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VOICE:協働日本 相川 知輝氏 – 日本のユニークな「食」の魅力を後世に伝えていきたい –

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回インタビューするのは、株式会社ひまじんの代表で、SNSやECの支援や新規事業の立ち上げを専門に活躍されている相川 知輝(あいかわ ともき)氏です。

会社を経営しながら、創業100年を超える飲食店に特化した情報サイト「老舗食堂」を運営されています。これまでに2000軒を超える老舗店を訪問してきた相川氏は、「日本で一番老舗飲食店に訪問している人」として老舗の魅力を語る機会も最近は多いそうです。

2002年に新卒でドコモに入社しその後、大手広告代理店での業務を経験し、2014年に株式会社ひまじんを立ち上げ、独立された相川氏。企業プロモーションや新規事業の立ち上げ支援のほか、事業のコンセプト立案から施策の策定、その後の営業活動についても多くの企業に伴走しています。

日本の食文化を守り伝えていきたいという相川氏の想いと、協働を通じて地域と働く人を活性化していきたいという協働日本の想いが重なったことをきっかけに、昨年協働日本へ参画し、複数のプロジェクトを推進する相川氏。

これまでのご自身の経験を活かし、鹿児島の企業を中心にEC・食に関するプロモーション支援を通じて地域企業の伴走支援に取り組んでいます。

協働先の鹿児島企業で生まれた、伴走支援の効果や変化、協働日本の今後の可能性についてだけでなく、ご自身のこれまでの歩みや「食」を軸とした情報発信への想いも語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

自身の「老舗」や「食」への想いと、協働日本の想いがシンクロした

ーー本日はよろしくお願いします!企業のプロモーション支援を中心としたお仕事だけでなく、創業100年を超える飲食店に特化した情報サイト「老舗食堂」を運営するなど、食を軸とした情報発信も積極的にされている相川さん。ぜひ今回、協働日本で活躍する協働プロのお一人として、色々とお聞きしていきたいと思います。

相川 知輝氏(以下、相川):よろしくお願いします!

ーーまずは、相川さんがなぜ日本で共に取り組むことを決めたのか、きっかけをお伺いできればと思います。

相川:自身が「老舗食堂」という老舗の飲食店を紹介するメディアを運営していることもあり、地域を元気にする、日本全国を盛り上げていくような仕事には、かねてから興味を持っていました。

現在、東京と富山県滑川市での2拠点生活をしています。それも、地域を元気にしたい、そのためにまずは地域に入りたいと思い、大体月に1週間ほど滑川市に滞在しています。

そんな中で、よく一緒に仕事をしているデザイナーの知人から、協働日本で広報をされている郡司さんをご紹介いただき、協働日本の想いや実際の活動などをお聞きしたことがきっかけでした。

協働日本というプラットフォームを通じて、自律的に働く協働プロと呼ばれるプロ人材が、地域事業者様にチームで伴走し、本気で協働に取り組んでいるということや、実際に生まれた変化などをお聞きし、とても興味を持ちました。

地域の企業の経営課題や成し遂げたいテーマに合わせて、協働プロが最適なチームを組んで取り組むスタイルなど、お話を聞くうちにますます興味が湧いてきまして、さっそく都内のカフェでお打ち合わせをさせていただきました。

ーーその節はありがとうございました!実際にお会いして、色々とお話しできて良かったです。

相川:実際に協働日本代表の村松さんと、広報の郡司さんにお会いでき、色々なお話をお聞きしました。その際に伺った、金沢の四十萬谷本舗さんの取り組み事例などはとても印象的でしたね。

伝統食「かぶら寿し」が有名な、140年以上の歴史を持つまさに老舗の四十萬谷本舗さんが、都市の複業人材・協働プロと一緒に、新しいターゲット開拓や経営戦略や経営構造の変革に取り組んでいるというお話をお聞きしました。

私自身が大切にしている「老舗」や「食」への想いと、協働日本の考えがとてもシンクロしていると感じ、その場でぜひご一緒させて頂きたいとお伝えしました。

その後、協働日本が受託した鹿児島県および鹿児島産業支援センターの「新産業ネットワーク事業」などの機会を通じて昨年、鹿児島の企業3社に伴走させていただけることになりました。

いずれも食に関連する企業で、ECやプロモーションに課題や問題意識を持っている企業様です。

自分のこれまでのキャリアからの経験や知識を活用しつつ、ひとつでも多くの成果を生み出せるよう、約半年間色々と試行錯誤を繰り返してきました。

鹿児島県庁で行った「新産業創出ネットワーク事業」の報告会の様子

鹿児島の「食」を一緒に全国へ広げていく

ーー具体的にはどんな伴走型支援を行ったのでしょうか?

相川:お手伝いさせて頂く内容は様々ですが、上流工程の「なぜ選ばれるのか」、「どう勝ち続けるのか」の戦略の部分から、商品作りからお手伝いするケース、サイト改訂、新規を伸ばすためのPR支援と様々です。

例えば、鹿児島市内や東京都内にに飲食店を展開している株式会社ネバーランドさんとのお取り組みでは、コロナ禍の中で新たに自社のECサイトをオープンするというチャレンジを、自らの経験や知識を活用してサポートさせていただきました。

鹿児島市が本社で、こだわりのお肉を全国にお届けする通販事業や精肉販売事業、卸売事業を行っている株式会社1129さんとの取り組みでは、こだわりのお肉を作った新商品開発のサポートだけでなく、Twitterを活用したキャンペーン、ニュースリリースの発信、試食会の実施などもアドバイスさせていただきました。

共通しているのは、「どう売り上げを伸ばすか」なのですが、企業さまのステージや強みに合わせて、施策を考え、仮説を一緒に立てながら伴走し、共に悩みを共有し実行してきました。

ーー伴走型支援を通じて生まれた、協働先の変化について教えてください。

相川:目に見える結果に繋がった瞬間もそうですが、なにより、結果が出てくる過程で、社員の方々がどんどんと前のめりになってくれる瞬間に何度と立ち会えたことがとても嬉しかったです。

例に上げた株式会社1129さんでは、1つのキャンペーンが実施できた後は、リリースやキャンペーンを自発的に進めてくださり、より良いパフォーマンスが出るように、様々な工夫を重ねられています。

株式会社ネバーランドさんでは、自社の強みを「接客」と「商品力」の掛け合わせであると再認識されて、昨年末からEC商品を店頭で販売する施策を実施し、年末キャンペーンでは大きな成果を残すことが出来ました。

直近のプロモーションで、年末商戦を上回るような成果がなかなか挙がらない中でも、一回うまくいかないからってあきらめるという発想になっておらず、社員の方々一人ひとりが改善を繰り返しながら次の施策に取り組んでいます。

ネバーランド社長の加世堂さんのリーダーシップあってこそだと思いますが、成果が出なかったのであれば「なぜ」を考えた上で、別の方法を試し続けるという発想でマネージャーから店舗の従業員まで試行錯誤している姿を見て、会社組織としてますます強くなっていると感じています。

施策の成否は、施策の組み立てだけでなく、実行プロセスもとても重要です。実行面を細かく詰め切れるかはある種の情熱がないと難しいと感じているので、実際に担当者が考え動いてくれるのを見るのは勇気づけられますし、協働のあるべき姿なのだと思っています。

ーー相川さんが、これから協働日本を通じて実現したいことはなんでしょうか?また参画したことで得たことや、学んだことがあれば教えてください。

相川:日本の各地に楽しい場所が増えると、日本って更に面白い国になるよなぁって感じています。そんな一助をしたいというのが、一番やりたい事です。今回、協働日本に参画したことで、その想いを再確認しました。

自分の経験を活かせる場面も多くあった一方で、場所やシチュエーションによっては自身の経験ではまだまだ解決できないことも多くあると痛感しました。

今後、アカデミックなインプットや、更に経験を積むことによって、地域そして企業の課題解決をもっと迅速に出来るようにレベルアップしていきたいと思っています。

また協働日本に参画してから、組織内での熱量の重要性をより痛感しています。協働日本では、協業先の企業の代表者と一緒に動くケースが多いのですが、代表者の発する言葉一つで、組織の動きが大きく変わることを実際にこの目で見てきました。

ご一緒させて頂く皆様は、今までの業務を行いつつ、協働日本と一緒に新しい取り組みを「増やす」ことが多いのですが、ただでさえ忙しい中で、どう時間をやりくりするかに課題を抱えているケースは多いと感じてます。

その中で工夫し、プライオリティをつけて施策に取り組むのですが、最後の部分は熱量がやはり大きく、それが出来る経営者の凄みをプロジェクトで体感する事が多いです。私も経営者としてそうなりたい、と感じました。

地域の食文化と、老舗の歴史をアーカイブしたい

ーーそんな相川さんの生い立ちや、協働日本以外のお仕事についてもぜひ教えてください。

相川:愛知県出身で三重県で育ちました。大学卒業後に新卒でドコモに入社しています。その後は大手広告代理店系の仕事をして、2014年に株式会社ひまじんを立ち上げ独立しました。

そういった経歴ということもあり自分の会社では、企業のプロモーションのお手伝いやコンサルティングであったり、新規事業の立ち上げ支援のお仕事をしています。

比重としては、新規事業の立ち上げ支援が大きくなってきていますね。企業さまからご相談を頂いたのち、事業のコンセプト立案から施策の策定をサポートし、その後は実際の営業まで伴走してご一緒することが多いです。

ーー相川さんといえば最近、「日本で一番老舗飲食店に訪問している人」として様々なメディアで老舗の魅力を語る機会も多いですよね。

相川:ありがとうございます(笑)おかげさまで、取材依頼や取材協力、コンテンツ制作協力といったご依頼も増えてきました。

プロモーション支援のお仕事でも、SNSやECのお手伝いが増えています。SNSについては、個人でもTwitterフォロワーが伸びてきており、それを起点にしたご相談を受けることも増えてきました。

運営する「老舗食堂」は月間で15万回以上のアクセスがある

「老舗食堂」とは・・・約100年経過している老舗飲食店の訪問記を載せているサイト。2015年のサイト開設以来、都内を中心とした全国各地の店舗を紹介している。大衆的な店から高級店まで幅広く訪れており、これまでに訪問した老舗店は2000軒を超える。http://shinise.tv/

ーーそんな相川さんが「食」の情報発信、特に「老舗」のお店を紹介したいと思うきっかけは何だったのでしょうか?協働日本での伴走支援でも、その幅広い知識と経験が活かされているとお聞きしており、ぜひお伺いできればと思います。

相川:もともと地方の食べ物、とりわけ郷土食が大好きだったんです。地方にはその土地だから生まれた食べ物があると同時に、色々な理由から消えていってしまう食文化もあって、どうにかしてその日本全国のユニークな食文化を残したいと思うようになりました。

その地域独特のユニークな食文化が凝縮されている存在が老舗なんだと思っています。その老舗飲食店をアーカイブすることが、きっと誰かのためになるのではないか、と思ったんです。それが、「老舗食堂」を立ち上げたきっかけです。

ーー協働日本での活動を通じて、地域を盛り上げていきたいという相川さんの想いに通じる部分ですね!

相川:この取り組みは自身のライフワークとして、今後も続けていきたいと思っています。

地理的な条件と、食文化の関係性について学びを深めようと、今は通信制の大学で地理を学んでいます。

地理的な差異が文化的な差異にどう繋がっていくのかを、アカデミックな視点から研究したいと思っています。将来は、大学院で研究を続けながら、ビジネスにも活かしていきたいと思っています。

老舗の飲食店を訪れ、創業の背景や店名の由来まで掘り下げることも
全国の老舗の飲食店を、多い時で年間で300店舗近く訪ねる

協働日本は、地域と都市をつなぐ媒体・媒介になっていく

ーー相川さんが協働日本で取り組んでいるプロジェクトやこれまでのキャリア、食文化への関心など色々とお伺いでき、私もワクワクしました。それでは最後の質問です。相川さんは、協働日本が今後はどうなっていくと思いますか?

