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Challenge Report:かごチャレ2025年度【第2回】開催レポート|参加者の想いが響き合う現場から

鹿児島県が主催し、公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が企画運営を担う「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」。本レポートでは、参加者の挑戦がつながりが広がっていく様子や現場の熱量をお届けします。

(レポート作成=黄瀬真理)

産官学の多様な参加者が互いに語り、”新たな挑戦と共創”が生まれる場

昨今、地域で新事業を創出する取り組みが増えています。そんななか鹿児島県では、あらゆる“挑戦者”が繋がり共創する場「かごしまチャレンジャーサミット」を開催しています。 11月11日の第2回かごチャレにも、県内外から業種・立場が異なる50名以上が集いました。オープニングトークではデザインのプロが登壇。さらに、県内企業に加えて鹿児島大学教授も登場し、研究紹介とともに、老舗でありながら新領域へ挑む鹿児島企業との協創事例が共有されました。異分野が交わることで新たな価値が生まれる、その“掛け合わせ”の手応えも伝わる時間となりました。

第一回目の様子はこちら

   

県内外から多様な参加者が集い、かごチャレが幕を開ける

挑戦者の熱意に触れ、思わず前のめりになる時間

続いてオープニングトークと県内企業3社のピッチが行われました。

【オープニングトーク】ブランドを強くするデザインの本質

オープニングを飾ったのは、株式会社ピクニック 代表取締役  ケイモト シュンスケ氏。デザインの力を独自の視点で語るオープニングトークに、会場の空気が一気に温まりました。

数々の広告賞を受賞されている、プロデザイナー/コピーライター
株式会社ピクニック 代表取締役 ケイモト シュンスケ氏 

   

エンターテイメントやプロスポーツなど分野を越えて、ロゴ・Web・パンフレットなど幅広い領域でデザインを手がけてきたケイモトさん。オープニングで語ったのは、多くの鹿児島県内企業様が関心を持つ“デザインの本質”。

「デザインひとつで、見え方はガラリと変わります。大事なのは、その人や企業が本当に大切にしている“中身”と見た目がきちんと合っていること。ここがズレると、相手に届かない。良い中身を、そのまま伝わる形にする。それがデザインなんですよね」

自社について、こだわりぬいて伝える重要性がひしひしと伝わってきました。

   

【ピッチ】県内企業の挑戦と、研究の知との掛け合わせが示す可能性

続くピッチには、県内から3名の挑戦者が登壇。幼児から高齢者までを一気通貫で支援する障がい福祉事業の宮之原氏、指宿の廃校を再生しクラフトビール醸造所を立ち上げた今奈良氏、そして養殖魚の“心”や行動変化の科学的解明に取り組む塩崎教授です。それぞれの話に参加者が前のめりになって聞き入り、「よし、自分も前に進もう」と背中をそっと押されるような空気が広がっていきました。

障がいの有無によらず、自分らしく幸せに生きられる社会を目指す
株式会社サクラバイオ 代表取締役 / 一般社団法人グッジョブかごしま 代表理事 宮之原 綾子氏

   

1歳半〜高齢者までを一気通貫で支援する障がい福祉事業を展開。「障がい者は1160万人いるのに、働いているのは16%だけ。“働きたい”と“働いてほしい”がつながっていない。」
その現実を前に、同社は教育・アセスメント・コミュニケーション・企業支援まで踏み込み事業展開しています。「“あなたがいてくれて嬉しい”と言われる人を増やしたい」。

   

クラフトビール醸造所 と 廃校キッチン麦と庭 を立ち上げ、地域の未来を育てる
株式会社今宮 代表取締役 今奈良 孝氏

   

指宿の廃校「旧徳光小学校」(144年の歴史ある校舎)をリノベーションし、地域の魅力を生かしたクラフトビール醸造所と地元食材のレストランを立ち上げ。「開聞岳が目の前にあって、観光地もすぐ近くで、ここは“地域の起爆剤”になると思ったんですよ。一方で、異業種からのチャレンジのためとにかく全部が初めてで、毎日が失敗と挑戦の連続です。」

「温泉熟成ビールとか、麦芽粕を使ったスイーツとか、まだまだやりたいことがあるんです。指宿をもっと盛り上げたいんですよね。」

   

魚類の精神的負担を軽減する飼料素材・飼育方法などを研究開発する
鹿児島大学 農水産獣医学域 水産学系 塩崎 一弘教授

   

養殖魚の“心の状態”の科学的な解明に向けて、うつ・不安・社会性の喪失といった行動変化などを研究。
「魚もうつになります。不安にもなるんです。だからゲノム編集で“うつの魚”をつくって行動を調べています。実は焼酎粕を使うと魚の不安が半減し、群れへの適応が早まるなど、養殖の生産性を高める可能性が見えてきていて(※)、一次産業の未来を拓く研究として大きな手ごたえを感じています。」

※鹿児島県企業・株式会社栄電社と共同で、焼酎粕を乳酸発酵させた製品を用いた研究を実施。

パネルディスカッション:挑戦の原点と“想い”が交差した時間

登壇者による「なぜ挑むのか」「どんな壁を越えてきたのか」という話からは、異なる背景から生まれた熱意と覚悟が伝わってきました。デザイナーケイモトさんの視点からは「挑戦には確かな想いがあり、その想いも含めた魅力をどう見せるかという意味で、デザインは力を発揮できる」という気づきが語られました。壁にぶつかりながらも、想いを原動力に前進する皆さんの姿に、会場全体が共感と熱意に包まれる時間となりました。

パネルディスカッションでは、“挑戦の原点”と“乗り越えてきた壁”が語られました。宮之原さんは、障がい者の人が自分の人生を歩める“場所”をつくるために12事業を立ち上げてきた経緯を語り、その覚悟とパワーに会場からどよめきが起きました。今奈良さんは、指宿を盛り上げたい一心で廃校をクラフトビール醸造所へと生まれ変わらせた挑戦と、異分野での苦労を語り、その熱心さにうなずく人が多く見られました。塩崎教授は、“魚の心”という誰も踏み込んでいない領域に挑む理由と研究の面白さを軽やかに語り、笑いと驚きがわく時間に。会場全体が、挑戦を応援するあたたかい空気に包まれていく瞬間でした。


ワークショップで得る、新しい視点

ワークショップではテーブルに分かれ、参加者が「今挑戦していること」を語り合いました。誰かが話し始めると、その想いに自然と皆が引き込まれていきます。

   

   

「もともとこういう想いがあって…」「こういうきっかけで挑戦を始めました」。挑戦の原点に触れる言葉が重なるたび、互いの想いに引き込まれていきます。テーブルのあちこちで、「応援したい」「一緒にやれそうですね」という声が自然に生まれていました。自分の挑戦を語れば、誰かがその想いを受け取り、また別の誰かが「それ、応援したい」と返してくれる。そんなあたたかい循環が会場全体に広がり、挑戦の想いと熱が重なり合う、かけがえのない時間になりました。


400年以上の歴史と新しい挑戦が混ざり、次の価値が芽生える

最後に、昨年度のかごチャレで生まれた“出会い”からはじまった取組みが紹介されました。400年以上の歴史を持つ薩摩焼・荒木陶窯さんと、鹿児島発・移動式スペシャルティコーヒーの販売に取り組むA Way to Coffee の児玉さんによる事業コラボレーションです。コーヒー粕を釉薬に混ぜ、薩摩焼の色づけに活かすという前例のない試み。試作段階の作品が映し出されると、会場ではざわめきが広がりました。この場の出会いから想いがつながり、確かな形として芽を出す——そのプロセスに共感するとともに、未来への期待がふくらみます。


拡がり続ける参加者の輪

イベント終了後のロビーでは、名刺交換や情報交換を続ける参加者の姿が多く見られました。「また連絡します」「次回も参加します」といった言葉が交わされ、参加者同士のネットワークが確実に広がっている様子が感じられました。第2回のプログラムは、そうした交流が自然と生まれる空気の中で終了しました。

参加者アンケートでは、「ここでの出会いが次の挑戦を後押ししている」という声が多数寄せられました。実際に、新しい事業やプロダクト開発に着手した参加者や、会場での出会いをきっかけにプロジェクトが動き始めたケースも確認されています。また、得た知識や視点を組織へ持ち帰り、チームの議論や育成に活かす動きも出ています。

さらに、「視野が広がった」「まずやってみようと思えた」といったコメントも多く、次のステップに向けて行動を始めた参加者も見受けられました。

昨年度から少しずつ育まれてきた“挑戦のつながり”は、今回さらに広がりを見せました。今年度最後となる第3回は、1月29日に開催予定です。オープニングゲストトークには、石川県から老舗の食品企業をお招きし、「変化を乗り越える老舗企業の事業・組織変革」をテーマに、挑戦の裏側や時代に向き合うリアルな知見が共有されます。業種や業界、立場、そして地域を越えたつながりが生まれる「かごチャレ」。そこには、ただ情報を交換するだけではなく、互いの挑戦に刺激を受け、次の一歩へと踏み出す空気があります。

この土壌の上で、鹿児島の持続的な発展に向けた新たな動きが、確かに芽吹き始めています。

   

※株式会社協働日本は地域企業と第一線で活躍するプロ人材が一つのチームとなり、事業変革に伴走します。成果を出すとともに、その先の「自ら変わり続ける力」を育みます。詳細はこちらからご確認いただけます。


主催:鹿児島県 / 企画運営:かごしま産業支援センター、株式会社協働日本

この取り組みに関するお問い合わせはこちら

Mail:ippo@kyodonippon.work

   

STORY:地域資源の再編集モデル「GLOW UP」誕生秘話――話題の鹿児島「食×人×地域」コラボレーションイベントの裏側

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、その推進のリアルについて、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、協働日本の主催するイベント「かごしまチャレンジャーサミット」のスピンオフ企画として生まれたプロジェクト「GLOW UP」について、企画のプロデュースや伴走支援を担当した協働プロの四元亮平氏をお招きしてお話を伺いました。

「GLOW UP」は、若潮酒造株式会社、株式会社サカナカケル(出水田食堂)、株式会社下園薩男商店、有限会社 鹿児島ラーメン、株式会社オコソコなど、鹿児島を代表する食品事業者の経営者がフラットに集い、焼酎「GLOW」と地元の食材を掛け合わせた新しい食体験を提供する立ち呑みイベントとして発足しました。
食・人・地域が循環する、新しい地域活性のモデルケースとして県内外でも注目されています。

今回のインタビューでは、協働日本との取り組みで得た変化、参加メンバーの意識の変化、今後の展望について、率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)


きっかけは地域の経営者ネットワーキングイベント――“必然的な偶然”で生まれたチーム

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、改めてインタビューをお引き受けいただいた四元さんの自己紹介をお願いできますか?

四元亮平氏(以下、四元):よろしくお願いします。私は現在、PLAY Inc.の代表として、小売業界を中心にブランディングやマーケティング戦略の支援を行っています。「心が豊かになる買い物体験の創出」をビジョンに、小売業界で店舗開発からセールス、DXまでのワンストップ支援に取り組んでいます。

あわせて、協働日本のプロフェッショナル人材「協働プロ」の一員として、各地の中小企業や地域事業者のみなさんと、複数の協働プロジェクトに参画してきました。

ーーーーありがとうございます!協働日本は、地域の事業者と多様な専門人材をつなぎ、新しい挑戦を伴走支援していくプラットフォームですが、その中でも四元さんは、現場に入り込んで事業づくりや場づくりを一緒に進めてくださっているお一人です。
鹿児島県で四元さんが伴走されたイベント「GLOW UP」の取り組みが、いま県内でも注目されていると伺いました。取り組みの内容について詳しく教えていただけますでしょうか?

