STORY:山岸製作所 山岸氏・奥永氏 -幹部の意識変革が地域企業の組織を圧倒的に強くする-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

今回は、協働日本が提供している『経営リーダー育成プログラム』の参加者、山岸製作所の奥永さん、そしてプログラムの導入を決めた山岸社長にインタビューをさせていただきました。

『経営リーダー育成プログラム』は、経営幹部の育成に悩む地域企業様にむけた、協働日本の新しいプログラムです。

協働プロによる幹部への伴走とメンタリングによって、企業幹部を経営者リーダーとして育成するプログラムで、改めて自分と会社の存在意義を考え、組織を動かす幹部としての視線の醸成、意識の変革を目指します。

最初の事例として、インタビューでは、プロジェクト導入のきっかけ、実際のプログラムの内容、感じている変化や成長についてお話しいただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

営業一筋30年、プレイングマネージャーからの転身への一大決心

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、奥永さんの普段のお仕事やこれまでのキャリアについて教えてください。

奥永 亮治氏(以下、奥永):はい、よろしくお願いいたします!

現在は営業現場の管理・マネジメントや、オフィスコンサル事業の企画推進を担当しています。入社以来ずっと営業職ですが、元々営業を志望していたというわけではなく、与えられた役割に一所懸命になって気づくと30年間営業一筋になっていました。


しばらくプレイングマネージャーとして、現場と管理の両方を経験してきましたが、2023年の4月に担当顧客を持たない専任のマネージャーに切り替わり、同じタイミングでこの『経営リーダー育成プログラム』がスタートしました。

ーー30年間営業一筋というのはすごいですね!そんな長く携わられていた営業現場から離れたというのは、ご自身の希望もあったのでしょうか?

奥永:組織を大きくしていこうというタイミングで、このままずっと一営業のままで良いのか?という想いはありましたね。今は良くても10年後を考えた時に、自分が今のままの仕事を続けてることが、後進の育成などを鑑みても、組織として良くない面もあるのではないかと感じたんです。

もちろん現場を離れる寂しさのようなものもあったのですが、自分としては一大決心をして次のステップに進んだ形です。

ーーありがとうございます。山岸社長から見た奥永さんへの印象や期待についてもお伺いできますか?

山岸 晋作氏(以下、山岸):とにかく真面目で責任感が強い印象です。まさにプレイングマネージャーからマネージャーになってもらいたいと伝えた背景としては、会社のフェーズが変わってきたということがあります。

組織を蘇らせるための蘇生フェーズから、大きくするための成長フェーズへ変わっていこうというタイミングで、組織の中核になるような存在が必要になります。責任感の強さや、「自分がやるんだ」という気概を考えると、彼が適任だなという風に思っていました。

それに、奥永さんは現場でも十分な実績を残してきていたし、これまでやってきたこと・将来の10年間を考えた時、もっと責任を持って仕事できた方が活き活きと仕事ができるのでは?と感じたことも理由としてありますね。

会社のフェーズの変化に合わせた人材育成の必要性

ーー続いて、奥永さんが『経営リーダー育成プログラム』に参画されたきっかけについて教えて下さい。

山岸:先ほどもお話しした会社の蘇生フェーズ───生き残りに集中する10年間は、目の前の売上、明日の利益を求める・深めることに注力してきました。

フェーズの変化は、例えるならダイエットから筋トレに移行するようなイメージです。

そんな変革の中で、私自身が社員との漠然とした距離感を感じていたんです。成長のためには皆の力を借りなくてはならないので、距離があることは大きな課題の1つでした。そこで、まずは部長メンバーとの距離感を近づけて、一緒に成長していきたいと思うようになりました。なので、実際に奥永さんがプレイングマネージャーから専任のマネージャーになる際にも、どのように成長をサポートすればいいのか悩んでいて。育成というのは目標があってこそのもので、何を目標に進んでいけばいいのか皆目も検討がつかなかったんです。

そんな時、これまでも事業の伴走支援に関わってくれている協働日本の村松さんから「企業の幹部育成も取り組んでいる」という話を聞いて、是非取り組んでみたいと思いました。

ーーなるほど。そこで『経営リーダー育成プログラム』が生まれたのですね。

山岸:はい。奥永さんを含め、2名に参加してもらうことになったのですが、はじめは受け入れてもらえるか内心ドキドキしていました。

山岸製作所は長く続く会社ということもあって、単一性や経験の長さに優位性を感じる文化が強く、外部の力を借りる・取り入れて活用する文化がありませんでした。

そもそも「自分たちって幹部なの…?」という疑問をそれぞれが抱いている状態だったということもあり、「やってみる」と言ってもらえるかどうか…という状態で不安に思うところも大きかったですね。

ーーそうだったのですね。実際に話を受けて参加することになった奥永さんは、はじめプログラムにどのような印象を持たれていましたか?

奥永:正直な話をすると、プログラムの初日に村松さん(協働日本代表)と藤村さん(協働日本CSO)から、詳しく話を聞くまではよくある研修の延長線くらいに考えていました。(笑)

幹部育成と言っても、マネジメントや管理について学ぶような…部長とは、課長とは?といった座学の社員研修のイメージを抱いていたので、プログラムの内容やスケジュールについて説明を受けて「どうやら、思っていたものとは全然違うぞ」と。

幹部として山岸製作所の価値や課題をどう捉え、何にコミットしていくかを「自分で考え、自分でやる」という自律的な行動で取り組むプログラムで、やること自体は理解できたけれど、果たしてやり抜けるか、はじめは不安もありました。

ーー確かに、研修というと講義を想像してしまいますよね。実際にどのようにプログラムが進行したのかについても教えて下さい。

奥永:キックオフから最初の半年は、協働日本代表の村松さんとCSOの藤村さんに何度か来社いただき、ワークショップのセッションを繰り返しました。最初に、自分自身と山岸製作所の「存在意義」を自分で言語化するセッションには驚きましたね。そんなことを考えて仕事をしてきていませんから。また、山岸製作所の価値や課題を本質的に考え抜くセッションでは、社長が経営者としていかに未来をみて、不確実に向き合っているかを少し理解できました。

前半のセッション中で、自分がコミットするテーマとして、山岸製作所における事業開発を決定しました。後半の半年は、週に1回オンラインで伴走プログラムのセッションを実施、月に1回コーチングという形で勧めていました。毎週のプログラムに関しては、プログラム期間の前半は藤村さんに、後半は協働プロの足立紀章さん((株)ベネフィット・ワン 執行役員)に伴走していただきました。

30年も働いていることもあり、会社のことはなんとなく理解しているつもりだったんです。それでも、今思えば薄っぺらい理解だったと思います。この会社がなんのためにできたのか、創業者の想いと立ち上がった背景など、聞いているようで聞いていなかったのかもしれません。

プログラムを通じて、山岸社長にも改めて話を聞いて、本当の意味で理解していったんじゃないかと思います。こんな機会がなければ考えることはなかったのではないかと思います。

会社の存在意義について考えが進むと同時に、自分がなぜ山岸製作所で働いているのか?についてはじめて考えました。

山岸製作所で働くことは、自分にとっては朝起きて会社に行って…という日常のサイクルの1つになってしまって「なんのために仕事をしているのか?」を考えたことがなかったんです。

ーー今日のインタビューでもはじめに、「与えられた役割に一所懸命になって30年」とも仰っていましたし、なかなか自分の働く理由を考える間がなかったのかもしれませんね。

奥永:そうですね。今になって思うと、自分=「一従業員」という意識で仕事をしていたんだと思います。社長が考えたことや決めたことが下りてきて、自分はそれを一所懸命こなすという状況でした。

だから、自分は何をやりたいのか?この会社で何をしていきたい?という問いを藤村さんからもらったことでようやく「自分がこの会社でしたいこと」を考えるようになり、自分と会社の存在意義に重なる部分があることにもはじめて気づきました。

自分のことと、会社のことに向き合って考えて、会社の存在意義、自分の存在意義、という同じテーマについても繰返し考え理解を深めていくと、同じような問いに対しても「会社のためにすべき」と思いながら書いて

いたことが、だんだんと「自分がやりたいこと」に変わってきたんです。

「自分がこれからしたいことは?」という問いに対して書いた答えなのに、初めの頃は「本当にやりたいことなのかな?」と疑問に思うことがありました。振り返ってみると「会社がこうなったらいいな」という考えで書いていたからかなと思うんです。徐々に「自分がやりたいから、こうやって進みたい」と、主語が会社から自分に変わって、腑に落ちるようになっていきました。同時に、通常の仕事でも自分の意思が反映されていったように思います。

考え続ける習慣が、視座を引き上げ、行動を変える。

ーープログラムを通じて印象的だったことはありますか?

奥永:毎週宿題をいただくのですが、その全部が印象的でした。自分が質問されたことを整理して答えを用意する、というのは正直しんどいときもあったんです。

毎週のセッションを録音していたので、犬の散歩をしながら何度か録音を聞いて…藤村さんの問いの内容を理解するところからでした。表面上はわかっていたつもりでも、本質的には何を問われているんだっけ?ということをきちんと理解してから考えはじめるという流れでした。

大学生のレポートのように何かを調べて答えを出すなら、楽にできますけど、答えが自分の中、会社の中など内側にしかないというところが大変なところです。
また、日頃の業務の中で「考える時間」を捻出しなくてはいけないので、毎週のセッションはペースが早いなと思うこともありましたが、逆にそのペースのおかげで習慣化・ルーティン化できたのはよかったかもしれません。

また、コーチングのパートでは、月に1回のペースで村松さんと藤村さんに話を聞いていただいていました。実を言うとこちらのパートの役割を理解しないまま、自分の好きなように話して聞いていただいていましたが(笑)今になって思うと、ここで話を聞いてもらうことによって自分の気持ちの面と向き合うことができたのでありがたいパートだったなと思っています。

ーー先ほど、「自分がこの会社でやりたいこと」が段々と見えてきたというお話をいただきましたが、ご自身の変化や気づきについても教えていただけますか?

奥永:絶え間なく考え続けるので、いろんなタイミングで頭の中で何かがつながることが出てくるようになりました。仕事のこと、経営のこと、会社の理念なども、実際に経営者のお客様と話しているときなどに話がすっと入ってくる・何を言っているかわかるようになった気がします。表面上の言葉だけでなく、「ああ、きっとこんなことを言いたいんだな」と思うようになりました。

部署のメンバーと話をしていても、一社員としての意見なのか、会社全体を見渡して出た意見なのか、というレイヤーの高さの違いに気づくようになりました。全体最適を求めるわけではないんですが、「このレイヤーの高さで話をしていると、話が進まないな」と思うこともあり、他のメンバーの意識やレイヤーの高さが気になるようになってきたんです。

ーー奥永さんご自身の視座にも変化があったんですね。

奥永:また、自分がこうやって色んなことを考えていると、「社長や、他のメンバーはどう考えているんだろう?」ということが気になって、話を聞かせてもらう機会も増えました。

一般的に、組織運営のためにコミュニケーションをとりましょうというのはよく言われていると思いますが、本当に相手のことを知りたいと思っているのが伝わるかどうかが大事なんじゃないかなと思うんです。
作業のようなヒアリングになってしまうと、相手も本当の想いを開示できないと思うので、聞くだけ、にならないようにということにも気をつけるようになりました。

メンバーとのやりとりの中で、逆に自分の想いを伝えるという機会も増えました。これまでも上司部下の関係性の中で「これをやってほしい」という指示をすることはありましたが、自分の意思で「こうしたいから、協力してほしい」と気持ちを伝えることはなかったんです。きちんと伝えるという行為がきっかけで、「そんな風に思ってたんだ」と理解して賛同してくれるメンバーも出てきました。

自分自身が、組織を動かすためには皆の気持ちを知っておかなくてはならないと感じたんです。全体の意識が上がらないとうまく回らない、組織が成長できないと感じたので、メンバーの話を聞き、自分の気持ちを伝える、という風なコミュニケーションの変化が生まれたのだと思います。

ーー山岸社長から見た奥永さんの変化についてはいかがですか?

山岸:はじめに、私と彼との中で言葉が重なってきた、と感じるようになりましたね。変化に気づいた時に、「どうしてそうなった?」と質問したんです。そうしたら、先ほど本人も言っていたように「自分の中の存在意義と会社の存在意義が重なった部分に気づいてから、前に進み出した気がする」という答えが帰ってきたんです。これがとても印象的でしたね。

先ほど、主語が自分になったとも言っていましたが、実際に「自分がやります」という言動も増えました。外からの圧力ではなく内なる声が人を動かすんだなと。それが人の背中を押す唯一の力だと私にとっても学びになりました。

事業開発のメンターと、自分自身と向き合うためのコーチングの両軸が揃っているというのが、この『経営リーダー育成プログラム』の本質なのかなと感じました。

成功・失敗・数字ではなく、自分を再評価する機会

ーー聞いていてこちらもワクワクするようなお言葉をありがとうございました。最後に、プログラムを通じて感じられたことについて、メッセージもかねてお聞かせください!

奥永:30年も仕事をしていると、自分に厳しく言ってくれる人がほとんどいなくなってくる中で、藤村さんに貰えた考えさせられる問いがありがたかったと思います。タイトなスケジュールの中でセッションを続けるのは大変な面もありましたが、厳しいことがありがたかったです。後半からは足立さんに切り替わり、事業の細かいところをきちんとみてもらい、緻密さを今も継続して勉強させてもらっています。

協働日本の皆さんは、山岸製作所全体のことを見てくれているなと思っています。プログラム自体だけ、一事業部だけでなく、会社全体がよくなったらいいと思って伴走してくれていると感じてありがたいです。

このプログラムは、何かをパッケージで与えられるものではなく、自分で考え、言語化するプロセスであるからこそ、会社の中のミドル、幹部を担っている方の意識改革や経営の視座の獲得につながると思います。問題意識を持って突き詰めて考える経験をして、自分の基軸を持って考え抜くことは、特に地域企業の幹部には重要だと思います。

山岸:度々出てきた「自分の存在意義と会社の存在意義が重なる」というキーワードは核心をついていると思っています。この重なった部分が多ければ多いほど、個人の力が発揮されるようになって、個人の力の集合体が会社の力になっていくんだろうなと思っていて。幹部育成プログラムの本質ってそこにあるんだろうなと思っているんです。

今回の奥永さんの変化を見て思うのは、重なる部分を本人が意識できれば、自然とやることを見つけていくようになるということです。自分ごととして、組織の中で何をしていくかを考えるようになるんです。あとは、再現性を持たせて多くの社員が存在意義の重なりに気づいていけば組織がどんどん強くなると思うので、これからの課題でもあるなと思っています。

今回、30年選手の奥永さんが変わった、ということ自体が、「この組織はまだまだいける!」と僕の自信になりました。組織の変革にあたっては、僕自身も躊躇する部分があったんですが、実際に、変化の兆しや変化を見ることで組織をもっと良くしたいと想いが強くなりました。引き続きよろしくお願いします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

山岸・奥永:ありがとうございました!

山岸 晋作 / Shinsaku Yamagishi

株式会社山岸製作所 代表取締役社長

1972年、石川県金沢市生まれ。東京理科大学経営工学科で経営効率分析法を学び、卒業後アメリカ・オハイオ州立大学に入学。その後、『プライスウォーターハウスクーパース』に入社。ワシントンD.C.オフィスに勤務。2002年、東京オフィスに転勤。2004年、金沢に戻り、『株式会社山岸製作所』(創業は1963年。オフィスや家庭の家具販売、店舗・オフィスなどの空間設計を手がける)に入社。2010年、代表取締役に就任。


奥永 亮治 / Ryouji Okunaga

大学卒業後、株式会社山岸製作所に入社し、30年間オフィス家具の営業に従事。 官公庁や民間企業など、幅広い法人顧客を担当し、確かな信頼関係を築き上げてきた。 プレイングマネージャーとして、営業チームの成果を牽引しながら、管理職としての役割も果たしてきた。 営業戦略の立案、チームメンバーの育成、重要顧客との交渉など、多岐にわたる業務を経験。 現在は、会社で初めてのマネージャー専任として、営業部とオフィス戦略室の両方を担当。 オフィスコンサルティング(コ・デザインサービス)を通じて、クライアントのオフィス環境や働き方の改善に貢献。 顧客のビジョン実現をサポートすることで、働きがいのある環境作りに尽力。 深い業界知識と豊富な経験を活かし、顧客に最適なソリューションを提案。 チームワークを重視し、部下の能力開発にも注力。 新しいチャレンジを恐れず、常に学び続けていきます。

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STORY:株式会社米自動車 取締役兼 社長室 室長 武田浩則氏 -事業成長を自己成長に変換させる『越境チャレンジ』の本質-

協働日本で生まれた協働事例をご紹介する記事コラム「STORY」。

今回は、協働日本が(株)スパイスアップ・ジャパンと共同でご提供している、協働型人材育成プログラム『越境チャレンジ』の参加者、武田浩則さんにインタビューをさせていただきました。

複雑で急速に変化するビジネス環境において、リーダー人材には、異なる環境でビジネスを運営し、問題を解決する「越境経験」がますます重要になっています。

一方で、既存の越境学習のプログラムには、長期にわたり、対象社員を現場から出向させる必要がある等、人事部にとって運用や導入がしづらいなどの課題が上がっています。

そこで協働日本は、”グローバル人材育成・海外研修”に実績のある(株)スパイスアップ・ジャパンと共に、参加者が本業に取り組みながらオンラインで参加できる『越境チャレンジ-協働型人材育成プログラム-』を開発し、地域企業経営者との協働の機会をご提供しています。

そんな『越境チャレンジ』で生まれた協働の現場から、株式会社米自動車 取締役 兼 社長室 室長 武田浩則さんをお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回の『越境チャレンジ』では、明治8年創業、老舗の発酵食品の製造販売を手がける会社である四十萬谷本舗との協働プロジェクトをスタート。インタビューでは、越境チャレンジへ挑戦することになったきっかけや、そこで生まれたプロジェクトの成果、ご自身が感じている変化や成長についてお話しいただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

現場密着の愛ある仕事をしたい。自己成長のための新しい挑戦。

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、武田さんの普段のお仕事やこれまでのキャリアについて教えてください。

武田 浩則氏(以下、武田):はい、よろしくお願いいたします!