相川:場所を問わずに働くことができる環境や、複業という形で働く人が増えており、東京などの都市で働くビジネスパーソンの鮮度の高いナレッジが、どんどん地域に持ち込まれています。

それによって強い想いをもった経営者や、行政のリーダーがいる地域がものすごいスピードで変わっていっています。そんな中で協働日本のような取り組みが広がっていくことはある種、必然なんじゃないかなと思っています 。

一方で、これからは今申し上げたような「東京から地域」というナレッジの一方通行だけではなく、相互の交流や、地域の中で生まれた成功事例が、「地域から東京」へ都市の大企業やグローバル企業に還元されていくような逆の動きも増加してくると思っています。

私が「老舗食堂」で発信している、創業100年を超えた飲食店にもそれだけ続いているのは訳があるわけで、地域にはまだまだ魅力や学びが詰まっています。

都会と地域の起業家を比較すると、地域側は商圏のサイズもあって、結果的に事業の幅が広くなると感じています。そのため地域の優秀な経営者の方々は、時代の変化により柔軟に対応しています。将来的には地域で活躍する経営者が、東京の大企業のビジネスパーソンに最新のビジネストレンドやナレッジを教えるなんてことも今後増えてくると思います。

そんな時に協働日本が、地域と都市のビジネスパーソンを相互につなげられる大きな媒体・媒介になっていたら、今以上に日本を元気にできると思っています。

私も協働日本の一員として、そんな期待を持っています。 

ーー相川さん、本日はインタビューありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

相川:ありがとうございました!よろしくお願いします。

相川 知輝
Tomoki Aikawa

(株)ひまじん 代表取締役・プランナー

大手広告代理店に勤務時代に、クルマメーカーの日本初Twitterキャンペーンを仕掛ける等、デジタル・イベントを軸としたマーケティング&プロモーションを多く手掛ける(受賞歴複数あり)。
独立後は、大手企業だけでなく、中堅印刷会社における新規事業創出、中堅建設会社の売上向上支援・PR支援(NHK等露出)、ミシュラン2つ星和食店のPR・新商品作り支援、組織コンサルティング会社のマーケティング支援(その後、マザーズ上場)等を行う。

食領域に関心が高く、日本全国の創業100年越えの老舗飲食店を1000店舗以上訪問(日本一の訪問数)。フードアナリスト協会認定アナリスト、東京カレンダー公認インフルエンサー、フジテレビ食番組企画・プロデュース、ラジオ大阪お取り寄せコーナー担当、朝日新聞社での老舗連載等を手掛ける。食関係のTwitterフォロワーは4.2万人強。

専門領域
マーケティング戦略、事業戦略、組織作り、人材育成

人生のWHY
多様性は社会の豊かさのバロメーター。古き良きものを守ると同時に、新しい価値を生み出すことで、より多様性を担保できる社会づくりを目指す。

相川知輝氏も参画する協働日本事業については こちら

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STORY:沼津三菱自動車販売株式会社 齊藤 周氏 -社員が主体性を発揮する、ワンチームで取り組む新規事業は右肩上がりの成長へ-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、沼津三菱自動車販売株式会社 代表取締役の齊藤 周氏と、伴走支援を担当した協働プロの坂本 英一氏にお越しいただきました。

沼津三菱自動車販売株式会社は、1978年創業の静岡県沼津市の三菱自動車ディーラーです。三菱の新車ならびに中古車の販売をメインとし、点検や車検、そして鈑金塗装などを行っております。静岡県東部エリアを商圏として、沼津と伊東に2店舗を構えます。

過去20年間、自動車業界の変革期も重なり経営的に厳しい時期が続いたといいます。自動車ディーラーとしてこのままのビジネスを続けて行くだけでは立ち行かなくなるという危機感から立ち上げた新規事業。失敗できない状況で、協働プロと共に挑戦することを決めたと言います。

今回はお二人それぞれから、協働プロジェクトに取り組んだことによる変化や感想、今後の想いを語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

一念発起して立ち上げた新規事業。「カーディーラーからの進化」へ議論を重ねる

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

坂本 英一氏(以下、坂本)よろしくお願いいたします!

齊藤 周氏(以下、齊藤よろしくお願いいたします。協働日本代表の村松さんと初めてお会いしたのは、2022年3月の中小企業家同友会沼津支部の例会で、協働日本について講演を聞いたことがきっかけでした。多様なプロフェッショナルが地方の中小企業とチームで取り組むという協働日本の伴走支援についての講演を伺って、素晴らしいと思い、即断で協働を決意しました。

実は、当社は過去20年間ずっとお客様の数が減り続けている状況でした。自動車業界の変革期と重なったこともあり、売上高で見ると20年前と比較して70%も減少するという厳しい状況の中で、規模を縮小しながらなんとか頑張ってきていたんです。しかし、自動車ディーラーとしてこのままのビジネスを続けて行くだけでは立ち行かなくなるという危機感を抱いており、コロナ禍で出た経済産業省の事業再構築補助金をきっかけに、2021年に新規事業の立ち上げを決めて動き出していました。

一部補助金を活用したとは言え投資額も非常に大きく、失敗できない状況でしたので、事業の拡大に向けて確度を高めるための方策を探していた中で、村松さんのお話を聞き、「プロフェッショナルの方の伴走」はまさに求めていたものだと思ったんです。

2021年にブランドを立ち上げ、店舗のリニューアルや洗車・コーティングの建屋の建築を進めており、2022年6月にはオープンの予定だったのですが、協働がスタートしたのはその直前の4月のことでした。

ーーぴったりのタイミングだったんですね。新規事業ではどのようなことをされているのか、具体的な協働の内容についても教えていただけますか?

齊藤:今回立ち上げたのは洗車とカーコーティングに特化した自社ブランド「Gran Works(グランワークス)」です。車をいつもキレイにしておきたいカーオーナーの方に向けて全車種・全メーカーのクリーニングからメンテナンスまでをお手伝いさせていただいています。この「Gran Works」のブランディングと事業拡大に向けたマーケティングについて、協働プロの方々は3名、坂本さん、向縄さん藤村さんに入って頂いています。

毎週Web会議を行なっており、当社側は私を含めて3名参加し、毎週議論させて頂いています。

まずはどういった属性の方がこのサービスを必要とされているのか、いわゆる5W1HでいうところのWHOの洗い出しに相当な時間をかけていったんです。これまでは、マーケティングの手法に基づいたプロセスを実施せず、「なんとなく」の考えで施策を考えていたこともあり、この経験も当社にとっては初めてのことで、会社として大きな財産になったと思っています。

7月頃には実際にリニューアルした店舗を見に来ていただく機会もありました。

新ブランド「Gran Works」。いつもキレイで快適な状態で愛車に乗れるように、車のメンテナンス全般をサポートする。
ーーいつもWeb会議で密度の濃い議論をされていたと思いますが、実際にお会いして変わったことはありましたか?

坂本:リニューアルされて綺麗な店舗・施設や、応対してくださった社員の方の雰囲気など、とても良い印象を受けました。元々協働の中で皆さんのフットワークの軽さや物腰のやわらかさなど良い印象はありましたが、リアルで一層その雰囲気の良さを実感することができました。

そして、全車種・全メーカーのメンテナンスを行う「Gran Works」のブランドテーマの一つとして掲げていた「『三菱自動車のカーディーラー』からの脱却」についても、実際に自分の目で店舗の様子を見ることができたからこそ、お客様の視点で見て、「『三菱のカーディーラー』のまま」に見える部分があることに気づくことができました。

ハード面は変えにくいので、ソフト面でどのようにアプローチするか?など、次の一手について考えるようになりました。

齊藤:私は、まずは皆さんに対面でお会いできたことが嬉しかったですね(笑)そして、坂本さんがおっしゃった通り実際に目で見てもらえることで、自分達では普段気づけないことにも気づいていただけて本当に良い機会でした。

例えば、協働プロの藤村さんからは「魂は細部に宿る」という言葉をいただいたんですが、これが個人的にめちゃくちゃ刺さったんです。例えば、お客様が席に着いた時に視界に入る棚の上の段ボールは、本当は目についてはいけないんじゃないですか?と指摘をいただいたんです。本当におっしゃる通りで、そういったことは一事が万事じゃないですか。見えてはいけないものが見えているお店は、他の部分でも雑な部分が出てしまうことがあると思うんです。「車」という高額商品を扱っている以上、細部まで気を張り巡らせていかなくてはいけない。お店づくりとして大切にすべき点だと痛感しました。

坂本さんからは、先ほども触れていただいたのですがお店のホスピタリティの強みについてご指摘いただいたのを覚えています。自動車ディーラーの店舗では、フリードリンクの機械をおいて、セルフサービスで「ご自由にどうぞ」というタイプのお店も増えています。一見便利だと思うかもしれませんが、私はスタッフとの接点が減ってしまうと考えているんです。

沼津三菱ではコーヒー一杯でも豆から挽いて淹れたクオリティの高いものを提供することに拘っています。こういった飲み物の提供だけでも、スタッフとお客様とのコミュニケーションが生まれるんです。これまでも大事にしているところではあったのですが、改めて「強みだ」と言っていただけると、進め方への安心・自信に繋がりましたし、沼津三菱でのこの接客文化を大切にしたいと改めて思うことができました。

主体者意識を持つワンチームへ。ハード×ソフトの強みで戦える組織への変革

ーー協働がスタートしたことによって、これまでになかった気付きや、自分たちの持つ強みが整理されてきたんですね。他にも具体的に「これが変化した」と感じる点はありますか?

齊藤:先ほども少しお話しした通りで、これまで使ったことのなかったマーケティングの手法やプロセス自体が社内に根付いたことですかね。実績のデータを記録して仮説を検証し、お客様アンケートからWHOの再定義を行うなど、「Gran Works以外の既存事業においても活かせるため、現在既存事業の見直しについての取組みも開始できています。ヒアリングして分析・検証という一連の流れを社員が手法として獲得できたことは本当に大きいと思います。

あとはそうですね、お客様アンケートの結果を上手く活かせるようになったことでしょうか。アンケートの結果を見直しながら、「数字としてこういった結果が出ているので、じゃあ次はこういう施策に繋げよう」と社員皆が「参加している」感じになってきました。

坂本:素晴らしすぎますね。今の話が沼津三菱さんの変化を象徴しているように思います。ずっと伴走はできないので、自分たちの持つスキルを身につけてもらい、協働プロが離れた後も自走できるようにすることが私たちのミッションだと常に意識していたんです。実際にこうやってマーケティングの型を活用していただけているということは、当初目標にしていたあるべき姿に至ったなと感じます。

今のお話を聞いて、プロジェクトに携わらせていただけてよかったと改めて感じました。ゴールの確認ができたようで嬉しいです。

ーー協働の成果が「自走」という形で現れているんですね。協働に関わった社員の方だけでなく、皆さんが自分ごととして事業を捉えている姿勢も素晴らしいですね。

坂本:実は、一緒にプロジェクトをを進めていく中で、沼津三菱のワンチーム感は強みだ!と協働メンバー側も気づき始めていました。この強みを磨かなくてはと思ったのを覚えています。

沼津三菱さんの輝かせるべき個性は何か?を考えていく中で、最初はコーティング設備や施設などのハード面を強みだと見ていたのですが、社員の皆さんの接客、仕事に対する姿勢などのソフト面もすごく強い。ハード×ソフトが揃っているんです。知れば知るほど、優位に戦える個性があるなと感じて、その強みを最大化できるように意識してサポートしていました。

おそらく、藤村さんと向縄さんも同じように考えていて、「アンケートを皆で見て討議してみて下さい」「社員の皆の意見を聞いて力を合わせて考えて」など、ワンチームとなって事業に取り組むための風土が醸成されるような課題をあえて出してお願いしていました。必ず強みになると思っていたからこそですが、実際このように当事者意識を持ってスタッフが働けている、これほど素晴らしいことはないと思います。

齊藤:ありがとうございます。チームで一丸となってやっていきたいとはずっと思っていましたが、自分としてはまだまだです。今年度目指す姿も「団結力のあるチームになろう」と掲げているくらい、もっと強化したい思いはあります。

協働の中でもそこを強みと見て対話をしてくださったり、意図的に課題をいただいたりしていたことを今知れて、そこまで考えてもらえていたんだ…と皆さんの親心に感謝しています。

ーー「Gran Works」の数字としての成果としても目に見えて変化していると聞きました。

齊藤:そうですね。「Gran Works」のサービスは洗車・コーティングの2つのカテゴリがあって、はじめてのお客様はまずは洗車の依頼、サービスを信頼していただけたらコーティングも…とリピートしていただくケースが多いのですが、入り口である洗車は沼津・伊東の両拠点ともに売上が右肩上がりに伸びています。

特に伊東では、今年の4月は初旬だけで新規洗車が10件ありました。これまで月に15〜20件平均だったので、比較すると洗車しきれないほどで、専属スタッフも採用しました。

もちろん波はありますが、数字としても確実に結果が出ている実感があります。

信頼できる同志としての伴走が、ワクワクする未来を描いて日本を元気にする

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には、以前から興味はありましたか?

齊藤:実は、こういった取り組みや働き方があることは、まったく存じていませんでした。村松さんの講演で存在を知ったことをきっかけにご一緒させて頂いたことで身をもって実感しているのは、持っている課題に対して人材のリソースが充分ではない我々のような小さな会社にとっては、複業人材の方々との取組みが大きな武器になり得るということです。

ーーありがとうございます。複業人材である協働プロにはどのような印象を持たれましたか?

