん私にとっても難しい。

たとえば同じものを見ていても、人によって見え方は違うじゃないですか。それぞれの背景や感情の違いがあるので、違うものが見えること自体は当然なんです。そこで、あらためて他人のことを慮るように意識すると、最終的には他人からは自分がどう見えているのか見えるようになってくるんです。

他人の眼鏡を借りて自分を見ることで初めて自己認識がアップデートされる。先ほどの例でいえば、自分の周りに壁なんてなかった、ということに気づくことができるということですね。

プログラムを受けてくださった山岸製作所の奥永さんも、まずは自分自身に向き合うところから始めました。

自分は何者で、何がやれて、何がやりたいのかを整理して、次に仕事でのメンバーとのコミュニケーションの中で、相手が奥永さんの言葉に対してどういう風に感じると思うか?どんな反応、どんな質問が返ってくると思うか?ということを私が質問する形で考えていただきました。

そうすると、自分の言葉に対して他人がどうリアクションするか、徐々に傾向を掴めてくるんですね。つまり、「奥永さんってこういうこと言いがちな人」と思われている、であったり、自分の意見はこう受け止められがちだなみたいなことに気づかされるわけです。そうしていくうちに自己認識も変わっていって、振る舞いやコミュニケーションの取り方もそれに合わせて変えていくことができるんですよね。

STORY:山岸製作所 山岸氏・奥永氏 -幹部の意識変革が地域企業の組織を圧倒的に強くする-

私自身も同じように、協働を通じて「人から見える藤村」を認識することができるようになっていて、藤村ってこういう特性があって、こういうところに得意領域があるよねということが自分自身で分かるようになってきています。

自己認識と現状認識、誰の眼鏡で誰を見るのか、きちんと焦点を当てられるようになることが、その人の成長につながる重要なポイントになると思います。

ーー若山さんから見た「人の変化」についてはいかがですか?

若山:色んなことの境目・垣根がなくなって、働き方も柔軟になったからこそ、最後にものをいうのは実行力だと思っています。例えば、私が担当させていただいていた協働先の大島屋さん。こちらも大島紬の織元さんですが、代表の佐藤邦弘さんが大島紬を織って、奥様の佐藤ゆかりさんが事業を支えるという、ご夫婦で二人三脚の経営をされていました。

品物自体はすごく素晴らしいものを作られているので、あとはどうやってお客様に魅力を知っていただくかという議論をしていました。

魅力を知ってもらう方法の1つとして、写真の撮り方を変えようという案が上がりました。 どうしてもインターネットでのEC販売になってくると、見せ方一つで魅力の伝わり方が変わって、売上にも影響が出ますから。

ゆかりさんは、専門家でもなければ写真の経験もなかったので、魅力的な商品の見せ方をしなきゃいけないことはわかっていても、どうやって改善すればいいかもわからないわけです。そこで、魅力的に見える競合他社を中心に、EC上の写真を色々見て、「これはすごくいいよね」「こっちは安っぽく見えるよね」をいう仕分けををしていきました。その中での傾向を分析して、真似して写真を撮ってみたんです。それに対してさらに具体的に、もう少しシワ感があった方がいいんじゃないか、光の加減はこっちの方がいい、もっと寄った写真がいいんじゃないですか、みたいに相談しながら修正していった結果、今ものすごく写真が上手いんですよ。

これは実行こそがものをいう、のすごくいい例だと思っていて。自分には経験がないから、できないものだと思って行動しない人には多分一生できない。分からないなりにも手探りで、1個1個比較して傾向を見つけて、実際に撮ってみたら光の加減の重要性に気付いて……と、取り組むからこそそこから学びが得られるんです。

大島屋さんの反物の写真

藤村:初めは、ゆかりさんも「どうしたらいいですか?」というところからスタートでしたよね。それに対して協働プロから「もっとこうした方がいいのでは」「ここのシワが気になるね」だとか、「この布は光の反射で色味が変わるから、こっち向きの方がいいんじゃないか」みたいに色々意見を出しながら試行錯誤していったんですが、最後にはゆかりさんの方から「こう思うんだけどどう思いますか?」と自発的に意見が出てくる形に変わっていったんです。やり続けることによって意識も変わっていく。協働先の変化をすごく感じたエピソードの一つですね。

協働日本と壁を越えて「ワンチーム」へ。共に良い循環づくりをする仲間になりたい。

ーー事例を元に具体的なお話をたくさん聞かせていただきました。最後に、協働日本のこれからについて教えてください!今後一緒にプロジェクトをしたい企業の方、協働プロとして参画したい……そんな方達へのメッセージをかねて、一言お願いします。

藤村:これから取り組みをスタートするクライアントの方々によくお伝えしているのは、協働プロジェクトは「ワンチーム」でというキーワードなんです。言うのは簡単なんですが、実際ワンチームでプロジェクトに当たることはとても難しいんです。相当意識しないと、フラットでイーブンな形のワンチームにならないんですよね。 

私もプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトに入るが多いので、貴方と私とか、御社と弊社、みたいな形にせず、できる限り「我々」を主語にプロジェクトに当たっています。我々の取り組むものであり、我々の課題であり、我々の商品であり、我々のアウトプットだ、と一貫してプロジェクトに当たることで最終的にワンチームの状態になるんです。 

これって、私たちが今日ずっと言ってきた、「壁」の話なんですよ。発注元と発注先、中の人と外の人、というように、自らが勝手に壁を作りあう関係性だと、自ずと「これはそっちの仕事」という考え方になって、ワンチームの概念から離れていってしまう。

我々は自ら壁を作りやすい生き物である、という自己認識を持つと、だんだん壁も溶けてなくなっていくんですね。協働日本との関わりの中で、「壁なんてなかったんだ」と気付く人が増えていく。壁のないワンチームでは、自然とネガティブ・利己的・他責ばかりの環境もなくなっていきます。

そうやって勝手に生まれた、作られた壁を越えていった先にある「ワンチーム」を体験してみたい方、それが自分や自分の会社に足りないと感じた方はぜひご一緒させていただきたいですね。自ら変わろうとする企業の皆さんとの協働を私たちも楽しみにしています。

私たち協働日本も、様々な伴走支援実績の中で、どうやったらワンチームになって「We」の概念を会社の中に生み出せるかというノウハウが蓄積出来てきています。協働を通じて、ぜひ体感いただければと思います。

若山:経営をする上でも組織づくりをする上でも、あらゆる観点から選択肢が多いことはやっぱり有利だと思っています。

個人・組織・会社で色んな状況を見て柔軟に、迅速に判断して行動できる人が勝っていくという話にも似ているんですが、私の大事にしている協働日本の「良い循環」の内側に少しでも早く入っていくことが組織の発展にもつながるのではないかと考えています。最初は学ぶ立場でも、徐々に自分達が還元していく側にも成長していく。情けは人の為ならずじゃないですが、それが更にまた自分達に還ってくる。

協働日本の作る良い循環を作り出していく、その一員になることはすごく面白いと思います。協働日本の循環には、協働先の企業や協働プロ───仲間が日々増えていっています。協働から生まれた循環も大きくなって、目の前に広がる選択肢も増えていく。そしてやがて循環が循環を産んでいく構図になります。

いま企業を経営している方も、協働プロに興味がある人も、自分がその循環の一員になってみるとどう変わるのかを考えても面白いかもしれません。今まで思ってもみなかったような、選択肢や戦略が出てくる可能性があるし、「これって自分の強みだったんだ」とか、「うちの会社の本当に重要な無形資産だったんだ」みたいな気づきが生まれたりもします。

協働日本が、そういう場であり続けたいなと思って日々活動していますし、それこそが私たちが協働プロを続ける理由と言えますね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

藤村・若山:ありがとうございました!

藤村 昌平 / Shohei Fujimura

(株)協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン(株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。
2023年に独立し、株式会社fucanを創業。

(株)協働日本には創業当初から参画し、2021年にCSOに就任。事業開発のプロジェクトマネジメントに加え、幹部人材育成、越境チャレンジの事業開発メンタリング等を担う。

若山 幹晴 / Masaharu Wakayama

(株)協働日本 CMO(Chief Marketing Officer)

大学大学院卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャーとして日本・シンガポールにて従事後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーにて、最年少でマーケティング部長に就任。

協働日本事業については こちら

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協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本CSOの藤村昌平氏、同CMOの若山幹晴氏の対談をお送りいたします。
協働日本の創業時から参画しているお二人に、創業当初から現在までの5年間を通して見た協働を通じて生まれた支援先やご自身の変化、協働日本の未来について語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

※本インタビューは前後編にてお送りいたします。後編はこちら

物事への解像度を高めることで出てくる「本当にやりたいこと」が、人を動かす。

ーー本日は、協働日本創業時から参画しているお二人にお越しいただきました。よろしくお願いいたします!

藤村 昌平氏(以下、藤村):よろしくお願いします!

若山 幹晴氏(以下、若山):はい、よろしくお願いします。

ーー立ち上げからの5年間でお二人の本業のキャリアも変化してきたと思いますが、まずは当初から現在までの協働日本との関わりや変化についてお聞きしていきたいと思います。

藤村:僕は、協働日本の立ち上げ当初はライオン株式会社に勤めていて、去年独立しているのですが「事業を作る人を作る」というミッションを掲げてプロジェクトに関わっている点はずっと変わっていません。

変化があるとすれば、人との関わり方かもしれないですね。当初は、協働プロジェクトにおいて「売上の数字を上げるためには」「顧客を獲得するためには」「効率を上げるためには」…など、何かしらの目的を通じて、人の成長を支えるようなことが多かったのですが、現在では直接的に人と対話しながらお互いに成長する・させてもらう関係を作ることが増えてきています。

目的や成果を通じてではなく、直接的にその人のやりたいことそのものに対してアプローチする機会を頂けるようになっているのはここ数年で変わってきたことですね。

若山:世界と戦っていく企業がどんどん生まれていく中で、ライオンのように大きな会社は藤村さんみたいな人がさらに中枢になっていくと思っていたから、辞めると聞いたときはびっくりしました。

藤村:ライオンでは新卒から勤めて部長職まで経験させていただいたんですが、さらにその上に上がって組織のマネジメントをすると考えた時に、もう一つ壁があるように感じたんですよね。それをどうやって突破しようかと考えても、道筋がクリアに見えなかったというのもあって、「一旦組織を離れてみよう」くらいの温度感で退職を選んだんです。

だから今でもライオンの仲間たちとも話すし、状況も気になる。でも少し離れて別の経験を積んでみた方がいいなって。

伴走支援先の沼津三菱自動車販売株式会社のショールームにて

ーー若山さんもこの5年間の間で独立もご経験されていますが、ご自身の変化についてはいかがですか?

若山:先ほど少し触れた通り、僕自身も消費財、アパレルと色々経験してきました。2022年2月にポケトーク株式会社が創立されたタイミングで同年3月より同社にジョインしています。

個人としても2021年に独立し、協働日本でも創業期から多くの案件に関わらせていただきながら、様々な業種業態の事業者様と経験を積ませていただいているところです。

藤村:若山さんはずっとマーケティングのプロとしてキャリアを歩まれてきていますが、会社経営も経験している。会社の経営自体も、マーケティングの概念の中に入ってくる部分があるじゃないですか。

いちマーケティング担当・ブランドマネージャーとして働いていた時と、経営者として働くようになってからとでは、マーケティングに対する感覚や考え方がアップデートされたところはありますか?

若山:経営の視点で言うと、組織の話やミッション・ビジョンなど、すごく多角的に見なければいけない中で、おっしゃる通りマーケティング的な考えを持たなきゃいけないエリアが広いなというのはすごく実感しています。

いい人材にミッション・ビジョンに共感してもらって、 組織として強くしていく上でも、やっぱりその人の考えやニーズを捉えながら、どうすり合わせていくかという考え方もまさにマーケティングですし。コストカットの方針を決めること一つとっても、納得感をもってどう伝えていくか。これもマーケティング的な思考がないとうまく実行できない場合があると思います。

どういう角度から見ても、マーケティング的な思考は重要なんだなと思う一方、最近では、もう「マーケティング」っていう言葉を使わなくてもいいのかなと思っていて。

藤村:型すらもう捨てようとしているんだ。(笑)

若山:マーケティングって、語源的には「マーケットを作る」という発想から「マーケティング」と呼ばれているのかなって。でも、これって究極的には「顧客志向」とか「人の気持ち」に根付いてるんだろうなと思うんです。特にAI時代と言われている中で、やっぱり人間じゃなきゃできないことって何なのか立ち返ってみると、「人の気持ち」が全てなんじゃないかなと。

消費行動は突き詰めると人の気持ちを理解することだし、組織作りも人の気持ちを理解することだし……とすると、なんだかそういった人の気持ちに紐つくことを「マーケティング」って、一括りにするのは”便利な言葉”すぎないかなと。

なんだか、もっと具体的に響く言葉を使っていかないと、人も動かないようになってきてるなと思うことがあるんですよね。

ーー若山さんは、「マーケティングのプロ」として協働日本の伴走支援に入られていると思いますが、そういった部分もプロジェクトの中で実感されているのでしょうか?

若山:そうですね。「マーケティング」という言葉を使わず、「お客さんの理解を深めましょう」という言い方でもなんとなくやるべきことは理解はできるじゃないですか。このような表現の方が今は効果が出やすいと感じるんですよね。一言で「マーケティング戦略」と言うのではなく、「これから考えるのは顧客戦略で、まずは顧客を理解して、どういう人たちを狙うのか」というような言葉に置き換えるんです。

そもそも僕にとって、協働日本での伴走支援は「循環」だと思っていて。自分がもらったもののバトンを渡していきたいという考えがあるんです。「マーケティング」という言葉に対して、なんだかすごそうだけどよくわからないものという印象を持っている方が実際にいらっしゃるので、「こういうところから始めれば良いんだ」と気づきを持ってもらえるように発信することを心がけています。だから、協働日本のセミナーなどをきっかけにマーケティングの考え方に興味を持って仕事のやり方を変えていったと言っていただけることがあると嬉しいですね。

この「循環」ってポジティブなものでなければいけないと思うんです。利己的・ネガティブな感じになると回らなくなる。やってみたら結果が出た、人が変わっていった、いい方向に動いた、というようなポジティブサイクルをどんどん作りたいと思っています。

ーー理想的な考え方である反面、わかっていても実践が難しいという方も多そうですが、意識してポジティブにしていくために使っている言葉や振る舞いはありますか?