現在は、バリュエンスホールディングス傘下の米自動車で車の輸入販売事業を行っています。取締役 兼 社長室 室長としての役割は、事業全体の業績管理や事業促進、新規事業活動全般を担っています。
これまでのキャリアとしては、18歳でホテルマンになってから、美容業界、医療業界、コンサルティングなど様々な仕事を経験してきました。

ーー様々なご経験がおありなんですね!ブランド買取事業をなさっているバリュエンスさんはその中でも全く違う業種・職種だったのではないかと思うのですが、転職のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

武田:そうですね。直前にやっていたコンサル業は歯科医療や美容室などの分野のコンサルティングだったので、経験のある業界ではあったんです。ただ自分が叩き上げで働いてきたということもあってか、もっと現場密着で仕事をした方が、愛を持って仕事ができるなと思うようになったんです。

そこで、そういった仕事ができる先を探して転職したのが、株式会社SOU(現 バリュエンスホールディングス株式会社)で、現在も基幹事業であるブランド買取・仕入れの部署に配属され、そこから9年間ずっと買取の営業や企画に携わり続けていました。自己成長のためには仕事の中でもっと劇的な変化がないといけないのではないか?と感じるようになり、本部長にも相談をするようになったタイミングで、米自動車がグループ化、2023年3月に出向が決まって今に至っています。

ーーなるほど。米自動車での高級車の輸入販売などはまた新しいチャレンジかと思いますが、実際買取の分野から離れてみていかがでしたか?

武田:これまでも買取の事業の中で日々新しいことに挑戦していく立場ではあったので、「新しいこと」への抵抗感はなかったのですが、やはり業界の知見をまた0から貯めていくというところには苦戦しましたね。
とはいえ、自分でも「これでいいのかな?」と思っていたタイミングで新しいことに挑戦できる異動だったので、とてもポジティブに受け止めています。

環境に合わせて変化し続ける老舗企業の「新・サステナブルプロジェクト」への挑戦

ーー続いて、武田さんが『越境チャレンジ』を通じて地域企業との協働に取り組もうと考えたきっかけを教えてください。

武田:今回は、次期リーダー候補という形で自身のアップデートの機会として越境チャレンジの機会をいただけたと思っています。弊社では過去にも、役員クラスの人材育成研修が必要だということで、バリュエンスジャパン株式会社 執行役員の井元が『越境チャレンジ』に参加しています。プロジェクトの話を聞いて、当時から結構興味深く思っていたんです。会社にいながらも知らない経験ができるっていいなと思って。なので、今回自分に回ってきて率直にラッキーだな、と思いました(笑)

とはいえ、3月に米自動車に異動したばかりで4月から『越境チャレンジ』のプロジェクトがスタートしたので、初めてのことが重なって少しドキドキもしましたね(笑)

ーー武田さんの協働先は、これまた初の食品業界であり、金沢の老舗発酵食品会社の「四十萬谷本舗」さんでした。

武田:そうなんです。全然触ったことのない業界でしたし、「老舗」というキーワードで「堅そう」という先入観もありました。なので、まずは四十萬谷本舗で僕に何ができるんだろう?と考えたのが最初でした。

でも、実際に四十萬谷本舗の専務、四十万谷正和さんとお話をしてみると、思っている以上に世の中の変化に合わせて、積極的に変革されたいという意思をお持ちの方だったので、非常に魅力的だと感じました。

ーー四十萬谷本舗さんはこれまでも協働日本を通じて、課題に合わせた戦略的な人材活用をなさっていますよね。今回武田さんが伴走したプロジェクトについても詳しく教えていただけますか?

武田:はい。今回は新サーキュラー型ビジネスの企画についてご一緒させていただいています。最初は困り事や、どんなことをしたいと思っているか?などざっくりとしたヒアリングからスタートしました。すると、食の文化や伝統の持続可能性など、四十萬谷本舗がこれまで力を入れたくてもできなかったサステナブル領域についての話が出てきたんです。バリュエンスはサステナビリティの推進を重要な経営課題として力を入れているので、このテーマなら四十萬谷本舗×バリュエンスの両社の強みを活かせるものにできるのではないかということでプロジェクトをスタートしました。

このテーマに決めた背景として一番大きかったのは、近年の気候変動に伴い、四十萬谷本舗の看板商品の1つである「かぶら寿司」の原材料であるかぶの調達が困難になってきていることを実感されているという点でした。環境悪化によるビジネスの持続性が直接的に侵されているということで、サーキュラーエコノミープロダクトの導入によりビジネスの持続可能性だけでなく、四十萬谷本舗のイメージ・企業価値が向上するような取り組みを実施していこうという運びになりました。 四十萬谷本舗では、規格外の野菜をフードバンクに寄付したり、製造過程で出る素材を肥料加工して農事環境に還元することであったり…季節に合わせてカブの栽培規模を調整し、フードロスを最小限にする取り組みなど、既に環境に配慮した取り組みをいくつか実施しています。

武田:そこで、新たに「かぶら寿司」製造の過程で使用した糀を新しい素材・新しい活用方法により還元していくアップサイクルの手法を模索していくことにしました。

企画の方針が決まってからは、糀の再利用や、素材変換をしてもらえるような提携企業を探し、方向性のすり合わせやテスト素材の作成・検討を重ねて行きました。

もちろん一筋縄ではいかず、肥料や飼料への転用を検討していくと、「糀」という食品の特性上出てくる、塩分や糖、鰤と一緒に漬け込む過程があることによる動物性食材の使用などハードルが多々あり……結果として、アップサイクルではなく糀を活用したブランド食材の企画に舵を切り、現在も進行中という状況です。

オフィスに集いコミュニケーションを深めることも
ーーありがとうございます。方針決めからはじまり、半年間で色んな提携企業候補にも当たられて調査をされてきたんですね。特に印象的だったことはありますか??

武田:やはり、シンプルに事業内容の違いには苦戦しました。アップサイクルの企画を作る過程で、素材の問題で様々なハードルがあったとお話ししましたが、これも食品業界の知見がなく予想できなかった面でもありました。

あとは、企業規模の違いも企画段階で考慮すべき点として感じていました。四十萬谷本舗では、適材適所での人員確保をしており、今ある業務に対して人員が最適化されています。そのため、新しいことをしようとした時にリソースを割けないという課題があるんです。企画を進めていく中でも、極力リソースがかからないように注意していましたね。

特に印象的だったこととして、四十万谷さんにご紹介いただき他の経営者の方とも一緒に食事をした時に「『サステナブル』というテーマは最近になって話題になっているけれど、老舗の企業は『サステナブル』をずっとやっているんだよね」とお話しされていたことでした。季節に合わせて無駄がないようにお客様に製品を提供するのは昔からあったことで、ずっとやってきたからこそ老舗として続いているんだと。だからこそ、今また環境に合わせて変化していく四十萬谷本舗のような企業の活躍はとても貴重で、大切にすべき存在だなと実感しました。

全体を通じて、物の進め方や視点は、日頃の業務での経験を活かせたと思っています。経営的な視点を持った四十万谷さんと継続的にコミュニケーションを取る中で、経営視点での物の考え方を知ることができるいい機会になったなと思っています。

メンターがいたからこそ感じられた「自己成長」。ただ新規事業をやるだけではない『越境チャレンジ』の本質

ーー『越境チャレンジ』では、協働先企業とのプロジェクトだけではなく、武田さんに対してメンターがついて伴走されたと思います。メンターとのやりとりについてはいかがでしたか?

武田:メンターとして今回お世話になったのは、芹沢亜衣子さん(協働日本IPPO事業コーチ)と藤村昌平さん(協働日本CSO)です。藤村さんには事業開発の壁打ち相手として、芹沢さんには僕自身のコーチングをしていただくという関わり方で、月に1度それぞれとお時間をいただいていました。

藤村さんとは、初めの頃は現在のプロジェクトの状況報告をして評価、というようなスタイルでお話しをしていましたが、プロジェクトが進むにつれて企画の内容を掘り下げて話すようになり、徐々に具体的な内容について藤村さんの意見をいただくことも増えていきました。

僕の考えを尊重しつつもアドバイスしていただけたので、事業に対するスタンダードや知見、進め方など、様々な面で良い刺激になりましたね。普段の仕事で社内のメンバーと話すのとは、また違った視点や考え方に触れられるのが新鮮でした。もちろん社内の仲間と話していても、刺激やアップデートはあるんです。それでも、全く違う環境で事業をされている方との会話では、自分のビジネスライフのバリエーションが増える感覚があってよかったと思います。

ーーありがとうございます。芹沢さんのコーチングはいかがでしたか?

武田:正直最初は戸惑いました(笑)。コーチングということで、今の自分の状況や状態について聞かれるんです。自分で自分を見て、 今どんな状態なのかを主軸に置いて、成長を見ていくということだと思うんですが、これが難しくて。

藤村さんのパートでは、事業の進捗や企画の内容など、実際に取り組んでいることを話していたのですが、芹沢さんには自身の内面の話をしなくてはいけない──でも自分の感情が上下するポイントを自分自身があまりわかっていなくて、言葉にするのが大変でした。
例えば、「どんなことが大変ですか?どんなことにストレスを感じますか?」のような質問をしていただくのですが、大変なことをネガティブに捉えることがあまりないので、ストレスというよりは充実感があると思っていて。「ストレス」と言われるとピンとこなかった。

でも実際には、ストレスに感じていることも僕の内面にあったんです。はじめはうまく説明できなかっただけで、芹沢さんとの会話を重ねていくうちにだんだん自分の中でも整理できて、どんな時に感情が上下するのかなど、気づく点が増えていきました。

毎月、成長ポイントや心情、置かれている状況を一緒に整理してもらえたことで得た気づきは大きかったと思っています。芹沢さんとのセッションは、自己成長を実感する基盤づくりというか。僕自身のベースをブラッシュアップできたいい機会でした。

ーー自己成長を実感する基盤、というのは具体的にどんなものなのでしょうか?

武田:元々このプログラムが開始した時には、僕は結構典型的な日本人といいますか、「自分なんてそんなに大したことないです」というような感じだったんです。だから、「こんなに頑張った!」とか「自分がやったんだ!」とかあまり外に出さない。自己完結してしまうタイプだったんです。
でも今回、四十萬谷本舗とのプロジェクトにおける自分の状況や出来事を言語化していく中で、こんなことにチャレンジした、こんなことを頑張ったぞ、ということをアウトプットして、自分でもその頑張り・成長を認められるようになりました。

役職、職務的にも、人から相談されて話を聞くことは多かったですが、自分が誰かに聞いてもらう機会が圧倒的に少ないので、このような機会を貰えたことがありがたかったです。芹沢さんとのセッションがなければ、僕はこの『越境チャレンジ』を、ただ新規事業開発をするだけの機会にしてしまっていたかもしれません。

やっぱり、事業の成長や数字へのコミットばかり意識してしまうんです。職業病のようなものですね。藤村さんとのセッションで事業へのコミット部分をしっかりと伴走してもらいつつ、芹沢さんとのセッションで自分を見つめ直し、きちんとベースを整えていただいたからこそ、『越境チャレンジ』が僕にとって自己成長の機会になったと思います。

事業開発のメンターと、自分自身と向き合うためのコーチングの両軸が揃っているというのが、この『越境チャレンジ』の本質なのかなと感じました。

成功・失敗・数字ではなく、自分を再評価する機会


ーー『越境チャレンジ』がご自身の成長の機会になったとのこと、本当に嬉しいお言葉です。ぜひ、全体を通じて感じられた変化や気付きなどあれば教えてください。

武田:はい。今までは、新規事業といえば、業績や数字の拡大、と考えていたのが、それだけでなく、「これをやったら自分が成長できるかも」という視点を自分で持てるようになったのが大きな変化だと思っています。

事業の成長を自分の成長にも変換して考えることができるようになれば、仕事のモチベーションになることはもちろん、長い目で見た時にある自分の姿が全然違うんじゃないかなと。
おこがましいかもしれませんが、『越境チャレンジ』を経験した今では「成長できた!」と自分で言えるようになったと思います。

ーーありがとうございます。最後に、『越境チャレンジ』はどんな方におすすめか、メッセージもかねてお聞かせください!

武田:僕と同じように、ある程度長く同じ企業に勤めている方に関しては、ぜひ体験していただくといい気がしますね。自己評価を見直す機会にもなりますし、純粋な事業開発のスキルアップにもなると思うので。そうやって新しい視点を持ち帰ることで、もちろん企業自体の成長にも繋がっていきます。

あと、個人的に思うのは、大企業の役員の方にも参加してみて欲しいです。
普段とは違う事業にアウェイ環境でチャレンジするという経験は、役員になる前の自分に立ち帰れるんじゃないかなと思うんです。アップデートされる部分もあるし、自分が若かった頃と変わらない部分もあるんだ、という気づきもあると思います。プレイングから離れて長い方にとっては、初心に立ち返れるような面もあるのかもしれません。

メンターの方との話で自分を正面から見て、第三者から見た自分の評価も受けられる。これは僕もそうだったように、なかなかない機会です。

成功・失敗・数字などで自分を評価するのではなく、その過程の自分を評価していく。全てのことが無駄ではないとポジティブに受け止められるようになりますし、自己評価の機会としてもとてもいいんじゃないかなと思います。

僕はこのような機会を貰えたことがありがたかったので、似たような環境にいる方には、とてもおすすめです。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

武田:ありがとうございました!

ありがとうございました。

武田 浩則 / Hironori Takeda

岩手県出身 美容業界、医療業界を経験後 2014年(株)SOU(現 バリュエンスホールディングス(株))入社。
店頭営業、買取事業本部、営業企画部を経験し、2021年より買取事業本部副本部長として仕入事業全般の統括、事業、収益拡大に従事。
また、2023年よりグループ化を行った(株)米自動車へ出向し、取締役兼社長室室長として事業活動全般の促進、拡大に従事。
2023年4月より『越境チャレンジ-協働型人材育成プログラム-』に参画し、明治8年創業の石川県金沢の伝統発酵食品老舗の四十萬谷本舗との協働プロジェクトを経験。

株式会社米自動車
https://www.yonemotors.jp/

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STORY:株式会社北陸人材ネット 山本 均氏 – 伴走支援が社内議論を大きく変えた。社員一人ひとりに芽生えた目的意識 –

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社北陸人材ネット 代表取締役社長 山本 均氏 のほか、同社で働く社員の方々5名にもご同席いただき、グループインタビュー形式でお話を伺いました。

株式会社北陸人材ネット様は、石川県・富山県・福井県の3県に特化した転職エージェントで、山本さんのモットーでもある「ねばねばでなく、わくわくで生きよう」を合言葉に、北陸で「わくわく働く」人を増やすことを、会社のビジョンに掲げておられます。
北陸を愛する方々の間で様々な「わくわく」を創出し、その中から人と組織、人と企業などの相互の発展と成長につながる「出会い」を生み出すべく、北陸3県で働きたい人へ職種を限定せず、北陸3県の会社を紹介する地域密着型エージェントとして注目されています。

自社HPのリニューアルを行うにあたり、あらためて自社のブランディングとマーケティングを再設計する必要があり、協働日本の伴走支援を通じて外部の知見も取り入れたいと考えたそうです。今回、社員の方々と共にインタビューを通じ、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた成果や変化について語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明)

代表取締役社長 山本 均氏

協働日本との、わくわくするような化学反応に期待

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

山本 均氏(以下、山本氏):

よろしくお願いします。

北陸人材ネットは、2007年に創業した北陸地方に特化した人材紹介会社です。

わくわく働く人と、場所を増やして、そのご縁を多くつなぐことで「北陸をもっと元気に!!」をブランドスローガンに、有料職業紹介事業の他、人事人材育成コンサルや、コーチングなどの事業も手掛けております。

ーー山本さんがモットーとして、また会社の合言葉にもなっている「ねばねばでなく、わくわくで生きよう」というフレーズも印象的ですよね。

山本氏:

ありがとうございます。

安定した会社に就職・転職しなくては、という「ねばねば」の反対語として掲げています。自分の好きなように生きる、やりたい仕事に就くという「わくわく」で生きる・働くことを応援したいと考えています。

ーー協働日本と共に取り組むことを決めきっかけを教えて下さい。

山本氏:

かねてより繋がりのあった、山岸製作所の山岸社長のご紹介で、協働日本代表の村松さんとお引き合わせいただいたことがきっかけです。

私は、自分のわくわくに向き合って周囲のあきれ顔をものともせず夢中になれる人を、「ヘンタイ」と定義づけて、そう呼んだりしています。私にとって「ヘンタイ」は最高の誉め言葉なのですが、いろいろお話する中で、村松さんも私と同じヘンタイだな!と感じました(笑)

ヘンタイ同士の共通の価値感を感じ、ちょうど懸念事項だったHPのリニューアルプロジェクトをきっかけに、協働日本さんに弊社のお手伝いをお願いすることになりました。

ーーなるほど、お二人の間でとても共感するものがあったのですね!