齊藤:プロとしてその分野のスキルが高いというのはもちろんなのですが、会話が非常に論理的、かつ常識的で客観的な視点を持たれているというのが素晴らしいと感じています。

田舎の中小企業の普段の会議、人材のレベルから考えると、こんなすごい人たちと一緒に1年間もやっていけるかな?大丈夫かな?!とはじめは思っていたんです(笑)1時間の打ち合わせの密度が濃すぎて、痩せちゃう…と思ったくらいで。

坂本:確かに、私も初めて組むメンバーだったのもあって「最初からバシバシいくなあ」と思いました。(笑)細かいところや数字にも厳しく議論をしていて。でももちろん良い面もあるんです。数字への責任感の強さや、こういうペースで仕事を考えている人がいるということ自体が、沼津三菱の皆さんにはもちろん私にとっても刺激になりました。

齊藤:回数を重ねることで慣れてきたのか、皆さんに我々のペースをわかってもらえたのか、だんだんリラックスして臨めるようになってよかったです。

あと、私が個人的に非常に嬉しかったのは、協働プロの方々が「御社のビジネス」とは言わず、「我々のビジネス」という言葉を使い、またそういった意識を持って議論をしてくださるところです。その姿勢をお持ちだからこそ信頼できますし、まさに我々の同志として伴走して下さっていることを感じられました。

同じ方向を向き、自分ごととして事業を捉えていく同志
ーーそう言っていただけるととても嬉しいです。複業人材の取り組みは今後広がっていくと思いますか?

齊藤:そうですね。この前、村松さんとの出会いのきっかけにもなった中小企業家同友会沼津支部の例会で1年間の取り組みについて報告をしたのですが、「一流企業の都会的な思考の方が田舎の中小企業の視点で考えられるの?」「とっつきにくいイメージを持っていた」という感想も頂いたんです。地方の中小企業にとってはまだ一般的でないと思われますが、オンラインの普及に伴い、ますます広がっていくのではないかなと。今の状況として、自社のビジネスが低迷していて既存事業を立て直さなくてはという方は多くいらっしゃるので、勇気を持って一歩踏み出して協働プロの力が入ればいいのにと感じることはあるので、これからどんどん協働の取り組みが広がっていけばいいなと思います。

将来的には地方の中小企業の課題解決という側面にプラスして、各会社が持つ優れた技術を組み合わせることで新しい価値を生み出すような協働も生まれると益々ワクワクする未来が創れるような気がしています。

ーー最後に、それぞれへのエールも込めてメッセージをお願いします。

齊藤:これから複業人材が一般的になってくると、今回当社メンバーが感じてきたような協働プロの方々への“信頼”が非常に重要になるように思います。

「この人たちが言ってくれるから、この方向性で行こう!」と思える関係性を築けて本当によかったと思っています。社内だとどうしてもトップダウンで、社長である私の意見が通りやすい感じがあるが、協働プロの皆さんはフラットに意見を言ってくださって助けられました。こういった信頼関係・想いが広がり、事業が大きくなっていくことで日本が元気になるんじゃないかとも思えます。

皆様の信念と情熱を大切にされ、これから日本の発展のために益々のご活躍されることを心より願っております!

坂本:協働を通じて沼津三菱さんの個性がどうやったら輝くかをずっと考えてきていますが、私はその最大の個性は「齊藤さんの柔軟性」「フットワークの軽さ」にあると思っています。未知の取り組みであったにも関わらず、齊藤さんが手を上げてくださったから、協働プロとして関わることができました。

経営者だからこそ自分の意見が通りがちと仰っていますが、有無を言わさず意見を通す経営者の方もいる中で、社員が主体者意識をもってできる環境も間違いなく齊藤さんのマインド・姿勢で醸成されています。経営スタイル自体が強みだと自覚して、自信を持ってこれからも続けていっていただきたいです。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

齊藤:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

坂本:よろしくお願いします!

齊藤 周 Shu Saito

沼津三菱自動車販売株式会社 代表取締役
静岡県伊東市出身 大阪大学基礎工学研究科修了
大学卒業後、日本IBMの不動産戦略部門にて事業所や研究所の統合・移転プロジェクトに多数携わる。現会社の創業者である父親が病気を患ったことがきっかけとなり、2013年に転職。2019年より代表に就任、現在に至る。県内の自動車ディーラーでは初となる、洗車とコーティングの専用設備を建設し、2022年6月より新たな自社ブランド「Gran Works」を静岡県沼津市・伊東市の2店舗でスタートした。

沼津三菱自動車販売株式会社

Gran Works

坂本 英一 Eiichi Sakamoto

アサヒビール(株)ブランドマネージャー

大学卒業後、アサヒビール(株)で約10年間、国内ウイスキー事業のマーケティング業務に従事。 ニッカウヰスキーのブランディング、商品開発、プロモーション企画などマーケティング業務全般を経験。 これまでに、ブラックニッカ、竹鶴など主要ブランドの商品開発やリニューアルを担当。 現在はブランドマネージャーとしてニッカウヰスキー全般のブランディング、戦略立案を行う。

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-
VOICE:協働日本 向縄一太氏 – 「浪漫」と「算盤」で地域を変える –


VOICE:協働日本 久米澤 咲季氏 -IPPOのコーチングは「大きな夢」へ皆んなで向かう、第一歩-

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本のコーチングサービスIPPO事業で、コーチとして多くの方のキャリアの伴走支援に携わる久米澤 咲季(くめざわ さき)氏をご紹介いたします。

大学卒業後、外資系法律事務所に勤務。その後、アメリカの大学院にて国際開発学修士号取得。国際労働機関勤務を経て、国際協力機構にてインドネシアのインフラ開発を3年間担当。その後NPO法人で、途上国開発支援や人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの実施、コーチとしてキャリアコーチングや研修を担当されています。今は更なるスキルアップのため、大学院生として臨床心理学も学んでおられます。

「人」にクローズアップした伴走支援を行っている協働日本の「IPPO」事業の魅力や、実際のコーチングを通じて感じた変化、得られた気づきや学びを語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

誰もが「自分らしく」生きられるように。新たな挑戦をしながらキャリアを重ねていく

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは久米澤さんの普段のお仕事についてぜひ教えてください。久米澤さんはNPO法人で人材育成×社会課題解決を目指すプログラムに取り組まれている傍ら、コーチングのお仕事をなさっているんですよね。

久米澤 咲季氏(以下、久米澤):よろしくお願いします!はい、元々は途上国開発支援や人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの実施に携わったり、コーチとしてキャリアコーチング行ったりしていました。ただ、実は最近仕事を退職して、この4月から”フルタイムの大学院生”になったんです。当面は学業の合間や土日を使ってコーチングのお仕事をしていく予定です。

ーーそうなんですね!何を専攻されているのか、また大学院を受験された背景などもお聞きしてもよろしいですか?

久米澤:今は臨床心理学を学んでいます。コーチングの仕事をしていく中で、自分の思い通りに生きられない方がたくさんいるんだなと感じたことがきっかけです。例えば最近では、コロナ禍で気分が落ち込んでしまい、うつ病っぽくなったという話もよく聞きますよね、「本当はこう生きたい」という想いがあるのに、心の健康の問題で不本意な状況に追い込まれてしまっている。コーチングでは解決できない、心の健康のことで困っている方の支援をしたいと思って、大学院受験を決意しました。

NPOで働いていた時に、パートナーシップを結んでいる他のNPOで不登校児や移民・難民などを支援しているところもあり、心理の専門家がいると助かるという話を耳にすることもあったんです。それであれば、自分もそういった臨床心理学の知見や心理カウンセリングのスキルを身につけることで、力になれるのでは?と考えたのも、理由の一つです。

ーー素敵な挑戦です。元々コーチングに興味があったのでしょうか。

久米澤:いえ、大学時代には国際開発の勉強をしていて、社会人になってからもアメリカの大学院にて国際開発学を学び、国際協力機構でインドネシアのインフラ開発を担当していました。そんな中で”人”に興味を持って、少しずつ人材育成の分野の仕事にシフトしていったんです。7〜8年間人材育成×社会課題解決のプログラムに携わっていた中で、「コーチング」に出会いました。コーチングとは、相手の話に耳を傾け、質問や提案などを通じて相手の内面にある答えを引き出す手法です。

人材育成の分野で、伴走支援をしながら皆さんのチャレンジを応援するために、ちゃんとコーチングを勉強したいなと思ったんです。コーチングを学ぶためにセッションに参加してみて、「なんてパワフルなツールなんだろう!」と衝撃を受けたのを覚えています。何かを与えたり教えたりするわけではなく、対話を通じて人の内面を引き出すことで、意識や行動までも変えることができるという、コミュニケーションの力の可能性を感じ、私のコーチとしてのキャリアがスタートすることになりました。

国際開発や途上国支援の仕事をする中で、コミュニケーションの力で人の潜在能力を引き出すコーチングに出会う

すでに自分の中にある「答え」を引き出す──宝探しのような面白さがコーチングにはある

ーーここからは、協働日本での活動についてお聞きしたいと思います。キャリアの伴走支援を行う「IPPO事業」ですが、具体的にどんなお取り組みをされているのか教えていただけますか?

久米澤:ご自身のありたいキャリアの言語化と、次の一歩に踏み出すサポートをするのが、協働日本の「IPPO事業」です。2020年に事業がスタートしてから、これまで約20名の方のコーチングを担当してきました。

ーー「IPPO」のコーチングプログラムを受講される方は、どんな方が多いのでしょうか?

久米澤:クライアントの方の持つテーマは様々ですが、特に「IPPO」のクライアントの方の特徴としては、キャリアで新しいことにチャレンジしたい、人生で本当にやりたいことを見直したいという方が多いかもしれません。

だいたい月1回くらいのペースで対話を重ねていくのですが、課題を明確化して、解決策を考え、実行して振り返るというサイクルを回していくので、一定の期間──大体半年から1年のスパンでコーチングをしていきます。

ーーなるほど。コーチングを受けることでご自身と向き合い、どんどん行動を変えていくイメージですね。実際に受講前と後では、どんな変化が生まれるのですか?

久米澤:コーチングを受けると、皆さん徐々にbeing(=あり方・価値観)と、doing(=行動)の両方が変わっていくのが印象的ですね。

例えば、過去に担当した方の中に、「キャリアの踊り場にいる」状態の20代後半の女性がいらっしゃいました。受講開始当初は、今までやってきた仕事もやりがいがあり面白いけれど、本当にこのままで良いのか悩んでいらっしゃいました。もしかしたら新しいチャレンジをするタイミングなのではないか?と思うこともあるけれど、別の環境でやっていけるかどうかの不安もある。今進むべきか、それとも留まるべきか?選択に自信が持てないという状態だったんです。

でも、コーチングを通じて対話を重ねていくことで、「30代に向けて新しいチャレンジをすることが自分には必要なんだ!」と考えが変わっていきました。

では、どんなチャレンジがしたいのか?と更に問いを立てて掘り下げていきながら転職先を探して、最終的には希望する新しいキャリアに進むことができたんです。

ーー最初の時点で悩んでおられた「新しいチャレンジ」こそが本当にやりたかったことだったんですね!

久米澤:そうなんです!実は大抵の場合、悩みの「答え」はその人の中にもうあるんですよ。ただ、はじめはぼんやりとしていて自分でもわからない。なんだかもやもやした状態にあるのですが、壁打ちを続けていくことで解像度が上がっていき、最終的には最初から自分の持っていた「答え」に気付けるようになります。

自分にとって、自分の人生にとって何が大切なのか、俯瞰的な視点から問いを投げることで答えを引き出すのがコーチの大事な役割です。コーチングの面白いところはここで、クライアントの方が自分でも気づいていない良いところやポテンシャルが、対話の中から見つかっていくところです。まるで宝探しをしているようで、好奇心がくすぐられるんです。

私は、クライアントと自分は鏡の関係だと思っていて。新しいことに勇気を出して進んでいく姿や、皆さんが持つそれぞれのすばらしい価値観に触れることで、自分自身も新しい視点を得て成長していけるのもコーチングの素晴らしいところだと思っています。

「コミュニティとして向き合えるコーチング」で、1:1よりも大きなインパクトを生み出す

ーー久米澤さんが協働日本に参画されたきっかけをお伺いできますか。

久米澤:ちょうど協働日本がスタートした頃に、代表の村松さんに声をかけてもらったことがきっかけです。協働日本を通じて「人が変わっていく」ということを大切にしたいので、会社組織向けの協働日本事業だけでなく、個人へのコーチングもやりたいんだ、とおっしゃっておられて。

そのビジョンに共感して、自分にできることがあるならぜひ協力させて欲しいということで、「IPPO事業」のコーチとして参画しました。ひとりひとりのマインドや行動が変わることが全てのスタートなので、より多くの人が「一歩」を踏み出すことはとても大切なことだと思うんです。

ーーなるほど。久米澤さんは協働日本以外でもコーチングのお仕事をされていますが、協働日本の「IPPO」ならではの特徴や、他のコーチングとの違いを感じることはありますか?