若山:そうですね。常に自分がポジティブでいることを心がけています。協働日本に相談してくださる方は、現状に対しなんとなく不安や心配を抱えていることもあるので「大丈夫です、こういったところから始めていきましょう」と僕側がポジティブに振る舞うことでまず安心してもらって、前向きに取り組んでいく基盤作りをするイメージですね。

伴走支援先の企業は、業種的にも、機会的にもどうしてもお客様と直接相対して来られなかった方が多いんです。なので、伴走支援に入って一緒にプロジェクトを進めることで、お客様なくしてビジネスは成り立たないことを常に考えていけるようになる、ということを僕の提供価値にしていきたいと思っています。

ーー藤村さんも、伴走支援の中で意識されていることはありますか?

藤村:協働日本の中では顧客企業毎に協働チームを組成して進めていくわけですが、チームにアサインされた顧客企業側のメンバーが持ちやすい、”やらされている”という感覚をいかに排除するかには気を遣っていますね。

この「やらされている感」が生まれてしまった瞬間に、全部なし崩し的に、「もう上の方で決めてください」とか、「協働プロの皆さんが決めてください」みたいな……なんだろう、「誰かに決めてほしい」という空気が出てくるのが良くないと思っていて。

プロジェクト単位でもそうなのだから、組織や会社などの単位でもこういった空気が出てきてしまうとすると、すごくネガティブなループに入っていくと思うんです。 

でも、過去自分の仕事を振り返ってみた時に「やらされてる」っていう感覚がなかったかと言うと、”あった”ケースもあるので、いたしかない部分があることも理解できますが。

若山:人って多分、わからないことに対しては恐怖を感じて、能動性を持てないところがあると思うんです。それがやらされてる感にも繋がるんじゃないかな。

伴走支援の中で、「こういうことやっていきましょう」という話になった時に、「なんでこれをやるんだろう」とか「これをするとこんな良いことがある」という理解がないと、やっぱりやらされている……ただのtodoタスクになってしまう。

だから「こういうことをやっていきましょう」の後に僕たち協働プロは「なぜそれをするのか」という意義をきちんと解いていくための対話をするんですね。「こうですかね?ああですかね?」「でもこういう視点もありますよね」「なるほど、じゃあこれをやるっていうことはこういう意味があるのか」───という風に、プロジェクトメンバーそれぞれの腑に落ちた瞬間に、やらされ仕事じゃなく、自分の仕事になっていくように感じています。

藤村:そうですね。これって若山さんがさっき話してくれた「便利すぎる言葉じゃ人は動かない」にも繋がるんじゃないかと思っていて。

色んなものが便利になって、色んなことをやらなくて済む、AIがやってくれるって世界になればなるほど、人は自分で考えることをしなくなっていく部分があると思うんです。

でも、「やりたい仕事」って誰かに与えられるものではなくて、自分で作らなくてはいけないものだから、自分の気持ちに素直になって自分がどう考えているのかを表現して「やりたいこと」を明確にして作り上げていくことが重要です。だとすると、プロジェクトマネジメントする側からも、「これを聞いてどう思う?」など相手に話を聞いて、本心を引き出す必要もあるんじゃないかなと思います。

ひたすらに深掘りしていって、リアクションを読んで……ということを積み上げていくことで、伴走先の皆さんの本当にやりたいことが見えてくる。小さいところから、この「やりたいこと」を繋げて作り上げていくことで、最終的に商品やサービスを届ける先のお客様や、協力を仰ぎたいパートナーにも「いいじゃんそれ、面白いじゃん」って共感していただけるようになると思うんです。

境目が溶けてなくなった世界で求められる対応力。どう補い、高めるか?

ーー協働日本に参画した当初に見えていた景色と、今見えている景色についてお伺いします。当時思い描いていた5年後の世界に、今たどり着いた的な感覚があるのか、あるいは変わってきたという感覚があるのか、お二人の思うギャップを教えていただけますか?

若山:大きなギャップはないかなと思います。ただやはり、プロジェクト型で進む仕事、土地が離れていても同じ目的に向かって歩む人たちの在り方や働き方は当初よりも自然になってきているので、協働日本のプロジェクトについての説明コストが低くなっている感覚がありますね。今どき当たり前という感覚で、抵抗感がなくなってきている。

5年前は協働日本のプロジェクトを説明するときに、働き方や頻度など、プロジェクトや事業と直接関係ないところでの疑問を持つ方も多かった。前提条件が変わってきている印象を受けます。

藤村:元々勤めていた会社の中での働き方も大きく変わったタイミングでしたしね。境を越える───「越境」という考え方が日本の中で根付いてきていると思います。やはりコロナ禍を経て変わってきているという印象ですが、僕の中では、「越境」というよりは「境目がなくなってきている」と考えています。

業界の境目、距離の境目、全て溶けてなくなってきている。誰かが溶かしているのではなく必然的に溶けていっているんです。それこそ、距離的な壁はオンライン会議の普及でほとんど問題にならなくなりましたよね。コロナ禍で今まで「当たり前」だと思っていた動き方ができなくなって、違う方法を模索してみると案外これまでより便利なことに気づいたことって皆さん大なり小なりあると思うんです。消費者の消費行動も、企業の働き方やアプローチの仕方にも同じことが言えます。

つまり、そもそもコロナ前にあった壁や境目自体、実は自分が勝手に思い浮かべていただけのものだったんです。壁があると思いながら近づいていったら、実は壁なんてなかったという経験が現場でもう4〜5年続いていて、これまでいかに自分がバイアスの壁に縛られていたかに気づかされました。

若山:「境目がなくなる」というのはまさにその通りですね。境目がなくなってきたことで、これまでの「ここからここまでできれば良い」という範囲もなくなって、どういう状況下でも最大のパフォーマンスを出せないと生き残れなくなってきているように思います。個人も、経営者も、状況への対応力が問われていて、的確・迅速にできる人が生き残っていく。

先ほど藤村さんが、壁を破るための経験をもっと積みたいという話をされていましたが、これもやっぱり「境目がなくなった」ことにも関係するのかなと思っていて。僕ももともと消費財メーカー出身で、その後アパレルで小売や製造を経験して、今はIT系の分野でも仕事をしていますが、思い返すと「その時には思いつかなかったけれど、今の知識や経験を持っていたらもっとこうしていたな」と思うことがたくさんあるんです。経験の中で選択肢が増えているんですよね。 
一社に留まっているだけでは出てこない判断ができるようになっている実感があるわけです。

そこで湧く疑問が、例えば新卒から1つの業種や業態を極めつつ、副業的に引き出しを増やしていくことができれば、業種業態を超えた横の経験が蓄積されて経営判断にも活かせるようになっていくのか?ということです。それともやはり転職や企業など、働く場自体を変える必要があるのか……。

藤村:「時間のシェアとマインドのシェアが1番大きい」組織に、思考パターンが引っ張られやすくなる部分はどうしてもあると思いますね。

例えば、消費財分野のマーケティングって、やっぱり商品があって、競合がいて……と、コミュニティ化されてしまっているから、その中においては対エンドユーザーの戦略よりも対競合の戦略勝負になりがちです。そうやって競合のことばかり分析したり考えたりと、必然的に視野が狭まってしまう。

良い悪いということではなく、一つの組織に留まり続けると、どうしても狭い視野のままになってしまう部分はあるかもしれない。

若山:競合と自社を比較分析して戦略を立てる中でも、市場で勝っていくためには市場破壊するようなイノベーションを起こすか、もしくは他社に起こされた時に一歩でも遅れを取らないことが必要です。

同じ業界だけで新卒から上がってきた人たちだけでは気付くことができないような新たな視点を取り入れてイノベーションを起こしていかないと、企業の成長戦略は描きにくくなっているんじゃないかなと思います。

そういった視点を獲得するために必要なのは転職か?副業か?という疑問を改めて考えても答えはないと思うんですが、少なくとも企業の発展のためには人材や考え方の交流を増やしていかなきゃいけないし、コロナ後の市場の変化によって必須になってきている感じがありますよね。

藤村:そういった部分を鑑みても、複業人材を活用することは効果的かもしれませんね。企業にとっては、色んなバックグラウンド、専門性を持つ人材を適材適所で活用していくことができる。複業人材側はこれまで触れることのなかった分野についても経験を積むことができるので、対応力が上がっていく。それをまた自社に持ち帰ったり、別の複業先に還元したりしていくことで、実際に若山さんの仰るようなポジティブな循環が生まれていきます。

後編へ続く

藤村 昌平 / Shohei Fujimura

(株)協働日本 CSO(Chief Strategy Officer)

大学院卒業後、ライオン(株) に入社。R&D部門で新規技術開発、新製品開発、新ブランド開発を経て、新規事業創出業務に従事。
2023年に独立し、株式会社fucanを創業。

(株)協働日本には創業当初から参画し、2021年にCSOに就任。事業開発のプロジェクトマネジメントに加え、幹部人材育成、越境チャレンジの事業開発メンタリング等を担う。

若山 幹晴 / Masaharu Wakayama

(株)協働日本 CMO(Chief Marketing Officer)

大学大学院卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャーとして日本・シンガポールにて従事後、ファーストリテイリンググループブランドのジーユーにて、最年少でマーケティング部長に就任。

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STORY:有限会社いやタクシー 森山 雄宇氏 -社員の声から作り上げたパーパスで、組織が自ずと動き出した。次世代の育成・組織の成長のための第一歩-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、有限会社いやタクシー  代表取締役の森山 雄宇氏にお越しいただきました。

有限会社いやタクシーは、1961年創業のタクシー事業を中心とした交通インフラ企業。車が今ほどあまり普及していない頃から、地域の”足”として地域に貢献してきた、いやタクシー。

自家用車が普及して需要が右肩下がりになる中で、2000年頃からは貸切バスや路線など複合的に交通インフラに対応。どうしてもドライバーに負荷のかかってしまう従来のビジネスモデルから脱却し、生産的に無理なく、待遇や働く環境を良くするために自社独自のビジネスモデルを作っていきたいと考えるようになった森山氏。そんな中で協働日本と出会い、協働プロジェクトを通じて、社内改革を進めています。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを続けてきたことによる成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

「幹部育成」の悩みのテーマの背景を整理して行き着いた、組織改革の最初の一歩。

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは協働をスタートしたきっかけについて教えてください。

森山 雄宇氏(以下、森山):はい、よろしくお願いいたします。

協働日本を知ったきっかけは、商工会の指導員をしていた知人からの紹介です。以前から、実態として幹部・管理職がいないことが自社の課題としてあったため、育成していきたいということを相談していたんです。その方がスタートアップ系のコミュニティ事務局をしていることもあり、協働日本の取り組みについてご存知で紹介を受けました。

協働日本の伴走支援は、伴走する中で企業に本質的に必要な考え方をインストールするようなイメージだとお聞きし、今この瞬間も、先を見据えた時にもリソースが足りない課題を抱えている弊社にはぴったりの取り組みではないかと思い、詳しくお話を伺いたいとお返事しました。

その後すぐに協働日本代表の村松さんをご紹介いただいて、メッセンジャーやお電話で丁寧にお話しをしてくださり、疑問点が解消されたことで協働を決めました。

ーー実際に伴走支援がスタートしてからはどのようなプロジェクトを進めているのでしょうか?

森山:プロジェクトとしては、組織改革全般に取り組んでいます。協働プロとして協働日本CSOの藤村昌平さん芹沢亜衣子さん、そして協働サポーターとして山本さんに入っていただいています。最初の段階ではまず、自社の課題を整理していったのですが、管理人材・幹部・管理職というポストの人材がいないこと以外にも、そもそも社内でのキャリアアップの流れも作れていないことなどが可視化されていきました。

例えば、私が受け持っているミドルマネジメント的な業務も属人化してきており、人に渡せるように仕組み化するべきという課題が見えてきたんです。いわゆる文鎮型で成り立ってしまっている組織なので、このままでは将来的な発展が難しく、改めて適切なポストや人材育成を行う重要性を言語化することができました。

また、社員側の業務についても、生産的にリソースを使えているかを改めて整理したところ、現状の給与体系は歩合の割合も大きく、新しいことに自発的に挑戦しにくい環境であることがわかってきました。

元々将来的には固定給を取り入れていきたいと思っていたので、モチベーション高く仕事をしてもらうために給与体系の変化や、評価制度の策定も必要だという話が持ち上がったんです。

段階を追って1つ1つ着手することになり、まずは人材育成からという方針で進めていく中で、自社の考え方を整理し、評価の軸となるものが必要ということで、パーパスや、ミッション・バリューを言語化していって社内に共有することになりました。

こういった組織改革については、これまでも試行錯誤していた部分ではあったんですが、打ち合わせを重ねる中で「やはり必要なんだ、ここに行き着くんだ」と思いましたね。
自分でも10年くらい前に経営理念を考えて提示したこともありましたが、社員の腹落ちしない言葉を掲げてもあまり浸透せず……自分の中で熱が落ち着いてしまっていた部分だったので、根本的なことから改めて取り組むことができてよかったと思っています。

パーパスやミッション・バリューなど、会社の軸となる部分が出来上がってきてからは、評価制度の中身を詰めていくことや、業務の切り分け──属人化してしまっている私の仕事の中で、誰かに渡せるものはないかという整理を進めていっています。

社員と作り上げたパーパス。全体の理解度・腹落ち感が向上することで組織が進み始めた。

ーー実際にプロジェクトの中でできたパーパスやミッションなど、成果としてはどのようなものが出来上がったのでしょうか?

