投稿

STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -3年間で売上12倍の躍進。業態変化から組織改革まで、協働の真価を発揮-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社キラガ  常務取締役の太田 喜貴氏にお越しいただきました。

株式会社キラガは、創業40年・宝飾品の製造、加工、卸売、小売を行っている総合宝飾品メーカーです。静岡県の富士山の麓にある豊かな自然に囲まれたエリアに、こだわりのジュエリーと開放的な庭を備えた宝石工房を構えています。

コロナ禍で苦境に立たされ、現状打破と改革を目指し始めた頃に参加した講演会をきっかけに、協働日本がマーケティング戦略から人事戦略まで幅広く伴走させていただき早3年目。数々の取り組みを経てキラガの組織が大きく変わってきたといいます。

インタビューを通じて、協働プロジェクトを続けてきたことによる成果、変化や得られた学び、これからの期待と想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

強みの言語化と、卸売から小売への業態転換、ライブコマースへの挑戦に2年間取り組んだ。

ーー本日はよろしくお願いいたします。御社は協働日本とのお取り組みも3年目になるということで、協働をスタートしたきっかけからここまでの歩みについてお聞きできますでしょうか?

太田 喜貴氏(以下、太田):はい、よろしくお願いいたします。

元々は長く商社に勤めていたのですが、コロナ禍で宝飾品業界全体が業績不信に苦しんでいる状況を両親から聞いたことで、2021年に父が創業した株式会社キラガへ戻り常務に就任しました。

当時、売上もコロナ前と比較して3〜4割減という状況が続いており、どうにか現状を打破しなければという危機感を抱えていました。そんな中、地元の中小企業家同友会の会合で協働日本さんの講演を拝見したことが最初の出会いでした。

ぜひ協働日本さんと取り組みをしたいと考え、2022年4月から自社の理解とマーケティング面での課題を整理するための取り組みをスタートさせました。

初年度はマーケティング戦略、ブランディング戦略を丁寧に言語化。2年目はマーケティング戦略だけでなく、事業全体の方向性、人事戦略まで含めてかなり広いテーマの相談をさせていただくようになりました。

ーーありがとうございます。1〜2年目のお取り組みでの成果や変化についてもお聞きできますか?

太田:はい。宝飾品の卸売りを主業としていたのですが、それだけでは粗利率が上がりづらく、コロナ禍の状況も鑑みて、エンドユーザーへの直販に販路を広げていく方針転換を図ることにしたんです。そこで、協働の初めには「直販の売上を上げるため」の壁打ちをしていただきました。約半年間をかけて、自社の強みの理解、コンセプトの策定、店づくりの強化など、協働プロの皆さんと一緒に議論を重ねたことで、当社にしかない強み「お友達と来てジュエリーで遊ぶことができる空間」を言語化することができました。

そもそもうちのお店では、お客様がいらっしゃったらまず靴を脱いでスリッパに履き替えて頂く。そうやってリラックスした状態で、商品に自由に触って、好きなだけ試着をして頂けるようにしていました。
お買い求めいただく際にもし価格についてのご希望があれば、お客様には「お値段についてもぜひ、ご相談ください」と伝えています。こちらからそのようにお伝えすることで、お客様にとっても安心して商品をお買い求めいただける環境をつくっています。無理なときは無理ですと率直にお伝えしますので(笑)、ぜひお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

こうした自由な空間、「ジュエリーで遊ぶ」という体験自体に価値があるのだという気づきは、振り返ると1つの軸になったように思います。

店頭でのコミュニケーションを改善したことも成果に繋がっていますが、改めて言語化できたキラガの強みである「リラックスした状態でお友達とジュエリーを楽しむ」をWeb上でも展開しています。SNS経由でのライブコマースでの販売に力を入れるようになり、高額商品もライブで購入していただけるような機会が増えたんです。

富士山の麓に構えた店舗。リラックスしてジュエリーを楽しめる空間づくりを心がけているという
ーーなるほど。卸中心の業態から、直販、そしてSNSとライブコマースへと変わっていったのですね。