久米澤:そうですね。キャリアコーチングを軸に置いているので、クライアントの方は、キャリアの中でもっと活躍されたい、新しいチャレンジをされたい方が多いというのが特徴的ですね。コーチングは通常、コーチとクライアントの1:1で行うので、2人で完結するものですが、「IPPO」のコーチングでは、「協働日本のビジョン・ミッション」に向かっておひとりおひとりと関われている感覚がありますね。「協働日本」というコミュニティとして、クライアントの方に向き合えるような感じでしょうか。

また、「IPPO」のクライアントの方とは、「協働日本」の他のお仕事の中で関われる機会に恵まれることもあります。例えば、協働日本の「九州地域統括」である加治屋 紗代さんのコーチングを以前担当したのですが、コーチング終了後に別のお仕事でご一緒する機会もありました。迷いながらも鹿児島でチャレンジをされていた姿にすごく刺激をもらいましたし、コーチング以外のご縁にも繋がっていったことはとても嬉しいです。

コミュニティとして縁が広がり、深まっていく。そんな「IPPO」の、「コミュニティとして向き合えるコーチング」で、「一人」対「一人」で発生するインパクト以上のものが生まれている実感と喜びがあります。

ーー「コミュニティ感」という人の繋がりの強さは、本当に協働日本ならではですね。コーチ同士の方の繋がりというのもあるのでしょうか。

久米澤:はい!IPPOのコーチ同士のグループをFacebookの中に作っていて、定期的に集まって情報交換したり勉強会を企画しているんです。

オンラインで集まることが多いですが、鎌倉にリアルで集まったこともあります。「最近はどんなことをやってる?」「どんな手法を使ってる?」などディスカッションしたり…最近うまくいったこと、上手くいかなかったことなどを話し合って、お互いにコーチングしたりしています。

コーチングをしていくとだんだん自分のスタイルができてくるんですが、当然いろんなやり方があるので、バックグラウンドの違うコーチが集まって話をすることで、他の方の手法を知ることができたり、相談しあえるのはとても心強いです。こういった繋がりも、やっぱり協働日本特有かなと思います。

コーチングは「大きな夢」へのひとつの手段

ーー「IPPO」のコーチングを通じて、久米澤さんが実現したいことはありますか?

久米澤:もっといろんな人にコーチングが届くといいなと思っていますね。「IPPO」のコーチの数もクライアントもどんどん増えていっているので、協働日本を通じて今までコーチングに触れたことのなかった人たちにも知っていただき、新たなチャレンジの第一歩にしてもらいたいです。

私は、「自分の情熱や才能に正直な人を応援する」を自分のミッションとして掲げています。コーチとして伴走することで、胸に秘めた情熱や価値観を言語化──形にしていくお手伝いをしています。この、情熱や才能・価値観こそが人の「自分らしさ」であると思っているので、より多くの人たちがコーチングを通じて改めてご自身と向き合い、自分の人生を自分らしく生きることができるようになって欲しいです。

また、最近「IPPO」のコーチングでは、個人へのコーチングだけでなく、法人や組織全体へのコーチングをする機会も増えてきました。個人が変わると組織も変わる。組織が変わると社会に与えるインパクトもそれだけ大きくなる、というサイクルがあると思うんですが、個人だけでなく組織開発としてコーチングに携われることで、社会を変えていくことにより近づいている。組織開発として協働日本に関わっていくことができるのも、今後の楽しみのひとつなんです。

ーー本日はありがとうございました!最後に、久米澤さんから、今後IPPOでコーチとして活躍してみたいという方、IPPOのコーチングを受講してみたいという方にそれぞれメッセージをお願いします。

久米澤:はい。いろんなコーチがいた方が、いろんな人にリーチできるので、多様な仲間ができるといいなと思っています。特に、本気で人を応援したい人、そしてその先に「協働日本の描く大きな夢」に向かって皆で歩いていることを共有できる人がコーチとして一緒に活動していただけると嬉しいです。

そして、コーチングを受けてみたいという方は、ぜひ気軽に扉を開けてみて欲しいです。コーチングを受ける方は、最初から大きな夢があるわけでもなくても良いと思っています。本当にちょっとした悩みでも構いません、ぜひお話を聞かせていただきたいです。実際に対話を始めてみたら、そこからきっと必ず何か見つかります。今の自分を少しでも変えてみたい方、いつでもお待ちしております。一緒に一歩を踏み出しましょう。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

久米澤:ありがとうございました!これからもよろしくお願いいたします。

久米澤 咲季 Saki Kumezawa

上智大学大学院 総合人間科学研究科 心理学専攻

大学卒業後、法律事務所での勤務を経て渡米し、大学院にて国際開発学修士号取得。帰国後、国際協力機構(JICA)にてインドネシアのインフラ開発を3年間担当。2015年NPO法人クロスフィールズ加入、人材育成×社会課題解決を目指すプログラムの企画実施を担当。2018年~2022年は事業統括として経営やチームマネジメントに従事。米国CTI認定プロフェショナルコーチ(CPCC)としてコーチング業も行う。現在は、大学院にて臨床心理学を勉強中。

久米澤 咲季氏も参画するIPPO事業については こちら

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VOICE:協働日本 加治屋 紗代氏 – 協働日本で地域「を」盛り上げたい、私の想い –


VOICE:協働日本 近藤 友輝氏 -「“友”を”輝”かせられる人であり続ける」人生のミッションへ、協働を通じて更なる進化を-

協働日本で活躍するプロフェッショナル達に事業に対する想いを聞くインタビュー企画、名付けて「VOICE」。

今回は、協働日本で地域企業に対して、経営戦略、事業戦略、組織開発など幅広い視点から支援を行っている近藤 友輝(こんどう ゆうき)氏です。

大学卒業後、株式会社キーエンスに入社。2015年に退職した後、渡米。シリコンバレーにて大学を作るプロジェクトに携わる。帰国後、複数の新規事業や会社の立ち上げ、社内のDX推進、採用から育成、コーポレートブランディング、コンサルティングなど幅広い領域で活躍。同時並行で自身の会社も立ち上げ、最大11社の業務を並行して行うなど、現在は全ての仕事を個人名義の業務委託で受託するなど『副業人材』としての活動の幅を広げています。

協働日本でも、経営戦略、事業戦略、組織開発の知見を活かし幅広い経営・事業支援を行っている近藤氏。実際の地域企業とのプロジェクトを通じて感じた変化、得られた気づきや学びを語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

鹿児島での協働の様子

本気の想いを持った人の仲間を集めていきたい。「組織づくりをする人」として多くの事業に携わる日々

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは近藤さんの普段のお仕事や、取り組まれていることについてぜひ教えてください。

近藤 友輝氏(以下、近藤):よろしくお願いします。現在は経営戦略、事業戦略、組織開発を中心にさまざまな事業に携わっていますが、正社員としてではなく全て業務委託、自分の名前で仕事をしています。

携わっている事業としては、まず一つ目に旅のサブスクをやっている会社のオペレーションまわりに特化した子会社でCOOとして経営と組織開発を行っています。ユーザーを支援するチーム、航空券の手配を行うチーム、登録ホテルを支援するチームなどがあり、現在は既存のオペレーションをすべて見直しを行いながらユーザーの体験をより良くしつつ、働き方や業務内容・マインドもより良いものへと進化させていっているところです。

二つ目は、営業力強化の手法であるセールスイネーブルメント領域のコンサルティングやそのコンサルタントを育てるための育成プログラムやその仕組みづくりを行っています。キーエンスや外資コンサル出身が多いチームで知見を持ち寄りながら再現性のある組織づくり、営業チームづくりを行っています。

4月中旬からは、育った街でもある「兵庫県三田市」の営業アドバイザーに就任することにもなりました。半年間のアドバイザー活動の中で市職員の皆さんの営業レベルを押し上げつつ、街への恩返しをしていきたいと思っています。

ーーかなり幅広く活躍されていますね!もしご自身のお仕事に看板をつけるとすると、どんなお名前、肩書きになるでしょうか?

近藤:難しいですね(笑)平たく言うと「組織づくりをする人」でしょうか。前提として、やはり人の可能性を信じているということが大きいです。何かを成し遂げたいと思った時、絶対に一人では成し得ないですよね。例えばライト兄弟の例で言うと、お金があって優秀な人を集めただけでは飛行機は飛ばせなかったわけです。熱い想いを持った人に賛同して集まり、知見は足りないけれど試行錯誤しながらやっていけるチームが最終的には飛行機を飛ばせたんですよね。

本気の想いを持った人に必要な仲間集めや、その人たちの強みを理解してどう組み合わせて活かしていけば全体総量が最も大きくなるのか?そしてどうすれば皆がそこで働くのが幸せだと感じられるのか?を追求していきたいという想いで組織開発に携わっています。

時代に合ったわかりやすく始めやすい「複業」モデル

ーーここからは、協働日本での活動についてお聞きしたいと思います。近藤さんが協働日本に参画するきっかけはどんなものだったのでしょうか?

近藤:もともと協働日本代表の村松さんとは6〜7年の長い付き合いがあったので、協働日本を立ち上げる時から構想も知っていて、面白そうだと思っていたんです。これからの時代にすごく求められることじゃないかなと。

実際に参画のきっかけになったのは、2022年の6月頃に2人で行ったランチの時間でした。この時に、近々スタートする予定の案件があるという具体的な話を伺い、「面白そうですね!」と言ったら「決まったら一緒にやろう!」とお誘いいただき……二つ返事でお引き受けしました。

7月には案件が決まったと連絡をいただき、取り組みを決意してすぐ、夏頃からはもう協働がスタートしていましたね。

ーーすごいスピード感ですね。構想段階からご興味があったとのことですが、具体的にどんなところを面白そうだと思われていたのでしょうか。

近藤:「複業人材の活用」というモデル自体ですね。時代の流れ的に、コロナ禍で副業が注目されるようになって、首都圏の大手企業に勤めている方が副業先を探すケースも増えたと思うんです。僕も何人もの副業人材の面接をしたことがあるので、実際の話を聞く機会も多いのですが、そもそも副業先をどうやって探せばいいかわからない、応募のハードルが高いという声も少なくないんです。

また実際に副業先が決まっても、自分は仕事ができる!と思っていた方でも、蓋を開けてみるとあまり活躍できなかったということも少なくないんです。そういった方の大半は本業が忙しいと言って辞めていってしまう。実際には、どんなふうに副業を進めていけばいいのか、関わり方がわからないこと自体が理由だったりもするんです。

一方で協働日本での取り組みは、メインとサブという従来の「副業」の考え方ではなく、かける時間のウエイトの大きさは違えど、マルチに仕事に取り組む「複業」という概念がわかりやすく、プロジェクトを通じて個々のバリューを発揮しやすい仕組みになっていると思います。「複業」の最初の一歩として始めやすいし、取り組みの内容に幅と奥行きがあるので、自分に合った関わり方を見つけやすい。もっとディープに関わりたいと思えば関われるところもすごく良いと思います。

事業戦略から営業戦略まで、多面的に地域企業をサポート

ーーありがとうございます。近藤さんは、地域のパートナー企業とはどのようなプロジェクトで協働されているのでしょうか。

近藤:はい。これまで2社と取り組みをしてきました。一社目は鹿児島県の「うしの中山」さんです。先方の担当の荒木専務は、他業界から畜産農家に転職された方で、畜産農家特有の課題や傾向がわかっているものの、進め方に苦慮されていました。社内で一人で動かざるを得ない状況だったので、まずは「仲間になろう」というところから関わりを持つようにしました。「社内外に仲間を増やしてチーム荒木を作る」ため、荒木さんの中にある「こんなことができたら最高かも」という部分を引き出すような本質的な問いかけを心がけていて、彼の想い──概念的な部分を言語化していくサポートをしました。

協働チームの中に、特にマーケティングに強いメンバーもいたので、商品販売のターゲティングやアクションなどの具体的な部分は任せて、僕は土台になる事業戦略の部分を意識して、コミュニケーションを取りながら進めていましたね。

もう一社は「ファーマーズサポート」さんで、こちらは、事業戦略よりも営業戦略の視点でサポートに入っていました。隔週の打ち合わせの中で、どういう営業の行動KPIを持って追いかけて振り返って、どう修正するのか…という進め方です。うしの中山さんのように概念を整理するというよりも、数値で落とし込み、計画を作って進捗管理をする、実務面での動きが多かったですね。

ーーなるほど。これまで幅広い分野、事業に携わってきた近藤さんですが、協働日本としてのお取り組みの中で大企業とは違う、「地域の企業ならでは」と感じた部分はありましたか?