森山:まず着手したのはミッションからでした。タクシー事業や観光事業など今までやってきたことを軸に、自社の使命とは何かを言語化したものが「移動や交流を通じて人々の日常を豊かにする」です。

このミッションが出来上がった時、社員に向けてプレゼンをしてフィードバックをもらうようにしました。社員にとって腹落ちしない言葉では浸透しないので、協働プロとの壁打ちの中でどうやったら社員の皆に想いが伝わるか、言葉選びや説明の仕方もサポートして頂きました。

次にできたバリューは「地域社会にとって不可欠な企業として、人々の日常生活をさらに豊かにするために持続可能なサービスを提供し続ける」です。

こちらも同じように社員に向けたプレゼンとフィードバックをもらいました。

結果的に、これまでで一番丁寧に社員に向けた説明ができたという手応えがありましたし、実際社員の反応もよかったんです。フィードバックの中でそれぞれの想いを言葉にしてくれていたので、それをヒントにパーパスを策定していきました。

ーー社員の皆さんの声も取り入れながら作り上げていったのですね。

森山:そうですね。これまでは、私が作ってから社員に伝えようと考えていたのですが、社員に伝えながら段階的に作っていけたことがよかったです。

フィードバックをもらうことで、私の説明からきちんと伝わったこと・伝わりにくかったことだけでなく、社員のこだわりやそれぞれが大事にしているものなど、インサイトが次々と見えてきたんです。

例えば、10年後どうなりたいか?という質問を投げかけたところ、若手の意見として「この業界で働いている先輩の描く未来図が気になる。先輩たちがやりたいことを、自分達の代で成し遂げたい」という言葉が出てきたんです。ベテラン達に10年後を問うても、引退しているかもしれないし……と消極的になりがちなのですが、この若手の言葉を聞いたベテランの皆さんも「自分達の思いを継いでくれる存在がいるなら」と自分ごととして10年後の未来を捉えて意見を出してくれたんですね。

創業から60年以上、事業をつないできた先輩達がいるから今があり、未来がある。その感覚を社員たちで共有することができて、ベテランも含めて改めて未来の話をすることができたのは大きな成果だったと思います。

そんな社員の想いを落とし込んでできたパーパスは「営みを繋ぎ豊かさを支える」です。

ーー素敵なパーパスですね。

森山:ありがとうございます。いやタクシーは元々まちのタクシー屋さんなので、この地域に自社しかいない存在──住民にとってのインフラを担っているのだという揺るぎない自負が私達にはあります。

もし我々がタクシーをやめてしまったら、ここはタクシーのない地域になってしまう。今後新たなタクシーの参入もおそらくないと思われ、民間の事業者の努力だけで保たれていた地域の利便性が下がってしまう。そうすると、地域の衰退につながるのは自然な流れです。

今では収益性の高い、バス事業や観光事業など様々な事業を持っていますが、やっぱり私達の事業は、地域の活性化や、このまちが元気な状態でずっと続いていく前提として必要なインフラだと思っています。こういった、社員が共通して持っている自負、地域への想いが「豊かさを支える」という言葉に繋がったのではないかなと思います。

このように社員の理解度・腹落ち度などは確実に上がってきていることが目に見えるようになりましたし、指針ができたことで次にすべきことも明確になって、組織として進み始めた実感を持つことができています。

ーーこういった経営理念の策定や幹部育成は、元々試行錯誤されていたテーマでもあったと思います。伴走支援が入ったことによる変化や学びはどのようなところにありましたか?

森山:そうですね。一番大きな学びとしては、アプローチの仕方が変わってきたことかなと思います。先ほどの、ミッションやパーパスを段階的に説明してフィードバックをもらっていくという手法もそうです。

幹部育成のテーマにおいても、これまでも幹部候補を育成しなくてはと思って、「右腕」として人材を配置したことはあったんです。ところが、これがなかなか上手くいきませんでした。
協働プロと話をしている中でわかってきたのは「右腕」のポストであると社内に周知されていると、ポストに就いた方にはプレッシャーなど見えない負荷がかかってきやすいんですよね。そうすると、どれだけ能力の高い人であっても伸び悩んでしまったり、折れてしまうことがあってもおかしくありません。
その人が元々持つ能力に注目するだけでなく、「育っていく仕組み」「環境」も伴わないとうまく育たないんだ、というご指摘をいただきハッとしました。

逆に言うと、現時点での能力の高さよりも、仕組みや環境の方が大事なのではないかという気づきがありました。「右腕」を育成したいとしても、一人だけに負荷のかかるようなことがないように進めないと、人材も育たないという発想に変わったんです。

こういった、仕組み次第で育成できるのではないか?ということに気づくことができたのは自分の中での大きな変化だったと思います。

そんな気づきもあって、現在はポストや役職にこだわるのではなく、業務ごとに私の仕事を整理して社員に任せていくように変わってきました。
現在は、将来的なリクルート面も見据えて、人事制度の策定について伴走支援をしていただいています。


現在は、私と妻とでプロジェクトに参加させていただいているのですが、先々には幹部候補のメンバーも同じようにプロジェクトに入ってもらい、協働プロの皆さんにメンタリングしてもらうことができれば、グッと経営意識が伸びてくる人もいるんじゃないかと感じ始めています。やっぱり外部の人の声の響き方は違うと思うので、活用させていただきたいですし、早くそこに到達できるように進めていきたいと思っています。

協働の中で長期的視点での人材育成のためにも、複業人材の活用で経験を自社にインストールしたい。

ーー複業人材の取り組みについて、これまでもご興味はおありだったのでしょうか?

森山:はい。前に他社の複業人材のマッチングサービスも使ったことがありました。自社で新たに人材を獲得したり育成したりすることは難しいので、外注でサポートを得るしか選択肢がありませんでした。

1年間の契約の中で新しい考え方を取り入れることもできましたし、複業人材の活用により、もっと本質的な変革のための知識・経験のインストールやリソース作りができたらいいなと思うようになりました。

ーーなるほど。それで協働日本の伴走支援にもご期待いただいたのですね。今後このような取り組みは広がっていくと思われますか?

森山:そうですね。特にこれから生産性を高めたい、事業をスケールさせたいと考えた時、弊社と同じように、中小企業でいきなりスキルを持った人材を獲得することは難しいと思うので、協働日本のような複業人材のサポートで得た経験や知識を将来的な人材育成や獲得に活かすしか思いつかないくらいです。

同じような悩みを持つ経営者の方が身近にいれば、ぜひ協働日本さんとの取り組みの輪に入っていただくことをおすすめしたいと思います。

ーーそれでは最後に、協働日本へのエールも込めて一言メッセージをお願いします。

森山:非常に信頼できるサポートをしていただいていると思っています。約1年間のスケジュールを流れの中で組んでいただき取り組んできましたが、いよいよ来月には来社いただけるということで、実際にお会いできることをとても楽しみにしています。

オンラインで毎週1回という部分もとても良いですが、それ以外にもこうやってお互い負担のない範囲で対面できる機会を作っていただくこともできるのは嬉しいですね。これからもよろしくお願いいたします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

森山:ありがとうございました!


森山 雄宇 / Yu Moriyama

有限会社いやタクシー 代表取締役社長

島根県松江市出身、在住。大阪で輸入小売販売業に従事し、マーケティングや顧客対応、マネジメントのスキルを磨く。2009年に家業であるいやタクシーに入社し、地域交通を支える多角的な事業展開を推進。創業事業であるタクシー事業を軸に、地域のコミュニティバス、貸切バス、旅行業といった多様な業種・業態で、地域における持続可能なビジネスモデルを模索。業界に先んじて最新型リフト付き車両を導入し、「地域交通のユニバーサルデザイン化」を目指したインフラ整備に注力する。

時代の変化に伴い、従来の待ちの営業から脱却し、自社独自の企画やコンテンツの開発を通じて、新たな挑戦を続ける。地域と共に歩み、交通を通じた日常の豊かさを追求する。


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VOICE:和地 大和 氏 -まずは一歩でも進んでいる実感を持ってもらいたい。協働先の「やりたい」に寄り添い、モチベーション高く変化を生み出す。-

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本でWEBプロモーションのプロとして地域企業の伴走支援を行う和地 大和氏のインタビューをお届けします。
商社やスタートアップで、営業・人事・経理・総務・マーケティングや広告など、様々なキャリアを積んだのちにフリーランスとして独立した和地氏。

協働を通じて生まれた支援先の変化やご自身の変化や、今後実現していきたいことについて語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

どん底も経験しながらチャンスを掴んだ、幅広いキャリアを活かして顧客の支援をする「Web実務のプロ」

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、和地さんの普段のお仕事やこれまでのキャリアについて教えてください。

和地 大和氏(以下、和地):はい、よろしくお願いいたします。

現在は【1社に1人は欲しい右腕人材】と名乗って、フリーランスとして活動しています!

メインは、Web広告の代理店ですが、コピーライティングや、各種プロモーションのお手伝いなど、Web関連の仕事を幅広くお受けしています。最近は、企業の人事コンサルなども始めたところです。

ーーありがとうございます。和地さんは幅広く活躍されているようですが、どういった経緯で独立されたのでしょうか?

和地:住宅建材の商社の営業からスタートして、その後本社の人事を経験しました。

その後、実は一度起業して失敗しているんです。まだ20代で若かったこともあり、とにかく生活のために派遣社員として働き始め、携帯ショップで2年間販売員を勤めていました。もちろん「あのまま商社にいれば…」と思うこともありましたが、自分を省みる良い期間にもなったと思っています。

今はこの仕事を真っ当に頑張るしかない!と心を奮い立たせて仕事にあたり、人材派遣会社の営業に転職しました。その後は約半年ごとに役職が変わっていき、最終的にはグループ会社のスタートアップの役員に就任するに至りました。

ーーひたむきに努力されたことで、チャンスを掴まれたんですね!

和地:人材不足だったこともあって、チャンスにも恵まれていたんです。一度失敗した経験があったからこそ僕も必死でした。おかげさまで、このキャリアの中で、営業・人事・経理・総務・マーケティングなど一通り経験することができて、独立して今に至ります。

商社時代の最初の3年間は皆さんが想像するような「the 商社の営業」的な激務を経験していて、僕を形成しているのはその3年間の圧倒的な仕事量でもあります。1つのミスが命取りという世界線でしたし、今振り返っても、一番辛い経験でした。(笑)

自社商品を取り扱っていたわけではないので、商品の優位性もない中で僕から買ってもらう「理由」は「お付き合い」がベースにあることも大きかったんですね。この経験から1つのミス・不誠実で仕事がなくなるという意識が醸成されました。だからこそ現在フリーランスで働く中で仕事が来ることをありがたく感じています。

ーー続いて、和地さんが協働プロとして協働日本に参画されたきっかけについて教えていただけますか?

和地:実は、最初はスポットでWeb広告のサポートの依頼をいただいていたのですが、気がつけばレギュラーメンバーとして複数の案件を持つようになっていた、という経緯があります。

静岡県にあるジュエリーメーカーの株式会社キラガさんで、当時協働プロとして入っていた方と元々繋がりがあったんです。キラガさんがWeb広告やWeb戦略を広げていきたいということで、その方から相談があり、1ヶ月間のスポットでのサポートという形で打ち合わせに参加したのが最初です。

段々とあれもこれもと話すことが増えてきて、気づけば本格的に協働プロとして関わらせていただくようになっていき、もう2年半のお付き合いになります。

現在は、キラガさんの他にも2社の伴走支援にも入らせていただいていて「それってどうやるの?」を叶えるWeb実務の専門家として、活動しています。

例えば、一括りに「Web媒体でプロモーションをしたい!」と言っても、広告を打つのか、SNSで集客するのかなど、いろんな手法があります。そこで、お客様の目的を達成するためには、「現状何が1番良いか」「中長期ではどうか?短期ではどうか?」という視点で壁打ちをさせて頂いています。

経営者・担当者の方は、大体すでにやることが沢山ある状態なので、思考や行動が散らばってしまうことがあります。そんな時には、「今1番集中してやること」に意識を向けられるよう、一緒に軌道修正することも大切にしています。

優先順位やモチベーションをサポートしながら協働先の「やりたい」に寄り添うことで、組織の変化と成果を産んでいく。

ーー和地さんが参画されたプロジェクトの内容について、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。

和地:はい。基本的には、協働先の「やりたい」を優先しながら、手法について壁打ちしながら方針を決め、チャレンジしていくという流れでプロジェクトを進めています。

最初「Web広告を出したい」という相談からスタートしたキラガさんは、結局広告は出さずにEC販売とSNSでのプロモーションを厚くしていくことになりました。

現在のキラガさんの戦略の軸でもあるライブコマースは、当時すでにインスタライブで行っていて、売上もそれなりに好調でした。ですが、現在とは違い、他社のアカウントにゲストとしてお邪魔してライブを行うという形式だったので手数料の負担も大きかったため、協働プロジェクトの中で自社で完結できるように相談しながら進めていきました。

しかし、いざ自社のアカウントでのライブコマースに切り替えると、これまでに比べ売上が伸びなかったんですね。Instagramではどうしてもフォロワーに向けた配信になってしまうので、新規顧客の獲得や拡販には向かなかったんです。これまではゲストとして配信していた先のアカウントのフォロワーがメイン顧客になっていたので、新たにフォロワーを獲得する必要が出てきました。

そこで、ライブ配信が新規ユーザーにも届きやすいプラットフォームとしてTiktokを活用することになったんです。フォロワー数をある程度獲得する必要があるということで、運用代行など色々試行錯誤していったんです。

