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NEWS:かごチャレ2025年度第1回開催レポート|参加者の想いが響き合う現場から

鹿児島県が主催し、公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が企画運営を担う「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」。
参加者の挑戦がつながり広がっていく様子を記録し、その意味や魅力をお伝えする記事です。

(レポート作成=黄瀬真理)

立場を超えて挑戦がつながる。多様な人が集うフラットな場

鹿児島県が主導する「新産業創出ネットワーク事業」の一環として、2024年度に発足した「かごしまチャレンジャーサミット(通称:かごチャレ)」は、県内外の参加者が互いの挑戦を知り応援し合うことで、事業創出のうねりを生み出すことを目指す取り組みです。初年度である2024年度には約140名が参加しました。6割が県内、4割が県外や学術機関という多様な顔ぶれが、業種や地域を超えてつながりました。

県内外から多様な参加者が集い、かごチャレが幕を開ける

かごチャレ発の新たな挑戦の循環

県ではこれまでも、補助金支援や伴走型支援、中核人材勉強会などを通じて企業の成長を後押ししてきました。成果を共有し合うことで協業や販路拡大が生まれ、それが更なる新たな挑戦を促します。昨年度のかごチャレでは、そこで出会った4社が合同で、自社商品を活用したポップアップイベント「Glow UP」を開催するなどの動きが生まれました。Glow UPでは、それぞれの強みを掛け合わせて新しい食の体験が創出されました。立ち呑みスタイルで、若い世代や県外の来場者にも焼酎や鹿児島食材の魅力を広げています。
かごチャレは、こうした挑戦が次の挑戦へとつながる“エネルギー連鎖”の場。今年度も全3回の開催を通じてその熱を広げ、鹿児島に新たな動きが芽吹く土壌を育んでいきます。

県内外から集まった多様な参加者

挑戦のストーリーが交差した一日

幕開けとなる初日

2025年度の第一回は、9月26日に開催されました。今回のオープニングゲストトークのテーマは、「グローバル中小企業戦略」。株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役で神田外語大学 客員教授の豊田 圭一氏によるゲストトークを皮切りに、県内企業のピッチ、パネルディスカッションや、参加者交流の場が繰り広げられました。

豊田氏の熱いオープニングトーク
オープニングと県内企業3社の発表

世界各地で挑戦を重ねてきた豊田氏は、「失敗して当たり前。大切なのは続けることです」と語ります。講演では、日本とイタリアに焦点が当てられました。内需が大きい日本に対し、イタリアは内需が小さいからこそ、中小企業が海外市場に挑み続けてきました。その姿勢から学べるのは、「ブランドを磨く」「ニッチで勝つ」「アライアンスで広げる」という三つの戦略です。数多くの挑戦と失敗を経てきた豊田氏の「誰でも一歩は踏み出せる」という言葉には、経験に裏打ちされた重みがあり、会場は熱気と共感に包まれました。

続いて、県内企業3社による新事業のプレゼンテーションが行われました。いずれの発表にも「現場から課題を見つけ、自らの手で形にしていく」熱いエネルギーがあふれていました。

熱意のこもったプレゼンテーション

有限会社工房Ryo 
代表取締役 冨田 良一 氏

「持ち上げない移乗機器」を開発。結婚指輪を手掛ける事業からの、まったく異なる分野への挑戦でした。軽量で低コストな仕組みを追求し、日本・米国・中国で特許を取得。お父様の介護という原体験から生まれた“誰かの助けになりたい”という思いが、高齢化という課題に真正面から挑む原動力となっています。

株式会社藤田ワークス 
セールスフロンティアマネージャー 磯脇 武志 氏

板金加工の技術を活かし、「水の揺らぎを金属で表現する」新素材を開発。何百回もの試行錯誤を経て完成した素材は、今では建築空間を彩る新たな表現手法として注目されています。東京での展示会にも継続出展し、製造業から建築業界への挑戦という新たな道を切り拓いています。

株式会社ネバーランド 
代表取締役 加世堂 洋平 氏

鹿児島県長島町で、日本一の生産量を誇る養殖ぶり「茶ぶり」をはじめ、レモンや牡蠣など多彩な地元食材を自社で生産。これらを活かして東京を含む各地に飲食店舗を展開し、地域の魅力を全国へ届けています。顧客の声を起点に、商品開発から生産・流通・販売までを一体で担う仕組みを構築。「あるものを売る」から「売り方を創る」へ。長島町という地域そのものの価値を高めています。