太田:はい。そして協働3年目の今年は、採用や組織づくり、システム面、売上につながるマーケティング施策やSNS施策など、さらに幅広い内容で壁打ちをしていただいています。すべきことややりたいことがたくさんあるので、優先順位決めからどう進めていけばいいかまで協働プロの皆さんと相談して進めていっています。現在伴走支援に入ってくださっている協働プロは、向縄一太さん(花王(株)シニアマネージャー)、和地大和さん、田中紋子さんの3名です。途中メンバーの入れ替えもありましたが、継続して取り組みを進めてきたからこそ、壁打ちはとてもスムーズになってきたように感じています。過去の状況や、変化も把握していただいているので、今何が起こっていて何が課題なのかという部分も皆さんの理解が早く、とても助かっています。

強みである「ジュエリーを楽しむ」エンターテイメント性を追求する配信チームが発足。ライブコマースの躍進で小売部門の売上12倍に

ーー長くお取り組みさせていただいているからこその阿吽の呼吸なのかもしれませんね!そレだけ長期的にお取り組みいただいて、実際の事業としての成果はいかがでしょうか?

太田:おかげさまで、小売部門におけるライブコマース分野の売上が非常に順調です。協働がスタートする前は小売部門の月の売上が約200万円ほどだったのですが、現在では約2,400万円と12倍までに大きくなっているんです。

ーー一部門の売上とはいえ、12倍というのはインパクトが大きいですね!

もちろん、当初主業であった卸売を縮小しているものの、会社全体の売上でいうと当初は2億2,000万円ほど、昨年度は2億8,000万円、今期は3億円の着地見込みと増加しており、次のフェーズとしては年商5億円規模を描いて成長していけるようになりました。

ーーなぜそこまでライブコマース分野が成長したのかについても具体的にお伺いできますか?

太田:はい。初めはInstagramのLIVE配信(インスタライブ)からスタートし、視聴者がリアルタイムにコメントで見たい宝石やジュエリーの種類をリクエスト、それに応える形で商品を紹介していくスタイルでライブコマースを行っています。

協働プロの皆さんと相談する中で、InstagramだけでなくTikTokにも裾野を広げたことも功を奏しました。TikTokでのライブコマースは、上手くハマるか予測できなかったのですが、費用感的にもやってみて良いのでは?と協働プロに後押ししていただいたことで結果的に成果がでた取り組みです。インスタライブでは視聴者がフォロワーに限られてしまうのですが、TikTokでは配信中にもどんどん新規のお客様も入って来られるという違いがあったんです。今ではTikTokでは同時接続数も100名を超え、1ヶ月の売上も1,500万円オーバーという勢いです。

キラガのTikTok。配信の度、新規の視聴者が増えている
ーーすごいですね!先ほども「ジュエリーで遊ぶ・楽しむ」というキラガならではの強みをWebでも体験できるようにとおっしゃられていましたが、ライブ配信を楽しむという点とも相性がいいのかもしれませんね。

太田:そうですね。昨年度までは私自身が配信を担当していたのですが、今年度はライブ配信に携わる人員について採用を強化し、ライブ体制のためにチームを作るようになったんです。私が配信すると、どうしても普段の接客の延長のような形になってしまっていたのですが、個人での配信経験のある方を新たに採用することで、配信の中でお客様を飽きさせない構成、エンターテイメント性のあるやりとりなど、ライブ配信としてのクオリティも追求できるようになってきました。

メンバー主体の配信形態に変わってから配信頻度が上がり長時間配信が可能になった点も、売上に大きく貢献していると思います。

お客様からも、「ライブで見るよりも実物の方が綺麗」「もっと早くキラガと出会いたかった」というような嬉しいお声をいただいています。一方、販売数が増えたことにより、商品到着時のトラブルが出てきているのも事実です。配送トラブルなどコントロールできないものもありますが、検品強化やサポート体制を手厚く行っていきたいと考えています。

どうしても、ジュエリーは使っていくうちに不具合が出てくるものです。販売数が急激に増えたことでサポートに対する課題も出てきてはいますが、当社でご購入いただいたお客様には、時にメンテナンスをしながらもジュエリーを長く使ってもらいたいという想いで日々改善を続けています。

