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STORY:株式会社白山 金原氏 坪本氏 -AI活用のPULL型営業ツールの構築で成約獲得。世界シェアNo.1への挑戦-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社白山の金原 竜生氏、坪本恵理奈氏にお越しいただきました。

株式会社白山は、1947年に創業した通信部品メーカーです。黒電話を雷から守る「保安器」の製造からスタートし、現在では光通信に欠かせない光コネクタ部品を手掛ける企業へと成長。光コネクタ部品では世界シェア2位を誇る企業です。

AIを活用し、記事作成・トラッキング・ペルソナの可視化までを可能にする標準プロンプトを構築。SNS発信を、従来の情報提供から“営業を引き寄せるコンテンツ”へと進化させる取り組みに挑戦しています。

今回のインタビューでは、協働日本との取り組みで得た変化、組織としての意識の変化、今後の展望について、率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

属人化していた業務を、仕組み化へ。未経験メンバーとの挑戦

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いや、プロジェクトが始まったきっかけについて教えてください。

金原竜生氏(以下、金原): よろしくお願いいたします。

坪本恵理奈氏(以下、坪本): よろしくお願いいたします。

金原: 当社は1947年に創業し、当初は”黒電話”の雷対策用「保安器」の製造を行っていました。そこから時代が進む中で、現在では光データセンター向けの光コネクタ部品「MTフェルール」などの製造が主力事業になっています。

そんな当社が協働日本と出会ったきっかけは、プライベートの知人であった山岸製作所の山岸社長からのご紹介でした。複業人材の活用により「面白いことをやっている」という話を聞いて興味を持ち、ちょうど協働日本代表の村松さんのセミナーがあるので来てみないか?とお誘いいただいたため、すぐに参加を決めました。
実際にセミナーでお話を伺うと、非常に興味深い仕組みだと感じ、ぜひ自社でも何らかの活用ができないかと考えていました。

それから1年ほど経ち、2024年の11月頃に私の所属するグローバルマーケティング室に坪本がジョインしました。これまでマーケティングは私が一人で担当しており、仕事量も多く属人化していたため、業務の仕組み化・体系化が急務だと感じていました。

これを機に外部人材に入ってもらうことでチームとして一緒に学びながら業務を進めていけそうだと感じて、改めて村松さんにご連絡させていただき、協働が始まりました。

ーーずっと活用を検討いただいていたのですね。

金原: ちょうど、石川県の「令和6年度プロフェッショナル人材確保支援事業」で、デジコーチの伴走支援の募集が始まったのもいい機会でした。

以前から「Linkedin」などのSNSを使って企業の情報発信をしていたのですが、前述の通り私が一人で取り組んでいましたし、海外出張も多かったこともあり継続的な発信を続けることが難しく、「仕組み化して継続的にやっていきたい」という思いがありました。その頃、会社HPの方のコンテンツ記事の下書きをAIで作るということも試してみていて、時短になったという肌感があり、SNSでの情報発信とデジコーチのコンセプトも親和性が高いだろうと感じていました。

そういった背景から、メンバーが増えるタイミングに合わせ、デジコーチでAIを活用したLinkedinでの情報発信を進めていくことになりました。


半日かかっていた記事作成が、1〜2時間に短縮。顧客に響く記事作成を実現。

ーー実際に協働プロジェクトが始まってからのお取り組みについても教えてください。

金原: はい。協働プロとしては、横町暢洋さん、松本亜也さんに入っていただいています。

元々私が発信を担当していた頃も、0ベースで記事の内容を考えていたので記事作成に時間がかかり、個人の動きとしても限界を迎えていたのが正直なところです。ましてや坪本は他業界からの転職ということもあり、全く知識がないところからのスタートだったので、もっと苦労をしそうだということは想定できていました。

ーー確かに、未経験の方が製品の紹介記事を書くのは難易度が高そうですね。

坪本: 私はアパレル業界からの転職で、金原の言う通り全くの未経験からのスタートだったので、当初とても不安に思う部分もありました。
そこで、デジコーチのお二人には、 Linkedinでの投稿作成のためのプロンプトなどを一緒に構築していただくことで、私のように業界や製品知識のないメンバーでも、記事を作ることができるような仕組み化を目指しました。