山本氏:

私は、仕事には「やらねば」という義務感よりも、内発的な動機付けが重要だと考えています。働く社員にもよく言っていますが、義務感で生きるのはしんどいですし、自分の中のわくわくにこだわっていきたいと思っています。

協働日本代表の村松さんも、わくわくする気持ちを大切にしている経営者で、協働日本さんもわくわくが満ちたコミュニティから始まった企業というストーリーを語ってくださり、その点も非常に共感いたしました。お話に聞いていた通り、協働日本に所属する協働プロの方々も、複業という形で、それぞれのわくわくする気持ちを大切にして働いている方ばかりでした。

そういった方々と弊社のメンバーと協働させていただくことで、それこそわくわくするような化学反応が起きて、自分たちだけじゃ得られない価値を得られるのでは?という期待感を抱きました。

それに私自身も大学・大学院の仕事を掛け持ちしていたこともあり、外部の視点を取り入れていくことの重要性も感じていました。

協働日本に所属しているような、大手企業で活躍しているプロ人材との接点をぜひ活かしたいとお伝えし、さっそく取り組みがスタートしました。

株式会社北陸人材ネット オフィスの様子 
テレワークを中心とした働きやすい職場環境を推進

週次のミーティングで生まれた変化と得た学び

ーーその協働プロジェクトについても、どういったお取り組みをされているのか教えて頂けますか。

山本氏:

昨年10月から、今年9月末までの1年間、週次でミーティングを組ませてもらいながら伴走支援をしていただきました。

弊社のHPのリニューアルを行うにあたって、ブランディングとマーケティングを再設計する必要があったのですが、社内のメンバーだけでの議論ではなかなかまとまりにくい部分があり、そうした部分についてお手伝いしていただきました。

協働日本の協働プロの方々からは4名の方にチームに加わっていただき、大西さん、向縄さん、浅井さん、大島さん、それぞれのご経験や強みから様々なアドバイスをいただきました。

実際にHPのリニューアルを実現しただけでなく、そのプロセスの中で参加していた社員それぞれも、様々な学びを得ながら取り組むことができたと聞いています。

今日参加している、弊社の社員にもぜひそのあたりを聞いてみてください。

テレワークを中心とした職場環境 日本テレワーク協会でも表彰
ーーありがとうございます!では早速ですが、順にお話を伺っていきたいと思います。週次の協働ミーティングを通じて、どういったお取り組みをされていたか教えてください。

河村氏:

弊社で働く社員は、社長以外は全員女性のメンバーです。それも複業という形だったり、子育て中のお母さんがいたりと、様々な働き方をしている社員が集まっています。

そんな中、今後の弊社の方向性の検討や、HPのリニューアルと言った課題に対してまとまった議論がなかなか進んでいなかったところに伴走いただき、サポートしていただきました。

特に今後お客様にどのようにメッセージを届けていくか、自社の強みは何なのか、といった普段の業務からは少し離れた、自社のブランディングについて考え直す議論は難しさも感じており、協働プロの皆さんにサポートいただきました。

角崎氏:

協働プロの方々とワンチームで取り組む中で新しく得られたこととして、KPIについての考え方があります。

社内でのメンバー間での振り返りはこれまでも行っていましたが、「数値化した振り返り」はしっかりとできなかったと反省しました。

日々の業務を定量的に数値で振り返るということにはじめは苦手意識もあり、協働プロの大西さんに相談したところ、「数値を測るということは健康診断のようなもの。必ず達成しなくては、というプレッシャーを感じるためのものではなく、自身やチームの状態を測るものと考えてください。」というアドバイスをいただきました。

出口氏:

私も角崎さんと同じく、定性的な振り返りが多かったのですが、伴走を経て定量的な視点を入れた振り返りを意識することが出来るようになりました。

大西さんからは、教えて引っ張るというよりも、自身の中の想いを引き出すようなアドバイスをたくさんいただき、自身の考えや想いを言語化するお手伝いをしていただきました。

また、マーケティング業務経験が豊富な向縄さんからは、フレームワークを使った、ロジカルシンキングを学ばせていただくなど個人の成長にも繋がった1年でした。

協働後にも活かせる気づきや学びを残してくださり、感謝しています。

西田氏:

求職者に伴走して、最後まで徹底サポートしていくのが弊社の強みですが、「どういったサポートが必要なのか」という点については、働くメンバー一人ひとりで異なっており、共通言語化できていませんでした。

職業紹介・人材業界で働いていると、個人で完結する仕事も多く、それぞれのノウハウやスキルが個人で完結することも多く少し諦めていた部分もありました。

しかし今回、求職者を4つのタイプに分けてサポート内容を見直したり、それぞれをターゲットにした施策を考えたりと、求職者のパターンを共通言語化できたことでそれぞれが持っていたノウハウを共通知に変えることが出来たことも多く、以前よりも組織力が上がった実感があります。

川辺氏:

新しくHPをリニューアルという目標からスタートして、私たちの強みを言語化したり、求職者さまに向けた新たなサービスの検討を進めたり、よりスムーズな面談の仕組みづくり、書いていただきやすい求人票のフォーマット化など、多岐にわたるテーマを議論するきっかけをいただきました。

単に、目の前のこと(HPリニューアル)に対するアドバイスではなく、私たちの事業そのものを良くしようという視点からアドバイスを頂いていることがよく分かりました。

大西さんからいただいた、まずいち早く行動することの重要性や、PDCAについての考え方などのアドバイスはとても印象的でしたし、向縄さんから教えていただいた顧客志向についてのアドバイスや、カスタマージャーニーマップの作成なども、日々の求職者=顧客 の体験に向き合う上でとても良い学びになりました。

オフィスに集いコミュニケーションを深めることも

伴走支援を通じて、社員に芽生えた目的意識

ーー社員の皆さんそれぞれが、取り組みを通じて成果を実感している姿が見えてきました。あらためて山本さんにお伺いします。協働日本との取り組みの中で、どのような変化が事業(企業)に生まれましたか?

山本氏:

取り組みを通じて、社員同士で話し合って自律的に事業計画の目標数字を設定し、達成のための戦略構築やシナリオを構築し、実行するようになりましたね。これはとても大きな変化だったと思います。

基礎理論をお教えいたただきつつ議論を深めることができ、従来以上により深い議論ができるようになったこと、その過程に社員一人一人がそうした理論を習得することで再現性をもった形でブランディングやマーケティングに対するフレームワーク的な思考法を習得できたように思います。

ーーなるほど。他にも、社員の皆さんが実感している変化などはございますか?

河村氏:

先程、出口さんも言っていたのですが、コアとなる求職者のタイプを大きく4タイプに分類し、それぞれに対応するノウハウを共通言語化したことである種の、社内方言のようなものが生まれました(笑)

例えば、「新規にAタイプのお客様です。Aタイプの方でこういったケースだと以前はどう対応していましたか?」など。お客様に対してのアプローチを体系化して、メンバー間でのノウハウの共有がスムーズになった結果、一人ひとりのお客様の課題に向き合う精度が上がったことは大きな成果だと感じます。

出口氏:

加えて、社内の雰囲気も変わったなと思います。

もともとすごく仲が良く、気遣いあえる空気感のある職場でしたが、意見の衝突を避ける傾向もありました。時には意見がすれ違うこともありましたが、そのままにしてしまうことも・・。

今は、この会社のためにどうすればよいのかという目的に向かって、健全で建設的な議論ができるようになったと思います。私たちが仕事をしていることの目的意識をチームで議論したことで、一人一人の当事者意識が上がったのだと思います。

西田氏:

あとは、これまでのやり方を変えることに対する抵抗感がなくなったと思います。

せっかく自分たちらしい強みを発見できたんだから、今まで当たり前だったこともどんどん良い方向性に変えていこうという積極的な雰囲気になりました。

例えば求人票のフォーマットでも、これまで当たり前だった形をメンバーみんなで見直し、北陸人材ネットの強みが活かせるものに変えていっています。これにより、お客様との面談で聞くべきこと・ヒアリング項目を見直すきっかけにもなり、変化の好循環が生まれつつあります。

ーー よろしければ、関わっている協働プロ協働サポーターの印象をお聞かせください。

山本氏:

課題を受け止めつつ、論点を整理し、必要な知識や理論に基づいて解決の方向に議論を導いていただけたと思います。

はじめはメンバーも恐縮していた部分もありましたが、協働プロの大西さんや向縄さん、大島さんは、意見を言いやすい場づくりを心がけてくれて何を言っても大丈夫だという心理的安全性を確保してくださいました。

それでいて、言うべきことはしっかりと言ってくれる、安心感があったように思います。

また同じく協働プロの浅井さんは、HPのリニューアルの件では率先としてヒアリングをしてくださり、素朴な疑問も非常に話しやすい空気を作ってくださいました。デザイナーの観点で、思っていることを伝えてくれるだけでなく、参考になるサイトや、参考になる方を紹介してくださったりと色々とご準備いただきました。

ミーティング後には、参加メンバーひとりづつにフィードバックをくれるなど、きめ細かくサポートしてくださったと聞いています。

環境変化のスピードが速い時代だからこそ、外部からの刺激が重要に

ーーワンチームで素晴らしい取り組みが実現できていると感じます。ちなみに、こういった複業人材との取り組みは今後、広がっていくと思いますか?

山本氏:

これだけ環境変化のスピードが速い時代だと、これまでのやり方や自分の中の当たり前を捨てなくてはいけない。でも自社のメンバーだけでは、なかなかすぐに大きく変化するのは難しい。

だからこそ、外部からの刺激として複業人材と一緒に取り組んでいく重要性は今後高まるでしょうね。

こういった取り組みは、受け入れ側の企業にとっても、いわゆる越境学習的な取り組みとも言えると思います。

そうした外部からの刺激を取り入れることに柔軟であれば、中小企業のほうが変化に対する変化のスピードは上げられるのかもしれないとも思います。

ーーこれから協働日本はどうなっていくと思いますか?エールも兼ねてメッセージをいただけると嬉しいです。

川辺氏:

協働プロの方々は高いモチベーションで取り組みにコミットしてくださり、大変感謝しています。

だからこそ、私たちも変化のきっかけを得ることが出来たのかとも思います。

河村氏:

自分たちの力で歩いて行けることがゴールになる「協働」というワンチームで取り組むスタイルのおかげで成長を実感できました。

他力本願ではなくて、最後には自走するために外部と取り組もう、という意識で協働に取り組む企業が増えていけば、色々な地域でもっと輝く企業が増えてくると思います。

その道を切り開く難しさは感じつつも、この良さが広まっていくことを願っています。

ーーあらためて最後に山本さんからメッセージをいただけますか?

山本氏:

1年間で想定以上に様々な変化を生み出してくださり、あらためて感謝しています。

協働プロの皆さんのように、わくわくを持って働いている方とご一緒できて良かったです。

日本の大手企業でも続々と副業・複業が解禁される中で、わくわくとやりがいを感じられるような働き方を自ら選択できる時代になりました。

協働日本さんも、好きでこの仕事をしていると言えるような人を増やしていくための同志だと思います。

これからも一緒に、働く人の「ねばねば」でなく「わくわく」を増やしていきましょう!

ーーインタビューへのご協力ありがとうございました。

山本氏:

ありがとうございました。

山本 均 / Hitoshi Yamamoto

株式会社北陸人材ネット 代表取締役社長

地元石川県のメーカー、IT企業勤務後、東京の大手通信機器メーカーに転職。
それぞれの企業の人事を経験後、独立し現在。

北陸、首都圏大学でのキャリアガイダンスでの講演多数。
地方企業、ベンチャー企業、大手企業という3つの異なる分野の企業の人事採用を担当した人事マンとしてビジネス誌、新聞に数多く取材に応ずる。

大学生のキャリア教育から就職支援、インターンシップ、企業の若手社員育成、管理職の養成まで人材育成に関する幅広いジャンルでのコンサルと実務を経験。
企業から大学、官公庁、企業にいたるまでに幅広いネットワークを有する。

趣味はスキー
モットーは「ねばねばでなく、わくわくで生きよう」

株式会社北陸人材ネット
https://hokurikujinzainet.com/index.html

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STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -「お友達とジュエリーで遊べる宝石店」協働日本との壁打ちで気づいた強みを活かして売上200%に増加-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社キラガ  常務取締役の太田 喜貴氏にお越しいただきました。

株式会社キラガは、創業40年・宝飾品の製造、加工、卸売、小売を行っている総合宝飾品メーカーです。静岡県の富士山の麓にある豊かな自然に囲まれたエリアに、こだわりのジュエリーと開放的な庭を備えた宝石工房を構えています。

私たちの生活に豊かな彩りを与えてくれる宝飾品ですが、コロナ禍で苦境に立たされることに。そんな中、地元の同友会での講演会をきっかけに、協働日本がマーケティング戦略から、現在では事業全体の方向性策定やIT導入、採用試作まで幅広く伴走させて頂くことになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・小田川菜津子)

(左)常務取締役 太田喜貴氏 (右)代表取締役社長 太田喜克氏

コロナ禍の2021年、苦境に立たされたジュエリー業界へ

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

太田 喜貴氏(以下、太田氏):

よろしくお願いします。もともとは長く商社に勤めてIT分野でB to Bビジネスに関わっていたのですが、コロナ禍で人と会う機会が減り宝飾品業界全体が業績不信に苦しんでいる状況を両親から聞き、父が創業した株式会社キラガへ、約2年前の2021年に戻り常務に就任しました。

やはり課題は多く、売上も3割、4割減のような状況が続きどうにか現状を打破しなければという危機感を抱えていました。

そんなある日、地元の同友会の会合で協働日本さんの講演を拝見したことが、協働日本さんとの最初の出会いでした。

講演後にあらためて時間をとって、経営における現状の危機感を伝えつつ、協働日本さんの協働という支援体制を理解しました。現状を打破していくべく、ぜひ協働日本さんと取り組みをしたいと考え、まずは自社の理解とマーケティング面での課題を整理したく、まずはそちらを一緒に進めていくことから、取り組みをスタートさせました。

ーーなるほど。きっかけについてよく分かりました。太田さんは、もともとIT分野でのご経験が長かったとのことで、当時、ジュエリー業界に飛び込んでみて驚いた点や特徴などはありましたか?

太田氏:

まず驚いたのが、お客様も企業側も高齢の方が予想以上に多かったことですね。分かっていたことではあったのですが、お客様は60歳以上の方が多く、関わる取引先企業もメールではなくFAXや手書きの伝票を求められることが多いです。

自分はITの業界でB to Bをやってきた人間なので、最初は勝手の違いに戸惑うことも多かったですが、今は掛け算の発想で前職の経験も活かしてもっとジュエリー業界にITのやり方を持ち込んでいけたらな、と思っています。保守的な部分が多い業界ですが、柔軟な発想で楽しみながら、「高い、ダサい、怪しい」なんて思われがちなジュエリー業界を変えていきたいと思っています。

色々と考えている仕掛けはたくさんあるのですが、今はほんと時間が足りないといった状況ですね。

ーーお話をお聞きしていて、業界を変えていきたいという熱い想いを感じます!続いて現在、協働日本と進めている協働プロジェクトについて、どういったお取り組みをされているのか教えて頂けますか。

太田氏:

2022年4月から協働プロの方々と一緒にプロジェクトを始めさせていただいて、現在は取り組みを始めて2年目になります。

初年度はマーケッターの枦木 優希さんも入ってマーケティング戦略、ブランディング戦略を丁寧に言語化していきました。2年目の現在は向縄さん、和地大和さん、田中紋子さんの3名体制で、当社側は私の1名が参加して4名の協働チームで、マーケティング戦略や事業全体の方向性、人事施策まで含めて週に1回壁打ちをおこなっています。

エンドユーザー様への直販へと事業を拡げるため、自社の強みの整理や競合との比較、どのようにして認知から購入までつなげていくかなどマーケティング戦略から始まり、それがひと段落したタイミングからは、事業全体の方向性やIT、人事施策まで幅広く一緒に考えていただいています。

他の企業様の事例も読ませて頂きましたが、プロジェクト単位でのお取り組みが多い中、当社はかなり広いテーマを一緒に議論させていただいている印象です。

協働プロとのミーティングの様子

試行錯誤の中で磨いた唯一無二の強みで売上高200%ベースへ

ーー協働日本との取り組みの中で、どのような変化が事業(企業)に生まれましたか?

太田氏:

これまで当社は宝飾品の卸売りを主業にやってきたのですが、やはりそれだけだと粗利率が上がらない、コロナ禍の状況もあってこれだけだとこの先やっていけないかもしれないという危機感から、エンドユーザーへの直販に販路を広げていこうと、まずは「いかに直販の売上を上げるか」の壁打ちをとにかくやらせてもらいました。

約半年間をかけて、自社の強みの理解、コンセプトの策定、店づくりの強化など、協働プロの皆さんと一緒に、「ああでもない、こうでもない」ととにかく議論を重ねたことで、当社にしかない強みを言語化することができたと思います。

うちは街中にあるようなショップではなく、豊かな自然に囲まれた富士山の麓に工房を構えているので、まずはどうやって出歩く機会が少なくなったお客様に工房まで足を運んでもらうか、が重要なポイントになります。

人づてで紹介して頂くといった集客施策をやったり、訪問販売を始めてみたり、どれも一定の成果と手ごたえは感じたものの、抜本的に売上を伸ばすことには繋がらなかった。

そこで気づいたのが、「自分たちから見た強みは理解しているけれど、お客様から見たときの当社の魅力をきちんと理解していないのではないか?」ということです。

そこで、お得意様にアンケートを取るなどヒアリングをしたところ、当社の、特に店舗の強みは「お友達と来てジュエリーで遊ぶことができる空間」があるということが分かりました。

ーー凄く魅力的なキャッチコピーですね。それは、お客様や協働日本との対話の中で生まれたのでしょうか。

太田氏:

はい。そもそもうちのお店では、お客様がいらっしゃったらまず靴を脱いでスリッパに履き替えて頂く。そうやってリラックスした状態で、商品に自由に触って、好きなだけ試着をして頂ける。

お買い求めいただく際にもし価格についてのご希望があれば、お客様には「お値段についてもぜひ、ご相談ください」と伝えています。こちらからそのようにお伝えすることで、お客様にとっても安心して商品をお買い求めいただける環境をつくっています。無理なときは無理ですと率直にお伝えしますので(笑)、ぜひお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

こうした自由な空間、「ジュエリーで遊ぶ」という体験自体に価値があるのだと、お客様から教えて頂きましたし、そのきっかけが生まれたのはやはり協働日本さんとの議論があったからこそですね。

富士山の麓に構えた店舗。リラックスしてジュエリーを楽しめる空間づくりを心がけているという
ーーその1年目の取り組みを経て、現在売上などの状況はどのように変わりましたでしょうか。

太田氏:

おかげさまで、協働が始まってから売上金額は200%達成ベースで成長しています。

当社の魅力をしっかりと言語化し、店頭でのコミュニケーションを改善したことも成果に繋がっていますが、発見したキラガの強みである「リラックスした状態でお友達とジュエリーを楽しむ」をWeb上でも展開しています。

実は、直販での試行錯誤を経て、現在はSNS経由でのライブコマースでの販売に力を入れており、高額商品もライブで購入していただけるような機会が増えました。

これは当社のスタッフのアイデアで始めてみたのですが、まずはライブコマースを頑張っている他企業様の配信にゲストという形で出演させて頂きノウハウを身に着けさせていただきました。

今では公式LINE、YouTube、Instagramなど各SNSで自社アカウントの運用もおこなっています。どれも私自身が出演しているので、「私の稼働量=売上増」のような状況になっているので、それはこれから打破していかなければと思っていますが。

経営者のメンタリティで伴走してくれる協働日本は、思考と行動の精度を上げてくれる良き相談相手

ーー現在、貴社に関わっている協働プロ協働サポーターの印象をお聞かせください。特に心に残っているエピソードなどがあれば教えてください。

太田氏:

いつも丁寧に率直に疑問点や意見を言ってくださっています。経営をしている中で急いで進めないと成果が出ないと焦ってしまう中、「ここが整理できないと先に進めない」とストップをかけてくれるので、その都度立ち止まってしっかりと考えることができる。

結果として、その後の活動の進み具合が良くなったと思います。経営面も含めて、立場上なかなか社内には相談できる相手がいないので、協働日本の皆さんと話すことで自問自答するきっかけにもなるのが嬉しいです。

あと、実は一番助かっているのは、伴走を経営者のメンタリティをもって柔軟に伴走してくれる姿勢ですね。

先ほど話したライブコマースなどの出演もあり昼間に時間を取るのが難しく、協働プロさんとの打ち合わせが始まるのは大体夜遅くからのスタートになってしまうことも多いです。私が単独でプロジェクトに参加しているのも、この時間がネックとなり当社社員の参加が難しいという点もあるのですが、そんな遅い時間からの打ち合わせでも、複業という形で参画する協働プロの皆さんに柔軟に対応頂けているというのが本当に有難いです。

打ち合わせでは時々、協働プロの皆さんから「太田さんの行動量は凄いですが、一日中働いていたら身体を壊してしまいますよ」とご指摘を頂くことも(笑)

一日中働くようなハードワークの日々の中でも、協働プロのみなさんと話すことで、私自身の行動の結果の精度を上げてもらっている感覚があります。おかげさまで、やるべきことの優先度づけがスムーズにできています。

ーーちなみに、以前から都市人材や複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

太田氏:

複業人材との取り組みには興味があり、SNSの運用などの単発作業で複業人材を活用することはこれまでもありましたが、この取り組みのように複雑な課題に長期に取り組むことは初めてです。

今回しみじみと思うのは、当社のような業界、特に中小企業では、他商材に精通しているマーケティングのプロを自社で採用・育成することが難しく、たとえ採用できたとしてもマーケティング予算などの問題もあり、その方のスペックをフルに活用して頂くことは難しいですよね。

他業界や他製品の事例を踏まえて、議論してくれる人材と出会えるのは複業人材の強みであり、「現実的な費用負担」の面からも企業にとって大きなメリットがあると感じています。

ーーこういった複業人材との取り組みは今後、広がっていくと思いますか?