近藤:そうですね。地域あるある、業界あるあるなのかもしれませんが…業界特有の制約、制限は独特だなと感じました。「こう進めたらいいじゃん!」と思ったことも、「実は色んなことの兼ね合いで、そうはいかないんですよ」と言われることもあり、経験したことのないボトルネックだったなと。

ただ、それを前提にして、じゃあどう乗り越えていこうか?という前向きな議論ができた部分はとても良かったと思います。

協働パートナー企業である鹿児島県の畜産農家「うしの中山」の荒木真貴氏(左)と近藤友輝氏(右)

協働を通じて発見した、より多くの視点を持つことの重要性

ーー協働を通じて、協働パートナー企業にも変化を感じることはありましたか?

近藤:はい。例えば「うしの中山」の荒木さんであれば、どこか根拠のない自信に、実績が伴ってきた部分が大きかったと思います。本質的な問いかけを進めることで「本当にやりたかったこと」が形となり、賛同者も増えて行ったという「実」が伴ったことで、元々持たれていたご自身の考えや信念への自信がさらに強くなったなと思いました。

「ファーマーズサポート」さんは、最終的には当初の目的・目標から方針転換をすることになったのですが、その決断自体も半年間の協働があったからこそだと感じました。元々研究開発中心で、営業が得意分野ではなかったところに協働プロとしてサポートに入らせてもらったのですが、ご本人が「これ以上はもう無理かな」という判断ができるところまで営業を共にやり切ったことで、やはり自分の得意な研究開発を主軸に置き直して、そちらからサービスを広げるアプローチをしていこう、という判断に至ったんです。

共通して感じるのは、取り組みが進んでくると、皆さん依頼した宿題を楽しみながらやってくれるようになり、かなり自律的に動いてくださるようになった部分です。ミーティングで決まったことを即座に試し、率先してアクション報告をしてくれたり、社内の他メンバーや繋がりのある企業を自発的に巻き込んでくれたり、アイデアを言語化・資料化して自慢するように話してくれるようになったりと、元々前向きでやる気のある方々でしたが、本当にたくさんの変化がありました。

ーー行動の中で出た結果が、それぞれ自信につながったり、新しい道への決断につながったりしているんですね。協働の中で、近藤さんご自身にも何か変化はありましたか?

近藤:はい。特に大きなものとしては、思考が深化したことかなと思います。これまでのキャリアでもバックグラウンドの違う様々な企業、事業に携わってきて、それぞれの状況に応じた動きをしてはいたのですが、これまでとはまた違う地域の企業に関わることによって、全く異なる環境下においてそれぞれの前提条件を深く理解し、その上で最適な道筋を発見して、パートナー企業にとって心地よくて最も効果的な手法を見出そう、というように、より深く考えるようになったんです。

お互いに初めて顔を合わせた協働プロやサポーター、そしてパートナー企業と共に、お互いの理解をしながらプロジェクトを進めていくという経験自体がこの思考の深化につながったのかもしれません。

未経験の業界や領域で課題に取り組むことで、新しい領域に関する知見を習得することができますし、それによってこれまでの知見も棚卸しして、新しい領域でも活用できるように応用させる、自身の持つスキル自体をもっとブラッシュアップさせることができたのも、協働を通じて生まれた自分自身の変化ですね。

ーー近藤さんの強みが強化されていっているんですね。

近藤:どんな仕事においても、「環境の違い」は1つのキーワードになると思っています。例えば、日本と海外の違い、国内でも地域の違い、それぞれの場所から立って見ると、同じ事象について違う見え方になることがあると思うんです。無重力空間に浮いている物体が、見る角度によって違う形に見えるようなイメージです。だから、自分がどれだけ多くの視点から物事を捉えることができるのかが、地域・業界・領域問わず成功するポイントになるんじゃないかと考えるようになりました。協働日本の活動で得られたこの豊富な視点は、別の仕事にも活かしていけると思っています。

組織で人を「”輝”かせる」。皆の熱い想いを形にしていきたい

ーー近藤さんが、協働日本の活動を通じて実現したいことはなんでしょうか?

近藤:自分自身では関わることがなかったであろう様々な地域で熱い想いをもって活動されている企業やその人たちの想いを共に形にすることですね。

協働プロのチームには各領域のプロフェッショナルがいるので、その企業や組織の目指す理想を具体化し、実現のための課題やステップを整理しながら、必要なリソースをどう組み合わせればより素早く、より確実にそこにたどり着けるのかを紐解いていきたいです。

ーーまさに得意分野の「組織づくり」を活かした活動ですね!

近藤:そうですね。僕は名前が「友が輝く」で「友輝」なんですが、そもそも僕は人生のミッションとして、名前の通り「“友”を”輝”かせられる人であり続ける」というものを掲げているんです。

友達を輝かせるためには自分自信も輝いている必要があるし、色々な武器を持っていないといけない。だからどの領域・業界でも通用するポータブルスキルをたくさん持ちたいというのがベースにあるので、協働日本での活動を通じて、さまざまな地域・環境などの「異なり」の中で「共通」して通用するスキルを見つけて磨いていけると思っています。そうやってさらに周りの仲間たちを輝かせていきたいですね。

「人の活かし方がわからない。自社の可能性を最大化したい」と思っている経営者の方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に活動したいです。

働き方の新しいスタンダードのひとつとして、人財が集まる場所へ

ーーそれでは最後に、近藤さんは、協働日本は今後どうなっていくと考えていますか?協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

近藤:協働日本の活動は、今後の働き方におけるひとつのスタンダードになるのではないかと思います。特に大企業に勤めている方やひとつの企業で長く勤めている方にとっては、自分自身でいきなりいわゆる”複業/副業”をやるにはハードルが高いですが、今の企業に勤めながら外の環境で自分の実力を試したり、経験を棚卸ししたりして、自分の強みや弱みを理解し、さらに自分を高める有用な機会になると思います。

地域の各企業にとってはこれまでも接点を持つことすらなかった人と繋がることができる上に、ただ知見を伝えるだけのコンサルティングと違い伴走支援という形を取るので共に事業を進めることができるので、一般的なコンサル企業などに依頼するよりも安心して効果的に相談したり任せたりできると思います。

将来的には、協働日本が人財バンクみたいになるんじゃないかな?協働日本がハブとなって、「複業で働きたい人」と「地域の経営者」がそれぞれ集まっていくと思います。そうするとさらに、地域の経営者同士が交流するような横のつながりなんかも生まれて、さらに新しく、面白い取り組みもできるようになるんじゃないかと考えています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

近藤:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

近藤 友耀 Yuki Kondo

(株)HafH User Success & Communities COO
(株)KabuK Style Strategy Unit サブリーダー
SALESCORE(株)シニアコンサルタント

大学卒業後、㈱キーエンスにて営業職に従事。トップセールスとなるが、人の能力や才能を見出しより輝かせることに人生をかけたいと思い退職。
その後アメリカ、シリコンバレーにて世界最先端のビジネスを学ぶ。
2015年、創業3年目のベンチャーへ。 クリエイターチームのマネジメントを始め、新規事業、営業チームの立ち上げ、補助金を活用したクリエイティブスペースの設立やコミニュティマネジメント、結婚式場建設プロジェクトのプロジェクトマネジメントなどを経験。
2018年、新たな領域と分野にチャレンジすべくavex㈱にて新規事業の企画立案に携わり、事業を推進。
2019年、カフェ・カンパニー㈱に入社。コーポレートブランディング室長として会社全体のブランディング、PR、マーケティング、新制度の策定や協業案件等を推進する。EDUCATION LABOにて新卒採用から研修育成、組織活性化なども行う。
現在は独立し、業務委託として㈱HafH User Success & CommunitiesのCOOとして経営や組織開発、海外業務支援を行う他、複数の企業、事業に携わっている。


近藤氏が伴走支援を行った「うしの中山」様の事例を含む、鹿児島県での地域企業の協働事例はこちら

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STORY:荒木陶窯 -「ワクワクする薩摩焼をつくる」鹿児島の文化を紡ぐ窯元が、その本質的価値を追究-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、現代の名工、荒木陶窯 第15代玉明山 荒木秀樹氏と、奥様であり同社取締役の荒木亜貴子氏、そして伴走支援を担当した協働プロの田中友惟氏にお越しいただきました。

荒木陶窯は、約425年の歴史ある薩摩焼の窯元です。伝統的な薩摩焼の器を買い求めるお客様が全国から訪れる他、個展の開催を各地で行うなど薩摩焼の制作販売を行っています。薩摩・鹿児島の伝統文化の担い手として、薩摩焼の流派の一つである「苗代川焼」の保存のため、苗代川焼伝統保存会の運営や、次世代に伝統を伝えていく活動も積極的に行っています。

そんな伝統ある窯元も、生活様式や購買行動の変化によって従来の販売形式や作品の見せ方を変える必要に迫られ、顧客へのアプローチに課題を抱えていました。荒木陶窯の魅力をどう表現すれば購買に繋がるのか──協働プロと共に今一度荒木陶窯のありたい姿を考えることに挑戦されました。

今回は協働日本との取り組みのきっかけや、支援を通じて生まれた変化についてお聞きしました。さらには今後の複業人材との取り組みの広がりの可能性についてメッセージもお寄せいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

鹿児島県 令和4年度「新産業創出ネットワーク事業」発表会の様子(右:荒木秀樹氏、左:荒木亜貴子氏)

これまでの「当たり前」と向き合い、ありたい姿の徹底的な言語化

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

荒木 亜貴子氏(以下、亜貴子):協働がスタートする前年にHPのリニューアルをして、ECサイトについても活用方法を考え直したいと思っていたんです。相談先を探して情報収集をしていたところ、鹿児島県とも事業を進めている協働日本のことを知りました。鹿児島県在住の協働プロである浅井南さんに実際にお会いした際に、「協働日本の伴走支援は荒木陶窯さんに合うんじゃないかな?」と仰っていただいたんです。ちょうどこれからの時代の変化への不安から、チャンスがあれば色んなことにチャレンジしたいと思っていたタイミングだったので、すぐにお願いすることに決めました。

そこから協働がスタートして7ヶ月間、本当にあっという間に過ぎていきました。

ーーなるほど、タイミングがとてもよかったんですね。具体的にどんなお取り組みをされていたのでしょうか。

亜貴子:はい。週に一度、オンラインミーティングをお願いしていました。目先の課題はECサイトの活用についての悩みだったのですが、蓋を開けてみると、さらに大きな2つの課題を抱えていることがわかりました。1つは、購買層の変化や購買チャネルの変化により、顧客への有効的なアプローチ方法がわからなくなっていたこと。そしてもう1つは、荒木陶窯の魅力をどう表現すれば購買に繋がるかわからないという点です。そこで、まずは基本に立ち返るため、オンラインミーティングで「荒木陶窯のありたい姿や価値を言語化」していくことになったんです。

最初は協働プロとして藤村さん、枦木さんを中心にミーティングに入っていただきました。オンラインが中心ではありましたが、時折実際に工房までお越しいただいて、実際に作品を見ていただいたり対面でディスカッションをしたりして、対話を深めていきました。

実際のところ、荒木陶窯のこと、作家の想い、普段の様々な仕事のこと…全てのことについて改めて言語化する作業はなかなか大変でした。毎週のミーティングでは、協働プロから「問い」をいただくんです。自分たちの想いは?製品の良さは?──今まで当たり前のこととしてじっくり考えることのなかったものばかりでした。普段の業務の中ではなかなか時間も取れず考えもまとまらないので、車での移動時間のような隙間時間にずっと考えていました。答えなんて出ないんじゃないか…と思うこともありましたが、不思議なことに考え続けて1週間が経つ頃には「これだ」というものが思い浮かんでくるんです。

浮かんできた答えを持ってミーティングに臨み、それに対してまた新たな「問い」をいただく。この繰り返しでどんどん荒木陶窯業のありたい姿、本質的な価値の解像度を高めていきました。言語化を続けていって最終的に辿り着いた、私たち荒木陶窯のありたい姿、本質的な価値は「作り手も使う人もワクワクする薩摩焼をつくる」ことでした。

左:田中友惟氏、右:荒木亜貴子氏

ーー協働プロである田中さんから見て、亜貴子さんの言語化の過程はどのように映りましたか

田中友惟氏(以下、田中):亜貴子さんのすごいところは、どんどんレベルアップするところなんです。問いに対して深掘りを続けていくと、問いに対する答えの質であったり、表現の仕方が、前の週では絶対に出てこなかっただろうなというものに進化している。本当に事業、そしてご自身と向き合って考え抜いた結果なのだと思います。

ーー協力し合いながら真剣に深掘りをされていったのが伝わってきます。「ワクワクする薩摩焼」というキーワードに到達するまでには、どんな道のりがあったのでしょうか。

亜貴子:ここに至るまでにはまず、作り手である主人が「どんな思いで作品を作っているのか」ということを引き出さなくてはいけなかったんですが、そこに難航しました(笑)そこで、協働プロとのミーティングの中で出てきた主人の言葉を思い出しながら、キーワードをとにかくたくさん書き出してみたんです。「あんなこと言ってたよね」と書き出しては「でもこれが本質的な価値なのかな?違うな」と自省しては全部消して、という作業を繰り返していって……最後にパッと浮かんできたキーワードが「ワクワク」でした。

ーー作り手である秀樹さんの「ワクワク」ということですか?