ーーぴったりの採用も売上貢献に繋がっているのですね。人事戦略の面も協働プロと壁打ちを続けているとのことでした。

太田:はい。まず、採用面においては、初め大手の求人サイトで大型の広告を打つなど試していましたが、なかなか上手くいかなかったんです。そこで、協働プロと相談して求人サイトの運用についても方針を見直し、運用を外注化することができました。それにより広告に頼るのではなく、募集記事を細やかに回しながら求人募集をかける方針に変えたんです。

求人サイトでの広告は月額50万程度かかっていたのに対し、後者の運用では1/5の10万円ほどに抑えられています。大手求人サイトでは、当然大手企業も同様に広告費を掛けていて競合になってしまうため、多くの人にみていただくことが難しい面がありましたが、募集記事を細かく更新するのは、SNSの運用やSEO対策に似ており、運用を続けるほど多くの人にみていただけるようになるため当社にとっては費用対効果が高い結果になりました。

ーー効率的な採用戦略が取れるようになったんですね。

太田:採用だけでなく、社内のリソースの活用や評価制度についても相談に乗っていただいています。例えば、バックオフィス業務の一部の外注化も進めていったことで負担を最低限に抑え、急に増えた受注に対してもパンクせずに対応することができています。

また、ライブ配信の回数が増え配信時間も長くなっている中でも、メンバーは「もっと働きたい」と言ってくれているんです。自分の成長機会だと捉え、前向きに挑戦しようというメンバーが多くなってきている実感があり、それに伴って待遇面のアップデートも意識しており、残業代はもちろん、実績を出せば手当も出るし、休みの取りやすさなど常に工夫していっています。一所懸命やって成果出した人がきちんと評価されるようになるよう、評価制度なども改めて見直しています。

私がキラガに戻ってからほとんどのスタッフが入れ替わり、新しい会社、第二創業期のような活気ある雰囲気になりました。今のキラガは、新しいことに挑戦したい方にぴったりの会社になっていると思います。

さらに次のステップへの挑戦。課題や優先度の整理に、プロ人材との壁打ちは有用。

ーーありがとうございます。長く協働を続けてくださっているからこそ、売上の変化など数字で見える成果だけでなく、組織自体の変革も実を結んでいっているようでとても嬉しく思います。次に挑戦したいことについても教えていただけますか?

太田:はい。今後やりたいことは3つあります。1つはライブの規模をもっと大きくしていきたいということです。人をもっと増やし、複数アカウントの運用やクオリティの更なる向上を目指したいです。

2つ目は提携パートナーとのライブ配信の実施です。これまでは卸売で、宝石の小売店など店舗にジュエリーを卸していましたが、今後は異業種や個人の方にも卸し販売を行い、その方達とライブ配信でエンドユーザーとなるお客様に商品をみていただけるようにできたらと考えています。

3つ目は海外のお客様への直販取引の開始です。すでに中国のSNSを使い始めるなど、反応を探っている状況ですが、新しいチャレンジとして向き合っていっています。まだまだやりたいことがたくさんあるので、協働プロの皆さんと相談しながら進めていけたらと思っています。

ーーそれでは最後に、協働日本へのエールも込めて一言メッセージをお願いします。

太田:大手企業で成果を出しているプロ人材と壁打ちができて、自分がどう動けばいいか、優先度に迷う時にアドバイスをいただけることに本当に感謝しています。

新しいことに挑戦したいが、迷っているような人には本当におすすめできるサービスだと思っています。協働日本のクライアントの多くはプロジェクトごとに伴走支援が入られていると伺っていますが、私のように広い範囲に悩みがある、課題が多くて整理したいという方にもおすすめできると思っています。

これからもどうぞ、よろしくお願いします。

ーー本日はインタビューへのご協力、ありがとうございました。

太田:ありがとうございました!

