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STORY:株式会社1129 大隣 佳太氏 – “赤身肉の旨さ”を広める挑戦。経産牛のブランド化で市場を切り拓き、前年比5倍以上の成果を生んだ。-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。


協働日本は、鹿児島県および鹿児島産業支援センターの令和6年度の「新産業創出ネットワーク事業」を受託しており、取り組み企業数社をお招きし、報告会を行いました。
当日は取り組み企業の一社、株式会社1129の代表取締役・大隣 佳太氏にお越しいただき、協働の取り組みと成果を発表いただきました。
株式会社1129は、鹿児島県鹿児島市を拠点に、業務用食肉の卸売からスタートし、現在は自社ブランドによる精肉販売・商品開発、外食・ECなど、多岐にわたる事業を展開する企業です。
中でも注力しているのが、これまで市場価値が低く見られてきた「経産牛」の再評価。
その豊かな味わいを活かしながら、ブランド化と販路拡大に挑戦しています。


今回は事前インタビューでお伺いした内容を含め、大隣氏にお話しいただいた協働日本との取り組みを通じて生まれた変化や、今後の事業展望への想いなどをご紹介します。協働プロジェクトを通じて、大隣氏がどのような変化と成果を得たのか、未来への展望とともに伺いました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

経産牛の価値を広めたい──その想いから始まったチャレンジ

ーー協働日本と取り組むことになった背景とプロジェクトについて

大隣佳太氏(以下、大隣): よろしくお願いします。まずは弊社のご紹介をさせていただきたいと思います。私の実家は祖父の代から続く畜産農家で、幼い頃から牛と共にある生活が当たり前でした。しかし、父の代で廃業してしまったことが、今でも自分の中に“悔しさ”として残っています。そういった原体験があるからこそ「牛に関わる仕事がしたい」という思いをずっと持ち続けており、ずっと畜産の繁殖生理学を専門に勉強し、2019年の12月24日に会社として設立しました。黒毛和牛をもっと価値あるものにしていくという理念を掲げ、2020年の2月9日から通信販売のみという事業形態で黒毛和牛の販売をスタートしました。

楽天、Amazon、Yahoo!などの大手ECサイトでの食肉の販売やふるさと納税を取り扱っていく中で課題として強く感じていたのが一頭買いした肉をいかに効率よく使えるかということでした。サーロインやヒレなど、いわゆる「いい肉」というイメージのある人気部位は通販でも人気で、在庫はほぼはけてしまいます。一方、他の部位は冷凍庫がパンパンになる程余ってしまうこともありました。そこで、余った部位にうまく付加価値をつけて販売し、売り切っていくことで牛一頭あたりの単価を上げられるのではないかと模索していました。

これまでは和牛の価値は「サシ=霜降り」の多さで評価されてきました。しかし、近年では赤身肉も注目されるようになってきています。
繁殖を終えた経産牛は、等級こそ高くないものの脂に頼らずしっかりとした旨みがあります。赤身肉の本当の良さを知ることのないまま「霜降り肉」ばかりが「いい肉」として評価されてしまう、その評価軸をひっくり返してみたいという思いが強くなりました。

そのためにどれだけアイディアがあっても、それを具現化するためのBtoCのマーケティングや商品設計の知識、スケジューリングなどは経験も浅く実行に移すのが容易でない……そんな時に出会ったのが協働日本でした。「一緒に考え、一緒に悩んでくれる伴走者」というスタンスにも魅力を感じ、アイディアの実現に向けてお力をお借りすることになりました。

“厚切りステーキ”と“販促計画”から始まった、伴走支援の中身

ーー実際に協働プロジェクトがスタートしてから進んだ取り組みについて

大隣:プロジェクトのテーマとしては「経産牛の赤身の美味しさを証明する」ことを掲げ、「経産牛をどうやって販売するか」の具体化に着手しました。協働プロとして相川知輝さん、田村元彦さん、芹沢亜衣子さんに入っていただいています。
毎週1回のミーティングで、新商品のアイディアを出し、販促スケジュールに落とし込んでいく取り組みを共に進めました。