はい、初めはそういった作り手側の「ワクワク」の意味で思い浮かんだ言葉だったのですが、作り手側の想いを表すのと同時に、作品のプロモーションをしていく私自身の「ワクワク」であったり、手に取ってくださるお客様の「ワクワク」にも繋がっていくんです。
悩んでいた顧客層へのアプローチや作品作りの方向性など、全てを網羅する、軸になる言葉だ!と思いました。

田中:実はこの「ワクワク」というキーワードは、秀樹さんと私たちが個別にお話ししている時にも出てきていたものなんです。とても印象的だったので覚えています。「ワクワクする薩摩焼」が、ご夫婦の共通する秘めた想いだったのかもしれませんね。

荒木 秀樹氏(以下、秀樹):言語化の作業は全て妻に任せていて、その中で自分の想いはなかなか言葉にできなかったですし、自分が過去に「ワクワク」という言葉を使ったことも実はあまり覚えていません(笑)でも、やはり作品を前にすると熱く語れる部分があるので、作品について話をしている時に自然と想いが溢れていたのかもしれませんね。協働プロという外部の人が入ってくれたからこそ、夫婦二人では普段語ることのない部分を引き出してもらえたように思います。

協働プロとのオンラインミーティングの様子

協働を通じて、過去の自分たちにも、この先歩む未来にも、自信を持てるようになった

ーー言語化した後、実際の業務にも変化はありましたか?

亜貴子:はい。ある程度の言語化ができてきたところで、今度はそれをどう活かすか?という議題に変わっていきました。

言語化した荒木陶窯のコンセプトをブランドガイドラインに落とし込み、表現の指針として可視化。それを元に、顧客へのアプローチを変えていったんです。具体的には、ECサイトの写真や、展示会での作品の見せ方を変えています。協働がスタートする前は作品をシンプルに見せるようにしていましたが、荒木陶窯の魅力や商品の「ワクワク感」が顧客に届く設計に変えたんです。例えば食器だけを写した写真ではなく、食べ物を盛り付けした写真を使用することで、利用シーンを想像してお客様に「ワクワク」してもらえるようにしています。写真をリニューアルする際にも、協働プロとして活動されているフードコーディネーターの方にもご協力いただいて撮影しました。おかげさまで、食事風景がリアルに思い浮かぶような「ワクワクする」素敵な写真になりました。

展示会でも、こういった写真をポップとして活用したことでお客様との会話のきっかけにもなり、ただ食器を展示していた時に比べてコミュニケーションの質が向上していきました。

「顧客視点」、「言語化した魅力を伝える」ことを意識するように工夫することで、徐々に売りたい商品が売れるようになっていっている実感があります。

利用シーンを想起して「ワクワク」できる写真へ

ーーなるほど。元々迷っていらっしゃったECサイトの活用や顧客へのアプローチも「荒木陶窯らしい」ものに変化したんですね。作品作りにおいても何か変化はあるのでしょうか?

秀樹:そうですね。実は元々、作品作りの転換期でもあったんです。展覧会に出すような大作はずっと命懸けで作っていましたが、大型の壺などがほとんどで、日常生活にあまり馴染みがなく、気軽に手に取ってもらえるようなものが少なかったんです。もっと多くの人に薩摩焼の良さを知って欲しいと考えていたので、伝統も守りつつも、手に取ってもらえるような新しいものも作りたいという想いを持っていたんです。

亜貴子:主人がぽろっとその想いを口にしたことがあって。伝統ある薩摩焼を、もっと気軽に手に取ってもらえる、使ってもらえる、というアイディアはとてもいいなと思いました。そこで、数年をかけて「テーブルウェアを作ってみない?」と説得したんです。

結果として、できあがった食器はモダンでいいねと選んでもらえるようになったので、挑戦してよかったと思っています。

秀樹:そんな転換期において、ターゲットが定まっていなかったのもあって、なんとなく「綺麗なものや華やかなものが売れるのでは?」と考えて「売れそうなもの」を作ってみたのですが、作り手である私は全然ワクワクできなかったんです。やっぱり作り手自身がワクワクしていないと、良い作品にはならない。「作り手も使う人もワクワクする薩摩焼をつくる」というコンセプトは、作品作りにおいてもすごく腑に落ちる言葉でした。ワクワクしながらより良い作品を作っていこうと自信を持って思えるようになりました。

ーー振り返ってみると、これまでも「ありたい姿」でいたことを実感されたんですね。

亜貴子:そうですね。これまで考えていたことも間違いではなかったんだと思えたんです。また、ターゲティングや顧客へのアプローチについて悩んでいた頃は、あれもこれもと手を出さずに何か一つに絞らなくてはいけないのかな?とも考えていたのですが、ガイドラインを作ったことによって「ワクワクできる」なら、どんなものでも挑戦していいんだ、それが新しい「秀樹の荒木陶窯らしさ」なんだ、と胸を張れるようになりました。

「これまで」と同じように「これから」も、自信を持ってワクワクする作品を作り、ワクワクしながら手に取ってもらえるようにしていきたいと思っています。

伝統的な薩摩焼の一つ「白薩摩」は、白地に絵付けをしたものがメジャー。荒木陶窯では、絵付けではない「彫文」や「波文」という、形で魅せる新しい表現に挑戦している

未知の取り組みだった「複業人材との協働」は、永く繋いでいきたい「人と人」の縁になった

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には、以前から興味はありましたか?

亜貴子:そういった働き方があるということを、実は知らなかったんです。でも実際に取り組みを経験してからは画期的な仕組みだと思っています。田舎にいて、主人としか話さない日々を過ごしていると、世の中から離れていきますし、顧客層の考えからも遠くなってしまいます。ビジネスシーンの第一線で働く人の考えを聞くことができたのは、私にとってとても刺激的でした。他の企業の方に、「どうだった?」と聞かれたら、迷いなくよかったと伝えられます。

秀樹:やっぱりお一人お一人が魅力的だったのが印象に残っています。皆さんとの対話の中でそれぞれのバックグラウンドが見えてくる。そこからも学べることが多かったと感じています。

陶芸という商品の性質上、コストが減った、売上が倍増した、などの具体的な結果をすぐに出すためのものというよりも、この経験がこれからの人生に活きる、自分に対する投資という感覚も大きいです。

ーー最後に、それぞれへのエールも込めてメッセージをお願いします。

亜貴子:これからもどんどん需要が増えていくのではないでしょうか。コロナがあったからこそ、遠方の複業人材ともオンラインで繋がって取り組みを進めるという形も皆抵抗なく受け入れることができると思います。私も受け入れた結果「こんなに便利な世の中になったんだ」と思えましたから。

協働日本の皆さんは、ますます活躍されると思います。 

秀樹:皆さんと知り合うことができて、とても刺激的で楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。半年強という時間は短かった。3年、5年と続けていきたいご縁です。

何年か経ったらまた改めて協働をお願いしたいと思っています。それぞれ更に進化されて、学びも楽しさも、更に大きなものになっているだろうと考えるととても楽しみです。

田中:7ヶ月間本当にありがとうございました。鹿児島県出身である私自身も知らなかった更なる薩摩焼の魅力や歴史を改めて学びながら、鹿児島の伝統工芸と向き合うことができて、とても貴重な機会になりました。知れば知るほど魅力が溢れる荒木陶窯さんの作品、私も一人のファンになりました!

これからも荒木陶窯さんから生み出される「ワクワク」を、私もワクワクしながら楽しみにしております!

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

秀樹・亜貴子:ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

荒木 秀樹 Hideki Araki

荒木陶窯 15代 代表

1959年11月1日生
1983年 日本大学芸術学部美術科彫刻専攻卒
1985年 同大学研究課程修了
2020年 苗代川焼・朴家15代襲名
2020年 「現代の名工」卓越技能者厚生労働大臣表彰
日本工芸会正会員
日本陶芸美術協会会員・日本伝統工芸士会会員
鹿児島県美術協会会員・苗代川焼伝統保存会会長

https://shop.arakitoyo.com/

荒木 亜貴子 Akiko Araki

荒木陶窯 取締役

荒木秀樹の妻。平成18年より取締役として経営に携わる。
ブランディング、マーケティング、作品の販売などの業務を担い、荒木陶窯の作品作りを支える。

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VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-


NEWS:鹿児島県庁での新産業創出ネットワーク事業報告会の様子をご紹介いただきました(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)

「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会の様子をご紹介いただきました

2023年2月に鹿児島県庁で実施した新産業創出ネットワーク事業の最終報告会を株式会社WHEREに取材いただき、WHERE社の運営する地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MBERSHIP」にてご紹介いただきました。

副業兼業を越えた“協働”の可能性!外部人材と伴走し事業課題を解決 | LOCAL LETTER

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、鹿児島県内12社の地域企業様の伴走支援を行っています。

先日2月17日(金)、事業の報告会を鹿児島県庁にて実施いたしました。
協働日本と約7ヶ月取り組みを行った12社の事業者さまの中から4事業者様に発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表いただきました。

記事では、協働日本が協働で生み出した変化や、実際の伴走支援の雰囲気などをご紹介いただいたほか、副業や兼業を超えた「協働」という新たなスタイルについてもご紹介いただいております。

詳細についてはぜひ、LOCAL LETTERの記事をご参照ください。

2022年7月にも「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、協働日本が大切にしている「協働」のプロセスや、実際の取り組み事例について取材いただきました。
NEWS:「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて協働日本の取り組みをご紹介いただきました | KYODO NIPPON

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ご紹介した事業について

協働日本事業

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2022年3月3日|【43団体加盟】SNSでは広く、社内だと狭すぎる。個の時代に“ちょうどいい”繋がりを実現するコミュニティ。|株式会社WHEREのプレスリリース

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは
「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」は、暮らしている場所や個人、企業・行政が持っているスキルや経験に関わらず、地域や社会へ主体的に携わり、変えていく人たちの学びと出会いを提供する場所がつくりたい、という想いで立ち上げた地域共創コミュニティ。
LOCAL LETTER MEMBERSHIP

株式会社協働日本 協働日本事業 の詳細ついては こちら

NEWS:talentbook(タレントブック)にて、協働日本で活躍する協働プロ 横町 暢洋 さんが紹介されました

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記事の中では、協働日本を通じて兼職という形で取り組んでいる、鹿児島県の株式会社サクラバイオとの共同プロジェクトについてもご紹介されています。発達障がいや不登校の子どもたちの放課後等デイサービスなどを展開している事業にかかわる中で、横町さんが得られた学びや気付き、取り組みを通じて実感したご自身の成長について語っていらっしゃいます。

詳細につきましては、talentbook(タレントブック)のご紹介記事を御覧ください。

横町 暢洋
Mitsuhiro Yokomachi

NECソリューションイノベータ シニアマネージャー

大学卒業後、NECソリューションイノベータ(株)に入社、携帯電話及びパソコン向けソフトウェア開発に従事。2015年から日本電気(株)を 兼務し、サービス事業創出・開発・運営に従事。2019年より組織リーダに就任し、一次産業のデジタルトランスフォーメーションも推進。

専門領域
ITを活用した業務改善・効率化、ソフトウェア開発、サービス事業開発・運営

人生のWHY
人生に失敗はなく、常に挑戦あるのみ

横町 暢洋氏も参画する協働日本事業については こちら

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STORY:栄電社 川路博文氏 -『焼酎粕』を新たな地域資源に。”四方良し”の発想でサステナブルな地域産業へ-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、2/17(金)に取り組み企業数社をお招きし、報告会を鹿児島県庁にて行いました。