現在では、Linkedinでの投稿作成の際にHPに投稿しているコンテンツ記事をCopilotで要約し、記事の形にしていっています。Linkedinの記事は英語で投稿しているので翻訳にもAIを使っています。AIを活用することで、記事作成から翻訳、内容の確認という一連の流れを1〜2時間の作業で行うことができています。

もしも自力で1から記事作成するとしたら3〜4時間はかかると思いますし、当初であれば半日〜丸1日かかっていたかもしれません。
AIを通してできた記事は目視で確認するのですが、「製品名を間違えていないか」など軽微なチェックがほとんどでポイントも明確なので安心して取り組めていて、とても感謝しています。

金原:投稿サイクルも、最初は2~4時間かかっていた作業が、今では1~2時間に短縮。不定期だった投稿も週2回ペースで継続できるようになり、「発信したいから学ぶ」意識へと大きく変化しました。アウトプットを前提としたインプット姿勢も育まれ、社内にもよい影響を与えてくれています。

ーーなるほど。今の形になるまで、試行錯誤はされたのでしょうか。

坪本: そうですね。最初はプロトタイプとしてお手本のプロンプトを組んでいただき、精度を上げるために一緒に色々試していきました。元々のコンテンツから、発信する記事の形に変えるにあたって、必要な情報や追加したいワードなどを入れてブラッシュアップしていったことで、格段に作りやすくなってきています。

私は前職ではAIを活用する機会もなかったので、この取り組みで初めてAIを活用しました。未経験から製品紹介のLinkedin投稿をするというミッションの中でマーケティングやAIの知識がある方と一緒にやることで、スムーズに取り組むことができたという実感があります。

ただ記事作成の時間短縮ができているだけでなく、未経験者の私が自分で1から勉強するよりも、今のクオリティの成果物を出せるようになるまでの時間自体が短縮できたのではないかと思っています。

金原: また、記事の発信後、トラッキング、データ収集や分析から、ペルソナを可視化するところまでも協働プロに協力いただき、Copilotを活用して効率的な発信が可能になっていきました。


仕組み化による成果が続々。問い合わせ・成約にも直結

ーープロジェクトを通じて出た成果や変化についても教えてください。

金原:デジコーチで伴走していただき3ヶ月という期間の中で、やはり大きかったのは「仕組み」として発信を続けられるようになったことです。これまで200文字+写真というボリュームだった投稿が、600文字+写真という形にかわり、製品の情報も密になってコンスタントに発信することができるようになりました。

インプレッションや反応率は数値として見えるため、改善の効果も目に見えやすいです。実際、Linkedinのフォロワーは3ヶ月間で20%増、投稿を始めた初月からインプレッションが約5倍、リアクションは9倍に増え、アメリカでの展示会にも投稿がきっかけでブースを訪れてくださった方もいらっしゃいました。

さらに2025年春からは新たな年間契約体制へ移行し、取り組みは一層加速しています。グローバル展開に向けたマーケティング支援も本格化し、協働日本さんとも長期的な伴走支援を開始しています。


金原:実際に記事を起点とした問い合わせから、成約につながるケースも生まれており、手応えを感じています。AIツールや外部プロとの連携により、これまで属人的だった情報発信が「高品質な営業資産」へと変わりつつあり、今後もこの体制を継続・拡張していく予定です。

成果も出ており、2024年12月~2025年2月のわずか3ヶ月間で、欧州で550万円の成約1件、試作依頼5件(欧州・北米・南米)、問い合わせ8件を獲得。その多くがLinkedin投稿を起点とする成果であり、グローバルへの広がりを力強く後押ししています。

最近では、GAFAMクラスの世界トップクラスのグローバル企業からも問い合わせをいただくことが出てきており、単なるSNS運用支援にとどまらず、グローバル市場に通用するLinkedinマーケティング戦略を協働日本と共に構築しつつあります。