太田氏:

今後世の中としてもますます広がっていくと思いますね。自社人材やノウハウだけでは時代の流れについていけなくなることに危機感を覚えたとき、現実的な選択肢の一つになってくるのではないでしょうか。

ーーこれから協働日本はどうなっていくと思いますか?エールも兼ねてメッセージをいただけると嬉しいです。

太田氏:

今後、もっと実績が重なることでさらに広がっていくと思います。

一方で、事業の内容は短期成果がでるものではないため、良さを理解してもらうための啓蒙活動や実際に伴走支援を受けた人が、協働日本の良さをうまく説明できるサポートが必要だと思います。

ーーまさにそうで、この記事を通じてぜひ多くの皆様に協働日本の取り組みを知って頂ければと思っております。本日はお時間を頂きありがとうございました!

太田氏:

この協働という形が広がることで地方の中小企業の動きが活発になると嬉しいなと思いますし、私も周りに良さを伝えたいと思えるサービスです。

引き続きよろしくお願いいたします!

 太田 喜貴 / Yoshiki Ota

株式会社キラガ 常務取締役

2012年、北海道大学工学部を卒業後、豊田通商株式会社に入社。主に自動車業界を担当し、オフィスITシステムの全世界展開や、中国駐在を経験し中国自動車製造ラインのシステム立ち上げなどのプロジェクトに従事。
2021年より、父が創業者である株式会社キラガに入社。常務取締役に就任。管理部門、小売部門の統括を行う。

株式会社キラガ
https://rings-kiraga.com/

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STORY:1129代表 大隣佳太氏 -最高に美味い鹿児島の和牛を世界中に届けたい。協働日本は想いに伴走してくれるペースメーカー-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社1129代表の大隣 佳太氏にお話を伺いました。

株式会社1129は、鹿児島県産黒毛和牛に特化した精肉通販販売業者で、選びぬかれた牛肉を使用したハンバーガーの販売を行う「にくと、パン。」や、うどんと肉料理の美味しさを追求した「にくと、うどん。」などの飲食店も鹿児島で展開しています。

また同社は、鹿児島県産の黒毛和牛のステーキや、手作りハンバーガーキット、部位ごとのカット方法や調味料との相性など、黒毛和牛のさまざまな風味を体験できるビーフジャーキーなどの通信販売事業を行っており、同社のECサイト『1129nikulabo』や、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などでお買い求めいただくことが出来ます。

そんな株式会社1129の想いや、鹿児島県和牛の魅力を発信していくアイディアの実現に協働日本が伴走しています。インタビューでは、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や成果、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

ずっと持ち続けてきた「和牛を売りたい!」という気持ち

ーー本日はよろしくお願いいたします。 企業の沿革や事業内容を教えてください。

大隣 佳太氏(以下、大隣):よろしくお願いします。

元々実家の家業が畜産業で、「和牛を売りたい!」という想いを強く持っていました。

農業高校を卒業後、農業大学へ進学し、その後に種畜場で修行後に家業を継ぎました。当時は24歳。鹿児島県産黒毛和牛のおいしさを日本中に広めたいと思っていましたし、良い肉を作って和牛オリンピックにも出場したいと思って頑張っていました。

しかし、口蹄疫や狂牛病で苦しみ、経営が苦しくなり27歳の時に畜産業を廃業せざるを得ない状況になってしまいました。

ーーなんと、そういった背景があったのですね。作りたいものが作れない、売りたいものが売れないという経験は大隣さんにとって、とても辛い経験だったと思います。

大隣:まさしく。和牛を売りたくても売れないという経験は大きな挫折で、その後には一度歩みを止めて海外に出ました。しばらく海外で過ごし、自分を見つめ直す時間を持ちました。

そうしているうちに、自分の武器となるようなスキルを身に着けておかないといけないと思うようになり、もう一度勉強し直そうと思いました。お世話になっていた先輩にも相談して、英語かITスキルのどちらかを徹底的に磨こうと決め、最終的にはITスキルの専門性を磨くことにしました。

ーーなぜ、ITスキルを選択したのでしょうか?

大隣:それは「やっぱり和牛を売りたい!」という気持ちが湧き上がってきたからですね。売りたいものをしっかり「売れる」ための知識があれば、もう一度和牛の良さを広めるビジネスが出来るのではと思ったからです。

とはいえ、畜産一筋だった自分にとっては一からの勉強でした。帰国後に、求職者支援学校にも通って基礎知識を身に着け、その後はECやWebマーケティングをどんどん独学で学び、いちごや野菜をインターネットで販売してみて、実践の中で専門性を磨いていきましたね。

ーー畜産一筋だった大隣社長にとって、まさに新しい挑戦だったのですね。協働日本が伴走させていただいている、株式会社1129の立ち上げ経緯もぜひ伺いたいです。

大隣:IT周りについてのキャリアを積み、その後、福岡のWeb制作会社へ就職しました。

その頃には、ITの力のすごさを日々実感していました。インターネットでものを売る仕組みが作れれば、日本中、世界中のお客さんを相手に商売ができるというのは本当にすごいことですよね。

良いものを提供出来て、しっかりと売る仕組みが作れれば、ちゃんと売上を作れるというのは大きな自信になりました。

当時大変お世話になっていたお客さんからも、自分の「鹿児島の和牛を多くの人に届けたい」という夢を応援してもらえるなど、本当に良い出会いがありました。

そうしてインターネットを使ってものを売るスキルを身に着けたのち、「まだ注目されていない商材に新たな価値を掘り起こし、世界中にサービスを提供する」、株式会社バリューを設立しました。

そして2020年この理念を継承させ和牛のEC販売に特化した会社・株式会社1129を立ち上げたという経緯になります。

かつての畜産仲間だった、有限会社末吉畜産さんから「良い肉ができたので世に広めてほしい」と相談もいただき、今では本格的に鹿児島産黒毛和牛を売る会社として戦略を描いています。

手前(右) 株式会社1129代表 大隣 佳太氏
ーー大隣さんご自身の事業にかける想いを伺えたことで、1129で販売されている和牛へのこだわりや熱い想いを感じました。そんな大隣さん、そして株式会社1129は、なぜ協働日本と共に取り組むことを決めたのでしょうか?きっかけを教えて下さい。

大隣:きっかけはちょうどコロナ禍の中で、鹿児島県の方から協働日本さんを紹介してもらったことがきっかけです。ちょうど協働日本さんが鹿児島県と事業を進めており、県内の企業に様々な形で伴走していると伺っていました。

一度お話をしてみたところ、1129の想いに共感してくださり、とてもお話が弾んだこともあって、ものは試しと思って伴走をお願いしました。今では、取り組みができて本当に良かったと思っています。

協働日本さんには主に、様々なプロジェクトのマネジメントをお願いしています。

日々、様々な商品や販売のアイディアが浮かんでくるものを、具体的な形に落としてこんでいくために、伴走してもらっています。それによって、アイディアも言いっぱなしにならず、具体化していけるようになりました。

週次で宿題とフィードバックのサイクルを回し続けることで、戦略と実行が加速する

ーー関わっている協働プロの印象をお聞かせください。

大隣:協働日本の協働プロから、相川知輝さん、池本太輔さん、芹沢亜衣子さんの3名がチームで伴走してくださっています。協働プロの方はみな、丁寧にコミュニケーションをとってくださり、こちらの「これを実現したい」という想いを汲み取ってくださるのでとても信頼しています。

しかもどの方も、本業でちゃんと実績のある方が複業としてプロジェクトに入ってくださっているので、安心してプロジェクトマネジメントをお任せできます。

さらに一般的な「コンサルティング」ではなく、「伴走支援」という形での関わり方も私はとても気に入っています。

私たちは別に、一方的に答えを教えてほしいとは全然思っていないので。実現したい私たちの想いが先にあって、それを形にするために、一緒に伴走してくれるという関係性がとても心地よく感じています。

週次の打ち合わせには、弊社の専務でもある弟(大隣 将太朗氏)に参加してもらっています。

打ち合わせを通じて、専務の考え方や、販売戦略などがブラッシュアップされているのを感じます。

私がすべて指示出しして進めることも出来るのですが、今後の会社の成長のためには専務である弟にもどんどんと仕事を任せていきたい。その意思決定の場に、経験豊かな協働プロの皆さんにサポートで入ってもらえることは安心感がありますね。もちろんアイディアを形にしていく過程も見せてくれているので、納得感もあります。

重要だと認識しているけど、忙しい日々の中で向き合えていないことが山ほどあります。特に経営者だとなおのこと、自律的にちゃんと課題に向き合って、形にしていく過程の難しさを知っています。

日々、色々なことが起こる忙しい日々の中で、しっかりと期日を切って、それに対して的確なアドバイスとともにプロジェクトを進めてくれる伴走者の存在はとてもありがたいです。

新商品を試作する 大隣社長(左)と、協働プロの相川氏(右)
ーー取り組みの目指すゴールや、テーマをお聞かせください。

大隣:協働日本さんとの取り組み前までは、次々新しいアイディアが浮かぶものの、忙しい日々の中でそれを形にすることが出来ていませんでした。季節に合わせた販促の提案なども、最後まで実行できないことがあり、いつも歯がゆく感じていました。

EC販売における大方針として今後は、黒毛和牛の部位ごとに合わせたカット方法や、食べ方の提案を通じた「高付加価値」な商品の開発・販売に注力していきたいと思っています。

現在は、生産者との密な仕入れルートを持っているため、ECサイト上でも高品質な和牛を他よりもリーズナブルな価格でお届けすることが出来ています。しかし一方で、それだけではなく「和牛のプロ」としての知見やノウハウを盛り込んだ商品開発を通じた、提案の幅を増やしていく必要性を感じていました。

「実行力の強化」と「新商品開発」。この2つが、取り組みにおける大きなテーマでした。

ーー具体的な成果や、共に向き合っている課題など、協働の様子をお聞かせください。

大隣:EC販売の次の柱になるような商品を探すべく、肉のプロである弊社の知見と、協働プロの皆さんの視点を掛け合わせて、様々な商品開発に取り組みました。

一つ目は、厚さ3.2cmにカットした厚切りステーキ。肉のプロとして導き出した、最もおいしく食べられる厚さにカットしたステーキをECで販売しました。
アイディア自体は私の中にあったのですが実現できておらず、あらためて協働日本さんの力を借りて、訴求方法の検討や、実現の為のタスク整理を行っていきました。

協働プロの皆さんにプロジェクトをマネジメントしていただいたことで、この商品も無事販売することができました。さらに、日本中の名産品に精通している、協働プロの相川さんの知見をお借りできたことで、HPなどで「魅せ方」にこだわった訴求もできました。

二つ目は、ハロウィン限定の手づくりハンバーガーキット。直営店のハンバーガーショップ「にくと、パン。」のノウハウを活かした新商品として売り出しました。バンズに色が付けられることがきっかけで生まれた、ハロウィンカラーのバンズでつくる黒毛和牛100%のハンバーガーです。

協働プロのみなさんと、顧客体験を想像し、かざりつけやチーズの切り方など、食べ方だけでなくSNSを意識した「映え」の訴求も行いました。実際に多くの購入実績が生まれ、SNS上でのシェアも確認できました。

厚切りサーロインステーキセット
ハロウィン限定 ミニハンバーガーセット
ーーお話から、協働の中から実際に新商品が誕生し、成果が生まれている様子が想像できました!

大隣:今は年末商戦に向けて、新たな商品セットを開発中です。

ギフト需要を見据えた新たな商品で、肉の専門家の知見を活かした牛肉の部位の食べ方提案と、協働プロの顧客視点を盛り込んだ商品で、中身だけでなくパッケージにもこだわっています。

協働プロのみなさんと一緒に、毎回のミーティングで要点を潰しこんでいったことで、忙しい中でしたが形になりました。取り組みを始めてから次々と、新商品アイディアが実現できているのは、協働日本とのミーティングがペースメーカーになっていることが本当に大きいです。

ーーコロナ禍で始まったお取り組みも、現在まで続いていますよね。長くお取り組みが続いている理由を教えてください。

大隣:もちろん、シンプルに効果を実感しているからですね。はじめは半年間と思っていた伴走支援も、延長させていただきもう一年近くになります。

2020年に創業した1129は、3~5年かけて基礎を固めて、その後にしっかりと成果を最大化する計画で事業を進めてきました。来年2024年はその意味でも勝負の年となります。

この大事なタイミングだからこそ、伴走支援を通じてしっかりと外部のサポートを得る価値を感じています。

専務 大隣 将太朗氏

今がまさに、27歳の時の自分の夢の延長線。

ーーお話をお聞きし、とても良い関係性の中で「協働」が出来ているのだと感じます。ぜひ、これからの展望もお聞かせください。

大隣:弊社のECサイト『1129nikulabo』や、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などを通じて、全国のお客様に届けられるよなECサイト基盤が整いました。

ラボを開設し、黒毛和牛の部位ごとに、カット方法や調味料との相性などを研究開発しています。黒毛和牛のポテンシャルを存分に引き出すための、商品開発基盤が整いました。

そして2021年には「にくと、パン。」2022年には「にくと、うどん。」といった、飲食店舗も設立できました。

いままさに、EC、商品、店舗が回りはじめて、思い描いていた「和牛を売る」ということがしっかりと形になってきました。

和牛を世界に届けたいと思っていながらも、悔しい思いで畜産業を廃業した27歳の時の自分。夢の続きがまさに今なんです。

今後は海外への展開も計画しており、来年2024年はますます忙しくなりそうです。

やりたいこともたくさんありますし、仕事や権限もどんどんメンバーに譲渡していかないといけない。

引き続き協働日本さんに伴走していただき、ペースメーカーとして1129をサポートしていただければと思います。

鹿児島黒毛和牛とこだわりのパンを使ったハンバーガーを販売する「にくと、パン」
ーー27歳当時の夢の続きが今。そんな大隣社長の想いに、協働日本が伴走できていることを嬉しく思います。
これから協働日本はどうなっていくと思いますか?エールも兼ねてメッセージをいただけると嬉しいです。

大隣:弊社のように自社の商品に自信を持ちながらも、その販売戦略や次の一手を考える余裕がない企業は多いはずです。

協働日本さんのような、専門性や情熱を持った複業人材にサポートしてもらって、ペースメーカーとして伴走してもらうだけでも、どんどんアイディアは形になっていくと思います。

ぜひ協働日本さんにはもっと、全国の中小企業を支援してもらいたいと思いますし、こういった取り組みがもっと知られていけばいいと思います。

ーー本日はインタビューありがとうございました!ぜひこのあと、「にくと、パン。」で、ハンバーガーを買って帰りたいと思います。

大隣:ありがとうございました。黒毛和牛を使った自慢の商品です。ぜひ召し上がってみてください。

インタビュー当日は「にくと、パン。」店舗へ実際に訪問

 大隣佳太 / Keita Ootonari

株式会社1129代表。株式会社バリュー代表。肉師。

農業高校を卒業後、農業大学へ進学。種畜場で修行後に家業の南九州市で畜産経営に従事。牛の人工授精や受精卵移植などの知見を得る。その後、鹿児島県南九州市で家業の畜産経営に従事した後、2012年に畜産業を廃業。

ECやWebマーケティングを独学で学び、その後、福岡のIT企業に就職。会社員時代を経て、2018年に福岡で株式会社バリューを設立。ECコンサルやWebマーケティング、アプリ開発などに従事。

その後、和牛への熱い想いを胸に2020年、通販専門精肉店・株式会社1129を設立。和牛のおいしさ・提供方法を追求するための研究開発ラボ「1129LTD. nikulabo」を開設。
鹿児島県産黒毛和牛の魅力を発信する飲食店「にくと、パン。」「にくと、うどん。」を展開するほか、鹿児島県産の黒毛和牛のステーキや、手作りハンバーガーキット、ビーフジャーキーを、同社のECサイト『1129nikulabo』や、各種ECサイトで販売している。

株式会社1129
https://1129iiniku.co.jp/home_mori/

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STORY:株式会社オーリック -グループの急成長を実現する「組織のOS」アップデートの取り組み-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社オーリック(鹿児島県鹿児島市)を訪問し、会長の濵田龍彦氏、グループ管理本部経営管理部の方志貴子氏、グループ管理本部情報システム部次長の梶原宏二氏のお三方からお話をお伺いしました。

株式会社オーリックは、鹿児島県鹿児島市に本店を構え、九州一円酒類・食品販売事業を展開する企業です。平成元年12月に鹿児島で初めての酒のディスカウント店をオープンした後、九州各地に事業所、配送拠点、繁華街店舗を設立。現在は九州最大級の品揃えを誇ります。

ワインや焼酎を主力商品として、さまざまな業態の顧客の要望に応じたドリンクメニューを提案力と、注文からすぐにお届けするクイックデリバリーで知られ、九州各地で事業が急拡大しています。

売上高 はグループ合計で554.2億円(2023年3月期)、従業員数はグループ合計2,700名(2023年3月期)と、鹿児島はもとより、九州の飲食業界で大きな存在感を持つ企業グループとして知られるオーリック社。不動産・建設事業などの事業にも取り組むなど、経営の多角化にも取り組んでおられます。

昨年の経営セミナーでのご縁を通じ、オーリック社の新たなチャレンジに、協働日本が伴走させていただけることになりました。急成長の裏で見えてきた課題に共に向き合いワンチームで協働を進めています。

インタビューを通じて、どんな協働プロジェクトに取り組み、そこからどういった変化が生まれたのか。会長の濵田龍彦氏、方志貴子氏それぞれの事業に対する思いとともに協働を振り返り、これからの期待について語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明)

「協働」という新たな取り組みスタイルへの期待 

ーー本日はお時間をいただきありがとうございます。さっそくですが、協働日本との取り組みを決めたきっかけを、濵田会長にお伺いしてもよろしいでしょうか? 