太田 喜貴 / Yoshiki Ota

株式会社キラガ 常務取締役

2012年、北海道大学工学部を卒業後、豊田通商株式会社に入社。主に自動車業界を担当し、オフィスITシステムの全世界展開や、中国駐在を経験し中国自動車製造ラインのシステム立ち上げなどのプロジェクトに従事。
2021年より、父が創業者である株式会社キラガに入社。常務取締役に就任。管理部門、小売部門の統括を行う。

株式会社キラガ
https://rings-kiraga.com/

協働日本事業については こちら

関連記事

1〜2年目のキラガのお取組についてはこちらもぜひご覧ください。
STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -「お友達とジュエリーで遊べる宝石店」協働日本との壁打ちで気づいた強みを活かして売上200%に増加–


STORY:株式会社キラガ 太田 喜貴氏 -「お友達とジュエリーで遊べる宝石店」協働日本との壁打ちで気づいた強みを活かして売上200%に増加-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社キラガ  常務取締役の太田 喜貴氏にお越しいただきました。

株式会社キラガは、創業40年・宝飾品の製造、加工、卸売、小売を行っている総合宝飾品メーカーです。静岡県の富士山の麓にある豊かな自然に囲まれたエリアに、こだわりのジュエリーと開放的な庭を備えた宝石工房を構えています。

私たちの生活に豊かな彩りを与えてくれる宝飾品ですが、コロナ禍で苦境に立たされることに。そんな中、地元の同友会での講演会をきっかけに、協働日本がマーケティング戦略から、現在では事業全体の方向性策定やIT導入、採用試作まで幅広く伴走させて頂くことになりました。

インタビューを通じて、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や得られた学び、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・小田川菜津子)

(左)常務取締役 太田喜貴氏 (右)代表取締役社長 太田喜克氏

コロナ禍の2021年、苦境に立たされたジュエリー業界へ

ーー本日はよろしくお願いいたします!まずは協働日本との取り組みがスタートしたきっかけを教えていただけますか?

太田 喜貴氏(以下、太田氏):

よろしくお願いします。もともとは長く商社に勤めてIT分野でB to Bビジネスに関わっていたのですが、コロナ禍で人と会う機会が減り宝飾品業界全体が業績不信に苦しんでいる状況を両親から聞き、父が創業した株式会社キラガへ、約2年前の2021年に戻り常務に就任しました。

やはり課題は多く、売上も3割、4割減のような状況が続きどうにか現状を打破しなければという危機感を抱えていました。

そんなある日、地元の同友会の会合で協働日本さんの講演を拝見したことが、協働日本さんとの最初の出会いでした。

講演後にあらためて時間をとって、経営における現状の危機感を伝えつつ、協働日本さんの協働という支援体制を理解しました。現状を打破していくべく、ぜひ協働日本さんと取り組みをしたいと考え、まずは自社の理解とマーケティング面での課題を整理したく、まずはそちらを一緒に進めていくことから、取り組みをスタートさせました。

ーーなるほど。きっかけについてよく分かりました。太田さんは、もともとIT分野でのご経験が長かったとのことで、当時、ジュエリー業界に飛び込んでみて驚いた点や特徴などはありましたか?

太田氏:

まず驚いたのが、お客様も企業側も高齢の方が予想以上に多かったことですね。分かっていたことではあったのですが、お客様は60歳以上の方が多く、関わる取引先企業もメールではなくFAXや手書きの伝票を求められることが多いです。

自分はITの業界でB to Bをやってきた人間なので、最初は勝手の違いに戸惑うことも多かったですが、今は掛け算の発想で前職の経験も活かしてもっとジュエリー業界にITのやり方を持ち込んでいけたらな、と思っています。保守的な部分が多い業界ですが、柔軟な発想で楽しみながら、「高い、ダサい、怪しい」なんて思われがちなジュエリー業界を変えていきたいと思っています。

色々と考えている仕掛けはたくさんあるのですが、今はほんと時間が足りないといった状況ですね。

ーーお話をお聞きしていて、業界を変えていきたいという熱い想いを感じます!続いて現在、協働日本と進めている協働プロジェクトについて、どういったお取り組みをされているのか教えて頂けますか。

太田氏:

2022年4月から協働プロの方々と一緒にプロジェクトを始めさせていただいて、現在は取り組みを始めて2年目になります。

初年度はマーケッターの枦木 優希さんも入ってマーケティング戦略、ブランディング戦略を丁寧に言語化していきました。2年目の現在は向縄さん、和地大和さん、田中紋子さんの3名体制で、当社側は私の1名が参加して4名の協働チームで、マーケティング戦略や事業全体の方向性、人事施策まで含めて週に1回壁打ちをおこなっています。

エンドユーザー様への直販へと事業を拡げるため、自社の強みの整理や競合との比較、どのようにして認知から購入までつなげていくかなどマーケティング戦略から始まり、それがひと段落したタイミングからは、事業全体の方向性やIT、人事施策まで幅広く一緒に考えていただいています。

他の企業様の事例も読ませて頂きましたが、プロジェクト単位でのお取り組みが多い中、当社はかなり広いテーマを一緒に議論させていただいている印象です。

協働プロとのミーティングの様子

試行錯誤の中で磨いた唯一無二の強みで売上高200%ベースへ

ーー協働日本との取り組みの中で、どのような変化が事業(企業)に生まれましたか?

