Challenge Report:かごチャレ2026年度【第1回】開催レポート|県内3社の挑戦と、県境を越え始めた協業
鹿児島県が主催し、公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が企画運営を担う「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」。本レポートでは、参加者の挑戦がつながり、広がっていく様子をお届けします。
(レポート作成=黄瀬真理)
3年目の初回、県内外から70名超が集まり満員御礼
鹿児島県が2024年度に始めた「かごしまチャレンジャーサミット(かごチャレ)」は、今年度で3年目、通算7回目を迎えました。鹿児島県の「新産業創出ネットワーク事業」の一環として、年3回開催しています。
今年度の第1回は2026年9月15日、県内外から70名を超える方が鹿児島県庁18階かごゆいテラスに集まり、満員御礼での開催となりました。また、今回も全国から自治体関係者が複数名視察に訪れるなど、地域を超えて関心を集める場となっています。初めての参加者も、複数回通い続けている人も、両方いる構成でした。
開会では協働日本代表の村松が、昨年度この場を視察した石川県からの声かけで今年11月に「いしかわチャレンジャーサミット」が金沢で開かれること、11月には鹿児島から石川へ、1月には石川から鹿児島へ参加者が来る予定など、県を越えて参加者が行き来する形が今年度から本格的に始まることを紹介しました。


オープニングトークと県内企業3社のピッチ
【オープニングトーク】小さな“菌”から大きな市場をつくる、ヘルスケア新規事業の挑戦
今回のオープニングを飾ったのは、一人ひとりの腸内環境を整えるサービスを手がける株式会社bacterico 代表取締役CEOの菅沼名津季氏。「小さな“菌”から大きな市場をつくる、ヘルスケア新規事業の挑戦」をテーマに、研究職から起業し、市場のない領域で顧客の反応を見ながら事業をつくってきた過程を話しました。
一人ひとりの腸内環境を整える
株式会社bacterico 代表取締役CEO 菅沼名津季氏

同じ菌を摂っても効果が出る人と出ない人がいると分かり、一人ひとりに合わせた腸内環境ケアを事業にしたいと考えたことが出発点だったそうです。腸内細菌検査を幅広い世代に試したところ、検査結果で行動が変わるのは妊婦だったことから、対象を妊婦向けに絞った、と話しました。
「大手が入ってこないからこそ、中小にとってやる意義のある市場」(菅沼氏)。
大手企業やシェフとの協業で商品化が続いています。
締めくくりでは、発酵食品や、焼酎粕や魚のあらなど食品づくりで余った素材の活用など、鹿児島の事業者と一緒にできそうなことを挙げました。
【ピッチ】県内企業3名による挑戦事例の共有
続くピッチは、県内から3名の挑戦者が登壇。阿久根のさつまいも倉庫を加工会社に変え、国内から海外へ販路を広げる永井氏、喜界島の薬草・長命草を喜界島の産業として根づかせる渡辺氏、そして愛犬の寿命を10年延ばす予防医療に取り組む原田氏です。途絶えた原料や販路をどう立て直したか、ゼロからどう販路を開いたか、それぞれの挑戦の過程を話しました。
さつまいもで世界に挑む
株式会社海連 専務取締役 永井漸氏

株式会社海連は阿久根市の冷凍冷蔵倉庫の会社です。創業時は魚を預かる倉庫でしたが、魚が獲れなくなり、焼酎用のさつまいもに特化した倉庫に変えました。2019年に家業へ戻った永井氏は、コロナで焼酎の出荷が落ち、基腐病でさつまいもも入らなくなる状況に直面し、原料調達から加工・出荷までを自社で担う会社へ転換します。
転機は鹿児島県の伴走支援事業でした。協働日本と出会い、自社の強みと狙う市場を定め直してからは、商品開発と国内外の営業が一つの計画として動き始めました。冷凍のさつまいもスイーツが今秋、大手小売で発売予定で、海外向けには北米・フランスに続く輸出先も広げています。「さつまいもを、世界の日常食へ」を掲げていると話しました。
(海連様のお取組みはこちらからもご一読いただけます。)
喜界島の長命草を経済資産に
株式会社喜界島薬草農園 専務取締役 渡辺前二氏

株式会社喜界島薬草農園は、島の人から「サトウキビ以外の基幹産業をつくれないか」と相談を受けた代表の石原健夫氏が、島の原料を1年かけて調べ、ボタンボウフウ(長命草)に決めて2013年に設立しました。島の人たちが株主や関係者として創立に加わった共同の会社です。
ボタンボウフウは、海岸で海水を浴びても枯れず、島民が昔から食べてきた薬草です。一度植えると10年以上収穫でき、台風でも倒れないため、生産者の新しい収入源になっています。機能性表示食品の届出を複数完了し、先々までの契約栽培と全量買取で、生産者が続けられる形をつくってきました。目指すのは、ボタンボウフウを喜界島の経済資産に育て、島の人たちが自分たちで運営を続けられる産業にすることだと話しました。
愛犬の寿命を10年延ばす予防医療に取り組む
Buddycare株式会社 代表取締役CEO 原田和寿氏