これまでは新商品のアイデアが出ても、いつ・どこで・どう売るか?といった計画がふんわりしていて、結果的に販促が後手になりがちだったんです。季節ごとのニーズを見ながら逆算で新商品の設計ができるようになったことで、季節のキャンペーンなども積極的に行えるようになっていきました。

例えば、クリスマス用に販売した「3.2cmの厚切りステーキキット」では、赤身の旨みを最大限引き出す“厚切り肉”を、家庭で誰でも美味しく焼けるように専用レシピと焼き方ガイド、参考動画もセットにした商品にして販売しました。


同じように季節物商品としては、ハロウィンと連動させたキャンペーン企画も展開。「ミニハンバーガーキット」を販売しました。前年も同様の商品を用意したのですが、協働日本の皆様と共にブラッシュアップした結果、前年の売上数128セットから680セットへと約5倍の伸長を記録したんです。広告費などを抑えることもでき、一人当たりの獲得単価のコストパフォーマンスもグッと向上しました。

これまで感覚的に進めていたことに協働日本さんから「戦略と設計」を加わえていただいたことで、結果がここまで変わるのかと驚きました。

他にも、大きな成果としては「ビーフジャーキー事業」の確立です。最初に、人気の部位以外は余ってしまうこともあるという話をしましたが、そのうち、スネ肉はハンバーガー、切り落としはうどん屋などそれぞれ飲食店事業の方で捌けるようになっていました。一部位だけ残っていたのが「外モモ」です。これをどうにか商品として価値を高めていけないか?ということを検討する中で、パッケージにわかりやすく「黒毛和牛」と文言を入れるなど、インバウンドなど海外市場も視野に入れてビーフジャーキーを作ることにしました。

結果として、鹿児島空港や福岡の大丸デパート、関東の一部キオスクや、大型酒販店の全国店舗で取り扱っていただけるようになるなど、大きな集客が見込めるチャネルへの販路開拓に成功しました。
明太子メーカーとのコラボレーションが決定するなど、これからもさらに多くの方に認知され、食べてもらえるような取り組みを進めていきたいと思っています。

協働プロとの共創が、未来を形にする力になった

ーー協働日本との取り組みを通じて得られた学びや、今後の展望について

大隣: 一番大きかったのは、「考えが整理される感覚」ですね。
自分の中ではバラバラだった想いや構想を、協働プロの皆さんと話すことで、言語化され、形になっていく。 そのプロセスがとてもありがたかったです。

今回の伴走支援を経て気づいたこととして、ブランディングと、商品開発による顧客価値への転換、そして販路開拓力という3つが全て揃うことで、黒毛和牛の価値が最大化されることを実感しました。

自分たちの持つ「赤身も美味しい」経産牛の黒毛和牛という強みと、質の高い外部専門家チームとの掛け算があってこそ、成果が生まれていると思っています。県の事業の中で伴走してきていただきましたが、またさらに1年、伴走をお願いしたいとも考えています。協働日本は、私たちにとってはただ伴走支援をしていただくだけではない「一緒に未来を描くパートナー」になった実感があります。

今後の展望としては、海外への輸出展開も視野に入れています。赤身を食べる文化が根付いている欧米などでは脂肪分の少ない和牛はむしろ歓迎される存在なので、1129ブランドが挑戦できる可能性を感じています。やはり、人気部位だけでなく全ての部位に付加価値をつけて販売することができるようになれば、これまで一頭100万円で売れていた牛も150万円で売れるようになるなど、鹿児島の黒毛和牛全体の価値を高めていきたいという使命感を持って動いています。これからも美味しさの追求、付加価値の向上を目指して取り組みを続けていきたいと思います。

協働プロとして参画する相川 知輝氏のコメント

株式会社1129さんとの協働取り組みも今年で3年目になります。この3年間、順調に進んだこともあれば、もちろん失敗や試行錯誤もありました。ただ、大きな方向性としては確かな手応えを感じていて、少しずつ成果が見え始めていると実感しています。