太田氏:

これまで当社は宝飾品の卸売りを主業にやってきたのですが、やはりそれだけだと粗利率が上がらない、コロナ禍の状況もあってこれだけだとこの先やっていけないかもしれないという危機感から、エンドユーザーへの直販に販路を広げていこうと、まずは「いかに直販の売上を上げるか」の壁打ちをとにかくやらせてもらいました。

約半年間をかけて、自社の強みの理解、コンセプトの策定、店づくりの強化など、協働プロの皆さんと一緒に、「ああでもない、こうでもない」ととにかく議論を重ねたことで、当社にしかない強みを言語化することができたと思います。

うちは街中にあるようなショップではなく、豊かな自然に囲まれた富士山の麓に工房を構えているので、まずはどうやって出歩く機会が少なくなったお客様に工房まで足を運んでもらうか、が重要なポイントになります。

人づてで紹介して頂くといった集客施策をやったり、訪問販売を始めてみたり、どれも一定の成果と手ごたえは感じたものの、抜本的に売上を伸ばすことには繋がらなかった。

そこで気づいたのが、「自分たちから見た強みは理解しているけれど、お客様から見たときの当社の魅力をきちんと理解していないのではないか?」ということです。

そこで、お得意様にアンケートを取るなどヒアリングをしたところ、当社の、特に店舗の強みは「お友達と来てジュエリーで遊ぶことができる空間」があるということが分かりました。

ーー凄く魅力的なキャッチコピーですね。それは、お客様や協働日本との対話の中で生まれたのでしょうか。

太田氏:

はい。そもそもうちのお店では、お客様がいらっしゃったらまず靴を脱いでスリッパに履き替えて頂く。そうやってリラックスした状態で、商品に自由に触って、好きなだけ試着をして頂ける。

お買い求めいただく際にもし価格についてのご希望があれば、お客様には「お値段についてもぜひ、ご相談ください」と伝えています。こちらからそのようにお伝えすることで、お客様にとっても安心して商品をお買い求めいただける環境をつくっています。無理なときは無理ですと率直にお伝えしますので(笑)、ぜひお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

こうした自由な空間、「ジュエリーで遊ぶ」という体験自体に価値があるのだと、お客様から教えて頂きましたし、そのきっかけが生まれたのはやはり協働日本さんとの議論があったからこそですね。

富士山の麓に構えた店舗。リラックスしてジュエリーを楽しめる空間づくりを心がけているという
ーーその1年目の取り組みを経て、現在売上などの状況はどのように変わりましたでしょうか。

太田氏:

おかげさまで、協働が始まってから売上金額は200%達成ベースで成長しています。

当社の魅力をしっかりと言語化し、店頭でのコミュニケーションを改善したことも成果に繋がっていますが、発見したキラガの強みである「リラックスした状態でお友達とジュエリーを楽しむ」をWeb上でも展開しています。

実は、直販での試行錯誤を経て、現在はSNS経由でのライブコマースでの販売に力を入れており、高額商品もライブで購入していただけるような機会が増えました。

これは当社のスタッフのアイデアで始めてみたのですが、まずはライブコマースを頑張っている他企業様の配信にゲストという形で出演させて頂きノウハウを身に着けさせていただきました。

今では公式LINE、YouTube、Instagramなど各SNSで自社アカウントの運用もおこなっています。どれも私自身が出演しているので、「私の稼働量=売上増」のような状況になっているので、それはこれから打破していかなければと思っていますが。

経営者のメンタリティで伴走してくれる協働日本は、思考と行動の精度を上げてくれる良き相談相手

ーー現在、貴社に関わっている協働プロ協働サポーターの印象をお聞かせください。特に心に残っているエピソードなどがあれば教えてください。

太田氏:

いつも丁寧に率直に疑問点や意見を言ってくださっています。経営をしている中で急いで進めないと成果が出ないと焦ってしまう中、「ここが整理できないと先に進めない」とストップをかけてくれるので、その都度立ち止まってしっかりと考えることができる。

結果として、その後の活動の進み具合が良くなったと思います。経営面も含めて、立場上なかなか社内には相談できる相手がいないので、協働日本の皆さんと話すことで自問自答するきっかけにもなるのが嬉しいです。

あと、実は一番助かっているのは、伴走を経営者のメンタリティをもって柔軟に伴走してくれる姿勢ですね。

先ほど話したライブコマースなどの出演もあり昼間に時間を取るのが難しく、協働プロさんとの打ち合わせが始まるのは大体夜遅くからのスタートになってしまうことも多いです。私が単独でプロジェクトに参加しているのも、この時間がネックとなり当社社員の参加が難しいという点もあるのですが、そんな遅い時間からの打ち合わせでも、複業という形で参画する協働プロの皆さんに柔軟に対応頂けているというのが本当に有難いです。

打ち合わせでは時々、協働プロの皆さんから「太田さんの行動量は凄いですが、一日中働いていたら身体を壊してしまいますよ」とご指摘を頂くことも(笑)

一日中働くようなハードワークの日々の中でも、協働プロのみなさんと話すことで、私自身の行動の結果の精度を上げてもらっている感覚があります。おかげさまで、やるべきことの優先度づけがスムーズにできています。

ーーちなみに、以前から都市人材や複業人材との取り組み自体には以前から興味はありましたか?

太田氏:

複業人材との取り組みには興味があり、SNSの運用などの単発作業で複業人材を活用することはこれまでもありましたが、この取り組みのように複雑な課題に長期に取り組むことは初めてです。

今回しみじみと思うのは、当社のような業界、特に中小企業では、他商材に精通しているマーケティングのプロを自社で採用・育成することが難しく、たとえ採用できたとしてもマーケティング予算などの問題もあり、その方のスペックをフルに活用して頂くことは難しいですよね。

他業界や他製品の事例を踏まえて、議論してくれる人材と出会えるのは複業人材の強みであり、「現実的な費用負担」の面からも企業にとって大きなメリットがあると感じています。

ーーこういった複業人材との取り組みは今後、広がっていくと思いますか?

太田氏:

今後世の中としてもますます広がっていくと思いますね。自社人材やノウハウだけでは時代の流れについていけなくなることに危機感を覚えたとき、現実的な選択肢の一つになってくるのではないでしょうか。

ーーこれから協働日本はどうなっていくと思いますか?エールも兼ねてメッセージをいただけると嬉しいです。

太田氏:

今後、もっと実績が重なることでさらに広がっていくと思います。

一方で、事業の内容は短期成果がでるものではないため、良さを理解してもらうための啓蒙活動や実際に伴走支援を受けた人が、協働日本の良さをうまく説明できるサポートが必要だと思います。

ーーまさにそうで、この記事を通じてぜひ多くの皆様に協働日本の取り組みを知って頂ければと思っております。本日はお時間を頂きありがとうございました!

太田氏:

この協働という形が広がることで地方の中小企業の動きが活発になると嬉しいなと思いますし、私も周りに良さを伝えたいと思えるサービスです。

引き続きよろしくお願いいたします!

 太田 喜貴 / Yoshiki Ota

株式会社キラガ 常務取締役

2012年、北海道大学工学部を卒業後、豊田通商株式会社に入社。主に自動車業界を担当し、オフィスITシステムの全世界展開や、中国駐在を経験し中国自動車製造ラインのシステム立ち上げなどのプロジェクトに従事。
2021年より、父が創業者である株式会社キラガに入社。常務取締役に就任。管理部門、小売部門の統括を行う。

株式会社キラガ
https://rings-kiraga.com/

協働日本事業については こちら

関連記事

VOICE:協働日本 向縄一太氏 – 「浪漫」と「算盤」で地域を変える –

VOICE:協働日本 枦木優希氏 -本質的な「価値」を言語化し、歴史ある老舗企業の未来に貢献していく-