濵田 龍彦氏(以下、濵田):よろしくお願いします。 

はじめて協働日本さんのことを知ったのは昨年(2022年)、講師として協働日本代表の村松さんが登壇されていた、鹿児島県主催の経営セミナーでした。 

そのセミナーの中で村松さんと知り合って、実際に協働日本の事業についてもその際にご紹介いただきました。 

ーー協働という取り組みの形について知ったとき、どんな印象を持ちましたか? 

濵田:そうですね。はじめは、地域企業向けのコンサルティングというイメージでお話を伺ったんですが、それとはだいぶ違うユニークな形で事業を展開されているなと思いました。 

企業の課題に対して、ワンチームで一緒に伴走しながら取り組んでいくスタイルは、これまでお付き合いのあったコンサルティング会社のご提案にはないものでした。 

我々としても答えのない課題に向き合っていこうとしていたタイミングでしたので、名刺交換をさせていただいたその場で、ぜひお願いしますとお話したことを覚えています。 

ーーほとんど即決に近い形だったのでしょうか? 

濵田:はい、そうですね。すぐにお見積りを出していただいたのですが、協働日本に所属している、第一線で活躍しているプロたちに週に1回打合せして、1年間伴走してもらえることを考えれば、とても価値ある投資だと感じました。 

意義ある取り組みだと考えたので、同時に3つの重要なテーマ(HR、DX、EC)をプロジェクト化し、協働日本との取り組みをスタートすることを決めました。 

オーリック社 会長 濵田龍彦氏

人事制度すなわち「組織のOS」をアップデートしなくてはいけない 

ーー経営管理部方志さんにも伺います。協働日本との取り組みについて、方志さんはどのように感じられていますか? 

方志 貴子氏(以下、方志):弊社は、会長や相談役を始めとする創業者の強いリーダーシップで今まで成長してきました。創業メンバーも60代となり、次世代経営層の育成も重要な課題となっています。 

弊社は、フィロソフィー経営、そしてアメーバ経営といった理念を大事にしております。もちろんそれらを引き継ぐことも大切ですが、令和の時代にふさわしい経営理念、フィロソフィー、行動評価項目、組織構造にアップデートする必要性も同様に、強く感じていました。 

そんな時に参加した鹿児島県主催の「成長する組織づくり」をテーマとした講演で、協働日本の村松社長と大西CHROのお話を伺いました。 
講演の中で「企業成長に必要なこと」をお話頂きましたが、具体的でわかりやすく、弊社が取り組めていない課題を明確化することができました。 

ぜひ弊社の課題に、ともに向き合っていただきたいと思いお話を伺いました。濵田会長の話にもありましたが、会長も同じ思いだった為、すぐにお取り組みがスタートしました。 

方志 貴子氏
ーープロジェクトの立ち上げにあたって、方志さんから協働日本には、どのような課題、相談を投げかけてくださったのでしょうか? 

方志:オーリックグループがここまで成長してきた中で、M&Aにより多くのグループ会社を迎え、グループの規模も従業員数も急拡大しました。オーリックではいま様々な事業領域を内包し、様々なバックグラウンドを持つ社員が働いています。 

経営判断がより複雑で難しいものになる中で、これまでのやり方を踏襲していただけではその先の成長はありません。 

今後オーリックグループが更に大きな事業規模を目指す中で、言うなれば「組織のOS」 のバージョンアップが急務だと思っている旨を伝え、組織開発や人事制度設計の経験が豊富なプロのお力を借りたいとお伝えしました。 

ーーなるほど。ちなみに、いま方志さんのおっしゃっられた「組織のOS」という例えには、どんな思いが込められているのでしょうか? 

方志:人事制度や企業カルチャーはまさに、パソコンを動かす基礎的なソフトウェアであるOS のように、会社を動かしていくための重要な、基本の仕組みとも言えます。 

我々のように地域を拠点とする企業こそ、変化の激しいVUCA時代に沿った「組織のOS」に変化しないといけないという認識がありました。 

弊社の経営の強みは、フィロソフィー経営・アメーバ経営といった経営理念を大事にしているところですが、良いところも残しつつ、令和の時代にふさわしい経営理念、フィロソフィー、行動評価項目、組織構造にアップデートする必要性を感じていました。 

弊社は特に、M&A後のPMI(Post Merger Integration)の課題として人事制度の統一が必要でした。オーリックはこれまで、後継者不足の他社酒販店の受け皿となるべく積極的にM&Aを活用してきた結果、エリアによって人事制度が異なるという課題がありました。 統合効果を最大化させるための人事制度改革が急務となっており、これは組織のOSのまさにコアとなる部分。 

この点を解決できる人的リソースが社内におらず困っていたところ、協働日本様とのご縁を頂けることになったのは幸いでした。 

濵田:いま方志から話のあったように、弊社はM&Aを通じて現在、45社ほどのグループ会社で構成されています。 

オーリックグループの主幹でもある酒類を扱う事業もあれば、業務スーパー事業や不動産建設事業、リサイクルショップ、ウォーターサーバーの製造販売など、その事業は多岐に渡ります。 

今後のグループの成長のためにも、ここでグループの全社で横断的に活用できる、新たな人事制度、特に社員への評価制度の策定を進めたいと考えました。協働日本さんには、大手上場企業で人事制度策定に関わった現職または元職のプロの経験から伴走してもらえたのは心強かったです。 

今期はグループ全体で650億円近くの売り上げを見込んでおり、2030年には1000億円の売上高を計画しています。我々が経験したことのない未知の領域へ挑戦していく中で、この部分の見直しは必須だと思っていました。 

グループ各社も個々に見ていくと、元々それぞれはいわゆる中小企業。共通のフィロソフィーのもとに集っているが、それぞれに社風も制度も違う会社の寄せ集めとも言えます。創業から30年や40年、50年と経っている企業がグループに加わっていただくことも多いです。 

評価制度や給与体系といった各種人事制度の耐久年数も限界にきていることも多く、弊社の重要な経営課題のひとつでした。 

社員が自ら考え、自ら伝える機会を創り出せた

ーー協働日本との取り組みで重視していたポイントを教えてください。 

方志:重要な課題に対してじっくりと向き合いたいという気持ちがあった一方で、事業が多角化していく中で常に人手不足。人事制度改定には、最短で取り組みたいとお伝えしました。 

時間が豊富にあれば我々も一から試行錯誤していくのでもいいのですが、そうも言っていられません。 

協働日本さんには、人事制度について豊富な知識があって、実際に企業の中で人事制度設計に取り組んだ経験の協働プロの方をアサインしていただきました。 

そもそも何から取り組めばいいかを悩んでいたので、しっかりとした型に沿って検討工程を組んでくださり、とても助かりました。さっそく経験豊富なプロの力を借りた甲斐がありました。 

課題へのアプローチにも、私たちが気づかなかった様々な視点を盛り込んでくださいました。 

そのひとつが「社員インタビュー」。今の人事制度についてどう思うか、社員に対して協働プロの皆さんがインタビューをしてくださいました。 

ある意味で外部の方だからこそ、現場の社員から率直な声を拾っていただき、現場に実はこんな負担がかかっていたとか、こんな苦労があった、といった発見も多く得られました。おかげさまで、本社の人事部門で考えていた想定と、実際の現場とのギャップをだいぶ埋めることができました。 

ーーなるほど。お二人は、伴走の成果をどう感じられていますか? 

濵田:とても満足しています。協働日本さんとチームでプロジェクトに取り組んでいる社員からは、グループ各社の状況が個々に異なる中でも活用できる、素晴らしい人事評価制度の案が協働から生み出せたと聞いています。 

方志:給与の仕組みや評価の仕組みがほぼ出来上がりました。年内には社内向けに説明会を実施する予定です。 

これによって働き方はどう変わるのか、何が目的の制度改定なのか、改定後の人事制度を社員に対して説明をしなくてはならない管理部門の人間にとっても、大仕事となります。結果としてそれ自体も社員の成長に繋がっています。 

協働日本代表の村松さんと話した際にも、伴走の最後には伴走相手が自律的に考え行動することが大事だと語っておられましたが、まさにその視点が他社と違うところですね。 

伴走という形をとったことで社員が自ら考え、自ら伝える機会を作れたのは、継続性の観点からもとても良かったと思いますし、仮にコンサルに任せきりだったら得られなかった成果だと思います。 

ここから来年の春にかけて各事業部のリーダーともディスカッションしながら、完成させていく流れなのですが、2024年4月には運用をスタートできそうです。 

自分たちで考え抜いた結果の選択肢だから、自分の言葉で語ることができる 

ーー続いて、情報システム部次長の梶原さんにも伺います。社内人事制度の改定以外にも、協働日本と取り組んでいるプロジェクトがあると伺っております。またその背景も教えていただけますか? 

梶原宏二氏(以下、梶原):人事制度改定と並行して、ITとEC分野についても協働日本さんに依頼し、さらに2つのプロジェクトが発足しました。 

1つ目は、社内コミュニケーションツールの選定と導入に関するプロジェクトです。 

人事制度改定とは別の協働プロをアサインしていただき、弊社の該当部門社員でチームを組み、最適なツールの選定と、ひいてはワークスタイルの検討を議論してきました。 

出張先やリモート先での仕事環境の整備も今後ますます重要になる中で、社内コミュニケーションの見直しはまさに今後の生産性を左右する重要な課題のひとつでした。 

ーー先ほど濵田会長がおっしゃられたように、M&Aを通じて多くの企業がグループ入りする中で、システムの統一、特にコミュニケーションツールの選択は重要な課題になってきそうですね。 

濵田:そうですね。ちょうど九州の地元企業の創業社長が30代の頃に作られた会社が、60から70歳ぐらいになられた今、後継者不在ということでオーリックにグループ入りするケースも増えてきました。 

グループ内の連携を強化し、コミュニケーションを円滑にして、仕事を見える化していかないと、グループに加わったあとの相乗効果も出にくくなってしまう。 

連携を進めやすくするためにも、コミュニケーションツールはもとより、ウェブデザインをはじめ、会社の情報管理システム全般についても、同時並行で進めて行く必要があるなと再認識したところです。 

まずはその一歩として、全社のコミュニケーションシステムのアップデートと統一を指示していました。 

梶原:グループ各社で横断的に活用できるコミュニケーションツールを模索したいと思い、色々な情報を集めていましたが、何を基準に選択し業務をデザインすべきか途方にくれる部分もあり、IT企業に勤める協働プロの視点やアドバイスは非常にありがたいものでした。 

協働プロのお一人、NECソリューションイノベータにお勤めの横町さんに週1回伴走して頂く形をとって、チームで議論しています。 

これまで使っていた社内のポータルサイトの不満点や改善ポイントを整理し、新たに、Microsoftの365マイクロソフト365を中心としたコミュニケーションシステムに移行することにしました。 

全社導入にあたってのいくつか課題も整理し、いま運用をテストしているところです。これも2024年4月1日付で本格導入をスタートしていく予定です。

梶原 宏二氏 
ーーこの課題に、協働日本とチームを組んで取り組んだことのメリットはありましたか? 

梶原:進め方に関して、いわゆるコンサルに任せきりで決めてもらうという形ではなく、ワンチームで検討できたことも良かったですね。当社の現状をちゃんと理解してくださり、大手上場企業で勤めている経験や知見も生かしてくださっているおかげで、プロジェクトも着実に前進していきました。 

お互い毎週キャッチボールをさせていただき、実際に様々な導入事例を紹介してもらいました。 

協働プロの横町さんからしたら、オーリックさんぐらいの企業であればこれでいきましょう、と一気に決めてしまうことは正直、簡単だったと思うんです。 

でも横町さんの進め方は違っていて、いくつもの選択肢をひとつひとつメリットとデメリットを比較してくださり、毎週検討すべきテーマを宿題として提示してくれるなど、私たちがひとつひとつ考えて腹落ちできる形で議論を進めてくださいました。 

最終的に会長に報告をさせていただいて決裁をいただいたのですが、自分たちで考え抜いた結果の選択肢なので、メンバーはみな自信を持って報告することが出来ますよね。 

強みを活かした「差別化戦略」に伴走 

ーーあらためて方志さんにもお伺いいたします。EC分野に関するもう1つのプロジェクトについてもお話を伺えますか? 

方志: 我々は九州の小さな酒蔵や食品生産者とも多数お付き合いさせていただいています。全国的に知名度はなくとも、素晴らしい銘品が多いのです。十数年前から通販事業部にて楽天等のECモールに出店し、全国のお客様にお届けしてきました。 

豊富な取扱いアイテムを活かして、もっと情報発信や面白い施策をしたかったものの、何から取り組めばよいか迷ってしまっていました。 

やったほうがいいよね、ということがたくさんある中で何に注力して何を成果とするのか。具体的なKPIを設定して毎週・毎月追いかけていく仕組みを作っていく必要がありました。 

そこで、協働日本からマーケティング・宣伝のプロである相川さんに加わっていただき、目標達成のために根拠のあるKPI設定をサポートしてもらうことで、再現性のある勝ち筋を見つけていくための戦略づくりに集中した議論が行えています。 

ーーアイテム数以外の勝負、たとえばどんなアイディアがチームから生まれたのでしょうか? 

方志:弊社でECサイトの各商品カテゴリーを担当するECのカテゴリーマネージャーは4名いるのですが、それぞれがウィスキーや焼酎、ワイン、そして食品のプロです。 

彼らの知見や生産者とのつながりを活かした情報発信をしていこうという話になっており、たとえば、好みの焼酎とめぐりあえるような焼酎相性診断チャートを作成したり、noteで焼酎うんちくを焼酎アドバイザーの目線で語る企画を実施したり。 

目利きには自信のある、お酒のプロであるオーリックの強みを活かした差別化戦略を議論中です。 

時代のニーズに合わせて、変化していく 

ーーここまでのお話を伺う中でも、協働日本を通じて複業人材と共に、様々な課題の解決に取り組んでいる姿が見えてきました。 

濵田:私は実家が焼酎メーカーでその営業を行っている中で、当時はまだ珍しかった、酒のディスカウントストア業態を知りました。 

ディスカウント業態への参入に大きな可能性を感じた私は独立して、九州各地に拠点を設けることができるところまで事業を大きくすることが出来ました。 

2003年に酒販免許が完全自由化され、酒販業界が大きく変化していく中で、いち早くその変化に対応し逆境を乗り越えることができたのは幸運でした。 

その後も飲食店に酒類を配達するクイックデリバリーの事業など、時代のニーズにあわせて、当時の「酒のキンコー」から現オーリックへ業態を変化させてきました。 

社名の変更も大きな転機でした。年配の方からは、「酒のキンコー」の方がなじみがあるという声は今もいただきます。それでも、業態を大きく変えていく中で、それにふさわしいものへと社名を変えていくべきだと決断しました。 

ーー次々と時代のニーズに合わせて、変化していく。オーリック社の強さだと感じました。 

濵田:そういう意味では、私も今年4月1日に会長に就任し、濵田龍太郎が新しい社長に就任しました。これも一つの転機にしていきたいと思っています。 

「全社員の物心両面の幸福を実現し、お客様に最高の品質・サービスを提供し、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献する」という経営理念に合致するのであれば、これからも様々な業種や業態に挑戦する可能性は大いにあります。 

これまでも、様々な企業がM&Aを通じて弊社のグループに加わっていただきました。創業者が高齢化している企業の事業承継を引き受けて、九州経済を支えていくこともオーリックの一つの使命です。 

だからこそ、M&Aした企業の業績向上は重要な使命。業績を伸ばし、そこで働く従業員の給与賞与を上げていくことで、グループ入りしてよかったと思ってもらいたい。 

そのために、やらなければならないことが、まだまだたくさんある。我々だけでは解決に時間のかかる問題も多い。 

その一端を、協働日本さんにサポートしてもらえているのは大変心強く思っています。 

オーリック社 会長 濵田龍彦氏(右)と、弊社代表 村松知幸 (左)

さいごに 

ーー大変ありがたいお話を伺えました。最後に、協働日本との取り組みを感じていることや、複業人材との取り組みを経てお感じになったことなどをお伺いできますでしょうか。 

方志:協働日本さんと取り組みを始めてから、原則リモートの打合せでありながら、わざわざ鹿児島まで時折訪問してくださったり、社風や実態を理解しようと努めてくださる姿勢が私はとても嬉しかったです。  

過去、コンサルティング会社の方に依頼しても、考え方がうまくフィットしなかった事例もありましたが、協働日本の皆さまは弊社の身の丈にあった実践的な提言をしてくださるところが大変有難いです。 

協働日本さんは「伴走」という形を大事にされていると伺っていますが、まさに伴走者として寄り添ってくださっていると実感しています。  

また協働日本さんとお付き合いする以前にも、実はフリーランスのリモートワーカーさんを活用する案もありましたが、その時はマネジメントの点で不安がありました。 

その点、協働日本から参加する協働プロのみなさんは、厳選されたプロの方であり、プロマネも立ててくださるので安心してお付き合いができました。弊社から依頼していた3つのプロジェクト間でも情報共有してくださっていたようで、コミュニケーションがとてもスムーズでした。 

こうした複業人材との取り組みは今後地域の企業に広がっていくといいですね。 

社内に新しい風を吹かせてくれる、新しい視点を持った、地方に数少ない高度プロフェッショナル人材の力を借りることはとても魅力的ですが、雇用しようとすると、様々なリスクがあります。 

その点で、協働日本さんのようなスタイルは、ちょうどよい形だったと思います。 

濵田:協働日本さんの取り組みは、日本中だけでなく、いずれ海外にもきっと広がっていくのではないかと期待しています。 

同じような課題に直面している全国の地域企業は数多くいらっしゃると思います。鹿児島県をはじめ、どんどん成功事例を生み出して、発信していただければと思います。 

協働日本さんにはぜひ頑張っていただきたいと思います。 

ーー本日のインタビューは以上とさせていただきます。貴重なお話に加えて、弊社へのエールをいただきましてありがとうございました。


株式会社オーリック 代表取締役会長  
濵田 龍彦  
Ryuhiko Hamada

1956年生まれ、鹿児島県いちき串木野市出身。1978年、家業である明治元年創業の焼酎メーカー・濵田酒造に入社。1989年に鹿児島県内初の酒類ディスカウント店「酒のキンコー(のちのオーリック)」をスタート。2023年4月、㈱オーリック代表取締役会長に就任。  