ーーなるほど。その試行錯誤の結果、Tiktokで成果が出て「売上12倍」という結果に繋がっているんですね。

和地:そうですね。キラガさんの場合は特に、ここまで結果を出すことができているのは、やっぱり太田さんの圧倒的な行動量があったからだと僕はずっと思っているんです。太田さんがこれだけやってきたから結果が出ていると思っているからこそ、太田さんの「やりたいこと」を最大限尊重したいという背景もあります。

気を付けていることは、優先順位付けのお手伝いをすることですね。太田さんに限らず、経営者の皆さんはあれもこれもとやりたいことが沢山あるので、全部手をつけてしまうと結果的に散らかってしまって成果に繋がりにくい。だからこそ、結局どれを最優先にやるべきなのか?を絞っていく。

事業を進める上で、「やらなくてはいけないこと」と「やりたいこと」がそれぞれありますが、僕はこのバランスが大事だと思っているんです。やらなければいけないことばかりやってると、モチベーションが上がらなくなったり、心が荒んでいってしまうこともあります。とはいえ、やりたいことだけでは会社は成り立たない。だからこそ、一番やっておきたいことと、やらなきゃいけないことを整理して、まずはここにちょっと焦点を当ててやりませんか?と適宜お話ししていました

実は途中で失敗も経験したんですよ。初めにお願いしたTiktokの運用代行は上手くいかず……以前太田さんもご自身のインタビューで語られていたのですが、採用の面でも大手求人サイトへの広告出稿でも期待する成果が出なかったこともありました。

僕は基本的に、期待値に対して本当に成果が出るだろうか?と懐疑的な時ははっきりお伝えしていて、かけた費用はどのくらいで回収できるのか?本当にこの手法を取るべきか?ということも議論してきました。その上で「それでもやりたい」ことについては寄り添って進めるように心がけていて、やってダメなら次の手をどうするか提案しながら最終的に求める結果に近づけるようにしたいと思っています。そうやって失敗も共にしてきたからこそ、今は「どうしてもやってみたい!」が飛び出した時、「あの時の広告のことを思い出してください!」と半分笑い話のように言いながら、議論できる関係性を築くことができたのではないかなと思います。

ーーなるほど。特にキラガさんとのお取り組みは2年以上と長く続いていますが、ここまでに実感された変化などはいかがでしょうか?

和地:成果という意味で言えば、先日の太田さんのインタビュー(STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -3年間で売上12倍の躍進。業態変化から組織改革まで、協働の真価を発揮-)をぜひご覧いただきたいなと思っています。

それ以外の、僕の視点から見た変化でいうと、太田さん一人で売上を作っていた当初に比べ、新しく入社した方が売上を作れるようになったという変化はとても大きいと思います。ライブや売上貢献意識も強い方ばかりで、組織改善につながっているように見えます。

当初、キラガさんのライブコマース事業では、太田さん一人でライブ配信をして売上を作っていたのですが、現在では半分以上は社員の皆さんで配信して売上を作られているんです。もちろん太田さんとしては、まだまだと思っている部分はあるかもしれませんが、僕はこの協働プロジェクトの中でプロモーションだけでなく新規採用や組織改革にも着手して、意欲的に社員の方が売上を作ることができるようになった、というのは本当に素晴らしい変化だと思っています。

ーー社員が自発的に意見を出して売上と作れるようになった、というボトムアップの行動や組織自体の変化が見られるようになったのはどんなことが理由だったのでしょうか。思い当たるきっかけはありますか?

和地:何よりも「太田さんが任せた」ことがきっかけじゃないかなと思います。やっぱり、ライブの回数と売上は比例してくるので、太田さん以外にもライブができる人材を増やしたいということで、新規採用についてもプロジェクトの中で進めていったんです。

初めは大学生の女性の方に配信を手伝ってもらったりしたこともあって……でも、商品がジュエリーということもあるので、配信の中で太田さん以外に若い女性がいるだけで画面も華やかになって、ポイントさえ抑えていけば誰でも配信の中で販売をしていけるという気づきを得てからは、太田さんは「売り方を教える」ことにシフトしていき、採用がうまくはまって人も増え、結果的に販売の仕事を手放すことができて上手く回るようになりました。

経営者の方は皆さんそうだと思いますが、結果として売上は12倍になっているものの、太田さんは常に「次はどうしよう」という不安を持たれているんですね。進んでいることを実感されていないことがあると言いますか。だから、日々動かれているのに「最近動けていないんです」とおっしゃるので、しっかりと「進んでいる」実感を持っていただくように心がけています。配信は少し休んで、その間に社内の整理をしましょう、などと声をかけて、組織変革のための時間を取るなど、これまでの行動や成果を褒め、休憩のタイミングを作り、優先順位を絞る、というサポートをしていく中で、やりたいこと・やるべきことが噛み合って、今があるのかなと思います。

協働の中でインパクトを出せる実感が、自分の自信と成長につながる

ーー営業・人事・Webマーケティングなど和地さんの強みを最大限活かしてご活躍いただいていますが、協働の中で得た気づきなどはありますか?

和地:一緒にプロジェクトに入っている協働プロから受ける刺激や学びは本当に大きいですね。皆さん違う業界の第一線で活躍されている方ばかりなので、同じマーケティングをしてるはずなのに、考え方・視点が全然違うんです。僕自身はこれまでミクロな視点で戦略を考えることが多かったんですが、大衆向けの大手メーカーで活躍されている他のメンバーの視点はもっと大きく考えておられて。日本だけでなく世界も視野に入っているなど、僕にとっては新しい視点がたくさんありました。

僕のミクロな視点自体は、「明日の売上のことを考えてもらえる」と評価いただくこともあるのですが、そこに加えて先を見据えた視点、考え方も取り入れてプロジェクトの提案をしていく重要性は学びになりました。

そんな、日頃から広い視野を持って動かれている方達と同じプロジェクト、同じポジションで働けること自体が自分にとっての自信に繋がっているように思いますし、一般的な副業や、僕のようなフリーランスでプロジェクトにスポットで入るだけでは得られない体験だと思っています。

ーーなるほど。これからもプロジェクトは進んでいくと思いますが、和地さんが協働の中でこれから成し遂げていきたいことはありますか?

和地:そうですね。自分の仕事のスタンスでもありますが、多くの中小企業様の悩みとして、「やりたいこと」「解決したいこと」はたくさんあるけど、「何をすれば良いかわからない」「時間がない」などで足踏みすることがあると思うんです。

「進んでない状態」ってもどかしかったり、不甲斐なさを感じたりと、ある意味「失敗」よりきついこともあるんじゃないかなと。そんな状態から、一歩でも前に進むためのお手伝いをしていきたいですね。

少しでも進めば、何が良くて、何が悪いかわかるので、その結果を元に、「じゃあ次は何をしようか?」という会話ができるようになります。それを繰り返し、一緒に進めることが、僕の仕事だと思ってます。この小さな積み重ねの上に、企業の発展、従業員の皆さんの満足度アップ、果ては社会や地域貢献につながるんじゃないかなと。

キラガさんのプロジェクトでも、地味なPDCAを回し続け、失敗もあって苦しい時もありました。

でも、蓋を開けたら「しっかり前に進んでいた」という感じなんです。

多くの方は、ずっと次の目標、次の目標と追ってしまうので、「前に進んでいること」を忘れがちです。そこを実感してもらうことも、僕は大切にしています。苦難や困難があれど、必ず前に進めるということをこれからも実現していきたいなと思っています!

ーーフリーランスの和地さんも大きな刺激を受けられると言っていただいた「協働」ですが、こういった複業人材との協働は今後広まっていくと思いますか?

和地:はい、どんどん広まっていくと思いますし、広まって欲しいとも思っています。

参加しているからこそ実感しますが、スキルや経験を持った人材が地方中小企業に入ることで与える影響はやはり大きいです。

僕自身、会社員時代はずっと都市圏で働いていましたが、大企業にいると、自分の生み出す成果のインパクトは相対的に小さいんですよね。特に僕は1つずつコツコツ丁寧に、量をこなすというタイプだったので。

一方、中小企業では「役に立てる実感、手触り」があるんです。自分の役割が会社・成果にインパクトを与えられるという実感を得られたことは大きな経験になりました。

都市圏には、かつての僕のように、スキルや経験があってもなかなか活躍の実感を持てない人も少なくないと思います。そんな人が地方中小企業のプロジェクトに参画することで、一気に活躍の場を広げられることが成長の機会につながる。複業人材の活用は、地方中小企業だけでなく、複業人材として参画する側のスキルを持つすべての人にとってもメリットがあると思うんです。

僕も人事をやっていたので採用の難しさは理解しているつもりです。だからこそ、直接雇用をせずに会社を強くする仕組み自体も、今後どんどん広がっていくと思います。むしろ、こういう新しい形態に取り組んでいかないと、今後の発展は難しい部分があるかもしれません。

ーー最後に、協働日本が今後どうなっていくと思われるか、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

和地:協働日本のコンセプトにはとても共感していて、僕たちがやっていることの意義・意味はすでに十分にあると思っていますし、僕自身も楽しく仕事させてもらっています。

「一つの会社に属する」という、これまでの常識は今後どんどん変わるのでは?とも思っていて、実際、「都心に住んで、たくさん稼いで、成功する」という価値観から「自分らしく働く、キャリアを作る」という傾向が年々強くなっているように思います。

そのことを考えると、社会的に見ても協働日本さんのような取り組みは、自然と拡大していくようにも思います。そうやってクライアントになる地方中小企業や協働プロとして入る複業人材の量も増えるといいのかなと思っていて。自分が働く案件が欲しいというよりも、協働日本への賛同者、いいと思ってくれる「ファン」が増えて広がってほしいというのが理由です。

協働日本のファンが増えることは、僕自身にとってのチャンスや活躍に繋がっていくと思いますし、同じ想いで仕事をされている方達にとってのチャンスにも同じように繋がるので、そうやってどんどん輪が広がっていったらいいなと思います。

僕自身そういう企業のサポートをしていきたいので、自分のキャリアもしっかり作り、貢献度を上げる一角を担っていけたらと思っています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

和地:ありがとうございました!

和地 大和 / Yamato Wachi

上場企業での商社営業・人事を経験し、スタートアップの起業を経て、派遣社員としてショップ店員を経験。
その後人材会社に正社員登用され、子会社役員となり、独立。
現在はフリーランスで、WEBマーケティングや広告代理業務を中心に、【1社に1人は欲しい右腕人材】として企業様の価値や魅力を武器に変えるお手伝い中。

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NEWS:IPPO プロコーチインタビュー公開のお知らせ:個性豊かなIPPO プロコーチ陣をご紹介

IPPO プロコーチインタビューを協働日本公式YouTubeチャンネルにて公開しました

新たな「一歩」を踏み出すための、伴走支援型コーチングプログラム「IPPO」。

IPPOのプロコーチ陣へインタビューを行い、IPPOコーチングプログラムの特徴や、在籍するコーチご自身の強み、コーチングを通じて生まれた変化について語っていただきました。インタビューを通じて、専門性高く、個性豊かなIPPOのプロコーチを知っていただき、IPPOへご関心をお寄せいただけますと幸いです。

インタビューに登場するIPPO在籍 プロコーチ

IPPO プロコーチ 芹沢 亜衣子 氏

IPPO プロコーチ 永田 陽祐 氏

IPPO プロコーチ 久米澤 咲季 氏

IPPO プロコーチ 石井 裕美子 氏

IPPO プロコーチ 大野 翔子 氏

IPPOとは?

新たな「一歩」を踏み出すための伴走支援型コーチングプログラムです。
それぞれのニーズや課題に合う、最適なコーチをマッチングすることで、一人一人の強みやパーパスを言語化し、変化や成長をサポートします。

IPPOにご関心を持っていただいた方へ

IPPO for Business (法人向けコーチングプログラム)

https://kyodonippon.work/ippo-for-business/

組織とリーダーの活性化をともに生み出す法人向けコーチングプログラムです。各業界でのビジネス経験、マネジメント経験豊富なIPPOのプロコーチが伴走し、人材育成・組織開発の課題を解決します。

IPPO for Personal (個人向けコーチングプログラム)

https://kyodonippon.work/kyodonippon/

「ご自身のありたいキャリアや働くWill、キャリアの可能性について言語化したい。次の一歩を踏み出したい。」そんな想いのある方に、IPPOコーチが伴走し、個々人のキャリア自立(自律)を促しつつ、次の一歩を踏み出すサポートを丁寧に行います。

HP内「お問合せ」よりご連絡お待ちしております。

◆(株)協働日本とは?