四元:GLOW UPは、鹿児島の“お酒と食”をもっと自由に、もっと楽しく味わってほしいという想いから生まれた、立ち呑みスタンド企画です。
協働日本のネットワークで繋がった県内の5つの事業者──下園薩男商店さん、鹿児島ラーメン みよし家さん、若潮酒造さん、だしとお茶の店 潮やさん、そして出水田食堂さんの共創企画です。
若潮酒造さんの焼酎「GLOW」を起点とし、それぞれの“こだわり”がひとつの空間に集まり、お酒と料理、会話と笑顔が溶け合う、特別な時間が生まれました。

おかげさまで、県内外の事業者様にも注目いただいているコラボレーションイベントですが、その立ち上がりの経緯もとてもユニークでした。

ーー企画発足のきっかけについてぜひ教えてください。

四元:きっかけは「かごしまチャレンジャーサミット」でした。「かごしまチャレンジャーサミット」は、鹿児島県主催、協働日本が企画・運営に協力しているイベントで、協働プロによるオープニングゲストトークや、鹿児島県内のチャレンジャー企業によるピッチ、県内外の参加者が織り混ざりイノベーションを目指すグループワークを行うなど、インプットとコミュニケーションの場になっています。

「業種業界を超え、参加者同士がゆるやかに繋がり、応援しあう」ことを目的としていることもあり、懇親会では参加者同士、それぞれの事業の話や次の挑戦について語り合う時間になりました。

実は、「GLOW UP」の企画も、そのときの会話をきっかけに生まれたものなんです。

※かごしまチャレンジャーサミット
鹿児島県が主導する「新産業創出ネットワーク事業」の一環として、2024年度に発足した「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」。公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が企画運営を担い、県内外の参加者が互いの挑戦を知り応援し合うことで、事業創出のうねりを生み出すことを目指す取り組みです。


四元:
私も協働プロとして登壇し、「売れる店舗の作り方」について講演をさせていただいたこともあり、懇親会の場で、若潮酒造の上村さん、株式会社サカナカケルの出水田さん、株式会社下園薩男商店の下田さんと、それぞれのお店の話など雑談を重ねていました。

皆さん魅力的な経営者の方ばかりだったので、せっかくこういった場があるなら活かしたい、という思いが募り、最初は「皆さんのお店の店舗診断しましょうか?」という話をしたのが始まりです。

ーー飲食を中心とされた事業者の方ばかりですし、四元さんの店舗開発の支援はぴったりですね。

四元:はい。私ができることとして「より良い店にするために、皆さんの店舗の現状を見て診断・アドバイスしましょうか」という気軽な会話でしたが、話を聞いた鹿児島ラーメンの西さんも、「みよし家もぜひ見てほしい!」と話に乗ってきてくださって。

この話を協働日本の村松さんに相談したら、「面白いからぜひ同行したい。かごチャレのスピンオフにしよう!」と盛り上がり、一気に実現に向けて動き出しました。


ーーまさに「かごチャレ」というプラットフォームが生んだ、”必然的な偶然”ですね。少しずつ仲間が増えていった形だったのですね。

四元:その通りです。「店舗診断」の参加者が増えたことで、1泊2日の行程になったので、株式会社オコソコさんの宿泊施設「ふたつや」に泊めていただきました。

皆で食事をしながら、それぞれの店舗やプロダクト、サービスについての話で盛り上がりました。私自身も鹿児島に来て皆さんのお店を回る中で、その食の魅力、価値の高さに改めて気づかされました。

実は、イベントタイトルにもなった若潮酒造さんの焼酎ブランド「GLOW」とは不思議なご縁がありました。以前、大阪で「GLOW」を薦められて飲んだことがありました。今まで好んで焼酎を飲むことはなかったのですが、「GLOW」の、焼酎の固定概念を変えるような美味しさに驚いたのを覚えています。そして、かごしまチャレンジャーサミットの際に、皆さんとご飯にいった先のお店で「GLOW」と再会したんです。

普段、ファッション業界の事業支援をおこなっている私の視点から見ても、この「GLOW」は名前やパッケージが非常にキャッチーでアイコニックな商材だと感じていました。

熱意ある経営者の皆さんと共に「ふたつや」で語り合っている時に、ふと、そんな「GLOW」を中心に皆さんが提供する地元の食材を合わせ、さらに出水田食堂さんの場所を使えば、「いい空間に、いい人が集まり交流が生まれ、ファンから発信されていく」というイメージが湧いたんです。

お話をしてみたところ、皆さんとても乗り気で「ぜひやろう!」とその場で開催日程が決まったのが「GLOW UP」企画の最初の一歩でした。


経営者が直接企画・運営するイベント

ーー四元さんがコンセプトを提案された後は、どのようにプロジェクトが推進されていったのでしょうか。

四元:最初のコンセプトは、まず「GLOW」を中心にして、それに合うオリジナルの料理を出しましょうと決めました。

メニュー面に関しては、食材のプロである皆さんが主体となり、どんどんアイディアを出し合って進めていきました。私は、その皆さんのアイディアを聞きながら、イベントのキャッチコピーである「五感が踊る立ち呑みスタンド」などの言語化をお手伝いしました。

1つ提案させてもらったものとしては「かごチャレ」の熱量を、別のかたちで表現したいと考え、「立ち呑み」という業態にしようというアイディアです。立ち呑みならフランクに人との交流が生まれやすく、好きなときに来て好きなときに帰れる。このスタイルが、参加者同士のコミュニケーションを促進する座組みになると考えました。

コンセプトを「食べて飲む楽しさだけでなく、人と会ったり、人の五感を刺激する場所」と定めることで、単なる飲食イベントではない、「GLOW UP」ならではの価値が明確になっていきました。

年齢差はあれど、集まった経営者の方々はお互いにリスペクトし合っていて、皆さんフラットなんです。ディスカッションはとてもスムーズで面白く、前向きにどんどん進んでいったのが印象的でしたね。

ーー経営者自らが企画・運営を行うというのは、非常に珍しい座組みですね。

四元:そうなんです。皆さん本当に魅力的な方ばかりで、面白いアイディアがたくさん生まれました。ただ、初回はメニュー開発などに意識が集中しすぎたことで、集客がやや遅れてしまうなど、プロダクトに議論が寄ってしまう一面もありました。

「GLOW UP」のイベントは予約制にしたのですが、時間帯によって埋まる部と埋まらない部が出てきて、思ったより甘くないな、と。

そこで、イベントの告知を1回で終わらせずに何度もアナウンスすることや、個人的に声掛けをするなど、マーケティングや集客についての動き方も考え、実行してもらいました。皆さまお忙しい中にもかかわらず、個別でのご案内や告知にご協力いただいたことで、取り組みの輪が大きく広がっていきました。
その結果、開催するたびに満席となり、これまでに延べ210名の方にご参加いただくことができました。


地域の事業者同士がお互いを深く知り、強みを掛け合い、顧客の体験価値を上げていく、新たな地域価値の高め方

ーー「GLOW UP」という取り組みを通じて、四元さんが感じたことや成果、参加企業の皆様の変化などについて教えてください。

四元:3回目の「GLOW UP」の打ち上げのとき、誰かがポロッとこぼした言葉が印象的でした。皆さん業界内での繋がりはあったものの、実はこれまでそこまで親しくしているわけではなかった、と。プロジェクトの進み方やコミュニケーションがとてもスムーズだったので、元々深い繋がりがあったものだとばかりに思っていたんです。

実際には「GLOW UP」を通して、事業者同士がお互いのことを深く知り、各社の持つ強みや技術といった、お互い社名やプロダクトを知っていても掴みきれていなかった「いいところ」を深く認識し合うことができたのです。これは、「ありそうでなかった」形の地域資源の再編集の場として、非常に大きな意味を持つと感じました。

また、成果という意味では、イベント参加者がお店を出た後の「体験」設計について助言させていただき、途中からイベント中に物販を導入したんです。

ーー「体験」の設計について具体的に教えていただけますか?

四元:はい。物販の目的は、単に売上の底上げだけではありません。ものがあることで、お客さんは家に帰ってからもイベントの体験を思い出し、再びその体験を再現できます。

さらに重要なのは、「受けた体験価値を誰かに渡せる」という点です。人に喜んでもらうという無条件の嬉しさを感じてもらうことで、体験価値をより高める設計になるということを提案させていただきました。

実際に物販では約20万円の売上にもつながりましたが 、それ以上に、お客さんが商品を持って帰ることで、ネットで事業者のことを調べたり、アクセスしやすくなったりと、「美味しかった」で終わらせない次の行動を促す設計を初めてできたことが、大きな成果だと感じています。


四元:この協働の取り組みを通じて、個人的に新しい発見や、頭の中にあった経験値が結びつき、より豊かな発想になったと感じています。

例えば、「お店に行くのに二次交通として車必須」などローカル特有の弱点があります。
ユーザーにとってのハードルとなりうるこの課題をどう克服するか考えた時、移動自体をエンターテイメントにする「来場まで」の体験価値の設計が必要だと気づきました。
目的地に着くまでのワクワク感を高めることで、移動の大変さ・ハードルを下げていく。こういった設計を鹿児島という地域全体で行っていくことで、単に商品や物販だけではない、地域全体のブランド価値を高めることに繋がるんじゃないかと感じ、協働先の皆さんと様々な企画に落とし込めるように挑戦中です。

協働日本の「かごチャレ」は、選りすぐった人数でやっていて、規模よりも質に目を向けているのが良い点だと改めて感じました。異業種の方が多く、彼らは「鹿児島」という地域全体、すなわち「面」としての価値を上げれば、自分たちの価値も上がるという広い視点を持っているように感じます。そういった地域の事業者の活動を、鹿児島県という行政が応援してくれる形になっているのもいいですね。

「GLOW UP」後に地域の事業者や行政の方に向けて取り組みをご紹介させていただく機会も生まれ、ありがたいことに新しいコラボレーションの形として注目していただいています。


ーー今回の取り組みが注目されている背景にはどのようなことがあると感じられていますか?

四元:どの地域も、地域資源の見せ方については試行錯誤していると思います。1つ1つの点が強くても、面として地域の魅力が伝わらないと悩んでいる地域も多いのではないでしょうか。

今回の企画「GLOW UP」は、まさに鹿児島の魅力「食×人×地域」の情報循環のモデルケースになり得ると思っています。焼酎だけ、アジフライだけ、ラーメンやお茶だけ…と、単体では人を集めるにあたっての独自性が強くなくても、それぞれの強みを掛け合わせることで、その地域独自の強みとなります。

これを「食×人×地域」の“再編集”と表現しているのですが、地域の魅力を足し合わせるのではなく、それぞれの掛け合わせによってさらに魅力を強く見せていけるのです。
そして、各社のファンが集まり交流することで、その強い魅力を体験し、発信してもらえる。情報の循環が生まれていきます。

「GLOW UP」で生まれたこの循環モデルが、協働日本のネットワークを使って全国の違うローカルプラットフォームでも展開していくきっかけになればと思っています。

地域には、素晴らしい人材や価値の高いものを持った事業者がたくさんいます。しかし、普段は競合や他業種で接点がありません。協働日本は、質の高い人材を集め、地域を越えたフラットな情報網と人と物の流通を作れるという、他社にはない圧倒的な強みを持っています。

この強みを活かして、地域の事業者さんが自分の価値を伝えたり、引き出してもらったり、あるいは繋げてもらったりするために、もっと積極的に協働日本のプロ人材を活用できるような仕組みができると、非常に面白いと思います。「必然的な偶然の出会い」を意図的に作り出すフレームワークが、協働日本のネットワークの中でもっと強化されていくといいなと考えています。

地域創生の課題を乗り越える、「GLOW UP」のような取り組みが、今後、同じような課題を抱える地域にとっての地域活性化のロールモデルになっていくことを期待しています。

ーー貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!