株式会社オーリック グループ管理本部 経営管理部  
方志 貴子
Takako Hoshi  

中央大学法学部卒業後、大手食品酒類メーカーに入社し、約10年間勤務。主に情報システム開発・保守、営業企画、損益管理・財務会計業務等に従事。2022年4月、㈱オーリック入社。「持続的に成長する組織づくり」のため、経営理念、人事制度の改定、決算品質強化、オフィスリノベーションなどを推進。  

株式会社オーリック グループ管理本部 情報システム部次長  
梶原 宏二
Koji Kajihara 

2001年、オーリックの前身の「酒のキンコー」にて店舗担当として入社。2004年、営業として飲食店へお酒の提案を行う。熊本エリア支店長を経て、2015年より経営管理部次長として酒類事業、不動産建設事業の経営企画を担当。2023年4月より情報システム部次長としてDX化およびWEBマーケティングを推進。  

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実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社ソミック石川 代表取締役の斉藤 要氏にお越しいただきました。

株式会社ソミック石川は、大正5年に「石川鐵工場」として創業。ボルト、ナット類の製造工場としてその歴史をスタートしました。現在は自動車部品の製造業として、トヨタ・スズキ・スバルなど大手自動車メーカーが主要取引先となり、国内シェアは50%を超えています。

そんな、私たちの生活を支える自動車の重要保安部品を作る、ソミック石川の新たなチャレンジに協働日本が伴走させていただけることになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

はじめてのBtoC事業に向けて、協働を通じてノウハウを学びたい

ーー本日はよろしくお願いいたします。はじめに、協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

斉藤 要氏(以下、斉藤):よろしくお願いします。弊社の人事部の若手社員が、協働日本代表の村松さんの講演を聞いて連絡をとり、私に紹介してもらったことがきっかけでした

ちょうど村松さんが弊社のある浜松に来るタイミングで、一緒に食事をさせていただきました。その場ではすぐに取り組みをスタートするといった話にはならなかったのですがその後、約1年後に当社のサポートをしてもらえないかとあらためて依頼して今に至ります。

ーーファーストコンタクトから協働がスタートするまで、結構間が開いていますね。

斉藤:そうですね。村松さんとはじめてお話した際に、協働日本の伴走支援のモデルに大変強い興味を持ちました。協働プロとの協働を通じて様々な取り組みが実現できそうだと感じました。

ただ、当時はすぐに取り組みたいテーマがなく、その場ですぐに、とはならずそれっきりになってしまっていました。

ただ当時から、自社としても近い将来に新規事業を立ち上げなくてはいけないという危機感は持っていたので、いざその時にはぜひ力をお借りしたいとずっと思っていました。

ーー約1年越しでそのタイミングが来たと。

斉藤:はい。今生産している製品を自動車メーカーだけではなく、補修部品として直接ユーザーに売る仕組みを作り、BtoC向けの新規事業を立ち上げ、事業領域をさらに拡大させていきたいと考えています。

我々はずっとBtoBの事業をしてきたので、BtoC向けの経験も流通・販売の仕組みも持ち合わせていませんでした。

元々、トヨタ生産方式の合理的な生産体制が社内に浸透しており、とにかく無駄を削ぎ落とすという考え方が基本だった弊社は、決まった仕組みの中では生産性を高めることができている一方、新しい仕組みが社内に入ってきにくいという課題も抱えていました。

普段から、決まった大手のメーカーが取引先ということもあって顧客対応も画一的なもので問題なかったこともあり、BtoC事業に求められる柔軟さが不足していました。

考えていたBtoC向けの新規事業においては、我々の販売する自動車部品が必要になる時は自動車修理のタイミングで、自動車生産と違って突発的なタイミングで発生するものです。計画的でないニーズにも対応できる自由度も、社内で絶対必要になるはずです。

そこで、経験豊富な協働プロに参画していただくことで、経験不足を補い、ノウハウを短期間で吸収したいと考えたんです。

やはり、同等のプロフェッショナル人材を自社で採用し、育成したり直接雇用したりするとなれば、とてもお金がかかります。協働を通じて組織のトップがノウハウを手に入れられるならば、結果的にとても効果的で価値ある投資になると確信したことも、経営者視点から見て大きな決め手でした。

協働プロの現地視察風景

ーー実際協働がスタートしてからはどのようなプロジェクトが進んでいるのでしょうか?

斉藤:我々の考えるBtoCの新規事業に向けて、物流を含め、供給をどうしていくかなど、広く売る仕組みを構築中です。協働日本からは、CSOの藤村昌平さんと、協働プロの根崎 洋充さん(大手製造業)、三宮 大輝さん(西日本旅客鉄道株式会社)の3名の方にプロジェクトに加わっていただいています。弊社からは私以外に、営業部門の役員と部長が参加しています。

構想した新規事業は、新しい製品を作って売るということではなく、既存製品を新しい売り先に売ることになるので、まず業界の仕組みを深く掘り下げて分析しました。

我々のようなメーカーが作った自動車の部品は、仲卸業者を介して自動車メーカーに販売しています。エンドユーザーが部品を必要とする場合は、カーディーラーや整備工場などを通じて購入することになります。

売り手側も買い手側も、直接の売買が難しい構造になっているんです。そこで、他社・他業界の事例なども踏まえて、ターゲットとの接点の作り方や売り方、そして我々の強みについて毎週のように協議しています。

ーーなるほど。まさに新規事業をスタートする準備段階なのですね。協働を通じてどんな発見があったかお聞きできますか?

斉藤:価格設定についての話をしていた時、どうしても社員の考えが「自動車部品」をベースとして凝り固まっていることに改めて気付かされました。

自動車部品という業界においては、良い製品を作って、そこからどうやって原価を下げるかが重要視されます。例えば、利益率も製品価格の5%と設定されているなど、他業種に比べて特殊な構図があります。

そのことが根底にあるので、どうしても売価設定をリーズナブルに設定しようとしてしまいます。そんな時協働プロから「もっと高く売ってもいいんじゃないか?」と言っていただいてハッとしました。

価格設定の際には、「お客様が何に価値を見出していて、そこにどう値段をつけていくか」を考えるという、他業界では当たり前なのかもしれませんが、この業界に長く浸かっていたいた私たちにとっては、これまで持ち得なかった新しい視点を持ち込んでいただきました。

さらに、自動車メーカーからエンドユーザーに売り先が変わったことで、「お客様が部品に見出す価値」も変わってきます。ですから、全く同じ部品であっても、お客様の見出した価値の分通常よりも利益を載せることだって出来るという考え方ですね。

ターゲットとするエンドユーザーに、より大きな価値を見出していただける製品のラインナップについて協議を進めて、これからテスト販売をする予定です。その結果からいよいよ販売の仕組みを構築していきます。

市場に合わせて柔軟に変化できるように促したい。新しい視点を得た今、期待すること。

ーープロジェクトはまだ道の途中とのことですが、現状で感じる変化や成果はありますか?

斉藤:まだまだこれからだと思っています。まさに今も、我々の強みはどこにあるのかを見極めようとしているところです。

慣習に囚われず、売り先に合わせて売価を適切に設定することは、我々の強みに自分たち自らが値付けをすることでもあります。我々の強みにより価値を感じる顧客に、適切な価格で売ろう、という意識と主体性を持って、いま徐々にアプローチを変化させていっています。

ーー変化をしっかりと言語化できているところに、多くの議論を重ねてきた、ワンチームでの協働があったのだなと感じます。そういった意識の変化につながったきっかけや、背景はなにかあるのでしょうか?

斉藤:こういった変化が生まれたきっかけのひとつに、業界分析を重ねていく中で、旅行産業の収益モデルを協働プロから教えてもらったことがあります。

エンドユーザーがインターネット上で予約サイトにアクセスしてホテルを予約し、旅行するというプロセスの中に、ブッキングサイト、や旅行商品を販売する会社など、複数の中間事業者が役割分担しているのですが、それぞれがどこでどんな風に利益を上げているのかを解説していただいたんです。

その話を聞いて、我々が製品を作って、エンドユーザーの手元に届くまでの間のどこで利益を上げるのか、収益モデルをいかに構築していくかがとても大切だと気付かされました。

僕たちは製造業者なので、どこまでいっても「良い物を作れば売れる」と考え、「良い物」を作ることに集中してしまうところがあります。

ですが、協働プロの皆さんは、何によってユーザーに選ばれるのかという視点について、事例を伴うアドバイスをくださるので、いつも新たな視点に気付かされています。良い物を作ったって、良いかどうかなんてパッとはわかりません。

今はとにかく、顧客視点で選ばれる製品、そして事業へと進化させるべく、戦略を立てています。

ーーこれから、こんな変化を自社に生み出せたら良いなという展望はありますか?

斉藤:今後は、日本の人口はどんどん減っていって、市場が縮小してくるのが目に見えていますから、社員や組織が新たな時代に対応できるような変化を促したいと考えています。

というのも、普段の徹底した合理的な生産方式が、もしかしたら今後ネックになりうる可能性もあるからです。先ほど申し上げた通り、トヨタ生産方式は無駄を削減した合理的な仕組みです。

完成された、無駄のない仕組みを普段から運用しているからこそ、人によっては状況が変わっても同じやり方が正だと考えてそのまま運用し続けてしまう危険性も当事者として感じています。

本来のトヨタ生産方式の考え方に立ち返れば、ベストな状態にするにはどうしたらいいかを仕組化していくことが大切だという考え方ですから、状況に応じて仕組みを変化させることが非常に必要です。

市場の変化に合わせて柔軟に対応することが会社として必要な局面にいるので、皆がただ去年と同じ仕事をしているという状態から、未来はどうなるかを読んで対応を変化させていけるようになって欲しいと思っています。

日本の強みは人的資源。協働日本のコミュニティが日本を更に強くする。

ーー斉藤さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味はおありでしたか?

斉藤:そういう活動をされている方がいることは知っていましたが、ここまでシステマティックに複業人材の活用をされている会社があるということは、村松さんのお話を聞いて初めて知りました。

ーー率直に、協働という形で取り組みをはじめてみていかがでしたか?

斉藤:協働がスタートして、社員も活き活きと参加してくれています。プライベートの時間もフットワーク軽く、市場調査をしにいくほどなんです。協働プロとの壁打ちが効いてるんだと思います。

自分のやったことに対して、きちんとアドバイスやフィードバックがもらえることがやはり嬉しいんじゃないかなと。僕も、どうしてもこれまで忙しくて、社員と1on1をしてサポートすることはできなかったので、社員が喜んでくれているのをみると、取り組みを始めて本当によかったなと感じます。

我々と同じように1つの分野に特化して専門化してしまっているような企業が、何か変化しようとしたり、新しいことを始めようとしたりしているなら、協働日本さんとの取り組みをぜひお勧めしたいですね。

特に製造業は、そういった会社が多いと思います。大きい会社であれば、その中でも色んな背景を持つ人材がいるかもしれませんが、中小企業だと難しい部分もあります。

だからもう、新しいことを始めたいけどノウハウが足りないなど、困っているのなら、まずは試してみるっていうのも一つの手じゃないかなと思います。
言い方は適切ではないかもしれないけれど、人を雇うのと違い、合わないと感じたら辞めることもできます。今回協働プロには3名入っていただいていますが、こんな人材を3名も雇うことになったら、もう大変です(笑)。

それを窓口一本、協働日本さんにご相談するだけで、熱意のある適切な人材をアサインしてもらえるんだから、本当にありがたいと思っています。

ーー最後に、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

斉藤:協働日本は、ある意味で大きなコミュニティとも言えますよね。こういったコミュニティが広がっていくっていうのはとても大事だなと思います。


というのも、製造業は特にこれまで、内製技術で川上から川下まで全部自前でやりますという、考え方が多かったですが、最近は強いところだけやります、という構造に変わってきています。

例えば、インテルも中身だけに特化して、パソコンの外側を作らなくなっていますよね。そのように、個々の技術をネットワークで繋げて、最終的には大きな成果を作り上げるという時代になっていくと僕は考えているんです。

協働日本のようなコミュニティがそれぞれの強みを持った人材や会社をつなぐネットワークになれば、よりスピーディに成果を産み出すことができ、発展していくのではないでしょうか。

思い返せば私自身も会社から、色々な変化の機会をもらっていたんですね。異動や昇進昇格…いろんな経験ができたからこそ変化も成長もしてこられました。

でも、そういった様々な変化や経験を全員が等しく受けられるとも限りませんし、これからは自らがそういった変化のある場に飛び込んでいく必要がある時代です。

協働日本を通じて協働プロとしてその機会を作ることができれば、もっと社会のために能力を発揮できるという方も、きっと多くいるのではないでしょうか。

日本の強みは、資源ではなく人的資源です。最後は人ですから、協働日本のコミュニティが、日本を更に強くしていってくれることを期待しています。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

斉藤:ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。


斉藤 要 / Kaname Saito

(株)ソミック石川 代表取締役 社長 トヨタ自動車(株)にて、ステアリング実験、サスペンション設計、生産技術を経験し、設計部長を務めた後、(株)ソミック石川へ転籍。2022年より現職。

協働日本事業については こちら

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VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 ―「事業づくり」と「人づくり」の両輪―


STORY:株式会社四十萬谷本舗 四十万谷 正和氏 -課題に合わせた戦略的人材活用。老舗企業の考える「生き残り戦略」とは-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷 正和氏にお越しいただきました。

株式会社四十萬谷本舗は、明治8年創業、老舗の発酵食品の製造販売を手がける会社。創業以来、醤油、味噌、糀などを始めとし、味噌漬やかぶら寿し、大根寿しなど、地元の文化に根ざした発酵食品を作っています。

150年近い歴史の中で、時代やニーズに合わせて緩やかに変化を続けてきたといいます。コロナ禍を迎え、また変わり始めた時代潮流に合わせ、協働日本とのプロジェクトをスタート。更なる進化を遂げる四十萬谷本舗に、協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、そして中小企業の生き残り戦略への想いを語って頂きました。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

「塩漬けしたかぶ」に「熟成させた天然鰤」を挟み、糀で漬け込んで発酵させた伝統のかぶら寿し。 

一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるのが魅力

ーー本日はよろしくお願いいたします。四十萬谷本舗さんは協働日本との取り組み第一号の企業です。協働を決めたきっかけを教えていただけますか?

四十万谷 正和氏(以下、四十万谷):よろしくお願いします。

僕と妻が実家の家業を継ぐべく、勤めていた会社を辞めて、四十萬谷本舗に入った時、課題の宝庫と言えるほど、様々な種類の課題に直面することになったんです。

マーケティングの問題、営業の問題、DX化…解決すべきことが山積していました。

実際に現場に入ってから、日々発生する現場の課題に1つずつ向き合って解決していたのですが、会社全体が良くなっていく感じも全然しなくて、どうしていけばいいのかなと、当時は途方に暮れていました。

そんな時に、協働日本代表の村松さんから一緒に課題の解決に取り組まないかと声をかけていただいたんです。

ーー「伴走支援」という形の複業人材との協働。はじめての取り組みだったと思いますが、協働スタートの決め手はなんだったのでしょうか。

四十万谷:元々、村松さんとは同じ会社(ハウス食品)で働いていたというご縁もあり、普段から相談する機会もあって、弊社のこともよくご存じでした。

同様に、協働プロとして入ってくださるメンバーの何人かが元々の知人であったことで、元々の信頼関係があったこともきっかけとして大きかったと思います。

ただ一番大きかったのは、信頼できるプロフェッショナルに、それぞれの専門分野について力を発揮してもらえるというところでした。

例えば、何人かの協働プロに入っていただく中で、マーケティングのことは若山さん(若山幹晴氏 – ポケトーク(株)取締役兼CMO)、テクノロジーやITのことについては横町さん(横町暢洋氏 – NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)に聞けるなど、一側面切り出し型のプロジェクトではなく、経営課題全般を見ることができるというのが、大きな魅力の1つでしたね。

僕も妻もこれまでのキャリアのバックグラウンドは「人事」で、人事領域については一通り経験を積んでいたものの、その他の領域についてはやはり未経験ということもあり、1からキャッチアップして勉強していくのは容易ではないと感じていたので、とても心強かったです。

ーー実際どんな課題についてプロジェクトを進めて来られたのかお聞きできますか?

四十万谷:まずはその課題を整理する、というプロジェクトからのスタートでした。そもそも課題には2つのパターンがあり、1つは「不良品が発生してしまった」「お客様からクレームのお声をいただいた」など日々の業務の中で発生するトラブルに近いもの。

そしてもう1つは経営全般に関わる、企業としての本質的な経営課題です。僕たちは日々のトラブルへの対応に追われて、なかなか経営課題に着手できていないのが実情でした。

そこで、プロジェクトでははじめに徹底的に従業員やお客様へヒアリングすることで、四十萬谷本舗にとっての本質的な経営課題は何か?ということを洗い出していきました。

それによって「メインの顧客層が高齢化していること」「お歳暮などの贈答の習慣がなくなっていくこと」「冬に売り上げが集中していること」の3つが浮き彫りになったので、次はそれぞれの課題に対してどう会社として向き合っていくかというプロジェクトに移っていきました。

ーー現場では日々色んなトラブルや課題が生まれてしまうものだと思うので、本質的な経営課題に着手するというのはやはり容易ではないことですよね。

四十万谷:そうですね。日々発生する課題自体を解決するのもとても重要なことです。例えば、業務不良品が発生してしまったことについて、製造過程を見直して不良品が発生しないようにと根本から解決することは当然必要ですよね。

ただそういった日々の課題を解決できていても、「顧客自体が高齢化して、今後減っていく」という本質的な課題に向き合えていなければ、長い目で見た時に四十萬谷本舗を未来に残し続けていくことは難しい。

僕はこの日々発生する現場の課題のことを「重力」と呼んでいます(笑)。

もちろん重要なことだからこそ、どうしてもその対応で手いっぱいになってしまいがちになる。

だからこそ、現場の「今解決すべき課題」とは別に、週に1時間意識的にしっかり時間を切り分けて「長い目で見た本質的な課題」に着手できるということも、経営者にとっての協働日本さんとの取り組み価値だと感じています。

重力のように吸い寄せられる日々の課題。本質的な経営課題に向き合う時間の確保の難しさ

ーー本質的な経営課題に対してスタートした次のプロジェクトについてもお聞きできますか?