地域に貢献したい意欲に溢れ、スキルあるプロフェッショナル人材と、優れた人材を受け入れたい地域の会社との丁寧なマッチングを行い、協働を通じて地域の会社の事業課題を解決しています。

Email:ippo@kyodonippon.work

URL: https://kyodonippon.work/

STORY:株式会社こみんぐる 林俊伍氏 -協働パートナーとしてともに成長へ。半年待ちの人気プログラム『Workit』を共同開発-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社こみんぐる  取締役の林 俊伍 氏にお越しいただきました。

株式会社こみんぐるは、「100年後も家族で暮らしたい地域を作る」をテーマに、石川県金沢市で宿泊業をはじめ、さまざまな事業を展開している「地域総合商社」です。

コロナ禍で大打撃を受けた宿泊業。こみんぐるも例外ではなく、事業の立て直しと並行して新たな事業を創造する必要性に迫られていました。

そんな中、協働日本との出会いから、共同で新規事業開発をスタート。そうして人材育成を通じた企業のコンサルティングプログラム『Workit』が誕生し、現在は参加まで半年待ちの大人気のプログラムになっています。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを通じた成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

既存事業のブラッシュアップだけでなく、「100年後も家族で暮らしたい地域を作る」の思いを叶える新規事業立ち上げにも伴走

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

林 俊伍氏(以下、林):はい。協働日本と出会う前からずっと、こみんぐるは金沢市で「旅音」という貸切宿の運営を中心にした、宿泊業・イベント運営などを行なっていました。

そんな中2020年にコロナ禍に突入してしまい、同年の4月には通常は月1,500万円あった売上が0円になるような状況に。この経験を経て、これはまずいと。

これを機に、一度立ち止まって考えてみることにしました。目の前の宿泊業のブラッシュアップも重要だけれども、そもそもこみんぐるは「100年後も家族で暮らしたい地域を作る」をテーマにしている会社。

そのためにすべきことはいまの宿泊業だけではないよな、という思いもあって。以前から大切にしていたこのテーマに向き合える事業を作りたいと考えるきっかけにもなりました。

実現に向けたアイディアは色々あったものの、それを実際に事業の形にするに当たっては、いろいろと悩む部分がありました。そんな時に、同じ金沢市の事業者である四十萬谷本舗の四十万谷専務からの紹介で協働日本と出会いました。

さっそく協働日本代表の村松さん、CSOの藤村さんとZoomで話をしてみたところ、「こみんぐるの大切にしているテーマの、本質を捉えた事業を一緒に作れる人だ」と直感的に感じすぐに協働を決めました。

ーーなるほど、経緯もよく分かりました。協働の取り組みはどんなことからスタートしたのでしょうか?

林:まずは、こみんぐるの主事業である宿泊業の「旅音」のブラッシュアップからスタートしました。オンラインを中心に、ときには金沢にもお越しいただきながら、議論を深めていきました。

他にも、2021年から石川県珠洲市で始めた「現代集落」のプロジェクトについても、協働日本に伴走していただきながら作っていきました。

「100年後の豊かな暮らしを実験する自給自足の村作り」と題して、水や電気や食を自給自足できる集落をつくり、自然のなかで楽しむ生活を、先人の知恵とテクノロジーで実現できないか、様々な取り組みをしています。

こちらは、株式会社こみんぐるとは別に「株式会社ゲンダイシュウラク」という会社組織を立てて引き続きプロジェクトを進めています。

そうして並行し、先ほどお伝えしたような思い「100年後も家族で暮らしたい地域を作る」を実現する新規事業のアイディア、異業種交流型の2泊3日課題解決ワークショップ「Workit」の立ち上げについても伴走していただきました。


ーーこれまでも様々な企業や協働プロからも話に上がっていた、協働日本との共同事業『Workit』もこうした取り組みの中で生まれたのですね。

林:そうです。Workitは、実際の地元企業の経営課題をテーマに、地元企業の社員とプログラムに参加する都市圏の大手企業の社員が、知らない人同士でチームを組み、その地元企業の社長が毎日悩んでいる抽象的な経営課題について2泊3日で向き合って、時にフィールドワークをしたり講師と壁打ちしたりしながら、最終日には練り上げたアイディアを社長に対してプレゼンするというプログラムです。

協働が始まった当時、藤村さんはライオン株式会社の新規事業創出を担当されていたのですが、大企業の中では経営者に直接アイディアのプレゼンをしてフィードバックをもらう機会を作りにくかったり、直接現場に出向いて顧客の声を聞いて情報を集めることの重要性が伝わりにくかったり、という実感があったようです。

どちらも新規事業を企画するにあたって重要な経験になりうる一方、机上の空論・言葉だけでは伝わりにくかったり、体験できるワークショップなども質の良いものがなかなかなく、その機会として”模擬経営”の機会を作りたいというアイディアをもたれていました。

そのアイディアも、こみんぐるのフィールドを使えば実現可能ではないかと考え、一度一緒にやってみることにしたんです。

振り返ってみると実はこの時、僕自身も、こみんぐるの代表である僕の妻も、Workitのコンセプトにあまりピンときていませんでした(笑)それでもまずは一度やってみようと。

こみんぐるの運営する貸切宿「Kanazawa旅音」を拠点に開催される『Workit』。24時間貸切だからこそ、集中して取り組める。
ーーそうだったのですね!ピンときていなかったのにも関わらず、まずやってみようと思えた理由はなんだったのでしょうか。

林:単純に、協働日本の皆さんが絶対にニーズがあるという確信を持っているように見えたからです。

まずはじめに講師役として、協働日本の藤村さんに協力していただきました。

参加者を集め迎えた初回の『Workit』ですが、蓋を開けてみるとものすごく盛り上がり、地元企業の方にも参加者の方にもとても喜んでいただけたんです。この盛り上がりを見て「これはやっていける」と感じて、本格的に事業をスタートすることにしました。

Workitでは、地元の企業と、都市圏の大手企業のそれぞれから参加費用をいただいてプログラムを実施しています。地元企業にとってのメリットは、次世代経営者の育成ができるという点。

地域企業の社長たちは、皆常に抽象的な課題と向き合って悩んでいるんですが、Workitの間は、地域企業の社員たちが同じように自社の課題について本気で悩むのがポイント。

2泊3日という短期間とはいえ、社長と同じように悩み、自社の課題に本気で向き合う経験をすることで視座がグッと上がるんです。加えて、プログラムを通じて本当にいいアイディアが出てくるかもしれない点も、魅力に感じていただいています。

一方で、大手企業側にとっても大きなメリットを感じていただけました。

新規事業を任されたものの、これまで営業や研究といった業務領域にしか詳しくない方たちや、マネージャーになったばかりの方が参加。「事業を作る」という実体験を踏まえて、視座を高めて帰っていきます。

プログラムのテーマとなる経営課題を提供してくれる地元企業の社長さんは、お金を払ってでも会社の未来をこの人たちと作りたい!という想いで社員を送り込んでくれるんですよね。この本気の熱量は、まず大手企業側の参加者に伝播するんです。

すると、今度はそれを見た地域企業側の参加者、社員の方々に火がつく。「うちの会社のことを、俺以上に真剣に考えている」と感じて、自分も負けていられないと本気になっていくんです。相乗効果ですね。

やっぱり、自分の会社の社長に「こういうことをした方がいい」と提案することって、勇気がいるじゃないですか。本当にやりたいのなら、言った本人がやらなくてはいけなくなりますからね。だからこそ、社長の前で「やりたい、やります」と宣言することには責任が伴い、本気の思いでそれを宣言することで魂が震える。

この一連の熱意の伝播こそが、『Workit』の盛り上がる理由であり、短期間でも参加者に多くの気づきが生まれる秘訣だと思います。

参加者がプログラム参加中2泊3日で宿泊するのも、こみんぐるの運営するホテル「Crasco旅音」。個室でとても過ごしやすく、コワーキングスペースも併設。マスコットキャラの「旅猫」がお出迎え。

半年待ちの人気プログラムへ。共同開発した『Workit』のさらなる進化

ーー協働を通じて誕生した『Workit』ですが、プログラムの内容などは少しずつ変わっているのでしょうか?

林:そうですね。開始当初に比べると、随分変わりました。先ほどお話ししていた、プログラムの軸となる立て付け自体は変わりませんが、フィードバックの仕方や、講師役が話をするタイミングなどを少しずつブラッシュアップしています。

初期は「本気の経営会議」という雰囲気でしたが、参加者が増えるに連れ、今は熱量はそのままに「カリキュラム」としてブラッシュアップし、進化し続けています。

ーーなるほど。『Workit』を続けていく中での新たな気づきや工夫ついてもお聞きできますか?

林:はい。まず『Workit』を事業化してしばらくは提供価値の言語化ができておらず、営業に苦戦していたんです。お客さんは皆すごく喜んでくれるけど、それがなぜなのか。先ほど話したような価値が明確になるまでに時間がかかりました。

地元企業、そして大手企業にとってそれぞれどんなメリットがあるのか、『Workit』の魅力を伝えられるようになってからは営業の際の反応も変わり、事業自体がどんどん進んでいったように思います。

当初は、地元企業・大手企業のどちらも自分達で営業開拓をしていたので、苦戦することも多かった。

それが、現在では金沢信用金庫とアライアンスを組み、そこから地元企業を紹介してもらう座組みになりましたし、おかげさまで大手企業のリピーターも増えてきたことで、月1回の開催ができるようになっています。

地元企業も、大手企業も、半年先まで参加枠が埋まっている状態です。

ーー半年待ちとは、大人気のプログラムですね!協働日本とはどんな取り組みが継続していますか?

林:はい。現在でも、年12回のプログラムの半分は協働日本から、 足立紀章さんをはじめとした協働プロの方々に講師としてご参加いただいています。

「共同事業」という形で協働日本と協力しながら、進化を続けていっています。

おかげさまで、売上自体も順調に上がってきていて、メイン事業である宿泊施設「旅音」の営業利益と同じくらいの規模になってきています。
現在、「旅音」の事業も大きく成長していく中においても、今期全体の営業利益のうちの30%くらいを『Workit』が生み出しています。まだまだこれからではありますが、確実に事業一つの柱になりつつあります。

ーーぜひ多くの方に知っていただきたいですね。

林:はい。これからは、地域の事業承継を考えている経営者の方に、もっと参加してほしいと考えています。どうしても、会社を経営していれば次の世代にバトンを渡していくことは避けて通れません。それを見据えて何かしたい、動き始めているという方にこそ『Workit』を知ってほしい。

加えて、同じくらい大手企業側にももっと関心を持ってもらえたら嬉しいですね。いま会社において「問題解決できる」ことは当たり前で、これからは「問題発見できる」人の存在の方が重要だと思います。

言い方を変えれば、与えられた問いを解ける人ではなく、自分で問いを立てられる人を育成していかないと、どこかで立ち行かなくなってしまいます。

だからこそ、会社の未来を担うマネージャー層や、新規事業に携わる層に、『Workit』を通じて「問いを立てる」経験を積んでもらいたいと考えています。

講師役を勤めるのは、新規事業開発のプロたち。経験者との壁打ちでアイディアの精度を高めていくことができるのも、好評。

組織を変えるのは「よそ者、若者、ばか者」?──複業人材の関わりよって変わる地域と会社の共通点。

ーー『Workit』も、地域企業と都市圏の大企業の接点を作ることに寄与していると思いますが、協働日本のような複業人材との関わりが増えることによる、地域企業の発展について、林さんはどのようにお考えですか?

林:その回答には、なぜ『Workit』というプログラムには、大手企業の参加者が重要なのかという理由にも通じますね。

こみんぐるは「100年後にも家族で暮らしたい地域」を作るために事業を行っている企業です。なぜその活動の中に、地域から見たらまったくよそ者の大手企業の参加者が必要なのか。

それは、地域の中だけで閉じるのではなく、外から人が入ってくる入り口──いわゆる関係人口になる人たちの入り口が非常に重要で、金沢において自分達がそれを担っているという認識と自負があるからです。

地域を良くしていくために必要な人材は3もの、「よそ者・若者・馬鹿者」だとよく言われますが、能登半島地震後に再構築が必要になったまちをみると、その必要性を感じるようになりました。何かを変える、革新するためには、いい意味で異質な人を活用することがとても重要なんです。

僕は、地域づくりと会社づくりは、「人」が重要という意味では同じだと思っていて。同じところに住んでいる人が集まった組織が地域、同じ目的に向かう人の集まった組織が会社。

組織を変える、という側面では、地域と会社の構造はとても似ています。だからこそ、地域企業に良い意味で異質な「よそもの」が複業人材として関わってくるようになると、組織が変わっていく。その変化がまた、地域の変化に寄与していく。

協働日本の活動や、僕たちの『Workit』を通じて、関わった複業人材が関係人口となり、地域企業やその地域が進化していくサイクルをもっと生み出していければと思っています。

「100年後も家族で暮らしたい地域を作る」ため、宿運営=「金沢のトモダチ業」をやっているという。いつでも人との繋がりを大切にしている。
ーー地震の影響があった中でも躍進するこみんぐるですが、今後の展望についてもお聞かせください。

林:僕たちは、「100年後も家族で暮らしたい地域」を作るために、地域が持続可能になっていくための事業をたくさん作って、地域の中でキャリアを描けるような仕組みを作るということをやっていきたいと思っています。

宿泊業に始まり、イベントや人材育成に通じるプログラムに挑戦していきましたが、これからはもっと地元の企業の再生に真正面から取り組んでいきたいと考えています。

やっぱり、地域の持続可能性を高めるためには、地元の企業がもっともっと強くならなくてはいけません。『Workit』は人材育成の側面がありつつも企業成長をサポートしてきたプログラム。この事業を通じて感じたのは、今後はもっと僕たちこみんぐる自身も地域企業の中に踏み込んで、伴走していきたいです。

ーーそれでは最後に、協働日本へのエールも込めて一言メッセージをお願いします。

林:「人を育てる」ということには確実にニーズがあります。

これまでも様々な地域に、その地域に根ざした副業人材の活用や伴走支援をする、協働日本のような支援をしていた会社はありました。

一方で、協働日本は地域を跨いでいるのが大きな特徴だと感じています。

協働日本がいてくれることで、どこか特定の地域だけが良くなるのではなく、さまざまな地域でノウハウを横展開することができるのではないでしょうか。

地域企業にとって、潤滑油のような存在となって、積極的に新しいことに取り組めるように支援してもらい、こみんぐるのように事業を創る力を高めていく企業が増えていくことは、それぞれの地域にとってもとてもありがたいことです。

ーーぜひ今後とも協働パートナーとして協働の輪を広げていければと思います!本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

林:ありがとうございました!