参加企業の声

株式会社サカナカケル
代表取締役 出水田一生 様

「GLOW UP」の企画を実施してみて
お客さんが喜ぶことと自分たちがやりたいこととのバランスを取ることや、

コンセプトやテーマ決め、見せ方・伝え方といった企画設計の一連の流れに加え、オペレーションや収支面などの運営まで、幅広い設計が求められる、とても挑戦的な取り組みでした。

結果として、それぞれの人脈を生かし、立ち呑みという場で人と人が出会い、交流や新しいものが生まれる、そして自分たちがチャレンジしたいと思っていることを試せる場となりました。

今後は、GLOW UPの知名度が上がることでさらに関わる人が増え、このパッケージをPOP-UPや県外での展開、商品開発など、さまざまな形で広げていきたいと考えています。


地域の事業者同士での協業を始めてみたいという方へのメッセージ
まずは新しいことをやりたいという人と出会い、想いを話すことかなと思います。
特に同業種じゃなければ面白い化学反応が生まれます。そして、それぞれの強みを生かして作り上げていくのがいいと思います。(商品開発、マーケティング、企画運営、プロマネなど)

若潮酒造株式会社
取締役 上村曜介 様

「GLOW UP」の企画を実施してみて
自分たちで主催するイベントなので、ゼロから企画し集客する難しさも知ることとなりましたが、5社のノウハウを合わせることで、できることの幅が広がったと感じました。

コラボによるペアリングやカクテルなど新しい飲み方の提案にも繋がり、各社のファンと5社がつながることも大きなメリットだと感じました。
2回目からは社員にも参加してもらうことで、ビジョンの共有やモチベーションの向上にもつながった実感があります。

今後は県外展開も行っていきたいです。


地域の事業者同士での協業を始めてみたいという方へのメッセージ
イベントのPRや売上などの効果も大きいですが、協業することで、お互いのできることが広がったり、それぞれの会社の状況や仕事の進め方などを知ったり、相談することもできる学びの場にもなっていて、本当にありがたい機会になります。

株式会社下園薩男商店
清涼飲料水事業部 下田佳奈 様

「GLOW UP」の企画を実施してみて
それぞれの企業の代表の方々が中心となっているので、打ち合わせ、事前準備などのスケジュールを合わせることはなかなか容易ではありませんでした。
清涼飲料水事業からの観点でいくと、若潮酒造さんとコラボしたことで、お酒との繋がりや組み合わせができたのはとても可能性が広がり感謝しています。

また、お酒では料理とのペアリングに焦点が当てられることが多いのですが、クラフトドリンクでは、そもそもペアリングという視点があまり持たれていません。そこで、お酒との組み合わせはもちろん、各代表の方々、そして四元さんからの意見などがとても参考になりました。

弊社の商品では、原料やレシピにストーリーを作ることができるので、その自由度や独創性の高さを強みに、今後もGLOW UPのようなコラボイベント限定のドリンクなどを作り繋がりを広げていきたいです。


地域の事業者同士での協業を始めてみたいという方へのメッセージ
私自身も、「ノンアルドリンク作れます!焼酎が大好きです!」と声をあげたり、「かごチャレに参加する」という行動をしなければ今回の企画には参加できていなかったと思います。
これからも同じように熱い気持ちを持った方々に繋がっていけると嬉しいです!

株式会社オコソコ
代表取締役 蔵元恵佑 様

「GLOW UP」の企画を実施してみて
新しい取り組みではありましたが、大変なことは特にありませんでした。むしろ毎回それぞれの会社の強みを活かして新しい挑戦ができることにワクワクしました!

今回の企画を通じて気づいたこととして、お茶と焼酎の可能性があります。焼酎のGLOWと知覧茶の相性がとても良く、炭酸割りにして飲むと最高でした。いつものお茶の飲み方とは違い、アルコールとの相性による新しい可能性をこれからもどんどん追求したいです。

同じように、若潮酒造の「跳ねる一日」と下園薩男商店の「メロンシロップ」とのコラボで実現した、メロンソーダもお茶の味だけでなく視認性でのコラボも新しい発見でした。

四元さんが、毎回企画段階から実際の運営のサポートをきめ細かにしていただく中で、常に顧客思考、顧客目線でいろんなアドバイスをしてくださることは、とても学びになるし、このイベントをやりたいと思える1つの要素だと思います。


地域の事業者同士での協業を始めてみたいという方へのメッセージ
協働や協業も、すべては各社の戦略次第だとは思いますが、いろんなチャレンジの先に、新しい顧客へのつながり方もあると思います!
他社さんの取り組みがそのまま自社の取り組みにも応用できることも多いので、是非ともチャレンジしてみてください!

有限会社鹿児島ラーメン
代表取締役 西洋平 様

「GLOW UP」の企画を実施してみて

その場にいたのが面白いメンバーばかりでしたし、自分たちでイベントを立ち上げてみたいと考えていたので、良い機会でした。自分でイベントを立ち上げるにしても集客・告知に不安があったのですが、信頼できるメンバーだったので心強くて手を挙げることができました。

鹿児島ラーメン みよし家の鹿児島市内での認知が低いと考えていたことと、みよし家はよくも悪くも昔ながらの飲食店なので、GLOW UPのようなチャレンジングで尖ったイベントではみよし家のファンに出会うことはないだろうと感じていたのですが、ありがたいことにほぼ各回でファンの方に出会い、フィードバックをいただける機会にもなり本当にありがたかったです。

県外でのイベントもそうですが、各メンバーの地元での開催(阿久根、鹿屋、志布志、頴娃、福山)を成功させて、鹿児島県内にGLOW UP旋風を巻き起こしたいです。


地域の事業者同士での協業を始めてみたいという方へのメッセージ
GLOW UPも協働日本の四元さんの「コラボとかしないんですか?」というふとした一言をその場にいるメンバーが面白がって始まったのがきっかけだと認識しています。日々の仕事は忙しいですが、特に現状を打破したいと思っている方は信頼できる他社との協業は自社の経営にとってもサービスにとってもプラスになると思いますので、きっかけがあればぜひ掴んで、協業してみると面白い未来が待っていると思います!


四元 亮平 / Ryohei Yotsumoto

マーケに強いToCセールス戦略コンサルタント。

UGG、BURTON、Leeなど現在まで数多くのブランド支援の実績を持ち、アパレル業界だけでなくBMW japanやTOYOPETなど他業界でも「マーケで強くするセールス戦略」を提供しながら、企業やブランドの売上を向上させる重要な「ヒト.モノ.ウツワ」の価値を最大化し、売上向上と同時に顧客の心が豊かになる買い物体験の提供を支援する。

また有力商業施設でのスタッフ研修や、ビッグサイトで開催されるアパレル最大級の展示会「FaW TOKYO」でのセミナー登壇、メディアでの執筆や文化服装学院の非常勤講師も務める。

2020/9にデジタルセールス入門書「スマホ1つで最高の売上をつくる接客術」をKADOKAWAから出版。webメディア「Eczine」アパレル業界誌「ファッション販売」など連載実績も多数。

協働日本事業については こちら

VOICE:四元 亮平 氏 -想いを持つ方を支える「名脇役」として。マーケティングを通じた地域企業の価値の再発掘と成長を目指す。-

STORY:有限会社鹿児島ラーメン 西 洋平 氏 -DX化と組織開発に取り組み、成功循環モデルで利益目標達成へ-

STORY:株式会社イズミダ 出水田一生氏 -若手社員が経営視点を獲得。未経験から会社の中核人材へ-

STORY:若潮酒造株式会社 上村曜介氏 – EC売上1,000万円増。お客様が魅力を語り出す!ファンコミュニティ創出の裏側 –

STORY:丸七製茶株式会社 鈴木成彦氏 – 変化する経営課題に最適な人材を組み合わせ、成果を重ねてきた協働プロジェクト。「お茶の未来」を創造するブランド戦略とは –

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。
今回は、丸七製茶の鈴木成彦氏にお越しいただきました。

丸七製茶は、創業1907年の静岡の老舗製茶メーカー。日本茶を主軸に、スイーツ開発まで手がける「製造から小売までの一貫体制」を強みに掲げています。

協働日本とは2021年から4シーズンにわたり、①高級ボトリングティーのコンセプト設計、②EC/動画発信、③社内SNS活性化、④東京拠点リニューアル(カフェ併設)まで、多岐にわたる取り組みをともに進めてきました。

本インタビューでは、協働日本との取り組みで得た変化、組織としての意識変容、今後の展望について、2021年から伴走している協働プロの郡司弘明氏も交え、率直に語っていただきました。

(取材・文=山根好子)

“相談相手不在”の連続意思決定。そのとき見えた「伴走」の価値

ーー本日は丸七製茶株式会社 代表取締役社長の鈴木成彦様と、協働プロの郡司弘明さんにお越しいただきました。まずは、協働日本との出会いについてお聞かせください。

鈴木成彦氏(以下、鈴木):ご縁があり、協働日本代表の村松さんと知り合いました。「中小企業の社長に伴走する」という考えに強く共感し、当社でも支援をお願いしたいと思ったのが始まりです。

ーー協働日本の「伴走支援」は、御社のプロジェクトにどのようにフィットしたのでしょうか。

鈴木:中小企業の社長は、結局のところ一人で何でもこなさざるを得ない場面が多い。かつては学生時代の友人に相談したり、一緒に構想を練れましたが、年々それも難しくなっていました。そうした中で第三者の伴走という進め方を知り、有効な選択肢だと感じました。相談や壁打ちができる存在がいることに、大きな魅力を感じたのです。

ーーこれまでのプロジェクトを順にご紹介いただけますか。

郡司弘明氏(以下、郡司):2021年から、4シーズンご一緒しています。

鈴木:もうそんなに長いお付き合いなのですね。
各プロジェクトで異なる協働プロをアサインしていただきましたが、郡司さんには一貫してプロジェクトマネージャーとしてご支援いただいています。

郡司:まずシーズン1では、新発売のボトリングティーのコンセプトデザインやコンセプトメイクを一緒に壁打ちさせていただきました。

ここでは協働日本CSOの藤村昌平さんに加わってもらい、風呂敷を大きく広げるところからコンセプトを深掘りしていきました 。

また、写真家のたかはしじゅんいちさんとのプロジェクトも協働日本がきっかけで立ち上がりました。NFTアートと抹茶を使ったチョコレートの同時発売という、当時としては非常に先進的な取り組みでしたね。


郡司:続くシーズン2では、「CBT(Craft Brew Tea)」というボトリングティーのECサイトの立ち上げを行いました。

ブランドサイトの制作と、YouTubeやSNSを活用した動画でのコミュニケーションを並行して実施しました。

ーー「CBT」のサイトには「食事と共にワイングラスで楽しむ日本のお茶」「茶葉の個性を味わう、食事彩る日本茶」など、まさに高級ボトリングティーとしてのコンセプトや提供イメージへのこだわりが詰まっていますね。

鈴木:そうですね。海外のレストランで、無料のお水と有料のお水のメニューがあるように、お茶に関しても、良いものにお金を払って楽しんでいただきたいという想いがありました。食事の際のノンアルコールドリンクの新たな選択肢としてのブランディングのこだわりを、協働プロの皆さんと一緒に表現していくプロジェクトでした。

高級ボトリングティー「CBT」- ECサイト


鈴木:シーズン3では、社内のSNSコミュニケーションがテーマでしたね。社員のSNSへの感度やアンテナの高さに課題があると感じていたため、全社的に社員を巻き込み、SNSのリテラシーと発信力を高めていくためのマルチ勉強会を半年ほど行いました。この取り組みから、丸七製茶の自社noteが立ち上がり、社員一人ひとりが個人のSNSアカウントで発信することで、営業時のコミュニケーションの質が向上したり、店舗業務への他社員の理解が深まるなど、ポジティブな影響がありました。プロ人材としては、地方メーカーのSNSプロモーションの支援実績が豊富な浅井南さんに加わってもらい、個別のSNS投稿の添削なども行っていただきました。



郡司:そして直近のシーズン4が、東京事務所の移転プロジェクト並びに、店舗のカフェメニュー開発プロジェクトです。単なる事務所ではなく、1階にカフェと物販を併設し、情報発信基地や人的交流の生まれるスペースとして活用していくというコンセプトの構築を行いました。また、カフェの立ち上げにあたって目玉となるカフェメニューの開発もご一緒させていただくことになりました。

そこで、このプロジェクトでは老舗食品企業との協働実績が豊富な相川知輝さんと、大手外食チェーン等で商品開発実績のある松尾琴美さんという2名のプロにジョインしてもらいました。

ーー4シーズン全てテーマが違いますね。

鈴木:そうなんです。プロジェクトのテーマがシーズンごとに変わる中で、都度、そのテーマに最も適したプロ人材でチームを組成していけることが、協働日本の強みであり、長くお付き合いさせていただいている理由の一つになっています。例えば、シーズン4の途中でカフェでの新商品開発という文脈になった際、すぐに商品開発実績のある松尾さんに加わってもらうといった、柔軟なチーム組成をしていただきました。

郡司:丸七製茶さんの向き合う課題の優先度が、企業フェーズに合わせて変わっていく中で、私たちもメンバーの強みを組み替えられたのは良かった点ですね。

鈴木:そうですね、協働日本にはいろんな人がいますから、課題に合わせて「こんな人いない?」と相談できるのがすごくいいですね。

売上の変化だけではなく、ブランド価値そのものに向き合っていく

ーーこれまでの取り組みの中で、特に大きな成果や変化についてお聞かせいただけますでしょうか。

鈴木:定量的な成果としては、ボトリングティー「CRAFT BREW TEA(CBT)」の売上が、協働をスタートした2020年当初と比べて、約200%に伸びています。

郡司:200%とはすごいですね。

鈴木:ただ、単なる数量や金額よりも、ブランド価値としての成果が大きいと感じています。今では、日本にあるミシュラン店の1割以上、そして国内外のラグジュアリーホテルの大半と取引できるようになっています。
かつてはお茶は「無料」が当たり前で、日本茶でお金を取るというのは考えにくい時代でした。しかし今、当社のブランド商品が、日本の高級料理店やホテルに流通しているという存在感こそが、歴史的になかった価値だと感じています。