四十万谷:はい。次に取り組んだのは「メインの顧客層の高齢化」の課題についてです。新しい顧客層獲得のためのペルソナ整理と、打ち手は何かを考え始めたのが2020年3月頃で、せっかくスタートした直後に、コロナ禍に突入してしまいました。

コロナ禍においては当然実店舗の客足や売上には大きな影響を受けたこともあり、コロナ禍でもできる取り組みとしてオンラインでの取り組みやWebでの売上を伸ばすための施策をスタートしました。


具体的には、オンラインでの漬物体験の実施や、それと連動した体験キットを作ってWebで販売するなどの取り組みをすることで、Webの売上は年間3,000万円から4,000万円弱まで30%増という結果を産むことができました。

自宅で簡単に糀のお漬物づくりができる「生きている糀床」

ーー他の課題にも並行して取り組まれているのでしょうか?

四十万谷:そうですね。例えば「売上の冬季一極集中」という課題は、昔からずっと続いている課題です。

当社の圧倒的な主力商品であるかぶら寿しの需要が冬期に集中しているため、簡単には解決に至らないことが多いです。

今は、以前より限られた人員で現場を回せるようにオペレーションを工夫するなど、皆で力を合わせて少しずつ取り組んでいる状況です。もちろん人員をおさえることによって生まれた新たな次の課題も抱えながらではありますが、コロナ禍で売上が減っても収益性には大きな影響を受けずに来られています。

協働という本質的な課題を考える時間を作るようになったことで、こういった課題にもじっくりと向き合えているのかなと思います。

ーーなるほど。協働がスタートしたことによる成果としても、そういった「課題に向き合う時間を作れる」という面は大きいのでしょうか。

四十万谷:はい。成果という面でいうと、大きく3つ、「Webの売上が上がったこと」「そもそも本質的な課題へのアクションができるようになったこと」そして「経営課題に向き合う時間を意図的に作れるようになったこと」だと思っています。

やはり最初は目先の課題に追われて、長い目で見た時に必要な課題に取り掛かることができていなかったので、大きな一歩でした。

また、協働プロのノウハウが社内に蓄積されていくというメリットもあります。例えば、若山さんとのコミュニケーションの中でいつも出てくる「お客様は何を求めているのか」という顧客思考や、何か施策を打った時に「そこからの導線を考えることが重要」というような考え方が協働を通じてインストールされて、自然と僕の言葉の中に出てくるようになっています。結果としてそれが現場に伝わっている部分もあるんじゃないかなと思います。

中途半端な人材はいらない。協働プロは、想いを持って共にコミットメントできる仲間。

ーー四十万谷さんは、以前から都市人材や、複業人材との取り組みにご興味をお持ちだったんですか?

四十万谷:複業人材との協働で成果が出ている弊社ですが、特に「複業人材活用」自体に関心があった訳ではありません。

協働の取り組みをしているのも、「協働日本だから」というのが大きな理由です。というのも、「複業」人材に関しては、まだ世間では「副業」という意識が強い方も多いと思うんです。

「副業」という意識を持っていると、どうしても本業が忙しくて…などの逃げが生じてしまいがちですし、本当にプロフェッショナルとしてのスキルや想いを持っているのか、取り組み前では分からないケースがほとんどです。

ーーご自身も都市部の大企業で働かれていたからこそ気になる点でもあるのでしょうか。

四十万谷:そうですね。企業に勤めていたころ、副業だったり、プロボノ的に企業へのアドバイスをしている人を多く目にしてきました。

その時の印象としては、コミットメントに甘えがあったり、プロフェッショナルとしてのスキルに疑問が残る人もいらっしゃいました。
今経営をしている立場としては、そういう中途半端なスキルの人材の、中途半端なコミットメントではかえって現場が混乱するだけです。

その点、協働日本の協働プロの皆さんは、経歴・経験やスキルはもちろん、強い想いを持ってコミットメントしてくれています。複業という形でありながら、甘えのないプロとしての姿勢を信頼して伴走支援をお願いしています。

ーーなるほど。複業人材だから、ではなく協働日本のプロたちによる強いコミットメントが成功の要因だったのですね。ちなみに四十万谷さんご自身は、複業人材との協働の中で気をつけていらっしゃることはあるのでしょうか。

四十万谷:気をつけていることは、こちらが「答えを教えてもらおう」「課題を解決してもらおう」などと受け身にならない姿勢です。

というのも、協働がスタートした当初の失敗がまさしくそれなんです(笑)。すごいプロフェッショナルに来てもらったのだから、「早く答えを教えてくださいよ!」と思ってしまっていました。

また、協働プロからのせっかくの提案に対して「現場のことをわかってない!」と感じてしまったこともありました。当然現場のことは僕たちの方が熟知しているという情報の非対称性が、「そうは言っても現実的には難しい」など、「できない理由」を作ってしまうことに繋がっていたと思います。

そんな時にも協働プロからは、「一歩踏み出してみるのが難しいのはわかるので、まずは半歩だけでもやってみませんか?」と提案してもらうことで少しずつ進めたんです。

それだけ切羽詰まっていて、答えを知りたい状況だったということもありますが、本来協働とは「一緒に考え、共に解決していく」ものだと今は実感しています。

教えてもらおうという姿勢ではなくて、一緒に悩みながら進んでいこうというワンチームの姿勢で臨むことが、一見遠回りのようでも、結果的に成功につながる実感があります。

協働プロと売場を視察

ーー協働はワンチームで進める、というのは本当におっしゃる通りだなと思います。

四十万谷:やっぱり、いい成果を出す、いい物を作る、など結果を出すためには、変に格好つけたり壁を作ったりせずに、オープンな関係でいることも重要だと思いますね。

直雇用の正社員だからコミットメントが高くて、外部の人間だからコミットメントが低いということはないと再確認しました。

協働プロのように、外部の人間でもしっかりプロジェクトや事業に想いを持って当たってくれる人材がいる。もはや、社内外の枠で区別してしまうことはあまり意味がないのでは?と最近では感じています。

外部の人材に対して適切に情報を開示し、受け身の姿勢を捨てて素直に向き合うことで、より成果につながる協働ができるようになるのではないでしょうか。

自社の課題を自分たちだけで解決しようとしない───「地方の中小企業の生き残り戦略」

ーー四十万谷さんは、地域企業の方達とコミュニケーションを積極的に取られていると思うのですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。

四十万谷:地域企業の経営がアップデートされて企業がもっと面白くなることが、その地域にとって一番プラスになるのではないかという考えが根底にあります。例えば、どうしても「地元に面白い仕事や企業がないから都会に出る」という選択を取るケースがありますが、面白い取り組みをする企業が地域に増えていけば、地元での就職という選択肢が広がります。

また、地域企業はいろんな団体に所属していることも多く、仲は良いことも多いのですが、それぞれの課題をオープンにして意見をシェアし合う場はそう多くありません。

困っていることを周りに相談できる機会は少ないけれど、みんな不安や困り事を抱えている。それなら、シェアできる情報はシェアして、使えるものは使っていくことで、皆の経営がアップデートされる方がいいと考えているんです。

だから、協働日本についても「こんな仕組みがあるよ」と、経営者の仲間達の選択肢の1つに加わったら良いなという思いで紹介しています。

ーーなるほど。地域の企業がもっと面白くなれば…というお話でしたが、四十万谷さんは、今後地方の中小企業が生き残っていく為の戦略について、どのようにお考えですか?

四十万谷:そうですね。VUCA(ブーカ)とも言われるような、不透明で先行きが見えず、答えのない時代はまだまだこれからも続くと考えていて…その中で自社を取り巻く課題を、自社の人材だけで解決していくというのはかなり難しいと思っています。

だからこそ、自社では育成できないような外部人材と協働し、足りない部分を補いながら、スピード感を持って課題解決をしていくことこそが重要なんじゃないかと。すごくシンプルなんですが、これに尽きると考えています。

ーーたしかに、人材の育成は時間がかかりますものね。

四十万谷:そもそも、自社で協働プロのようなスキルを持った人材を育成しようとしても、育成経験もなければプロが育つような環境も用意できないなど、時間だけの問題ではない側面もあります。

じゃあ、十分にスキルと経験の備わったプロ人材を雇用しようとなっても、十分な給与を支払えるのか?という課題もあるし、そもそもプロを雇ったとしてもフルタイムでコミットしてもらうのか?その必要があるのか?など、中小企業にとってはとても難しいテーマです。

だからこそ、常に人材を抱えておかなくても、熱意を持った外部人材を登用し、「社外CMO」のような立ち位置で迎え、課題によって人選を切り替えながら戦略的に人材を活用していくというのが、これからの中小企業にとっての一つの戦い方になるんじゃないでしょうか。

ーー四十万谷さんにとって協働日本とはどういう存在でしょうか?

四十万谷:あらためて、企業経営にはこれさえやればよくなるという特効薬はないんですよね。悩みの尽きない経営者にとって協働日本は、一緒に悩んで、一緒に歩んでくれる心強い仲間です。

もちろん、協働の中で初めて気づくことも多く、やってみたいこともたくさんある中で、リソースが足りず思った通りにいかないことは多々あるんです。

それでもテーマを変えながらも一緒に伴走を続けて行けているのは、そういった想いを共有できてるからというのがあるのかもしれませんね。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

四十万谷:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


四十万谷 正和 / Masakazu Shijimaya

2002年、金沢大学附属高等学校卒業後、慶應義塾大学経済学部に進学。少林寺拳法にも打ち込む。

2006年、『ハウス食品株式会社』入社。採用・労務・人事制度など、一貫して人事関連に携わる。2017年、『株式会社四十萬谷本舗』入社。2019年、専務取締役に就任。

協働日本事業については こちら

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実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、石川樹脂工業株式会社 専務取締役の石川 勤氏にお越しいただきました。

石川樹脂工業株式会社は、漆器木型の販売をルーツとする、樹脂製の食器雑貨の製造・販売を行う会社です。時代の変化とニーズを常に捉え、樹脂製漆器、欠けない箸、平らなお盆など、新しい技術への挑戦を通じて時代の先端を走り続けてきました。中でも、「1000回落としても割れない・欠けないお皿」のブランド「ARAS」は、Instagramのフォロワー数は10万人超。その勢いを増しています。

素材の面白さを社会に発信する企業であり続けるための挑戦を続けておられる石川樹脂工業株式会社。協働日本との伴走では、今一度経営者のあり方や人材育成について考え、社員個人と会社が共に成長するため、AIチャットツールを活用した新たな取り組みを始めています。

協働プロジェクトに取り組んだことで生まれた変化や得られた学び、実感した会社と社員の成長について、また、今後の想いも語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

ガラスと樹脂を掛け合わせた新素材でできた食器ブランド「ARAS」。先進と伝統の技術が融合して生まれる、新しい食器です。

経営者のメンタリングに始まり、Chat-GPTを活用したDX化にも挑戦。様々な協働プロジェクトの中で一貫して狙うテーマは「経営層を作る」こと

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

石川 勤氏(以下、石川):よろしくお願いします。協働日本との出会いは、石川県の「副業人材活用セミナー」です。知人である、金沢市の発酵食品の老舗、四十萬谷本舗の四十万谷専務からのお誘いがきっかけで参加しました。

ちょうど、割れない・欠けないお皿の新規ブランド「ARAS」の立ち上げという経営の転換期を迎えた後で、より会社として前進するために次は何に取り組もうか、経営者としても悩みを抱えていたタイミングだったので、セミナーから何かヒントを得られるのではないかと考えたんです。そこで協働日本代表の村松さんのお話を聞き、是非一緒に取り組んでいきたいと思い協働を決めました。

ーーどんな点が協働の決め手でしたか?

石川:はじめは「協働」という取り組みの形についてイメージが出来ず、どんなことができるのか少し懐疑的だったんです。

しかしセミナーの中で、村松さんの地域企業への熱い想いと、協働プロと地域企業が双方に相談しながら事業を進めている全国の取り組み事例を聞いているうちに、協働日本のみなさんとなら、一緒に前に進んでいけるかもしれないと思ったことが協働を決めた理由です。

当社では以前にも複業人材、外部人材との取り組み実績があったので、決定してからの導入はスムーズでした。ただし、一番の課題は、先ほど話した通り「次に何に取り組むべきか迷っている」という状態だったので、協働日本さんと取り組むテーマが思いつきませんでした。そこで、協働日本さんには「まずはテーマから相談したい」とお伝えして、取り組みをスタートしました。

ーーなるほど。過去にも複業人材とのお取り組み実績があったんですね。テーマ未定の状態でスタートした取り組みとのことですが、伴走支援がスタートしてからは、具体的にどんなお取り組みをなさっているのでしょうか?

石川:協働がスタートしてからこれまでいくつか変遷があるのですが、最初は「経営層をちゃんと作ろう」というテーマで、協働プロの方々に僕と妻のメンタリングをしていただくことからスタートしました。

中小企業のあるあるなのかもしれませんが、当社も「経営層が薄い」という課題を持っていました。これまでの変革も、基本的に僕自身が考え、手がけてきたものでした。しかし一人で抱えてしまうとどうしてもキャパシティが足りなくなってしまうので、次に繋がっていきません。

その課題感からまずは「経営層を作ろう」というテーマに取り組むことになりました。

メンタリングの中では、僕自身が何を手放していくのか、そして妻も経営者としてどう振る舞っていくのか、経営者思考を何度も壁打ちをさせていただきました。

その後、様々な部署から社員を8名──若手もベテランも半々くらいの割合で選抜して、ワークショップを実施しました。これまでの石川樹脂の歩みや、これからしていくことを社員と一緒になって整理していったんです。

参加者には、自分が会社を経営するとしたら?という視点で考えてもらいました。その場を活用して経営者としての考え方のインプットや共通認識を生み出せたことで、ワークショップ終了後から社員ひとりひとりが会社のことを自分ごとと捉えてくれるようになった実感があるので、これは本当にやってよかったと思います。

ーー社員の皆さんの意識が変化したんですね。こういった経営者のメンタリングや育成のパートはどのくらいの期間なさっていたんですか?

石川:大体4ヶ月ほどお願いしていました。その後はまたテーマをガラッと変えて、当社の弱みであったソフトウェア面について、業務を整理して、新しいシステムの導入や開発など、IT周りの課題の整理整頓を行うことにしました。

協働プロとしては、大西剣之介さん(バリュエンスホールディングス株式会社 執行役員 コーポレート本部長 人事部)、横町暢洋さん(NECソリューションイノベータ(株)シニアマネージャー)を中心にプロジェクトに入っていただきました。

ーー本当にまったく違うテーマですね!まずは経営層を厚くし、次は社員の方の意識変革。次はいよいよ自社のITに関する課題に皆さんで向き合ったのですね。

石川:そうですね。ブランディングやチームビルディングについてはもうある程度しっかりと出来上がっていた組織なので、これまで着手してこられなかった明らかな弱みを強化していくことにしました。先ほどお話ししたワークショップに参加していたメンバーから2名と、僕の3名でDX化による業務改善についてのプロジェクトをスタートしました。

1月にプロジェクトがスタートして程なくAIチャットツールの、Chat-GPTが流行し始めました。3月には新たに新バージョンGPT4もリリースされてChat-GPTを使ってコーディングがさらに容易にできるようになりました。

そこで、実は1月から整理してきたことの優先順位も変わっているのではないか?という意見が出ました。

そこで思い切って4月からは、メンバーを追加して6〜10名で、AIと一緒にアプリ開発をして、週に1つ業務改善アプリを作るプロジェクトに形態を変えたんです。

ーー皆さんご自身でアプリ開発を行うなんてすごいですね。元々プログラムができるなど、ITスキルのとても高い方ばかりだったんでしょうか。

石川:いえ、もちろん多少経験のあるメンバーもいましたが、ほとんどがはじめてという初心者ばかりです。

AIを使うと、できなかったことができるようになるという実感を社員に持ってもらい、実践し、業務改善をしていってほしいという狙いもありました。実際プロジェクトを通じて、Googleフォームで入力した日報を、Googleスプレッドシートとの連携でSlack(ビジネス用メッセージアプリ)に飛ばすアプリや、notion(高性能メモ・ノートアプリ)の議事録を要約してSlackに飛ばすようなアプリなどを社員が自分たちの手で作り上げてくれました。

非接触で在庫管理をする仕組みなど大掛かりな仕組みのDX化にも着手しているところです。

ロボットの導入による業務の自動化など、ハードウェア面はすでに整備されていた。ソフト面から更なる業務効率化に挑む。

経営者には余裕が生まれ、社員には責任感が生まれる。「皆で考える」カルチャーへの変化

ーー様々なプロジェクトを進行してきていらっしゃいますが、実際に協働がスタートしてから感じられた変化はありますか?

石川:はい、色々な変化があります。まず、僕自身がすべての経営課題を一人で抱え込まず、多くのことを社員にもオープンに伝えられるようになったことです。

例えば、給与・評価や働き方改革などの話になると、経営者は自分だけで抱え込んで悩みがちだと思いますが、僕は「皆で考えよう」という形で、社員と一緒に考えるようになりました。

特に働き方改革なんかは、社員それぞれ背景が違うので、全てを叶えようと一人で抱え込むと大変なんですが、「もうそれも皆で考えて、皆がいいと思うんだったらそれでいいんじゃないか」という風に考えるようになったんです。

経営者である僕はこう思うし、社員の皆はこう思う。じゃあ、どこで折り合いつけようかという話をオープンにして、皆で考えていくカルチャーが形成されてきたと思います。

例えば、協働日本さんに月にいくらお支払いしているかなども、プロジェクトに入っている社員にオープンに伝えているんですよ。その費用についてどう思うのか、どう還元して会社として取り戻していくのかなど、自ずと責任感を持って考えるようになっています。

僕自身も一人で抱え込む負担がなくなり、心に余裕が生まれるからこそ他にも考えられることが増えました。僕にも余裕が生まれ、社員の皆にも責任感が生まれ、とても良いバランスになっていると思います。

そういった経営者と社員としてバランスが取れた議論ができるようになってから、会社の経営として何がベストな選択なのか?という視点を社員も理解し始めている感じがしますね。

ーー最初のテーマであった「経営層をちゃんと作る」にも近づいてきている感じがしますね。

石川:まさしく、そうですね。社員の仕事への取り組み意識、マインドセットの変化が起こっていることは本当によかったです。例えばDX化だけやって、皆アプリを作れるようになったとしても、こういった本質的な会社の成長のことを考える視点が備わっていないと、付け焼き刃にしかならないと思うんです。

だから、順を追って少しずつ社員のマインドセットを変えていった上で、DX化など新しいチャレンジを始めたことでうまく繋がったのかなと思っています。

一方で、新たな課題も感じています。簡単な業務改善のDX化が終わってきて、難しいテーマになると「スキルが足りない」という声が上がるようになりました。自分たちで解決していくためには、どうしても学ぶ時間が必要になるけれど、これは業務時間か?ということについても皆で議論しています。

業務外での学びがないと個人としても成長がなく、会社としての成長もないということは皆わかっていながら、「ここからは業務」など明確な線引きが難しいことも同時に理解しています。これ以上は内製ではなく外注すべき点などの見極めも必要だと感じています。

会社からの押し付けにならない形で、かと言ってやる気ややりがいの搾取にならないようなフレキシブルさも残しつつ、個人も会社も成長できる方法を、皆でオープンな議論を通じて検討していっているところです。

AIにはできない、協働日本ならではの「人間らしい」伴走支援がこれからの社会で強みになる

ーー協働の中で印象的なことはありましたか?