林 俊伍 / Shungo Hayashi

株式会社こみんぐる 取締役
株式会社ゲンダイシュウラク 代表取締役社長

石川県出身。金沢大学卒業後、豊田通商株式会社に新卒入社、東京・名古屋での勤務ののち退職。愛知県の私立高校で非常勤講師を勤めた後、2016年3月に金沢へ帰郷。2016年5月、妻の佳奈とこみんぐるを創業。

地域社会の持続可能な発展に貢献し、100年後も家族で暮らしたい地域を作る」ため、『こみんぐる』を経営。金沢市内に貸切宿『旅音』を23棟経営。

2020年夏、石川県珠洲市の真浦集落で空き家になっていた古民家を購入したことをきっかけに、現代集落プロジェクトを始動。株式会社ゲンダイシュウラクを設立し、過疎化対策の施策としてではなく「限界集落」を「現代集落」に変えることを目指し、「100年後の豊かな暮らし」の在り方を模索、実験している。

趣味は柔道と美味しいものを食べること。

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VOICE:足立 紀章 氏 -「変化したい経営者」を支えたい。地方の垣根を越えた人材交流で成長の芽を生み出す。-


STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -3年間で売上12倍の躍進。業態変化から組織改革まで、協働の真価を発揮-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社キラガ  常務取締役の太田 喜貴氏にお越しいただきました。

株式会社キラガは、創業40年・宝飾品の製造、加工、卸売、小売を行っている総合宝飾品メーカーです。静岡県の富士山の麓にある豊かな自然に囲まれたエリアに、こだわりのジュエリーと開放的な庭を備えた宝石工房を構えています。

コロナ禍で苦境に立たされ、現状打破と改革を目指し始めた頃に参加した講演会をきっかけに、協働日本がマーケティング戦略から人事戦略まで幅広く伴走させていただき早3年目。数々の取り組みを経てキラガの組織が大きく変わってきたといいます。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを続けてきたことによる成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

強みの言語化と、卸売から小売への業態転換、ライブコマースへの挑戦に2年間取り組んだ。

ーー本日はよろしくお願いいたします。御社は協働日本とのお取り組みも3年目になるということで、協働をスタートしたきっかけからここまでの歩みについてお聞きできますでしょうか?

太田 喜貴氏(以下、太田):はい、よろしくお願いいたします。

元々は長く商社に勤めていたのですが、コロナ禍で宝飾品業界全体が業績不信に苦しんでいる状況を両親から聞いたことで、2021年に父が創業した株式会社キラガへ戻り常務に就任しました。

当時、売上もコロナ前と比較して3〜4割減という状況が続いており、どうにか現状を打破しなければという危機感を抱えていました。そんな中、地元の中小企業家同友会の会合で協働日本さんの講演を拝見したことが最初の出会いでした。

ぜひ協働日本さんと取り組みをしたいと考え、2022年4月から自社の理解とマーケティング面での課題を整理するための取り組みをスタートさせました。

初年度はマーケティング戦略、ブランディング戦略を丁寧に言語化。2年目はマーケティング戦略だけでなく、事業全体の方向性、人事戦略まで含めてかなり広いテーマの相談をさせていただくようになりました。

ーーありがとうございます。1〜2年目のお取り組みでの成果や変化についてもお聞きできますか?

太田:はい。宝飾品の卸売りを主業としていたのですが、それだけでは粗利率が上がりづらく、コロナ禍の状況も鑑みて、エンドユーザーへの直販に販路を広げていく方針転換を図ることにしたんです。そこで、協働の初めには「直販の売上を上げるため」の壁打ちをしていただきました。約半年間をかけて、自社の強みの理解、コンセプトの策定、店づくりの強化など、協働プロの皆さんと一緒に議論を重ねたことで、当社にしかない強み「お友達と来てジュエリーで遊ぶことができる空間」を言語化することができました。

そもそもうちのお店では、お客様がいらっしゃったらまず靴を脱いでスリッパに履き替えて頂く。そうやってリラックスした状態で、商品に自由に触って、好きなだけ試着をして頂けるようにしていました。
お買い求めいただく際にもし価格についてのご希望があれば、お客様には「お値段についてもぜひ、ご相談ください」と伝えています。こちらからそのようにお伝えすることで、お客様にとっても安心して商品をお買い求めいただける環境をつくっています。無理なときは無理ですと率直にお伝えしますので(笑)、ぜひお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

こうした自由な空間、「ジュエリーで遊ぶ」という体験自体に価値があるのだという気づきは、振り返ると1つの軸になったように思います。

店頭でのコミュニケーションを改善したことも成果に繋がっていますが、改めて言語化できたキラガの強みである「リラックスした状態でお友達とジュエリーを楽しむ」をWeb上でも展開しています。SNS経由でのライブコマースでの販売に力を入れるようになり、高額商品もライブで購入していただけるような機会が増えたんです。

富士山の麓に構えた店舗。リラックスしてジュエリーを楽しめる空間づくりを心がけているという
ーーなるほど。卸中心の業態から、直販、そしてSNSとライブコマースへと変わっていったのですね。

太田:はい。そして協働3年目の今年は、採用や組織づくり、システム面、売上につながるマーケティング施策やSNS施策など、さらに幅広い内容で壁打ちをしていただいています。すべきことややりたいことがたくさんあるので、優先順位決めからどう進めていけばいいかまで協働プロの皆さんと相談して進めていっています。現在伴走支援に入ってくださっている協働プロは、向縄一太さん(花王(株)シニアマネージャー)、和地大和さん、田中紋子さんの3名です。途中メンバーの入れ替えもありましたが、継続して取り組みを進めてきたからこそ、壁打ちはとてもスムーズになってきたように感じています。過去の状況や、変化も把握していただいているので、今何が起こっていて何が課題なのかという部分も皆さんの理解が早く、とても助かっています。

強みである「ジュエリーを楽しむ」エンターテイメント性を追求する配信チームが発足。ライブコマースの躍進で小売部門の売上12倍に

ーー長くお取り組みさせていただいているからこその阿吽の呼吸なのかもしれませんね!そレだけ長期的にお取り組みいただいて、実際の事業としての成果はいかがでしょうか?

太田:おかげさまで、小売部門におけるライブコマース分野の売上が非常に順調です。協働がスタートする前は小売部門の月の売上が約200万円ほどだったのですが、現在では約2,400万円と12倍までに大きくなっているんです。

ーー一部門の売上とはいえ、12倍というのはインパクトが大きいですね!

もちろん、当初主業であった卸売を縮小しているものの、会社全体の売上でいうと当初は2億2,000万円ほど、昨年度は2億8,000万円、今期は3億円の着地見込みと増加しており、次のフェーズとしては年商5億円規模を描いて成長していけるようになりました。

ーーなぜそこまでライブコマース分野が成長したのかについても具体的にお伺いできますか?

太田:はい。初めはInstagramのLIVE配信(インスタライブ)からスタートし、視聴者がリアルタイムにコメントで見たい宝石やジュエリーの種類をリクエスト、それに応える形で商品を紹介していくスタイルでライブコマースを行っています。

協働プロの皆さんと相談する中で、InstagramだけでなくTikTokにも裾野を広げたことも功を奏しました。TikTokでのライブコマースは、上手くハマるか予測できなかったのですが、費用感的にもやってみて良いのでは?と協働プロに後押ししていただいたことで結果的に成果がでた取り組みです。インスタライブでは視聴者がフォロワーに限られてしまうのですが、TikTokでは配信中にもどんどん新規のお客様も入って来られるという違いがあったんです。今ではTikTokでは同時接続数も100名を超え、1ヶ月の売上も1,500万円オーバーという勢いです。

キラガのTikTok。配信の度、新規の視聴者が増えている
ーーすごいですね!先ほども「ジュエリーで遊ぶ・楽しむ」というキラガならではの強みをWebでも体験できるようにとおっしゃられていましたが、ライブ配信を楽しむという点とも相性がいいのかもしれませんね。

太田:そうですね。昨年度までは私自身が配信を担当していたのですが、今年度はライブ配信に携わる人員について採用を強化し、ライブ体制のためにチームを作るようになったんです。私が配信すると、どうしても普段の接客の延長のような形になってしまっていたのですが、個人での配信経験のある方を新たに採用することで、配信の中でお客様を飽きさせない構成、エンターテイメント性のあるやりとりなど、ライブ配信としてのクオリティも追求できるようになってきました。

メンバー主体の配信形態に変わってから配信頻度が上がり長時間配信が可能になった点も、売上に大きく貢献していると思います。

お客様からも、「ライブで見るよりも実物の方が綺麗」「もっと早くキラガと出会いたかった」というような嬉しいお声をいただいています。一方、販売数が増えたことにより、商品到着時のトラブルが出てきているのも事実です。配送トラブルなどコントロールできないものもありますが、検品強化やサポート体制を手厚く行っていきたいと考えています。

どうしても、ジュエリーは使っていくうちに不具合が出てくるものです。販売数が急激に増えたことでサポートに対する課題も出てきてはいますが、当社でご購入いただいたお客様には、時にメンテナンスをしながらもジュエリーを長く使ってもらいたいという想いで日々改善を続けています。

ーーぴったりの採用も売上貢献に繋がっているのですね。人事戦略の面も協働プロと壁打ちを続けているとのことでした。

太田:はい。まず、採用面においては、初め大手の求人サイトで大型の広告を打つなど試していましたが、なかなか上手くいかなかったんです。そこで、協働プロと相談して求人サイトの運用についても方針を見直し、運用を外注化することができました。それにより広告に頼るのではなく、募集記事を細やかに回しながら求人募集をかける方針に変えたんです。

求人サイトでの広告は月額50万程度かかっていたのに対し、後者の運用では1/5の10万円ほどに抑えられています。大手求人サイトでは、当然大手企業も同様に広告費を掛けていて競合になってしまうため、多くの人にみていただくことが難しい面がありましたが、募集記事を細かく更新するのは、SNSの運用やSEO対策に似ており、運用を続けるほど多くの人にみていただけるようになるため当社にとっては費用対効果が高い結果になりました。

ーー効率的な採用戦略が取れるようになったんですね。

太田:採用だけでなく、社内のリソースの活用や評価制度についても相談に乗っていただいています。例えば、バックオフィス業務の一部の外注化も進めていったことで負担を最低限に抑え、急に増えた受注に対してもパンクせずに対応することができています。

また、ライブ配信の回数が増え配信時間も長くなっている中でも、メンバーは「もっと働きたい」と言ってくれているんです。自分の成長機会だと捉え、前向きに挑戦しようというメンバーが多くなってきている実感があり、それに伴って待遇面のアップデートも意識しており、残業代はもちろん、実績を出せば手当も出るし、休みの取りやすさなど常に工夫していっています。一所懸命やって成果出した人がきちんと評価されるようになるよう、評価制度なども改めて見直しています。

私がキラガに戻ってからほとんどのスタッフが入れ替わり、新しい会社、第二創業期のような活気ある雰囲気になりました。今のキラガは、新しいことに挑戦したい方にぴったりの会社になっていると思います。

さらに次のステップへの挑戦。課題や優先度の整理に、プロ人材との壁打ちは有用。

ーーありがとうございます。長く協働を続けてくださっているからこそ、売上の変化など数字で見える成果だけでなく、組織自体の変革も実を結んでいっているようでとても嬉しく思います。次に挑戦したいことについても教えていただけますか?

太田:はい。今後やりたいことは3つあります。1つはライブの規模をもっと大きくしていきたいということです。人をもっと増やし、複数アカウントの運用やクオリティの更なる向上を目指したいです。

2つ目は提携パートナーとのライブ配信の実施です。これまでは卸売で、宝石の小売店など店舗にジュエリーを卸していましたが、今後は異業種や個人の方にも卸し販売を行い、その方達とライブ配信でエンドユーザーとなるお客様に商品をみていただけるようにできたらと考えています。

3つ目は海外のお客様への直販取引の開始です。すでに中国のSNSを使い始めるなど、反応を探っている状況ですが、新しいチャレンジとして向き合っていっています。まだまだやりたいことがたくさんあるので、協働プロの皆さんと相談しながら進めていけたらと思っています。

ーーそれでは最後に、協働日本へのエールも込めて一言メッセージをお願いします。

太田:大手企業で成果を出しているプロ人材と壁打ちができて、自分がどう動けばいいか、優先度に迷う時にアドバイスをいただけることに本当に感謝しています。

新しいことに挑戦したいが、迷っているような人には本当におすすめできるサービスだと思っています。協働日本のクライアントの多くはプロジェクトごとに伴走支援が入られていると伺っていますが、私のように広い範囲に悩みがある、課題が多くて整理したいという方にもおすすめできると思っています。

これからもどうぞ、よろしくお願いします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

太田:ありがとうございました!