ーープロジェクトを通じてお茶に対する社会的評価を高める一助を担われているのですね。

鈴木:はい。他のボトリングティーはEC販売で高級品として手作りで売られているものが多いのですが、当社の場合は、飲食店で扱ってもらうための価格帯(1本5,000円以下)を維持しつつ、安定した高い品質で供給できる体制を整えています。これがホテルなどで扱われる上での大きな強みになっています。

郡司:まさにおっしゃる通り、お酒などのように、“お金を払って”お茶を飲むという文化をつくる挑戦の中で、CBTは“新しいお茶の市場そのもの”を切り拓いていますよね。

鈴木:また、SNSの取り組みは、社員のデジタルスキルやビジネスパーソンとしてのレベルアップのきっかけとしても重要だと捉えています。地方企業は車社会で、社会的な交流が少ないという背景があります。特に高校卒業後すぐに就職した若い層にとって、企業人としての外部との交流機会が不足していることが課題だと考えています。

郡司:地方で課題を抱える経営者の方は、鈴木社長と同じ悩みを抱えている方が多いですね。外部の風を吹かせたい、社員の話し相手になってほしい、というニーズが非常に高いです。協働日本のプロ人材が外部の「よそ者」として入ることで、社員の方々が外部と繋がったり、社内だけでは生まれないアイデアやマインドの変化が起こることに期待されている。ある種の「接着剤」のような役割も担っているのかもしれません。

鈴木:そういった、社員が外に目を向けるためのコスト投下は、ROI(投資対効果)が見えづらいため、なかなか決断しにくいと思うんです。しかし、若い頃にどんどん外に連れ出したり、外部のプロと壁打ちさせて成長させることが、中長期的に見て必ず良い仕事に繋がると私は確信しているので、協働日本さんとの取り組みを継続しているという面もあります。

郡司:ご支援させていただく中で、社長の期待に応えようと社員の方がしゃかりきになって成果を出されるケースも協働日本には多いですね。結果として「自分だけでなく、社員にも伴走してもらえたことで大きな変化が生み出せた」とおっしゃっていただくことも多いです。

鈴木:また、直近の成果としては、東京事務所移転プロジェクトで誕生した“抹茶研究所”があります。“抹茶研究所”は売り込みに行く営業ではなく、潜在需要のあるお客様に来ていただくための情報発信基地です。物販の売上は、以前の事務所が安売りだったのに対し、現在は定価販売で売上は150%になっており、利益ベースではさらに大きな成果となっています。浅草橋という立地と、“抹茶研究所”というブランディングが功を奏しているのではないかと感じています。


鈴木:店頭のイートインスペースでのカフェメニュー開発では「抹茶マンタロー」も誕生しました。夏のパリのカフェで定番のミント水「マンタロー」に着想を得て、伝統的なミントの爽快さと抹茶の奥深さを結びつけて生まれたメニューです。伝統を大切にしながらも、時代と共に進化し続ける抹茶の新しい可能性を提案できる、当社らしいメニューになったのではないかと思います。

イートインスペースで提供する新商品開発のプロジェクトで生まれた「抹茶マンタロー」


プロジェクト継続が外部との「接点機会」を形成。社内に新しい風が吹き込む

ーープロ人材の活用を通じて、率直に感じたことを教えてください。

鈴木:やはり、いろんな意味で人が交流するところで何かが生まれていると感じています。皆さんといろいろ議論しながら方向性を探る中で、ふと、思いもよらないようなキーワードが出てくることがあり、「それ面白いね」「これ誰か一緒にやってくれる?」と相談できる機会が、とても大事だと思っています。

ーー先ほどお話いただいた「人が交流する」ことの醍醐味かもしれませんね。

鈴木:そうですね。同じ方向性を向いて集まったメンバーで行う雑談では、得られる情報も意外と多いと感じています。情報化社会の中ではとにかく情報が多すぎて、自分にとって必要な情報を得ることが意外と難しいのですが、プロ人材には情報感度の高い方が多いため、最近こんな新しいサービスが始まった、というお話や、こんな事例がありますといった情報との「接点」を提供してくれます。こういった「接点」を作る役割を担って頂けることも、非常に重要だと思います。

そもそも新しい事業、プロジェクトを組んでも、成功するのはごく一部というのは当たり前だと思っていて、むしろ実行し続けていく中で次の打ち手が生まれることに価値があると考えています。協働日本では、大手企業の第一線で成果を出している現役の方をプロ人材としてアサインしていただけるため、「こんなことをやりたいのだけど、一緒にやってもらえる人はいないですか?」と相談したときに、適切な人材を紹介していただき、継続的に様々なことにチャレンジできることが魅力的です。事業や環境が変化していく中で、熱意溢れる優秀なプロ人材にいつでもアクセスできる機能は、非常に価値があると感じています。
スポットコンサルではなく、プロジェクトを「自分事」として捉え、一緒に伴走してくれるプロの存在が、社内に前向きな変化を生み出しているのだと思います。

熱意ある優秀なプロ人材と企業を繋ぐ。人と人との接着剤となる協働日本

ーー最後に、協働日本へのメッセージや、今後の期待をお聞かせください。

鈴木:今後もやりたいことは次から次へと生まれてくるのですが、なかなか社内に人的リソースがないというのが現実です。だからこそ、「こんな人いない?」と相談し、紹介していただける機能は、ありとあらゆる中小企業で必要とされていると思います。

協働日本さんには、今後ますます中小企業が頑張っていくためのレベルアップに貢献してほしいです。

「この人によりプラスになってほしい」というお互いの思いが、人と人の関係性から新しいものを生み出すような気がします。協働日本さんがそういった「接着剤」のような役割を果たし、私たちもそれを活用して、今後も進化していければいいなと思っています。

郡司:ありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします!

鈴木:こちらこそ、よろしくお願いいたします。


鈴木 成彦 / Shigehiko Suzuki

1964年生まれ。商社勤務を経て1989年丸七製茶㈱入社し、現在代表取締役社長。

90年半ばより日本茶が栽培されているすべての茶産地を把握すべく全国各地の茶産地視察を始める。
同時にテイスティング用語を豊かにするためにワインを学び始め、利き酒師、ビールテイスター、スペシャリティコーヒー協会に加盟しコーヒーマイスターなどの資格を取得するなど日本茶だけでなく幅広い飲料、食品の知見から日本茶の商品開発などを行う。

日本茶インストラクターだけでなく、ワインサロンにて日本茶講師を務めるなど日本茶の消費拡大などにも精力的に活動。

2025年度、静岡県茶商協同組合の副理事長、日本茶審査技術競技大会において高段位を授与された39名で構成される日本茶鑑定士協会会長に就任。

協働日本事業については こちら

VOICE:松尾 琴美 氏 -食を通じて、皆の幸せを実現する。ワクワクして前に進めるきっかけ作り-

VOICE:たかはし じゅんいち 氏 -パートナーの想いを形にする、「一歩先の写真」を追求-

VOICE:協働日本 相川 知輝氏 – 日本のユニークな「食」の魅力を後世に伝えていきたい –


Challenge Report:かごチャレ2025年度【第1回】開催レポート|参加者の想いが響き合う現場から

鹿児島県が主催し、公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が企画運営を担う「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」。
参加者の挑戦がつながり広がっていく様子を記録し、その意味や魅力をお伝えする記事です。

(レポート作成=黄瀬真理)

立場を超えて挑戦がつながる。多様な人が集うフラットな場

鹿児島県が主導する「新産業創出ネットワーク事業」の一環として、2024年度に発足した「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」は、県内外の参加者が互いの挑戦を知り応援し合うことで、事業創出のうねりを生み出すことを目指す取り組みです。初年度である2024年度には約140名が参加しました。6割が県内、4割が県外や学術機関という多様な顔ぶれが、業種や地域を超えてつながりました。

県内外から多様な参加者が集い、かごチャレが幕を開ける

かごチャレ発の新たな挑戦の循環

県ではこれまでも、補助金支援や伴走型支援、中核人材勉強会などを通じて企業の成長を後押ししてきました。成果を共有し合うことで協業や販路拡大が生まれ、それが更なる新たな挑戦を促します。昨年度のかごチャレでは、そこで出会った4社が合同で、自社商品を活用したポップアップイベント「Glow UP」を開催するなどの動きが生まれました。Glow UPでは、それぞれの強みを掛け合わせて新しい食の体験が創出されました。立ち呑みスタイルで、若い世代や県外の来場者にも焼酎や鹿児島食材の魅力を広げています。
かごチャレは、こうした挑戦が次の挑戦へとつながる“エネルギー連鎖”の場。今年度も全3回の開催を通じてその熱を広げ、鹿児島に新たな動きが芽吹く土壌を育んでいきます。

県内外から集まった多様な参加者

挑戦のストーリーが交差した一日

幕開けとなる初日

2025年度の第一回は、9月26日に開催されました。今回のオープニングゲストトークのテーマは、「グローバル中小企業戦略」。株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役で神田外語大学 客員教授の豊田 圭一氏によるゲストトークを皮切りに、県内企業のピッチ、パネルディスカッションや、参加者交流の場が繰り広げられました。

豊田氏の熱いオープニングトーク
オープニングと県内企業3社の発表

世界各地で挑戦を重ねてきた豊田氏は、「失敗して当たり前。大切なのは続けることです」と語ります。講演では、日本とイタリアに焦点が当てられました。内需が大きい日本に対し、イタリアは内需が小さいからこそ、中小企業が海外市場に挑み続けてきました。その姿勢から学べるのは、「ブランドを磨く」「ニッチで勝つ」「アライアンスで広げる」という三つの戦略です。数多くの挑戦と失敗を経てきた豊田氏の「誰でも一歩は踏み出せる」という言葉には、経験に裏打ちされた重みがあり、会場は熱気と共感に包まれました。

続いて、県内企業3社による新事業のプレゼンテーションが行われました。いずれの発表にも「現場から課題を見つけ、自らの手で形にしていく」熱いエネルギーがあふれていました。

有限会社工房Ryo 
代表取締役 冨田 良一 氏

「持ち上げない移乗機器」を開発。結婚指輪を手掛ける事業からの、まったく異なる分野への挑戦でした。軽量で低コストな仕組みを追求し、日本・米国・中国で特許を取得。お父様の介護という原体験から生まれた“誰かの助けになりたい”という思いが、高齢化という課題に真正面から挑む原動力となっています。

株式会社藤田ワークス 
セールスフロンティアマネージャー 磯脇 武志 氏

板金加工の技術を活かし、「水の揺らぎを金属で表現する」新素材を開発。何百回もの試行錯誤を経て完成した素材は、今では建築空間を彩る新たな表現手法として注目されています。東京での展示会にも継続出展し、製造業から建築業界への挑戦という新たな道を切り拓いています。

株式会社ネバーランド 
代表取締役 加世堂 洋平 氏

鹿児島県長島町で、日本一の生産量を誇る養殖ぶり「茶ぶり」をはじめ、レモンや牡蠣など多彩な地元食材を自社で生産。これらを活かして東京を含む各地に飲食店舗を展開し、地域の魅力を全国へ届けています。顧客の声を起点に、商品開発から生産・流通・販売までを一体で担う仕組みを構築。「あるものを売る」から「売り方を創る」へ。長島町という地域そのものの価値を高めています。


パネルディスカッションで語られた挑戦の原点─自らを駆り立てるものを見つめ直す

パネルディスカッションで登壇者4名が語ったのは、挑戦の背景にある“原動力”。
それは、やらずにはいられない衝動や、できると信じる気持ち、悔しさを糧にする粘り、仲間を想う心─。
立場や分野は違っても、挑戦の源泉はどれも「自分の中にある熱量」でした。

挑戦の原点を語るパネルディスカッション

登壇者のストーリーにふれたあとは、参加者同士がグループで語り合う時間。そこでは、立場や所属を超えて“熱量”や“想い”が交わされ、新たな気づきやエネルギーが生まれていました。

互いの声に真剣に耳を傾ける、グループディスカッションの様子

参加者が語る、かごチャレの価値

実際にかごチャレに参加した方々へのインタビューからも、この場の価値が伝わってきます。

熱量が循環する場」
株式会社下園薩男商店
代表取締役 下園正博氏

グループディスカッションに入る頃には場があたたまり、参加者全員の熱量が最高に高まっていました。

以前「成功した人の話よりも、成功に向けてもがいている人の話を聞け」というアドバイスを受けたことがありますが、この場はまさにそのような場だと思っています。挑戦の過程を共有し合うからこそ、お互いを高め合えるのだと思います。ここからまた新しい一歩を踏み出すきっかけを得られる場だと、いつも期待しています。