現在では欧州・北米・南米を中心に、大手グローバル企業からの反応も急増しており、光コネクタ部品での世界シェア1位獲得に向けて引き続き取り組みを進めていきたいと思っています。

これからの挑戦。WEB活用、組織力強化へ

ーー今後の展望についても教えてください。

金原: はい。これからは、WEBを使った新規取引の獲得をさらに自動化していきたいと考えています。

AIが得意な部分はAIに任せつつ、営業・マーケティングのメンバーが、新規や既存のお客様との商談など“人にしかできない価値”に時間をかけられる体制をつくっていきたいです。

そのために、Salesforceを導入して、ナレッジや案件情報をきちんと共有できる仕組みを作ろうとしています。
あわせて、WEBアクセスの分析も進めて、そこから市場の反応を素早く営業にフィードバックできるようにする予定です。

また、LinkedInを起点にしたターゲティング広告や、海外展示会への出展も本格的に進めるつもりです。 オンラインとオフラインの両方から、グローバル市場へのアプローチを強化していきます。

さらに、営業やマーケティングのチームメンバーの知識面も底上げしていきたいです。
単なる情報発信だけでなく、より戦略的な市場開拓活動ができる組織に成長させていきたいですね。

ーーありがとうございます!

「伴走者」として支えてくれる存在

ーー今回社外プロ人材との取り組みを通じて、率直にどのように感じられましたか?

金原:白山として、社外のプロ人材を活用するのは初めてでしたが、 私自身もプロボノで他社の支援をしているので、はじめから協働日本の仕組みはイメージがつきやすかったです。

複業人材全般というよりも「協働日本の協働プロ」についての印象ですが、本当にアグレッシブで熱意がある。そのおかげで我々が程よく緊張感を持ち、心地よいプレッシャーを与えられて頑張れているという実感があります。

坪本: 私も、先ほどお話しした通り未経験からこの業務、プロジェクトに携わることになったので不安もありましたが。1から全部教えていただけたことを本当にありがたいと思っています。

金原が言う通り、協働プロの熱量がすごく高いので、「自分もやらなければ」と言う思いを持たせてもらえる存在です。「こうなったらいいな」というものも「それやれそうですよ!」と言ってくださるので、自分ではイメージ出来ない部分があっても「できるのかも」と思えるようになっているという自分の変化も感じます。

ーー協働プロとの対話の中で、前向きに取り組めそうだと感じていただけるようになっているんですね。最後に協働日本へ一言メッセージをお願いいたします。

金原:協働プロの皆さんは、「指導する人」ではなく「伴走者」として関わってくださいました。結構特殊な関係性だと感じていて、お願いしている立場ではあるけれど、先生でもなく、ゴールに向かって一緒に走っている仲間という感覚です。
このスタンスがとてもありがたかったですね。

プロジェクトに全然関係ないことも含め、会社で何か成果が出たら嬉しくてすぐ共有してしまうくらい、よくコミュニケーションを取らせていただいていますし、「こんなことができたら面白いんじゃないか?」という思いつきも気軽にお話できるんです。

本当に心理的安全性が高く、些細なことでも相談でき、「やってみよう!」と実現に向けて導いていただけることも、プロジェクトを継続していく上でとても重要だと思っています。
県の事業での伴走支援は一旦区切りを迎えていますが、これからも継続して伴走支援をお願いすることにしています。

これからも、このつながりを大切にしながら、次の挑戦にも前向きに取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

白山はこれからも、世界トップを目指す覚悟を持って挑戦を続けていきます。そして、協働プロたちもまた、単なる支援者ではなく、白山と同じ志で「世界No.1」を本気で目指す仲間として伴走してもらいたいと思っています。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!

金原: ありがとうございました。


金原 竜生 / Tatsuki Kimbara


株式会社白山(2021年2月入社)
グローバルマーケティング室 室長
1988年愛知県生まれ。家族4名(子ども2人)

#営業 #マーケティング #英語 #ドイツ語 #中国語
#スペイン語 #知的財産管理技能士 #海外渡航(32ヶ国)

協働日本事業については こちら

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