太田 喜貴 / Yoshiki Ota

株式会社キラガ 常務取締役

2012年、北海道大学工学部を卒業後、豊田通商株式会社に入社。主に自動車業界を担当し、オフィスITシステムの全世界展開や、中国駐在を経験し中国自動車製造ラインのシステム立ち上げなどのプロジェクトに従事。
2021年より、父が創業者である株式会社キラガに入社。常務取締役に就任。管理部門、小売部門の統括を行う。

株式会社キラガ
https://rings-kiraga.com/

協働日本事業については こちら

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STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -「お友達とジュエリーで遊べる宝石店」協働日本との壁打ちで気づいた強みを活かして売上200%に増加–


NEWS:【8/30(金)14:00~】「かごしまスタートアップ推進協議会」基調講演に代表の村松が登壇します

「かごしまスタートアップ推進協議会」基調講演登壇のお知らせ 『鹿児島からイノベーションを創る』

この度、8月30日(金)に開催される、鹿児島県主催の「かごしまスタートアップ推進協議会」にて、代表の村松が、基調講演を担わせて頂くことになりました。

お申し込みはこちらから
令和6年度かごしまスタートアップ推進協議会の参加者募集について

『鹿児島からイノベーションを創る』と題し、スタートアップを取り巻く環境や、創出・育成するための支援など、オープンイノベーションに関わるみなさまが集まるイベントとなっております。

代表の村松は、第一部の基調講演『成長する起業家と必要な支援について』にて、登壇させていただきます。テーマは『企業の成長過程における支援の在り方について』。

鹿児島県内の事業者のみなさま、企業支援に関わられている方、是非ご参加頂けますと幸いです。

セミナー概要

かごしまスタートアップ推進協議会 「鹿児島からイノベーションを創る」

■ 日時:8月30日(金)14:00〜17:00
    (開場:13:30〜)

■ 場所:鹿児島大学稲盛会館  キミ&ケサ メモリアルホール
    (鹿児島市郡元1丁目21-40) ※オンライン配信も実施します

■参加費:無料

■定員:現地:100名
※現地の参加希望が定員に達した場合は,オンラインでの聴講をお願いする場合があります。その場合は,8月29日(木)までに記載いただいたメールアドレスへ県から連絡を行います。

■ 募集締切:8月27日(火)12:00まで

内容・登壇者

【来賓挨拶】

 鹿児島大学 理事・副学長(企画・社会連携担当)
 岩井 久氏

【第1部】基調講演

 - 成長する起業家と必要な支援について –

 『成長する起業家とは』
 株式会社ビジョン 代表取締役会長CEO
 (一社)鹿児島イノベーションベース 代表理事
 佐野 健一氏

 『企業の成長過程における支援の在り方について』
 株式会社協働日本 代表取締役社長
 村松 知幸氏

【第2部】対談

 - 地方におけるオープンイノベーションの可能性 –

 株式会社eiicon イノベーションコンダクター事業部 部長
 新宮領 宏太氏

 株式会社MTG Ventures 代表パートナー
 伊藤 仁成氏

お申し込み方法

申し込みフォームに情報を記入してください。

令和6年8月27日(火)12時までにお申込みください。
令和6年度かごしまスタートアップ推進協議会の参加者募集について

皆様のご参加を心よりお待ちしております。


セミナーのご案内


お申し込みはこちらから
令和6年度かごしまスタートアップ推進協議会の参加者募集について

お問い合わせ・連絡先

鹿児島県商工労働水産部産業立地課新産業創出室
TEL:099-286-2964
FAX:099-286-5578 担当:紀(きの)
E-mail:startup@pref.kagoshima.lg.jp

協働日本
ippo@kyodonippon.work

STORY:税理士法人のむら会計 野村篤史氏 -ビジネスの第一線で活躍するIPPOコーチだからこそ、経営者の悩みに寄り添ってもらえる-

協働日本で生まれた事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

協働日本のコーチングプログラム「IPPO」を受講された方・企業の方をお招きし、コーチングを受けたことによる変化についてインタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、税理士法人のむら会計の代表 野村 篤史氏にお越しいただきました。
税理士法人のむら会計は石川県金沢市玉川町で 50年以上続く会計事務所です。

前身である「野村清会計事務所」、「株式会社 野村経営センター」、「田丸会計事務所」を経て平成26年に現在の代表である野村氏が事業承継のためにジョインされ、2社を統合する形で税理士法人を設立されました。

野村氏は23歳で公認会計士の資格を取り、大手の監査法人に入社。30歳の頃、奥様のご実家の会計事務所を事業承継されることになりました。事務所の立て直しと並行して組織をマネジメントしていくことが求められる中で、IPPOのコーチングの受講を開始。

インタビューを通じて、コーチングを受けたことにより生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

自己分析だけでなく、組織変革も同時に相談できるIPPOのコーチング。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、IPPOのコーチング受講を決めたきっかけを教えていただけますか?

野村 篤史氏(以下、野村):よろしくお願いいたします。

税理士法人のむら会計の前身である「野村清会計事務所」は、妻の祖父が創業者で、名前や体制を何度か変えながらも、金沢で50年続く会計事務所になりました。2代目はお弟子さんが継いでおり、私で3代目になります。

私は23歳で公認会計士の資格を取ってからずっと東京の大手監査法人で上場企業向けの会計監査に携わっていたのですが、30歳頃に事業承継の打診を受けたことで思い切って妻の故郷である金沢に移住し、入所、その後代表に就任したんです。


自分で事務所を経営していくことになり、売上を作るための営業やマーケティング面、組織作りなど、全体の整理を始めました。前者はなんとか上手く進められて、顧客も少しずつ増えていったのですが、組織のマネジメント面では非常に苦労しまして……長く勤めている職員も多いですし、歴史のある会社だからこその難しさに直面しました。

そこで、組織の立て直しやマネジメントのために、自分自身もコーチングの勉強をするようになったのですが、その中で自分自身のことを客観的に理解する重要性に気づきました。

ちょうどその頃、同じ金沢で老舗の発酵食品会社を経営されている、四十萬谷本舗の四十万谷正和さんからのご紹介で、協働日本代表の村松さんと知り合いました。村松さんは元々のキャリア的にも人事のプロですし、相談に乗っていただく中でIPPOのコーチングのことを知り、自分のことを理解するきっかけを貰えるのではないかと思い、受講することを決めました。

ーーなるほど。実際にIPPOのコーチングではどのようなことをされているのか教えていただけますか?

野村:基本的には月に1度のセッションを通じて、自分の中の振り返りをしています。コーチとしては協働日本代表の村松さんに担当していただいていて、2020年から受講をはじめて今年でもう5年目になります。
これまでのセッションでは、壁打ちのように話を聞いてもらうだけではなく、キャリアアンカーやライフラインチャート(※)を作成して自己分析を行ったり、人事制度についての相談を受けてもらったりすることもありました。

IPPOのコーチングでは純粋なコーチングというよりも、メンタリングのように新しい視点を示唆するように、アイディアや考え方のヒントを貰えるところが魅力だと思っています。
私自身は、結構自分だけでも考えを整理できるタイプではあるのですが、村松さんのコーチングを受けることで自分の中になかった知識や視点が増えていきましたし、仕事で一番悩んでいた人事のことについて人事の専門家としてのアイディアをいただけたことがありがたかったです。

ーー思考の整理やモチベーションを高めるような一般的なコーチングだけでなく、事業の相談にも乗っていただいていたんですね。

野村:はい。村松さん自身が経営者ということもあり、私自身の個の成長と、事業の成長の両輪を支援、伴走してくださいました。

のむら会計は元々、文鎮型組織のように私がトップにいて、部下は横並び、全員私が直接マネジメントをするような構造になっていました。IPPOのコーチングを受けるようになって、タイミングを合わせるように組織構造化を図っていったんです。なので、組織構造をどのようにすればよいかであったり、評価制度の在り方であったりという人事の悩みについてご相談することがありました。

自分の中で整理をした上で「このような制度にしようと思っている」、という話をセッションの中ですると、その考えに至った私自身の思考、理由や背景を深掘りするような質問をしていただけるんです。

深掘りする中で、新しい視点のヒントや、自分でも気づかなかったような本質的な部分への気づきなどがあり、絶対的な答えがない中でも納得感を持って意思決定をできるようになっていきました。

事業への単なるアドバイスだけでなく、意思決定者である私自身に向けたコーチングを並走してくださったことで、納得感がある決断を後押ししていただいてるように感じます。


まるでルービックキューブの裏面を想像するようにに、コーチの質問で新たな視点に気づけた。

ーーご自身を理解することをきっかけの1つとして受講されたとのことでしたが、組織変革など幅広い整理をされたようにお見受けします。IPPOのコーチングを受けてみて感じた変化や、成果と感じられることがあれば教えていただけますか?

野村:そういったアドバイスをうけて~~気持ちが整理~~課題が明確になりました。

課題だった組織の構造化を進めたことが1つの大きな変化であり、成果だと思います。

文鎮型組織時代は、私が1人で14人の部下と1on1を実施していました。自身もコーチングを学んでいたこともあり、1on1や部下との対話自体に大きな問題はなかったのですが、リソース面での厳しさがありました。

相談しながら構造化を進めた結果、部長を3名置き、約5人で1チームの体制で各職員との1on1を任せることにしました。私と職員との直接の接点は減ってしまうものの、私自身は細かいところに惑わされず、経営者がすべきことに集中できるようになりました。

部長たちもそれぞれ責任を持って部下を見てくれるようになり、職員たちも今までよりもしっかりと話を聞いてもらえる環境になったのではないかと思います。

もちろん、トップと職員が直接話をする機会が減ってしまうことのデメリットもあると思いますが、トータルで見るとポジティブな面が大きかったと思っています。

また、私自身、事務所の経営について迷うことも多かったんです。監査法人勤めからいきなり事業承継をしたということもあって、既に長く続いていた体制の中に入って部下を抱えることの難しさに、時に弱音を漏らしてしまうこともありました。それでもコーチングの中でネガティブな面にも寄り添っていただきながら、整理をしていくことができたことで、結果的に諦めることなく変革に取り組むことができました。

ーー精神的な面でも、実務的な面でも、一歩踏み出していくことができたんですね。長くコーチングを受けられている中で、野村さんご自身は、「コーチングを受けることの価値」をどのように考えていらっしゃいますか?

野村:そうですね。やっぱり、自分だけの視点で物事を整理するとどうしても観点が偏ると思うんです。その点、コーチングのセッションの中では「この人の立場だとどう感じると思いますか?」「今の時点ではそう思うかもしれないが、長い時間軸で考えたらどうですか」など、他の人の立場や、長期的な目線に気づくきっかけになる問いをもらえるんです。

自分の視点や価値観に基づいた整理は一人でも十分できるかもしれませんが、視点を切り替えるための質問や考え方は、なかなか自分だけでは出せません。

ルービックキューブで例えると、全部で6面あるうち、自分の視点からは3面しか見えないじゃないですか。でも裏側にも必ず3面ありますよね。自分の視点だけでは見えない反対側の面は、他の人の言葉を聞かないと見えてこないんです。

私から見えない反対側の3面は、事務所の職員の視点からしか見えないかもしれないわけです。だから、第三者に自分から見えない視点のヒントを振ってもらうことで、想像して解像度を上げていくことができるようになる。

対話の中で、自分だけでは出せないような視点の質問をもらえることで、新たな見え方ができるようになるというのがコーチングの価値ではないかと思います。

協働日本の強みは、多様なキャリアと専門性で「内面から引き出す」力。

ーーIPPOでは、ほとんどのケースで「複業人材」がコーチを務めています。こういったIPPOのコーチ陣の特徴についてはどのように思われますか?

野村:コーチングを受ける側としては、皆さんがそれぞれ「コーチ」として以外にも色んな立場や仕事を経験されているほうが、近い立場で対話できるように感じます。「組織勤めをしているからこそわかる悩み」や「自分で経営をしているからこそ持っている目線」などが受講者の本心を引き出すことに繋がるのではないでしょうか。

実際、同じ悩みを経験されている方のほうが、「わかってもらえる」と感じて話しやすい面があります。例えば私は村松さんにコーチをしてもらっていますが、村松さんご自身も協働日本を経営されている経営者でもあるので、同じ経営者として近い立場から意見を聞きたいと思える部分があります。もしも専業コーチの方であれば、「言ってもわかってもらえないかも」と感じて、そこまで深い部分の話ができなかったかもしれません。

IPPOのコーチの皆さんは、それぞれが色々なキャリアを経験している強みがありますよね。私自身も、村松さんを単なる「コーチ」としてだけでなく、「同じ経営者」として、また「人事の専門家」としても頼りにしています。


ーー引き続き、IPPOのコーチングを受講されるとのこと、今後の展望や期待について教えてください。

野村:はい。今までの4年間は、自分だけがコーチングを受けていましたが、5年目に入ってからは、部長陣にもコーチングを受けてもらうことにしたんです。

私が部長の悩み相談を受けると、その相談についての回答が指示になってしまう可能性がありますし、本人たちも気軽に相談もできないかもしれません。私も時に弱音を吐かせてもらったように、嫌なことがあれば遠慮なく「嫌だ」と言えるようにしたい。だからこそ、外部の方に相談できる環境を作りたかったんです。

IPPOのコーチングであれば、人事分野の専門家の方もいらっしゃるので、組織としてもコーチングを受けていくことで、部長陣のマネジメントにも新たな視点や成長が生まれると思います。

部長陣が成長していくことによって、組織が更に自立していくことを期待しています。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本へのエールも兼ねて、一言メッセージをお聞かせください!

野村:地元金沢で税理士業をやっていると、協働日本の伴走先企業の経営者からお話を伺うことがあります。

中小企業は社長の知識やこれまでの経験をもとに動いていることも多いです。

素晴らしいアイディアを持っていても、リソースの面で想いを実現するのに時間がかかっていたり、社員の育成を行う余裕がないこともあります。そういう状態の会社には、やはり外部の専門家の視点を入れるべきだと私は思っているんです。

協働日本には、IPPOのコーチだけでなく、協働プロにもコーチング経験者が多いので、上から知識を与えるのではない、内面から引き出すようなコンサルができることが強みだと思っています。

色んな角度から、中小企業の皆さんが自ら事業の発展を生み出し、元気になれるようなサポートをしていただきたいと思っています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

野村:ありがとうございました!