パネルディスカッションで語られた挑戦の原点─自らを駆り立てるものを見つめ直す

パネルディスカッションで登壇者4名が語ったのは、挑戦の背景にある“原動力”。
それは、やらずにはいられない衝動や、できると信じる気持ち、悔しさを糧にする粘り、仲間を想う心─。
立場や分野は違っても、挑戦の源泉はどれも「自分の中にある熱量」でした。

挑戦の原点を語るパネルディスカッション

登壇者のストーリーにふれたあとは、参加者同士がグループで語り合う時間。そこでは、立場や所属を超えて“熱量”や“想い”が交わされ、新たな気づきやエネルギーが生まれていました。

互いの声に真剣に耳を傾ける、グループディスカッションの様子

参加者が語る、かごチャレの価値

実際にかごチャレに参加した方々へのインタビューからも、この場の価値が伝わってきます。

熱量が循環する場」
株式会社下園薩男商店
代表取締役 下園正博氏

グループディスカッションに入る頃には場があたたまり、参加者全員の熱量が最高に高まっていました。

以前「成功した人の話よりも、成功に向けてもがいている人の話を聞け」というアドバイスを受けたことがありますが、この場はまさにそのような場だと思っています。挑戦の過程を共有し合うからこそ、お互いを高め合えるのだと思います。ここからまた新しい一歩を踏み出すきっかけを得られる場だと、いつも期待しています。

普段触れられない“想い”に出会える場」
ハウス食品グループ本社株式会社
品質保証統括部 部長 山本竜太氏

人の想いやパッションそのものに直接ふれる機会は、日常ではなかなかありません。だからこそ、そうしたエネルギーを受け取れるこの場がとても貴重です。グループディスカッションでは、自分の発言に対してフィードバックをもらえたことはもちろんのこと、同じグループの方々の話を聞く中でも「なるほど」と思う気づきが数多くありました。多様な視点にふれることで、自身の思考が深まった感覚があります。

「ごちゃまぜだからこその心地よさ
南大隅町
地域おこし協力隊 原田志穂子

立場や背景を超えたごちゃまぜの場のなかで双方向に語り合える雰囲気が、本当に心地よいです。この場は熱量とあたたかさに包まれていて、そんな場だからこそ本音で話し合えるのだと思います。日常ではなかなか得られない「フラットに、双方向なフィードバック」を与え・受取りあう場が、ここにはあります。


挑戦の循環は次回へとつながる

最後は、Glow UPの次なる挑戦に向けた発表で締めくくられました。回を重ねるごとに食と人、地域がつながり合い、新たな構想も動き始めています。かごチャレから芽吹いた共創の輪が、鹿児島の食の未来をさらに輝かせようとしています。

昨年度かごチャレで生まれたGlowUPの取組み、次回に向けた発表に会場全体がワクワクに包まれる
GlowUPの今後の取り組みに参加者が注目
GlowUP開催時の様子
一人ひとりの想いが響き合い、会場に熱が立ち込める

今年度初回となる今回のかごチャレでは、豊田氏の講演を通じて中小企業がグローバル展開を志す際の視点が共有されるとともに、県内企業の取り組みを知り、一歩踏み出し続けることの大切さを改めて感じる機会となりました。この場をきっかけに参加者同士の対話が広がり、新たな連携や次の挑戦につながる芽が見え始めています。

次回は11月11日に開催されます。オープニングゲストトークのテーマは、「デザイン・ブランディング」。事業やサービスの価値をどう伝え、広げていくか。地域企業にとっても重要な視点が共有される場となる予定です。かごチャレ開催レポートは、挑戦する人がつながり合うことで新たな可能性を育てていくプロセスを、今後も継続的に記録していきます。

※かごチャレの主催は鹿児島県が、企画運営は公益財団法人かごしま産業支援センターと株式会社協働日本が担っています。

※株式会社協働日本は地域企業と第一線で活躍するプロ人材が一つのチームとなり、事業変革に伴走します。成果を出すとともに、その先の「自ら変わり続ける力」を育みます。詳細はこちらからご確認いただけます。