普段触れられない“想い”に出会える場」
ハウス食品グループ本社株式会社
品質保証統括部 部長 山本竜太氏

人の想いやパッションそのものに直接ふれる機会は、日常ではなかなかありません。だからこそ、そうしたエネルギーを受け取れるこの場がとても貴重です。グループディスカッションでは、自分の発言に対してフィードバックをもらえたことはもちろんのこと、同じグループの方々の話を聞く中でも「なるほど」と思う気づきが数多くありました。多様な視点にふれることで、自身の思考が深まった感覚があります。

「ごちゃまぜだからこその心地よさ
南大隅町
地域おこし協力隊 原田志穂子

立場や背景を超えたごちゃまぜの場のなかで双方向に語り合える雰囲気が、本当に心地よいです。この場は熱量とあたたかさに包まれていて、そんな場だからこそ本音で話し合えるのだと思います。日常ではなかなか得られない「フラットに、双方向なフィードバック」を与え・受取りあう場が、ここにはあります。


挑戦の循環は次回へとつながる

最後は、Glow UPの次なる挑戦に向けた発表で締めくくられました。回を重ねるごとに食と人、地域がつながり合い、新たな構想も動き始めています。かごチャレから芽吹いた共創の輪が、鹿児島の食の未来をさらに輝かせようとしています。

昨年度かごチャレで生まれたGlowUPの取組み、次回に向けた発表に会場全体がワクワクに包まれる
GlowUPの今後の取り組みに参加者が注目
GlowUP開催時の様子
一人ひとりの想いが響き合い、会場に熱が立ち込める

今年度初回となる今回のかごチャレでは、豊田氏の講演を通じて中小企業がグローバル展開を志す際の視点が共有されるとともに、県内企業の取り組みを知り、一歩踏み出し続けることの大切さを改めて感じる機会となりました。この場をきっかけに参加者同士の対話が広がり、新たな連携や次の挑戦につながる芽が見え始めています。

次回は11月11日に開催されます。オープニングゲストトークのテーマは、「デザイン・ブランディング」。事業やサービスの価値をどう伝え、広げていくか。地域企業にとっても重要な視点が共有される場となる予定です。かごチャレ開催レポートは、挑戦する人がつながり合うことで新たな可能性を育てていくプロセスを、今後も継続的に記録していきます。

※かごチャレの主催は鹿児島県が、企画運営は公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が担っています。

※株式会社協働日本は地域企業と第一線で活躍するプロ人材が一つのチームとなり、事業変革に伴走します。成果を出すとともに、その先の「自ら変わり続ける力」を育みます。詳細はこちらからご確認いただけます。

STORY:若潮酒造株式会社 上村曜介氏 – EC売上1,000万円増。お客様が魅力を語り出す!ファンコミュニティ創出の裏側 –

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、鹿児島県志布志市で焼酎を製造する若潮酒造株式会社 取締役の上村 曜介(かみむら ようすけ)氏にお越しいただきました。若潮酒造は、1968年に地元に5つあった小さな蔵が合併して設立されました。以来、地元志布志市の「日常酒」として愛される焼酎を造り続けています。

今回のインタビューでは、地域に根差した伝統的な酒蔵が、協働日本とのプロジェクトを通じてファンベースのマーケティングに舵を切り、組織として大きな変革を遂げたストーリーを、上村氏の言葉で率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

「地元酒」を全国、そして世界へ。ターゲット拡大を目指して

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。

上村 曜介氏(以下、上村): 鹿児島には「日常酒」という文化があり、地元の焼酎は地元の蔵が造り、地元の人たちが飲むという伝統があります。若潮酒造でも設立以来、志布志市の日常酒を造り続けてきました。しかし、人口減少や高齢化に伴って地元の消費は年々減っていました。

そこで、地元だけではなく、全国や海外でも飲んでもらえるような新商品の開発や、酒蔵を観光コンテンツとして活用し、地域との関係人口を増やす取り組みを徐々に始めるようになっていきました。
具体的には、蔵見学や直売所の設置、最近では焼酎のブレンド体験ができるコンテンツを作るなど、新しい挑戦をしてきました。

酒蔵という場所は人を呼べるコンテンツでもあるので、地元の人に飲んでもらうだけではなく、県外・海外からも足を運んでもらえる取り組みを進めていました。より「産業観光」に注力して伸ばしていきたいと考えていたときに、ちょうど鹿児島県の事業で協働日本との取り組みを知り、専門家の支援を受けたいと思ったのがきっかけです。

志布志市の若潮酒造の蔵元では、オリジナル焼酎を作れるブレンド体験ができる。
ーー県の事業がきっかけだったんですね。こういった「プロの伴走支援」のスタイルには、最初から抵抗はなかったですか?

上村: 実は以前から、副業人材の方にマーケティングやブランディングを手伝ってもらっていたので、抵抗感はありませんでした。協働日本さんは議事録やスケジュール調整まで、サポーターの方のバックアップ体制がしっかりしていて、非常にありがたかったです。

すでに県内で協働日本とのプロジェクトを進めていらっしゃった株式会社イズミダさんや、株式会社オキスさんなどからの紹介もあり、安心して始めることができました。

「ファン」との対話から見えた新たな活路

ーー協働がスタートしてから、実際のプロジェクトはどのように進んでいきましたか?

上村: 最初は「産業観光をどうするか」というテーマでスタートしました。協働プロとしては、藤村昌平さん(協働日本CSO)、渡辺勝弥さん、協働サポーターとして細川謙一さんに入っていただきました。当初は「産業観光」のロードマップ策定や現状の改善ができたらと期待していたのですが、協働プロの方から「今、すでに志布志まで足を運んでくれるファンの方がいること自体がすごい」「わざわざ志布志まで来てくれる人はどんな人なのか、インタビューしてみたらどうか」というアドバイスをいただきました。

志布志は鹿児島県の中でもアクセスが良い場所ではないので、わざわざ足を運んでくれる人には何か特別な理由があるはずだと。そこで実際にアンケートやインタビューを実施したところ、若潮酒造のお酒に熱い思いを持つ「コアなファン」の存在が明らかになったんです。

ーーそこで方向転換されたのですね。

上村: そうです。「産業観光」よりも、若潮酒造の「ファン施策」に注力した方が良いのではないか、という話になりました。ちょうどその頃、若潮酒造のお酒を飲んでファンになったことがきっかけで入社してくれた地元出身の女性社員がいたので、早速プロジェクトに合流してもらい、一緒に取り組みを進めました。

ーーご自身が若潮酒造のファンという社員の方もファンマーケティングに携わってくださるなんて心強いですね。具体的な施策についても教えていただけますか?

上村: ひとつは、新しいSNSアカウントの立ち上げです。これまでは一方的な情報発信が中心でしたが、双方向のコミュニケーションができるプラットフォームを目指しました。商品開発の裏側の動画や、インスタライブで楽しみ方や飲み方の提案を発信するようにしたのですが、新アカウントのフォロワーは1,000人程度にも関わらず、コメントやDMでのリアクションは、既存の企業公式アカウント(フォロワー6,000人)よりも圧倒的に多く、コアなファンの存在が可視化されていきました。

今までは酒屋さんを通しての販売がほとんどで、飲み手との接点は少なかったのですが、こうやって直接飲み手の方と繋がることができ、「どんな人が自分たちの焼酎を好きになってくれているのか」が見えるようになったのは大きな変化です。

ーーDMで心温まるメッセージが届くこともあったとか。

上村: そうですね。毎年メッセージをつけて販売している焼酎があるのですが、「そのメッセージに救われました」といった声が届くこともあり、心が温まりました。そして、もう一つの施策として、そんな熱意のあるコアなファンの方々をアンバサダーとして迎える「アンバサダー制度」の立ち上げを行いました。この8月から運用をスタートしたばかりです。

ーーアンバサダー制度の立ち上げは、一体どのようなことがきっかけだったのでしょうか?

上村氏: 協働プロに協力していただいて実施したファンの方へのインタビューで、「若潮酒造のお酒の良さを周りに伝えたいけど、同じ熱量で語り合える人がいない」という声を聞きました。そこで、若潮酒造ファンの人たちが集まって語り合える場・コミュニティを作ってはどうか?というアイディアが出たんです。

ーーなるほど。新たな取り組みだったと思いますが、制度の立ち上げの中で壁になった部分はあったのでしょうか?

上村: やはり、『誰を対象に、なぜ今制度化するのか』といった基準・理由づけの整理に時間を要しました。

新しい商品を飲んで感動して蔵にお越しになったコアファンの方も多く、元々若潮の焼酎を飲んでいた、つながっていた人たちはアンバサダーではないのか?なぜ新たに増えたコアファンが中心になるのか?などのレギュレーションを決めていくのには、少し時間がかかりました。

この8月から制度がスタートしたという流れになります。

活動内容としては、コアな若潮酒造ファンを6名くらいアンバサダーに認定、年に1〜2回蔵に来ていただいたり、自社のお祭りである「新酒祭り」でブースを手伝ってもらったり、オンラインで飲みながら語り合う会を開催したりという活動を予定しています。また、すでに自発的に知り合いにお酒を薦めてくれたり、イベントを開催してくれたりする方もいて、とてもありがたいです。

ファンマーケティングがもたらした、数値と意識の大きな変化

ーープロジェクトを通じて生まれた具体的な成果や変化についても教えていただけますか?

上村: そうですね。先ほどお話しした、ファンとの交流用のSNSの開設・運用や、アンバサダー制度の開始自体が一つの成果だったと考えています。SNSでも誘客に関する発信や、焼酎のブレンド体験などの独自コンテンツの発信を進めていったこともあり、売上に関してはオンラインショップと直売所の売上が大きく伸びました。
直売所は、来てくださるお客様の人数が年間で、約2,000人から約3,000人と1.5倍に増えました。オンラインショップの売上は、前年の約1,500万円から約2,500万円(+約1,000万円)まで増加しています。

ーーそれはすごい成果ですね!数値的な成果以外に、組織として変化したことはありますか?

上村: これまで、パレートの法則のように「2割のコアなファンが売上の8割を占める」といったようなコアファンが売上の大半を支えるという話は知っていましたが、今回のプロジェクトを通じて、オンラインショップのデータ分析などを行い、改めてその重要性を会社として認識できました。

この成果を受けて、ファン施策をさらに推進・強化していくべきだという会社判断に至り、「広報部」という新しい部署も立ち上げて、本格的に取り組む体制ができたのも大きな変化です。

ーーメンバーの方に変化はありましたか?

上村: 県の支援で、地域再興に挑む全国にファンを持つ新鋭蔵を視察することになり、秋田の男鹿市の酒蔵に行く機会があったのですが、そこも全国に熱狂的なファンのいる新しい酒蔵でした。

男鹿市自体を再興しようとしていて、酒蔵の経営以外にも、地域活性化に関する様々な取り組みをされていました。地域を盛り上げようとしている蔵の姿に触れ、若潮酒造としても取り組むべきビジョンを社内で共有できたのは大きな収穫でした。

ーー伝統的な会社でありながら、フットワークの軽さを感じます。

上村: これまでは、新しい活路を見出すためにスピーディーに新商品を開発することに注力していました。そうした挑戦的な風土は元々ありましたが、今回のプロジェクトを通じて、会社全体として新しいことに取り組む姿勢がより加速したと感じています。

協働日本の「想い」で人が繋がり、新たな挑戦の輪が広がる

ーー以前、副業人材の方と取り組んでいたときとの違いはありましたか?

上村: 以前は、私がプロジェクトマネージャーとして副業人材と社内を繋ぐ役割を担っていましたが、協働日本さんの場合はPM自体の役割もバックアップしてくださり、サポート体制が充実している点が助かりました。これから外部のプロ人材との取り組みを始めたい方には、協働日本さんの伴走支援はとてもおすすめです。

ーープロジェクトの中で、特に印象に残っている言葉やエピソードはありますか?