協働支援において私が常々思っているのは、ビジネスには唯一の“正解”はないということです。ただ一方で、「失敗するパターン」には共通項があるとも感じています。特に中小企業がECに取り組む場合、ありがちなのが“早い・安い”という軸で勝負しようとすること。これは大手企業の土俵なんです。早くて安いというのは資本やリソースを潤沢に持つ企業だからこそできる戦い方であって、そこに中小企業が挑んでも勝つのは難しい。

株式会社1129さんも、支援を始めた当初は、いわゆる精肉をスライスして販売するようなスタイルが中心でした。ECサイトでは「今日は20%オフです」といったシンプルなキャンペーンメールが流れているなど、一見売上が伸びているように見えるものの、差別化できておらず利益が残らない……という状況でした。そこで、どうやって差別化を図るか?というのが最初のテーマでした。

商品開発においては、アイデアの多くは1129さん自身が持っているものでした。ハロウィン向けのミニバーガーやビーフジャーキー、厚切りステーキといった商品はどれも他社にはない独自のラインナップです。こうした商品は、きちんと戦略を立てて展開すれば粗利がしっかりと取れる構造になります。つまり、“売上は立つけど利益は薄い”から、“利益がきちんと取れる売り方”へのシフトを目指すことができたということです。

特に印象的だったのは、1129さんの“アイデアの泉”のような部分。代表の大隣さんをはじめ、スタッフの皆さんがとにかくアイデアをたくさん持っている。そしてそれだけでなく、インターネット広告やキャンペーンのノウハウも非常に豊富です。さらに、商品や素材への愛情がとにかく強い。「この牛の良さをもっと届けたい!」という想いが溢れている。それだけに、当初はその熱量に対して、戦略や方針が追いついていなかったという印象がありました。

我々がサポートさせていただいたのは、そうしたアイデアをどう優先順位付けして、どのタイミングでリリースするのか?という計画の部分でした。たとえば、節分にあわせて“鬼バーガー”を出したいという企画があったんですが、スケジュールが間に合わず見送りになりました。こうした「惜しい」ミスを減らしていくためにも、スケジュール管理と販促計画の連動は不可欠なんだなと、現場でも改めて感じました。

また販路開拓も重要なポイントでした。例えば、JR系列の駅ナカ店舗や百貨店などへの展開もありましたが、それと同時に、Instagramを活用したEC販売のチャネル強化も進めました。ハロウィンバーガーのように「見た目が映える商品」は、どこで売るかが極めて重要で、それを求める人たちがいる場所――つまりInstagramなどのSNSが最適な販売チャネルになる、という考え方です。

今回の取り組みで特に良かったのは、「粗利が取れること」と「ユーザーのニーズ」が交差する商品を見極められるようになってきたことです。1129さんは自社で販売する商品について、すべてを画一的に決めるのではなく、お客様の要望を取り入れながらカスタマイズしていくスタイルも持っています。その柔軟性が、これからの市場においてさらに強みになっていくと思っています。

我々がご一緒したプロジェクトにおいては、チームを作ってアイデアを回していく体制ができ始めています。今後も、必要な部分にしっかり寄り添いながら、1129さんの熱量と柔軟性が、さらに大きな成果へとつながっていくようサポートしていけたらと思っています。



協働日本 令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会の様子もnoteでもご紹介しています。
株式会社1129様にもこちらで本プロジェクトをご報告いただきました。


 大隣佳太 / Keita Ootonari

株式会社1129代表。株式会社バリュー代表。肉師。

農業高校を卒業後、農業大学へ進学。種畜場で修行後に家業の南九州市で畜産経営に従事。牛の人工授精や受精卵移植などの知見を得る。その後、鹿児島県南九州市で家業の畜産経営に従事した後、2012年に畜産業を廃業。