Buddycare株式会社は2021年に鹿児島で創業し、「愛犬の寿命を10年延ばす」ことを掲げています。愛犬の健康や寿命には生活習慣が関係するケースも多いとされる一方で、日々の健康状態を継続して把握するデータは十分にそろっていません。そのため同社は、フレッシュフード・健康管理デバイス・記録アプリの3つでデータを集め、犬の予防医療を確立することを目指しています。
商社に15年勤めた原田氏は、愛犬と暮らすなかで22年ぶりに鹿児島へ戻って創業しました。動物病院に受け入れられる品質にこだわり、現在は全国1,400の動物病院と提携。今年2月には、フレッシュフードのメーカーとして初めて、動物病院で処方される療法食を発売したといいます。次の5年は療法食の拡充、対面販売、海外での生産と輸出に取り組むと話しました。
【パネルディスカッション】挑戦の原点と、向き合ってきた壁
パネルディスカッションのテーマは「挑戦の原点」と「向き合ってきた壁」。司会の岸本氏(協働日本)が、ピッチでの話をさらに深堀して登壇者4名に聞きました。

菅沼氏の原点は、高校時代の病院見学で患者が亡くなる場に居合わせた経験でした。治療だけでなく予防が必要だと強く感じ、大学も就職先も予防に関わることを軸に選んできたと話しました。進めるなかでの壁は「任せられない」自分だったといいます。他者と組んで進めるようになってから、できることが増えたそうです。
永井氏は、仲間から「海連の最大の強みは焼酎用の芋だが、最大の弱点でもある」と言われたことを挙げました。当時はピンと来なかった言葉が、1年後のコロナと基腐病で現実になり、その言葉があったから次を考え始められたと振り返ります。苦しい時期には、創業時に魚が途絶えたときの父の話を思い出し、覚悟を決めてからが変わったといいます。
渡辺氏は、補助事業への申請が一度は通らなかった後に、内容を見直して再び応募し採択された経験を話しました。原田氏は、トラブルが起きた時点を一番悪い状態と置き、そこからの回復だけを考えるようにしていると話しました。
ワークショップ「今挑戦していること」を話す時間


後半は、参加者全員が自分の挑戦を言葉にして伝え合うワークショップです。個人ワークのあと、テーブルごとに1人ずつ自分の挑戦を話し、周りの参加者が感想・質問・貢献できることを付箋に書いて相手に渡しました。
今年度から、最後に「ネクストアクションの宣言」が加わりました。今日の学びを3分で言葉にしたあと、次回のかごチャレまでに取り組む一歩を、1人1分ずつテーブル内で宣言します。次回までに新規販路先を決める、同じテーブルだった人の商品を実際に手に取ってみる、鹿児島と石川のコラボを実現したい、といった具体的な宣言が各テーブルから聞こえました。
GLOW UPの県外初開催と、参加者に起きた変化
ワークショップのあと、GLOW UPからの案内がありました。GLOW UPは、2024年度の第1回かごチャレで出会った県内5社(若潮酒造、鹿児島ラーメンみよし家、下園薩男商店、出水田食堂、潮や)が昨年度から続けている立ち飲みスタンドで、若潮酒造の焼酎「GLOW」に合わせる鹿児島の食材を毎回新しいテーマで出しています。9月のテーマは「知覧茶」でした。今年度の新しい動きは、初めての県外開催です。2027年1月30日に大分県別府市の湯治宿「蒸しどころ大黒屋」で、鹿児島の焼酎と食に別府の地獄蒸しを組み合わせた場を開きます。
「このイベントのいいところは、来るお客さんも楽しそうですが、やっている事業者たちがいちばん楽しそうにやっていること」(協働プロ・四元亮平氏)。参加者にも、この場での会話から一緒に取り組む相手を見つけてほしいと呼びかけました。(GLOW UPの誕生秘話はこちらからご一読いただけます。)
事後アンケートでは、7割の人が「他業種との交流で新たな発見ができた」を挙げ、4割が「今後、新たなビジネスに挑戦しようと思った」と答えました。過去の参加者からは、協業の相手や接点が増えた、かごチャレで知り合った人の助言で新商品の企画を始めた、久しぶりに会った人に相談に行った、といった変化の声が届いています。

3年目の初回で共有されたこと、次回の予定
3年目の初回である今回は、開始前から立ち話と名刺交換が始まる場となっていました。2回目以降の参加者が初参加の人に声をかけ、アンケートの回答にも「久しぶりに会った人に相談に行った」と記載があったように、知っている相手とあらためて顔を合わせることが次につながるのも、回を重ねてきたこの場の特徴となっています。今年度は、GLOW UPが県境を越える動きと石川県でのチャレンジャーサミット開催が重なり、鹿児島で始まった場が県外へとつながる年度になりそうです。アンケートには「今後も他地域との交流もできると嬉しい」という要望や、「地域に挑戦の循環を作ることを体現している場だと感じている」という声もありました。
閉会では、公益財団法人かごしま産業支援センターから、登壇4社の話にコラボの種があったこと、この場から新しい取り組みが生まれることを期待しているという話があり、締めくくりとなりました。次回の第2回は2026年11月16日に開催します。
※株式会社協働日本は地域企業と第一線で活躍するプロ人材が一つのチームとなり、事業変革に伴走します。成果を出すとともに、その先の「自ら変わり続ける力」を育みます。詳細はこちらからご確認いただけます。
主催:鹿児島県 / 企画運営:公益財団法人かごしま産業支援センター、株式会社協働日本
この取り組みに関するお問い合わせはこちら
Mail:ippo@kyodonippon.work