上村: 協働プロの渡辺さんから「ファン施策の担当者は、数字を追わない方がいい」と言われたことですね。

担当者がフォロワー数や売上を意識しすぎると、ファンが離れてしまうからと。そこで、SNS担当はファン体験の最大化に専念、数字管理は上村氏が担うという役割分担を徹底しました。この視点は、ファンマーケティングを進める上で非常に重要だと感じました。

ーー最後に、今後協働日本がどうなっていくか、メッセージも兼ねてお聞かせください。

上村: 代表の村松さんの熱い想いが、その動きに出ていると感じます。副業に関するプラットフォームはたくさんありますが、協働日本さんは「想い」を核に差別化されているように感じます。

また、同じく協働日本さんが携わっている「かごしまチャレンジャーサミット」という事業を通じて、鹿児島だけでなく全国の人と繋がる機会を提供してもらえるのは本当にありがたかったです。

「かごしまチャレンジャーサミット」で生まれたイベント「GLOW UP」

今回、「かごしまチャレンジャーサミット」で知り合った企業5社とコラボしてイベントを開催するなど、協働日本さんとの繋がりから新しい取り組みが生まれています。同じ熱量を持った仲間と出会える機会は貴重なので、今後もこのような機会を提供してくださることを期待しています。

ーー本日はありがとうございました!引き続きよろしくお願いいたします!


上村 曜介 / Kamimura Yosuke

鹿児島県大崎町出身。筑波大学大学院で微生物学を専攻後、味の素株式会社にて発酵技術の研究職として約7年間勤務。2018年に若潮酒造株式会社に入社。香り系芋焼酎「GLOW」や木樽蒸留ジン「424GIN」、地元の規格外農産物を活用したスピリッツ「f spirits」などの商品開発を担当。2024年より同社取締役。

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


STORY:株式会社栄電社 川路氏・坂口氏 ― 発売から1年で顧客は7倍、サステナブルな地域資源「CASパワー」商品化の軌跡 ―

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社栄電社の川路氏・坂口氏にお越しいただきました。
株式会社栄電社は鹿児島県に本社を構え、計測・制御・情報通信機器などの分野で幅広く事業を展開しています。
その中で、地元の焼酎産業と密接に関わる中、焼酎製造過程で大量に発生する「焼酎粕」の活用に新たな可能性を見出しました。

インタビューでは、協働日本との取り組みを通じて見えてきた地域資源の価値と、「焼酎粕」を乳酸発酵させた商品「CAS(カス)パワー」の事業展開に向けた思いを語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)

焼酎を造る過程で生まれる「焼酎粕」

地域資源としての「焼酎粕」プロジェクトの商品化へ

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いについて教えてください。

川路 博文氏(以下、川路): よろしくお願いいたします。協働日本との出会いは、2022年9月に県の支援事業に応募したことがきっかけです。事業が無事採択され、協働日本さんによる伴走支援がスタートしました。それから2025年1月までの約2年半にわたり、継続的に支援を受けてきました。

坂口 研三氏(以下、坂口): 弊社は計測機器や制御システムを手掛ける会社ですが、焼酎メーカーさんともお付き合いがあります。その中で、焼酎を造る際に大量に出る「焼酎粕」という副産物の存在を以前から知っていました。

焼酎粕は、蒸留後の液体や固形物が混ざったもので独特の香りや栄養分を多く含みます。従来は家畜の飼料や肥料として利用されてきましたが、需要減少や処理コストの増大により、焼酎メーカーにとっては負担となっているのが現状です。

「毎年大量に出る未利用の焼酎粕を何とか活用できないか」ということで、2017年からこの焼酎粕を活用するプロジェクトを開始しました。2019年には経産省の事業認定を受け本格的に事業化に取り組んでいたのですが、私たちには商品化や販路拡大といったテーマにおける経験がなかったので、ちょうど県の支援事業でアドバイスがもらえるのならと応募しました。

川路: 最初は、「伴走支援」という仕組みについてもあまりピンときていなかったのですが、何度か協働プロとの打ち合わせを重ねていくうちに、弊社の事業にはぴったりの支援の形だと感じるようになりました。

焼酎粕から生まれた「CASパワー」は、生物や植物の成長促進に寄与する機能性飼料

年単位のテストマーケティングと調査を通じて出た成果から、商品化、有償販売のスタートへ

ーー実際にプロジェクトがスタートしてからは、どのように取り組みが進んだのかお聞かせいただけますか?

川路: はい、一番最初は商品化するための課題の洗い出しからスタートしました。商品化の方向性の検討やターゲットの絞り込み、販売方法のアドバイスなど、段階を追って協働プロにアドバイスをいただきながらプロジェクトを進めていきました。
協働チームには、協働日本CSOの藤村昌平さん、横町暢洋さんを始め、2年半の間で様々なプロ人材の皆さんに入っていただきました。

坂口: 商品化の方向性の中では価格設定を決めることや、ターゲットへのアプローチ方法を考えることは特に難しかったですね。これまで私たちは営業やマーケティングといったことを経験したことがなかったので、漠然としていた考えを、協働プロの皆さんとの会話を通じて整理していただきました。

ーープロジェクトを進める中で、テストマーケティングや調査も進めていったのでしょうか?

川路: はい。「CASパワー」は前述の通り、焼酎粕を使った飼料・肥料です。そこで、実際にフィールド調査として、実際に農家の方や魚の養殖業者の方などに「CASパワー」を使っていただき、ターゲットを絞り込んでいきました。初期に試したのは、酪農(乳牛)、魚の養殖における飼料としての活用でした。調査には約1年かかるので、並行して野菜などの肥料として、肉牛の飼料として、など複数のテストを実施しています。

業態や価格感のマッチ度などを鑑みて、現在は魚の養殖、肉牛の育成における飼料としての利用、そして農家さんの作物の植物活性剤としての利用をターゲットに定めています。

ーー1年間とは…検証にはどうしても長い期間がかかるのですね。

川路: はい。どうしても作物の収穫や、実際に各種飼料として利用して出荷できるようになって、サンプルデータをいただき品質にどのように影響が出たかを計測するまでには時間がかかります。例えば、農業利用ではスナップエンドウやカボチャなどの栽培期間中に250倍希釈液を灌水として3回程度使用することで収穫量が増えたり、酪農利用では、乳牛1頭に毎日280mlのCASパワーを給与することで、年間平均で乳量が5.6%増加するという結果が得られています。

こういった成果と、実際の各種作物や乳・牛肉などの販売価格のバランスも鑑みて、「CASパワー」の価格についても決めていきました。

いくつものテストマーケティングを経て、2024年4月からは有償販売をスタート、販売を拡大するフェーズに入っていきました。

実際に飼料としてCASパワーを与え、収量や品質をチェックする

調査結果や受賞を裏付ける、口コミの輪が広がり1年間で顧客は7倍超へ

ーープロジェクトを通じて、具体的にどのような成果や変化がありましたか?

川路: 実際に商品として販売をスタートすることができたことはもちろん、2024年4月の段階では利用者が6事業者だったところから、2025年4月現在では45事業者にご利用いただけるようになりました。

ーー1年間で顧客が7倍以上になったのはすごいインパクトですね。

川路: ありがたいことに、地域の事業者の方同士の口コミで広げていただいていて、運もよかったと感じています。

その他にも、協働日本を通じて多様なネットワークが広がり、様々なところで講演させていただきました。その講演を通じて「CASパワーを試してみたい」というご縁に恵まれることもありましたし、2023年には鹿児島県環境保全活動優秀団体表彰、2024年にはかごしま産業技術賞奨励賞をそれぞれ受賞しました。賞をいただいた時はとても驚きましたが、協働日本の皆さんの後押しもあり、様々な場所で宣伝させていただいたことも影響しているのではないかと思っています。

実際、受賞により県からのお墨付きをいただいた形になり、営業の際にもアピールしやすくなっています。

川路: 実際に伴走支援を受けてみて、自分にとって大きかったことはセッションでさまざまな話を聞いてもらい、それに対してさらに質問をしてもらうことで頭の整理ができたことだと感じています。今の状態を聞いてもらうことで、頭の中できちんと整理をし、ネクストステップについて的確にアドバイスをしていただくことの繰り返しです。

聞き役になっていただけたことも本当にありがたく、「今週はどうでしたか?この前話していた件はどうなりましたか?」など、進捗を報告しなくてはという意識が働くので、セッションに合わせてスケジュールを組んでいくようになったのもメリットでした。
また、協働プロとのやりとりを通じて坂口と目線や意識のすり合わせができて、社内のコミュニケーションにも良い影響があったように感じますね。

坂口: 我々は営業については素人です。協働プロとのセッションを通じて、プロ人材の目の付け所を学び、アドバイスをいただいて、営業の一連の流れを具体的に知ることができました。まだまだ完全に実現していくところまでは届いていないかもしれませんが、それでもこれから何をすれば良いのか、目標や計画は立ったように思います。

ーー協働プロとのやりとりの中で印象的だったことはありますか?

坂口: 約3年間、いつも「ものが良い、筋がいい」、「CASパワー自体の取り組みの方向性がいい」と言っていただいていました。「褒めて育てる」を体現していただいていたと思います。時にもどかしく感じることもあったかもしれませんが、励まされながら育てていただいたという印象です。

川路: 支援してくれた協働プロの皆さん自身が「CASパワー」のファンになってくださって、いつも褒めていただいていたこと自体が私たちの自信に繋がっていましたね。

坂口: 一昨年30t製造した「CASパワー」ですが、昨年は50t、そして今年は100tの製造販売を目指しています。協働日本の皆さんの期待に応え、少しでも売れる商品にしていきたいです。

協働日本でつながる活気。エネルギーを集結させたような場作りが魅力

ーー社外のプロ人材と実際にプロジェクトに取り組んでみて、どのようなことを感じたかお伺いできますか?

川路: 副業的な働き方があることは知っていましたし、コンサルティングを受けたこともありましたが、協働日本の伴走支援という形は初めて知りました。

先ほどもお話ししましたが、協働日本の伴走支援では、プロ人材が「聞き役」にもなってくれて、一緒に取り組めることが大きな特徴だと感じました。外に出てお客さんに聞いた話を協働プロの皆さんに伝え、整理しながら「この方向でいこう」など方針を一緒に決めていきました。時間はすごくかかりましたが、その時間にもじっくり付き合っていただけたことが良かった。私たちの「CASパワー」の事業には特に伴走支援が向いていたのだと思います。

坂口: 弊社と同じように、商品開発をしていて、販促計画をこれから作っていく、切り開いていく必要がある企業の方には、伴走支援の形が合っているのではないかと思います。

ーーありがとうございます。最後に協働日本に一言メッセージをお願いします!

坂口: 協働日本の皆さんには、伴走支援だけでなく、同じようにプロジェクトに取り組む方達と交流できるイベントなどの機会を作っていただくなど、感謝していることがたくさんあります。

事業を始められる方、進めておられる方はやはり元気な方が多い印象があります。その中でも特に協働日本のイベントに集まる方達の活気はすごく、皆のエネルギーを集結させているような場になっていました。

我々も、そういった機会に度々パワーをもらってきました。これから頑張ろうとする人も、そういう強いエネルギーに助けられることがあるのではないかと思っています。
これからもイベントには参加していきたいですし、若い人の力を見てもっと勉強していきたいと思っています。

川路: 協働日本の皆さんには、今後もよき相談相手として、また色々と相談に乗ってもらいたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします!

ーー本日はありがとうございました!


川路 博文 / Hirofumi Kawaji

㈲栄電エンジニアリング 取締役本部長

鹿児島市出身。コンピュータソフト開発、ビジネス専門学校教員を経て、㈱栄電社 バイオ環境事業部に入社。
排水処理における窒素除去装置の開発をはじめ、環境技術分野の研究・開発に携わっている。

坂口 研三 / Kenzo Sakaguchi

株式会社栄電社 バイオ環境グループ顧問

1954年生まれ、鹿児島市水道局で主に上下水道の水質管理に従事。
その後、(株)栄電社バイオ環境グループで水処理装置や焼酎粕の有効利用技術の開発を担当。
スポーツ大好き。若い頃は野球やマラソンに親しみ、50歳を過ぎてからはヨガで心身を鍛えています。

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STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


VOICE:宮嵜 慎太郎 氏 -大切にしたいのは“現場感”。協働の形だからこそ、地域の面白さと経済活性が加速する-

協働日本で活躍するプロフェッショナルたちに、事業への想いや仕事の原動力を伺うインタビュー企画「VOICE」。

今回は、事業開発支援のプロとして地域企業の伴走支援に取り組む宮嵜慎太郎さんにお話を伺いました。
鉄道会社でのベンチャー事業経営やスタートアップとの連携をはじめ、地域活性化や中小企業支援など多岐にわたるキャリアを持つ宮嵜さん。父親支援のNPO活動にも積極的に参加されており、地域、組織、そして人に向き合い続けてきました。現在は協働日本の協働プロとして、より本質的な地域活性に取り組んでいます。

支援先での変化やご自身の価値観の変遷、そしてこれからの展望について伺いました。

(取材・文=郡司弘明・山根好子)


地域経済の本質的な活性へ。新しいアプローチとの出会い

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、現在のお仕事やこれまでのご経歴について教えてください。

宮嵜慎太郎氏(以下、宮嵜):はい、よろしくお願いいたします。

現在、鉄道会社のベンチャーキャピタル部門で、スタートアップとの連携や新規事業の立ち上げ・経営を担当しています。社外では、父親支援をテーマにしたNPOでも活動しており、講演やイベントの企画、行政委員なども務めています。これまで経営企画や人事、病院事業経営など幅広い業務に携わってきました。

ーー幅広いご経験をお持ちですね。そんな宮嵜さんが協働プロとして協働日本に参画されたきっかけについても教えていただけますか?