ECやWebマーケティングを独学で学び、その後、福岡のIT企業に就職。会社員時代を経て、2018年に福岡で株式会社バリューを設立。ECコンサルやWebマーケティング、アプリ開発などに従事。

その後、和牛への熱い想いを胸に2020年、通販専門精肉店・株式会社1129を設立。和牛のおいしさ・提供方法を追求するための研究開発ラボ「1129LTD. nikulabo」を開設。
鹿児島県産黒毛和牛の魅力を発信する飲食店「にくと、パン。」「にくと、うどん。」を展開するほか、鹿児島県産の黒毛和牛のステーキや、手作りハンバーガーキット、ビーフジャーキーを、同社のECサイト『1129nikulabo』や、各種ECサイトで販売している。

株式会社1129
https://1129iiniku.co.jp/home_mori/

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


STORY:1129代表 大隣佳太氏 -最高に美味い鹿児島の和牛を世界中に届けたい。協働日本は想いに伴走してくれるペースメーカー-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社1129代表の大隣 佳太氏にお話を伺いました。

株式会社1129は、鹿児島県産黒毛和牛に特化した精肉通販販売業者で、選びぬかれた牛肉を使用したハンバーガーの販売を行う「にくと、パン。」や、うどんと肉料理の美味しさを追求した「にくと、うどん。」などの飲食店も鹿児島で展開しています。

また同社は、鹿児島県産の黒毛和牛のステーキや、手作りハンバーガーキット、部位ごとのカット方法や調味料との相性など、黒毛和牛のさまざまな風味を体験できるビーフジャーキーなどの通信販売事業を行っており、同社のECサイト『1129nikulabo』や、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などでお買い求めいただくことが出来ます。

そんな株式会社1129の想いや、鹿児島県和牛の魅力を発信していくアイディアの実現に協働日本が伴走しています。インタビューでは、協働プロジェクトに取り組みはじめたことで生まれた変化や成果、これからの期待や想いについて語って頂きました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

ずっと持ち続けてきた「和牛を売りたい!」という気持ち

ーー本日はよろしくお願いいたします。 企業の沿革や事業内容を教えてください。

大隣 佳太氏(以下、大隣):よろしくお願いします。

元々実家の家業が畜産業で、「和牛を売りたい!」という想いを強く持っていました。

農業高校を卒業後、農業大学へ進学し、その後に種畜場で修行後に家業を継ぎました。当時は24歳。鹿児島県産黒毛和牛のおいしさを日本中に広めたいと思っていましたし、良い肉を作って和牛オリンピックにも出場したいと思って頑張っていました。

しかし、口蹄疫や狂牛病で苦しみ、経営が苦しくなり27歳の時に畜産業を廃業せざるを得ない状況になってしまいました。

ーーなんと、そういった背景があったのですね。作りたいものが作れない、売りたいものが売れないという経験は大隣さんにとって、とても辛い経験だったと思います。

大隣:まさしく。和牛を売りたくても売れないという経験は大きな挫折で、その後には一度歩みを止めて海外に出ました。しばらく海外で過ごし、自分を見つめ直す時間を持ちました。

そうしているうちに、自分の武器となるようなスキルを身に着けておかないといけないと思うようになり、もう一度勉強し直そうと思いました。お世話になっていた先輩にも相談して、英語かITスキルのどちらかを徹底的に磨こうと決め、最終的にはITスキルの専門性を磨くことにしました。

ーーなぜ、ITスキルを選択したのでしょうか?