石川:協働プロの皆さんから学ばせていただくことが本当に多かったです。大西さんは人事のプロですし、人の良さを引き出す采配や、バランスの良いファシリテーションをしていただきました。例えば、業務改善に対してすごく想いが強いのに、スキルが足りなくてできないと落ち込んでいるようなメンバーがいると、「(コーディング以外にも)あなたにできることがこのプロジェクトではとても重要なので、一緒に頑張りましょう」と声をかけてくださっているのをみて、共感しましたし、勉強にもなりました。

僕が社員に対して、あれこれ話をすると、どうしても上下関係があって業務命令のようになってしまうんですが、外部の人が入ってくださったからこそ、いいバランスが保てていたと思います。

横町さんもITスキルだけでなく、プロジェクト推進の経験がとても豊富で、本当に的確なアドバイスをたくさんくださいました。自分たちだけで調べながら進めようとすると、どこか独りよがりになりがちなアイディアも、きちんと業務改善のプロジェクトとして軌道修正をしてくださるので、皆納得感を持って進めることができました。

ーーありがとうございます。以前から都市人材や、複業人材との取り組みをされていたとのことですが、具体的にいつから複業人材の活用をされていたんですか?

石川:前職を経て石川樹脂に戻ってきてすぐ、6〜7年前から外部人材の登用をスタートしました。大企業ならいろんな専門性を持つ人材確保が可能ですが、中小企業ではなかなか同じようにはいきません。

自社内で賄うことができない分、外部人材や複業人材にその専門性をピンポイントで活かしてもらおうと考えていました。これまでもマーケティングや新卒採用などを複業人材と一緒に進めてきています。

もちろん、こういった取り組みは基本的にオンラインミーティングを中心とするので、手に手を取り合って現場で一緒に取り組むことができないなど、地方の中小企業の方にとっては壁のように感じられる面もあると思います。

とはいえ、特に社員を育成したいときや、会社を大きく変革させたい時というのは、新しい知見や専門性などを取り入れることができる大きなメリットがあるので、絶対に複業人材を活用した方がいいと僕は思っています。

協働日本さんとの取り組みは特に、テーマを決めるところから相談することができ、一緒に取り組んでいけるので、専門性と人材育成どちらも叶えて行くことが出来ると思います。

ーー本日はありがとうございました!最後に、協働日本が今後どうなっていくと思われるか、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

石川:これからは、中途半端な専門性はAIにとって替わってしまう世の中がくるんじゃないかなと考えています。なので、AIにはできない複業人材のスキルや、協働日本ならではの強みが発揮されるようになるのではないかと思います。

AIにはできない人間らしいファシリテーションで人の内面を見抜いてレベル感をあわせたり、会社自体の課題をより真摯に受け止められることが重要だと感じています。

協働日本さんは、伴走期間が半年以上と比較的長期であることもとてもいいなと思っています。長期で一緒にいるからこそ本質的な課題や、AIに見抜けない人の感情などの重要なポイントが見えてくると思います。

僕が村松さんや協働日本のビジョンに共感できる点は、このように「我々との課題に向き合ってくれている」という実感を得られるということです。

AIにはできない伴走支援をこれからもきっと、続けて行ってくれるのではないかと思います。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

石川:こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

石川 勤 / Tsutomu Ishikawaagawa

石川県出身。東京大学工学部卒業後、世界最大の消費財メーカーProcter& Gamble日本支社に入社し、約10年間勤務。主に、経営戦略、経営管理、財務会計などに従事。日本での数年間の経験後、シンガポールに転勤。アジア全体の消臭剤・台所用洗剤の経営戦略に携わる。その後、帰国し日本CFOの右腕として、従事。

“自分の手で、ものづくりをしたい”と一念発起し、現職に就く。現在は経営全般特に新事業・ロボット・AIなどのDXに従事。

協働日本事業については こちら

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STORY:コマニー株式会社 塚本 直之氏 -広報チームから社員全員に波及した「間づくり」への挑戦と熱量-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、コマニー株式会社 取締役 常務執行役員の塚本 直之氏にお越しいただきました。

コマニー株式会社は1961年に設立、国内パーティションのトップメーカーとして開発・設計・製造・施工をワンストップで行っています。現在は、「間」を扱う企業としてドメインを広げ、「間づくりカンパニー」として幸せをカタチにするメーカーへと変化しようとしています。

「パーティション」というとオフィス製品のように感じるかもしれませんが、大型商業施設の内装や、羽田空港のお手洗いの内装にもコマニー社の製品が使われているそうです。

日本人として暮らしていれば、同社の製品に触れずに過ごすことはできないほど、コマニー社はあらゆる「間づくり」に関わっているのだといいます。協働日本との伴走で現在、「間づくりカンパニー」としての更なる一歩を踏み出されています。

協働プロジェクトに取り組んだことによる変化や感想、今後の想いを語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

「稼げる広報」を目指して──新しい広報チームのチャレンジを協働日本と共に。

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

塚本 直之氏(以下、塚本よろしくお願いいたします。

協働日本との出会いは、金沢大学の産学連携協力会に参加した際に、「副業人材に関するセミナー」でお話を伺ったことです。

当社はBtoBのパーティションメーカーとしてここまで事業展開してきましたが、今後は今以上に価値を提供できる企業に昇華する必要があると感じていた中でセミナーを聞き、パラレルに仕事に取り組んでいる「複業」人材との協働という形が、率直に面白いと感じて、ぜひご一緒したいと思いました。

ーー会社に持ち帰られて、検討される際にハードルになった点はありましたか?

塚本:実は、会社としてのハードルは全くありませんでした。直感的に「やりたい!」と考え、まずは私が管轄する部門から取り組みをスタートすることにしたからです。

セミナーでお伺いした事例では、会社の方向性やブランディング、広報など「その企業は、そもそもどんな企業なのか」という部分を今一度振り返って考えるといったものが多く、私の管轄部門である経営企画や広報との親和性をとても強く感じていました。

ちょうどその頃、弊社でもより一層広報活動に力を入れていきたいと考えていたタイミングでもありました。広報といえば、地域の新聞や電柱の看板などに広告を出稿するくらいで、長らくあまり力を入れてこられていませんでした。

近年になってようやく「コマニーという会社をより深く知ってもらおう」と、企業姿勢を伝える広報を始めました。また、ECサイトなどを通じての販売戦略を取る企業も増えていますし、弊社でも広報チームが中心となってECサイトを立ち上げ、ただ伝えるだけじゃない「稼げる広報」を目指そうという指針を作っていました。

そこで協働を通じて「稼げる広報」をキーワードとした広報チームの活動を進めたいと考え、協働日本に依頼しました。

ーーなるほど、ご相談を頂いたタイミングで協働の方向性は、ある程度決まっていたんですね。伴走支援がスタートしてからは、具体的にどんなお取り組みをなさっているかお聞きできますか?

塚本:はい。週に1度のオンラインミーティングを通じて、広報チームの取り組みに伴走していただいています。協働日本からは、CSOの藤村昌平さんと、協働プロの遅野井宏さんのお二人にプロジェクトに加わっていただきました。

藤村さんは(株)ライオンで新規事業を推進されていますし、遅野井さんはオフィス環境改善やオフィス家具などの業界での経験も豊富な方でしたので、安心してプロジェクトのリードをお任せできました。

当社からは、経営企画部の広報チーム4名が参加する形で、合計6名が中心となって議論を重ねていきました。

協働が始まる半年前にチーム方針として決めた「稼げる広報」というテーマですが、チームメンバーたちはやはりどうやって従来の広報から「稼げる広報」に変わっていけばいいのか悩んでいました。協働日本による伴走がスタートしたことで、コマニーの掲げる「間づくり」とは何か?という根本的な部分に立ち返ることができ、より深く考えるきっかけになったと思っています。

コマニーの広報チームと協働日本メンバーの定例オンラインミーティングの様子

今一番必要なのは、コマニーの考える「間づくり」をユーザーに届けること。「間づくり研究所」の誕生へ

ーー実際に協働がスタートしてから感じられたチームの変化などはありますか?

塚本:はい。当初私たちは「稼ぐ広報」としてすべきこととして、ECサイトの立ち上げなどを通じて、具体的にB2Cへの展開や、ユーザーとの接点を増やす施策を打たなければならないと考えていたんです。

なので、伴走していただくテーマも、はじめはそういったEC展開や戦略をイメージしていたんです。しかし、協働プロの皆さまとの対話を重ねるたび、私たちが進めている「間づくりカンパニー」としての取り組みを加速させていくことが大事だと気づいて、ECサイトの展開強化ではなく、「間づくりカンパニー」としての取り組みと言語化に集中するようにしました。

そこで生まれた、目に見える変化のひとつとして、「間づくり研究所」の立ち上げが挙げられます。

コマニーが運営する、「間づくり」を探求し、実践するための研究所

ーー「間づくり」というのは、パーティションをはじめとする空間づくりの製品を作られている御社らしいテーマですね。

塚本:そうですね。製品を活用した「空間づくり」、よりもさらに一歩踏み込んだ「間づくり」を考えているんです。「間」という言葉には、時間、間隔、句切り、空間、部屋、余暇、チャンスや運など、実に様々な意味が含まれていますよね。当社では、「間」とは二つ以上の要素が生成する関係性であると捉えているんです。

「間づくり」とは「人間」を中心に、「時間」や「空間」そして「手間」を考え、組み合わせていくことで「すぐれた間を生成すること」と定義しています。

そして、研究所での活動を通じて「すぐれた間とは何か」を追求し、実践を積み上げることで、「間づくり」を社会に実装していきたいと考えています。

ーーなるほど。協働日本への依頼当初に描いていたECの展開イメージから、大きな転換があったんですね。「間づくりカンパニー」としての活動やブランディングが重要だと気づいたきっかけは、どんなところにあったんでしょうか?

塚本:初期の段階で、藤村さんと遅野井さんから「結局何がしたいのか?」「ECサイトで売れることがコマニーにとってのゴールなのか?」という問いをいただいたことがきっかけです。

その言葉にはっとして、あらためて皆で考えていった結果、「営業が24時間売り歩いていなくても、弊社の製品を必要としている人が声をかけてくれるようになりたい」という、やりたいこと、目指したいものが見えてきたんです。

それであれば、今すべきことはECサイトで製品を売ることではなくて、もっとコマニーの「間づくり」について知っていただくことではないかという結論に至りました。

また、これまでは弊社の製品を代理店に販売してもらうことが圧倒的に多かったので、ユーザーの声を聞く機会が十分にとれていなかったんです。もっとユーザーとの接点を増やしエンゲージメントを高めていきたいという思いにも気付くことができました。

つまり、「稼げる広報」とは何かと考えていくと、「ユーザーとのタッチポイントを作ること」ではないか?コマニーにとって本当に必要なことは「間づくり」の姿勢をユーザーに届けていき、知ってもらうことではないか?と思い至ったんです。

ーーそして生まれたのが「間づくり研究所」だったと。

塚本:はい。企業姿勢をもっと見せていこう、という方針が見えてきても、それは風が吹けば桶屋が儲かるの「風を吹かせる」の部分のようなもので…ただひたすらに発信をしていってもどこでどのように売れるかわからないわけです。

そこで、この「間づくり」の発信はどういう活動に落とし込めばいいか?ということを考えることに、かなり時間をかけました。その中で外部に発信するためのHPを作成して、活動を展開していこうということになって「間づくり研究所」のHPが完成しました。


活動の4つの柱「IDEA」を掲げるというアイディアも、協働の中から生まれたものです。

「間づくり研究所」の活動 4つの柱(間づくり研究所 パンフレットより)

塚本:具体的な活動の例としては、2023年4月下旬に開催された「オルガテック東京2023」という家具の見本市のイベントで、従来のように「コマニー(株)」としてではなく、「間づくり研究所」として「間」を体感いただくブース出展したことが挙げられます。

研究所の設立からは約半月程度でしたが、見本市でブースにお越しになったお客様は3,500名に上り、そのうちアンケートにご回答いただいた方の10%以上が、コマニーが「間づくり」を打ち出していることをご存じという嬉しい結果も見られました。また、ブースの中で一番良かったこと・共感したことについても「間づくり」という考え方だと回答いただいた方が最も多かったんです。

これは、伴走いただいたことによって、どのようにすれば企業姿勢を打ち出していけるかの解像度が上がった結果生まれた手応えだったり、スピード感だったと思っています。

特にこのスピード感は社内への展開へも影響していると思っていて、現在では全社としてこの「間づくり」をしていくという一体感が出てきました。

今では「間づくり」が社内の共通語になっています。「研究テーマとしてこんなことを取り扱いたいというアイディアがあれば、連絡を」と全社に発信したところ、発信後2〜3週間ですでに7、8件の研究テーマの候補が寄せられていて、順番に発案者に話を聞いている状態です。

ーー自発的にそういったテーマ候補が寄せられているというのはすごいですね。

塚本:そうですね。社員全員が「間づくり」の当事者として事業を作れる可能性がある、という状況になっていると感じます。

例えば、「営業所移転に関連して自分たちの「間づくり」を提案しやすい営業所づくりをしたい」という提案をはじめとして、「会社のトイレの中にトイレットペーパーがあるのは当たり前だが生理用品があるのも当たり前では?男性用トイレにもサニタリーボックスを置いてみては?」など社会的に課題になっていることへのチャレンジも寄せられました。

そして「社内の情報インフラを変化させることで、年代を超えて社内を活性化させていくことはできないか?」など、人の関係性という「間」の概念へのチャレンジなど、寄せられたテーマの内容は、本当に多岐にわたっています。

もしも「パーティションメーカーとしての新事業アイディア」を募っていたら、どれも出てこない切り口やテーマだったと思います。

この「間づくり」という広く、それでいて腹落ち感のあるテーマだからこそ、全社的な議論としてさまざまな部門からの知見やアイディアが出てきている──部門の垣根を超えるきっかけになったと思います。

このように、具体的な成果はまだまだこれからだと思ってはいますが、協働日本との伴走を通じて、成果につながっていく変化や実感を感じています。

ありがたいくらい、答えは教えてもらえない。問いの連続と、複業人材の知見から、社員の目の色が変わる。

ーー都市人材や、複業人材との取り組み自体には以前からご興味はおありでしたか?

塚本:正直なところ、副業という言葉のイメージからは当初、若手がいろんな経験を積むために行うキャリアアップのイメージしかありませんでした。

エキスパート人材がこれまでの経験を生かして副業(複業)をすることで、世の中全体へのインパクトを大きくしていくという発想がなかったので、セミナーでこの「協働」の形の話を聞いた時には、目からうろこが落ちた感覚でした。

こういった取り組みは広がっていくべきだと思いますし、自社内の他部門はもちろん、困っている同業の方などにもおすすめをしたいとも思っています。

自社だけでは思考の限界がある場合、コンサルのような形ではなく一緒に悩んで伴走してくれるエキスパート人材がいるというのは本当に心強いです。様々な経験を持っている人たちが、違う視点を持っているからこそ、我々のやっていることに率直な問いを立てていただいたり、ご自身の経験からの事例を教えていただける。そこから、それをどうやって自社の課題に活かして行けばいいだろう、と次を考えるきっかけをもらえています。

また、議論を進める際にも、相手にお任せするのではなく主体は常に自社にあるところがとても良かったと思っています。本当にありがたいくらい、簡単に「答え」は出てこなくて、どんどん新たな「問い」が出てくる、苦労の連続でした(笑)。

メンバー一同、なかなか答えにたどり着かず苦しみましたが、だからこそある程度答えが見えてきた時に、手応えを感じました。一方的に教わるだけではなく、こうやって自分たちで考える経験ができることが、自社人材の成長機会にも繋がるので本当に良かったと思っています。

ーーありがとうございます。協働の中で何か印象的な出来事はありましたか?

塚本:はい。ずっとやりたいなど考えていてイメージはあったけれど、形にならずにモヤモヤしていたことがあったんです。

そんな時、協働日本の皆さんに弊社へご来社いただき、協働プロの遅野井さんのご経験をお聞きした際に、一気に霧が晴れたように、自分のやりたいことはこういう形にすればできるかもしれない!と感じたんです。

そう感じたのは自分だけではなく、広報チームのリーダーも、その話を聞いた時に一気に目の色を変えて「自分のやりたいことはこれだったかもしれない」と言ってくれたんです。そうだ!自分たちのやりたいことはこれだ!と一同盛り上がりました。

その後遅野井さんも含め、皆でお寿司を食べに行ったんですが、その時の味はいまも忘れられないですね(笑)。

結果的にこの「間づくり」という活動は、広報チームだけではない、全社1,400人全員で動いているという今の一体感、会社のエネルギーに繋がっていますが、協働日本とのディスカッションがなければ実現できなかったことだと思います。

※コマニーさんの変化の話については、プロジェクトに参画した協働プロの遅野井氏のインタビューも是非ご覧ください。

ーー最後に、協働日本へのエールも込めてメッセージをお願いします。

塚本:協働日本のような存在は、中小・中堅企業がブレイクスルーするきっかけになってくれると思います。

日本のほとんどは中小・中堅企業です。協働日本も今後、ますます多くの可能性をひらく存在になると思います。今後ともよろしくお願いいたします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

塚本:ありがとうございました。

塚本 直之 Naoyuki Tsukamoto

コマニー株式会社 取締役 常務執行役員

1981年石川県生まれ。成蹊大学経済学部経営学科卒。

スタンレー電気㈱、トヨタ自動車㈱出向を経て、2010年コマニー㈱へ戻る。
コマニーが目指す「関わるすべての人の幸福に貢献する経営」を実現するため、同社の経営にSDGsを実装したサステナビリティ経営を推進し、2018年にはSDGsビジネスアワード グローバルイノベーター賞を受賞。
現在は、自社の間づくり研究所の所長として間づくりの浸透を推進している。

コマニー株式会社

間づくり研究所

協働日本事業については こちら

本プロジェクトに参画する協働プロの過去インタビューはこちら

VOICE:協働日本CSO 藤村昌平氏 -「事業づくり」と「人づくり」の両輪-

VOICE:協働日本 遅野井 宏氏 – パラレルキャリアが働く人のセーフティネットになる時代へ –