宮嵜:ある海外ファンドの会合で、協働日本CSOの藤村昌平さんにお会いしたのが最初のきっかけです。

私が勤める鉄道会社にとっても、地域経済の活性化は鉄道利用促進に直結する重要なテーマ。個人としても長らく関心を持っていました。

しかし、地方創生という文脈では、どうしてもボランティア的な色が強くなりがちで、ビジネスとしての持続性に欠けるケースも少なくありません。本質的な地域経済の活性化に繋がりにくいという課題感を抱いていたところ、藤村さんとお話しする中で、協働日本は地域に根差しながらもビジネスとしてしっかりと機能する活動を展開しており、その点に非常に興味を持ちました。

協働日本のことをさらに詳しく知りたいと思い、代表の村松さんをご紹介いただきました。村松さんのお話から伝わってきた熱い想いや、事業に対する理念に強く共感し、その場で二つ返事で「ぜひ共に活動したい」と、協働プロとしての参画を決めました。

社員が主役になっていく。現場インサイトと戦略の掛け合わせが組織を強くする


ーーこれまでどのような協働プロジェクトに携わられたのでしょうか?

宮嵜:これまでに鹿児島県内の2社、株式会社イズミダさんと株式会社ワカマツ自動車さんのプロジェクトに関わりました。いずれも私のこれまでの事業運営や組織マネジメントの経験を活かし、顧客視点に立った事業開発や組織開発に取り組みました。

ーーそれぞれ、どのようなプロジェクトだったのですか?

宮嵜:イズミダさんでは、「新しい魚屋の形をつくる」というテーマのもと、鮮魚店に併設された食堂「出水田食堂」のプロジェクトに携わりました。鮮魚店未経験の2名のスタッフによるSNSでのプロモーションや店舗運営を中心に、伴走支援を行いました。

私にとっては初めての協働プロジェクトでしたが、最も驚いたのは協働日本の支援スタイルです。プロジェクト開始直後にまず取り組んだのは、会社の価値や課題、社員自身のキャリアを見つめ直すためのワークショップでした。本業でもコンサルティング会社と関わることはありますが、私の中にあった「コンサルティングの進め方」のイメージとはまったく異なる手法で、とても新鮮でした。

そして実際に伴走を進めていく中で、最初は口数が少なかった社員の方々が、自分の想いや考えを徐々に言葉にし、事業を動かしていくようになっていった。まさに“主役になっていく”という感覚でした。今振り返ると、最初の段階で社員の方々の想いを丁寧に言語化したことが、その後の行動の原動力になっていたのだと感じます。

継続的なビジネスに育てていくためには、社員が自分の意志と想いをもって行動する主役になることが、とても重要なのだと改めて実感しました。

ーー“社員が主役になっていく”という言葉、とても印象的です。ワカマツ自動車さんでの取り組みはいかがでしたか?

宮嵜:ワカマツ自動車さんでは、マーケティング戦略とブランディング戦略の策定を支援しました。ここでも、「私たちはどんな会社でありたいのか」「自社の強みとは何か?」といった問いを出発点に、内外の環境分析や顧客との接点形成の検討を進めました。

プロマネとして入られていた富田慎司さんが専門的な論点に問いを立て、私は社員の皆さんから意見やアイデアを引き出す役割で進めていました。やがて、社員の皆さんが提出する課題(宿題)のクオリティも打率も向上し、期待を超えるアウトプットが生まれるようになっていきました。

社員の変化を見て、社長も「皆が考えたように進めていいよ」と、現場に大きな裁量を委ねてくださいました。

協働プロジェクトは、まず経営者や代表者とのキックオフから始まることが多いですが、徐々に社員が主体的に動き出し、最終的にはプロジェクトの中心に立っていく。その変化を目の当たりにできることは、この活動の大きなやりがいです。

AI時代だからこそ、問い・選択・体験が人間の役割に

ーー社員の方々の変化が、プロジェクト全体に良い影響を及ぼしたのですね。ご自身にも何か変化はありましたか?

宮嵜:そうですね。大きな変化がありました。特に実感しているのは、AI時代において人間に求められる役割が明確になったということです。

私はもともと仮説検証やデータ分析が得意で、戦略的に物事を進めるのが好きなタイプでした。しかし今では、データ分析やアイデア出しといった作業は、AIがいくらでも代替してくれる時代です。

一方で、「問いを立てること」「選択すること」「実行して体験すること」は、人間にしかできません。私はそれを「問い=願い」「選択=覚悟」「実行=体験」と捉えています。問いは、AIに指示を出すプロンプト(指示文)となるものであり、そこに人間の願いが宿ります。そして、出てきた多数のアイデアの中から何を選ぶかには覚悟が必要です。最後に、それを実行して体験に変えていくのは人間の役割です。

これはまさに、協働プロジェクトの中で私たちが行っていることと同じだと感じています。


地域の多様性と文化を活かし、「面白い日本」をつくる

ーー今後、協働日本で実現していきたいことはありますか?

宮嵜:日本全体が人口減少や市場縮小に向かう中で、地域の多様性や文化資産を活かす地方創生は非常に重要です。都市の均質化ではなく、「地方だからこそ面白い」という世界観を広げていきたいと思っています。

たとえばコロナ禍においても、鹿児島では経済の落ち込みが比較的抑えられていました。食を中心とした域内経済が活発であったことが大きな要因であり、それは地域独自の文化や資産が根付いているからこそだと思います。

昨年には、鹿児島の焼酎や日本酒といった伝統的な酒造文化が世界遺産に登録されました。これは、グローバル化やデジタル化が進む現代において、地域独自の価値が逆に際立つことを象徴している出来事だと感じます。

だからこそ、地域で生き生きと活動する主役たちを支え、面白く多様な日本をつくる。その延長線上に、世界を面白くしていく未来があると思っています。


ーー最後に、協働日本へのメッセージをお願いします。

宮嵜:はい。協働日本には、実践者だからこそ提供できる価値があります。現場で泥臭く伴走し、経営者や社員と共に悩み、笑い、変化を生む。そうしたリアルな手応えのある支援が、この時代にこそ必要とされていると感じます。

また、地方の活性化は、国の戦略としてもますます重要になっていくはずです。だからこそ、もっと多くの地域で活動を広げていけるようにしていきたい。そのためにも、自身のスキルを高め続けながら、協働日本に関わる仲間がもっと増えてほしいと思っています。

ぜひ皆さんも一緒に、日本をもっと面白くしていきましょう。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!

宮嵜:ありがとうございました!

宮嵜 慎太郎 / Shintaro Miyazaki

JR西日本イノベーションズ
イノベーションイニシアティブ室長

神戸大学経営学部卒業後、2005年にJR西日本へ入社。
鉄道や医療事業の経営企画、医療法人設立などを経てグループのベンチャーキャピタルに出向し、
不動産事業等を社内起業・経営。
そのほか、父親支援のNPO法人理事、行政の審議会委員などを兼任し、現在は男性管理職として
1年間育休中(出向会社では初)。神戸大学MBA、保育士。

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STORY:株式会社白山 金原氏 坪本氏 -AI活用のPULL型営業ツールの構築で成約獲得。世界シェアNo.1への挑戦-

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

実際に協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのようにプロジェクトを推進しているのか、インタビューを通じてお話を伺っていきます。

今回は、株式会社白山の金原 竜生氏、坪本恵理奈氏にお越しいただきました。

株式会社白山は、1947年に創業した通信部品メーカーです。黒電話を雷から守る「保安器」の製造からスタートし、現在では光通信に欠かせない光コネクタ部品を手掛ける企業へと成長。光コネクタ部品では世界シェア2位を誇る企業です。

AIを活用し、記事作成・トラッキング・ペルソナの可視化までを可能にする標準プロンプトを構築。SNS発信を、従来の情報提供から“営業を引き寄せるコンテンツ”へと進化させる取り組みに挑戦しています。

今回のインタビューでは、協働日本との取り組みで得た変化、組織としての意識の変化、今後の展望について、率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明、山根好子)

属人化していた業務を、仕組み化へ。未経験メンバーとの挑戦

ーー本日はよろしくお願いいたします。まずは、協働日本との出会いや、プロジェクトが始まったきっかけについて教えてください。

金原竜生氏(以下、金原): よろしくお願いいたします。

坪本恵理奈氏(以下、坪本): よろしくお願いいたします。

金原: 当社は1947年に創業し、当初は”黒電話”の雷対策用「保安器」の製造を行っていました。そこから時代が進む中で、現在では光データセンター向けの光コネクタ部品「MTフェルール」などの製造が主力事業になっています。

そんな当社が協働日本と出会ったきっかけは、プライベートの知人であった山岸製作所の山岸社長からのご紹介でした。複業人材の活用により「面白いことをやっている」という話を聞いて興味を持ち、ちょうど協働日本代表の村松さんのセミナーがあるので来てみないか?とお誘いいただいたため、すぐに参加を決めました。
実際にセミナーでお話を伺うと、非常に興味深い仕組みだと感じ、ぜひ自社でも何らかの活用ができないかと考えていました。

それから1年ほど経ち、2024年の11月頃に私の所属するグローバルマーケティング室に坪本がジョインしました。これまでマーケティングは私が一人で担当しており、仕事量も多く属人化していたため、業務の仕組み化・体系化が急務だと感じていました。

これを機に外部人材に入ってもらうことでチームとして一緒に学びながら業務を進めていけそうだと感じて、改めて村松さんにご連絡させていただき、協働が始まりました。

ーーずっと活用を検討いただいていたのですね。

金原: ちょうど、石川県の「令和6年度プロフェッショナル人材確保支援事業」で、デジコーチの伴走支援の募集が始まったのもいい機会でした。

以前から「Linkedin」などのSNSを使って企業の情報発信をしていたのですが、前述の通り私が一人で取り組んでいましたし、海外出張も多かったこともあり継続的な発信を続けることが難しく、「仕組み化して継続的にやっていきたい」という思いがありました。その頃、会社HPの方のコンテンツ記事の下書きをAIで作るということも試してみていて、時短になったという肌感があり、SNSでの情報発信とデジコーチのコンセプトも親和性が高いだろうと感じていました。

そういった背景から、メンバーが増えるタイミングに合わせ、デジコーチでAIを活用したLinkedinでの情報発信を進めていくことになりました。


半日かかっていた記事作成が、1〜2時間に短縮。顧客に響く記事作成を実現。

ーー実際に協働プロジェクトが始まってからのお取り組みについても教えてください。

金原: はい。協働プロとしては、横町暢洋さん、松本亜也さんに入っていただいています。

元々私が発信を担当していた頃も、0ベースで記事の内容を考えていたので記事作成に時間がかかり、個人の動きとしても限界を迎えていたのが正直なところです。ましてや坪本は他業界からの転職ということもあり、全く知識がないところからのスタートだったので、もっと苦労をしそうだということは想定できていました。

ーー確かに、未経験の方が製品の紹介記事を書くのは難易度が高そうですね。

坪本: 私はアパレル業界からの転職で、金原の言う通り全くの未経験からのスタートだったので、当初とても不安に思う部分もありました。
そこで、デジコーチのお二人には、 Linkedinでの投稿作成のためのプロンプトなどを一緒に構築していただくことで、私のように業界や製品知識のないメンバーでも、記事を作ることができるような仕組み化を目指しました。

現在では、Linkedinでの投稿作成の際にHPに投稿しているコンテンツ記事をCopilotで要約し、記事の形にしていっています。Linkedinの記事は英語で投稿しているので翻訳にもAIを使っています。AIを活用することで、記事作成から翻訳、内容の確認という一連の流れを1〜2時間の作業で行うことができています。