大隣:それは「やっぱり和牛を売りたい!」という気持ちが湧き上がってきたからですね。売りたいものをしっかり「売れる」ための知識があれば、もう一度和牛の良さを広めるビジネスが出来るのではと思ったからです。

とはいえ、畜産一筋だった自分にとっては一からの勉強でした。帰国後に、求職者支援学校にも通って基礎知識を身に着け、その後はECやWebマーケティングをどんどん独学で学び、いちごや野菜をインターネットで販売してみて、実践の中で専門性を磨いていきましたね。

ーー畜産一筋だった大隣社長にとって、まさに新しい挑戦だったのですね。協働日本が伴走させていただいている、株式会社1129の立ち上げ経緯もぜひ伺いたいです。

大隣:IT周りについてのキャリアを積み、その後、福岡のWeb制作会社へ就職しました。

その頃には、ITの力のすごさを日々実感していました。インターネットでものを売る仕組みが作れれば、日本中、世界中のお客さんを相手に商売ができるというのは本当にすごいことですよね。

良いものを提供出来て、しっかりと売る仕組みが作れれば、ちゃんと売上を作れるというのは大きな自信になりました。

当時大変お世話になっていたお客さんからも、自分の「鹿児島の和牛を多くの人に届けたい」という夢を応援してもらえるなど、本当に良い出会いがありました。

そうしてインターネットを使ってものを売るスキルを身に着けたのち、「まだ注目されていない商材に新たな価値を掘り起こし、世界中にサービスを提供する」、株式会社バリューを設立しました。

そして2020年この理念を継承させ和牛のEC販売に特化した会社・株式会社1129を立ち上げたという経緯になります。

かつての畜産仲間だった、有限会社末吉畜産さんから「良い肉ができたので世に広めてほしい」と相談もいただき、今では本格的に鹿児島産黒毛和牛を売る会社として戦略を描いています。

手前(右) 株式会社1129代表 大隣 佳太氏
ーー大隣さんご自身の事業にかける想いを伺えたことで、1129で販売されている和牛へのこだわりや熱い想いを感じました。そんな大隣さん、そして株式会社1129は、なぜ協働日本と共に取り組むことを決めたのでしょうか?きっかけを教えて下さい。

大隣:きっかけはちょうどコロナ禍の中で、鹿児島県の方から協働日本さんを紹介してもらったことがきっかけです。ちょうど協働日本さんが鹿児島県と事業を進めており、県内の企業に様々な形で伴走していると伺っていました。

一度お話をしてみたところ、1129の想いに共感してくださり、とてもお話が弾んだこともあって、ものは試しと思って伴走をお願いしました。今では、取り組みができて本当に良かったと思っています。

協働日本さんには主に、様々なプロジェクトのマネジメントをお願いしています。

日々、様々な商品や販売のアイディアが浮かんでくるものを、具体的な形に落としてこんでいくために、伴走してもらっています。それによって、アイディアも言いっぱなしにならず、具体化していけるようになりました。

週次で宿題とフィードバックのサイクルを回し続けることで、戦略と実行が加速する

ーー関わっている協働プロの印象をお聞かせください。

大隣:協働日本の協働プロから、相川知輝さん、池本太輔さん、芹沢亜衣子さんの3名がチームで伴走してくださっています。協働プロの方はみな、丁寧にコミュニケーションをとってくださり、こちらの「これを実現したい」という想いを汲み取ってくださるのでとても信頼しています。

しかもどの方も、本業でちゃんと実績のある方が複業としてプロジェクトに入ってくださっているので、安心してプロジェクトマネジメントをお任せできます。

さらに一般的な「コンサルティング」ではなく、「伴走支援」という形での関わり方も私はとても気に入っています。

私たちは別に、一方的に答えを教えてほしいとは全然思っていないので。実現したい私たちの想いが先にあって、それを形にするために、一緒に伴走してくれるという関係性がとても心地よく感じています。

週次の打ち合わせには、弊社の専務でもある弟(大隣 将太朗氏)に参加してもらっています。

打ち合わせを通じて、専務の考え方や、販売戦略などがブラッシュアップされているのを感じます。

私がすべて指示出しして進めることも出来るのですが、今後の会社の成長のためには専務である弟にもどんどんと仕事を任せていきたい。その意思決定の場に、経験豊かな協働プロの皆さんにサポートで入ってもらえることは安心感がありますね。もちろんアイディアを形にしていく過程も見せてくれているので、納得感もあります。