発表会の様子はこちらの協働日本公式noteでもご紹介しています。
鹿児島で熱い「協働」が続々誕生中!県庁での発表会の様子をご紹介します

当日は取り組み企業の一社、株式会社栄電社の、バイオ環境事業部マネージャー川路博文氏に、発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表頂きました。

株式会社栄電社は、「技術で社会に貢献し、お客様からの信頼によって会社を発展させる」をミッションに、人々の暮らしや産業になくてはならない「電気」が、確実に、安全に、効率よく送電され運用されるシステムの運営を支えている総合電気エンジニアリング会社です。

昨今では、時代の要求でもある「新エネルギー開発」や、「バイオ環境事業」を通じて、SDGsにも積極的に取組んでいます。

そんな「バイオ環境事業」において、川路氏は焼酎粕を活用したサステナブルな地域産業の活性化に挑戦されています。地元鹿児島県の名産でもある焼酎を蒸留する過程でできる焼酎粕。強い粘性があり取扱いしにくく腐敗しやすいという特徴から、再利用が難しい産業廃棄物になりがちでした。

栄電社では、この焼酎粕の機能性成分に注目し、加工することで保存性・取扱性を向上させた焼酎粕乳酸発酵液(以下、SPL液)の製造を実現。協働日本との取り組みを通じて、この「SPL液」の活用による地元産業の活性化を図っています。

今回は事前インタビューでお伺いした内容を含め、川路さんにお話しいただいた協働日本との取り組みを通じて生まれた変化や、今後の事業展望への想いなどをご紹介します。

(取材・文=郡司弘明)

廃棄物ゼロを目指して。持続可能な資源の循環を生み出し、鹿児島県の産業全体へ貢献したい

ーー協働日本と勧めている「焼酎粕を新たな地域資源として活用する」プロジェクトについて

まず初めに、なぜ私たちがこの焼酎粕の活用に着目したかについてお話しします。健康にも良い食品として知られる「酒粕」は日本酒の製造過程で出るものであることはよく知られていると思います。

「焼酎粕」も焼酎を蒸留する過程で出てくるものです。そして酒粕と同様に、たんぱく質、ビタミン類、ミネラル類などさまざまな栄養成分が含まれているんです。

ただ、酒粕と違う点として、焼酎粕は粘性が強い液体で取扱いにくい上に腐りやすいという特徴があり、再利用がとても難しいんです。さらに、出来上がり量よりも発生量が少なくなる酒粕と違って、出来上がりの焼酎の約2倍もの量が発生します。年間20万t以上も廃棄されることがあり、当然コストも嵩んでしまう。

そこで、なんとかこの焼酎粕を活用できないかと考え、鹿児島の基幹焼酎メーカーさん、様々な大学機関と連携して2017年から研究開発を始めました。

今までの焼酎粕の処理法というのはメタン発酵により一部をガス燃料にしたり、農地に肥料として撒いたりすることが多く、あくまでも産業廃棄物の処分という考え方でした。私たちは、この焼酎粕を産業廃棄物ではない「地域資源」として活用できないかと考えたんです。

せっかくならば地元産業の廃棄物を新たな「地域資源」に生まれ変わらせて、同じく地域産業で活用してもらえるような形…鹿児島県の地域産業全体に貢献できるような形にしたいという想いを持って事業がスタートしました。

そして研究開発を進める中で、焼酎粕を乳酸菌発酵させて保存性や取扱性、有効成分が強化された、飼料・肥料として使える「SPL液」が完成しました。焼酎粕の全量を使うことで廃棄物ゼロも実現。特許も取り、実証実験も重ねて、幅広い用途で活用できる効果性も少しずつ判明してきました。いざ焼酎粕の活用の可能性が見えてきたものの、「実証の成果をどのように事業に結び付けていけばいいか、ターゲットをどう絞っていくか」という次の課題が浮かび上がったんです。

ーー協働型の伴走支援開始後の変化や手応えについて

ーー続いて、協働プロと具体的にどのような取り組みをしているかもお聞きしたいと思います。

協働日本の皆さんにはターゲット設定の部分でとても助けていただきました。実証実験の結果では、肉牛・乳牛や養殖魚への飼料利用、水稲への肥料利用など様々なケースにそれぞれ良い結果がでていたので、具体的にターゲットをどこに絞って活用を広げていくかという部分を定められていなかったのですが、協働プロの皆さんと検討を重ねることでターゲットを二つに絞ることができました。

一つは「乳牛」、もう一つは「魚の養殖」です。

鹿児島県の豚の飼育頭数は全国一位、肉用牛は全国二位なので、どうしても私たちは「鹿児島」らしさや、市場の大きさから、豚や肉用牛の飼料として「SPL液」を活用することに目がいっていたんです。

一方で、実証実験の成果としては乳牛の成果の方が大きかった。乳量が上がった・母牛の受胎率が上がったなどの成果が数年にわたる実験の数値データとして出ていたんです。

同時に、乳牛は夏の暑い時期に食い渋りが発生し、乳量が減るという酪農家側の課題も明確にありました。協働プロの方に「せっかく明確な課題と、良い結果が出ているのであれば、ターゲットはここに絞るべきではないか」と指摘していただけたことが新たな気づきになりました。

魚の養殖に関しては、時流の観点からアドバイスをいただきました。実は協働のスタート前には、養殖魚に関する商談はひとつもありませんでした。そんな中で、協働プロの皆様は養殖魚のブランド化に着目した意見をくださったんです。

昨今、水産物に関しては特に、味の差別化やブランド化が進んでいます。例えば、鹿児島県では「安全性・鮮度保持性・美味しさ・栄養性・機能性」などに拘った養殖ブリの「鰤王」、鹿児島県産のお茶を飼料に配合した養殖カンパチ「海の桜勘(おうかん)」などのブランド魚が有名です。

新たな地域資源である「SPL液」を飼料として魚に与えることが、「地域の特産品から発生した焼酎粕を使った魚」というブランディングに繋がるというアイディアが生まれたんです。

このアイディアは外食産業の商社の方から共感を得まして、こちらも現在「SPL液」の製造販売の事業化を進めているところです。今年の秋には、「SPL液を使ったブランド魚」を皆様にお届けすることができるかもしれません!

チームとして向き合う一体感と、多角的な視点から一貫性を持ったアドバイスが社内に新風をもたらす

ーー協働日本との取り組みの中で一番印象的だったことは

新しい気づきや視点で、今まで考えなかった方向に進むことができたことでしょうか。社内の人間だけで検討を重ねると、似た議論が続いたり、考えが凝り固まってしまっていて、どうしても全員同じような方向に向かってしまいます。

先ほどのターゲット設定の話の中でも「鹿児島の地域産業のために」という想いから、対象の多い事業者をターゲットに設定したいと視野が狭くなっていました。そこに協働プロの方が入ってくださったことにより、フィールド試験結果を元にして「より収益化に繋がりやすいもの」というヒントをいただきました。

私たちの収益化にも繋がりやすく、効果も出やすければ、事業も広がりやすいので、結果として「鹿児島の地域産業」に大きく貢献できるわけです。新しい視点によって道が拓けていった感覚が強いです。

コンサルではない、同じチームとして向き合っていただいていることも本当に大きいです。当事者目線でいろんな相談に乗っていただけるので、共に事業を作っていっている実感があります。実際、「SPL液」の販売という課題をテーマに協働がスタートしましたが、販売や収益の視点だけでなく「鹿児島県の地域産業全体に貢献したい」という私たちの本来の想いの実現方法を一緒に考えていただくことができました。

“四方良し”のビジネスモデルで、鹿児島県に更なる飛躍を

ーー今後の展望について

基本的には酒造メーカーさんご自身が製造設備を持って「SPL液」を作っていただき、「SPL液」を畜産・養殖業社の方に直接販売していただくという事業モデルを検討しています。

酒造メーカーさんとしては、自社で「SPL液」を製造することで処理費を軽減できます。実は焼酎の製造期間というのは、毎年9月から11月と非常に短いのです。でも、「SPL液」の製造・販売という業務ができることによって閑散期がなくなり、従業員の方たちを年間を通して活用しやすくなります。当然、「SPL液」の販売による増収を見込むこともできます。

先ほど述べたように、畜産農家さん、水産養殖業の方たちに対しても、「SPL液」を活用していただくことで大きなメリットがあります。「SPL液」の栄養吸収率の良さから、生産コストの削減に繋がります。乳牛であれば、一般的に乳量が減る夏場の牛乳の安定出荷、養殖魚であれば鮮度が長く保てることや、味の良さなど、それぞれの付加価値向上が見込めるんです。

もちろん私たちとしても、提携する事業者が増えることで製造設備の建設という仕事が発生するわけです。

鹿児島の名産品である焼酎から、廃棄物ゼロ、循環型の経済を実現し、それが地域の他産業にも活かされていく。全員がWin-Winになる形で地域の活性化が図れると考えています。

こうやって整理してみると、焼酎粕から作った「SPL液」をいかに販売していくかという課題を通じて、本当に私たちがやりたかった「環境問題への取り組みの発信」に辿り着いたことが、協働がスタートしてからの一番の変化のように思います。


編集後記

鹿児島を代表する産業のひとつ「焼酎」から排出される焼酎かすを活用した新事業への取り組みは、発表会に参加した鹿児島県の職員の皆さまのみならず、他の事業者様もペンを走らせながら、興味深く聞いておられました。

報告会終了後に開催した交流会でも、鹿児島県内の地域や業種を超えた繋がりが生まれており、次なる「協働」が誕生する予感が生まれていました。

協働日本の伴走支援中に大手事業者との事業化が決まるなど、既に大きな事業進展が生まれております。

今後も栄電社の技術によって実現した、サーキュラーエコノミーモデルの発展に向けて、今後も協働メンバー一同でお力添えできればと考えております。

株式会社栄電社

昭和53年創業。「技術で社会に貢献し、お客様からの信頼によって会社を発展させる」をミッションとして、人々の暮らしや産業になくてはならない「電気」の供給を支える総合電気エンジニアリング会社。

従来の技術だけでなく、時代の要求でもある新エネルギー開発に関わる新技術の習得や、産学協同研究による高度な技術開発・技術者養成にも積極的に取組んでいる。

「栄電社」様の事例を含む、鹿児島県での地域企業の協働事例はこちら

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-
VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –
VOICE:協働日本 浅井南氏 -「地方だから」を魅力に変える!チームで実現する協働の形-


NEWS:鹿児島での荒木陶窯さまとのお取り組みをご紹介いただきました(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)

「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて荒木陶窯さまとのお取り組みをご紹介いただきました

株式会社WHEREの運営する地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」にて、荒木陶窯さまとのお取り組みをご紹介いただきました

副業ではなく協働で事業推進。伝統と時代の変化で葛藤した窯元の事例 | LOCAL LETTER

協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和4年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、鹿児島県内12社の地域企業様の伴走支援を行っています。

先日2/17(金)には、その報告会を鹿児島県庁にて行い、いくつかの事業者様に発表会へお越しいただき、約半年間の協働の取り組みと成果を発表いただきました。

記事の中で、約425年前から受け継がれてきた薩摩焼を作り続けている由緒ある窯元である荒木陶窯さまの取り組み発表から、「副業ではなく協働で事業推進。伝統と時代の変化で葛藤した窯元の事例」と題し、協働日本が協働で生み出した変化や、実際の伴走支援の雰囲気などをご紹介いただきました。

詳細についてはぜひ、LOCAL LETTERの記事をご参照ください。


荒木秀樹 さん 荒木陶窯代表 / 苗代川焼15代玉明山 / 現代の名工 / 日本工芸会正会員 / 日本伝統工芸士

ご紹介した事業について
協働日本事業

ご紹介したお取り組み事例 関連記事
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鹿児島で熱い「協働」が続々誕生中!県庁での発表会の様子をご紹介します|協働日本|協働を通じて、地域の活性化と働く人の活性化を実現する。|note(外部サイト)


株式会社協働日本は株式会社WHEREと業務提携し、同社が立ち上げた、“地域課題” や “社会課題” の解決に取り組む地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」へパートナー企業として加盟しております。

2022年3月3日|【43団体加盟】SNSでは広く、社内だと狭すぎる。個の時代に“ちょうどいい”繋がりを実現するコミュニティ。|株式会社WHEREのプレスリリース

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは
「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」は、暮らしている場所や個人、企業・行政が持っているスキルや経験に関わらず、地域や社会へ主体的に携わり、変えていく人たちの学びと出会いを提供する場所がつくりたい、という想いで立ち上げた地域共創コミュニティ。
LOCAL LETTER MEMBERSHIP

株式会社協働日本 協働日本事業 の詳細ついては こちら

STORY:うしの中山 荒木真貴氏 -『UshiDGs(牛DGs)』協働により生まれた、鹿児島発サーキュラーエコノミーモデル-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、有限会社「うしの中山」専務 荒木真貴氏にお越しいただきました。

有限会社うしの中山は、1950年創業の和牛肥育農家です。”牛の能力を最大限に引き出す”を使命として牛にとってストレスのない環境にこだわり、現在約5,000頭の牛を飼育しており、A5等級出現率75%を超える肉質が自慢です。2022年には和牛オリンピックの部門で日本一にも輝きました。

そんなブランド牛の飼育・販売が好調な一方で、牛の飼育とは切っても切れない「堆肥」の販路拡大への課題がありました。荒木氏は現在、協働日本との取り組みの中で、堆肥の販路拡大や、堆肥の活用によるGX(グリーントランスフォーメーション)を通じて「UshiDGs(牛DGs)」の活動を行なっておられます。

今回は協働日本との取り組みのきっかけや、支援を通じて生まれた変化についてお聞きしました。さらには今後の複業人材との取り組みの広がりの可能性についてメッセージもお寄せいただきました。

(取材・文=郡司弘明)

畜産農家の抱える「堆肥問題」を、サステナブルな取り組み「UshiDGs」へ

ーー本日はよろしくお願いします。協働日本との出会い、進行中のプロジェクトについてお話を伺っていきたいと思います!