野村 篤史 / Atsushi Nomura

慶応義塾大学を卒業後、公認会計士資格を取得。大手監査法人で最先端の会計・税務を習得し、さらに金融機関の監査を経験したことで、お金を貸す立場からのモノの見方を学ぶ。

単に税金の知識だけでなく、金融機関監査で得た金融の知識やコーチングの技術を組み合わせて、「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションとしている。

協働日本事業については こちら

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STORY:株式会社味一番フード 村上良一氏 -協働で見出した宝の山。既存商品ブラッシュアップで販売数5倍増。-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社味一番フードの代表取締役専務 村上 良一氏にお越しいただきました。
株式会社味一番フードは石川県の創業約50年のうどん・蕎麦を中心とした飲食業を営む老舗企業です。

最初は約8坪の小さなうどん屋さんとしてスタート。その後、ショッピングセンターへの出店が1つのきっかけになり、郊外型独立店の展開やチェーン展開と裾野を広げ、現在は石川・富山で9店舗を運営されています。

コロナ禍を通じて感じた飲食店業態の脆さから、飲食店の運営以外の新たな事業の開拓や柱作りの必要性を感じたという村上氏。その新規事業への挑戦に協働プロが伴走しました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

株式会社味一番フードの運営する飲食店「めん房本陣」

飲食店だけでない新たな柱作りを。商品開発にもがく中で得た、運命の出会い。

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

村上 良一氏(以下、村上):はい!よろしくお願いいたします。

ちょうどコロナ禍に入った頃、皆さんご存知の通り飲食業界は大打撃を受けました。安心して外に出られる世の中でなければ、わざわざ外食する機会もないのだと改めて気づき、飲食店の経営という業態の脆さを感じることになりました。


とはいえ、自分たちにとって「飲食店」は主たる事業ですし、今後も弊社の柱であることには変わりません。一方で会社としての安定的な経営、成長を考えると、飲食とはまた違った新たな事業の開拓と新たな柱づくりに取り組まなくてはならないと危機感を覚えました。

そこで、自分たちの長所を掛け合わせた新たな取り組みとして、まずはお店をご利用いただくお客様に商品を販売してみてはどうかと物販を始めたものの、売れ行きはあまり芳しくありませんでした。

商品開発や物販は自分たちにとって未知の領域でしたので、やはり専門人材の知見やアイディアなど力を借りる必要があると思っていたところ、石川県が主催する「複業人材の活用セミナー」のお知らせが目に入りました。

元々、複業人材の取り組み自体は新聞などで読んで興味を持っていたんです。

都市部で頑張っている方々の知見を頂きながらの取り組みは、ローカルにありがちな広い視野や専門性に特化した人材・コンサルタントが少ないという現状をカバーすることができ、会社の課題を解消していくために面白い取り組みだと思っていたので、セミナーに参加することにしました。

ーーなるほど。実際に協働日本の取り組みについての話を聞いていかがでしたか?

村上:実際にお話を聞いてみると、協働日本代表の村松さん、そして協働日本自体が、非常に熱い想いを持っていたことに魅力を感じました。どんな仕事でもパッションを持っていないとうまく行かない側面があると思っていたので、弊社の想いに共感していただけそうだと感じました。

協働日本は協働プロがチームを組んでプロジェクトに参画するという点も魅力的でした。他にも複業人材のコンサルティングサービスを提供する企業と比較検討したのですが、いずれも、個人がプロジェクトを担当するという取り組み形態でした。

協働日本は様々な得意分野を持つ協働プロが、プロジェクトの目的や状況によって入れ替わることもあるともお聞きし、コロナ禍以降の柱づくり、物販のノウハウ・開発と幅広く、中長期的に取り組みたいと思っていた弊社にとってはメリットや効果が大きいと思い、協働を決めました。

今となっては、たまたまセミナーを主催する石川県の担当の方との繋がりがあったことすら、一つの運命だったように思います(笑)。


自社の強み・お客様と向き合う──家族団欒のイメージでブラッシュアップした商品の販売数は約5倍に。

ーー協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

村上:先ほどお話しした通り、新しい事業の柱を作るための商品開発や店頭での物販についてのプロジェクトを進めています。

協働プロとしては、枦木優希さん、松尾琴美さん、加藤奏さんの3名に伴走していただいています。弊社からは、私の他に物販全般・販促などの担当者と、実際に商品を開発製造する製造部門の担当者が毎週のセッションに参加しています。

一番最初に概念的な戦略・コンセプトを考えるセッションからスタートし、その後考えたコンセプトに対してどんな商品にできるかという商品開発に取り組み、コスト計算など数値的な設計や販売計画を作成、販売開始という流れでプロジェクトが進んでいきました。

ーーなるほど。ぜひ順を追って、具体的な内容を教えていただけますか?

村上:はい。コンセプト設計では、「自社の強み」「どんなお客様がいらっしゃるのか」「ニーズ」などを初め、概念的なことを整理していきました。

概念というのは当然目に見えるものではないこともあり、どのように言語化すればよいのか、当初とても苦戦しました。

開発した商品は、実際に店頭で販売するということもあり、お店にお越しいただいているお客様のシチュエーションやニーズなどを想像するようガイドいただいたことで、店やお客様の特徴や強みを全員で考えることができ、チーム一同で共通の世界観を言語化できました。

実を言うと、当初はコンセプトづくりにそこまで時間をかけるべきなのか?と思っていたのですが、今になって振り返ると、販売計画など後々のステップでも常にコンセプトが軸になっており、とても重要なフェーズだったと気づきました。

軸になる考え方や世界観をチームで考え抜き、共通言語にするステップを経たからこそ、共感や共鳴が生まれやすくなり、取り組み方がスムーズになると実感しました。


ーー出来上がったコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?

村上:私たちのお店には、お子様連れの家族でお越しになるお客様が多いこともあり、小さなお子様を中心に、ご家庭でも家族皆でほのぼのと食べられる、そんな商品を目指していきたいと決めました。

その後、商品開発に移るのですが、いくつか協働プロの皆さんにご提案いただいた商品候補案の中から、これまでもお土産として販売し、ご注文から提供までの間にも試食としてお出ししていた、うどんの生麺を揚げたスナック菓子「うどんスティック」を改めてブラッシュアップして、新たな物販商品にすることに決めました。

商品開発のフェーズではコンセプトに沿ってより具体性を持たせ、現実化させるための落とし所を見つける作業を行いました。
商品の品質をどう捉えるか、販売価格に対して包材などのコストのバランスを考えるなど、協働プロの皆さんにはうまく誘導していただいたと思います。

コンセプトへの想いが強ければ強いほど費用が嵩んでしまいがちで、商品のコスト設計には苦労しましたが、経営的な視点を持って利益設計をするアドバイスを得て、商品価値とバランスのとれた設計を目指しました。

ブラッシュアップして実際に出来上がった商品は「ポリポリさん」と名付けられました。先ほどもお話しした通り、元々店舗でお土産用の商品として販売し、ご注文から提供までの間に試食としてお出ししていた「うどんスティック」が元になっています。

協働プロの皆さんが店舗に視察にいらっしゃった際に食べていただいていたのですが、「うどんスティック」とは呼ばれず、「あのポリポリしたの美味しいよね」というコメントが結構出まして(笑)。

商品の提案をいくつかいただいた時にも「あのポリポリ」が候補に上がり、いっそのこと名前も「ポリポリ」にした方がイメージもしやすく親しみやすさも出ていいんじゃないか?とネーミング変更に踏み切りました。またイラストレーターの方に「ポリポリさん」をキャラクター化して絵を描いていただき、家族のキャラクターも誕生しました。主役のポリポリ君と、妹、両親、祖父母の6人家族──当初のコンセプトである、子供を中心にご家族で楽しんでいただくというコンセプトにもぴったりの商品になりました。

「うどんスティック」としてお土産用に販売していた時代と比べると、リニューアル後は月販ベースの売上個数が5倍近くに伸長するなど、成果が目に見えて表れています。現在は販売データの分析を行って今後の売り方や方向性を協働プロに丁寧に見ていただき、検討を進めているところです。
実際に分析をしてみると、当初ターゲットとして想定していたファミリー層以外にも、高齢のご夫婦などにも買っていただいているようです。
「ポリポリさん」を通じてお客様のコミュニケーションが促進されている様子が伺え、世代を超えて愛される店舗としても、さらなる魅力強化にもつながっているのではないかと思います。

実際に商品化された「ポリポリさん」。名前からその食感が伝わってくる。

協働を通じて獲得した「粘り強さ」──魚を採ってきてくれるのではなく、釣り方を学ぶ必要性。

ーープロジェクトに参画されている社員の皆さんの反応はいかがですか?

村上:協働プロジェクトは始まる前から物販の開発をやっていたメンバーなので、先述の通り失敗も経験していました。

どんなものが売れるのか、何が大切かを知ることに飢えていたところがあり、自分たちの知り得ないこと──新しい知見や学びに対して最初から前向きに取り組めたと思います。

メンバーは大変な思いをしてくれていました。まさに産みの苦しみ。誰かが答えを出してくれるわけではなく、自分で見つけなくてはいけませんから。

協働プロは上手く問いをくださるのですが、決して答えはもらえないので、「今週答えが出なかったので、また来週までに考えましょう」となるわけです。聞いても答えは教えてくれない。あくまで自分たちの中から生み出さなければ意味がないと。例えるなら、魚を採ってきてくれるのではなく、釣り方を教えるから、自分で釣ってみてくださいと。自分の中でわからないことをわからないで済ませずに、それをどうわかろうとするかという粘り強さを、協働を通じて持ち得ることができたように感じます。

ーーありがとうございます。先ほど「学び」の観点のお話をいただきましたが、ここまでの協働を通じて、実際社内に「残ったもの」や「自分たちのものにできたノウハウ」などはありますか?

村上:そうですね。マーケターである枦木さんには、フレームワーク的な形で取り組みをまとめてくださり、プロジェクトを進めていただいているので、これはわかりやすく他の取り組みにも再現性があると思っています。

マーケティングの知識も販売計画の中に盛り込まれているので、ただの知識として頭でっかちにインプットするのではなく、実感を伴ってマーケティングの要素を学ぶことができ、活用イメージも持ちやすく、座学の何倍も得られたものは大きかったと思います。

また、これは協働プロの皆さんに共通することですが、必要なこと、大切なことについて決して妥協せず、表面的なところで終わらせずに深掘りして、納得できるところまで粘り強く答えが出るまで待ってくれる、そういった回答を促してもらえていることがとてもありがたいと思っています。

先ほども社員メンバーの「粘り強さ」の話をしましたが、協働日本はまさに「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」人たち。自分たちで釣り方を見つけ、答えを生み出すまで「待ってくれる」姿勢だからこそ得られた学びは大きいですし、だからこそ、協働プロの皆さんへの信頼も厚くなっていきました。

皆さん大きな会社の商品開発や販売をなさっていますが、蓋を開けてみると、地味なことを大切にしているんだなと少し驚いたこともありましたね。

例えば、毎週の売上状況の分析など、コツコツと見ていただいていると、地味なことの繰り返し・継続が大切なんだと改めて感じます。ローカルの人材はどうしても、目先の忙しさ故にそういった基本的なことに集中しきれない、妥協しがちなところもあると思います。

協働プロの皆さんは意識されていないかもしれませんが、妥協してもいいところと、妥協してはいけないところを理解されていて、必要なところに集中することの大切さもあらためて実感しました。

現実だけではなく、ワクワクする夢を見る。協働で得られる新たな視点が、日本企業の可能性を広げる。

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味がおありだったとのこと。実際に、サービスを活用してみて、複業人材の取り組みは今後広がっていくと思われますか?

村上:周りに困っている方がいたら、ぜひおすすめしたいと思いますね。

協働日本とのプロジェクトにおいては、良いところも悪いところも曝け出さなくてはいけないと思っているので、プライドや恥ずかしいという気持ちを通り越し、将来への危機感やこうありたいという情熱を持ち合わせている企業の方の方が相性がいいと思います。

言い換えれば、現状の企業風土を維持したままを希望されていたり、すぐに答えだけほしい、というケースでは合わないかもしれません。

最近では複業人材活用で、うまくいっていないケースの話もたびたび耳にすることがあります。やはりニーズや状況により活用の仕方を検討する必要はあるかもしれませんね。

「複業人材」自体を、短期的な「成果を得るためのもの」というふうに取り入れるよりも、社員と交わらせ学びを深め、地力をつけるための「先行投資」と考えるなど、捉え方自体も変えていくのはどうでしょうか。

私としては、「こうしたい」という将来へのワクワク感を企業の経営者は持つべきではないかと考えていて、自分たちに何ができるのか、行動することが大切だと思っています。

どうしても目先の忙しさ、現実だけに目が行きがちなのですが、妥協せずに楽しむような仕事のスタンスで複業人材と一緒に取り組みを進めていくと、新たな視点を得ることができます。視点や世界観を変えれば、自分たちの会社や事業がもっと輝いたり、違う発展を遂げていくこともあり得るのではないでしょうか。

ーーありがとうございます。最後に、協働日本へのエールも兼ねて、一言メッセージをお聞かせください!

村上:味一番フードでは、物販事業など目に見える事業などの助言をチームでいただいていますが、目先のことだけではない、会社を俯瞰して見た時の企業文化の醸成や再生についても、相談できるのが協働日本の強みですね。

もっと取り組みが広がって、協働日本が踏み込んでいくことで変われる企業がもっと出てくると、さらに唯一無二の存在になるのではないかと思っています。

競争社会において、コモディティ化するような成長では結局価格競争に陥ってしまいがちです。私たちが取り組んでいるような事業の活性化、企業文化の再生・ブルーオーシャン戦略など、自信を失いかけている日本の地方企業の第三の選択肢を一緒に探してくれる味方になっていってほしいと思っています。

自社の社員を見ていても感じることですが、自分以外の視点──お客様など他者の視点で見ると宝の山が見えたりすることがたくさんあります。協働日本が入ることで、皆が新しい視点を持ち、ワクワクに気づいて夢を持てるようになってほしい。そんな企業として協働日本が成長してくださったらいいなと思います。

難しいことを言っているかもしれませんが、前向きで情熱のある方々だからこそ、そういうところに期待してしまいます。1年間のお付き合いの中で感じる正直なところです。これからもよろしくお願いします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

村上:ありがとうございました!

村上良一 / Ryoichi Murakami

大学卒業後、東京の不動産会社(リゾート物件)にて営業職を5年経験。その後、(株)味一番フードに入社。以後「めん房本陣」「そば処花凛」など計10店舗以上の新規出店に関与。それ以外にも店舗改善・商品開発・人材採用育成・DX化など幅広い業務に携わる。現在、会社の第3の柱として物販商品の開発・ブランド化に向けて邁進中。

協働日本事業については こちら

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