重要だと認識しているけど、忙しい日々の中で向き合えていないことが山ほどあります。特に経営者だとなおのこと、自律的にちゃんと課題に向き合って、形にしていく過程の難しさを知っています。

日々、色々なことが起こる忙しい日々の中で、しっかりと期日を切って、それに対して的確なアドバイスとともにプロジェクトを進めてくれる伴走者の存在はとてもありがたいです。

新商品を試作する 大隣社長(左)と、協働プロの相川氏(右)
ーー取り組みの目指すゴールや、テーマをお聞かせください。

大隣:協働日本さんとの取り組み前までは、次々新しいアイディアが浮かぶものの、忙しい日々の中でそれを形にすることが出来ていませんでした。季節に合わせた販促の提案なども、最後まで実行できないことがあり、いつも歯がゆく感じていました。

EC販売における大方針として今後は、黒毛和牛の部位ごとに合わせたカット方法や、食べ方の提案を通じた「高付加価値」な商品の開発・販売に注力していきたいと思っています。

現在は、生産者との密な仕入れルートを持っているため、ECサイト上でも高品質な和牛を他よりもリーズナブルな価格でお届けすることが出来ています。しかし一方で、それだけではなく「和牛のプロ」としての知見やノウハウを盛り込んだ商品開発を通じた、提案の幅を増やしていく必要性を感じていました。

「実行力の強化」と「新商品開発」。この2つが、取り組みにおける大きなテーマでした。

ーー具体的な成果や、共に向き合っている課題など、協働の様子をお聞かせください。

大隣:EC販売の次の柱になるような商品を探すべく、肉のプロである弊社の知見と、協働プロの皆さんの視点を掛け合わせて、様々な商品開発に取り組みました。

一つ目は、厚さ3.2cmにカットした厚切りステーキ。肉のプロとして導き出した、最もおいしく食べられる厚さにカットしたステーキをECで販売しました。
アイディア自体は私の中にあったのですが実現できておらず、あらためて協働日本さんの力を借りて、訴求方法の検討や、実現の為のタスク整理を行っていきました。

協働プロの皆さんにプロジェクトをマネジメントしていただいたことで、この商品も無事販売することができました。さらに、日本中の名産品に精通している、協働プロの相川さんの知見をお借りできたことで、HPなどで「魅せ方」にこだわった訴求もできました。

二つ目は、ハロウィン限定の手づくりハンバーガーキット。直営店のハンバーガーショップ「にくと、パン。」のノウハウを活かした新商品として売り出しました。バンズに色が付けられることがきっかけで生まれた、ハロウィンカラーのバンズでつくる黒毛和牛100%のハンバーガーです。

協働プロのみなさんと、顧客体験を想像し、かざりつけやチーズの切り方など、食べ方だけでなくSNSを意識した「映え」の訴求も行いました。実際に多くの購入実績が生まれ、SNS上でのシェアも確認できました。

厚切りサーロインステーキセット
ハロウィン限定 ミニハンバーガーセット
ーーお話から、協働の中から実際に新商品が誕生し、成果が生まれている様子が想像できました!

大隣:今は年末商戦に向けて、新たな商品セットを開発中です。

ギフト需要を見据えた新たな商品で、肉の専門家の知見を活かした牛肉の部位の食べ方提案と、協働プロの顧客視点を盛り込んだ商品で、中身だけでなくパッケージにもこだわっています。

協働プロのみなさんと一緒に、毎回のミーティングで要点を潰しこんでいったことで、忙しい中でしたが形になりました。取り組みを始めてから次々と、新商品アイディアが実現できているのは、協働日本とのミーティングがペースメーカーになっていることが本当に大きいです。

ーーコロナ禍で始まったお取り組みも、現在まで続いていますよね。長くお取り組みが続いている理由を教えてください。

大隣:もちろん、シンプルに効果を実感しているからですね。はじめは半年間と思っていた伴走支援も、延長させていただきもう一年近くになります。

2020年に創業した1129は、3~5年かけて基礎を固めて、その後にしっかりと成果を最大化する計画で事業を進めてきました。来年2024年はその意味でも勝負の年となります。