荒木真貴氏(以下、荒木):改めて、よろしくお願いします。

ーー協働日本とは、現在「堆肥事業」についての協働を進めていらっしゃいますが、取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

荒木:農場内の堆肥の問題についての検討を進めていた時、普段からお世話になっていた養豚農家の方や、鹿児島県庁の方に協働日本代表の村松さんをご紹介いただいたのがきっかけでした。農家ではない方々から、自社の課題についての意見を聞ける良い機会であると考えたんです。ちょうど協働日本さんが鹿児島県と事業を進めていたということも、協働の決め手の一つになりました。

実は、「協働日本」という名前を聞いて、初めはどんな組織なのか想像できていなかったのですが(笑)お会いしてみたら、村松さんをはじめ、協働プロの皆さんは本当にお人柄が良くて。あの時お会いできてよかったと思っています。

ーーそう言っていただけるととても嬉しいです。
早速「堆肥問題」の背景と、現在の状況についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。

荒木:堆肥は、その特性上、牛の飼育とは切っても切り離せません。約5千頭の牛を飼育する私たちの農場から出る堆肥は、年間3万6千トンにもなります。想像できない量ですよね。牛の糞は毎日どんどん増えていきますから、堆肥化した後もそのまま農場内に置いておくことはできません。堆肥化した後に全て捌かせないと、溜まる一方になってしまうんです。ですから、いかに効率的に早く堆肥を売り切っていくかが、当初の「堆肥問題」という課題でした。

有り余る堆肥をどうするか、が協働のスタート。スタートしてからは、単に堆肥を売ることが目的ではなく、なぜうしの中山が堆肥事業に取り組むかを言語化した上で、新たな販路の開拓やお客様のニーズを考えた堆肥の改善、オーダーメイドによる新しい売り方などについて、協働プロと一緒に検討を進めていきました。

付加価値のある堆肥──つまり使うと作物がよく育ち、収穫の質も量も上がるような堆肥を目指して堆肥の研究をし、こだわりの菌など独自の配合で手間ひまをかけた完全発酵堆肥として販売、現在は売上金額も向上しています。あれだけ有り余っていた堆肥の山が、今は需要が大きすぎて足りない状況になっているのも嬉しい悲鳴です。

また、あまり知られていませんが、堆肥は地球の環境にもすごく良いんです。化学肥料を使いながら作物を繰り返し作ることで、土が硬く締まり、水はけが悪くなったり、植物の根が伸びづらくなったりします。そんな土に堆肥を混ぜ込むと、肥料としての栄養がいきわたるのは勿論、通気性や排水性、保水性を上げる効果があり、作物を作りながらも本来の大地の力を取り戻すことができるんです。

堆肥づくり以外にも畜産農家が普段から行なっている様々な環境保全、サステナブルな取り組みについて、総括して「UshiDGs(牛DGs)」として発信することも始めました。

うまみを追求した技術、ストレスのない環境そだてられたうしの中山の牛肉は、和牛オリンピックの部門で日本一に輝きました

自分よりも自分のことをわかってくれる。自らの足で歩くことを前提とした、自律を前提とした伴走支援

ーー続いて、協働プロと具体的にどのような取り組みをしているかもお聞きしたいと思います。

荒木:はい。弊社からは2名が主となり、協働日本さんには、横町さん、田村さん、近藤さん、西川さんの4名を中心に参加していただいて、1〜2週間に一度のミーティングを行なっています。

このミーティングで、タスクや検討事項を整理、目的や目標などを明確にしており、事業を進めて行くための大きなヒントになっています。思いつくアイディアは色々あっても、言語化や頭の中を整理するのがすごく苦手で…協働プロの皆さんはアイディアを言語化することに本当に長けていらっしゃるので助かっています。

何をどうすればいいのか、頭の中でイメージの輪郭ができていても、うまく整理できていないことは多々ありますし、今取り組んでいることを文章にして改めて見直してみると、なんだか思っていたのと違う方向に進んでいるなということもあるので、皆さんの言語化による整理で、進むべき方向性が定まっていく実感があります。

ーーなるほど。目的や課題の整理を中心に進めていただいているんですね。取り組みの中で感じた協働プロの印象はいかがでしたか?

荒木:皆さん、能力やスキルが高いことはさることながら、お人柄がとにかく良いです。対話の中で「荒木さんが思っているのはこういうことですよね」と、自分より自分の考えを理解してくれていて、その上で「それであれば、こういう風にした方がいいのでは?」という提案をしてくださるんです。進みたい方向性を邪魔せず、嫌な気持ちにもさせず修正してくださるのでいつも納得感を持って受け止められています。お若い方が多いのに、自然で心地よいコミュニケーションを取っていただけるので正直とても感動しました。

すべての会話が非常に建設的で、弊社そして私に今、何が足りていて、何が足りてないかをはっきり明示してくれる存在です。そして何より、あくまでも私たちが「自分の足で歩くこと」を前提として、愛を持って伴走してくださっていることに、いつも感謝しています。

協働の中で見えてきた、「自分が本当にやりたかったこと」

ーー協働日本との取り組みの中で、会社にはどのような変化が生まれましたか?

荒木:堆肥をいかに販売していくかという課題を通じて、本当にやりたかった「環境問題への取り組みの発信」に辿り着いたことが一番の変化かと思います。

いかに堆肥に付加価値をつけるかという検討を重ねていく中で、出来上がったノウハウは必ず他の農家の為になると改めて感じました。栄養価が高く環境に良い堆肥を作って販売すると、堆肥を使った野菜農家は高品質な作物をより多く収穫できるようになり、土壌改良にも役立ちます。その堆肥の作り方を他の畜産農家にも共有できれば、そこでも堆肥が売れるようになり、購入先の作物や土壌改良にもよい影響が広がっていくと思うんです。

堆肥を活用したGX化だけでなく、牛舎と牛舎の間のスペースへの植樹、牛舎の壁面や堆肥舎の壁に蔦の葉を這わせて作ったグリーンカーテン、本来廃棄物になるようなものを飼料に活用するなど、私たちは日頃からサステナブルな取り組みを行っています。昨今では牛のげっぷに含まれるメタンガスが環境問題の一因にあるという説の影響で「牛は環境に悪い」というイメージがついてしまっているのを覆したいという思いもあり、こういった取り組みを総括して「UshiDGs(牛DGs)」として発信するようになりました。

荒木:協働プロとのミーティングを通じて思考の言語化を重ねることで、だんだんと「こういった取り組みを広げたい、知って欲しい」という「Why」が自分の根底にあったことが明確になりました。協働プロの皆さんにも「堆肥の付加価値や販路のことを考えることはすごく大事。でも、荒木さんにとっては売上を上げること自体が大事なわけではないんじゃない?」と背中を押してもらえたことが、自分にとっては大きかったと思います。

ーーただ目の前の課題解決をするだけでなく、想いの根底まで掘り下げていくことができたんですね。

荒木:そうですね。「UshiDGs(牛DGs)」のコンセプトが生まれたことにより、単に堆肥を売ることを超えて、自治体をはじめ、多くのステークホルダーに共感してもらえるようになりました。お茶の生産者や食品会社など、地域の事業者との協業が増え、鹿児島発のサーキュラーエコノミーのモデルとして、自社にとっても意義の大きな事業になってきています。

私が思っていた以上に、「UshiDGs(牛DGs)」は皆さんに共感して頂ける取り組みだったのではないかと思っています。

このように、自社の堆肥問題の解消を通じて社会課題の解消にもインパクトを残せるようになったことは、協働があったからこそ見つけられた「私たちの深層にあった大きな目的」への第一歩になりました。


企業や地域の壁を超えた、複業人材とのノウハウのシェアが日本を変える

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

荒木:私は元々異業種の方と積極的に関わりたいと考えるタイプで、考え方や事業内容が面白いなと感じた方にはSNSなどを通じて個人的に声をかけて話を聞くこともありました。多面的な視点を持つことで、新しいアイディアが生まれたり、物事への理解が深まると考えているからです。

日本社会では一般的に、アドバイスが欲しい時にその道のプロに頼ろうとする人が多いと思います。積み上げてきたものの中から良い知見を得ることはできる一方で、新しい可能性や視点を獲得することはできません。課題に直面した時に多面的な物の見方ができる力は、これからの社会でも必要だと思います。

ーー地域との協働の取り組みは今後どのようになると思いますか?

荒木:もっと広がっていくと思います。

今の若手を見ていると、何か成功を収めたとしても「全部自分の手柄」にしたい人は少ないように思います。関わった皆のお陰としてシェアすることを厭わない、「足るを知る」ような価値観の方が多いのかなと思います。

大きな理念を持つ一つの会社に人が大勢集まって、ずっと勤め続ける終身雇用の社会はもう過去の話です。これからは、こういった価値観を持つ若い世代が、会社という枠に囚われずにノウハウや労働力をシェアして、更には成果や売上もシェアしていこうという社会になっていく。そんな社会に、協働の取り組みはとても親和性が高いと思うんです。

地域と都市部の複業人材の取り組みについても同じ構造で、地域や業界・企業の枠に囚われずにノウハウをシェアしてもらうことで、効率的に成果を上げられるようになります。また、地域の外のプロフェッショナル人材からの客観的な視点と言葉で、自分たちのやっていることや考え方を再確認できるので、協働こそが新しい武器になり得るのではないでしょうか。企業や地域を超えた横の繋がりが、日本をより強くしていくと思います。

ーー嬉しいお言葉、ありがとうございます。
これからの協働日本へのエールを兼ねて、メッセージをお願いします。

荒木:協働日本の強みは、プロフェッショナルは勿論ながら、在籍する方の個々のお人柄の良さと、愛を持って悩みを聞いてくれるところだと思います。これからさらに多様な考えやスキルを持つ協働プロが増えていくことを期待しています。さらに広い範囲・多くの視点が揃うことで協働チームの戦力が突き抜けていき、救われる人が増えるんじゃないかな。

今回の協働で、協働プロの皆さんの頭の中と自分の頭の中が直結しているような、脳みそをお借りしているような感覚でミーティングを重ね、伴走支援を通じて背中を押していただきました。色んなアイディアがあっても、最後に実行するのは自分自身。本当にやりたかったことに向けて、進み出せてよかったと思っています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

荒木:ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

荒木 真貴 Masataka Araki

有限会社 うしの中山
専務取締役

長崎県諫早市出身
長崎県立諫早高校卒業
社会人になってからは、個人でカイロプラクターを目指し活動~アパレル業界にて8年過ごし、その後、運送業、建築、建設業なども経験し、2019年に『うしの中山』へ入社 販売を担当し、自社の肥育する牛の価値を高め、何より、感動する美味しさを知ってもらい、皆さんに食べていただくため活動してます。

広く海外の方にも、最高の自社の肥育した牛を知ってもらうため、2023年はかなり輸出に力をいれていくところです。

『命に感謝』
という、自社の理念を胸に、日本の農家さんがやってこられた自然と向き合って構築されたシステムや、考え方を先進技術と掛け合わせて、発展していかれる国々にその『ノウハウを輸出』することもビジネスになり、大切な地球の環境維持にもなるはずという信念でUshiDGsも仲間を集いながら展開。

有限会社 うしの中山
https://nakayama-kimotsuki.com/

「うしの中山」様の事例を含む、鹿児島県での地域企業の協働事例はこちら

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本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

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VOICE:協働日本 横町暢洋氏 – 二足の草鞋を本気で履いて生み出した変化と自信 –
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