もしも自力で1から記事作成するとしたら3〜4時間はかかると思いますし、当初であれば半日〜丸1日かかっていたかもしれません。
AIを通してできた記事は目視で確認するのですが、「製品名を間違えていないか」など軽微なチェックがほとんどでポイントも明確なので安心して取り組めていて、とても感謝しています。

金原:投稿サイクルも、最初は2~4時間かかっていた作業が、今では1~2時間に短縮。不定期だった投稿も週2回ペースで継続できるようになり、「発信したいから学ぶ」意識へと大きく変化しました。アウトプットを前提としたインプット姿勢も育まれ、社内にもよい影響を与えてくれています。

ーーなるほど。今の形になるまで、試行錯誤はされたのでしょうか。

坪本: そうですね。最初はプロトタイプとしてお手本のプロンプトを組んでいただき、精度を上げるために一緒に色々試していきました。元々のコンテンツから、発信する記事の形に変えるにあたって、必要な情報や追加したいワードなどを入れてブラッシュアップしていったことで、格段に作りやすくなってきています。

私は前職ではAIを活用する機会もなかったので、この取り組みで初めてAIを活用しました。未経験から製品紹介のLinkedin投稿をするというミッションの中でマーケティングやAIの知識がある方と一緒にやることで、スムーズに取り組むことができたという実感があります。

ただ記事作成の時間短縮ができているだけでなく、未経験者の私が自分で1から勉強するよりも、今のクオリティの成果物を出せるようになるまでの時間自体が短縮できたのではないかと思っています。

金原: また、記事の発信後、トラッキング、データ収集や分析から、ペルソナを可視化するところまでも協働プロに協力いただき、Copilotを活用して効率的な発信が可能になっていきました。


仕組み化による成果が続々。問い合わせ・成約にも直結

ーープロジェクトを通じて出た成果や変化についても教えてください。

金原:デジコーチで伴走していただき3ヶ月という期間の中で、やはり大きかったのは「仕組み」として発信を続けられるようになったことです。これまで200文字+写真というボリュームだった投稿が、600文字+写真という形にかわり、製品の情報も密になってコンスタントに発信することができるようになりました。

インプレッションや反応率は数値として見えるため、改善の効果も目に見えやすいです。実際、Linkedinのフォロワーは3ヶ月間で20%増、投稿を始めた初月からインプレッションが約5倍、リアクションは9倍に増え、アメリカでの展示会にも投稿がきっかけでブースを訪れてくださった方もいらっしゃいました。

さらに2025年春からは新たな年間契約体制へ移行し、取り組みは一層加速しています。グローバル展開に向けたマーケティング支援も本格化し、協働日本さんとも長期的な伴走支援を開始しています。


金原:実際に記事を起点とした問い合わせから、成約につながるケースも生まれており、手応えを感じています。AIツールや外部プロとの連携により、これまで属人的だった情報発信が「高品質な営業資産」へと変わりつつあり、今後もこの体制を継続・拡張していく予定です。

成果も出ており、2024年12月~2025年2月のわずか3ヶ月間で、欧州で550万円の成約1件、試作依頼5件(欧州・北米・南米)、問い合わせ8件を獲得。その多くがLinkedin投稿を起点とする成果であり、グローバルへの広がりを力強く後押ししています。

最近では、GAFAMクラスの世界トップクラスのグローバル企業からも問い合わせをいただくことが出てきており、単なるSNS運用支援にとどまらず、グローバル市場に通用するLinkedinマーケティング戦略を協働日本と共に構築しつつあります。

現在では欧州・北米・南米を中心に、大手グローバル企業からの反応も急増しており、光コネクタ部品での世界シェア1位獲得に向けて引き続き取り組みを進めていきたいと思っています。

これからの挑戦。WEB活用、組織力強化へ

ーー今後の展望についても教えてください。

金原: はい。これからは、WEBを使った新規取引の獲得をさらに自動化していきたいと考えています。

AIが得意な部分はAIに任せつつ、営業・マーケティングのメンバーが、新規や既存のお客様との商談など“人にしかできない価値”に時間をかけられる体制をつくっていきたいです。

そのために、Salesforceを導入して、ナレッジや案件情報をきちんと共有できる仕組みを作ろうとしています。
あわせて、WEBアクセスの分析も進めて、そこから市場の反応を素早く営業にフィードバックできるようにする予定です。

また、LinkedInを起点にしたターゲティング広告や、海外展示会への出展も本格的に進めるつもりです。 オンラインとオフラインの両方から、グローバル市場へのアプローチを強化していきます。

さらに、営業やマーケティングのチームメンバーの知識面も底上げしていきたいです。
単なる情報発信だけでなく、より戦略的な市場開拓活動ができる組織に成長させていきたいですね。

ーーありがとうございます!

「伴走者」として支えてくれる存在

ーー今回社外プロ人材との取り組みを通じて、率直にどのように感じられましたか?

金原:白山として、社外のプロ人材を活用するのは初めてでしたが、 私自身もプロボノで他社の支援をしているので、はじめから協働日本の仕組みはイメージがつきやすかったです。

複業人材全般というよりも「協働日本の協働プロ」についての印象ですが、本当にアグレッシブで熱意がある。そのおかげで我々が程よく緊張感を持ち、心地よいプレッシャーを与えられて頑張れているという実感があります。

坪本: 私も、先ほどお話しした通り未経験からこの業務、プロジェクトに携わることになったので不安もありましたが。1から全部教えていただけたことを本当にありがたいと思っています。

金原が言う通り、協働プロの熱量がすごく高いので、「自分もやらなければ」と言う思いを持たせてもらえる存在です。「こうなったらいいな」というものも「それやれそうですよ!」と言ってくださるので、自分ではイメージ出来ない部分があっても「できるのかも」と思えるようになっているという自分の変化も感じます。

ーー協働プロとの対話の中で、前向きに取り組めそうだと感じていただけるようになっているんですね。最後に協働日本へ一言メッセージをお願いいたします。

金原:協働プロの皆さんは、「指導する人」ではなく「伴走者」として関わってくださいました。結構特殊な関係性だと感じていて、お願いしている立場ではあるけれど、先生でもなく、ゴールに向かって一緒に走っている仲間という感覚です。
このスタンスがとてもありがたかったですね。

プロジェクトに全然関係ないことも含め、会社で何か成果が出たら嬉しくてすぐ共有してしまうくらい、よくコミュニケーションを取らせていただいていますし、「こんなことができたら面白いんじゃないか?」という思いつきも気軽にお話できるんです。

本当に心理的安全性が高く、些細なことでも相談でき、「やってみよう!」と実現に向けて導いていただけることも、プロジェクトを継続していく上でとても重要だと思っています。
県の事業での伴走支援は一旦区切りを迎えていますが、これからも継続して伴走支援をお願いすることにしています。

これからも、このつながりを大切にしながら、次の挑戦にも前向きに取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

白山はこれからも、世界トップを目指す覚悟を持って挑戦を続けていきます。そして、協働プロたちもまた、単なる支援者ではなく、白山と同じ志で「世界No.1」を本気で目指す仲間として伴走してもらいたいと思っています。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました!

金原: ありがとうございました。


金原 竜生 / Tatsuki Kimbara


株式会社白山(2021年2月入社)
グローバルマーケティング室 室長
1988年愛知県生まれ。家族4名(子ども2人)

#営業 #マーケティング #英語 #ドイツ語 #中国語
#スペイン語 #知的財産管理技能士 #海外渡航(32ヶ国)

協働日本事業については こちら

STORY:奄美大島での伝統産業(大島紬)活性化プロジェクト-取り組みを通じて感じる確かな成長-

VOICE:藤村昌平×若山幹晴 – 特別対談(前編)『「境界」が溶けた世界で、勝ち抜いていくために必要なこと』 –


NEWS:鹿児島で令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会を開催しました

2025年2月17日、協働日本は鹿児島県の天文館にあるコワーキングスペース「HITTOBE」にて、令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」の最終報告会を開催しました。約7ヶ月にわたり地域企業と取り組んできた成果を発表し、現地の熱気と気づきに満ちた一日となりました。

【報告会の様子はこちら(動画で見る)】

協働日本 令和6年度「新産業創出ネットワーク事業」プロジェクト最終報告会より

【登壇企業・参加企業の取り組みと成果】

株式会社エルム(宇宙関連市場への挑戦)

・衛星地上局の認知拡大を目指し、展示会やSNS戦略を展開

・SNSフォロワー数が7ヶ月で40倍に

・約2,000万円の受注、2億円超の見積成果を創出

株式会社1129(経産牛のブランド化)

・厚切りステーキキット開発でBtoC市場へ新規参入

・ハロウィン販促で前年比5倍の販売実績

・新事業としてビーフジャーキー事業を展開

株式会社第一塗料商会(BtoC塗装サービス拡大)

・個人向け塗装ブランド「塗屋本舗」を展開

・ターゲット層の明確化とSNS活用により反響拡大

・有償案件を短期間で10件受注、4ヶ月で3,300万円の売上

有限会社鹿児島ラーメン(DXによる経営改革)

・日次報告のデジタル化、業務可視化で組織力向上

・顧客アンケート起点の商品開発で人気メニュー創出

・スタッフ主導での改善が進み、持続成長の基盤を構築

報告会では、参加企業同士や行政関係者との情報交換も活発に行われ、協働を通じた学びとつながりが新たなチャレンジへの一歩となりました。

協働日本公式noteでも、当日の様子をご紹介しております

『鹿児島発 協働の最前線!鹿児島県新産業創出ネットワーク事業 最終報告会2025』

https://note.com/kyodonippon/n/n82a9d…

本事業にご協力いただいた事業者の皆さま、鹿児島県庁ならびに鹿児島産業支援センターの皆さまに、心より感謝申し上げます。

今後も協働日本は、地域に熱を届ける「協働」の取り組みに力を注いでまいります。

協働日本は、地域企業の挑戦に伴走するパートナーとして、最適なプロ人材チームで事業推進を支援しています。

事例紹介や支援のご相談は [お問い合わせページ] よりお気軽にご連絡ください。

Email:ippo@kyodonippon.work

NEWS:セミナー開催のお知らせ「石川県 中小企業経営変革サミット」(2025年3月4日開催)

セミナー開催のお知らせ 令和6年度 「石川県 中小企業経営変革サミット」

この度、石川県・ILAC主催のもと、石川県内の中小企業経営者を対象に、経営変革を支える人材活用のノウハウを共有するセミナー「中小企業経営変革サミット」を下記の通り開催いたします。

柔軟な人材戦略を通じて新たな価値を創造し、次の成長を目指すための機会をご提供いたします。ご関心のある、石川県内の中小企業経営者はぜひご参加ください。

お申し込みはこちらから

主催:石川県・ILAC
運営:株式会社協働日本


【日時】
2025年3月4日(火) 16:00~18:30

【会場】
金沢 未来のまち創造館
(石川県金沢市野町3丁目11-1)

【対象】
石川県内の中小企業経営者


【プログラム】
■ 第一部 基調講演
  - 山岸製作所/ぶどうの木各社より講演

■ 第二部 成果発表会
  - 今年度協働日本支援企業による成果発表ピッチ(石川メッキ工業株式会社・株式会社越山商店・株式会社白山)
  - 登壇者を交えたパネルディスカッション

■ 第三部 交流タイム
  - 登壇者と参加者との意見交換

────────────────────────────

【基調講演 登壇者】

・山岸 晋作(株式会社山岸製作所 代表取締役社長)
・折坂 啓介(株式会社ぶどうの木 食品事業部 事業部長)
・加藤 高聖(株式会社ぶどうの木 品質保証部 部長)

セミナー参加条件

複業・副業人材との協働に関心のある石川県内の企業様
※参加費は無料です

セミナー開催にあたって

石川県内の中小企業経営者を対象に、経営変革を支える人材活用を学ぶセミナーを開催します。成功事例を共有し、プロ人材(副業・外部人材)の活用法を具体的に紹介します。成果発表会では進行中のプロジェクト成果も共有し、外部人材活用の第一歩を支援します。柔軟な人材戦略で新たな成長を目指すためのヒントをご提供いたします。

お申し込み方法

申し込みフォームに情報を記入してください。

後日スタッフから案内メールをお送りします。記載内容をご確認の上、当日ご参加をお願いします。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。


セミナー案内

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お問い合わせ・連絡先
ippo@kyodonippon.work