この大事なタイミングだからこそ、伴走支援を通じてしっかりと外部のサポートを得る価値を感じています。

専務 大隣 将太朗氏

今がまさに、27歳の時の自分の夢の延長線。

ーーお話をお聞きし、とても良い関係性の中で「協働」が出来ているのだと感じます。ぜひ、これからの展望もお聞かせください。

大隣:弊社のECサイト『1129nikulabo』や、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などを通じて、全国のお客様に届けられるよなECサイト基盤が整いました。

ラボを開設し、黒毛和牛の部位ごとに、カット方法や調味料との相性などを研究開発しています。黒毛和牛のポテンシャルを存分に引き出すための、商品開発基盤が整いました。

そして2021年には「にくと、パン。」2022年には「にくと、うどん。」といった、飲食店舗も設立できました。

いままさに、EC、商品、店舗が回りはじめて、思い描いていた「和牛を売る」ということがしっかりと形になってきました。

和牛を世界に届けたいと思っていながらも、悔しい思いで畜産業を廃業した27歳の時の自分。夢の続きがまさに今なんです。

今後は海外への展開も計画しており、来年2024年はますます忙しくなりそうです。

やりたいこともたくさんありますし、仕事や権限もどんどんメンバーに譲渡していかないといけない。

引き続き協働日本さんに伴走していただき、ペースメーカーとして1129をサポートしていただければと思います。

鹿児島黒毛和牛とこだわりのパンを使ったハンバーガーを販売する「にくと、パン」
ーー27歳当時の夢の続きが今。そんな大隣社長の想いに、協働日本が伴走できていることを嬉しく思います。
これから協働日本はどうなっていくと思いますか?エールも兼ねてメッセージをいただけると嬉しいです。

大隣:弊社のように自社の商品に自信を持ちながらも、その販売戦略や次の一手を考える余裕がない企業は多いはずです。

協働日本さんのような、専門性や情熱を持った複業人材にサポートしてもらって、ペースメーカーとして伴走してもらうだけでも、どんどんアイディアは形になっていくと思います。

ぜひ協働日本さんにはもっと、全国の中小企業を支援してもらいたいと思いますし、こういった取り組みがもっと知られていけばいいと思います。

ーー本日はインタビューありがとうございました!ぜひこのあと、「にくと、パン。」で、ハンバーガーを買って帰りたいと思います。

大隣:ありがとうございました。黒毛和牛を使った自慢の商品です。ぜひ召し上がってみてください。

インタビュー当日は「にくと、パン。」店舗へ実際に訪問

 大隣佳太 / Keita Ootonari

株式会社1129代表。株式会社バリュー代表。肉師。

農業高校を卒業後、農業大学へ進学。種畜場で修行後に家業の南九州市で畜産経営に従事。牛の人工授精や受精卵移植などの知見を得る。その後、鹿児島県南九州市で家業の畜産経営に従事した後、2012年に畜産業を廃業。

ECやWebマーケティングを独学で学び、その後、福岡のIT企業に就職。会社員時代を経て、2018年に福岡で株式会社バリューを設立。ECコンサルやWebマーケティング、アプリ開発などに従事。

その後、和牛への熱い想いを胸に2020年、通販専門精肉店・株式会社1129を設立。和牛のおいしさ・提供方法を追求するための研究開発ラボ「1129LTD. nikulabo」を開設。
鹿児島県産黒毛和牛の魅力を発信する飲食店「にくと、パン。」「にくと、うどん。」を展開するほか、鹿児島県産の黒毛和牛のステーキや、手作りハンバーガーキット、ビーフジャーキーを、同社のECサイト『1129nikulabo』や、各種ECサイトで販売している。

株式会社1129
https://1129iiniku.co.jp/home_mori/

協働日本事業については こちら

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